説明

ラジエータの取付構造

【課題】エンジンとラジエータとをラジエータブラケットを介して、簡単な構成で、連結固定でき、容易に車体フレームに取り付けることが可能なラジエータの取付構造を提供する。
【解決手段】エンジン1の前部にラジエータブラケット4を介してラジエータ6を取り付けるラジエータの取付構造において、ラジエータブラケット4は、エンジン1を機体フレームに取り付けるための機関脚部3と、ラジエータブラケット4を取り付けるためのラジエータ取付部5を、一体的な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として作業用車両のエンジンとラジエータとをラジエータブラケットを介して取り付ける構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の農作業用車両には、エンジンの前方または後方に該エンジンを冷却するためのラジエータが配設されており、該ラジエータを支持するためにラジエータブラケットが配設されている。例えば、該ラジエータブラケットがサイドフレーム等を介してその後方に配設されるステアリングポスト及び車体フレームに連結する構造や(特許文献1参照)、ラジエータブラケットを平板にて構成して、シャーシ上にラジエータブラケットを固設し、該ラジエータブラケット上にバッテリやラジエータを取り付ける構造(特許文献2参照)がある。
【特許文献1】特開平11−321705号公報
【特許文献2】特開2000−38036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1及び特許文献2に開示された構造において、ラジエータとエンジンは別々に車体フレーム(特許文献2においては「シャーシ」、以下同じ)上に固設され、ラジエータはラジエータブラケットを介して車体フレームに固定されているため、組み付け作業工数が多くなり、複雑な構成でエンジンとラジエータが連結固定されていた。また、その結果、ラジエータとエンジンとの位置合わせが必要となっていた。
【0004】
そこで本発明は、部品点数を削減し、組付け作業工数を少なくすることで、簡単な構成でエンジンとラジエータとを連結固定でき、また、容易に車体フレームに取り付けることができ、その結果として、ラジエータとエンジンとの位置合わせも不要となる技術を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、エンジンの前部にラジエータブラケットを介してラジエータを取り付けるラジエータの取付構造において、前記ラジエータブラケットは、前記エンジンを機体フレームに取り付けるための機関脚部と、前記ラジエータブラケットを取り付けるためのラジエータ取付部を、一体的な構成としたものである。
【0007】
請求項2においては、前記ラジエータブラケットは左右対称に構成して、前記エンジンの前下部両側から前方に延出し、該左右ラジエータブラケットの前端を、正面視略U字状に構成した連結プレートにより連結したものである。
【0008】
請求項3においては、前記ラジエータブラケットは、後部に前記機関脚部を形成し、前部上に前記ラジエータ取付部を形成し、該機関脚部と該ラジエータ取付部との間の延長フレーム部に側面視略U字状の切欠を設けたものである。
【0009】
請求項4においては、前記ラジエータ取付部は、前端上部より左右外水平方向に延設して取付面部を形成し、該取付面部の中央に固定孔を開口したものである。
【0010】
請求項5においては、前記ラジエータ取付部上にラジエータ支持フレームを横架し、該ラジエータ支持フレームの左右中央に上方に凹む凹部を形成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1のように構成としたので、部品点数を削減でき、組付け作業工数も少なくなるので、簡単な構成でエンジンとラジエータを連結固定することができ、また、容易に車体フレームに取り付けることが可能である。さらに、ラジエータとエンジンとの位置合わせも不要となる。
【0013】
請求項2のように構成したので、左右のラジエータブラケットの前部を連結プレートにより連結するので剛性をアップすることができる。また、略U字状の連結プレートはクランク軸から前方に延設する動力取出軸と干渉することを防止できる。
【0014】
請求項3のように構成したので、クランク軸前端に取り付けたプーリにベルトを巻回して、該ベルトを切欠の空間から側方へ延設して、動力を取り出すことが可能となる。
【0015】
