説明

ラビリンスシール

【課題】改良されたラビリンスシールを提供する。
【解決手段】複数のアーチ状のラビリンスシールセグメント10,12が設けられており、隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメント10,12の対面する端部が平坦な面26を有しており、該平坦な面26が、半径方向と軸方向とに向けられているが、厳密に軸方向の向きからずれるように傾斜角によって傾斜させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラビリンスシール、特にガスタービン又は蒸気タービンにおける静止部と回転部との間をシールするためのラビリンスシールに関する。実施の形態は、組み合わされたラビリンス及びブラシシールに関する。
【背景技術】
【0002】
ラビリンスシールは、ガスタービン又は蒸気タービン等の軸流タービンにおける静止部と回転部との間のシールを提供するために一般に用いられる。アーチ状のラビリンスシールセグメントは、複数のアーチ状のブラシシールセグメントをも支持していてよく、これにより、組み合わされたラビリンス及びブラシシールを形成している。
【0003】
慣用のラビリンスシールは、隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメントの対面する端部における漏れ、及び隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメントの間の相対移動の結果としてのシール内の振動を含む多くの問題を生じる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、改良されたラビリンスシールが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、複数のアーチ状のラビリンスシールセグメントを有するラビリンスシールが提供され、隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメントの対面する端部は、平坦な面を有しており、この平坦な面は、半径方向と軸方向とに向けられているが、厳密に軸方向の向きから傾斜角だけ傾斜させられている。
【0006】
隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメントの対面する端部の半径方向と軸方向とに向けられた平坦な面を、厳密に軸方向の向きから傾斜させることによって、隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメントの間に付加的な摩擦力が生じ、これにより、隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメントの間の相対移動を低減し、ラビリンスシール内の振動を低減する。
【0007】
傾斜角は、約1度〜6度であってよい。
【0008】
好適な実施の形態において、傾斜角は、2度プラス又はマイナス1度から、5度プラス又はマイナス1度までの間である。約2度の最小傾斜角が適切である。なぜならば、製造公差は、通常、プラス又はマイナス1度であり、1度未満の傾斜角は、振動を減じるためにほとんど又は全く効果を有さないからである。約5度の最大傾斜角が適切である。なぜならば、前記製造公差を考慮すると、6度よりも大きな傾斜角は、隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメントの対面する端部の間に許容できないほど大きな摩擦力を生じ、これにより、許容できないほど堅固なラビリンスシールを生じるからである。
【0009】
ラビリンスシールは、複数のアーチ状のラビリンスシールセグメントに保持された複数のアーチ状のブラシシールセグメントを有していてよく、これにより、組み合わされたラビリンス及びブラシシールを形成している。
【0010】
それぞれのアーチ状のブラシシールセグメントは、通常、アーチ状の剛毛保持体と、アーチ状の剛毛保持体によって保持されかつ通常はラビリンスシールの半径方向からずれるように傾斜させられている複数の剛毛とを有している。隣接し合うアーチ状のブラシシールセグメントのアーチ状の剛毛保持体の対面する端部は、通常、半径方向から、実質的に剛毛と同じ傾傾斜角度だけ傾斜させられている。これは、隣接し合うアーチ状のブラシシールセグメントの対面する端部において剛毛の間に三角形の間隙が存在しないことを保証する。
【0011】
隣接し合うアーチ状のブラシシールセグメントのアーチ状の剛毛保持体の対面する端部は、好適には、軸方向に、通常は厳密に軸方向の向きに向けられている。
