説明

ラジカル重合性組成物

【課題】油性の汚れに対して優れた防汚性と汚染除去性を長期間にわたって維持でき、優れた耐擦傷性を備えた高硬度の被膜を形成できるラジカル重合性組成物を提供する。
【解決手段】ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B)、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)、および、架橋剤(D)を含有してなり、ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)と、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)が、イソシアネート基含有化合物(b)を介して結合してなるものであることを特徴とするラジカル重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、木、紙、ガラス、プラスチックなどからなる成形品、フィルムまたはシートなどの表面に被膜を形成するラジカル重合性組成物、および、このラジカル重合性組成物からなる被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖骨格にポリシロキサンを有する樹脂は、防汚性や汚染除去性、表面硬度などに優れた硬化物を形成できることから、従来、被覆材に使用されている。
被覆材としては、例えば、光硬化性(メタ)アクリレート系樹脂、光硬化性ポリシロキサン系ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、光硬化性シリコーンブロック(メタ)アクリレート系樹脂、および、光重合開始剤を含有してなる光硬化性(メタ)アクリレート系樹脂組成物が、汚染除去性に優れた被膜を形成できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、シリコーンの側鎖にエーテル結合を介して反応性二重結合を有する重合体の存在下、特定の親水性ビニルモノマーと、水酸基含有ビニルモノマーと、カルボキシル基含有ビニルモノマーとを共重合して生成されたグラフト共重合体を含有してなる防汚被覆用組成物は、再塗装性や貯蔵安定性に優れるとともに、防汚性にも優れることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、ポリシロキサン骨格と、有機イソシアヌレートからなる多官能のウレタンアクリレート樹脂と、不飽和単量体とを含有してなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、表面硬度が高く、耐擦傷性に優れた被膜を形成できることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
一方、防汚性などに優れる被覆材は、例えば、指触による汚れの付着や擦り傷の発生を防止するための用途、具体的には、小型ゲーム機や複写機などのタッチパネル式の部位などの表面被覆に使用することが検討されている。
しかし、特許文献1および2に記載の樹脂組成物を用いて形成された被膜は、良好な防汚性を有するものの、耐擦傷性の点で十分でない場合がある。また、特許文献3記載の樹脂組成物を用いて形成された被膜は、ある程度良好な耐擦傷性を有するものの、実用上十分な防汚性を有していない場合があった。
また、複写機などの耐用年数が向上するのに伴って、防汚性が長期にわたって持続することが求められている。また、近年、防汚性に加えて、被膜表面に汚れが付着した場合であっても、布などで軽く拭くことによって、比較的容易に汚れを除去可能な性質、いわゆる汚染除去性も求められている。
しかしながら、特許文献1〜3に開示されている樹脂組成物を用いて形成された被膜の防汚性や汚染除去性は、被膜形成初期であれば比較的良好な効果を奏する場合があるものの、経時的に著しく低下する場合があった。
【特許文献1】特開2003−192751号公報
【特許文献2】特開平7−278467号公報
【特許文献3】特開平6−1819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、例えば、マジックペンなどによる油性の汚れに対して優れた防汚性と汚染除去性とを長期間にわたり維持できるとともに、優れた耐擦傷性を兼ね備えた高硬度被膜を形成できるラジカル重合性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、前記ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B)、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)、および、架橋剤(D)を含有してなり、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、前記ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)と、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)が、イソシアネート基含有化合物(b)を介して結合してなるものであることを特徴とするラジカル重合性組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のラジカル重合性組成物によれば、防汚性と汚染除去性を長期間持続可能であるともに、耐擦傷性に優れた被膜を形成できることから、例えば、携帯電話のディスプレイ、テレビ、小型ゲーム機、携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピューター、デジタルカメラなどに用いられるディスプレイや、ATM、券売機、POS末端、ハンディーターミナル、FA機器、複写機などに用いられるタッチパネル、CD、DVD、ブルーレィディスク、HD−DVDなどの磁気記録媒体の表層部、建築物の屋根、外壁や防水層などの表面塗装部分、浴槽、浴室、洗面ボウル、鏡、キッチンシンク、トイレの便器などの表層部、カメラ、ビデオカメラ、眼鏡などのプラスチックレンズの表層部などの被覆材として用いることができる。
また、本発明のラジカル重合性組成物によれば、活性エネルギー線による硬化、過酸化物の使用による加熱硬化、または、過酸化物と還元剤の使用による常温硬化のいずれの硬化方法によっても硬化することから、用途に応じた硬化方法を採用することができる。特に、フラットパネル用途においては、薄膜化、高硬度化が可能であるため活性エネルギー線による硬化が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のラジカル重合性組成物の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0008】
本発明のラジカル重合性組成物は、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B)、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)、および、架橋剤(D)を含有してなるものである。
【0009】
本発明のラジカル重合性組成物を構成するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)と、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)が、イソシアネート基含有化合物(b)を介して結合してなるものである。
