説明

ラマン分光学によるポリマー特性のオンライン測定および制御

流動化床反応槽のような重合反応槽系におけるオンラインによるポリマー特性の決定および制御のための方法が提供される。この方法には、ポリマー特性を決定するための回帰モデルであって、主要成分の負荷よび主要成分スコアを含む回帰モデルを得ること、ポリオレフィンを含むポリオレフィン試料の複数のラマン・スペクトルを得ること、少なくともラマン・スペクトルの一部分と主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算すること、該新しい主要成分スコアを回帰モデルに適用することによりポリマー特性を計算することが含まれる。前記特性は、計算されたポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2001年11月9日出願の米国仮出願第60/345,337号の優先権を主張する、2002年10月15日出願の国際特許出願PCT/US02/32767の優先権を主張する部分継続出願である。
【0002】
本発明は、一般的に、重合反応系におけるポリマー特性をオンラインで測定し、これらの測定された特性を用いて前記重合反応を制御する方法に関する。特に本発明は、ラマン分光学を用いて溶融指標(melt index、「メルトインデックス」ともいう。)および密度のようなポリオレフィンの特性をオンラインで測定し、ラマン分光学測定により得られた実時間オンラインのポリマー特性データを用いて反応を制御する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
モノマー、特にオレフィンモノマーのホモ重合および共重合のための気相プロセスは当業者に周知である。そのようなプロセスは、例えば、気体モノマーまたはモノマーを樹脂粒子および触媒の撹拌床および/または流動化床に誘導することにより処理することができる。
【0004】
オレフィンの流動化床重合の場合、重合は流動化床反応槽において進行するが、この流動化床反応槽においてはポリマー粒子床が、気体反応モノマーを含む上昇気体流によって流動化状態に保たれている。撹拌床反応槽のオレフィン重合では、床の流動化を引き起こしている反応ゾーン内の機械的撹拌器の働きが、気体流動化床反応槽における重合と異なっている。ここで用いるように、「流動化床」という用語は撹拌床プロセス及び反応槽も含んでいる。
【0005】
流動化反応槽の始動では、一般的に予め形成されたポリマー粒子床が用いられる。重合の進行する間、モノマーの触媒的な重合によって新鮮なポリマーが生成し、前記床を一定の容積に保つためポリマー生成物は回収される。工業的に好ましいプロセスには前記床に流動化した気体を分布させ、気体の供給が中断したときに前記床の支持体として働くために流動化格子が採用される。生成したポリマーは、一般的に、流動化格子の近くの反応槽の下部に配置された1またはそれ以上の放出導管を介して反応槽から回収される。前記流動化床は、成長するポリマー粒子床、ポリマー生成物粒子、および触媒粒子を含む。この反応混合物は、追加された補給モノマーとともに、反応槽上部から回収した循環気体を含む反応槽基底部からの流動化気体の連続的な上昇流によって流動化条件に保たれる。
【0006】
流動化気体は反応槽底部から入り、好ましくは流動化格子を通して、流動化床を上向きに通過する。
【0007】
オレフィンの重合は発熱的反応であるため、重合熱を除去するために前記床を冷却することが必要である。そのような冷却をしないと、例えば触媒が不活性化し、またはポリマー粒子が溶解し縮合するまで、前記床の温度が上昇する。
【0008】
オレフィンの流動化床重合において重合熱を除去する代表的な方法は、望ましい重合温度よりも低い温度の流動化気体のような冷却気体を、重合熱を誘導除去するために流動化床を通過させるものである。この気体は反応槽が除去され、外部熱交換器を通して冷却され、次に前記床に循環される。
【0009】
循環気体の温度は、望ましい重合温度に流動化床を維持するため熱交換器中で調節することができる。このα−オレフィンを重合する方法において、循環気体は一般的に1またはそれ以上のモノマー性のオレフィンを含み、任意に、例えば不活性な希釈気体または水素のような気体連鎖移動剤をともに含むことができる。したがって、前記循環気体は前記床を流動化し、望ましい温度範囲に前記床を維持するためにモノマーを供給するのに役立つ。重合反応の進行においてポリマーへの変換により消費されるモノマーの代わりに、通常、循環気体流へ補給モノマーが追加される。
【0010】
反応槽を出て行く物質にはポリオレフィンおよび未反応のマノマー気体を含む循環流が含まれる。重合に続いてポリマーが回収される。所望により、前記循環流は圧縮冷却し、供給原料成分と混合することができ、その上に次に気相と液相とが反応槽に戻される。
【0011】
重合プロセスではチーグラー・ナッタ(Ziegler − Natta)触媒および/またはメタロセン触媒を用いることができる。様々な気相重合プロセスが知られている。例えば、米国特許4,543,399号および4,588,790号に記載されているように、循環流は露点以下の温度まで冷却して、結果的に循環流の一部を濃縮することができる。プロセス中における液体の循環流また反応槽へのこの意図的な導入は、「濃縮モード」操作として一般的に参照される。
【0012】
流動化床反応槽およびその操作についての更に詳細な点は、例えば、米国特許4,243,619号、4,543,399号、5,352,749号、5,436,304号、5,405,922号、5,462,999号、および6,218,484号に開示されている。これらの開示は参照により本発明に取り込まれる。
【0013】
前記反応槽で生成されるポリマーの特性は、温度、モノマー供給速度、触媒供給速度、および水素ガス濃度のような様々な操作パラメータによって影響される。メルトインデックスおよび密度のような所望の一組の特性をもつポリマーを生産するためには、ポリマーの特性を知るために反応槽から出てくるポリマーを試料採取し、実験室測定を実施する。1またはそれ以上のポリマーの特性が所望の範囲外であることがわかれば、重合条件を調節し、ポリマーの再試料採取を行う。しかしながら、サンプリングおよびメルトインデックス、分子量分布、および密度のようなポリマー特性の実験室試験は時間を要するため、この定期的な試料採取、試験、および調節は望ましくないほど遅い。結果として、マニュアルの試験および制御により効果的に重合条件が調節できる前に、従来のプロセスでは大量の「特性はずれ」ポリマーが生産されてしまうことがある。このことは異なる樹脂グレード間の移行プロセスの間ばかりでなく、特定グレードの樹脂の生産の間にも起こる。
【0014】
特定のポリマー特性の迅速な評価と重合条件の迅速な調節をしようとする方法が開発されてきている。国際特許WO01/09201号およびWO01/09203号公報では、スラーリ(slurry)反応槽の成分濃度を決定するための主要成分分析(principal components analysis: PCA)および部分最小二乗法(partial least squares: PLS)を用いるラマン光に基づく方法が開示されている。エチレンまたはヘキサンのような特定成分の濃度はその成分に相当する既知のラマン光ピークの測定により決定される。米国特許第5,999,255号では、ポリマー試料、好ましくはナイロンの、ポリマー試料の部分ラマンスペクトルを測定し、そのラマンスペクトルから予め選択した分光学的特徴に関する値を決定し、決定した値を参照値と比較する物理的特性の測定法が開示されている。この方法は、ポリマーのNHまたはメチルのような同定された官能基に相当する予め選択された分光学的特徴を同定し、追跡することに基づいている。
【0015】
更なる背景技術の情報は、米国特許6,144,897号および5,151,474号、欧州特許出願EP0561078、国際特許WO98/08066号、およびアーデル,ジー.ジー(Ardell, G.G.)他著「反応槽制御のためのモデル予想(Model Prediction for Reactor Control)」(ケミカル・エンジニヤリング・プログレス、米国化学技術協会、第79巻、第6号、1983年6月1日、77−83頁(ISSN0360−7275))に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
流動化床重合反応層においてメルトインデックス、密度、および分子量分布のようなポリマー特性を追跡するために、ポリマーの分光学的特徴を予備選択または同定する必要性がなく、オンラインで決定する方法があれば望ましい。また、ポリマー特性の迅速でオンラインによる決定に基づいて所望のポリマー特性を維持するために、気相流動化床反応槽を制御する方法があれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
1つの態様において、本発明は重合反応層系におけるポリマー特性を決定するためのプロセスを提供する。このプロセスは、ポリマー特性を決定するための回帰モデルであり、主要成分の負荷および主要成分スコアを含む回帰モデルを得ること、ポリオレフィンを含むポリオレフィン試料のラマン・スペクトルを得ること、少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の装填から新しい主要成分スコアを計算すること、および該主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することによりポリマー特性を計算することを含んでいる。
【0018】
他の態様において、本発明は、重合反応槽系のポリマー特性を制御するためのプロセスを提供する。このプロセスは、ポリマー特性を決定するための回帰モデルであり、主要成分の負荷および主要成分スコアを含む回帰モデルを得ること、ポリオレフィンを含むポリオレフィン試料のラマン・スペクトルを得ること、少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算すること、該主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することによりポリマー特性を計算すること、および前記計算されたポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整することを含んでいる。特定の態様において、前記少なくとも1つの重合パラメータとしては、例えば、モノマー供給速度、コモノマー供給速度、触媒供給速度、水素ガス供給速度、または反応温度を挙げることができる。
【0019】
1つの態様において、回帰モデルは、多くのポリオレフィン試料のラマン・スペクトルを得ること、主要成分分析(PCA)を用いてスペクトルから主要成分の負荷および主要成分スコアを計算すること、および回帰モデルがポリマー特性を主要成分スコアに相関させるように主要成分スコアを用いて回帰モデルを作成することにより構成されている。
【0020】
他の態様において、前記回帰モデルは局部重視(locally weighted)回帰モデルである。
【0021】
他の態様において、前記方法は、第一ポリマー特性を決定するための第一回帰モデルであり、第一主要成分の装填および第一主要成分スコアを含む第一回帰モデルを得ること、第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデル、および第二主要成分の装填および第二主要成分スコアを含む第二回帰モデルを得ること、ポリオレフィンを含むポリオレフィン試料のラマン・スペクトルを得ること、少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記第一主要成分の装填から新しい第一主要成分スコアを計算すること、少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記第二主要成分の装填から新しい第二主要成分スコアを計算すること、前記第一主要成分スコアを前記第一回帰モデルに適用することにより第一ポリマー特性を計算すること、前記第二主要成分スコアを前記第二回帰モデルに適用することにより第二ポリマー特性を計算することを含んでいる。
【0022】
他の態様において、前記試料はポリオレフィン粒子を含む。
【0023】
他の態様において、前記ラマン・スペクトルは、ポリオレフィン粒子の試料を提供し、該試料に光照射し、試料プローブを用いて試料採取時間に散乱した光照射を集めることによって得られる。ここで、少なくとも一部分の試料採取時間に、前記試料と前記試料プローブ間の関連する動きがある。この関連する動きは、試料プローブの視野を有効に拡大し、より正確なデータを提供することに役立つ。
【0024】
他の態様において、前記ラマン・スペクトルは、反応槽または反応槽からの下降流に挿入したプローブから得られる。好ましい態様において反応槽は気相重合反応層であり、より好ましくは、例えばユニポール(Unipol)反応槽のような流動化床反応槽、または任意のサイクロンを有する気相流動化床反応槽である。
【0025】
他の態様において、好ましいポリマー特性には、例えば、密度、メルトインデックスやフローインデックス(flow index)のようなメルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびそのような特性の様々な機能が含まれる。
【0026】
[図面の簡単な説明]
図1は気相反応槽のブロック図である。
【0027】
図2は本発明に基づくラマン分析装置のブロック図である。
【0028】
図3はファイバー光学ラマンプローブの一態様を例示する。
【0029】
図4は試料チャンバーの一態様を例示する。
【0030】
図5は顆粒状直鎖低密度ポリエチレンポリマー試料の代表的なラマン・スペクトルである。
【0031】
図6Aおよび6Bは、それぞれ、実施例1および2に基づく、低メルトインデックス範囲および高メルトインデックス範囲における予測および測定メルトインデックスを示す。
【0032】
図7は実施例3に基づく、予測および測定密度を示す。
【0033】
図8Aおよび8Bは、それぞれ、実施例4および5に基づく、メタロセン触媒反応およびチーグラー・ナッタ触媒反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定メルトインデックスを示す。
【0034】
図9Aおよび9Bは、それぞれ、実施例6および7に基づく、メタロセン触媒反応およびチーグラー・ナッタ触媒反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定密度を示す。
【0035】
図10は、約5週の期間にわたる商業スケールの流動化床反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定メルトインデックスを示す。
【0036】
図11は、約5週の期間にわたる商業スケールの流動化床反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定密度を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
[詳細な説明]
1つの態様において、本発明はポリオレフィンポリマー特性をオンラインで決定する方法、すなわち、反応系で生産される前記ポリオレフィンを外部から試料採取および分析をする必要がない方法を提供する。この方法は、ポリマー特性を決定するための回帰モデルであり、主要成分の装填および主要成分スコアを含む回帰モデルを得ること、ポリオレフィンを含むポリオレフィン試料のラマン・スペクトルを得ること、少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算すること、および該主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することによりポリマー特性を計算することを含んでいる。
【0038】
1つの態様において、前記方法は流動化床反応系においてポリマー特性をオンラインで決定するために用いられる。流動化床反応槽は当業者に周知である。ここでは、説明することのみを目的として、流動化床反応層の非限定的な例を記載する。当業者は、所望により、前記流動化床反応槽に数々の修飾や拡張ができることがわかるであろう。
【0039】
流動化床反応槽
図1は、反応槽本体22を有する気相流動化床反応槽20を含む気相重合反応層系の一例を示す。ここで、反応槽本体は一般的に、その下部領域に位置する流動化格子24を有する直立した円筒である。前記反応槽本体22は、流動化床ゾーン26と、反応槽本体22の流動化床ゾーン26の直径と比べて一般的に大きな直径をもつ減速ゾーン28とをその内部に有する。
【0040】
「回収気体流」と呼ばれる反応槽本体22の上部を通過した気体の反応混合物は、主に未反応モノマー、未反応水素ガス、イソペンタンのような不活性凝縮ガス、および窒素のような不活性非凝縮ガスを含んでいる。前記回収気体流はライン30を経由して圧縮機32に、圧縮機32から熱交換器34に移送される。所望する場合には、図示するように、微粒子を除去するために任意のサイクロン分離機36を、好ましくは圧縮機32の上流に用いることができる。所望する場合には、前記回収気体流を採取して様々な成分の濃度を決定するために任意の気体分析器38を用いることができる。代表的な気体分析器としては、気相クロマトグラフ(GPC)、または近赤外分光光度計またはフーリエ変換近赤外分光光度計(FT−NIR)のような分光光度計がある。任意の熱交換器(図示されていない)も、所望する場合には、好ましくは圧縮機32の上流で用いることができる。
【0041】
冷却された回収気体流はライン40を経て熱交換器34から出る。上述したように、前記冷却回収気体流は、気体でも、気体と液体との混合物でもあり得る。図1は、回収気体流の少なくとも一部が、液体凝縮が始まる温度(露点)またはそれ以下に冷却される1つの任意の配置を示している。結果として生じる気体液体混合物の全部または一部はライン40を経て分離機42に移送され、そこで全部または一部の液体は除去される。ある程度の液体を含み得る前記気体流の全部または一部は、ライン44を経て反応槽の下部領域の前記流動化格子24の下部の位置に移送される。前記床を流動化条件として維持するのに十分な上向きに流れる気体量はこのようにして供給される。
【0042】
当業者は、採用される反応槽が撹拌床反応槽の場合には、流動化を維持するためにより少ない量の気体が必要であることを理解するであろう。
【0043】
ライン44を経て反応槽底部に流れ込む気体に十分な速度を与えることを確実にするために、任意の圧縮機46を備えることができる。所望する場合には、反応層底部に流入する気体流は凝縮液体を含むことができる。
【0044】
分離機42において前記回収流から分離された液体相の全部または一部はライン48を経て反応槽最上部またはその近くに位置するマニホルド50に移送される。所望する場合には、マニホルド50への液体の移送を容易にするためにライン48内にポンプ52を備えることができる。マニホルド50に流入する液体は、良好な熱交換特性をもち、反応槽の壁と熱交換のための接触をする複数の導管56を通って下向きにマニホルド54に流れ込む。導管56を通した液体通過により、温度差および熱交換接触の時間と程度に依存して、かなりの程度または僅かな程度に反応槽壁が冷却され液体が温められる。したがって、マニホルド50に流入する液体がマニホルド54に到達する時間までに、その液体は、完全に液体状態にとどまるか、または部分的または全体的に気化した過熱液体となる。
【0045】
図1に示されるように、前記過熱流体(気体および/または液体)は、流動化格子24の下部領域にある反応槽に入る前に、ライン58を経てマニホルド54を通過し、ライン44を経て分離機42を離脱した気体と混合する。同様にして、補給モノマーはライン60を経て液体または気体状態で反応槽に導入できる。マニホルド54で回収された気体および/または液体も流動化格子の下部領域にある反応槽(図示されていない)に直接移送することができる。
【0046】
生成物ポリマー粒子は従来法、例えば、米国特許4,621,952号公報に記載された方法および装置により、ライン62を経て反応槽から除去することができる。1つのライン62のみが図示されているが、代表的な反応槽は1つより多くのライン62を含むことができる。
【0047】
触媒は、米国特許3,779,712号公報に開示された装置のような触媒供給装置(図示されていない)反応槽に連続的または断続的に注入することができる。前記触媒は、好ましくは反応槽壁から反応槽直径の20〜40%離れ、前記床高さの約5〜約30%の高さの位置で反応槽内に供給される。前記触媒としては、1つまたは複数のメタロセン触媒、1つまたは複数のチーグラー・ナッタ触媒、バイメタリック(bimetallic)触媒、または触媒の混合物のような、流動化床反応槽内での使用に適しエチレンを重合できる任意の触媒を挙げることができる。
【0048】
窒素またはアルゴンのような前記触媒に不活性な気体は、好ましく前記床に触媒を運ぶために用いられる。分離機42またはマニホルド54からのいずれの冷却凝縮液体も前記床に触媒を移送するために用いることができる。
【0049】
本発明の方法において、流動化床反応槽は少なくとも1つのポリオレフィン・ホモポリマーまたはコポリマーを生成するために運転される。好ましいポリオレフィンには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、およびこれらのホモポリマーまたはコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
1つの態様において、前記少なくとも1つのポリオレフィンにはポリエチレンのホモポリマーおよび/またはコポリマーが含まれる。低密度ポリエチレン(「LDPE」)は、フリーラジカル開始剤を用いた高圧下、またはチーグラー・ナッタまたはバナジウム触媒を用いた気相プロセスにおいて調製することができ、代表的には0.916〜0.940g/cm3の範囲の密度をもっている。LDPEは、主なポリマー骨格から伸びた比較的多数の長鎖の分枝のため、「分枝」または「ヘテロ分枝(heterogeneously branched)」ポリエチレンとも呼ばれる。同様の密度範囲、すなわち0.916〜0.940g/cm3をもち、直鎖状であり長鎖分枝をもたないポリエチレンも知られている。この「直鎖低密度ポリエチレン」(「LLDPE」)は従来型のチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒により生産することができる。代表的には0.928〜0.940g/cm3の範囲の比較的高密度のLDPEは、ときどき中密度ポリエチレン(「MDPE」)に該当する。さらに大きな密度をもつポリエチレンは高密度ポリエチレン(「HDPEs」)、すなわち0.940g/cm3より大きな密度をもつポリエチレンであり、一般的にチーグラー・ナッタ触媒により調製される。超低密度ポリエチレン(「VLDPE」)も知られている。VLDPEは、異なる特性のポリマーを生成する多くの異なるプロセスにより生産することができるが、一般的には0.916g/cm3より小さな密度、代表的には0.890〜0.915g/cm3または0.900〜0.915g/cm3の密度をもつポリエチレンと記載されている。
【0051】