請求項4のように構成したので、固定孔にボルトを螺挿することによって、ラジエータ取付部にラジエータを安定させて簡単に取り付けることができる。
【0016】
請求項5のように構成したので、ラジエータ下部がクランク軸から前方に延設する動力取出軸と干渉することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下において、図1における右方向を前とし、左方向を後とし、前後方向を決定する。また、かかる前後方向と水平方向に直交する方向を、左右方向とする。また、エンジン1は車両の場合には機体フレームに、作業機等の場合には筐体に取付固定されるが、本実施例ではトラクタの機体フレーム上に取り付ける場合について説明する。
【0018】
まず、図1乃至図3を用いて、本発明の一実施例に係るラジエータブラケット4を有するエンジン1の概略構造について説明する。該エンジン1においては、シリンダブロック21上にシリンダヘッド20が載置固定され、該シリンダブロック21の下側にはオイルパン23が配設されている。
【0019】
前記シリンダブロック21の左右一側(本実施例では右側)には、フィードポンプ34や、こし器35や、図示せぬ燃料噴射ポンプや、給気マニホールド等が配設され、左右他側にはオルタネータやセルモータや排気マニホールドやマフラー36等が配設されている。また、シリンダブロック21の後端部にはフライホイールカバー25が連設され、クランク軸7後端上に固設した図示せぬフライホイールを収納している。また、該フライホイールカバー25の上部には、エアクリーナ37が配設されている。
【0020】
また、エンジン1の前下部には、クランク軸7の前端が前方に突出され、該クランク軸7の前部上に出力プーリ11が固設されている。該出力プーリ11の上方には従属プーリ26が回転自在に枢支され、該従属プーリ26の回転軸27の前端部には一体的にラジエータファン13が固設されている。
【0021】
前記出力プーリ11と前記従属プーリ26と図示しないオルタネータの駆動プーリにはベルト12が巻回されており、該ベルト12を介して出力プーリ11の駆動力が従属プーリ26へ伝達されてラジエータファン13が駆動され、駆動プーリよりオルタネータが駆動される構成となっている。ラジエータファン13は、エンジン1の前方に配置したラジエータ6のラジエータ支持フレーム2の後部内側に設けたシュラウド54によって覆われている。
【0022】
ラジエータ支持フレーム2は、下部フレーム2a及び上部フレーム2bから構成され、ラジエータコアの外周を覆う構成としている。該ラジエータ支持フレーム2の後上側部にリザーバタンク38が配設されている。
図7、図9よりラジエータ支持フレーム2の下部フレーム2aの構成を詳述する。下部フレーム2aは下水平部と該下水平部の両側から立設した左右の垂直部より構成して正面視略U字状に形成されている。前記下水平部には水平面で構成した取付面2d・2dが形成され、該取付面2d・2dの中央部には取付孔2e・2fをそれぞれ開口して、ラジエータコアの両側下面より下方に突設した取付ピンを防振部材を介して取付孔2e・2eに挿入して容易に取り付けられるようにしている。取付孔2f・2fは後述するラジエータブラケット4に固定するための孔である。
前記上部フレーム2bは板状に構成して前記下部フレーム2aの両側の縦側部上端に横架して固定し、ラジエータコアを固定するものである。
【0023】
また、図8に示すように、該下水平部の左右中央には正面視において上方に凹む凹部2cを形成する構成としてもよい。前記出力プーリ11の前面に出力軸を連結した時に干渉しないようにし、ラジエータ6をできるだけ低い位置に取り付けられるようにしている。つまり、ラジエータ6の上端がエンジン1の上端と略同じ高さとなるようにし、エンジン1を車両や作業機に搭載した場合にボンネットや筐体のコンパクト化が可能となる。
【0024】
前記シリンダブロック21の下部の左右両側において、フライホイールカバー25の前方に機関脚14・14が固設され、該機関脚14・14の前方にラジエータブラケット4L・4Rが固設される。該機関脚14・14とラジエータブラケット4L・4Rは車両の機体フレームに固定して、エンジン1とラジエータ6を一体的に機体フレーム上に搭載できるようにしている。
前記ラジエータブラケット4L・4Rの構成について、図4及び図5を用いてさらに詳しく説明する。なお、ラジエータブラケット4L・4Rは、エンジン1の前部に左右対称に構成して設けられるため、右側のラジエータブラケット4Rについて説明する。
【0025】
