説明

ラドンデータから画像関数を再構成する方法

検査領域を通る複数の投射方向に対応する複数の投射プロフィールに基づいて画像関数を再構成する方法であり、各投射プロフィールは一連の値位置を含んでおり、それぞれの投射方向に平行な投射線に対応する測定された投射値はそれぞれの値位置に割当てられ、複数の残りの値位置は空であり、前記方法は(a)投射値に基づいて、複数の補間プロフィールを構成するために第1の補間値を空の値位置に割当て、第1の補間値は異なる投射プロフィールで同じ値位置を有する測定された投射値のグループ内の第1の補間から得られ、(b)補間プロフィールで予め定められた再構成アルゴリズムを適用することにより画像機能を決定するステップを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の予め定められた投射方向に対応して測定された複数の投射関数を含んでいるラドンデータから画像関数を再構成する方法に関する。さらに本発明は前述の再構成方法に基づいて検査領域を撮像する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルの非破壊的検査は材料科学、非破壊検査、医療検査、考古学、建築技術、秘密保護の事柄等のような種々の技術分野で重要な目標である。例えばコンピュータ断層撮影(CT)によるサンプルの画像を得る1方法はX線による異なる投射方向からサンプル平面を照射し、その後異なる方向で測定された減衰データに基づいてサンプル平面を再構成する処理に基づいている。測定された減衰データ全体はラドンスペースにおけるいわゆるラドンデータに関して示されることができる。
【0003】
ラドンデータの異なる再構成方法が今日知られている(例えばテキストブック“Computed Tomography-Fundamentals, System Technology, Image Quality, Applications”、W. A. Kalender(第1版、ISBN 3-89578-081-2);“Image Reconstruction from Projections:The Fundamentals of Computerized Tomography”、G. T. Herman、Academic Press、1980年:“Einfuhrung in die Computertomographie”、Thorsten M. Buzug (Springer-Verlag、Berlin 2004))。通常の再構成方法の技術は反復的な再構成方法および濾波された背面投射方法として要約されることができる。
【0004】
反復的な再構成は複数の反復ステップに基づいた近似方法である。高い解像度の画像の反復的な再構成の基本的な欠点は、反復に非常に長い計算時間がかかることである。濾波された背面投射方法は原則的にラドンデータのフーリエ変換とフーリエ変換された画像データとの関係を示すフーリエスライス定理に基づいている。フーリエスライス定理を使用する一般的な欠点は、再構成の補間ステップがスペース周波数の増加と共に増加する傾向があるエラーおよびアーティファクトを生じることである。この欠点は高い解像度を有する検出器を使用することによってのみ防止されることができる。しかしながら、これらの検出器の応用は線量の負担、価格、データ処理時間に関して限定される。
【0005】
ラドンデータから画像関数を再構成する改良された方法はEP 04031043.5号明細書(本出願の出願日には未出版)に記載されている。このディスク上の直交多項式膨張(以下、OPEDアルゴリズム)を使用する方法では、検査領域を表す画像関数は検査領域を通して複数の予め定められた投射方向に対応して測定された投射プロフィールの値で乗算された多項式の和としてラドンデータから決定される。各投射方向の投射プロフィールは例えば前記投射方向に平行なX線照射ビーム成分の選択されたグループにより検出された投射値(減衰値)で構成される。照射は検査領域に関して異なる視野(または角度位置)でX線源により放射される。EP 04031043.5号明細書に記載されているようなOPEDアルゴリズムにより、投射方向数と各投射プロフィールの投射値数は典型的に視野の数に等しい。
【0006】
OPEDアルゴリズムは特に、コンピュータ処理時間の減少と改良された信号対雑音比を有する画像の生成に関して本質的な利点を有する。さらに画像の解像度は特に数を増加されそれに対応して減少された寸法を有する検出器素子を使用することにより制限されることができる。しかしながら撮像の解像度の改良は視野の数により制限されることができる。視野数が典型的なコンピュータ断層撮影装置によりフルサイクル当り約1.000まで限定されるとき、この値を超える増加された数の検出器素子は自動的に完全な投射プロフィール数を増加しない。視野数が検出器素子の数よりも小さいならば、特定の投射方向に平行な予め定められた投射線は検査領域を通って照射されず、そのため対応する平行ビーム成分は与えられず、関連される投射値は測定されることができない。結果として投射プロフィールは不完全であり、画像は正確に再構成されることができない。対応する欠点が前述の濾波された背面投射方法により生じる可能性がある。
