説明

ラマン増幅装置およびラマン増幅システム

入力端(20)に接続されたラマン増幅器(21a)〜(21n)によって形成されるグループ(21A)と、ラマン増幅器(22a)〜(22n)によって形成されるグループ(22A)と、ラマン増幅器(23a)〜(23n)によって形成されるグループ(23A)と、ラマン増幅器(24a)〜(24n)によって形成されるグループ(24A)とが順次接続された構造を有する。グループ(24A)の末端には光分岐器(25)が配設され、増幅された光は出力端27へ出力されると共に、増幅された光の一部は全体利得制御部(26)に出力される。全体利得制御部(26)は、各グループに属するラマン増幅器について、ほぼ同一の利得ピークを有するラマン増幅器ごとにセット(28a)〜(28n)に分類して全体としての利得波長特性が平坦化するよう制御を行う。必要に応じてグループごとにも増幅利得制御部を設けて制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、増幅利得が極大となる利得ピークを有する利得特性を備えた複数のラマン増幅器を含むラマン増幅装置に関する。
【背景技術】
近年のインターネット等の光通信の発展に伴い、大きな伝送容量を有し、長距離伝送が可能な光通信システムの開発が行われている。伝送容量を増大させる観点からは、WDM(Wavelength Division Multiplexing)方式や、DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)方式が提案され、実用化されている。WDM方式は、同一の光伝送路中に波長の異なる複数の信号光を伝送させる通信方式をいい、DWDM方式は、同一光伝送路中にWDM方式よりもさらに多くの信号光を伝送させる通信方式である。これらの通信方式を採用することで、一度に伝送できる信号の量が増大するため、光通信において伝送容量を拡大することができる。
また、長距離伝送を実現する観点からは、光伝送路中を伝送する途上において減衰した信号光の強度を増幅する光増幅装置を配置することが広く行われている。光増幅装置としてはEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)や、ラマン増幅を用いたラマン増幅装置が知られている。特に、ラマン増幅装置は、励起光の波長を変化させることで任意の波長の光を増幅することが可能であり、信号光の選択の幅が広がる等の利点を有する。
WDM方式若しくはDWDM方式とラマン増幅とを組み合わせた光通信システムを実現する場合には、同一伝送路中を伝送し、互いに異なる波長を有する信号光に対して同程度の増幅利得を与えることが重要である。特に、伝送路途上に複数のラマン増幅装置を配置する場合、個々のラマン増幅装置の利得偏差が重畳されることとなるため、光増幅器の利得波長特性の平坦化は重要な問題となる。
このため、従来、1539nmから1579nmの波長帯域で、この帯域の両端とほぼ中央に利得波長特性のピーク(以下、「利得ピーク」と言う)を備えたW型と称する1台のラマン増幅器と、かかるラマン増幅器における利得ピークの間に利得ピークを持つM型と称する1台のラマン増幅器とを組み合わせることでラマン増幅装置を形成した例が開示されている(例えば、Optical Amplifiers and There Application 2001 July 9〜12参照)。
しかし、単に2つのラマン増幅器を組み合わせて、それぞれの利得波長特性の山と谷を単純に埋め合わせる構造とするのみでは、全体として利得波長特性の十分な平坦化を図ることはできない。
また、上記従来技術のようにラマン増幅装置を形成した場合でも、実際に光通信システムに組み込んだ場合に利得波長特性が平坦とならないおそれがある。すなわち、長距離伝送を行う光通信システムでは、外部環境の温度等が変動することにより、ラマン増幅をおこなうための光ファイバにおけるラマン利得係数や、入力される励起光の減衰定数が設計時の値から変動するおそれがある。このため、設計時において平坦な利得波長特性を有しているにもかかわらず、実際に敷設した際に利得波長特性が変動する場合がある。
また、実際の光通信システムにおいては、ラマン増幅装置を形成する励起光源等の故障による問題を考慮する必要がある。広範囲に渡って敷設される光通信システムでは故障部分の特定は容易ではなく、故障部分の場所によっては修理も困難となる。そのため、光通信システムの一部が故障した場合であっても、光通信システムにおける利得偏差を一定範囲内に維持する機構が設けられることが好ましい。
さらに、従来技術によるラマン増幅器を多段に接続したシステム設計を行う場合においては、システム全体として所望の利得波長特性が得られるように、個々のラマン増幅器の利得波長特性を別々に設計する必要がある。このため、設計プロセスが非常に複雑かつ困難となるという問題点を有していた。
本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであって、複数のラマン増幅器を備えたラマン増幅装置において、利得偏差を一定の許容範囲内に維持できるラマン増幅装置およびラマン増幅装置を複数組み合わせたラマン増幅システムを実現することを目的とする。