ラジエータブラケット4Rは、エンジン1を車両の機体フレーム(図示せず)に取り付けるための機関脚部3と、ラジエータ6を取り付けるためのラジエータ取付部5を備えて一体的に構成されている。従来は、前記機関脚部3とラジエータ取付部5はそれぞれ独立した部品で別々に構成されていたものであり、本発明では一部品により構成したので、部品点数が減少し、共締めする必要が無くなり、組み立て作業が簡易化されるものである。
【0026】
前記機関脚部3は、板垂直板部31と水平板部32と補強板33・33からなり、板垂直板部31と水平板部32は板状部材を正面視L字状に折り曲げて構成される。該板垂直板部31の上部にはシリンダブロック21にボルト等の固定部材によりエンジン1に取り付けるための複数の取付孔31a・31a・・・が開口されている。前記水平板部32の中央部にはボルト等の固定部材により機体フレームに取り付けるための取付孔32aが開口されている。但し、取付孔31a・32aの数及び固定手段は限定するものではない。また、前記補強板33は正面視台形状または三角形状の板材で構成されて、板垂直板部31の外側面と水平板部32の上面の間に設けられて剛性を高めるようにしている。この板垂直板部31と水平板部32と補強板33・33からなる機関脚部3の構成は、その後方に配設される機関脚14と略同じ構成としており、機関脚部3及び機関脚14は、エンジン1に、前後平行に取り付けられる。
【0027】
前記板垂直板部31は前方へ延設されて延長フレーム部51を形成し、該延長フレーム部51の前端上部より左右外水平方向に延設して取付面部52を形成している。該延長フレーム51と該取付面部52は一体的に、前記ラジエータ取付部5を構成して、さらには、該ラジエータ取付部5と前記機関脚部3が一体的にラジエータブラケット4Rを構成するものである。
また、該取付面部52の中央部には固定孔52aが開口され、図1、図2に示すように、防振部材18を介してその上部に前記ラジエータ支持フレーム2を載置して、前記固定孔52aと防振部材18と取付孔2fにボルト16を挿入して固定している。
該取付面部52と延長フレーム部51が正面視逆L字状に形成され、該取付面部52と延長フレーム部51との間に正面視台形状または三角形状の補強板53が設けられて、剛性を高めるようにしている。
【0028】
そして、左右のラジエータブラケット4L・4Rの前部間には、連結部材となる連結プレート8が連結固定されて、左右のラジエータブラケット4L・4Rを連結して剛性を高めるようにしている。即ち、延長フレーム部51の前部における補強板53の前後には取付孔51b・51bが開口されている。一方、連結プレート8は正面視略U字状に構成されて、該連結プレート8の左右両側面に取付孔(図示せず)を前後開口し、該取付孔と前記取付孔51b・51bの位置を合わせてボルト15により固定して、左右のラジエータブラケット4L・4Rの前部の剛性を高めるようにしている。但し、連結プレート8の代わりにロッド等を用いることも可能であり、また、取付孔の数を限定するものではない。なお、取付孔は補強板53の近傍に配置することにより変形を防止することができる。
また、前記連結プレート8は正面視略U字状にすることにより、連結部分を下方に位置させることができ、前記クランク軸7の前端に動力取出軸30(図1)を延設した場合に、該動力取出軸30が連結部材と干渉することを防止することができる。
【0029】
さらに、前記機関脚部3と取付面部52との間の延長フレーム部51の上部には、つまり、ラジエータブラケット4の前後中央上部には、側面視略U字状の切欠51aが設けられている。この切欠51aは前記出力プーリ11の側方に位置するように配設される。これにより、前記クランク軸7に固設された出力プーリ11に図示せぬ動力取出用のベルトを巻回して、該ベルトを前記切欠51aの空間から側方に延設して、機体フレームの側方に配置する作業機等を駆動可能としている。こうして、エンジン1前部の右また左より駆動力の取出しが可能となる。
【0030】
以上のように、本実施形態の、エンジン1の前部にラジエータブラケット4を介してラジエータ6と取り付けるラジエータ6の取付構造において、ラジエータブラケット4は、エンジン1を機体フレームに取り付けるための機関脚部3と、ラジエータブラケット4を取り付けるためのラジエータ取付部5を、一体的な構成とするものである。
このように構成することによって、部品点数を削減でき、組付け作業工数も少なくなるので、簡単な構成でエンジン1とラジエータ6を連結固定することができ、容易に車体フレームに取り付けることが可能である。また、その結果として、ラジエータ6とエンジン1との位置合わせも不要となる。
【0031】