【0007】
OPEDアルゴリズムの特別な欠点は走査形状を変更せずにオブジェクトの領域に対する再構成された領域の調節がOPEDアルゴリズムによっては容易に可能ではないときに生じる可能性がある。特にOPEDアルゴリズムはEP 04031043.5号明細書に記載されているようにオブジェクトへのズームが必要である場合に欠点を有する。1例は人体の一部、例えばCT装置における脚部の撮像により与えられる。ガントリ全体をカバーする扇形ビームの幾らかのビーム成分だけが脚部に衝突し、それ故、投射プロフィールは画像再構成のための僅かの数の測定された値しか含まれない。脚部の外側の多くのデータはゼロに設定され、OPEDアルゴリズムの潜在性全体は使用されない。脚部画像の非鮮明性は扇状ビームと検出器の形状のみを変更することにより避けられることができる。
【0008】
2次元画像の再構成のための別のアルゴリズムは1999年“Phys. Med. Biol.”の44巻、1105−1120頁(T. Bortfeld等)に記載されている。画像は測定された投射プロフィールから再構成され、それらは平行な等距離の投射線に対応する投射値により与えられる。扇状ビーム成分の角度位置は実際の照射源の角度位置と同じではないので、投射プロフィールは補間を含むリビニングステップにより得られる。これは再構成に使用されるシノグラムでは、大部分の位置は空であり、補間は測定された値を直接使用しない近傍間の全てのこれらの位置で使用される。しかしながら、OPEDアルゴリズムの前述の潜在的な問題はT. Bortfeldの再構成技術で解決されることができない。
【0009】
前述の欠点は通常のCT画像再構成だけではなく、ラドンデータに基づいた全ての他の画像再構成とも関連される。
【発明の開示】
【発明の解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的はラドンデータから画像関数を再構成し、前述の再構成および撮像技術の欠点を避け、非破壊的検査の応用の範囲を増加することである。特に本発明の目的は検査下のオブジェクトを照射するため限定された数の視野でさえも改良された撮像解像度を有する画像関数を生成する再構成方法を提供することである。本発明のさらに別の目的の特徴はラドンデータの集収に基づいて前述の撮像方法の欠点を避ける改良された撮像方法を提供することである。特に撮像方法は解像度の損失なく、限定された扇状角度でのオブジェクトの照射を可能にしなければならない。さらに特別な特徴によれば、本発明の目的はオブジェクトにズームすることを可能にする撮像方法を提供することである。
【発明の要約】
【0011】
前述の目的は請求項1または11の特徴を含む方法で実現される。本発明の有効な実施形態および応用は従属請求項で規定されている。
【0012】
第1の特徴によれば、本発明は検査領域を通って複数の投射方向に対応する複数の補間された投射プロフィール(補間プロフィール)に基づいて画像関数を再構成する一般的な技術に基づいている。補間プロフィールはそれぞれの投射方向と平行な照射線に対応する測定された投射値と非照射投射線で与えられる補間値で占有されている一連の値位置を含んでいる。視野数が検出器素子数よりも少ないならば、測定されることができない投射値は補間(いわゆる第1の補間)により得られる。空の値位置を含んでいる測定された投射プロフィールは第1の補間により完成される。有効に、視野数は例えば撮像期間中の放射量を減少するために減少されることができ、および/または検出素子の寸法は例えば撮像解像度を増加するために減少されることができる。
【0013】
特に本発明の方法は測定された投射プロフィールに基づいて複数の補間プロフィールを構成し、補間プロフィールの値で乗算された多項式の合計として画像関数を決定するために第1の補間値を空の値位置に割当てるステップを含んでいる。補間プロフィールに基づいて、画像関数は予め定められた再構成アルゴリズム、例えば前述のOPEDアルゴリズムを使用して計算される。この場合、画像関数は直交リッジ多項式の和に基づいて決定される。したがってEP 04031043.5号明細書に記載されているOPEDアルゴリズムの利点は本発明の撮像方法で完全に得られることができる。代わりに、画像関数は通常の反復的な再構成または濾波された背面投射方法を使用して計算される。
【0014】
本発明によれば、第1の補間値は異なる投射プロフィールに属する、即ち異なる投射方向または異なる視野に属する測定された投射値のグループ内でそれぞれ行われる補間ルーチンを含んでいる第1の補間から得られる。第1の補間は隣接する投射プロフィールで等しい値位置を有する測定された投射値間の空の値位置を満たすための近似を含んでいる。
【0015】