【発明の開示】
本発明にかかるラマン増幅装置は、増幅利得が極大となる利得ピークを有する利得波長特性を備えた複数のラマン増幅器を含むラマン増幅装置であって、第1の利得ピークおよび該第1の利得ピークに隣接する第2の利得ピークを含む複数の利得ピークを有する利得波長特性を備えた第1のラマン増幅器と、前記第1の利得ピークおよび前記第2の利得ピークの間に位置する波長の第3の利得ピークを含む1以上の利得ピークを有する利得波長特性を備えた第2のラマン増幅器と、前記第1の利得ピークおよび前記第2の利得ピークの間に位置し、前記第1の利得ピークの波長と前記第3の利得ピークの波長との間で等差数列を形成する波長の第4の利得ピークを有する利得波長特性を備えた第3のラマン増幅器とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、複数のラマン増幅器を有することとし、それぞれ異なるラマン増幅器から得られる利得ピークの波長が等差数列を形成するよう調整されていることとしたため、全体として所望の利得波長特性を得ることができる。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、隣接する利得ピーク間の波長間隔は、6nm以下であることを特徴とする。
この発明によれば、隣接する利得ピークが異なるラマン増幅器によって供給されることとしたため、隣接する利得ピークの波長間隔を6nm以下とすることが可能であり、利得波長特性が平坦化すると共に、増幅利得制御手段による制御を容易かつ精密に行うことができる。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、隣接する利得ピーク間の波長間隔は、0.3nm以下であることを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記等差数列の公差は、前記第1のラマン増幅器から得られる隣接利得ピーク間の波長間隔の平均値をラマン増幅器の個数で除算した値にほぼ等しいことを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、増幅利得が極大となる利得ピークを有する利得特性を備えた複数のラマン増幅器を含むラマン増幅装置であって、第1利得特性を備えた1以上のラマン増幅器と、前記第1利得特性に対する周期関数和近似より得られる周期関数の周期分布に基づいて定まるシフト量だけ前記第1利得特性からシフトした第2利得特性を備えた1以上のラマン増幅器とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、第1利得特性を備えるラマン増幅器と、第1利得特性に対して周期関数和近似を行い、かかる近似から得られた周期関数の周期分布に基づいて定まるシフト量だけ第1利得特性に対してシフトさせた第2利得特性を備えるラマン増幅器とを備えることで、第1利得特性と第2利得特性とが、互いに凹凸を相殺し、全体として平坦な利得特性を実現することができる。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記シフト量は、前記第1利得特性に対する周期関数和近似を形成する周期関数のうち、最大振幅を有する周期関数の周期に基づいて定まることを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記シフト量は、前記第1利得特性に対する周期関数和近似を形成する周期関数のうち、最大振幅を有する周期関数の周期の1/4以上、3/4以下であることを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記周期関数和近似は、フーリエ変換により行われることを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記第1利得特性は、隣接する利得ピーク間の波長差または周波数差が、ほぼ一定の値であることを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、前記複数のラマン増幅器によって増幅された光の強度波長特性に基づいて、複数の前記ラマン増幅器の利得波長特性を制御する増幅利得制御手段をさらに備えたことを特徴とする。
