説明

ラジエータコアサポート

【課題】 補剛部材の製造コストを削除できる他、圧縮強度に比べて引っ張り強度が高く要求される部位に対応できるラジエータコアサポートの提供。
【解決手段】 樹脂製のラジエータコアサポート1の一部に、複数の線状部材11aを編んで形成され、且つ、上下方向の圧縮強度に比べて引っ張り強度が高い補剛部材(金属製ワイヤ11)をインサート成形して一体的に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のラジエータコアサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の線状部材がインサート成形されたバインダから成る補剛部材を樹脂製のラジエータコアサポートにインサート成形して一体的に設けたラジエータコアサポートの技術が公知になっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−293745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、バインダの材料コストや、射出成形時にバインダとラジエータコアサポートを溶着させる温度管理が必要となり、製造コストが高くなるという問題点があった。
【0004】
また、補剛部材が設けられた部位の強度は向上するが、個々の線状部材とバインダとの結合力は略無いため、例えば両者に引っ張り力が作用した場合には各線状部材とバインダの結合が容易に解かれてしまう。
従って、フードロックステイ等のように圧縮強度に比べて引っ張り強度が高く要求される部位には対応できないという問題点があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、補剛部材の製造コストを削除できる他、圧縮強度に比べて引っ張り強度が高く要求される部位に対応できるラジエータコアサポートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明では、樹脂製のラジエータコアサポートの一部に、複数の線状部材を編んで形成され、且つ、上下方向の圧縮強度に比べて引っ張り強度が高い補剛部材をインサート成形して一体的に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、樹脂製のラジエータコアサポートの一部に、複数の線状部材を編んで形成され、且つ、上下方向の圧縮強度に比べて引っ張り強度が高い補剛部材をインサート成形して一体的に設けたため、補剛部材の製造コストを削除できる他、圧縮強度に比べて引っ張り強度が高く要求される部位に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
以下、実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1のラジエータコアサポートを示す正面図、図2は同斜視図、図3は本実施例1のフードロックの斜視図、図4は本実施例1のフードロックプレートの斜視図、図5は本実施例1の金属製ワイヤの正面図である。
【0010】
先ず、全体構成を説明する。
図1、2に示すように、本実施例1のラジエータコアサポート1は、車幅方向に延びるラジエータコアサポートアッパ2と、このラジエータコアサポートアッパ2と並行するラジエータコアサポートロア3と、ラジエータコアサポートアッパ2とラジエータコアサポートロア3の両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド4,4と、ラジエータコアサポートアッパ2とラジエータコアサポートロア3の中央部同士を結合するフードロックステイ5が備えられ、後述するフードロックプレート8と金属性ワイヤ11以外は全て樹脂製となっている。
【0011】
ラジエータコアサポートアッパ2、ラジエータコアサポートロア3、ラジエータコアサポートサイド4,4、フードロックステイ5の内側にはファンシュラウド部6,6が設けられている。
【0012】
また、ラジエータコアサポートアッパ2の左右両端部には、前方側から熱交換器(図示を省略)の対応する車両搭載ピンを図外のブラケット及びインシュレータを介して固定するための固定部B1が形成される一方、ラジエータコアサポートロア3の左右両端部には、熱交換器の対応する車両搭載ピンをインシュレータを介して固定するための固定部B2が形成されている。
さらに、ファンシュラウド6,6には、後方側から図外のファンを臨んだ状態で配置するためのファン開口部O1,O1が形成されている。
【0013】
ラジエータコアサポートアッパ2の中央には、後述する金属製のフードロック7を装着するための金属製のフードロックプレート8が固定されている。
【0014】