用語「検査領域(ROI)」は通常撮像されるオブジェクトまたはその一部分を指している。通常、ROIは2次元のエンティティとして説明されることができる。オブジェクトの3次元画像の再構成では、複数のROIが撮像される。用語「投射方向」は通常、3次元空間におけるROIを通って少なくとも1つのエネルギ入力ビームまたはビーム成分の直線のコースを指している。投射方向は使用される座標系に関して角度により規定されることができる。用語「視野」は特定の投射方向によりROIを照射するためにROIに関する例えばX線源のようなエネルギ入力ビーム源の幾何学的な配置(または扇状ビーム形状の角度位置)を指している。
【0016】
ROIで測定されるラドンデータは1セットの投射関数を有し、これはROIを通る複数の予め定められた投射方向に対応して決定される。各投射関数は、現在の投射方向に平行な「投射」の理論上無限大のある番号で集収されるデータを含んでいる。これらの投射は1次元の線上で積分することにより特徴付けされる。これらの積分された「投射」の十分な数を測定し、補間値を加算することによって、オブジェクトの画像関数はラドンデータから再構成されることができる。
【0017】
実際におけるディスクリートなデータ集収のために、投射関数はここでは投射プロフィールとして示される。各「プロフィール」は現在の投射方向に平行な「投射」にしたがった測定された値または補間値によって占有されている一連の値位置を有している。値位置の数はROIを通る扇状ビームのビーム成分を検出する検出器素子の数に対応している。投射プロフィールの測定された値は例えばそれぞれの投射方向に沿ってROIを伝播するエネルギ入力ビームの変更(特に例えば吸光または散乱による減衰)により決定される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、補間プロフィールはさらに補間(いわゆる第2の補間)を受ける。特定の応用に応じて、第2の補間が完全な補間プロフィールまたはROIの予め定められた部分に対応する補間プロフィールの部分に対して行われる。第2の補間は補間プロフィールの値位置間の中間位置を充填するための近似を含んでいる。したがって第2の補間はそれぞれが測定された投射値と、補間プロフィールの1つに属する第1の補間値のグループ内で行われる複数の補間ルーチンを含んでいる。第2の補間では、ROIまたはその部分へのフレキシブルなズームを行う利点が得られる。
【0019】
与えられた補間手順のタイプに関して特別な限定は存在しない利点がある。特定の応用に応じて、第1と第2の補間の少なくとも一方は例えば線形補間を含むことができ、ここでは補間値は隣接するプロフィール値間の線形の近似または例えば任意の多項式の近似で計算される。本発明の特に好ましい実施形態により、第1と第2の補間の少なくとも一方がスプライン補間であるならば、高い画像品質を生じる近似品質に関して利点が得られる。第1および恐らく第2の補間値は3次元スプライン補間から得られることができる。3次元スプライン関数(n=3)は安定性(概算スプラインの振動を防止する)、改良された円滑さおよび簡単な計算に関して特別な利点を有する。代わりに補間値はn>3の次数nのスプライン関数によるスプライン補間から得られる。
【0020】
本発明のさらに別の有効な実施形態によれば、少なくとも1つの補間パラメータは画像の再構成前または再構成期間中に設定(調節)される。用語「補間パラメータ」とは第1と第2の補間の少なくとも一方の任意の特徴または品質、例えば補間関数の次数または補間のタイプ等を指している。この実施形態の基本的な利点は画像再構成の品質が例えば検査されるROIのオブジェクトまたは一部に応じて最適化されることができることにより与えられる。特に、少なくとも1つの補間パラメータは検査領域の予め決定された幾何学的特徴に応じて調節されることができる。したがって第1および第2の補間はROI中で発見される特別な特徴に対して適合されることができる。
【0021】
本発明の特別な好ましい実施形態によれば、補間プロフィールの構成ステップは補間プロフィールの再スケールを含んでいる。補間プロフィールの再スケールはOPEDアルゴリズムが適用されるユニットディスクへROIまたはその一部の形状サイズを適合することを含んでいる。したがってズームの効果はビーム位置(視野位置)の数を増加せずに得られることができる。再スケールは検査領域を含めた補間プロフィールの拡張を含んでおり、それによってOPEDアルゴリズムを適用するユニットディスクはカバーされる。
【0022】
有効に、本発明の再構成方法はX線コンピュータ断層撮影(CT)からだけではなく、例えば超音波断層撮影、PET撮像、光断層撮影、ガンマ線撮像、SPECT撮像または中性子ベースの透過検出のような他の技術からの画像関数を計算するために適用されることができる。
【0023】
本発明の第2の一般的特徴によれば、ROIを撮像する撮像方法が提供され、少なくとも1つのエネルギ入力ビームが検査領域を通る予め定められた照射方向に誘導され、投射プロフィールは照射方向に対応して決定される。ROIを表す画像関数は投射プロフィールに本発明の再構成方法を行うことにより再構成される。
【0024】