【0010】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、優れた防汚性、汚染除去性および耐擦傷性を長期間持続できる被膜を形成する観点から、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有することが必須である。
【0011】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、硬化被膜の形成に寄与し得る(メタ)アクリロイル基を1個または2個以上有するものを用いる必要があるが、高硬度かつ耐擦傷性に優れた被膜を形成する観点から(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものを用いることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を2〜5個有するものを用いることがより好ましい。
【0012】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、例えば、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)と、イソシアネート基含有化合物(b)とを反応させてポリシロキサン(a)由来の構造およびイソシアネート基を有する化合物(c)を生成し、この化合物(c)と、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)とを反応させることによって生成することができる。
【0013】
具体的には、例えば、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)と、イソシアネート基含有化合物(b)とを、好ましくは、イソシアネート基含有化合物(b)の有するイソシアネート基(NCO)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)の有する水酸基などの活性水素原子含有基との当量比(NCO/活性水素原子含有基)が1〜2.5となるように反応させることによって、上記の化合物(c)を生成し、次いで、この化合物(c)と、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)とを反応させることによって生成することができる。
【0014】
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)について説明する。
本発明のラジカル重合性組成物では、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)としては、ポリシロキサン鎖からなる主鎖に、アルキレンオキサイドの開環反応物からなるポリアルキレンオキサイド鎖からなる側鎖が、ペンダント状にグラフト重合したものを用いることが重要である。
例えば、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)の代わりに、ポリアルキレンオキサイド鎖とポリシロキサン鎖とからなるブロック共重合体を使用した場合、良好な汚染除去性を有する被膜を形成することができるものの、高硬度かつ耐擦傷性に優れた被膜を形成することは困難である。
一方、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)を用いて生成したウレタン(メタ)アクリレート(A)を使用すれば、汚染除去性および耐擦傷性に優れるとともに、高硬度な被膜を形成できるラジカル重合性組成物が得られる。
【0015】
ポリアルキレンオキサイド鎖は、ポリシロキサン鎖の結晶性を緩和させるので、得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)への相溶性を向上させる観点から必要である。
なお、ポリシロキサン鎖のみからなるウレタン(メタ)アクリレートは、本発明のラジカル重合性組成物を構成する他の成分と相溶しない。
【0016】
ポリアルキレンオキサイド鎖としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイドを用いることができ、好ましくは、ポリエチレンオキサイドが用いられる。
ポリアルキレンオキサイドとしては、アルキレンオキサイドの2〜15モル付加物を用いることが好ましい。
【0017】
また、ポリシロキサン鎖としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリエチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどを用いることができる。これらの中でも、2個以上のアルキル基またはフェニル基が結合したケイ素原子から構成されるポリシロキサン鎖を用いることが、汚染除去性を向上させるとともに、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を安定的に製造する観点からより好ましく、特にポリジメチルポリシロキサンを用いることが好ましい。
【0018】
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)は、後述するイソシアネート基含有化合物(b)の有するイソシアネート基に対して反応性を有する活性水素原子含有基を有することが好ましい。
ここで、活性水素原子含有基としては、水酸基であることが好ましい。この水酸基は、主鎖としてのポリシロキサン鎖を構成するケイ素原子などに直接結合していてもよいが、側鎖としてのポリアルキレンオキサイド鎖を構成する炭素原子などに結合していることが好ましい。
【0019】
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)としては、水酸基当量が300〜8000であるものを用いることが好ましく、700〜3000であるものを用いることがより好ましい。
水酸基当量が上記の範囲内にある、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)を用いることによって、汚染除去性に優れた被膜を形成できるラジカル重合性組成物が得られる。
【0020】
また、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)としては、ポリアルキレンオキサイド鎖の部分(以下、「ポリアルキレンオキサイド鎖部」と言う。)と、ポリシロキサン鎖の部分(以下、「ポリシロキサン鎖部」と言う。)との質量比が1/0.05〜1/110の範囲内にあるものを用いることが好ましく、1/2〜1/50の範囲内にあるものを用いることがより好ましく、1/2〜1/5の範囲内にあるものを用いることが特に好ましい。
ポリアルキレンオキサイド鎖部と、ポリシロキサン鎖部との質量比が上記の範囲内にある、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)を用いることによって、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)への溶解性に優れるとともに、汚染除去性に優れた被膜を形成できるラジカル重合性組成物が得られる。
【0021】