ターポリマーのように二つより多い種類のモノマーをもつポリマーについても、ここで用いられる「コポリマー」という用語に含まれる。好ましいコモノマーには、C3−C20α−オレフィンまたはC3−C12α−オレフィンのようなα−オレフィンが含まれる。α−オレフィン・コモノマーは直鎖状でも分枝状でもよく、所望により二つまたはそれより多いコモノマーを用いることができる。好ましいコモノマーの例としては、C3−C12α−オレフィン、および1つまたは複数のC1−C3アルキル分枝またはアリール基をもつα−オレフィンが含まれる。具体的な例としては、プロピレン;3−メチル−1−ブテン;3,3−ジメチル−1−ブテン;1−ペンテン;1つまたはそれより多いメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−ペンテン;1つまたはそれより多いメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−ヘキセン;1つまたはそれより多いメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−ヘプテン;1つまたはそれより多いメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−オクテン;1つまたはそれより多いメチル、エチルまたはプロピル置換基を有する1−ノネン;1つまたはそれより多いメチル、エチルまたはプロピル置換1−デセン;1−ドデセン;およびスチレンが含まれる。上述のコモノマーの一覧は単なる具体例であり、これらの限定することを意図したものではない。好ましいコモノマーには、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびスチレンが含まれる。
【0052】
その他の有用なコモノマーには、極性ビニル、共役および非共役ジエン、アセチレンおよびアルデヒドモノマーが含まれ、ターポリマー組成物に少ない容量でこれらを含むことができる。コモノマーとして有用な非共役ジエンは、6〜15の炭素原子を有する直鎖状炭化水素ジオレフィンまたはシクロアルケニル置換アルケンが好ましい。好ましい非共役ジエンには、例えば、(a)1,4−ヘキサジエンおよび1,6−オクタジエンのような直鎖非環式ジエン、(b)5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、および3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンのような分枝非環式ジエン、(c)1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、および1,7−シクロドデカジエンのような単環性脂環式ジエン、(d)テトラヒドロインデン;ノルボルナジエン;メチル−テトラヒドロインデン;ジシクロペンタジエン(DCPD);ビシクロ−(2.2.1)−ヘプタ−2,5−ジエン;5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)のようなアルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよびシクロアルキリデン置換ノルボルネン、(e)ビニルシクロヘキセン、アリルシクロヘキセン、ビニルシクロオクテン、4−ビニルシクロヘキセン、アリルシクロデセン、およびビニルシクロドデセンのようなシクロアルケニル置換アルケンが含まれる。代表的に使用される非共役ジエンの中でも好ましいジエンは、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、およびテトラシクロ−(Δ−11,12)−5,8−ドデセンである。特に好ましいジオレフィンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、ノルボルナジエン、および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)である。
【0053】
用いるコモノマーの量は所望のポリオレフィン密度および選択される具体的なコモノマーに依存する。当業者は所望の密度を有するポリオレフィンを生産するのに適切なコモノマーの好適な量を容易に決定できる。
【0054】
ラマン分光法
ラマン分光法は分子の特性決定、定性および定量のための周知の分析手法である。ラマン分光法は、非共鳴、非イオン化照射光源、代表的にはレーザーのような可視または近赤外の照射光源からの非弾性散乱照射を利用して、分子の振動および回転状態についての情報を取得するものである。一般的には、非イオン化、非共鳴照射は、分子のような散乱中心から弾性的および等方性的に散乱される(ラレイ[Raleigh]散乱)。周知の対称および選択法則に従えば、入射照射光の非常に小さな断片は、E=hν0±|Ei’,j’−Ei,j|のエネルギーをもつ各々の非弾性散乱光子で非弾性的および等方性的に散乱することができる。ここで、hν0は入射光子のエネルギーであり、|Ei’,j’−Ei,j|は分子の最終(i’,j’)と最初(i,j)の振動−回転状態間の絶対差である。この非弾性散乱照射がラマン散乱であり、散乱光子が入射光子(E=hν0−|Ei’,j’−Ei,j|)よりも低いエネルギーをもつストークス(Stokes)散乱、および散乱光子が入射光子(E=hν0+|Ei’,j’−Ei,j|)よりも高いエネルギーをもつ反ストークス(Stokes)散乱の両方を含む。
【0055】
ラマン・スペクトルは、代表的には「ラマン・シフト」に対する強度(任意の単位)のプロットとして示され、ここでラマン・シフトは励起照射と散乱照射との間のエネルギーまたは波長の差である。前記ラマン・シフトは、代表的には波数の単位(cm-1)、すなわち、センチメータ当たりの波長シフトの逆数として報告される。エネルギー差|Ei’,j’−Ei,j|および波数(ω)は|Ei’,j’−Ei,j|=hcωという表現によって関連づけられる。ここで、hはプランク定数であり、cはcm/sで示される光速であり、ωはセンチメータで示される波長シフトの逆数である。
【0056】
得られたラマン・スペクトルのスペクトル範囲は特に限定されないが、有用な範囲は多原子振動周波数の代表的な範囲、一般的には約100cm-1〜約4000cm-1に相当するラマン・シフト(ストークスおよび/または反ストークス)を含む。有用なスペクトル情報は低周波数領域および高周波数領域に存在することが評価されるべきである。例えば、多くの低周波数の分子様式は100cm-1以下のラマン・シフト領域のラマン散乱に寄与し、倍音振動(ハーモニクス)は4000cm-1以上のラマン・シフト領域のラマン散乱に寄与する。したがって、所望する場合には、ここで述べるラマン・スペクトルの取得と利用には、これらの低周波および高周波スペクトル領域を含み得る。
【0057】
逆に、得られたスペクトル領域は、いずれの100cm-1〜4000cm-1の領域よりも低い領域である。多くのポリオレフィンについて、ラマン散乱強度の多くは約500cm-1〜約3500cm-1または約1000cm-1〜約3000cm-1の領域に存在するであろう。得られた領域は、隣接する必要のない複数の亜領域を含み得る。
【0058】
以下に説明するように、ここで記載される方法の特別の利点は、ラマン散乱強度データは特定スペクトルの特徴を同定、選択および分解する必要なしにポリオレフィン粒子の特性を決定するのに有用だということである。したがって、特定スペクトルの特徴をポリオレフィンの特定部分の特定様式によるものとして同定する必要もなく、選択されたスペクトルの特徴に相当するラマン散乱を選択的に追跡する必要もない。実際、そのような選択的な追跡は、同定できる(したがって有用と予測できる)バンドの間およびその下に潜むこれまで単なる利用できない散乱強度と一般に考えられてきたスペクトルに埋め込まれた情報内容の財産を不利にも無視しているということが驚くべきことにわかってきた。したがって、ここに記載する方法において、得られ、また利用されるラマン・スペクトルデータは、従来からスペクトル・バンドとして確認されていた領域および従来からバンド間領域または未分解領域として確認されていた領域を含む比較的広いスペクトル領域にわたる複数の周波数または波長シフト、散乱強度(x,y)測定を含む。
【0059】
得られたデータの周波数間隔どり(Frequency spacing)は、装置分解能および能力、取得時間、データ分析時間、および情報密度に基づいて当業者によって容易に決定できる。同様に、用いられる平均信号量は、装置とプロセスの有効性と限界に基づいて当業者によって容易に決定される。
【0060】
測定されるスペクトル領域は、ストークス散乱(すなわち、励起周波数よりも低い周波数で散乱される照射)、反ストークス散乱(すなわち、励起周波数よりも高い周波数で散乱される照射)、またはその両方を含み得る。任意に、ラマン散乱信号に埋め込まれた偏光情報用いることができ、当業者はラマン偏光情報の取得方法を容易に理解する。しかしながら、ここで記載されるポリマー特性の決定には、偏光情報の利用は必要ではない。ここで記載されるある態様において、任意のラマン偏光は、以下に記載するように、信号を信号分析器に運ぶために用いられるファイバー光学導管との相互作用の結果としてランダム化されている。
【0061】
ラマン機器
図2については、ラマン・データを収集し処理するために用いる装置には、ラマンサブシステム100、試料サブシステム200、およびデータサブシステム300が含まれる。図2に示すように、試料サブシステム200はポリマー生産ライン62を介して、反応槽20と連結している(図1も参照)。これらのサブシステムのそれぞれについて以下に記載する。図2は、さらに詳細に以下に記載するように、in situで試料採取する場合に反し、試料採取が抜取りによる場合について例示している。
【0062】
図示していない態様において、ラマン・プローブ204は反応槽本体22に直接挿入することができる。したがって、反応槽本体22は試料サブシステム200として働くことができる。ラマン・プローブ204は、粒子状樹脂が回収され、ラマン・プローブによって分析されるプロセスのどこでも、または粒子状樹脂がラマン・プローブに関して移動できる、例えば、循環気体配管内(例えば、図1のライン30)、生成物排出点の下流の生成物放出系内(例えば、図1の22からライン62)、生成物放出系と浄化装置(purger(s))/ガス抜き装置(degasser(s))との間の移送ライン内、1つまたは複数の浄化装置/ガス抜き装置内、仕上げ/梱包への移送ライン内、押出機/混合機への供給槽内(図示されていない)などのプロセスのどこでも用いることができることは本発明の開示により当業者に理解されるであろう。
【0063】
図示されていないある態様において、ラマン・プローブ204は流動化床ゾーン26に挿入されており、さらに好ましくはゾーン26の下半部だが格子24の上部である。
【0064】
ラマン・サブシステム
前記ラマン・サブシステムは、ラマン分光光度計、励起光源102の主な構成部、モノクロメータ104、および検出器106を含む。ラマン分光光度計は周知の分析装置であるため、ここでは簡単な記載のみ行う。
【0065】
ラマン分光光度計は、励起照射を試料サブシステム200に届ける励起光源102を含む。散乱照射は前記試料サブシステム200(以下に記載する)内で収集され、ラレイ散乱光が取り除かれ、モノクロメータ104を介して分散される。分散されたラマン散乱光は、さらに以下で記載するように、次に検出器106上に投影され、続いてデータサブシステムで処理される。
【0066】
励起光源
前記励起光源および周波数は周知の当該技術を考慮して容易に決定される。代表的には、前記励起光源102は、二重周波数Nd:YAGレーザー(532nm)、ヘリウム−ネオンレーザー(633nm)、または固体状態ダイオードレーザー(例えば785nm)のような可視または近赤外レーザーである。前記レーザーは、パルスまたは連続波(CW)でもよく、所望のような偏光またはランダム偏光でもよく、好ましくは単一モードである。低電力または高電力が所望により使用できるが、代表的な励起レーザーは100〜400mW電力(CW)を有することになるであろう。レーザー以外の光源も使用することができ、上述したもの以外の波長、レーザータイプ、およびパラメータも用いることができる。蛍光が典型的に高周波数における比較的弱いラマン信号を圧倒するという実際的な制限に従う場合、ラマン散乱を含む散乱は励起周波数の第四番目の電力に比例している。したがって、高周波数(短波長)光源は信号を最大化するのに好ましく、一方、低周波数(長波長)光源は最小化するのに好ましい。当業者は、モード安定性、保守時間および費用、主要な費用、および当該技術分野で周知されている他の要因のような、以上のおよびその他のことを考慮して適切な励起光源を容易に決定することができる。
【0067】
従来のビーム操作光学またはファイバー光学ケーブルのような当該技術分野で既知の都合のよい手段を用いて、前記励起照射は試料サブシステム200に配送することができ、散乱放射は前記試料サブシステムから回収できる。オンラインによるプロセス測定にとって、ファイバー光学的に励起照射を配送し散乱照射を回収することは特に好都合である。代表的に用いられる励起放射がファイバー光学的に容易に操作できるということはラマン分光法の特別な利点であり、このため励起光源は試料採取領域から離れて設置することができる。特定のファイバー光学プローブについては以下に記載する。しかしながら、当業者はラマンシステムは照射操作のどんな特定の手段にも限定されないことを評価できるであろう。
【0068】
モノクロメータ
散乱放射光は、以下に記載するファイバー光学プローブのような当該技術分野で既知のいかなる好都合な手段によっても回収され分散される。回収された散乱放射光はラレイ散乱を除去するためにフィルターにかけられ、任意に蛍光を除くためにフィルターにかけられ、次にブレーズ格子またはホログラフィー格子のような適当な分散要素を用いてまたは干渉法的に(例えば、フーリエ変換を用いて)周波数(波長)分散される。前記格子は、用いられる検出器のタイプによって固定またはスキャンされる。前記モノクロメータ104は、ファイバーおよびビーム操作光学に関連する、どのような分散要素であってもよい。
【0069】
検出器
分散ラマン散乱は検出器106上に投影される。検出器の選択は、分解能、好適な周波数範囲への感度、応答時間などのような様々な要因を考慮に入れて、当業者により容易になされる。代表的な検出器には、ダイオードアレイまたは電荷結合素子(CCDs)のような一般的に固定分散(fixed-dispersive)モノクロメータと用いられるアレイ検出器、または硫酸鉛検出器およびインジウム−ガリウム−砒素検出器のような一般的にスキャン分散(scanning-dispersive)モノクロメータと用いられる単一素子(single element)検出器が含まれる。アレイ検出器の場合には、各検出器素子に相当する周波数(波長)がわかるように検出器は検量される。検出器応答は、ラマンスペクトルを構成する一組の周波数シフトおよび強度(x,y)データ点を発生するデータサブシステム300に配信される。
【0070】
試料サブシステム
前記試料サブシステム200はラマンシステム100を重合プロセスに結合させる。したがって、前記試料サブシステム200は励起光源102からポリマー試料に励起放射光を送り、散乱放射光を回収し、および散乱放射光をモノクロメータ104に送る。
【0071】
上記のように、励起放射光は、従来の光学またはファイバー光学ケーブルの使用のようにいかなる従来手段によってもポリマー試料から送り、回収することができる。
【0072】
1つの態様において、前記試料サブシステムはプローブ204および試料チャンバー202を含む。図3にはファイバー光学プローブの一態様が示されている。前記プローブは、励起放射光を励起光源から試料に向けて運ぶ1つ又は複数のファイバー光学ケーブル208を含むファイバー光学束206、および回収散乱放射光を試料から運ぶ1つまたは複数のファイバー光学ケーブル210を含む。ファイバー光学ケーブル208は励起光源(図2中の102)と光学的に連結され、ファイバー光学ケーブル210はモノクロメータ(図2中の104)と光学的に連結されている。前記励起および散乱放射光は周知の技術を用いて操作できる。したがって、図3に示される特定の光学機構は単なる例示として評価されるべきである。励起放射光212は、ファイバー光学ケーブルによるシリカラマンを除くために、光学系214を介してホログラフィー格子216および空間フィルター218の方向を向き、次に鏡220およびビーム・コンバイナー222を介して試料採取光学系224および試料チャンバー202の方向を向いている。散乱放射光は試料光学系224を介して回収され、ラレイ散乱放射光を除くためにビーム・コンバイナー222を通してノッチフィルター226を向き、ファイバー光学ケーブル210を目指す。
【0073】
前記試料チャンバー中の試料は複数のポリマー粒子(顆粒)を含み、反応槽から放出したポリマー生成物を示す。有利にも、流動化床反応槽の放出ライン中のポリマーに存在し得る残留溶媒またはその他の液体炭化水素のような液相成分を前記試料が含まないということは必要ではない。
【0074】
ここで記載するように、ラマンプローブは焦点となる視野を有するという点でイメージングである。イメージング・プローブは最も有効な光学配置であり、ラマン信号が弱いものであるため、イメージング・プローブはできる限り多くの散乱光を回収する。イメージング・プローブの欠点はプローブが一度に非常に少ない量の試料しか「見ない」ということである。代表的な流動化床プロセスにとって、固定イメージング・プローブはたかが1つまたは二つのポリマー顆粒に相当する視野しかもたない。したがって、静止モードにおいて回収されるデータは全体の材料を表現することはできない。
【0075】
1つの態様において、限定的な視野の欠点は、ラマン・プローブが試料採取間隔の経過にわたって多くのポリマー顆粒から散乱を回収するために、試料とラマン・プローブとの間の相対的な運動を提供することによって克服される。したがって、例えば、プローブは試料採取間隔の少なくとも一部分の間に試料を通って移動することができ、または同様に試料または試料チャンバーは、またはその両方が試料採取間隔の少なくとも一部分の間に固定プローブと連関して移動することができる。ある特定の態様において、試料チャンバーを静止して維持し、線状アクチュエータを用いてプローブを線状に移すことにより試料採取の間ラマン・プローブを試料チャンバーの内側や外側に移動することは好都合である。しかしながら、当業者は、試料顆粒とプローブとの間の相対的な運動は多くの他のメカニズム、例えば、ラマン・プローブが反応槽本体22内に挿入された場合に例えば起こるように、ポリマー顆粒が静止プローブを通過させることによって達成されることを容易に理解するであろう。したがって、追加的な態様は、顆粒状ポリマーが移動し、すなわち図2中の試料チャンバー202によって示されるように、試料チャンバーの必要なしに系に加えられる重合反応槽系内にラマン・プローブが設置され、またはin situで挿入された場合を想定できる。ここで用いられるように用語「重合反応槽系」は図1に例示される系(しかし、限定されない)、すなわち、重合反応槽本体(図1の20)から押し出し/ペレット化の前の仕上げ装置までの系を包含する。前記重合反応槽系は気相重合反応槽系であることが好ましい。
【0076】
ある態様において、特にポリマー顆粒がプローブを通過する場合には、プローブが静止したままであるかどうかにかかわらず、視野が被膜されることを防ぐためにプローブは回収されたポリマー生成物を洗浄できる。これは、例えば、窒素、水素、エチレン、イソペンタン、ヘキサン、ミネラル油、n−ブタンなどを用いて達成できる。さらにより好ましい態様において、最適の読み取りを行うためにデータ収集とプローブ洗浄との期間の間に周期を設ける。プローブの洗浄/データ収集の周期時間は様々にでき、またプローブ挿入深度も様々とすることができる。
【0077】
プローブを反応層本体22内に直接挿入する一つの利点は、ポリマー特性ばかりでなくプローブチップに詰まりを引き起こす皮膜化(sheeting)や汚れ(fouling)の開始のような反応槽操作の問題点をより早く示すことである。
【0078】
適当なプローブは市販品として、例えば、アキソム・アナリティカル社(Axiom Analytical, Inc.)およびカイザー・オプティカル・システムズ(Kaiser Optical Systems, Inc.)から入手できる。
【0079】
具体的な例として、以下の実施例4〜7で用いる特定の試料採取システムについて、ここで記載する。
【0080】
2つの反応槽をもつ流動化床重合プラントを、1つはメタロセン触媒LLDPE樹脂を生成し、他の1つはチーグラー・ナッタ触媒LLDPE樹脂を生成する反応槽として用いた。ここに図4で言及するように、各反応槽20(1つの反応槽のみ示されている)は、反応槽からの生成物を交互に除去する2つの放出バルブAおよびBを有する。前記生成物は、約60マイル/時間(0.4m/s)のスピードの90psi(0.6MPa)窒素で生成物排出パイプ62を通して気送的に移送される。このスピードで反応槽から放出された生成物のスラグ(slug)はパイプのどの位置においても数秒間存在するのみである。しかしながら、信号−ノイズ比を改善するために60−120秒間のラマン信号を平均することが好ましい。これを達成するために、生成物排出パイプ62を通してスラグ通過するように、少量の生成物(約800グラム)が試料チャンバー202にトラップされ保持される。試料チャンバー202は、1インチ(25mm)直径のパイプ62bおよび気送的に機能されているバルブCまたはDにより生成物排出パイプに取り付けられている。バルブCおよびDの操作はラマン分析器により制御されるが、予備システムによっても制御するBとができる。ラマン分析器は、放出バルブAまたはBが開放したという反応槽からの信号を待っている。次にラマン分析器は、生成物排出パイプ62に試料チャンバーを接続するバルブCまたはDを開放し、生成物のスラグが試料採取位置を通過するのに十分な予め定められた時間のあいだ待機する。次にラマン分析器は、試料チャンバー202中の生成物の採取試料をトラップして試料採取バルブCまたはDを閉じる。
【0081】
ラマン分析器プローブ204は、フィルター用および光学(非電子的)信号処理用の素子を内包するプローブヘッド230、および8“長0.5”径(20cm×1.3cm)の試料インターフェースを含む。チューブ232は、試料に接触するようにするために試料入り口とは反対側の試料チャンバーの末端を通して挿入される。気送線状アクチュエータ234は試料チャンバー外側のプローブをゆっくり引くためにプローブ204に取り付けられ、試料回収時間のあいだ再挿入される。このプローブの運動により、連続して変化する試料の測定のための試料前面を横切って流れる試料が生じる。
【0082】
反応槽20は、バルブAおよびBによって制御された2つのライン62を変えて、3−6分周期で(グレード依存的)放出する。試料はラインのうち1つのみから回収される。試料システムは、試料が放出されているというラマン分析器の反応槽からの試料準備信号を待って働く。この試料準備信号はラマン分析器にインプットされたディジタル形式のものである。分析器が試料準備信号を受け取るときに、試料採取操作のためのバルブ準備の前に分析器が行う一連のタスクがある。これらは以下のようなものである。
【0083】
その試料準備が次のストリームのためかどうかを決定するチェック。ラマン制御ソフトウエアには、どの反応槽が試料採取および測定を行うかをオペレータが分析器にセットするストリーム配列表がある。代表的には、2つの反応槽系のための1,2,1,2などであるが、反応槽1におけるグレード移行のような状況下においては、オペレータは試料採取のために、例えば1,1,1,2,1,1,1,2などを望むだろう。したがって、分析器は、受け取った放出インディケータが下剤のストリーム配列と合致していることを保証するためのチェックを行う。もし合致しなければ、分析器はその信号を無視する。
【0084】
この反応槽のための反応槽オンライン・ディジタル入力が有効であることのチェック。代表的なストリーム配列1,2,1,2は効果的かもしれないが、オペレータが移行または反転期のように単一の反応槽しかモニターしないことを決定する場合もある。反応槽はそれぞれの反応槽のための、活動状態のまたは現在のストリーム配列表を無視する特定の反応槽から試料採取するか否かの分離したディジタル入力を受け取る。
【0085】
試料準備信号と採取試料用バルブの設定との間の設定時間間隔の待機。
【0086】
採取試料用のバルブの設定。
【0087】
バルブ状態は配列採取資料用に下記の表に生成物排出ライン62を通して、閉鎖は状態「C」、開放は状態「O」として示した。
【表1】