【0012】
それぞれのアーチ状のブラシシールセグメントは、通常、このブラシシールセグメントを保持するアーチ状のラビリンスシールセグメントと同じ角度範囲を有している。それぞれのアーチ状のラビリンスシールセグメントは、通常、複数の、軸方向に間隔を置いて配置されたアーチ状のフィンを有しており、これらのフィンは、通常、アーチ状のラビリンスシールセグメントと同じ角度範囲を有している。ラビリンスシールは、通常、ガスタービン又は蒸気タービンの静止構造の部分を形成しており、半径方向に隣接する回転面と協働する。通常、アーチ状のブラシシールセグメントとフィンとは、それぞれのアーチ状のラビリンスシールセグメントの内面から、半径方向に隣接する回転面に向かって延びている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】隣接し合うシールリングセグメントの対面する端部を示す、分解された状態における組み合わされたラビリンス及びブラシシールの実施の形態の一部を示す概略的な斜視図である。
【図2】図1のアーチ状のラビリンスシールセグメントの半径方向外側の面における、半径方向内方をみた概略図である。
【図3】隣接し合うアーチ状のシールセグメントの対面する端部の間の接触領域を示す、組立て後の、図1に示されたシールセグメントの、単純化された、半径方向内方をみた、軸方向の図である。
【図4】隣接し合うアーチ状のシールセグメントの対面する端部の間の接触領域を示す、組立て後の、図1に示されたシールセグメントの、単純化された、半径方向内方をみた、軸方向の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態をここで添付の図面を参照しながら例としてのみ説明する。
【0015】
図1は、ラビリンスシールの2つの隣接し合うシールリングセグメント10,12の対面する端部の斜視図である。完全なラビリンスシールを形成するために、複数のシールリングセグメント10,12が直列に配置されて連続的なシールリングを形成することが理解されるであろう。ラビリンスシールは、ガスタービン又は蒸気タービンの静止構造部の一部を形成し、静止部と回転部との間にシールが形成されるように、半径方向に隣接する回転面と協働する。
【0016】
それぞれのシールリングセグメント10,12は、フィン15を有するアーチ状のラビリンスシールセグメント14を有しており、フィン15は、アーチ状のラビリンスシールセグメント14の半径方向内側の面から、半径方向に隣接する回転部(図示せず)の表面に向かって延びている。一般的な慣例は、そのシーリングエレメントが上述のようにフィン15又は同様のものだけを有するラビリンスシールを利用することである。しかしながら、本発明の場合、組み合わされたラビリンス及びブラシシールが、アーチ状のブラシシールセグメント16をアーチ状のラビリンスシールセグメント14に保持することによって形成されている。それぞれのアーチ状のブラシシールセグメント16が、対応するアーチ状のラビリンスシールセグメント14と同じ角度範囲を有していることが好ましい。アーチ状のブラシシールセグメント16は漏れを低減し、これにより、ラビリンスシールのシール効率を増大する。
【0017】
アーチ状のブラシシールセグメント16は、概してT字形の横断面を有するアーチ状の剛毛保持体18を有しており、T字形の剛毛保持体18のヘッド20若しくはクロスバーと、ステム22のほとんどとは、アーチ状のラビリンスシールセグメント14における、対応して成形されたスロット23内に配置されている。アーチ状の剛毛保持体18の端部は、図3に点線30で示されているように、軸方向に向けられている(すなわち、厳密な軸方向からずれるように傾斜させられていない)。複数の剛毛24が、アーチ状の剛毛保持体18によって保持されており、剛毛24は、ラビリンスシールの半径方向からずれるように共通の角度、例えば45度で傾斜させられているので、仮想的にその長さを超えて延長させられたとすると、剛毛は、ラビリンスシールよりも小さな直径の円に対して、公称で接線方向になる。
【0018】
隣接し合うアーチ状のブラシシールセグメント16の対面する端部における剛毛24の間に三角形の間隙が生じるのを回避するために、隣接し合うブラシシールセグメント16のアーチ状の剛毛保持体18の対面する端部も、ラビリンスシールの半径方向からずれるように、剛毛24と同じ傾傾斜角度で傾斜させられている。三角形の間隙が存在すると、この三角形の間隙に隣接する剛毛24が、隣接する剛毛によって支持されなくなり、これにより、損傷を受けやすくなる。このような構成の結果、アーチ状のブラシシールセグメント16のうちの1つのブラシシールセグメントの端部は、シールリングセグメント10の端面から突出し、それに対して、それに隣接するアーチ状のブラシシールセグメント16の対面する端部は、シールリングセグメント12の端面から内方へ凹んでいる。