本発明の撮像方法はラドンデータの提供に使用される異なるタイプのエネルギ入力ビームが与えられることができる。ここで使用される用語「エネルギ入力ビーム」は伝送されるエネルギがROIとの相互作用により変化される間に、ROIを通る直線(または基本的に直線)に沿って伝播する全てのタイプの物理量を指している。特に用語「エネルギ入力ビーム」は電磁放射または粒子放射をカバーする。好ましくは、エネルギ入力ビームはX線を含んでいる。X線源装置がエネルギビーム源装置として使用されるならば、少なくとも1つの補間回路が設けられているコンピュータ断層撮影装置が本発明の撮像方法を行うために使用されることができる。
【0025】
好ましくは少なくとも1つのエネルギ入力ビームは複数の扇状またはコーン状ビーム成分を含んでいる少なくとも1つの扇状またはコーン状ビームを含んでいる。各測定された投射プロフィールは同じ投射方向により関連されるが扇状ビームの異なるセットに含まれている平行な投射線に沿った扇状ビーム成分により測定された投射値を有しているが、異なる扇状ビームのセットに含まれている。投射プロフィールは単に集収された検出器データから関連される投射値を選択することにより構成されることができる利点がある。本発明の明細書では、平面の扇型放射分布を有する扇状ビームを参照する。本発明は複数のコーン状ビーム成分を含んでいる少なくとも1つのコーン状ビームを有する少なくとも1つのエネルギ入力ビームと等価の方法で実行されることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態により、可動の放射源の使用により1つの単一扇状ビームで照射方向が設定されるならば、利用可能な照射技術の適用に関する利点が得られる。照射方向はオブジェクトの周囲で放射源を回転することによりその後調節されることができる。
【0027】
撮像方法の適用にしたがって、リクエストされた画像情報を適切なフォーマットで提供するためのさらに別の手順ステップを後続させることができる。好ましくは、画像関数の近似は例えば少なくとも2次元または3次元の画像または対応するビデオ表示(動画)により視覚化された画像として表される。代わりに、画像関数は例えば予め定められた特徴を自動的に検出するためのさらに別の画像処理を受けることができる。従来技術の画像処理方法は本発明により決定された画像関数について適用されることができる利点がある。視覚化された画像の提供は例えば画像関数の値をグレー値に変換することによりオブジェクトの視覚化を計算するステップを含んでいる。
【0028】
本発明の好ましい応用は材料科学、非破壊的撮像、非破壊的検査、医療検査、考古学、建築技術、秘密保護の事柄に関する技術のような技術分野に存在する。したがって撮像されるオブジェクトは例えば生物的有機体またはその一部、流体組成物、固体材料、ワークピースおよび/または秘密保護の理由で検査されるオブジェクトを含んでいる。
【0029】
さらに、本発明の独立した主題は、本発明の再構成方法を実行するためのプログラムコードによりコンピュータが読取可能な媒体に存在するコンピュータプログラムと、本発明の再構成方法を実行するためのプログラム命令を含んでいるコンピュータが読取可能な記憶媒体を具備する装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のさらに詳細な説明と利点を添付図面を参照して以下説明する。
本発明をコンピュータ断層撮影の好ましい応用を参照して以下説明する。本発明は(例えばVISまたはIR範囲における例えば中性子または光のような)他のタイプのエネルギ入力ビームの応用で類似の方法で実行されることができることを強調する。さらに好ましい実施形態の以下の説明は主としてデータ集収およびデータ処理を含めた補間プロフィールを構成する原理を参照する。本発明の実行に使用されるCT装置の構造および動作の詳細はそれらが通常のCT装置から知られているので説明しない。
【0031】
さらに、本発明をOPEDアルゴリズムの好ましい応用を参照して以下説明する。EP 04031043.5号明細書に記載されているような画像構成のためのOPEDアルゴリズムの説明は本発明の明細書では参考文献とされる。画像関数が通常の反復再構成または濾波された背面投射方法を使用して計算されるならば、照射方式はこれらのアルゴリズムの要求に適合されることができる。
【0032】
本発明の実施形態を概略的な実寸大ではない図面を参照にして説明する。照射形状の詳細な特徴、例えば照射ビーム成分の数、厚さ、角距離またはX線源の回転速度は撮像の特定のタスクにしたがって当業者により選択されることができる。
【0033】
[1.本発明による画像再構成]
図1では本発明の撮像方法を実行するステップが要約されている。第1に検査されるオブジェクト、例えば患者の身体の頭部または別の部分が準備される(ステップS1)。オブジェクトの準備はオブジェクトをCT装置中の保持装置上に位置させ、それによって検査領域がCT装置のソース検出器ユニットと整列される処理を含んでいる。
【0034】