【0088】
試料採取は試料チャンバーバルブCおよびDを開放することによって達成される。生成物放出ライン62のAバルブを通して生成物が放出される配置において、開放バルブCは試料が試料チャンバー202に入ることを許容し、開放バルブDは出口として働く。放出された90psig窒素中のポリマー生成物の一部分は生成物放出ライン62における屈曲部に取り付けられた試料チャンバー202の中へ約60マイル/時間単位で移送される。一旦、試料チャンバーが満たされると、分析器はデータ収集を完全にし、次の試料を準備するために一連の操作を実行する。これらの操作には以下が含まれる。
【0089】
採取試料状態が設定された後の特定の時間間隔の待機。
【0090】
スペクトル測定バルブ状態の設定。
【0091】
試料取り出し。
【0092】
プローブ位置の再設定。
【0093】
試料バルブ状態の待機の設定。
【0094】
ストリーム配列情報のアップデート。
【0095】
プローブは試料チャンバーを入出移動できるように線状アクチュエータに取り付けられる。試料状態(5)の待機において、プローブは、プローブの軸がチャンバーが満たされた後に試料に浸漬されるように資料中に完全に浸漬される。スペクトル測定バルブ状態(2)は、バルブCおよびDを閉じるばかりでなく、データが収集されている間にプローブがゆっくりと試料チャンバーから引き出されるように線状アクチュエータを制御して両方の三方バルブを働かせる。スペクトル収集操作において、試料チャンバー中の試料はバルブCおよびEを開放することによって試料移送ラインに逆戻りする。
【0096】
データ・サブシステム
再び図2に言及すると、データサブシステムは、検出器106の応答信号を受け取る分析器302を含む。分析器は、例えば、ラマン・データを記録し処理可能なコンピュータであり得る。分析器の他の機能は、例えば、下記のように回帰モデルを開発し、PCA/LWR分析を実行することを含み得る。上述の1つの態様において、データサブシステムは試料採取プローブの動作を制御する。上述の他の態様において、データサブシステムは試料チャンバーを満たし空にするためのバルブを制御する。他の態様において、データサブシステムは1以上のポリマー特性の計算値を目標値と比較して、一以上の反応槽パラメータを計算値と目標値との間の偏差に応答して調整する。反応槽制御はさらに以下に記載する。
【0097】
PCA/LWR分析
ラマン・スペクトルはポリオレフィン試料の様々な特性に直接または間接的に関連する情報を含む。習慣的には、試料成分は、分子の特定の振動様式のために確認される特定のバンドのように、特異なスペクトル・サインの存在によって同定される。次に濃度のような定量的な情報は、試料成分について、例えば、特定ピーク下の面積を積分しその面積を検量試料と比較すること、特定ピークにおける散乱強度を時間の機能として追跡すること、などにより得ることができる。これらの習慣的なアプローチに対して、本発明者らは驚くべきことに、ポリマー特性が特定のスペクトルの特徴を同定および選択する必要なしにラマン・スペクトルから、ラマン散乱データとポリマー特性が相関する多変数モデルを用いることにより決定できることを発見した。このモデルは、分離したスペクトル・バンドではなく大きな隣接する領域のスペクトルを用い、このため従来の分析で利用されず確認されていない大容量の情報密度を獲得する。さらに、スペクトル・データは、光学スペクトルから容易にわかるメルトフロー速度(以下に定義する)、密度、分子量分布などのようなポリマー特性に相関する。
【0098】
1つの態様において、以下に記載するデータ分析は、メルトフロー速度、密度、分子量、分子量分布、およびそれらの機能から選択されるポリオレフィン粒子の少なくとも1つの特性のための予測モデルを構築し適用するために用いられる。
【0099】
ここで用いられるように、用語「メルトフロー速度」はASTM D−1238に従って定義される全ての様々な特性を示す。これには、ASTM D−1238に従って測定されたポリマーのメルトフロー速度であるI2.16、ふつう「メルトインデックス」と呼ばれる条件E(2.16kg負荷、190℃)、ASTM D−1238に従って測定されたポリマーのメルトフロー速度であるI21.6、ふつう「フローインデックス」と呼ばれる条件F(2.16kg負荷、190℃)が含まれる。他のメルトフロー速度は異なる温度および異なる負荷により特定できる。二つのメルトフロー速度の比は「メルトフロー比」またはMFRであり、I21.6/I2.16が最も普通に用いられる。「MFR」は一般的に、高負荷で測定したメルトフロー速度(分子)の低負荷によるもの(分母)に対する比率を示すように用いられる。
【0100】
ここで用いるように、「分子量」は、数平均、重量平均、またはZ平均分子量のような分子重量分布のあらゆるモーメントを示し、「分子量分布」は2つのそのような分子量の比をしめす。一般に、分子量Mは下記式から計算される。
【数1】