【0019】
それぞれの隣接するアーチ状のラビリンスシールセグメント14の対面する端部は、ラビリンスシールの半径方向及び軸方向に向けられた概して平坦な面26を有している。それぞれの隣接するアーチ状のラビリンスシールセグメント14の対面する端部の概して平坦な面26は、図4に示されているように、厳密に半径方向に向けられているが、図2及び図3において線28によって、傾斜角Xによって示されているように、厳密に軸方向の向きから傾斜させられている。上述のように、これは、隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメント14の対面する端部の間の摩擦力を増大させ、これにより、緩衝を増大しかつ望ましくない振動を減じる。さもないと、振動が、ガスタービン又は蒸気タービンの運転中にラビリンスシールにおいて生じる恐れがある。
【0020】
典型的な実施の形態において、傾斜角Xは、約2度〜5度であり、これらの最小及び最大の傾斜角は、約±1度である典型的な製造公差を生じる。上述のように、約1度よりも小さな傾斜角Xは、振動の低減にほとんど又は全く効果を有さないと考えられ、それに対して、約6度よりも大きな傾斜角Xは、許容できないほど大きな摩擦力により、許容できないほど堅固なシールを生じると考えられる。
【0021】
前記段落においては様々な実施の形態が説明されたが、以下の請求項の範囲から逸脱することなくこれらの実施の形態に様々な変更がなされてよいことが理解されるべきである。例えば、アーチ状のブラシシールセグメント16は(存在する場合)、あらゆる適切な構成を有することができ、半径方向からずれるように傾斜させられていない対面する端部を有することができる。
【符号の説明】
【0022】
10,12 シールリングセグメント、 14 ラビリンスシールセグメント、 15 フィン、 16 ブラシシールセグメント、 18 剛毛保持体、 20 ヘッド、 23 スロット、 24 剛毛、 26 面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラビリンスシールにおいて、複数のアーチ状のラビリンスシールセグメントが設けられており、隣接し合うアーチ状のラビリンスシールセグメントの対面する端部が平坦な面を有しており、該平坦な面が、半径方向と軸方向とに向けられているが、厳密に軸方向の向きからずれるように傾斜角だけ傾斜させられていることを特徴とする、ラビリンスシール。
【請求項2】
前記傾斜角が、約1〜6度である、請求項1記載のラビリンスシール。
【請求項3】
前記傾斜角が、2〜5度プラス又はマイナス1度である、請求項1記載のラビリンスシール。
【請求項4】
前記複数のアーチ状のラビリンスシールに保持された複数のアーチ状のブラシシールセグメントが設けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載のラビリンスシール。
【請求項5】
それぞれのアーチ状のブラシシールセグメントが、アーチ状の剛毛保持体と、該アーチ状の剛毛保持体によって保持された複数の剛毛とを有している、請求項4記載のラビリンスシール。
【請求項6】
剛毛が、ラビリンスシールの半径方向からずれるように傾斜させられており、隣接し合うアーチ状のブラシシールセグメントのアーチ状の剛毛保持体の対面する端部も、実質的に剛毛と同じ傾斜角度で、半径方向からずれるように傾斜させられている、請求項5記載のラビリンスシール。
【請求項7】
隣接し合うアーチ状のブラシシールセグメントのアーチ状の剛毛保持体の対面する端部が、軸方向に向けられている、請求項5又は6記載のラビリンスシール。
【請求項8】
それぞれのアーチ状のブラシシールセグメントが、該ブラシシールセグメントを保持する対応するアーチ状のラビリンスシールセグメントと同じ角度範囲を有している、請求項4から7までのいずれか1項記載のラビリンスシール。
【請求項9】
実質的に、これまでに説明された及び/又は添付の図面に示されたようなラビリンスシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17845(P2012−17845A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−117924(P2011−117924)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】