説明

ラビリンスシール装置、およびそれを用いたターボ機械

【課題】シール内の非対称圧力分布の発生を抑制し、回転軸の不安定振動を抑制すると共に、シール性を確保できるラビリンスシール装置を提供する。
【解決手段】シールリング13と、複数のシールフィン11とを有し、シールリング13とシールフィン11とによって回転軸2の外周に形成されたリング状のチャンバー12により、回転軸2の外周に沿って流れる漏れ流れLSを抑制するラビリンスシール装置において、シールリング13のチャンバー12の外周側に、回転軸2の周方向に延伸し、チャンバー12と周方向に間隔を空けて連通し、チャンバー12内の漏れ流れを周方向に一時的に逃す空隙部14を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービン等の高速,高圧ターボ機械に好適なラビリンスシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン等のターボ機械では、回転軸を収めたケーシングから作動流体が回転軸に沿って漏れることを防止するために、回転軸とケーシングとの間にラビリンスシールが設けられることが多い。
ラビリンスシールは、一般的に、回転軸の軸方向に複数のシールフィンを有しており、これらのフィンとフィンの間に回転軸の外周に沿うように圧損用空隙が形成されている。ラビリンスシールは、この圧損用空隙により、シール内を流下する漏れ流れに圧力損失を生じさせ、この圧力損失により漏れ流れを抑制することでシール機能を発揮するようになっている。
【0003】
こうしたラビリンスシールでは、シール内を流下する漏れ流れにより回転軸の不安定振動が発生する可能性がある。具体的には、ラビリンスシール内の漏れ流れは、回転軸の回転によるつれ回り効果により、回転軸の回転と同方向の回転方向流れを伴う。この回転方向流れは、振動変位した回転軸に対して回転方向上流側に高圧部を形成し非対称圧力分布を発生させる。回転軸の回転速度が速いほど回転方向流れの流速が大きくなるが、前記圧力分布は回転軸の振動変位に対して直角方向の流体力を流速に応じた強さで発生させる。このため蒸気タービンなどの高圧ターボ機械では、高速回転時に回転軸の振動変位に対して直角方向に働く流体力が回転軸を回転方向に振れ回らせるように作用する。その結果、回転軸の振動安定性が低下して不安定振動が発生する可能性がある。
【0004】
このようなラビリンスシールに関する回転軸の不安定振動問題は、回転軸の振動変位により発生する非対称圧力分布を抑えることで解消することができる。非対称圧力分布を解消する技術としては、例えば特許文献1及び2に開示の技術が知られている。
【0005】
特許文献1のラビリンスシールでは、シールフィン間に圧損用空隙であるチェンバーが形成されており、高圧のチェンバーと低圧のチェンバーとを連通する蒸気通路をシールリングに設けている。蒸気通路を用いて高圧のチェンバー内の漏れ流れの一部を低圧のチェンバーに逃すことで、漏れ流れの旋回流を抑制するとしている。
【0006】
特許文献2には、ハニカムシールにおける非対称圧力分布を解消する技術が開示されている。このハニカムシールでは、当該シール開口端より離れた部分に周方向へ連通する空間部を設け、圧損用空隙内圧力の周方向非対称分布を均一化して不安定振動に起因する流体力を抑制するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−319804号公報
【特許文献2】特開昭58−152974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に開示されたラビリンスシール構造では、回転軸の軸方向に蒸気通路を設けて高圧のチェンバーと低圧のチェンバーとを連通させているため、下流側への漏れ量が増え、シール性が低下する可能性がある。
【0009】
さらに上述した特許文献2に開示されたハニカムシール構造では、圧損用空隙であるチャンバーに周方向に連通する空間を設けることにより周方向圧力分布の均一化ができる反面、ラビリンスシールでは既にチャンバーが周方向に連通している構造になっているため、この構造はラビリンスシールには適用できない。
【0010】