【0101】
上記式中、Niは分子量Miをもつ分子の数である。n=0の場合、Mは数平均分子量Mnである。n=1の場合、Mは重量平均分子量Mwである。n=2の場合、MはZ平均分子量Mzである。これらの、またはさらに大きなモーメントは用語「分子量」に含まれる。所望の分子量分布(MWD)機能(例えば、Mw/MnまたはMz/Mwのような)相当するM値の比率である。ゲル浸透クロマトグラフィーのような従来法によるMおよびMWDの測定は当該技術分野で周知であり、さらに詳細には、例えば、スレード,ピー.イー編、ポリマー分子重量II部、マルセル・デッカー社、ニューヨーク、1975年、287−368頁(Slade, P.E.Ed., Polymer Weight Part II, Marcel Dekker Inc., NY, (1975) 287-368);ロドリゲス,エフ、ポリマーシステムの原理、第3版、ヘミスフィア出版社、ニューヨーク、1989年、155−160頁(Rodriguez, F., Principles of Polymer Systems 3rd ed., Hemisphere Pub. Corp., NY, 1989, 155-160);米国特許4,540,753号公報;ヴァーストレート他、マクロモルキュール、21巻、1988年、3360頁(Verstrate et al., Macromolecules, vol. 21, (1988) 3360)およびそれらの引用文献に記載されている。
【0102】
本発明の方法は、ポリマー特性を決定する回帰モデルであり、主要成分の負荷および主要成分スコアを含む回帰モデル、ポリオレフィン試料のラマン・スペクトルを得ること、少なくともラマン・スペクトルの一部分および主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算すること、および新しい主要成分スコアを回帰モデルに適用させることによりポリマー特性を計算することを含む。
【0103】
前記回帰モデルは、好ましくは主要成分分析(PCA)エイゲンベクター(eigenvectors)を用いる局所重視回帰(LWR)モデルである。PCAは周知の分析方法であり、例えば、ウィンドウズ・ソフトウエアのためのピルエットTM(PirouetteTM)多変数データ分析マニュアル(インフォメックス社、ウッディンビル、WA、1985−2000年);PLSツールボックスTM ソフトウエアマニュアル(エイゲンベクター・リサーチ社、マンソン、WA、1998年)、およびそれらに引用された文献に記載されている。LWRは、例えば、ナエスおよびイサックソン、アナリティカル・ケミストリー、62巻、664−673頁、1990年;セクリック他、アナリティカル・ケミストリー、65巻、835A−845A頁、1993年、およびそれらに引用された文献に記載されている。
【0104】
主要成分分析は、生の変数の線状の組み合わせを生成して、一組の相互に直角のエイゲンベクターを構築する(主要成分の負荷)数学的方法である。イゲンベクターは互いに直角であるため、これらの新しい変数は相関しない。さらに、PCAは差が減少するようにエイゲンベクターを計算でる。前記分析は元の変数の数に等しいイゲンベクターの数を計算するが、実際には、はじめの僅かなエイゲンベクターが大量の試料分散を捕捉する。したがって、相対的に少数のエイゲンベクターのみが差を十分に捕捉するために必要とされ、少ない差を捕捉する多くのエイゲンベクターは、所望により無視される。
【0105】
前記データは、任意に平均中心化され、自動計測され、他の関数により計測され、または計測されない、それぞれの試料は列でそれぞれの変数は行を示すm(列)およびn(行)でマトリクスXとして表現される。データマトリクスの共分散cov(X)は下記のように表現される。
cov(X)=XTX/(m−1)
【0106】
ここで、上付き文字Tは移項マトリクスを示す。前記PCA分析はデータマトリクスを分解して主要成分スコアベクターSiおよび主要成分負荷ベクター(エイゲンベクター)Liの線状組み合わせとして、下記のように表現できる。
X=S1LiT+S22T+S33T+・・・
【0107】
エイゲンベクターLiは、相当するエイゲンベクターλiが各々のエイゲンベクターによって捕捉される相対量の共分散を示す、共分散マトリクスのエイゲンベクターである。したがって、線形組み合わせは残存するエイゲンベクターの合計が受容できる小さな値になった後に斜切頭することができる。
【0108】
主要成分回帰(PCR)、部分最小二乗(PLS)、投影追跡回帰(projection pursuit regression:PCR)、交互条件期待(alternating conditional expectations:ACE)、他変数適応スプライン(MARS)およびニューラルネットワーク(NN)のような様々な線形または非線形数学モデルを用いてPCA空間においてラマン散乱強度をポリマー特性に相関させたモデルを構築できる。
【0109】
特定の態様において、前記モデルは局所重視回帰モデルである。局所重視回帰(LWR)は、滑らかな非線形関数が、近接データ点のみを回帰に用い、線形または相対的な単純非線形(二次方程式のような)関数により近似できると仮定する。このq近接点が用いられ、近似により重み付けられ、回帰モデルは局所重視値に適用される。
【0110】
検量相において、ラマン・スペクトルが得られ、試料のポリマー特性が実験室で測定される。測定される特性には、密度、メルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびそれらの関数のようなモデルが予測する特性が含まれる。所望のポリマー特性のために、試料用の測定ポリマー特性を含むデータセットおよび試料用のラマン・データがPCA空間に分解し、検量データセットが得られる。特定の検量試料数は要求されない。当業者はモデルの能力および追加の検量データによる能力増強に基づいて適切な数の検量試料を決定することができる。同様に、特定の数のPCAエイゲンベクターは要求されず、当業者は選択された数のエイゲンベクターを捕捉する変数量および追加のエイゲンベクターの増強効果に基づいて適切な数を選択できる。
【0111】
前記LWRモデルは当該分野の既知の方法により評価できる。検量試料を2つの組、すなわち、検量データセットおよび評価データセットに分けるのは便利である。検量データセットは、評価データセットのラマン・スペクトルを用いて、モデルを開発し、評価データセットの試料用の適切なポリマー特性を予測することに用いられる。評価データセットの試料用の選択されたポリマー特性は計算および測定の両方がなされているので、モデルの有効性は計算値および測定値を比較することにより評価できる。
【0112】
評価モデルは、次に所望のポリマー特性または種々の特性を予測するため、試料スペクトルに適用できる。
【0113】
望む場合には、単純モデルは2種以上のポリマー特性を予測するために用いることができる。おそらく、分離モデルは各々のポリマー特性について開発される。したがって、1つの態様において、本発明は、第一ポリマー特性を決定するための第一回帰モデルであり、第一主要成分の負荷および第一主要成分スコアを含む第一回帰モデル、第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデルを得ること、第二主要成分の負荷および第二主要成分スコアを含む第二回帰モデル、ポリオレフィンを含む試料のラマン・スペクトルを得ること、ラマン・スペクトルの少なくとも一部分および第一主要成分の負荷から新しい第一主要成分スコアを計算すること、ラマン・スペクトルの少なくとも一部分および第二主要成分の負荷から新しい第二主要成分スコアを計算すること、新しい第一主要成分スコア第一回帰モデルに適用することにより第一ポリマー特性を計算すること、新しい第二主要成分スコア第二回帰モデルに適用することにより第二ポリマー特性を計算することを含む。
【0114】
もちろん、二以上のポリマー特性は第三以上の回帰モデルを含むことにより決定できる。有利にも、多数のポリマー特性は同じラマン・スペクトルを用い、および数種類の回帰モデルをスペクトル・データに適用することにより決定できる。
【0115】
ある特定の態様において、2つの回帰モデルを用い、メルトフロー速度(メルトインデックスI2.16またはフローインデックスI21.6のような)および密度の両方が決定できる。
【0116】
反応制御
ひとつの態様において、計算ポリマー特性は目標ポリマー特性と比較され、少なくとも一つの反応槽パラメータが計算および目標ポリマー特性間の偏差に基づいて調整される。少なくとも1つの反応槽パラメータは、モノマー、コモノマー、触媒および共触媒の量、反応槽の操作温度、モノマーに対するコモノマー比、モノマーまたはコモノマーに対する水素比、選択ポリマー特性に影響する他のパラメータを含み得る。例えば、選択ポリマー特性が密度であり、PCA/LWRモデルから計算された密度が目標密度より低いならば、反応槽パラメータは、例えば、コモノマー供給速度を減少させ、および/またはモノマー供給速度を増加させるように、密度を上昇させるために調整される。
【0117】
例えば、オレフィンの流動化床重合の場合には、水素が鎖移転剤として働き得る。このようにして、ポリマー生成物の分子量が制御できる。さらに、オレフィン重合反応槽の水素濃度を変化させることで、メルトインデックスI2.16(MI)のようなメルトフロー速度を変化させることができる。本発明は選択されたMI範囲を有するポリマーを生成するために反応槽を制御することである。これは、特定の反応槽で生成されるポリマーの水素濃度およびMI間の関係を理解すること、および目標MIまたはMI範囲を反応槽制御システム処理装置にプログラムすることにより達成される。ラマン分析器により発生するポリマーMIデータを追跡し、このデータを目標MI範囲と比較するとにより、反応槽容器ヘの水素の流れをポリマー生成物のMI範囲が目標MI範囲に保たれるように調整することができる。
【0118】
他の反応槽構成特性および他の反応槽パラメータを用いることができることは当業者に理解されるであろう。上述と同様に、最終ポリマー特性は、ラマン分析器により発生するデータに応答する反応槽パラメータの調整を制御することにより達成できる。
【0119】
実施例
密度(g/cm3)の実験室決定には、ASTM D1505およびASTM D1928の操作Cに従って、時間当たり15℃で冷却され、室温で40時間調節された圧縮形成試料が用いられる。
【0120】
メイトフロー速度の実験室決定は、ASTM D−1238に従って190℃で行われた。I21.6は、ASTM D−1238の条件Fに従って測定されたポリマーの「フローインデックス」またはメルトフロー速度であり、I2.16はASTM D−1238の条件Eに従って測定されたポリマーの「メルトインデックス」またはメルトフロー速度である。I2.16に対するI21.6比は「メルトフロー比」または「MFR」である。
【0121】
エクシード(EXCEEDTM:商品名)350は、1.0g/10分のメルトインデックス(I2.16)、および0.918g/cm3の密度をもつ気相メタロセン生成LLDPEエチレン/ヘキセン・コポリマーであり、エクソン・モービル・ケミカル社(テキサス州、ヒューストン)から入手できる。エクシード350は現在エクシード3518として市販されている。
【0122】
エクシード(EXCEEDTM:商品名)357は、3.4g/10分のメルトインデックス(I2.16)、および0.917g/cm3の密度をもつ気相メタロセン生成LLDPEエチレン/ヘキセン・コポリマーであり、エクソン・モービル・ケミカル社(テキサス州、ヒューストン)から入手できる。エクシード357は現在エクシード3518として市販されている。
【0123】
エクソン・モービル LL−1002(商品名)は、2.0g/10分のメルトインデックス(I2.16)、および0.918g/cm3の密度をもつ気相チーグラー・ナッタ生成LLDPEエチレン/ブテン・コポリマー樹脂であり、エクソン・モービル・ケミカル社(テキサス州、ヒューストン)から入手できる。
【0124】
エクソン・モービル LL−1107(商品名)は、0.8g/10分のメルトインデックス(I2.16)、および0.922g/cm3の密度をもつ気相チーグラー・ナッタ生成LLDPEエチレン/ブテン・コポリマー樹脂であり、エクソン・モービル・ケミカル社(テキサス州、ヒューストン)から入手できる。
【0125】
エクソン・モービル LL−6100(商品名)は、20g/10分のメルトインデックス(I2.16)、および0.925g/cm3の密度をもつ気相チーグラー・ナッタ生成LLDPEエチレン/ブテン・コポリマー樹脂であり、エクソン・モービル・ケミカル社(テキサス州、ヒューストン)から入手できる。
【0126】
エクソン・モービル LL−6101(商品名)は、20g/10分のメルトインデックス(I2.16)、および0.925g/cm3の密度をもつ気相チーグラー・ナッタ生成LLDPEエチレン/ブテン・コポリマー樹脂であり、エクソン・モービル・ケミカル社(テキサス州、ヒューストン)から入手できる。
【0127】
エクソン・モービル LL−6201(商品名)は、50g/10分のメルトインデックス(I2.16)、および0.926g/cm3の密度をもつ気相チーグラー・ナッタ生成LLDPEエチレン/ブテン・コポリマー樹脂であり、エクソン・モービル・ケミカル社(テキサス州、ヒューストン)から入手できる。
【0128】
実施例1−3
実施例1−3は本発明の実施例の実施可能性を示すために用いられる。実施例1−3においては、重合反応槽でオンラインで行われる測定のシミュレーションとして、測定は実験室で行われた。
【0129】
実施例1−3に用いられたラマン・システムは、カイザー・オプティカル・システムズ社(ミシガン州、アンアーバー)から入手可能なカイザー・オプティカル・ホロプローブ・プロセス・ラマン分析装置であった。このラマン・システムは、125mWの785nmで操作されるダイオードレーザーであり、装置にファイバー光学的に連結した2.5インチ(6.3cm)のイメージング光学によるプローブ、ホログラフィー・ノッチ・フィルター、ホログラフィー分散格子、冷却CCD検出器、および分析装置制御およびデータ分析用のコンピュータを装備した。この市販装置のより完全な説明は「オンライン化学プロセス追跡のための電子光学、集積光学、および電子技術」(プロシーディングズSPIE、第3537巻、200−212頁、1998年)に見ることができ、これらの開示はここで文献により取り込まれる。
【0130】
データ収集は、ポリマー顆粒試料の表面上、約2.5インチ(6.3cm)の距離にラマン・プローブを置くことによって達成できた。プローブはファイバー光学的に励起および散乱信号用の両方でラマン分析装置に連結した。データは各々の試料から3分間ずつ収集した(すなわち、3分間の平均信号)。CCD検出器は、アレイ素子に擬似信号を生じる宇宙線に敏感である。「宇宙線チェッキング」はこれらの人工物をチェックし、これらを無視する検出器の機能である。以下の実施例において、この宇宙線チェッキング機能を用いた。
【0131】
ラマン・スペクトルを100〜3500cm-1の領域にわたって収集した。3種の連続的なスペクトルを各々の使用試料用に収集した。試料は、メタロセン触媒を用いてエチレンおよびブテンまたはヘキセンのコポリマーを生成する2種の気相流動化床反応槽のいずれからも得た。メルトインデックスおよび/または密度の実験室測定も各々の試料について行った。
【0132】
データは、PCA/LWRモデルを開発するための検量セット、およびモデルの正確さを評価するための評価セットに用いるために分けた。分離モデルは、比較的低いメルトインデックス範囲、比較的高いメルトインデックス範囲、および密度のために開発した。
【0133】
実施例1:低メルトインデックス・モデル
73のポリマー試料を評価した。試料は、検量(モデル開発)用に用いる50の群およびモデル評価に用いる23の群に分けた。各々の試料は、ヘキセンとのコモノマーであり、約0.6g/10分から約1.2g/10分のメルトインデックス範囲のメタロセン触媒LLDPE樹脂であった。ラマン・スペクトルおよび実験室メルトインデックスの測定は上述のように収集した。
【0134】
検量データセットのメルトインデックスおよびラマン・スペクトルの実験室値は、主要成分の負荷および主要成分スコアを用いて、低範囲メルトインデックス用の局所重視回帰モデルを創るために用いた。測定メルトインデックス、予測メルトインデックス、および偏差(例えば、LWRモデルの予測から実メルトインデックスの偏差)は表1に示す。
【0135】
【表2】