その後、オブジェクトは照射を受ける(ステップS2)。X線源はオブジェクトおよび検出器装置の方向へ導かれる扇状またはコーン状X線ビームを発生するように動作される。検出器装置は例えばCT装置のガントリの周辺に固定した分布で配置されているそれぞれが複数の検出器素子を有する平坦なパネル検出器のアレイを具備している。その代わりに、検出器装置は例えば複数の検出器素子を有する1つの単一の平坦なパネル検出器で構成されている。この場合、検出器装置はガントリの周囲でソース検出器ユニットと共に回転される。さらにステップS2は積分された減衰値を測定することを含んでおり、検出器装置によって受信されたX線が検出される。
【0035】
ステップS2はオブジェクトを透過するX線を照射する複数の投射方向で投射値を測定ために連続的に反復される。投射方向は例えばガントリの周囲でソース検出器装置を回転することにより設定される。ステップS2は自動的にデータの打切りを含んでいる。検出器装置の形状のために、ディスクリートな減衰値データが記録される。ステップS1とS2の少なくとも一方の期間中に、オブジェクトはさらにコントラストエージェントの付加または介入により操作されることができる。本発明のこの実施形態は特に撮像方法の医療応用でダイナミックな画像の集収または変化するオブジェクトの撮像で特に利点を有する。
【0036】
検出器装置で測定される投射値は投射プロフィールを構成し(ステップS3)、補間プロフィールを構成することにより投射プロフィールを完成し(ステップS4)、ROIの画像を再構成するためデータ処理する(ステップS5)ステップを受ける。ステップS4は計算された補間プロフィールの再スケールを含むことができる。補間プロフィールがOPEDアルゴリズムの適用に使用されるユニットディスクをカバーするようにROIの直径は再スケールされる。各投射プロフィールは検出器装置で測定されたビーム成分の割当て(または再分類)により得られる複数の平行な投射を含んでいる。この割当てにより、扇状ビーム形状は特にOPEDアルゴリズムまたは濾波された背面投射方法によりラドンデータからの画像の再構成で必要とされるとき平行な形状になる。
【0037】
投射プロフィールを構成するステップ(ステップS3)を以下さらに詳細に説明する。図2は回転する扇状ビームによるオブジェクト(ROI2、内部ディスク)の照射を概略的に示している。EP 04031043.5号明細書に記載されている照射および検出条件により、完全なラドンデータが図3に示されているように得られる。増加された解像度でROI2を撮像するために、検出条件は変更され(図4)、本発明による第1の補間を受ける測定されるラドンデータ(図5)を不完全にする(図6)。
【0038】
(EP 04031043.5号明細書に対応する)図2では、平行なX線ビームのグループに対するX線ビーム成分のファンの割当てが概略的に示されている。図2の外側の円(ユニットディスク)の周囲の黒い円は扇状ビーム成分を放射するX線源11の中心位置Qを示している。各位置QはROI2を通る1つの視野を提供する。実際には、CT装置の視野数は例えば500乃至1000の範囲である。空の円は少なくとも1つの検出器素子25の中心位置Dを示している(EP 04031043.5号明細書に記載されている)。この構成によれば、視野数は検出器素子の位置の数に等しい。ROI2(内部ディスク)との交差を有する線だけが示されている。X線源11と検出器素子25の位置QとDは等しい角度間隔を有する。この形状ではX線源11から検出器素子25へ放射されるX線ビーム成分は自動的に平行な光線を与える。
【0039】
1例として、破線Lは平行ビームの第1のセットを表している。(下からの)Lの第1の線はX線源11の位置Qで放射された扇状ビームの第1のビーム成分に対応し、Lの第3の線はX線源11の変更された位置Qで放射された扇状ビームの第3のビーム成分に対応する。X線源11と検出器素子25の位置が奇数のために、Lの第2の線は反対の照射方向で位置Qから得られることができる。EP 04031043.5号明細書を特にX線源11の各位置の扇状ビームの非平行な扇状ビーム成分の再分類についての更に詳細に関して本発明の明細書で紹介している。
【0040】
図2で示されているような割当てから得られる平行線のセットでは、平行な破線Lは平行方向に垂直で、ユニットディスクの原点に中心を有する軸上のチェビシェフの点cos[(2j+1)π/(2m+1)]、j=0,1,…,2mに位置されている。EP 04031043.5号明細書について特にチェビシェフの点のさらに詳細な説明に関して本発明の明細書で紹介する。
【0041】
放射源の異なる位置の検出器素子によって測定される投射値はディスクリートな投射プロフィールで配置され、それによって同一の投射方向で測定されている全ての投射値は同じ投射プロフィールに貢献する。
【0042】