また、特許文献2に記載された従来技術では、特許文献1と同様に回転軸の軸方向にもチャンバーが連通しているため漏れ量が増え、シール性が低下する可能性があるが、この点については、上記従来技術では考慮されていない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、シール内の非対称圧力分布の発生を抑制し、回転軸の不安定振動を抑制すると共に、シール性を確保できるラビリンスシール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、回転体と該回転体を内包する静止体との間に設けられ、前記静止体に固定されたシールリングと、該シールリングに前記回転体軸方向に複数設けられた前記回転体半径方向に突出するシールフィンとを有し、前記回転体軸方向に複数設けられたシールフィンの間にリング状のチャンバーを形成するラビリンスシール装置において、前記チャンバー内の漏れ流れを、前記チャンバーの外周側、かつ、前記回転軸周方向に一時的に逃す圧力緩和手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のラビリンスシール装置によれば、チャンバー内の旋回する漏れ流れを、チャンバーの外周側、かつ、回転軸周方向に一時的に逃すことで、チャンバー内の圧力上昇部から圧力を逃がし、圧力上昇によるシール内の非対称圧力分布の発生を抑制し回転軸の不安定振動を抑制できると共に、シール性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】蒸気タービンの要部を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るラビリンスシールの軸方向断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るラビリンスシールの軸直角断面図である。
【図4】図3に示したX−X断面図である。
【図5】従来のラビリンスシールのチャンバー内圧力分布を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係るラビリンスシールのチャンバー内圧力分布を示す模式図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るラビリンスシールの軸方向断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例に係るラビリンスシールの軸直角断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例について図1乃至図6を用いて説明する。本実施例は、本発明を蒸気タービンに用いるラビリンスシール装置に適用した例である。
【0017】
まず、本発明が適用される蒸気タービンの要部構造について説明する。
【0018】
図1は、一般的な蒸気タービンの要部構造の一例を示した断面図である。
【0019】
図1において、2は回転軸、3はロータケーシング、4はノズルダイヤフラム内輪、5はダイヤフラムパッキン、6はチップフィン、7はノズルダイヤフラム外輪、8は動翼、9はノズル、10はシャフトパッキンを各々示す。
【0020】
蒸気タービンは主に動翼8と共に回転体を構成する回転軸2と、静止体であり、回転軸2を内包・保持するとともに作動流体である蒸気18の流路を形成するロータケーシング3とを備える。回転軸2には、周方向に複数枚の動翼8が固定されており、動翼8の蒸気流れ方向上流側に対向するようにノズル9が周方向に複数枚ロータケーシング3に固定されている。ノズル9は、外周側先端をロータケーシング3に固定されたノズルダイヤフラム外輪7に固定され、内周側先端をノズルダイヤフラム内輪4で固定されている。蒸気タービンでは、動翼8と上流側に対向して設置されるノズル9とで段落が形成され、段落が回転軸2の軸方向に複数段設置される。
【0021】
作動流体である蒸気18は、ノズル9を通過する際に加速されて動翼8に送られ、動翼8で速度エネルギーから運動エネルギーに変換されて回転軸2が回転する。回転軸2は図示しない発電機と接続されており、電気エネルギーとして出力が取り出される。
【0022】
回転体である回転軸2と静止体であるロータケーシング3との間には、回転軸2の回転を妨げないように間隙が設けられている。そして、この間隙から蒸気18の一部が漏れ流れとなって流出するが、この漏れ出た蒸気は、回転軸2の回転運動に有効に活用されないため、蒸気タービン効率低下の一因となる。
【0023】
そこで、回転体である回転軸2と静止体であるロータケーシング3との間隙部には、蒸気が流出するのを防ぐため、ラビリンスシール等のシール装置が設けられている。
【0024】