図3に示すように、フードロック7は、本体7aと、図外のエンジンのフードの全閉状態において、該フードのストライカと係合して該フードを全閉状態に拘束するラッチ7bと、フードの半開状態において、ストライカと係合して該フードを半開状態に拘束するセカンダリーラッチ7c及びリリースレバー7dと、フードの全閉状態において、セカンダリーラッチ7cをストライカと係合する係合方向へ付勢するスプリングSと、を主要な構成として備えられている。
また、本体7aの左右両端部には合計3カ所の挿通穴7eが設けられる一方、下方中央部には挿通穴7fが設けられている。
【0015】
図4に示すように、フードロックプレート8は、前方側プレート9と後方側プレート10で構成されている。
前方側プレート9は、その下部に形成された2カ所の貫通孔9aに図外のリベットが挿通されてラジエータコアサポートアッパ2の中央部の所定位置に固定される他、その上部にはフードロック7の挿通孔7fに挿入された状態で配置されるピン9bが図外の溶接により固定されている。
一方、後方側プレート10は、その各部に形成された複数の貫通孔10aに図外のリベットが挿通されてラジエータコアサポートアッパ2の中央部の所定位置に固定される他、その左右両端部にはフードロック7のそれぞれ対応する挿通孔7eから図外のボルトが挿通されて該フードロック7を固定するためのボルト孔10bが形成されている。
【0016】
そして、図1に示すように、フードロックステイ5の内部には、それぞれ前方側プレート9の直下からラジエータコアサポートロア3の真上に達する長さを有する3本の金属製ワイヤ11(補剛部材)が左右方向に所定間隔でインサート成形されて一体的に設けられている。
【0017】
図5に示すように、金属製ワイヤ11は、金属製の複数の線状部材11aが編んで形成されることにより、上下方向の圧縮強度に比べて引っ張り強度が高くなるような特性を備えている。
なお、金属性ワイヤ11を設ける本数、長さ、径、配置等は適宜設定できる。同様に、線状部材11aの材質や編み込む本数についても適宜設定できる。
【0018】
次に、作用を説明する。
このように構成されたラジエータコアサポート1を製造する際には、図外の射出成型用型内に予め金属製ワイヤ11を配置しておき、ラジエータコアサポート1の素材となる樹脂を射出成型用型内に充填させることにより、金属製ワイヤ11をインサート成形して一体的に設ける。
この際、射出成型用型内に充填された樹脂は、金属製ワイヤ11の線状部材11aの間に入り込んだ状態で一体化し、これによって、金属製ワイヤ11との堅固な結合力を実現できる。
【0019】
従って、従来の発明に比べて、バインダの材料コストや、射出成形時にバインダとラジエータコアサポートを溶着させる温度管理が不要となり、製造コストを低く抑えることができる。
【0020】
このように構成されたラジエータコアサポート1は、フードロックプレート8とフードロック7がラジエータコアサポートアッパ2の中央部の所定位置に固定される他、ファン開口部O1,O1に臨んだ状態で前方側から図外の熱交換器が搭載される一方、後方側から図外のファンが搭載される。
この際、フードロック7はその下方を挿通孔7fに挿通された前方側プレート部9のピン9bに固定支持される一方、左右を挿通孔7e及び後方側プレート10のボルト孔10に挿通されて固定された図外のボルトにより固定支持される。
【0021】
また、ラジエータコアサポート1が車両に搭載された際に、フードロック7のラッチ7bが図外のフードのストライカと係合して、該フードが全閉状態に拘束される。
【0022】
そして、車両走行時には、風圧によりフードが上方に持ち上げられるような力を受け、その結果、フードのストライカ、フードロック7、フードロックプレート8を介してラジエータコアサポート1の中央部周辺を上方へ引っ張る力が作用する。
【0023】
一方、リリースレバー7dを操作してフードを全開状態としてから、再びフードを下げて全閉状態とする際に、フードのストライカ、フードロック7、フードロックプレート8を介してラジエータコアサポート1の中央部周辺を下方へ圧縮する力が作用する。
【0024】
従って、ラジエータコアサポート1の中部周辺には、上方への引っ張り強度と、下方への圧縮強度が要求されるが、この圧縮強度に関しては下方への力をラジエータコアサポートアッパ1全体に分散させて要求を満足するようにできるだけ高くしたくないという要求がある。
【0025】
これに対し、本実施例1のラジエータコアサポート1にあっては、前述したように、フードロックステイ5の内部、詳細にはそれぞれ前方側プレート9の直下からラジエータコアサポートロア3の真上に達する長さを有する金属製ワイヤ11(補剛部材)が左右方向に所定間隔で3本インサート成形されて一体的に設けられているため、金属製ワイヤの備える引っ張り方向には強く、圧縮方向には弱いという特性を生かして上記要求を満足することができる。