【0136】
評価データセットのラマン・スペクトルを収集し、新しい主要成分スコアを評価スペクトルから計算した。局所重視回帰モデルを用いて、各評価試料のメルトインデックスを計算した。測定メルトインデックス、予測メルトインデックス、および偏差(例えば、LWRモデルの予測から実メルトインデックスの偏差)は表2に示す。
【0137】
【表3】

【0138】
図6Aは表1および2のデータをグラフで示す。図中の線はモデル予測である。計算R2値は、検量セット用として0.99、標準誤差0.0155であり、評価セット用として0.92、標準誤差0.059であった。
【0139】
実施例2:高メルトインデックス・モデル
分析は実施例1のように、高メルトインデックス試料を用いて実施された。34のポリマー試料を評価した。これらの試料は、モデル開発用の検量試料として用いたが、評価サブセットは用いなかった。各試料は、ブテン・コモノマーとの、約4g/10分から約60g/10分のメルトインデックスのメタロセン触媒LLDPE樹脂である。ラマン・スペクトルおよび実験室メルトインデックスの測定は上述のように収集した。
【0140】
メルトインデックスの実験室値および検量データセットのラマン・スペクトルは、主要成分の負荷および主要成分スコアを用いて、高メルトインデックス用局所重視回帰モデルを創るのに用いた。測定メルトインデックス、予測メルトインデックス、および偏差(例えば、LWRモデルの予測から実メルトインデックスの偏差)は表3に示す。
【0141】
【表4】

【0142】
図6Bは表3のデータをグラフで示す。図中の線はモデル予測である。計算R2値は、0.99、標準誤差0.91である。
【0143】
実施例3:密度モデル
分析は実施例1のように、予測特性としてのメルトインデックスではなく密度を用いて実施された。実施例1で用いられた22のポリマー試料サブセットが評価された。これらの試料は、モデル開発用の検量試料として用いたが、評価サブセットは用いなかった。各試料は、ヘキセン・コモノマーとのメタロセン触媒LLDPE樹脂である。ラマン・スペクトルおよび実験室メルトインデックスの測定は上述のように収集した。
【0144】
密度の実験室値および検量データセットのラマン・スペクトルは、主要成分の負荷および主要成分スコアを用いて、密度用局所重視回帰モデルを創るのに用いた。測定密度、予測密度、および偏差(例えば、LWRモデルの予測から実メルトインデックスの偏差)は表4に示す。
【0145】
【表5】

【0146】
図7はデータをグラフで示す。図中の線はモデル予測である。計算R2値は、0.95、標準誤差0.00057である。
【0147】
実施例4−5
実施例4−5は、メルトインデックス決定のための重合反応系におけるオンラインの発明方法の有効性を証明する。
【0148】
実施例4−5に用いられたラマン・システムは、レーザーが200Wの785nmで操作されるダイオードレーザーであったことを除いて、実施例1−3で記載したものと同様であった。いずれの2つの気相流動化床反応槽からのポリマー試料も上述の試料採取系を用いて採取した。
【0149】
データは、PCA/LWRモデルを開発するための検量セット、およびモデルの正確さを評価するための評価セットに用いるために分けた。分離モデルは、メルトインデックス(実施例4−5)および密度(実施例6−7)用に開発した。さらに、分離モデルは2つの各々の気相反応槽用に開発した。2つの反応槽は、以下の「反応槽1」および「反応槽2」として示す。
【0150】
実施例4:メルトインデックス・モデル、反応槽1
285のポリマー試料を評価した。試料は、検量(モデル開発)用に用いる216の群およびモデル評価に用いる69の群に分けた。各々の試料は、1/10分未満から約15g/10分のメルトインデックス範囲のメタロセン触媒LLDPE樹脂であった。ラマン・スペクトルおよび実験室メルトインデックスの測定は上述のように収集した。
【0151】
メルトインデックスの実験室値および検量データセットのラマン・スペクトルは、主要成分の負荷および主要成分スコアを用いて、メルトインデックス用の局所重視回帰モデルを創るために用いた。測定メルトインデックスおよび予測メルトインデックスは表5A−5Bに示す。偏差は表には示していないが、容易に表に示されたデータから計算できる。データは、ポリマー条件の変化する間、モデルの有効性を説明するために、採取された順に示す(各表の行に)。エントリーの前の記号「Vn」は、表6の対応する表記法で示されるように、評価スペクトルのn番目のセットがマークされたエントリーの前に採取されたことを示している。表5Bは表5Aの続きである。
【0152】
【表6】

【0153】
【表7】

【0154】
評価データセットのラマン・スペクトルを収集し、新しい主要成分スコアを評価スペクトルから計算した。局所重視回帰モデルを用いて、各評価試料のメルトインデックスを計算した。測定および予測メルトインデックスは表6に示す。評価スペクトルの取得は、対応する「Vn」位置に検量スペクトルの取得とともに散在していた。
【0155】
【表8】