図2の左部分には、検出器素子25のグループGが示されており、これは1つの特定の投射方向にしたがって1つの投射プロフィールの投射値を提供する。各検出器素子25は投射プロフィールの1つの位置(値の位置)と関連される。ROI2との交差を有する投射だけが測定されるので、投射プロフィールは7つの値位置だけを含んでいる。実際に、投射プロフィールは例えば50乃至1000の値位置を含んでいる。X線源11の位置の数(視野の数)が検出器25の数に等しく、各検出器25が1つの減衰値を提供するならば、投射プロフィールは完全に充填される。この状態はEP 04031043.5号明細書に記載されている技術によって実現される。
【0043】
図3は検出器素子25の複数のグループGのいわゆるシノグラム表示を示しており、各グループGはN個の投射方向の別の1つに関する。このシノグラム表示はEP 04031043.5号明細書に記載されている形状に対応する。全ての検出器素子25はX線源11の位置のうちの1つで扇状ビーム成分と衝突される。したがって投射プロフィールの全ての値位置は占有され、図3のシノグラム表示は完全に充填される。
【0044】
図4の(A)および(B)は本発明により、増加されたローカル解像度でROIを撮像するための修正された検出状態を示している。ユニットディスクはX線源11の理論的および/または実際的位置Q、Dと検出器装置の検出器素子25.1、25.2、25.3,…とを示す小さい円と大きい円により表されており、等しい角度間隔で分離されている。図2のように、X線源11から検出器素子25へ放射されるX線ビーム成分は自動的に平行な線を提供する。等しい角度間隔で分布されている大きい円は扇状ビーム成分を放射するX線源11の位置Qを示している。大きい円と小さい円は扇状ビーム成分が検出器素子25.1、25.2、25.3,…で検出されることができる全ての位置Dを示している。視野(大きい円)の数は検出器素子位置(全ての円)の数よりも小さい。示されている例では、検出器素子の位置の数と視野の数との比率は3である。
【0045】
実際に1つの単一のX線源11は種々の円の位置に回転される。照射および投射プロフィールの構造が対称的であるため、扇状ビームは黒い大きい円Qでのみ放射される。各位置QはROIを通じて1つの視野を提供する。この形状では、CT装置中の視野の数は例えば500乃至1000の範囲で選択されることができる。
【0046】
ROIの画像を構成する各投射プロフィールは複数の平行な投射を含み、これらは検出器装置によって測定されたビーム成分の割当て(または再分類)により得られる。視野の数が実際的な理由で検出器素子の位置の数よりも小さいので、平行な扇状ビーム成分のグループへX線源11の各位置の扇状ビームの非平行な扇状ビーム成分を再分類することは図4の(A)および(B)に示されているように不完全な投射プロフィールを生じる。
【0047】
図4の(A)に示されている特定の投射方向では、平行な扇状ビーム成分は3毎の検出器素子でのみ検出されることができる。1例として位置DとDの検出器素子25.1と25.4によって平行な扇状ビーム成分が検出されることができ、一方位置DとDの検出器素子25.2と25.3によって、X線源11が扇状ビームを放射する位置がないので、扇状ビーム成分は検出されることができない。
【0048】
投射方向が変更されるならば、再分類方式は図4の(B)に示されているように平行な扇状ビーム成分の別の分布を生じる。平行な扇状ビーム成分は4つの検出器素子のグループによって分離された2つの隣接する検出器素子だけで検出されることができ、扇状ビーム成分は検出されない。さらに別の例として、位置DとD10の検出器素子25.5と25.10では、平行な扇状ビーム成分が検出されることができ、一方、位置D6乃至Dの検出器素子25.6と25.9によっては、扇状ビーム成分は検出されることができない。
【0049】
通常、N個の視野とmN検出器素子によっては、N個の平行な投射線だけが平均して検出されることができ、(m−1)N個の投射線は照射されない。その結果、mNの数の値位置を有する測定された投射プロフィールは(m−1)N個の空の値位置を含んでいる。
【0050】
図5の(A)は複数の投射プロフィールのシノグラム表示を示しており、それぞれがmN個の可能な投射方向φ1、φ2、φ3、φ4、φ5…のそれぞれ別のものに対応している。各垂直の条帯は1つの投射プロフィールを表しており、これは同じ投射方向に属す平行な扇状ビーム成分を検出する検出器素子によって形成されている。投射プロフィールは投射プロフィールに影響する検出器素子に対応している複数の位置(画素)を含んでいる。黒および白の画素はそれぞれ照射されたおよび照射されない検出器素子に対応する値位置を表している。
【0051】
前述のステップS3にしたがって、投射プロフィールは測定された投射値によって構成されている。図3と対照的に、図5の(A)および(B)のシノグラム表示は完全に充填されていない。投射プロフィールにおける値位置の占有が新しい投射方向毎にシフトされるので、測定された投射値を与える値位置と空の値位置は予め定められたパターンを与える。図4の(A)および(B)の例では、投射プロフィールは投射方向にしたがって変化する分布する空の位置を含んでいる。投射方向φ2とφ5の投射プロフィールは図4の(A)に対応し、投射方向φ1、φ3、φ4の投射プロフィールは図4の(B)に対応する。