例えば、ノズル9の内周側に設けられたノズルダイヤフラム内輪4と回転軸2との間隙からの蒸気の漏洩を防ぐダイヤフラムパッキン5、動翼8とロータケーシング3との間隙からの蒸気の漏洩を防ぐチップフィン6、回転軸2とロータケーシング3との間隙からの蒸気の漏洩を防ぐシャフトパッキン10にラビリンスシールが使用されている。
【0025】
ラビリンスシールは、回転体または静止体の少なくともいずれか一方に、回転軸径方向に突出する複数のシールフィン11を有しており、これらのシールフィン間に回転軸2の外周に沿うように圧損用空隙(チャンバー12)が形成されている。ラビリンスシールは、この圧損用空隙により、シール内を流下する漏れ流れに圧力損失を生じさせ、この圧力損失により漏れ流れを抑制することでシール機能を発揮する。
【0026】
しかしながら、従来のラビリンスシールでは以下のような課題がある。
【0027】
図5は従来のラビリンスシールのチャンバー内の圧力分布を示す模式図である。
【0028】
一般的に蒸気タービン等の軸流タービンでは、回転軸2が回転することによるつれ回り効果により、漏れ流れも回転軸2の回転方向Rに旋回して、回転方向流れRSが生じる。回転軸2が一方向に偏心(振動変位)すると、チャンバー12が偏心方向で狭まる。回転方向流れRSは回転軸2の偏心方向の上流側で流れがせき止められ、高圧部を発生させる。反対に回転軸2の偏心方向の下流側では回転方向流れRSにより流体が逃げるため低圧となる。この非対称圧力分布Pによって流体力が発生し、回転軸2が回転方向Rに押される。これにより、回転軸2が振れ回り不安定振動を起こす。
【0029】
以上のような従来のラビリンスシールの課題を踏まえて、本実施例のラビリンスシールについて次に説明する。
【0030】
本実施例は、本発明を蒸気タービンに用いるラビリンスシール装置に適用した例のうちダイヤフラムパッキン5に使用されるラビリンスシール装置に適用した例である。
【0031】
図2は、第1の実施例に係るラビリンスシール1の軸方向断面図、図3は、第1の実施例に係るラビリンスシール1の軸直角断面図、図4は、図3に示した第1の実施例に係るラビリンスシール1のX−X断面図である。
【0032】
図2に示すように、ラビリンスシール1は、シールリング13とシールフィン11とを備える。シールリング13は、回転軸2の周方向に沿ってリング状に組み立てられた部材であり、ノズルダイヤフラム内輪4に固定されている。シールリング13の内周側壁面には、回転軸径方向内周側に向って突出するシールフィン11が複数枚、軸方向に設置されている。シールフィン11は、図3に示すように回転軸2の外周に沿うように周方向に向かって延伸する薄板状の部材であり、回転軸2に対して半径方向の間隙を開けて対向するように、シールリング13に固定されている。
【0033】
図2,図3に示すように、ラビリンスシール1では、シールリング13と、シールフィン11との間に、回転軸2の外周に沿って、リング状の圧損用空隙となるチャンバー12を形成している。
【0034】
チャンバー12は、周方向には区分けされておらず1つの空間である。このチャンバー12が圧損用空隙となり、漏れ流れがチャンバー12を通過する際に、漏れ流れに圧力損失を生じさせることで、ラビリンスシール1は漏れ流れLSを抑制してシール機能を発揮する。
【0035】
さらに本実施例では、図2に示すように、シールリング13のチャンバー12外周位置に空隙部14を設けている。空隙部14は、図3に示すように、チャンバー12に沿って周方向に延伸した環状の空隙である。空隙部14は、軸方向に複数形成された各チャンバー12の外周にそれぞれ形成されており、各空隙部14は互いに連通しない独立した空間である。
【0036】
図2,図3に示すように、空隙部14は、シールリング13のチャンバー12の底部位置に相当する内周面に、周方向に延伸して形成された溝と、チャンバー12の底部位置に設置され、溝の開口部を塞ぐリング状のプレート15とで構成される。プレート15は、チャンバー12と空隙部14とを半径方向に区分けする。
【0037】
図4は、図3に示したX−X断面図である。図4において、説明のため、回転軸2は図示を省略している。図4に示したように、シールフィン11間にはそれぞれチャンバー12が形成されており、チャンバー12のそれぞれの底部にプレート15が設けられている。
【0038】