また、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)は、ポリアルキレンオキサイド鎖部とポリシロキサン鎖部に加えて、その他の分子鎖を有していてもよく、例えば、ポリアルキレンオキサイド鎖部とポリシロキサン鎖部とが、その他の分子鎖や化学結合を介して結合されたものであってもよい。
【0022】
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)の具体例としては、例えば、下記の一般式(I)で示される構造をなしているものが挙げられる。
【0023】
【化1】

【0024】
但し、上記の一般式(I)において、Rは炭素原子数が1〜6のアルキレン基を表し、RおよびRはそれぞれ独立して炭素原子数が2〜4のアルキレン基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素原子数が1〜8のアルキル基またはフェニル基を表す。また、上記の一般式(I)において、aおよびbはそれぞれ独立して1〜8の整数を表し、mおよびnはそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。
【0025】
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製のFZ−2191やSH−3771、信越化学工業社製のKF353Aなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
次に、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の生成に用いられるイソシアネート基含有化合物(b)について説明する。
イソシアネート基含有化合物(b)とは、分子中にイソシアネート基を2個以上有するものを指し、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、その異性体またはこれら異性体の混合物、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略す)。)、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどのジイソシアネートや、ジイソシアネートとトリメチロールプロパンなどの3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクト体、ジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート構造体、ジイソシアネートと水との反応により生成したビュレット体、もしくは、ポリメリックMDIなどが用いられる。
【0027】
イソシアネート基含有化合物(b)としては、本発明のラジカル重合性組成物の硬化物の経時の変色を防止する観点から、分子中にイソシアネート基を2個以上有する脂肪族系のイソシアネート基含有化合物を用いることが好ましく、また、本発明のラジカル重合性組成物を硬化して得られる被膜の表面硬度の向上や耐熱性向上、本発明のラジカル重合性組成物の相溶性向上の観点から、シクロヘキサン環やノルボルネン環を有するイソシアネート基含有化合物を用いることがより好ましい。
【0028】
次に、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の生成に用いられる、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)について説明する。
分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)は、本発明のラジカル重合性組成物を硬化して得られる被膜の硬度を高め、その被膜に耐擦傷性を向上させる効果を付与する観点から必須成分である。
【0029】
分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)の有する重合性不飽和二重結合は、本発明のラジカル重合性組成物を硬化して得られる被膜の表面硬度を一層向上させ、その被膜に優れた耐擦傷性を付与する観点から、2〜5個の範囲内にあることが好ましい。
【0030】
分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびそれらのε−カプロラクトン付加物、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ε−カプロラクタム付加物、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンメタクリルレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの群から選ばれる1種または2種以上が用いられる。
これらの中でも、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンメタクリルレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの群から選ばれる1種または2種以上を用いることが、本発明のラジカル重合性組成物を硬化して得られる被膜の表面硬度を一層向上させ、その被膜に優れた耐擦傷性を付与する観点から特に好ましい。
【0031】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を生成する際、本発明のラジカル重合性組成物の空気による硬化阻害を防ぐ目的で、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)の他に、水酸基含有アリルエーテル化合物を用いてもよい。
【0032】
水酸基含有アリルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどの多価アルコール類のアリルエーテル化合物などが用いられ、これらの中でも水酸基を1個有するアリルエーテル化合物を用いることが好ましい。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、次の2段階の反応工程により生成することができる。
第1段目の反応工程は、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)の水酸基1当量と、イソシアネート基含有化合物(b)のイソシアネート基2当量以上とを反応させることによって、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造とイソシアネート基を有する化合物(c)を生成する工程である。
【0034】
この第1段目の反応工程は、窒素雰囲気下、室温〜100℃程度の範囲にて行うことが好ましい。
また、この第1段目の反応工程は、無溶剤下で行うこともできるが、必要に応じて有機溶剤や、後述するパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)を溶媒として用いることもできる。
【0035】
また、この第1段目の反応工程では、必要に応じて触媒を用いてもよい。
触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネートなどの有機チタン化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレートなどの有機スズ化合物、さらには、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズなどの酸やアルカリなど公知の触媒を用いることができる。