【0156】
図8Aは表5A、5Bおよび6からのデータをグラフで示す。図中の線はモデル予測である。計算R2値は、0.999、標準誤差2.78%である。
【0157】
実施例5:メルトインデックス・モデル、反応槽2
特記されているように、反応槽2のポリマーからのこの時間の採取を除き、実施例4に記載の操作に従った。291のポリマー試料を評価した。試料は、検量(モデル開発)用に用いる266の群およびモデル評価に用いる25の群に分けた。各々の試料は、1/10分未満から約60g/10分のメルトインデックス範囲のチーグラー・ナッタ触媒LLDPE樹脂であった。ラマン・スペクトルおよび実験室メルトインデックスの測定は上述のように収集した。
【0158】
メルトインデックスの実験室値および検量データセットのラマン・スペクトルは、主要成分の負荷および主要成分スコアを用いて、メルトインデックス用の局所重視回帰モデルを創るために用いた。測定メルトインデックスおよび予測メルトインデックスは表7A−7Bに示す。偏差は表には示していないが、容易に表に示されたデータから計算できる。データは、ポリマー条件の変化する間、モデルの有効性を説明するために、採取された順に示す(各表の行に)。エントリーの前の記号「Vn」は、表8の対応する表記法で示されるように、評価スペクトルのn番目のセットがマークされたエントリーの前に採取されたことを示している。表7Bは表7Aの続きである。表7Aおよび7Bにおいて、メルトインデックス(MI)の単位はdg/分である。
【0159】
【表9】

【0160】
【表10】

【0161】
評価データセットのラマン・スペクトルも収集し、新しい主要成分スコアを評価スペクトルから計算した。局所重視回帰モデルを用いて、各評価試料のメルトインデックスを次に計算した。測定および予測メルトインデックスは表8に示す。評価スペクトルの取得は、対応する「Vn」位置に検量スペクトルの取得とともに散在していた。
【0162】
【表11】

【0163】
図8Bは表7A、7Bおよび8からのデータをグラフで示す。図中の線はモデル予測である。計算R2値は、0.997、標準誤差2.86%である。
【0164】
実施例6−7
実施例6−7は、密度決定のための重合反応系におけるオンラインの発明方法の有効性を証明する。
【0165】
測定は、PCA/LWRモデルが密度用に開発されたことを除いて、実施例4−5に関連して上記したものと同様に行った。用いた試料および得たスペクトルは実施例4−5のそれらのサブセットである。密度の実験室測定は上記のメルトインデックス測定に追加した試料で行った。
【0166】
実施例6:密度モデル、反応槽1
146のポリマー試料を評価した。試料は、検量(モデル開発)用に用いる109の群およびモデル評価に用いる37の群に分けた。各々の試料は、約0.912から約0.921g/cm3の密度範囲のメタロセン触媒LLDPE樹脂であった。ラマン・スペクトルおよび実験室密度の測定は上述のように収集した。
【0167】
密度の実験室値および検量データセットのラマン・スペクトルは、主要成分の負荷および主要成分スコアを用いて、密度用の局所重視回帰モデルを創るために用いた。測定密度および予測密度は表9に示す。偏差は表には示していないが、容易に表に示されたデータから計算できる。データは、ポリマー条件の変化する間、モデルの有効性を説明するために、採取された順に示す(各表の行に)。エントリーの前の記号「Vn」は、表10の対応する表記法で示されるように、評価スペクトルのn番目のセットがマークされたエントリーの前に採取されたことを示している。
【0168】
【表12】

【0169】
評価データセットのラマン・スペクトルも収集し、新しい主要成分スコアを評価スペクトルから計算した。局所重視回帰モデルを用いて、各評価試料の密度を次に計算した。測定および予測密度は表10に示す。評価スペクトルの取得は、対応する「Vn」位置に検量スペクトルの取得とともに散在していた。
【0170】
【表13】

【0171】
図9Aは表9および10からのデータをグラフで示す。図中の線はモデル予測である。計算R2値は、0.978、標準誤差0.00028g/cm3である。
【0172】
実施例7:密度モデル、反応槽2
特記されているように、反応槽2のポリマーからのこの時間の採取を除き、実施例6に記載の操作に従った。164のポリマー試料を評価した。試料は、検量(モデル開発)用に用いる151の群およびモデル評価に用いる13の群に分けた。各々の試料は、約0.916から約0.927g/cm3の密度範囲のチーグラー・ナッタ触媒LLDPE樹脂であった。ラマン・スペクトルおよび実験室密度の測定は上述のように収集した。
【0173】
密度の実験室値および検量データセットのラマン・スペクトルは、主要成分の負荷および主要成分スコアを用いて、密度用の局所重視回帰モデルを創るために用いた。測定密度および予測密度は表11A−11Bに示す。偏差は表には示していないが、容易に表に示されたデータから計算できる。データは、ポリマー条件の変化する間、モデルの有効性を説明するために、採取された順に示す(各表の行に)。エントリーの前の記号「Vn」は、表12の対応する表記法で示されるように、評価スペクトルのn番目のセットがマークされたエントリーの前に採取されたことを示している。表11Bは表11Aの続きである。
【0174】
【表14】

【0175】
【表15】

【0176】
評価データセットのラマン・スペクトルも収集し、新しい主要成分スコアを評価スペクトルから計算した。局所重視回帰モデルを用いて、各評価試料のメルトインデックスを次に計算した。測定および予測メルトインデックスは表12に示す。評価スペクトルの取得は、対応する「Vn」位置に検量スペクトルの取得とともに散在していた。
【0177】
【表16】

【0178】
図9は表11A、11Bおよび12からのデータをグラフで示す。図中の線はモデル予測である。計算R2値は、0.989、標準誤差0.00034g/cm3である。
【0179】
実施例8−9は、商業スケールの流動化床反応槽において、メルトインデックスおよび密度をオンライン予測するための本発明プロセスの有効性、精密性および正確性を証明する。ラマン・システムは、400mWの785nmで操作されるダイオードレーザーを用いたことを除いて、上述したものと同様であった。ラマン・プローブ(約150m離れた)に装置の電気構成要素を結合させるために用いたファイバー光学ケーブルは、62μm励起/100μm収集工程インデックスのシリカファイバーであった。
【0180】
メルトインデックスおよび密度モデルは、各々2つの反応槽において継続的に収集し、3−10分ごとの個別のスペクトルとしてラマンデータを保存することにより開発した。各モデルの証明はポリマー特性を決定するためにオンライン・モデルを次に用いることにより行った。
【0181】
実施例8
ポリマーのメルトインデックスは、様々なグレードのポリエチレン・ポリマーを生成する商業スケールの流動化床反応槽においてオンラインで予測された。予測は約5週間の間、12分ごとに行った。500近くの試料がまた、標準ASTM D−1238の条件E(2.16kg負荷、190℃)プロトコールを用いて実験室で試験された。表13に示された結果では、「MIモデル」はモデルにより予測されたメルトインデックスI2.16を示し、「MI lab」はASTM法により実験室で得られた値を示す。図では実験室測定に対応しない試料用の予測MIが示されていることを除いて、同じデータを図10にグラフで示す。予測MI値は、それらが図中で線となるような時間に十分に接近して位置取りされている。
【0182】
【表17】

【0183】
【表18】

【0184】
【表19】

【0185】
表13および図10は、長い時間にわたるオンライン・プロセスの正確性および精密性、およびメルトインデックス値の範囲を示す。図中のギャップは反応槽が止まった時間を示している。水平な領域は特定グレードの継続的生成を示し、急に立ち上がった領域は異なるグレード間の移行に対応している。データはさらに、グレード移行の時間でさえ、発明のオンライン・プロセスが正確で精密であることを示している。前5週の期間にわたる実験室値に比較した予測の3σ正確性は±0.069g/10分であった。
【0186】
さらに、モデルの正確性および長期の逸脱を試験するために、特定グレードの約2200試料の予測MIを各々2つの商業スケール流動化床反応槽における4週の期間にわたる静止試料について追跡した。各反応槽において、データは0.012g/10分の標準偏差(1.0および0.98g/10分のメルトインデックスを有する試料について;例えば約1%)、および測定不可の長期逸脱を示した。
【0187】
実施例9
ポリマー密度は、実施例8におけるように同じ試料およびスペクトルに密度モデルを低要して、実施例8のメルトインデックス予測に準じてオンライン予測した。300近くの試料がまた、標準ASTM D1505およびASTM D1928の操作Cプロトコールを用いて実験室で試験された。表14に示された結果では、「ρモデル」はモデルにより予測された密度を示し、「ρ lab」はASTM法により実験室で得られた値を示す。図では実験室測定に対応しない試料用の予測密度が示されていることを除いて、同じデータを図11にグラフで示す。予測密度値は、それらが図中で線となるような時間に十分に接近して位置取りされている。
【0188】
【表20】