各プレート15には、チャンバー12と空隙部14とを連通させる連通手段として貫通孔16がプレート15の周方向に複数設けられている。より具体的には、図4に示すように、本実施例では貫通孔16は、各プレート15毎に周方向に等間隔に8ヶ所設けられている。また、各プレート15に設けられた貫通孔16は、同位相となるように、軸方向に一直線に並んで配置されている。なお、本例は一例であり、貫通孔16の位置は8個に限定されるものではない。
【0039】
次に本発明の作用効果について図6を用いて説明する。図6において、破線は従来の周方向圧力分布を示す。
【0040】
図6に示すように、本実施例では、回転軸2が偏心してチャンバー内を旋回する漏れ流れの一部が、高圧部で堰き止められても、貫通孔16を介して、チャンバー12から空隙部14に流体が流れ込む。従来、高圧部で堰き止められていた漏れ流れを空隙部14に逃すことができるため、高圧部における圧力を逃して緩和し、圧力上昇を抑制することができる。
【0041】
空隙部14内に流入した漏れ流れは、空隙部14内を周方向低圧部側に流れる。低圧部では貫通孔16を介して空隙部14からチャンバー12に流体が流れ出ることで低圧部の圧力が増加する。この空隙部14,チャンバー12間の流体の出入りによって周方向圧力分布が均一化される。そのため、非対称圧力分布に起因する流体力を低減できる。
【0042】
本実施例では、回転軸2が偏心してチャンバー内を旋回する漏れ流れの一部が、高圧部で堰き止められても、チャンバー12内の漏れ流れを、空隙部14を介してチャンバー12の外周側、かつ、回転軸2の周方向に一時的に逃すことができる。その結果、チャンバー12内の非対称圧力分布に起因する不安定振動をより良く抑制することができる。
【0043】
このとき流体の出入り口となる2ヶ所の貫通孔16の配置位置は、回転軸2の不安定振動は振れ回りであるため、どの方向に偏心する場合でも流体力を低減できるよう、周方向に均等に配置するのが望ましい。流体の出入り口となる貫通孔16の配置角度は60゜以上、180゜以下に離して設けるのが望ましい。
【0044】
回転軸2の全長に対してラビリンスシール1は短いので、回転軸2の偏心方向は、各チャンバー12で同方向である。より効果的に流体力を低減するために、貫通孔16は各チャンバー12の周方向に同位相で配置するのが望ましい。
【0045】
本実施例では、空隙部14は、軸方向に複数設けられた各チャンバー12の外周側にそれぞれ独立して設けられ、軸方向には連通しないため、上流側のチャンバー12から流入した漏れ流れが、空隙部14を介して下流側のチャンバー12に流出することはない。よって、漏れ量は増えずシール性の低下を招くことはない。
【0046】
これらより、本発明のラビリンスシール1は、シール性を確保しつつ、非対称圧力分布を均一化して回転軸2の不安定振動を効果的に解消することができる。
【0047】
本実施例では貫通孔16を図4の様に、円形の穴としていたが、四角形や三角形,スリットなどの形状にしてもよい。
【0048】
また、貫通孔16の形状は半径方向に平行でなくても良い。チャンバー12から空隙部14に向かって末窄まりや、末広がりにしても良い。
【0049】
また、各チャンバー12で空隙部14を配置していたが、空隙部14はすべてのチャンバー12に配置しなくてもよい。また、周方向の貫通孔16の数は2つ以上あれば良い。
【0050】
また、本実施例は、本発明をダイヤフラムパッキン5に使用されるラビリンスシール装置に適用した例を用いて説明したが、シャフトパッキン10,チップフィン6にラビリンスシール装置を使用する場合にも同様に適用することができる。
【実施例2】
【0051】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図7は、本発明の第2の実施例に係るラビリンスシール装置の軸方向断面図の例である。第1の実施例と同等の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0052】
前述した第1の実施例では、各チャンバー12で空隙部14の軸方向断面を四角形に形成している。一方、本実施例では、空隙部14の軸方向断面形状をチャンバー12側に向かって末窄まりな形状にし、プレート15を設けていない。空隙部14の軸方向断面形状を末窄まりな形状にすることで、空隙部14のチャンバー12との連通部(末窄まり部)は、周方向に連通するスリット状になる。このスリット17により十分にチャンバー12,空隙部14間で連通部が絞られているので、空隙部14内は回転方向流れRSの影響を受けにくい。本実施例の空隙部14は、チャンバー12側から外周方向へザグリ加工することで容易に得られる。