【0052】
投射プロフィールを構成するため、ROIを透過された扇状ビーム成分だけが使用される。ROI外の扇状ビーム成分は検出されない。したがって、完全なシノグラム表示は図5の(B)に示されているように広い白色の領域を含んでいる。
【0053】
前述のステップS4によれば、補間プロフィールは第1の補間により空の値位置(黒色画素)を充填することにより投射プロフィールを基礎として構成される。したがって、異なる投射プロフィールで同じ値位置を有する測定された投射値が考慮される。1例として、検出器素子25.5の値位置を有する投射値のグループは矢印で示されている。第1の補間は異なる投射プロフィール中で同じ値位置を有する測定される投射値の各グループ内で行われる。空の位置は補間値で充填され、シノグラム表示は図6で示されているように画素で完成されている。前述のステップS4の結果として、測定される投射値と補間値を含んだ補間プロフィールが得られる。
【0054】
随意選択的に、補間プロフィール(図1)を計算するステップS4は各補間プロフィール内のチェビシェフ点の数を増加するためのさらに別(第2)の補間を含んでいる。本発明のこの実施形態はCT撮像のズーム関数を提供する基本的な利点を有する。測定される投射値とそれぞれの補間プロフィールの第1の補間値のグループ内で、サブ値位置が計算される。
【0055】
第2の補間は人体の一部内の特定の器官のようなROIのある部分に限定されることができる。この場合、各補間プロフィールの一部だけが第2の補間を受けることができる。
【0056】
前述のステップS5によれば、ROIまたはその一部はOPEDアルゴリズムによって再構成され、それはステップS4で得られる補間プロフィールに適用される。EP 04031043.5号明細書に記載されているようなOPEDアルゴリズム画像構成の説明を本発明の明細書で参考文献として紹介する。
【0057】
[2.3次元画像の記録]
本発明の検出形状では、オブジェクトの3次元画像を得るために螺旋状の投射データが処理されることができる。したがって、オブジェクトとソース検出器ユニットの少なくとも一方は螺旋状の投射データを得るためにオブジェクトを照射するステップS2の期間中に予め定められた方向、即ち投射方向に垂直な方向に変換される。好ましくは、検査下のオブジェクト、例えば患者はCTガントリを通ってシフトされ、連続的に動いている患者台上に横たわり、検出器装置は前述したように使用されることができる。
【0058】
この方法により、空の値の位置を有する投射プロフィールを含んでいるいわゆる螺旋状または渦巻状のCTデータセットが集められることができ、その投射プロフィールは前述したように第1および随意選択的には第2の補間を受ける。特に、螺旋状のCTデータセットはオブジェクトの3次元画像に組み合わされる2次元の画像の積層体を得るため前述した方法と類似の方法で再構成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による撮像方法の1実施形態を示すフローチャート。
【図2】本発明による補間プロフィールを構成する原理を示す図。
【図3】本発明による補間プロフィールを構成する原理を示す図。
【図4】本発明による補間プロフィールを構成する原理を示す図。
【図5】本発明による補間プロフィールを構成する原理を示す図。
【図6】本発明による補間プロフィールを構成する原理を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査領域を通る複数の投射方向に対応する複数の補間された投射プロフィールに基づいて画像関数を再構成する方法において、
各投射プロフィールが複数の検出器素子を有する検出器装置で測定され、一連の値位置を含み、その数は検出器素子の数に等しく、
それぞれの投射方向に平行な投射線に対応する測定された投射値が関連された値位置に割当てられ、
投射方向の数は検出器素子数よりも少なく、複数の残りの値位置は空であり、
測定された投射プロフィールに基づいて複数の補間プロフィールを構成するために第1の補間値を空の値位置へ割当て、第1の補間値は異なる投射プロフィールで同じ値位置を有する測定された投射値のグループ内の第1の補間から得られ、
予め定められた再構成アルゴリズムを補間プロフィールで適用することにより画像関数を決定するステップを含んでいる方法。
【請求項2】
各補間プロフィールではさらに、
測定された投射値とそれぞれの補間プロフィールの第1の補間値のグループ内の第2の補間により第2の補間値を生成するステップを含んでいる請求項1記載の再構成方法。
【請求項3】
第1と第2の補間値の少なくとも一方はスプライン補間から得られる請求項1または2記載の再構成方法。
【請求項4】
第1と第2の補間値の少なくとも一方はn>3の次数nのスプライン関数を有するスプライン補間から得られる請求項3記載の再構成方法。
【請求項5】