これらの触媒の添加量は、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)とイソシアネート基含有化合物(b)の全仕込み量に対して、10〜10,000ppmであることが好ましい。
【0036】
また、第2段目の反応工程は、第1段目の反応工程で生成した化合物(c)の有するイソシアネート基と、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)の有する水酸基とを反応させる工程である。
【0037】
分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)は、化合物(c)のイソシアネート基1当量に対して、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)の有する水酸基1〜1.5当量の範囲で用いることが好ましい。
【0038】
この第2段目の反応工程は、室温〜90℃程度の範囲にて行うことが好ましい。
また、この第2段目の反応工程は、無溶剤下で行うこともできるが、必要に応じて有機溶剤や、後述するパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)を溶媒として用いることもできる。
【0039】
また、この第2段目の反応工程では、必要に応じて第1段目の反応工程にて用いられる触媒と同様のものを用いることもできる。
また、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)の有する重合性不飽和二重結合のラジカル重合を抑制するために、必要に応じてラジカル重合禁止剤を用いることができる。
【0040】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、d−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、フェノチアジンなどを用いることができる。
ラジカル重合禁止剤の使用量は、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)の全仕込み量に対して、10〜10,000ppmであることが好ましい。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量は、本発明のラジカル重合性組成物の全量に対して、1〜20質量%の範囲内にあることが好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレート(B)の全量に対するウレタン(メタ)アクリレート(A)の質量割合[(A)/(B)]は1/1〜1/50の範囲内にあることが、汚染除去性、耐擦傷性に優れた高硬度な被膜を形成する観点からより好ましく、1/10〜1/50の範囲内にあることが特に好ましい。
【0042】
次に、ウレタン(メタ)アクリレート(B)について説明する。
ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有さないこと以外は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と同様のものであって、イソシアネート基含有化合物(b)と、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)との反応生成物である。
【0043】
したがって、ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)を用いることなく、かつ、上述のウレタン(メタ)アクリレート(A)の生成における反応工程と同様にして、イソシアネート基含有化合物(b)と、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)とを、例えば、窒素雰囲気下、室温〜90℃程度の範囲にて、無溶剤下、有機溶剤下またはパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)の存在下、反応させることによって生成することができる。
ウレタン(メタ)アクリレート(B)の生成に用いられるイソシアネート基含有化合物(b)と分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)としては、上記のウレタン(メタ)アクリレート(A)の生成に用いられるものと同様のものが用いられる。
【0044】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(B)としては、通常、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と別々に生成したものが用いられるが、原料の仕込み割合を調整することによって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と一括して生成したものを用いることが、生産効率を向上する観点から好ましい。
具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を生成する際、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)の使用量に対して、イソシアネート基含有化合物(b)および分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)を過剰に使用することによって、(A)および(B)を一括して生成することができる。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)の含有量は、本発明のラジカル重合性組成物の全量に対して20〜50質量%の範囲内にあることが、高硬度で耐擦傷性に優れた被膜を形成する観点からより好ましい。
【0046】
次に、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)について説明する。
パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)は、本発明のラジカル重合性組成物を硬化して得られる被膜に汚染除去持続性を付与する観点から必須成分である。
このパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)を含まない被膜は、その被膜形成初期であれば比較的良好な防汚性を有するものの、汚染と除去とを繰り返し行うと、経時的防汚性の低下を引き起こす場合がある。
一方、本発明のラジカル重合性組成物は、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)を含有するので、優れた防汚性を長期間にわたって維持することが可能となる。
【0047】
パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)としては、例えば、フッ素化されたアルキル基および/またはアルキレン基を有するアルコールのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルで、アルキル基またはアルキレン基の水素の一部または全部がフッ素によって置換され、かつ、1分子中のアルキル基、アルキレン基、または、これら両基の炭素数の合計が1〜30であるアルコールのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが用いられる。