【0053】
本実施例の構造によっても、チャンバー12内の漏れ流れを、空隙部14を介してチャンバー12の外周側、かつ、回転軸2の周方向に一時的に逃すことができる。したがって、本実施例は、第1の実施例と同様にシール性を確保しつつ、非対称圧力分布を均一化して回転軸2の不安定振動を効果的に解消することができる。
【0054】
また、加えて、本実施例は、プレート15を設置する手間を省くことができ、加工容易である。
【0055】
本実施例では、空隙部14の軸方向断面形状を三角形にしたものとしていたが、空隙部14の軸方向断面形状がチャンバー12側に向かって末窄まりな形状であれば他の形状でも良い。
【実施例3】
【0056】
本発明の第3の実施例について説明する。図8は本発明の第3の実施例に係るラビリンスシール1の軸直角断面図の例である。第1の実施例と同等の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0057】
本実施例では、チャンバー12深さ(回転軸2外周からシールリング13内周までの距離)が円周方向に一様でなく、垂直方向で深く、水平方向で浅くなっている。このようなラビリンスシールは回転軸2の上下方向移動量が大きいターボ機械に用いられることがある。チャンバー12深さが浅い水平方向では、偏心時に高圧部の圧力上昇がより大きくなり、非対称圧力分布が大きくなる。
【0058】
前述した第1の実施例では、貫通孔16を周方向に等間隔で設けているのに対し、本実施例では、貫通孔16を、垂直方向に対してチャンバー12内で偏心時に圧力上昇が大きい水平方向により多く設けることにより、回転方向流れRSの局所的な圧力分布を抑えることができる。したがって、本実施例のラビリンスシール1では、圧力上昇が大きい方向でより効果的に圧力を逃がすことができ、回転方向流れRSに起因する回転軸2の不安定振動をより効果的に解消することができる。
【0059】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な形状例が含まれる。また、上記した各実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0060】
また、上記した各実施例は、蒸気タービンの例で説明したが、これに限られず、その他のターボ機械、例えば遠心圧縮機等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ラビリンスシール
2 回転軸
3 ロータケーシング
4 ノズルダイヤフラム内輪
5 ダイヤフラムパッキン
6 チップフィン
7 ノズルダイヤフラム外輪
8 動翼
9 ノズル
10 シャフトパッキン
11 シールフィン
12 チャンバー
13 シールリング
14 空隙部
15 プレート
16 貫通孔
17 スリット
LS 漏れ流れ
RS 回転方向流れ
R 回転方向
θ 圧力ピーク−偏心方向間角度
P 非対称圧力分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と該回転体を内包する静止体との間に設けられ、前記静止体に固定されたシールリングと、該シールリングに、前記回転体軸方向に複数設けられた前記回転体半径方向に突出する複数のシールフィンとを有し、前記回転体軸方向に複数設けられたシールフィンの間にリング状のチャンバーを形成するラビリンスシール装置であって、
前記チャンバー内の漏れ流れを、前記チャンバーの外周側、かつ、前記回転軸の周方向に一時的に逃す圧力緩和構造を備えることを特徴とするラビリンスシール装置。
【請求項2】
請求項1記載のラビリンスシール装置であって、
前記圧力緩和構造は、前記チャンバーの外周側に設けられ、前記回転体周方向に延伸し、前記チャンバーと周方向に間隔を空けて複数箇所で連通する空隙部であることを特徴とするラビリンスシール装置。
【請求項3】
請求項2記載のラビリンスシール装置であって、
前記空隙部は、前記チャンバー底部位置の前記シールリング内周面に設けられた溝と、前記チャンバーの底部に設けられ、前記溝の開口部を塞ぐプレートとで形成され、
前記プレートは、前記チャンバーと前記空隙部とを連通する連通手段を前記回転体周方向に沿って設けていることを特徴とするラビリンスシール装置。
【請求項4】
請求項3記載のラビリンスシール装置であって、
前記連通手段は、前記回転体周方向に沿って複数設けられた貫通孔であり、
