説明

ラジアルピストンポンプ

本発明は、ポンプハウジング(1)と、ポンプシャフトと、該ポンプシャフトに対して半径方向に配置された少なくとも1つのシリンダインサート(2)とを備えた、燃料噴射システムにおける燃料高圧発生のためのラジアルピストンポンプに関する。シリンダインサート(2)内にはシリンダ室(3)が形成されており、該シリンダ室(3)内ではピストン(4)が往復運動可能に案内されている。シリンダインサート(2)の1つの端面(5)は、ポンプハウジング(1)に設けられた平らに加工された平坦部(6)と緊締手段によって緊締されている。シリンダインサート(2)は吸込通路(8)と高圧通路(9)とを有している。ポンプハウジング(1)に対してシリンダインサート(2)をシールするために、シリンダインサート(2)の端面(5)および/またはポンプハウジング(1)の平坦部(6)が、意図的に加工成形された隆起したシール範囲(12,13,14)を有しており、該シール範囲が、シリンダインサート(2)の端面(5)全体ならびにポンプハウジング(1)の平坦部(6)全体に比べて小さく形成されている。これいより、当該シール範囲(12,13,14)で高い面圧が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射システムにおける燃料高圧発生のためのラジアルピストンポンプに関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国特許第19841642号明細書に基づき公知の燃料高圧ポンプは、1つのポンプハウジングと、シリンダインサートとして形成された複数のシリンダヘッドとを有している。各シリンダインサートはセンタリング付設部を介してポンプハウジング内に位置固定されている。ポンプハウジングには吸込管路が設けられており、この吸込管路はシリンダヘッドに通じている。燃料は吸込管路から吸込弁を介してシリンダ室へ流入する。シリンダ室内で燃料は圧縮され、そして引き続き高圧弁と高圧管路とを介してポンプハウジング内へ戻る。次いで燃料はポンプハウジングから共通の高圧アキュムレータ、つまり「コモンレール」に流入する。シリンダインサートとポンプハウジングとの間には、Oリングパッキンが配置されている。Oリングパッキンを収容するためにシリンダインサートは溝を有している。Oリングパッキンの嵌込みは、高い組付け手間を必要とし、Oリングパッキンが溝内に正し位置しなくなることが容易に起こり得る。その場合、シリンダインサートのねじ締結時に、両構成部分のシール面の間でOリングパッキンが押し潰されて、損傷されてしまう。これにより、燃料高圧ポンプから燃料が漏出する危険がある。
【0003】
したがって、本発明の課題は、シリンダインサートの簡単な組付けを保証すると同時に、燃料高圧ポンプの確実なシールを保証することである。
【0004】
この課題は請求項1の特徴部に記載の特徴により解決される。本発明の有利な構成は、請求項2以下に記載されている。
【0005】
本発明は、シリンダインサートの1つの端面が、ポンプハウジングに設けられた平らに加工された平坦部に接触していて、シリンダインサートの前記端面またはポンプハウジングの平坦部が、意図的に加工成形された隆起したシール範囲を有しており、該シール範囲が、シリンダインサートの前記端面全体ならびにポンプハウジングの平坦部全体に比べて小さく形成されており、これにより当該シール範囲で高い面圧が得られるようになっていることを特徴としている。これにより、付加的なOリングを不要にすることができる。これにより、シリンダインサートの組付けは著しく簡単となる。組付け時におけるシール面の損傷は十分に回避されている。
【0006】
本発明の有利な構成では、第1の隆起したシール範囲が吸込通路を取り囲むように形成されており、第2の隆起したシール範囲が高圧通路を取り囲むように形成されている。これにより、隆起したシール範囲をできるだけ小さく形成することができる。これにより、高い面圧が可能となる。
【0007】
本発明の別の有利な構成では、第1および第2の隆起したシール範囲を取り囲むように、付加的な第3の隆起したシール範囲が形成されており、該第3の隆起したシール範囲が第1および第2の両シール範囲を完全に取り囲んでいる。これにより、第1の隆起したシール範囲および/または第2の隆起したシール範囲に不密性もしくは非シール性が発生した場合でも、燃料がシール面を介して外部へ漏出し得なくなり、周囲全体を取り囲む第3の隆起したシール範囲によりシール性が引き続き保証されたままとなることが保証されている。
【0008】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0009】
図1は、本発明による燃料高圧ポンプの詳細図であり、
図2は、本発明によるシリンダインサートの分解斜視図である。
【0010】
図1には、燃料高圧ポンプの詳細図が示されている。図1には、ポンプハウジング1の一部ならびにシリンダインサート2が図示されている。通常では、複数の、有利には3つの、互いに120゜の角度でずらされたシリンダインサートが設けられている。シリンダインサート2はセンタリング付設部を介してポンプハウジング1内に位置固定されている。この場合、シリンダインサート2の端面5はポンプハウジング1に設けられた平らに加工された平坦部6に接触している。シリンダインサート2は緊締手段(図示しない)、有利にはねじを介して、ポンプハウジング1と緊締される。シリンダインサート2には、吸込通路8と高圧通路9とが加工成形されている。吸込通路8と高圧通路9とは、それぞれ端面5に開口している。ポンプハウジング1は吸込通路8に対応する第1の通路10と、高圧通路9に対応する第2の通路11とを有しており、第1第2の両通路10,11はポンプハウジング1の平坦部6に向かって開口している。第1の通路10は吸込通路8に対してほぼ整合するように配置されており、第2の通路11は高圧通路9に対してほぼ整合するように配置されている。