さらに、少なくとも1つの補間パラメータを調節するステップを含んでいる請求項1乃至4のいずれか1項記載の再構成方法。
【請求項6】
少なくとも1つの補間パラメータは検査領域の予め定められた形状特性にしたがって調節される請求項5記載の再構成方法。
【請求項7】
補間プロフィールを構成するステップは、
補間プロフィールの再スケールのステップを含んでおり、その再スケールのステップによって各補間プロフィールは検査領域を含む予め定められたユニットディスクをカバーする請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
再構成アルゴリズムの適用は測定された投射値で乗算された多項式と第1の補間値の和として画像関数を決定するステップを含んでおり、多項式は直交リッジ多項式の和である請求項1乃至7のいずれか1項記載の再構成方法。
【請求項9】
再構成アルゴリズムの適用は濾波された背面投射または反復的な再構成方法により画像関数を決定するステップを含んでいる請求項1乃至7のいずれか1項記載の再構成方法。
【請求項10】
前記画像関数は、
X線コンピュータ断層撮影(CT)装置と、
超音波断層撮影装置と、
PET撮像装置と、
光断層撮像装置と、
ガンマ線撮像装置と、
SPECT撮像装置または、
中性子ベースの透過検出システムとで測定されるラドンデータから決定される請求項1乃至9のいずれか1項記載の再構成方法。
【請求項11】
オブジェクトの検査領域を撮像する撮像方法において、
少なくとも1つのエネルギ入力ビームを検査領域を通る予め定められた照射方向に誘導し、
検査領域を通る複数の予め定められた投射方向に対応する投射プロフィールを決定し、各投射プロフィールは同じ投射方向を有する複数の投射線に対応する測定された投射値を含んでおり、測定された投射値は複数のエネルギ入力ビームにより測定された減衰値を含み、各投射プロフィールは一連の値位置を含み、それぞれの投射方向に平行な投射線に対応する測定された投射値はそれぞれの値位置を割当てられ、複数の残りの値位置は空であり、
投射プロフィールに対して請求項1乃至10のいずれか1項記載の再構成方法を行うことにより検査領域を表す画像機能を再構成するステップを含んでいる方法。
【請求項12】
少なくとも1つのエネルギ入力ビームはそれぞれが複数の扇状ビーム成分を含んでいる扇状ビームのセットを含み、
各投射プロフィールは同じ投射方向を有するがディスクリートな扇状ビームの異なるセットに含まれている平行な投射線を有する扇状ビーム成分に対応する減衰値を有している請求項11記載の撮像方法。
【請求項13】
照射方向はオブジェクトの周囲で回転される可動の放射源を使用することによりその後設定される請求項11または12記載の撮像方法。
【請求項14】
画像関数の近似を得られる視覚化された画像として表すステップをさらに含んでいる請求項11乃至13のいずれか1項記載の撮像方法。
【請求項15】
オブジェクトは、
生物的有機体またはその一部と、
流体組成物と、
固体材料と、
ワークピースと、および/または、
秘密保護の理由で検査されるオブジェクトとを含んでいる請求項11乃至14のいずれか1項記載の撮像方法。
【請求項16】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の方法を実行するためのプログラムコードによりコンピュータが読取可能な媒体に存在するコンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の方法を実行するためのプログラム命令を含んでいるコンピュータが読取可能な記憶媒体を具備する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−529394(P2009−529394A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558716(P2008−558716)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002257
【国際公開番号】WO2007/104552
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(398061245)ヘルムホルツ・ツェントルム・ミュンヒェン・ドイチェス・フォルシュンクスツェントルム・フューア・ゲズントハイト・ウント・ウムベルト(ゲーエムベーハー) (19)
【氏名又は名称原語表記】Helmholtz Zentrum Muenchen Deutsches Forschungszentrum fuer Gesundheit und Umwelt (GmbH)
【出願人】(502418376)ザ ステイト オブ オレゴン, アクティング バイ アンド スルー ザ ステイト ボード オブ ハイヤー エデュケイション オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ オレゴン (5)
【Fターム(参考)】