該貫通孔は、周方向に等間隔で配置されていることを特徴とするラビリンスシール装置。
【請求項5】
請求項4記載のラビリンスシール装置であって、
前記チャンバーは、前記回転体軸方向に複数形成され、
前記空隙部は、前記回転体軸方向に複数設けられた前記チャンバーの外周側にそれぞれ設けられ、
前記各チャンバーの前記プレートに設けられた前記貫通孔の位置が周方向に同位相で配置されていることを特徴とするラビリンスシール装置。
【請求項6】
請求項3記載のラビリンスシール装置であって、
前記チャンバーは、前記静止体水平方向のチャンバー深さが、前記静止体垂直方向のチャンバー深さよりも浅く形成されており、
前記連通手段は、貫通孔であり、前記垂直方向よりも前記水平方向に多く設けられていることを特徴とするラビリンスシール装置。
【請求項7】
請求項1記載のラビリンスシール装置であって、
前記圧力緩和構造は、前記チャンバーの外周側に設けられ、前記回転体周方向に延伸し、前記チャンバーと連通する空隙部であり、
該空隙部は、前記チャンバー側に向かって末窄まりとなる断面形状を有する溝を前記シールリングに設けてなり、
前記空隙部と前記チャンバーとは、前記溝の末窄まり部に、前記回転体の周方向に延伸して形成されたスリットを介して連通していることを特徴とするラビリンスシール装置。
【請求項8】
回転軸と、該回転軸に固定される動翼とを有する回転体と、
ロータケーシングと、該ロータケーシングに固定される静翼とを有し、前記回転体を内包する静止体と、
前記回転体と前記静止体との間に設けられ、前記静止体に固定されたシールリングと、該シールリングに前記回転体軸方向に複数設けられた、前記回転体半径方向に突出するシールフィンとを有し、前記回転体軸方向に複数設けられたシールフィンの間にリング状のチャンバーを形成するラビリンスシール装置と、を備えるターボ機械であって、
前記ラビリンスシール装置は、前記チャンバー内の漏れ流れを、前記チャンバーの外周側、かつ、前記回転軸の周方向に一時的に逃す圧力緩和構造を備えることを特徴とするターボ機械。
【請求項9】
請求項8記載のターボ機械であって、
前記圧力緩和構造は、前記チャンバーの外周側に、前記回転体周方向に延伸し、前記チャンバーと周方向に間隔を空けて複数箇所で連通する空隙部であることを特徴とするターボ機械。
【請求項10】
請求項9記載のターボ機械であって、
前記空隙部は、前記チャンバー底部位置の前記シールリング内周面に設けられた溝と、前記チャンバーの底部に設けられ、前記溝の開口部を塞ぐプレートとで形成され、
前記プレートは、前記チャンバーと前記空隙部とを連通する連通手段を前記回転体周方向に沿って設けていることを特徴とするターボ機械。
【請求項11】
請求項10記載のターボ機械であって、
前記連通手段は、前記回転体周方向に沿って複数設けられた貫通孔であり、
該貫通孔は、周方向に等間隔で配置されていることを特徴とするターボ機械。
【請求項12】
請求項11記載のターボ機械であって、
前記チャンバーは、前記回転体軸方向に複数形成され、
前記空隙部は、前記回転体軸方向に複数設けられた前記チャンバーの外周側にそれぞれ設けられ、
前記各チャンバーの前記プレートに設けられた前記貫通孔の位置が周方向に同位相で配置されていることを特徴とするターボ機械。
【請求項13】
請求項10記載のターボ機械であって、
前記チャンバーは、前記静止体水平方向のチャンバー深さが、前記静止体垂直方向のチャンバー深さよりも浅く形成されており、
前記連通手段は、貫通孔であり、前記垂直方向よりも前記水平方向に多く設けられていることを特徴とするターボ機械。
【請求項14】
請求項8記載のターボ機械であって、
前記圧力緩和構造は、前記チャンバーの外周側に設けられ、前記回転体周方向に延伸し、前記チャンバーと連通する空隙部であり、
該空隙部は、前記チャンバー側に向かって末窄まりとなる断面形状を有する溝を前記シールリングに設けてなり、
前記空隙部と前記チャンバーとは、前記溝の末窄まり部に、前記回転体の周方向に延伸して形成されたスリットを介して連通していることを特徴とするターボ機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−102831(P2012−102831A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253376(P2010−253376)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】