この発明によれば、複数のラマン増幅器の利得波長特性を制御する増幅利得制御手段を備えることとしたため、何らかの理由によって個々のラマン増幅器の利得波長特性が乱れた場合であっても、所望の利得波長特性を実現することができる。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記増幅利得制御手段は、増幅された光において、光強度が所定の許容範囲から外れた波長成分の波長と最も近接する波長の利得ピークを有するラマン増幅器を選択する波長探知手段をさらに備え、選択したラマン増幅器が有する前記所定の利得ピークの波長および/またはピーク強度を変化させることで前記増幅された光の強度を前記許容範囲以内に抑制するよう前記複数のラマン増幅器の利得波長特性を制御することを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記複数のラマン増幅器は、レーザ光を出力する複数の半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を合波するための光結合器とをそれぞれ備えることを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記増幅利得制御手段は、前記半導体レーザ素子の温度を制御することによって前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の強度波長特性を変化させることを特徴とする
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記複数のラマン増幅器は、前記半導体レーザ素子の出射波長を規定するファイバグレーティングをさらに備えることを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅装置は、上記の発明において、前記増幅利得制御手段は、前記ファイバグレーティングの温度を制御することによって前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の強度波長特性を変化させることを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅システムは、互いに異なる波長の利得ピークを有する複数のラマン増幅器を備えた第1のグループと、該第1のグループの末端に接続され、互いに異なる波長の利得ピークを有する複数のラマン増幅器を備えた第2のグループと、該第2のグループの末端に接続され、前記第1および第2のグループに属するラマン増幅器を所定のセットに分類し、利得波長特性を制御する全体利得制御手段とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、ラマン増幅器によって形成される複数のグループに対して、利得波長特性の制御を単一の全体利得制御手段によって行うこととしたため、利得波長特性の制御を容易に行うことができる。
次の発明にかかるラマン増幅システムは、上記の発明において、前記全体利得制御手段は、選択したセットに属するラマン増幅器が有する所定の利得ピークの波長および/または強度を変化させることで増幅された光の強度を所定の許容範囲以内に抑制するよう前記第1および前記第2のグループに属するラマン増幅器の利得波長特性を制御することを特徴とする。
次の発明にかかるラマン増幅システムは、上記の発明において、前記第1のグループ末端に接続され、前記第1のグループによって増幅された光の強度波長特性に基づいて、前記第1のグループを構成するラマン増幅器の利得波長特性を制御する第1の増幅利得制御手段と、前記第2のグループ末端に接続され、前記第2のグループによって増幅された光の強度波長特性に基づいて、前記第2のグループを構成するラマン増幅器の利得波長特性を制御する第2の増幅利得制御手段とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施の形態1にかかるラマン増幅装置の構造を示すブロック図であり、第2図は、実施の形態1にかかるラマン増幅装置を構成するラマン増幅器の構造を示すブロック図であり、第3図は、実施の形態1にかかるラマン増幅装置の利得波長特性を示すグラフであり、第4図は、実施の形態1にかかるラマン増幅装置によって得られる増幅光の波長強度特性と、従来のラマン増幅器によって得られる増幅器の波長強度特性とを比較したグラフであり、第5図は、実施の形態1にかかるラマン増幅装置を構成する増幅利得制御部の構造を示すブロック図であり、第6図は、実施の形態1にかかるラマン増幅装置において、利得波長特性が乱れた状態を示すグラフであり、第7図は、実施の形態1にかかるラマン増幅装置を構成する増幅利得制御部の動作を示すフローチャートであり、第8図は、実施の形態1において、増幅利得制御部の動作によって平坦化されたラマン増幅装置の利得波長特性を示すグラフであり、第9図は、(a)、(b)共に、増幅利得制御部による制御前の利得波長特性を示す表であり、第10図は、実施例において増幅利得制御部によって制御された後の利得波長特性を示す表であり、第11図は、実施の形態2にかかるラマン増幅装置において、利得特性のシフト量の導出メカニズムについて説明するための模式図であり、第12図は、実施の形態2の実施例1におけるラマン増幅器Aの利得特性を示すグラフであり、第13図は、ラマン増幅器Aの利得特性をフーリエ変換した結果を示すグラフであり、第14図は、ラマン増幅器A、Bの利得特性をそれぞれ示すグラフであり、第15図は、実施例1にかかるラマン増幅装置全体の利得特性を示すグラフであり、第16図は、実施例2にかかるラマン増幅装置において、ラマン増幅器A、Bの利得特性をフーリエ変換した結果を示すグラフであり、第17図は、実施例2にかかるラマン増幅装置全体の利得特性を示すグラフであり、第18図は、実施の形態3にかかるラマン増幅システムの構造を示すブロック図であり、第19図は、実施の形態3にかかるラマン増幅システムの全体利得制御部の構造を示すブロック図であり、第20図は、実施の形態3にかかるラマン増幅システムの全体利得制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に図面を参照して、本発明にかかるラマン増幅装置およびラマン増幅システムの好適な実施の形態について説明する。