具体的には、下記の一般式(II)〜(V)で示される化合物が用いられる。
【0048】
【化2】

【0049】
但し、上記の一般式(II)〜(V)において、mは独立して1〜18の整数を表し、nは独立して0〜18の整数を表す。また、上記の化学式(II)〜(V)において、RはHまたはCHCOであり、XはHまたはCHである。
【0050】
上記の一般式で示されるパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)の中でも、特に、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレートを用いることが、ウレタン(メタ)アクリレート(A)との相溶性と、ラジカル重合性とを向上でき、かつ、本発明のラジカル重合性組成物を硬化して得られる被膜に実用上十分な長期にわたる汚染除去性の持続性を付与できるので特に好ましい。
【0051】
パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)の含有量は、本発明のラジカル重合性組成物の全量に対して10〜50質量%の範囲内にあることが、硬化性および汚染除去性の持続性に優れた被膜を形成し、かつ、塗布作業性が良好なラジカル重合性組成物を得る観点から好ましい。
【0052】
次に、架橋剤(D)について説明する。
架橋剤(D)は、本発明のラジカル重合性組成物を硬化して得られる被膜の架橋密度を高め、表面硬度を一層向上させ、優れた耐擦傷性を付与する観点から必須の成分である。また、被膜の架橋密度を高くすることは、被膜が汚染物質を吸収することを防ぐため、防汚性、汚染除去持続性を一層向上させる観点からも、架橋剤(D)は必須の成分である。
【0053】
架橋剤(D)としては、例えば、2個以上の(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリレート用いることが好ましく、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの群より選ばれる1種または2種以上が用いられる。
特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを用いることが、耐擦傷性に優れた高硬度な被膜を形成する観点からより好ましい。
【0054】
架橋剤(D)の含有量は、本発明のラジカル重合組成物の全量に対して10〜50質量%の範囲内にあることが、優れた耐擦傷性と、防汚性および汚染除去性を長期間持続性可能な被膜を形成し、かつ、被膜形成作業性が良好なラジカル重合性組成物を得る観点から好ましい。
【0055】
本発明のラジカル重合性組成物は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(B)、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)、および、架橋剤(D)を、温度60℃以下にて一括して混合、攪拌することによって製造することができる。
また、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)を、ウレタン(メタ)アクリレート(A)やウレタン(メタ)アクリレート(B)を生成する際の溶媒として用いる場合、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)は、予めウレタン(メタ)アクリレート(A)やウレタン(メタ)アクリレート(B)に混合されていてもよい。
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)とウレタン(メタ)アクリレート(B)を一括して製造した場合、それらの混合物とパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)を混合、攪拌することによって、本発明のラジカル重合性組成物を製造することができる。
【0056】
本発明のラジカル重合性組成物は、活性エネルギー線による硬化、過酸化物の使用による加熱硬化、または、過酸化物と還元剤の使用による常温硬化のいずれの硬化方法によっても硬化することができるが、より高硬度な被膜が形成できる観点から活性エネルギー線による硬化が最も好ましい。
【0057】
本発明のラジカル重合性組成物を、活性エネルギー線によって硬化させる場合、硬化剤として光重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンや、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンなどのアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド類、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジンの群より選ばれる1種または2種以上が用いられる。
【0058】
本発明のラジカル重合性組成物を、活性エネルギー線によって硬化させる場合、必要に応じて光重合開始剤とともに、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノンなど公知の光増感剤が用いられる。
【0059】
本発明のラジカル重合性組成物を、過酸化物を使用して加熱硬化させる場合、硬化剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系などの過酸化物が用いられる。
【0060】
また、本発明のラジカル重合性組成物を常温硬化させる場合、上記の過酸化物と、硬化促進剤としてナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルトなどの有機金属塩やジメチルアニリン、ジエチルアニリン、パラトルイジンなどの芳香族アミン化合物とを組み合わせて用いられる。
【0061】
硬化剤の配合量は、本発明のラジカル重合性組成物の100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲内にあることが好ましく、1〜5質量部の範囲内にあることがより好ましい。
【0062】
また、本発明のラジカル重合性組成物は、必要に応じて、重合禁止剤を添加してもよい。
重合禁止剤としては、例えば、トリハイドロキノン、ハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、パラベンゾキノン、トルハイドロノン、p−tert−ブチルカテコール、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどが用いられる。
重合禁止剤の配合量は、本発明のラジカル重合性組成物中、10〜1,000ppmが好ましい。
【0063】
また、本発明のラジカル重合性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、一般に知られている不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂類、アルキッド樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル系共重合体、ポリジエン系エラストマー、飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエーテル類、セルローズ類およびその誘導体、油脂類、その他多の慣用の天然および合成高分子化合物を添加することもできる。