【0011】
燃料はポンプハウジング1から第1の通路10を介して吸込通路8に流入し、そして吸込弁を介してシリンダ室3に流入する。このシリンダ室3内で燃料は圧縮され、引き続き高圧弁と高圧通路9と第2の通路11とを介して共通の高圧アキュムレータ(図示しない)へ流入する。
【0012】
シリンダインサート2の、ポンプハウジング1の平らに加工された平坦部6に接触している端面5は、複数の隆起した範囲12,13,14を有している。これらの隆起した範囲12,13,14により、シール範囲、つまり平坦部6に載着される載着面は減小され、この場合、同じ引付け力でも、平坦な端面の場合よりも著しく高い面圧が達成されるようになる。これにより、ポンプハウジング1に対するシリンダインサート2の確実なシールが達成される。当然ながら、隆起した範囲をポンプハウジング1の平らに加工された平坦部6に形成することも可能である。また、隆起した範囲をシリンダインサート2にもポンプハウジング1にも形成することも可能である。ただし、コスト上の理由から、隆起した範囲をシリンダインサートまたはポンプハウジングのいずれか一方の構成部分にのみ設け、他方の構成部分に設けられる対応する面を平坦な面として形成することが有利である。この場合、この平坦なシール面の高い品質を不要にすることができる。なぜならば、高い面圧に基づき、シール面の範囲における材料の弾性的な変形によって凹凸面の補償が可能となるからである。
【0013】
図1に示した実施例では、第1の隆起したシール範囲12が吸込通路8を取り囲むように形成されており、第2の隆起したシール範囲13が高圧通路9を取り囲むように形成されている。これにより、シール力が、シールしたい範囲の近傍へ意図的に導入される。これによりシール面を最小限に抑えることができる。このことはシール範囲における高い面圧をもたらす。
【0014】
第1の隆起したシール範囲12および第2の隆起したシール範囲13に対して付加的に、第3の隆起したシール範囲14が形成されている。この第3の隆起したシール範囲14は第1第2の両シール範囲12,13を完全に取り囲んでいる。これにより、第1のシール範囲および/または第2のシール範囲に不密性もしくは非シール性が発生した場合でもシール面を介して燃料が外部へ漏出し得るのではなく、周囲全体を取り囲む第3のシール範囲によって引き続きシール性が保証されたままとなることが保証されている。第1のシール範囲12と第2のシール範囲13とを完全に取り囲む第3の隆起したシール範囲14により、中空室15が形成される。第1のシール範囲12もしくは第2のシール範囲13の非シール性が発生した場合、液体はこの中空室15内へ流出することができる。中空室15内で液体圧が増圧し得ないようにするためには、排出通路16が設けられていると有利である。この排出通路16を介して燃料は再び燃料タンクへ戻ることができる。それと同時に、中空室15は監視目的のためにも使用され得る。このためには、中空室内部に、相応するセンサを配置することができる。このセンサは第1のシール範囲および/または第2のシール範囲の非シール性が発生した場合に、相応する評価ユニットへ信号を送出する。
【0015】
図2には、第1の隆起したシール範囲12と、第2の隆起したシール範囲13とを備えた、図1の実施例で使用されたシリンダインサート2の分解斜視図が示されている。第1の隆起したシール範囲12および第2の隆起したシール範囲13は、吸込通路8もしくは高圧通路9の中心をほぼリング状もしくは環状に取り囲むように形成されている。第1第2の両隆起したシール範囲12,13は、第3の隆起したシール範囲14によって完全に取り囲まれる。両シール面のいずれか一方のシール面に場合によっては非シール性が発生すると、燃料は中空室15へ流入し、そして排出通路16を介して燃料タンクへ戻ることができる。図2からよく判るように、意図的に加工成形された、隆起したシール範囲12,13,14はシリンダインサート2の端面5全体に比べて小さい。これにより、シール範囲における高い面圧が生ぜしめられ、ひいては確実なシールが得られる。
【0016】
極めて高い燃料圧の場合には、付加的に高圧通路9の範囲にエラストマパッキンを設けることができる。このエラストマパッキンは有利には支持リング18と一緒に、高圧通路9を取り囲む切欠き(図示しない)内へ同心的に配置される。
【0017】
ポンプハウジング1における緊締時にシリンダインサート2のひっかかりを阻止するために、端面5の外側の角隅に4つの支持面18が設けられていると有利である。
【0018】
シール輪郭は有利には電気化学的な除去方法、スクリーン印刷法、エッチング、浸食加工または面押込み加工により形成され得る。隆起した範囲は有利には0.1〜0.3mmの突出高さを有している。このことは、シリンダインサートとポンプハウジングとの緊締時に隆起した範囲だけが接触し、その他の面は接触しないことを保証する。それと同時に、必要となる材料除去量も小さくて済む。これにより、短い加工時間が得られる。
【0019】