図面の記載において、同一または類似部分には同一あるいは類似の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1にかかるラマン増幅装置について説明する。第1図は、ラマン増幅装置の全体構成を示すブロック図である。以下、実施の形態1にかかるラマン増幅装置の構造を説明する。
実施の形態1にかかるラマン増幅装置は、入力端5に順次接続されたラマン増幅器1〜4と、ラマン増幅器4に接続された光分岐器6と、光分岐器6の出力端子の一方に接続された増幅利得制御部7と、光分岐器6の出力端子の他方によって形成される出力端8とを有する。
第2図は、ラマン増幅器1の構造を示す模式図である。ラマン増幅器1は、励起光源として機能する半導体レーザ素子9a〜9dと、半導体レーザ素子9a〜9dにそれぞれ対応して設けられたファイバグレーティング10a〜10dと、半導体レーザ素子9a、9bから出力されるレーザ光を合波するための光結合器11aと、半導体レーザ素子9c、9dから出力されるレーザ光を合波するための光結合器11bとを有する。また、光結合器11a、11bで合波されたレーザ光をさらに合波して励起光を形成するための光結合器12をさらに有し、形成された励起光は、光結合器13を介して増幅用伝送路14に入力される構造を有する。なお、第2図に示すように、ラマン増幅器1は、増幅用伝送路14における励起光の進行方向がラマン増幅される光の進行方向と逆になる後方励起方式を用いているが、前方励起方式としても良く、双方向励起方式としても良い。
半導体レーザ素子9a、9bは、それぞれファイバグレーティング10a、10bによって規定されたほぼ等しいピーク波長を有するレーザ光を出射する構造を有する。また、半導体レーザ素子9c、9dは、それぞれファイバグレーティング10c、10dで規定されるほぼ等しいピーク波長を有するレーザ光を出射し、半導体レーザ素子9a、9bのピーク波長と、半導体レーザ素子9c、9dのピーク波長とは、波長間隔が6nm以上離れている。また、半導体レーザ素子9a〜9dおよびファイバグレーティング10a〜10dには、図示しない温調モジュールがそれぞれ付加されており、それぞれの温度を変動可能な構造を有する。
半導体レーザ素子9a、9bと光結合器11aとの間は偏波面保持ファイバによって接続され、半導体レーザ素子9a、9bから出力されたレーザ光が互いに直交するよう光結合器11aで合波される構造を有する。ラマン増幅は偏波依存性を有するため、増幅利得を安定化させるために励起光を無偏波化した上でラマン増幅をすることが好ましいためである。なお、半導体レーザ素子9c、9dと光結合器11bとの間も、同様の理由で偏波面保持ファイバによって接続され、レーザ光の偏波方向が互いに直交するよう合波される。
ラマン増幅器2〜4の構造は、基本的に第2図に示すラマン増幅器1と同様の構造を有するが、利得ピークの中心波長がそれぞれ異なる値となるよう半導体レーザ素子およびファイバグレーティングが形成されている。第3図は、ラマン増幅器1〜4の利得波長特性を組み合わせることによって形成される実施の形態1にかかるラマン増幅装置の利得波長特性を模式的に示すグラフである。ここで、曲線lはラマン増幅器1の利得波長特性を示し、曲線l、l、lは順次ラマン増幅器2、3、4の利得波長特性を示す。そして、曲線l〜lを合成した曲線lは、実施の形態1にかかるラマン増幅装置の利得波長特性を示す。
第3図に示すように、ラマン増幅器1〜4から得られる利得ピークはそれぞれ異なり、各利得ピークの中心波長λ、λ、λ、λは、それぞれ等差数列を形成する。実施の形態1において、各利得ピークに対応する波長が形成する等差数列の公差は、ラマン増幅器1から得られる2つの利得ピークの波長λ、λ’の差分値をラマン増幅器の個数で割った値とする。また、同じくラマン増幅器1〜4から得られる別の利得ピークの波長λ’、λ’、λ’、λ’についても同様に等差数列を形成し、公差も波長λ、λ’の差分値をラマン増幅器の個数で割った値とする。なお、本実施の形態1では、ラマン増幅器1によって得られる利得ピークの個数を2としているが、ラマン増幅器1の利得ピークが3以上存在する場合には、隣接する利得ピーク間の波長間隔の平均値を公差とすることが好ましい。