【0064】
本発明のラジカル重合性組成物は、各種基材に対する密着性に優れていることから、各種基材の表面保護などを目的とした被覆材として用いることができる。
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、硬質塩化ビニル、軟質塩化ビニル、ABS樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂やエポキシ樹脂からなるFRPなど公知のプラスチックや木材、金属、コンクリート、アスファルト、ガラス、紙などが用いられる。
前記基材の表面に、本発明の被覆材を塗布し前記した方法で硬化させることによって形成された被膜を有する複合体は、汚染性と汚染除去性とを長期間持続でき、かつ、耐擦傷性にも優れることから、例えば、各種ディスプレイやタッチパネル、磁気記録媒体、建築外装材、プラスチックレンズなどの光学材料として使用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
「合成例1」
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−1)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B−1)との混合物(I)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(商品名:FZ−2191、水酸基価45.9、東レ・ダウコーニング社製)を37質量部(0.03mol)仕込み、ノルボルネンジイソシアネートを206質量部(1mol)加え、発熱を抑制しながら、80℃にて2時間反応させた。
【0067】
イソシアネート基の当量が、ポリシロキサンの有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ123となったのを確認した後、50℃に冷却し、ペンタエリスリトールトリアクリレートを375質量部(1.26mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレートを122質量部(1.05mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.1質量部を加えることによって、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−1)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B−1)との質量割合[(A−1)/(B−1)]が3/37である混合物(I)を得た。
【0068】
「合成例2」
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−2)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B−2)との混合物(II)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(商品名:FZ−2191、水酸基価45.9、東レ・ダウコーニング社製)を24質量部(0.03mol)仕込み、イソホロンジイソシアネートを144質量部(1.0mol)加え、発熱を抑制しながら、80℃にて2時間反応させた。
【0069】
イソシアネート基の当量が、ポリシロキサンの有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ132となり安定した後、50℃に冷却し、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを1619質量部(2.1mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.08質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.2質量部を加えることによって、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−2)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B−2)との質量割合[(A−2)/(B−2)]が2/38である混合物(II)を得た。
【0070】
「合成例3」
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−3)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B−3)との混合物(III)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(商品名:FZ−2191、水酸基価45.9、東レ・ダウコーニング社製)を55.5質量部(0.045mol)仕込み、ノルボルネンジイソシアネートを309質量部(1.5mol)加え、発熱を抑制しながら、80℃にて2時間反応させた。
【0071】
イソシアネート基の当量が、ポリシロキサンの有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ123となり安定した後、50℃に冷却し、2−ヒドロキシエチルアクリレートを365質量部(3.15mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.2質量部を加えることによって、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−3)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B−3)との質量割合[(A−3)/(A−3)]が3/37である混合物(III)を得た。
【0072】
「合成例4」
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−4)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B−4)との混合物(IV)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(商品名:FZ−2191、水酸基価45.9、東レ・ダウコーニング社製)を37質量部(0.03mol)仕込み、ヘキサメチレンジイソシアネートを168質量部(1.0mol)加え、発熱を抑制しながら、80℃にて2時間反応させた。
【0073】
イソシアネート基の当量が、ポリシロキサンの有する水酸基が全てイソシアネート基と反応した場合の理論値とほぼ同じ104となり安定した後、50℃に冷却し、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを2501質量部(2.1mol)加え、反応促進触媒としてスズ触媒を0.08質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.2質量部を加えることによって、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A−4)と、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B−4)との質量割合[(A−2)/(B−2)]が1.7/38.3である混合物(IV)を得た。
【0074】
「比較合成例1」