また、本実施形態の、ラジエータ6の取付構造において、ラジエータブラケット4は左右対称に構成して、エンジン1の前下部両側から前方に延出し、左右ラジエータブラケット4L・4Rの前端を、正面視略U字状に構成した連結プレート8により連結する構成とできるものである。
このように構成することによって、左右のラジエータブラケット4L・4Rの前部を連結プレート8により連結するので剛性をアップすることができる。また、略U字状の連結プレート8はクランク軸7から前方に延設する動力取出軸30と干渉することを防止できる。
【0032】
また、本実施形態の、ラジエータ6の取付構造において、ラジエータブラケット4は、後部に機関脚部3を形成し、前部上にラジエータ取付部5を形成し、機関脚部3とラジエータ取付部5との間の延長フレーム部51に側面視略U字状の切欠51aを設ける構成とできるものである。
このように構成することによって、クランク軸7前端に取り付けたプーリ11にベルトを巻回して、ベルトを切欠51aの空間から側方へ延設して、動力を取り出すことが可能となる。
【0033】
また、本実施形態の、ラジエータ6の取付構造において、ラジエータ取付部5は、前端上部より左右外水平方向に延設して取付面部52を形成し、取付面部52の中央に固定孔52aを開口する構成とできるものである。
このように構成することによって、固定孔52aにボルト16を螺挿することによって、ラジエータ取付部5にラジエータ6を安定させて簡単に取り付けることができる。
【0034】
また、本実施形態の、ラジエータ6の取付構造において、ラジエータ取付部5上にラジエータ支持フレーム2aを横架し、ラジエータ支持フレーム2aの左右中央に上方に凹む凹部2cを形成する構成とできるものである。
このように構成することによって、ラジエータ下部がクランク軸7から前方に延設する動力取出軸30と干渉することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例に係るラジエータブラケットを有するエンジンの全体的な構成を示した右側面図。
【図2】エンジンの正面図。
【図3】エンジンの前方斜視図。
【図4】ラジエータブラケットを示す右側面図。
【図5】ラジエータブラケットを示す後方斜視図。
【図6】別実施例のラジエータ支持フレームを備えるエンジンの正面図。
【図7】ラジエータ支持フレーム例を示す背面図。
【図8】別実施例のラジエータ支持フレームを示す背面図。
【図9】ラジエータ支持フレーム例を示す平面図。
【符号の説明】
【0036】
1 エンジン
2 ラジエータ支持フレーム
2a 下部フレーム
2b 上部フレーム
3 機関脚部
4 ラジエータブラケット
5 ラジエータ取付部
4R ラジエータブラケット
4L ラジエータブラケット
6 ラジエータ
8 連結プレート
30 動力取出軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの前部にラジエータブラケットを介してラジエータを取り付けるラジエータの取付構造において、前記ラジエータブラケットは、前記エンジンを機体フレームに取り付けるための機関脚部と、前記ラジエータブラケットを取り付けるためのラジエータ取付部を、一体的な構成としたことを特徴とするラジエータの取付構造。
【請求項2】
前記ラジエータブラケットは左右対称に構成して、前記エンジンの前下部両側から前方に延出し、該左右ラジエータブラケットの前端を、正面視略U字状に構成した連結プレートにより連結したことを特徴とする請求項1に記載のラジエータの取付構造。
【請求項3】
前記ラジエータブラケットは、後部に前記機関脚部を形成し、前部上に前記ラジエータ取付部を形成し、該機関脚部と該ラジエータ取付部との間の延長フレーム部に側面視略U字状の切欠を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のラジエータの取付構造。
【請求項4】
前記ラジエータ取付部は、前端上部より左右外水平方向に延設して取付面部を形成し、該取付面部の中央に固定孔を開口したことを特徴とする請求項1または請求項3に記載のラジエータの取付構造。
【請求項5】
前記ラジエータ取付部上にラジエータ支持フレームを横架し、該ラジエータ支持フレームの左右中央に上方に凹む凹部を形成したことを特徴とする請求項1または請求項3または請求項4に記載のラジエータの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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