【0189】
【表21】

【0190】
表14および図11は、長い時間にわたるオンライン・プロセスの正確性および精密性、および密度値の範囲を示す。前の実施例と同様に、図中のギャップは反応槽が止まった時間を示し、水平な領域は特定グレードの継続的生成を示し、急に立ち上がった領域は異なるグレード間の移行に対応している。データはさらに、グレード移行の時間でさえ、発明のオンライン・プロセスが正確で精密であることを示している。前5週の期間にわたる実験室値に比較した予測の3σ正確性は±0.00063g/cm3であった。
【0191】
さらに、モデルの正確性および長期の逸脱を試験するために、実施例8と同じ約2200試料の予測密度を各々2つの商業スケール流動化床反応槽における4週の期間にわたる静止試料について追跡した。各反応槽において、データは0.00006g/cm3の標準偏差(0.9177および0.9178g/cm3の密度を有する試料について)、および測定不可の長期逸脱を示した。
【0192】
これまで具体例に関連して発明を記載してきたので、以下に添付のクレームの思想および範囲の限定を目的としない、特に好ましい具体例について説明する。in situ試料採取に関して以下に記載するが、以下の記載はまた、抜き取りの試料採取が適用されないことが、本発明の開示を知った当業者にとって容易に明らかとなる場合を除いて、抜き取りの試料採取にも適用される。
【0193】
1つの好ましい具体例は重合反応槽システムにおけるポリマー特性決定のためのプロセスであり、以下を含む。すなわち、(a)ポリマー特性を決定するための回帰モデルであり、主要成分の負荷よび主要成分スコアを含む回帰モデルを得ること、(b)ポリオレフィンを含むポリオレフィン試料のラマン・スペクトルを得ること、(c)少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の装填から新しい主要成分スコアを計算すること、および(d)該新しい主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することによりポリマー特性を計算することである。さらに好ましい具体例は、1または複数の以下を含む。そこで回帰モデルを得るための工程は以下を含む。すなわち、(i)ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得ること、(ii)主要成分分析(PCA)を用いて(i)で得られたスペクトルから主要成分の負荷および主要成分スコアを計算すること、および(iii)回帰モデルがポリマー特性を主要成分スコアに相関させるように、(ii)で計算された主要成分スコアを用いて回帰モデルを生成することである。ここで、回帰モデルは局所重視回帰モデルであり、ポリマー特性は密度、メルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびそれらの関数から選択され、試料はポリオレフィンを含み、ラマン・スペクトルを得るための工程は以下を含む。すなわち、(i)ポリオレフィン粒子の試料を提供すること、および(ii)試料に照射し、試料採取プローブを用いた飼料採取時間に散乱照射光を回収することである。ここで、試料採取時間の少なくとも一部分の間に試料と試料採取プローブとの間に相対的な動作があり、重合反応槽は流動化床反応槽であり、反応槽はサイクロンを含み、さらにプロセスは以下を含む。すなわち、(i)第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデル、第二主要成分の負荷よび第二主要成分スコアを含む第二回帰モデルを得ること、(ii)少なくともラマン・スペクトルの一部分と第二主要成分の負荷から新しい第二主要成分スコアを計算すること、および(iii)該新しい第二主要成分スコアを第二回帰モデルに適用することにより第二ポリマー特性を計算することである。
【0194】
他の好ましい具体例は流動化床反応槽系においてポリマー特性を決定するプロセスであり、以下を含む。すなわち、(a)密度、メルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびそれらの関数から選択されるポリマー特性を決定するための局所重視回帰モデル、主要成分の負荷および主要成分スコアを含む局所重視モデルを得ること、(b)ポリオレフィン粒子を含む試料のラマン・スペクトルを得ること、(c)少なくともラマン・スペクトルの一部分と主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算すること、および(d)該新しい主要成分スコアを局所重視回帰モデルに適用することによりポリマー特性を計算することである。さらに好ましい具体例は1または複数の以下を含む。そこで回帰モデルを得るための工程は以下を含む。すなわち、(i)ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得ること、(ii)主要成分分析(PCA)を用いて(i)で得られたスペクトルから主要成分の負荷および主要成分スコアを計算すること、および(iii)回帰モデルがポリマー特性を主要成分スコアに相関させるように、(ii)で計算された主要成分スコアを用いて回帰モデルを生成することである。ここで、ラマン・スペクトルを得る工程は以下を含む。すなわち、(i)ポリオレフィン粒子の試料を提供すること、および(ii)試料に照射し、試料採取プローブを用いた飼料採取時間に散乱照射光を回収することである。ここで、試料採取時間の少なくとも一部分の間に試料と試料採取プローブとの間に相対的な動作があり、さらにプロセスは以下を含む。すなわち、(i)第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデル、第二主要成分の負荷よび第二主要成分スコアを含む第二回帰モデルを得ること、(ii)少なくともラマン・スペクトルの一部分と第二主要成分の負荷から新しい第二主要成分スコアを計算すること、および(iii)該新しい第二主要成分スコアを第二回帰モデルに適用することにより第二ポリマー特性を計算することである。
【0195】
さらに他の好ましい具体例は重合反応槽系におけるポリマー特性を制御するためのプロセスであり、以下を含む。すなわち、(a)ポリマー特性を決定するための回帰モデルであり、主要成分の負荷よび主要成分スコアを含む回帰モデルを得ること、(b)ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得ること、(c)少なくともラマン・スペクトルの一部分と主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算すること、(d)該新しい主要成分スコアを回帰モデルに適用することによりポリマー特性を計算すること、および(e)計算されたポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整することである。さらに好ましい具体例は1または複数の以下を含む。すなわち、(i)ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得ること、(ii)主要成分分析(PCA)を用いて(i)で得られたスペクトルから主要成分の負荷および主要成分スコアを計算すること、および(iii)回帰モデルがポリマー特性を主要成分スコアに相関させるように、(ii)で計算された主要成分スコアを用いて回帰モデルを生成することである。ここで、回帰モデルは局所重視回帰モデルであり、ポリマー特性は密度、メルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびそれらの関数から選択され、試料はポリオレフィン粒子を含み、ラマン・スペクトルを得るための工程は以下を含む。すなわち、(i)ポリオレフィン粒子の試料を提供すること、および(ii)試料に照射し、試料採取プローブを用いた飼料採取時間に散乱照射光を回収することである。ここで、試料採取時間の少なくとも一部分の間に試料と試料採取プローブとの間に相対的な動作があり、重合反応槽は流動化床反応槽であり、少なくとも1つの重合パラメータはモノマー供給速度、コモノマー供給速度、触媒供給速度、水素ガス供給速度、および反応温度である。さらにプロセスは以下を含む。すなわち、(i)第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデル、第二主要成分の負荷よび第二主要成分スコアを含む第二回帰モデルを得ること、(ii)少なくともラマン・スペクトルの一部分と第二主要成分の負荷から新しい第二主要成分スコアを計算すること、および(iii)該新しい第二主要成分スコアを第二回帰モデルに適用することにより第二ポリマー特性を計算することである。ここで、調整する工程は、計算されたポリマー特性、計算された第二ポリマー特性、または計算された両方のポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整することを含む。
【0196】
さらに他の好ましい具体例は流動化反応槽系においてポリマー特性を制御するためのプロセスであり、以下を含む。すなわち、(a)密度、メルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびそれらの関数から選択されるポリマー特性を決定するための局所重視回帰モデル、主要成分の負荷および主要成分スコアを含む局所重視モデルを得ること、(b)ポリオレフィン粒子を含む試料のラマン・スペクトルを得ること、(c)少なくともラマン・スペクトルの一部分と主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算すること、(d)該新しい主要成分スコアを回帰モデルに適用することによりポリマー特性を計算すること、(e)計算されたポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整することである。さらにより好ましい具体例は1または複数の以下を含む。ここで、回帰モデルを得る工程は以下を含む。すなわち、(i)ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得ること、(ii)主要成分分析(PCA)を用いて(i)で得られたスペクトルから主要成分の負荷および主要成分スコアを計算すること、および(iii)回帰モデルがポリマー特性を主要成分スコアに相関させるように、(ii)で計算された主要成分スコアを用いて回帰モデルを生成することである。ここで、ラマン・スペクトルを得るための工程は以下を含む。すなわち、(i)ポリオレフィン粒子の試料を提供すること、および(ii)試料に照射し、試料採取プローブを用いた飼料採取時間に散乱照射光を回収することである。ここで、試料採取時間の少なくとも一部分の間に試料と試料採取プローブとの間に相対的な動作があり、少なくとも1つの重合パラメータはモノマー供給速度、コモノマー供給速度、触媒供給速度、水素ガス供給速度、および反応温度から構成される群から選択される。このプロセスは以下を含む。すなわち、(i)第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデルであり、第二主要成分の負荷よび第二主要成分スコアを含む第二回帰モデルを得ること、(ii)少なくともラマン・スペクトルの一部分と第二主要成分の負荷から新しい第二主要成分スコアを計算すること、および(iii)該新しい第二主要成分スコアを第二回帰モデルに適用することにより第二ポリマー特性を計算することである。ここで、調整する工程は、計算されたポリマー特性、計算された第二ポリマー特性、または計算された両方のポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整することを含む。
【0197】
本発明のさらにより好ましい具体例は、より好ましい具体例とともに、または伴わないで、いずれかの前述した好ましい具体例を含む、ここで、ラマン・プローブはin situで重合反応槽系に、特に顆粒状ポリマーが移動する位置に、例えば反応槽本体に直接的に挿入される。このさらに好ましい具体例の態様は、以下の単独の、または組み合わせをいずれも含む。ここで、重合反応槽系は気相重合反応槽であり、反応槽本体22は流動化床反応槽であり、ラマン・プローブは、例えば窒素またはエチレンの流れで浄化され、前記浄化時間はデータ収集時間を周期とし、ラマン・プローブは、反応槽本体、循環気体管系、反応槽顆粒の生成物排出系、サイクロン、浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽から選択される重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でin situで挿入される。ここで、ラマン・スペクトルを得る工程は以下を含む。すなわち、(i)ポリマーの試料、例えばポリオレフィンに照射し、ラマン・プローブを用いた試料採取時間に散乱照射光を回収すること、(ii)浄化間隔の間に前記ラマン・プローブからポリマーを洗浄することである。
【0198】
さらにより好ましい前述の具体例のさらに好ましい態様は以下を含む。すなわち、(A)気体モノマーが反応槽本体に導入され、ポリマーが反応槽から排出される気相重合反応槽、および少なくとも1つのポリマー特性に相関したラマン・スペクトルが得られる前記反応槽本体に直接挿入されたラマン・プローブを含むその利用、(B)気体モノマーが反応槽本体に導入され、ポリマーが前記反応槽本体で生成され、ポリマー生成物が反応槽から排出される気相重合プロセス、および前記反応槽本体内の前記ポリマーのラマン・スペクトルを得ることにより前記反応槽本体で生成されたポリマーの少なくとも1つの特性を測定することを含むその利用である。(B)のさらにより好ましい態様は、以下を含む。ここで、前記ラマン・スペクトルは前記反応槽本体へラマン・プローブを直接挿入することにより得られ、および光学プローブ浄化が含まれる。ここで、前記ラマン・プローブは、例えば窒素、エチレン(または重合反応に用いられるモノマー)、水素などのよってポリマー生成物の汚染から浄化される。また前記プロセスは、本発明の開示により当業者にとって容易に明らかとなる他のバリエーションの中から、以下を含むこともできる。すなわち、(a)ポリマー特性を決定するための回帰モデルであり、主要成分の負荷よび主要成分スコアを含む回帰モデルを得ること、(b)ポリオレフィンを含む試料のラマン・スペクトルを得ること、(c)少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算すること、および(d)該新しい主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することによりポリマー特性を計算することである。また、さらにポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを含むこともでき、さらに他の非常に好ましい態様において、この少なくとも一つの重合パラメータはモノマー供給速度、コモノマー供給速度(存在する場合)、触媒供給速度、水素ガス供給速度、および反応温度である。
【0199】
本発明により提供される多分最も有利な改善は以下のさらなるより好ましい具体例で説明される。すなわち、(I)気体モノマーが反応槽本体に導入され、ポリマーが反応槽から排出される気相重合反応系、および前記反応系にin situで挿入されたラマン・プローブを含むその利用、これによりポリマー特性および反応槽操作性を構成するグループの中から選択される少なくとも1つの特性に相関するラマン・スペクトルが得られる。これらは、ラマン・プローブが、重合反応槽本体、循環気体管系、反応槽下流の生成物排出系、浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽から選択される重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でin situで挿入される態様を含む。(II)気体モノマーが反応槽本体に導入され、ポリマーが前記反応槽本体で生成され、ポリマー生成物が反応槽から排出される重合反応槽系を含む気相重合プロセス、およびポリマー特性および反応槽操作性を構成するグループの中から選択される少なくとも1つの特性に相関するラマン・スペクトルを得ることを含むその利用、および以下の態様を含むもの。すなわち、それらの特徴は組み合わされる。ここで、前記該ラマン・スペクトルは前記重合反応系にin situで挿入されたラマン・プローブにより得られ、ここでラマン・プローブは、重合反応槽本体、循環気体管系、反応槽本体下流の生成物排出系、浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽を構成する群から選択される重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でin situで挿入されている。ここで前記プロセスはさらに、前記ラマン・プローブからポリマーが洗浄されることを含み、ここで前記浄化には窒素ガスによる浄化が含まれる。前記プロセスはさらに以下を含む。すなわち、(a)ポリマー特性または反応槽操作性に相関する特性を決定するための回帰モデル、主要成分の負荷よび主要成分スコアを含む回帰モデルを得ること、(b)ポリオレフィンを含む試料のラマン・スペクトルを得ること、(c)少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算すること、および(d)該新しい主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することによりポリマー特性または反応槽操作性に相関する特性を計算することである。前述したものの任意のいずれかはさらに、ポリマー特性または反応槽操作性に相関する特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整することを含む。特に、ここで少なくとも1つの重合パラメータはモノマー供給速度、コモノマー供給速度、触媒供給速度、水素ガス供給速度、および反応温度を構成する群の少なくとも1つから選択される。
【0200】
また好ましい具体例は、図2で示される抜き取り試料採取の場合および上記にて詳述したin situの場合の両方を含む装置を含み、これは以下を含む。すなわち、気体モノマーが反応槽本体に導入され、ポリマーが反応槽から排出される気相重合反応槽系、およびポリマー特性および反応槽操作性を構成する群の中から選択される少なくとも1つの特性に相関するラマン・スペクトルが得られる抜き取り試料採取系のラマン・プローブを提供することを含むその利用、およびさらに特に、ここで抜き取り試料採取系は、循環気体管系、生成物取り出し点下流の生成物排出系、生成物排出系と浄化装置/脱気装置との間の移送ライン、1つまたは複数の浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽を構成する群から選択される重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でポリマーを抜き取る。また、気体モノマーが反応槽本体に導入され、ポリマーが反応槽から排出される気相重合反応槽系、およびポリマー特性および反応槽操作性を構成する群の中から選択される少なくとも1つの特性に相関するラマン・スペクトルが得られる前記反応槽系へのラマン・プローブの挿入を含むその利用、およびさらに特に、ここでラマン・プローブは、循環気体管系、生成物取り出し点下流の生成物排出系、生成物排出系と浄化装置/脱気装置との間の移送ライン、1つまたは複数の浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽を構成する群から選択される重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でin situで挿入される。
【0201】
最後に、プローブが使用された場合にプローブ浄化が、重合反応で用いられる窒素ガス、モノマーの流れを用いて、またはこれらの組み合わせを用いて、または異なる時間および/または間隔で別々に用いられるならば、それは特に有用であり得ることが特記されるべきである。さらに、前述の抜き取り試料採取において、試料採取(例えば、図2により示される)は、in situ試料採取として特記された特定の場所の1つまたは複数の場所から行うことができることを特記すべきである。
【0202】
ここで用いられる様々な商標はTM記号により示され、名前が何らかの商標権により保護可能なことが示されている。また幾つかのそのような名前は様々な裁判権で商標として登録することができる。
【0203】
初めに引用した優先権資料を含む全ての特許、およびASTMまたは他の試験方法のような、ここで引用するいかなる他の資料も、そのような開示が本発明と矛盾しない限度において、そのような取り込みが許容される全ての裁判権のために、全てが引用により取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】気相反応槽のブロック図である。
【図2】本発明に基づくラマン分析装置のブロック図である。
【図3】ファイバー光学ラマンプローブの一態様を例示する。
【図4】試料チャンバーの一態様を例示する。
【図5】顆粒状直鎖低密度ポリエチレンポリマー試料の代表的なラマン・スペクトルである。
【図6A】実施例1に基づく、低メルトインデックス範囲における予測および測定メルトインデックスを示す。
【図6B】実施例2に基づく、高メルトインデックス範囲における予測および測定メルトインデックスを示す。
【図7】実施例3に基づく、予測および測定密度を示す。
【図8A】実施例4に基づく、メタロセン触媒反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定メルトインデックスを示す。
【図8B】実施例5に基づく、チーグラー・ナッタ触媒反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定メルトインデックスを示す。
【図9A】実施例6に基づく、メタロセン触媒反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定密度を示す。
【図9B】実施例7に基づく、チーグラー・ナッタ触媒反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定密度を示す。