したがって、提案された発明により、ポンプハウジングに対するシリンダインサートの確実なシールが保証されている。隆起したシール範囲およびこれにより得られる高い面圧に基づき、高いシール力が得られる。たとえばOリングのような付加的なシールエレメントが必要とならない。これにより、組付け手間が著しく減少する。さらに、誤組付けも十分に回避される。第1のシール範囲と第2のシール範囲とを取り囲む付加的な第3の隆起したシール範囲により、非シール性が発生した場合でも燃料がポンプハウジングから漏出し得ないことが確保される。
【0020】
当然ながら、本発明は図示の実施例に限定されるものではない。特に隆起したシール範囲の種々様々な構成が可能である。すなわち、たとえば、隆起したシール範囲は互いに異なる高さを有していてもよい。これにより、高圧範囲には、たとえば低圧範囲におけるよりも高い面圧を導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による燃料高圧ポンプの詳細図である。
【図2】本発明によるシリンダインサートの分解斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射システムにおける燃料高圧発生のためのラジアルピストンポンプであって、
−ポンプハウジング(1)が設けられており、
−ポンプシャフトが設けられており、
−該ポンプシャフトに対して半径方向に配置された少なくとも1つのシリンダインサート(2)が設けられており、該シリンダインサート(2)内にシリンダ室(3)が形成されており、該シリンダ室(3)内でピストン(4)が往復運動可能に案内されており、
−シリンダインサート(2)の端面(5)が、ポンプハウジング(1)に設けられた平らに加工された平坦部(6)に接触していて、該平坦部(6)と緊締手段によって緊締されており、
−シリンダインサート(2)が少なくとも1つの吸込通路(8)を有しており、該吸込通路(8)によって燃料がシリンダ室(3)に供給され得るようになっており、
−シリンダインサート(2)が少なくとも1つの高圧通路(9)を有しており、該高圧通路(9)を介して燃料がシリンダ室(3)から流出し得るようになっており、
−吸込通路(8)と高圧通路(9)とが、それぞれシリンダインサート(2)の端面(5)に開口しており、
−ポンプハウジング(1)に第1の対応する通路(10)と第2の対応する通路(11)とが配置されており、両通路(10,11)がポンプハウジング(1)の平坦部(6)に開口していて、吸込通路(8)もしくは高圧通路(9)とほぼ整合している、
形式のものにおいて、
シリンダインサート(2)の端面(5)および/またはポンプハウジング(1)の平坦部(6)が、意図的に加工成形された隆起したシール範囲(12,13,14)を有しており、該シール範囲が、シリンダインサート(2)の端面(5)全体ならびにポンプハウジング(1)の平坦部(6)全体に比べて小さく形成されていて、当該シール範囲(12,13,14)で高い面圧が得られるようになっている
ことを特徴とする、燃料噴射システムにおける燃料高圧発生のためのラジアルピストンポンプ。
【請求項2】
第1の隆起したシール範囲(12)が吸込通路(8)を取り囲むように形成されており、第2の隆起したシール範囲(13)が高圧通路(9)を取り囲むように形成されている、請求項1記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項3】
第1および第2の隆起したシール範囲(12,13)が、吸込通路(8)もしくは高圧通路(9)の中心をほぼ環状に取り囲むように形成されている、請求項2記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項4】
第1および第2の隆起したシール範囲(12,13)を取り囲むように、付加的な第3の隆起したシール範囲(14)が形成されており、該第3の隆起したシール範囲(14)が第1および第2の両隆起したシール範囲(12,13)を完全に取り囲んでいる、請求項2記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項5】
ポンプハウジング(1)の平坦部(6)に、第3の隆起したシール範囲(14)により取り囲まれた面の内側で、第1の隆起したシール範囲および/または第2の隆起したシール範囲からの、場合によっては生じる漏れ流を排出しかつシールシステムを監視するための排出通路(16)が形成されている、請求項4記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項6】
高圧通路(9)を取り囲むように付加的なエラストマパッキンが配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のラジアルピストンポンプ。
【請求項7】
前記エラストマパッキンがリングパッキンとして形成されていて、該リングパッキンの外周面が支持リング(18)によって支持されている、請求項6記載のラジアルピストンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−519950(P2006−519950A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500039(P2006−500039)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001702
【国際公開番号】WO2004/079190
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】