【0026】
また、金属製ワイヤ11の周辺の樹脂は、線状部材11aの間に入り込んだ状態で一体化しているため、ラジエータコアサポート1の中央部周辺に過大な引っ張り力が生じた際にも、金属製ワイヤ11と樹脂が共に伸長して強度を維持できる一方、金属製ワイヤ11は、所定の圧力以下において塑性変形することなく元の長さに復元でき、繰り返し応力に対する耐久性が高い。
【0027】
なお、補足ではあるが、従来の発明のように線状部材をフードロックステイにインサート成形して一体的に設けた場合には、バインダの有無に関わらず、線状部材と樹脂(バインダ)との結合力が殆ど無いため、ラジエータコアサポートアッパの中央部周辺に過大な引っ張り力が生じた場合に線状部材が樹脂に追従することがない。
【0028】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1の発明にあっては、樹脂製のラジエータコアサポート1の一部に、複数の線状部材11aを編んで形成され、且つ、上下方向の圧縮強度に比べて引っ張り強度が高い補剛部材(金属製ワイヤ11)をインサート成形して一体的に設けたため、バインダを必要とすることなく、補剛部材(金属製ワイヤ11)の製造コストを削除できる他、圧縮強度に比べて引っ張り強度が高く要求される部位に対応できる。
【0029】
また、補剛部材(金属製ワイヤ11)は複数の線状部材11aを編んで形成されるため、周囲の樹脂との結合力を堅固にでき、特に、引っ張り強度を向上できる。
【0030】
また、ラジエータコアサポート1の一部をフードロックステイ5としたため、圧縮強度に比べて引っ張り強度が高く要求されるフードロック5に補剛部材(金属製ワイヤ11)を設けて好適となる。
【0031】
また、補剛部材を金属製ワイヤ11としたため、金属製ワイヤにおける引っ張り方向には強く、圧縮方向には弱いという特性を生かして安価で好適な補剛部材を形成できる。
【0032】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、補剛部材は金属製ワイヤに限らず、カーボン製、ガラス製の線状部材を単独でまたは組み合わせて編んで形成しても良い。
また、本実施例1のフードロックプレート8は前方側プレート9と後方側プレート10の2部材から構成されることとしたが、これら両者を一体的に形成して、ラジエータコアサポート1にインサート成形して一体的に設けても良い。
さらに、この際、金属製ワイヤ11の上端部をフードロックプレート8に溶接固定して設けることでフードからの力を直接伝達させることができ、応力が掛かった際における初期応答性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1のラジエータコアサポートを示す正面図である。
【図2】本実施例1のラジエータコアサポートを示す斜視図である。
【図3】本実施例1のフードロックの斜視図である。
【図4】本実施例1のフードロックプレートの斜視図である。
【図5】本実施例1の金属製ワイヤの正面図である。
【符号の説明】
【0034】
B1、B2 固定部
O1 ファン開口部
S スプリング
1 ラジエータコアサポート
2 ラジエータコアサポートアッパ
3 ラジエータコアサポートロア
4 ラジエータコアサポートサイド
5 フードロックステイ
6 ファンシュラウド部
7 フードロック
7a 本体
7b ラッチ
7c セカンダリーラッチ
7d リリースレバー
7e 挿通孔
8 フードロックプレート
9 前方側プレート
9a 貫通孔
9b ピン
10 後方側プレート
10a 貫通孔
10b ボルト孔
11 金属製ワイヤ
11a 線状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のラジエータコアサポートの一部に、複数の線状部材を編んで形成され、且つ、上下方向の圧縮強度に比べて引っ張り強度が高い補剛部材をインサート成形して一体的に設けたことを特徴とするラジエータコアサポート。
【請求項2】
請求項2記載のラジエータコアサポートにおいて、
前記ラジエータコアサポートの一部をフードロックステイとしたことを特徴とするラジエータコアサポート。
【請求項3】
請求項1または2記載のラジエータコアサポートにおいて、
前記補剛部材を金属製ワイヤとしたことを特徴とするラジエータコアサポート。

【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−331453(P2007−331453A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163079(P2006−163079)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】