【図10】約5週の期間にわたる商業スケールの流動化床反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定メルトインデックスを示す。
【図11】約5週の期間にわたる商業スケールの流動化床反応におけるオンライン・ラマン分析から得られた予測および測定密度を示す。
【符号の説明】
【0205】
20 気相流動化床反応槽
22 反応槽本体
24 流動化格子
26 流動化床ゾーン
28 減速ゾーン
30 ライン
32 圧縮機
34 熱交換器
36 サイクロン分離機
38 気体分析器
40 ライン
44 ライン
46 圧縮機
48 ライン
50 マニホルド
52 ポンプ
54 マニホルド
56 導管
58 ライン
60 ライン
62 (ポリマー生産)ライン
100 ラマンサブシステム
102 励起光源
104 モノクロメータ
106 検出器
200 試料サブシステム
202 試料チャンバー
204 ラマン・プローブ
206 ファイバー光学束
208 ファイバー光学ケーブル
210 ファイバー光学ケーブル
212 励起放射光
214 光学系
216 ホログラフィー格子
218 空間フィルター
220 鏡
222 ビーム・コンバイナー
224 試料採取光学系
226 ノッチフィルター
230 プローブヘッド
232 チューブ
234 気送線状アクチュエータ
300 データサブシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合反応槽系においてポリマー特性を決定するプロセスであって、
(a)ポリマー特性を決定するための回帰モデルであって、主要成分の負荷および主要成分スコアを含む回帰モデルを得る工程、
(b)ポリオレフィンを含む試料のラマン・スペクトルを得る工程、
(c)少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算する工程、および
(d)該新しい主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することにより前記ポリマー特性を計算する工程
を含み、工程(b)において得られる前記ラマン・スペクトルが前記重合反応槽系へin situで挿入されたラマン・プローブから得られることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記回帰モデルを得る工程が、
(i) ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得る工程、
(ii) 主要成分分析(PCA)を用いて工程(i)で得られたスペクトルから主要成分の負荷および主要成分スコアを計算する工程、
(iii)回帰モデルが前記ポリマー特性を前記主要成分スコアに相関させるように、
(ii)において計算された主要成分スコアを用いて回帰モデルを生成する工程
を含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記回帰モデルが局所重視回帰モデルであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリマー特性が、密度、メルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびこれらの関数により構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記試料がポリオレフィン粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ラマン・スペクトルを得る工程が、(i)ポリオレフィンに照射し、試料プローブを用いた試料採取間隔の間に散乱照射光を回収する工程、および(ii)浄化間隔の間に前記ラマン・プローブからポリマーを洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記重合反応槽が流動化床反応槽であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
さらに、
(i) 第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデルであって、第二主要成分の負荷および第二主要成分スコアを含む第二回帰モデルを得る工程、
(ii)少なくともラマン・スペクトルの一部分と前記第二主要成分の負荷から新しい第二主要成分スコアを計算する工程、および
(iii)該新しい第二主要成分スコアを前記第二回帰モデルに適用することにより前記第二ポリマー特性を計算する工程
を含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ラマン・プローブが、顆粒状ポリマーが移動する位置において前記重合反応槽系へin situで挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ラマン・プローブが、循環気体管系、生成物放出点下流の生成物排出系、生成物排出系と浄化装置/脱気装置との間の移送ライン、1つまたは複数の浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽により構成される群から選択される前記重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でin situで挿入されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ラマン・プローブが前記反応槽本体に挿入されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ラマン・プローブからの浄化ポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
流動化床反応槽系においてポリマー特性を決定するプロセスであって、
(a)密度、メルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびそれらの関数から選択されるポリマー特性を決定するための局所重視回帰モデルであって、主要成分の負荷および主要成分スコアを含む前記局所重視モデルを得る工程、
(b)ポリオレフィン粒子を含む試料のラマン・スペクトルを得る工程、
(c)少なくともラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算する工程、および
(d)該新しい主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することにより前記ポリマー特性を計算する工程
を含み、工程(b)において得られる前記ラマン・スペクトルが前記重合反応槽系へin situで挿入されたラマン・プローブから得られることを特徴とするプロセス。
【請求項14】
前記回帰モデルを得る工程が、
(i) ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得る工程、
(ii) 主要成分分析(PCA)を用いて工程(i)で得られたスペクトルから主要成分の負荷および主要成分スコアを計算する工程、
(iii)前記回帰モデルが前記ポリマー特性を前記主要成分スコアに相関させるように、(ii)において計算された主要成分スコアを用いて前記回帰モデルを生成する工程
を含むことを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ラマン・スペクトルを得る工程が、
(i)ポリオレフィン粒子の試料を提供する工程、および
(ii)試料に照射し、試料採取プローブを用いた飼料採取間隔の間に散乱照射光を回収する工程
を含み、試料採取間隔の少なくとも一部分の間に試料と試料採取プローブとの間の相対的な動作があることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
さらに、
(i) 第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデルであって、第二主要成分の負荷および第二主要成分スコアを含む第二回帰モデルを得る工程、
(ii)少なくともラマン・スペクトルの一部分と前記第二主要成分の負荷から新しい第二主要成分スコアを計算する工程、および
(iii)該新しい第二主要成分スコアを前記第二回帰モデルに適用することにより前記第二ポリマー特性を計算する工程
を含むことを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ラマン・プローブが、顆粒状ポリマーが移動する位置において前記重合反応槽系へin situで挿入されていることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ラマン・プローブが、循環気体管系、生成物放出点下流の生成物排出系、生成物排出系と浄化装置/脱気装置との間の移送ライン、1つまたは複数の浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽により構成される群から選択される前記重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でin situで挿入されることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ラマン・プローブが前記反応槽本体に挿入されることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項20】
前記ラマン・プローブからの浄化ポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項21】
重合反応槽系においてポリマー特性を制御するプロセスであって、
(a)ポリマー特性を決定するための回帰モデルであって、主要成分の負荷よび主要成分スコアを含む回帰モデルを得る工程、
(b)ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得る工程、
(c)少なくともラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算する工程、
(d)該新しい主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することにより前記ポリマー特性を計算する工程、および
(e)計算されたポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整する工程
を含み、工程(b)において得られる前記ラマン・スペクトルが前記重合反応槽系へin situで挿入されたラマン・プローブから得られることを特徴とするプロセス。
【請求項22】
前記回帰モデルを得る工程が、
(i) ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得る工程、
(ii) 主要成分分析(PCA)を用いて工程(i)で得られたスペクトルから主要成分の負荷および主要成分スコアを計算する工程、
(iii)前記回帰モデルが前記ポリマー特性を前記主要成分スコアに相関させるように、(ii)において計算された主要成分スコアを用いて前記回帰モデルを生成する工程
を含むことを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記回帰モデルが局所重視回帰モデルであることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記ポリマー特性が、密度、メルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびこれらの関数により構成される群から選択されることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項25】
前記試料がポリオレフィン粒子を含むことを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ラマン・スペクトルを得る工程が、(i)ポリオレフィンに照射し、試料プローブを用いた試料採取間隔の間に散乱照射光を回収する工程、および(ii)浄化間隔の間に前記ラマン・プローブからポリマーを洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項27】
前記重合反応槽が流動化床反応槽であることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項28】
前記少なくとも1つの重合パラメータが、モノマー供給速度、コモノマー供給速度、触媒供給速度、水素ガス供給速度、および反応温度により構成される群から選択されることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項29】
さらに、
(i) 第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデルであって、第二主要成分の負荷および第二主要成分スコアを含む第二回帰モデルを得る工程、
(ii)少なくともラマン・スペクトルの一部分と前記第二主要成分の負荷から新しい第二主要成分スコアを計算する工程、および
(iii)該新しい第二主要成分スコアを前記第二回帰モデルに適用することにより前記第二ポリマー特性を計算する工程
を含み、前記調整する工程が、計算されたポリマー特性、計算された第二ポリマー特性、または計算されたこれら両方のポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整することを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項30】
流動化反応系においてポリマー特性を制御するプロセスであって、
(a)密度、メルトフロー速度、分子量、分子量分布、およびこれらの関数から選択されるポリマー特性を決定するための局所重視回帰モデルであって、主要成分の負荷および主要成分スコアを含む局所重視モデルを得る工程、
(b)ポリオレフィン粒子を含む試料のラマン・スペクトルを得る工程、
(c)少なくともラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算する工程、
(d)該新しい主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することにより前記ポリマー特性を計算する工程、および
(e)計算されたポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整する工程
を含み、工程(b)において得られる前記ラマン・スペクトルが前記重合反応槽系へin situで挿入されたラマン・プローブから得られることを特徴とするプロセス。
【請求項31】
前記回帰モデルを得る工程が、
(i) ポリオレフィンを含む試料の複数のラマン・スペクトルを得る工程、
(ii) 主要成分分析(PCA)を用いて工程(i)で得られたスペクトルから主要成分の負荷および主要成分スコアを計算する工程、
(iii)前記回帰モデルが前記ポリマー特性を前記主要成分スコアに相関させるように、(ii)において計算された主要成分スコアを用いて前記回帰モデルを生成する工程
を含むことを特徴とする請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記ラマン・スペクトルを得る工程が、
(i)ポリオレフィン粒子の試料を提供する工程、および
(ii)試料に照射し、試料採取プローブを用いた飼料採取間隔の間に散乱照射光を回収する工程
を含み、試料採取間隔の少なくとも一部分の間に試料と試料採取プローブとの間の相対的な動作があることを特徴とする請求項30に記載のプロセス。
【請求項33】
前記少なくとも1つの重合パラメータが、モノマー供給速度、コモノマー供給速度、触媒供給速度、水素ガス供給速度、および反応温度により構成される群から選択されることを特徴とする請求項30に記載のプロセス。
【請求項34】
さらに、
(i) 第二ポリマー特性を決定するための第二回帰モデルであって、第二主要成分の負荷および第二主要成分スコアを含む第二回帰モデルを得る工程、
(ii)少なくともラマン・スペクトルの一部分と前記第二主要成分の負荷から新しい第二主要成分スコアを計算する工程、および
(iii)該新しい第二主要成分スコアを前記第二回帰モデルに適用することにより前記第二ポリマー特性を計算する工程
を含み、前記調整する工程が、計算されたポリマー特性、計算された第二ポリマー特性、または計算されたこれら両方のポリマー特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整することを特徴とする請求項30に記載のプロセス。
【請求項35】
気体モノマーが反応槽本体に導入され、ポリマーが反応槽から排出される気相重合反応系において、
前記反応系にin situで挿入されたラマン・プローブを含む改善された系であって、
ここでポリマー特性および反応槽操作性を構成するグループの中から選択される少なくとも1つの特性に相関するラマン・スペクトルが得られることを特徴とする気相重合反応系。
【請求項36】
前記ラマン・プローブが、循環気体管系、生成物放出点下流の生成物排出系、生成物排出系と浄化装置/脱気装置との間の移送ライン、1つまたは複数の浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽から選択される前記重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でin situで挿入されることを特徴とする請求項35に記載の気相重合反応系。
【請求項37】
気体モノマーが反応槽本体に導入され、ポリマーが前記反応槽本体で生成され、およびポリマー生成物が反応槽から排出される気相重合反応系において、
ポリマー特性および反応槽操作性を構成するグループの中から選択される少なくとも1つの特性に相関するラマン・スペクトルを得る改善がなされたことを特徴とする気相重合反応系。
【請求項38】
前記ラマン・スペクトルが、前記重合反応系にin situで挿入されたラマン・プローブにより得られことを特徴とする請求項37に記載の気相重合反応系。
【請求項39】
前記ラマン・プローブは、循環気体管系、生成物放出点下流の生成物排出系、生成物排出系と浄化装置/脱気装置との間の移送ライン、1つまたは複数の浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽を構成する群から選択される重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でin situで挿入されていることを特徴とする請求項38に記載の気相重合反応系。
【請求項40】
前記ラマン・プローブからの浄化ポリマーをさらに含むことを特徴とする請求項38に記載の気相重合反応系。
【請求項41】
前記浄化が窒素ガスまたはモノマーの流れによる浄化を含むことを特徴とする請求項38に記載の気相重合反応系。
【請求項42】
さらに、
(a)ポリマー特性または反応槽操作性に相関する特性を決定するための回帰モデルであって、主要成分の負荷および主要成分スコアを含む回帰モデルを得る工程、
(b)ポリオレフィンを含む試料のラマン・スペクトルを得る工程、
(c)少なくとも該ラマン・スペクトルの一部分と前記主要成分の負荷から新しい主要成分スコアを計算する工程、および
(d)該新しい主要成分スコアを前記回帰モデルに適用することにより前記ポリマー特性または反応槽操作性に相関する特性を計算する工程
を含むことを特徴とする請求項38に記載の気相重合反応系。
【請求項43】
前記ポリマー特性または反応槽操作性に相関する特性に基づいて少なくとも1つの重合パラメータを調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項42に記載の気相重合反応系。
【請求項44】
前記少なくとも1つの重合パラメータが、モノマー供給速度、コモノマー供給速度、触媒供給速度、水素ガス供給速度、および反応温度により構成される群から選択されることを特徴とする請求項43に記載の気相重合反応系。
【請求項45】
前記ラマン・スペクトルが前記重合反応槽系からの抜き取り試料採取により得られることを特徴とする請求項37に記載の気相重合反応系。
【請求項46】
前記抜き取り試料採取が、循環気体管系、生成物放出点下流の生成物排出系、生成物排出系と浄化装置/脱気装置との間の移送ライン、1つまたは複数の浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽を構成する群から選択される重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でin situで挿入されていることを特徴とする請求項45に記載の気相重合反応系。
【請求項47】
気体モノマーが反応槽本体に導入され、ポリマーが反応槽から排出される気相重合反応槽系において、
ポリマー特性および反応槽操作性を構成する群の中から選択される少なくとも1つの特性に相関するラマン・スペクトルが得られる抜き取り試料採取系のラマン・プローブを提供することを特徴とする気相重合反応系。
【請求項48】
前記抜き取り試料採取系が、循環気体管系、生成物取り出し点下流の生成物排出系、生成物排出系と浄化装置/脱気装置との間の移送ライン、1つまたは複数の浄化装置/脱気装置、仕上げ/梱包への移送ライン、および押し出し機/混合機への供給槽を構成する群から選択される重合反応槽系内の少なくとも一つの位置でポリマーを抜き取ることを特徴とする請求項47に記載の気相重合反応系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−517987(P2006−517987A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510797(P2005−510797)
【出願日】平成15年5月8日(2003.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/014565
【国際公開番号】WO2005/049663
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】