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(V)の調製
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、および、還流冷却器を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、ノルボルネンジイソシアネートを206質量部(1mol)、ペンタエリスリトールトリアクリレートを375質量部(1.26mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレートを122質量部(1.05mol)仕込み、反応促進触媒としてスズ触媒を0.02質量部添加し、空気雰囲気下、90℃にて7時間反応させた。
そして、未反応のイソシアネート基が0.3質量%以下となった後、ハイドロキノン0.1質量部を加えることによって、ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(V)を得た。
【0075】
「実施例1〜8および比較例1〜4」
上記の混合物(I)〜(V)と、表1および表2に記載のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートと、架橋剤とを、表1および2記載の組成割合にしたがって混合、攪拌することによって、実施例1〜8および比較例1〜4のラジカル重合性組成物を調製した。
【0076】
「被膜作製方法」
実施例1〜8および比較例1〜4で調製したそれぞれのラジカル重合性組成物に、イルガキュアー184(チバ・ジャパン社製)を5質量%溶解したものを、ガラス基板上に厚み約10μmとなるように塗布し、空気雰囲気下、その塗布面にUVランプ120Wメタルハライド1灯(UV照射量1000mJ/cm 1pass)を用いて紫外線を照射し、ラジカル重合性組成物を硬化させることによって被膜を形成した。
【0077】
[被膜性能の評価方法]
得られた被膜の性能を、以下の方法で評価した。
【0078】
[塗膜外観]
得られた被膜の表面を目視により観察し、被膜の透明性を判断した。
被膜構成成分が相溶せず、白化状態のものは、「不相溶」と判断した。
【0079】
[防汚性]
被膜表面に油性マジック(ぺんてるペン、油性、中字黒色)を用いて文字を書き、その文字を乾いた布で拭き取った後の被膜表面の外観を目視により観察した。
油性マジックのインクが被膜表面に全く残っていなかったものを「○」、油性マジックのインクが一部残っていたものの、実用上使用可能なものを「△」、油性マジックのインクが半分以上残っていたものを「×」と評価した。
【0080】
[防汚性および汚染除去性の持続性]
被膜表面に油性マジック(ぺんてるペン、油性、中字黒色)を用いて文字を書き、その文字を乾いた布で拭き取るという作業を被膜表面の同一箇所で繰り返し行い、油性マジックの文字を乾いた布で拭いた後、文字が消えなくなるまでの回数を調べ、防汚性および汚染除去性がどの程度持続するかを調べた。
文字が消えなくなるまでの回数が50回以上であるものを、優れた防汚性などを長期間持続でき、汚れの拭き取りによって防汚性などが低下しないものであると評価した。
【0081】
[表面硬度]
被膜表面の鉛筆硬度をJIS K5600「引っかき硬度(鉛筆法):1000g荷重」に準拠して測定した。
鉛筆硬度が4H以上のものを、表面硬度に優れると評価した。
【0082】
[耐擦傷性]
スチールウール#0000を用いて250g荷重で10往復ラビングした際の被膜の表面外観を評価した。
被膜表面に傷が見られないものを「1」、被膜表面の一部にわずかに傷が見られるものを「2」、被膜表面の一部に目立つ傷が見られるものを「3」、被膜表面に著しく目立つ傷が見られるものを「4」と評価した。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、前記ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)由来の構造を有さないウレタン(メタ)アクリレート(B)、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)、および、架橋剤(D)を含有してなり、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、前記ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)と、分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)が、イソシアネート基含有化合物(b)を介して結合してなるものであることを特徴とするラジカル重合性組成物。
【請求項2】
前記ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)は、ポリシロキサン鎖からなる主鎖に、アルキレンオキサイドの2〜15モル付加物からなるポリアルキレンオキサイド鎖からなる側鎖がグラフト重合したものである請求項1に記載のラジカル重合性組成物。
【請求項3】
前記ポリアルキレンオキサイド鎖を側鎖に有するポリシロキサン(a)は、2個以上のアルキル基またはフェニル基が結合したケイ素原子から構成されるものである請求項1に記載のラジカル重合性組成物。
【請求項4】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(B)の全量に対する前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の質量割合[(A)/(B)]は1/1〜1/50の範囲内にある請求項1に記載のラジカル重合性組成物。
【請求項5】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、前記イソシアネート基含有化合物(b)と、前記分子中に水酸基および少なくとも1個の重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体(d)との反応生成物である請求項1に記載のラジカル重合性組成物。
【請求項6】
前記パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(C)を10〜50質量%含有してなる請求項1に記載のラジカル重合性組成物。
【請求項7】
前記架橋剤(D)は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種または2種以上からなる請求項1に記載のラジカル重合性組成物。
【請求項8】
前記架橋剤(D)を10〜50質量%含有してなる請求項1に記載のラジカル重合性組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のラジカル重合性組成物からなる被覆材。
【請求項10】
基材表面に、請求項9に記載の被覆材を用いて形成された被膜を有する複合体。


【公開番号】特開2010−150349(P2010−150349A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328629(P2008−328629)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(505273017)ディーエイチ・マテリアル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】