ラマン増幅器1〜4から得られる利得波長特性に関して、それぞれから得られる利得ピークの波長が異なることから、同一利得波長特性からなるラマン増幅器を複数備えた場合と比較して、利得偏差が重畳されることが防止される。特に、各利得ピーク波長が等差数列を構成するようラマン増幅器1〜4の利得波長特性を設定することで各利得ピークの間隔が等しくなるため、曲線lで示すように、本実施の形態1にかかるラマン増幅装置は、平坦な利得波長特性を有する。また、複数のラマン増幅器によって利得を得る構造としているため、隣接する利得ピーク間の波長間隔に制限がなく、波長間隔を6nm以下に抑制することが可能となるため、平坦性がより高められている。なお、波長間隔については、6nm以下が好ましく、さらには0.3nm以下であることがより好ましい。
第4図は、従来のように同一特性のラマン増幅器を複数組み合わせた場合に得られる利得波長特性と、本実施の形態1にかかるラマン増幅装置の利得波長特性とを比較したグラフである。第4図に示すように、本実施の形態1にかかるラマン増幅装置は、曲線l〜l10にそれぞれ示す利得波長特性を有するラマン増幅器を備え、これらの利得波長特性を合成したラマン増幅装置によって光を増幅した結果、増幅された光の波長強度特性は曲線l11に示すとおりとなる。
一方、例えば曲線lの利得波長特性を有するラマン増幅器を従来のように単純に5個組み合わせた場合、増幅光の波長強度特性は曲線l12に示すようになる。増幅対象となる信号光の波長範囲を1540nm〜1595nmとした場合、曲線l11と曲線l12とを比較すれば明らかなように、かかる波長範囲内における増幅利得の偏差は大きく異なることとなる。具体的には、本実施の形態1にかかるラマン増幅装置によって増幅された光の強度偏差は0.9dB程度であるのに対し、従来例の場合には強度偏差が3dB以上となる。
次に、増幅利得制御部7について説明する。第5図は、増幅利得制御部7の構造を示すブロック図である。増幅利得制御部7は、第5図に示すように、ラマン増幅された光を分波する光分波器15と、分波した光をそれぞれ電気信号に変換する光電変換素子16a〜16hとを有する。また、光電変換素子16a〜16hは、制御波長探知部18に接続されている。制御波長探知部18は、記憶部17と接続されており、記憶部17に記憶された情報と、入力された電気信号とを対比することで、増幅された光において異常を有する波長成分を探知する。また、制御部19は、制御波長探知部18、記憶部17およびラマン増幅器1〜4に接続されている。
光分波器15は、入力された光を所定の波長範囲の光ごとに分波して出力するためのものである。具体的には、光分波器15は、複数の光ファイバを溶融結合させて形成された溶融型カプラ等によって形成されている。
光電変換素子16a〜16hは、入力された光を強度に応じた電気信号に変換するためのものである。具体的には、光電変換素子16a〜16hは、フォトダイオードや、光抵抗等によって形成される。
記憶部17は、利得波長特性を制御するために必要な情報を記憶するためのものである。具体的には、光分波器15で分波された光の各波長成分の強度の許容範囲に関する情報と、増幅利得制御部7に入力される光の波長成分に対応する利得ピークの波長に関する情報と、かかる利得ピークを供給するラマン増幅器を特定する情報とを記憶する。
制御波長探知部18は、制御対象となるラマン増幅器を特定するためのものである。具体的には、分波された光の強度と、記憶部17に記憶された光の強度の許容範囲とを対比し、許容範囲からはずれた強度を有する光の波長成分の波長を探知し、かかる波長に基づいて所定の利得ピークを検出し、検出した利得ピークを供給するラマン増幅器を選択する機能を有する。
制御部19は、制御波長探知部18、記憶部17およびラマン増幅器1〜4を制御するためのものである。具体的には、制御波長探知部18および記憶部17の動作を制御すると共に、制御波長探知部18で検出された励起光のピーク波長に基づいて、かかるピーク波長と同一の波長若しくはその近傍の波長を有するピークを出力する半導体レーザ素子に対して制御を行う機能を有する。制御の内容としては、ラマン増幅器1〜4を構成する半導体レーザ素子とファイバグレーティングの少なくとも一方について、付属する温調モジュールの温度を変化させることで励起光の波長若しくは強度を変化させている。また、必要に応じて半導体レーザ素子に注入される電流の値を変化させることで励起光の強度を変化させている。
また、制御部19による制御の具体的態様をしては、例えば、制御部19から制御信号を出射し、方向性結合器等を用いて入力端5を介してラマン増幅器1〜4に制御信号を伝達するものとする。この他にも、例えば、ラマン増幅器1〜4が配置された上り回線ではなく、下り回線を用いて制御信号を伝送しても良いし、制御専用の回線を備えた構造としても良い。また、光信号ではなく電気信号等によって制御を行う構造としても良い。
次に、増幅利得制御部7の動作について説明する。第6図は、何らかの原因によって平坦な利得波長特性が崩れた状態を示すグラフであり、第7図は、増幅利得制御部7の動作を示すフローチャートである。第6図に示すように、ラマン増幅器1から得られる利得波長特性(曲線l’)が全体的に強度の低い方にシフトしたため、曲線l’に示すラマン増幅装置全体の利得波長特性に関しても平坦性が崩れている。以下、利得波長特性が第6図に示す場合を例として、第7図のフローチャートを参照して増幅利得制御部7の動作を説明する。なお、入力される光は、所定の波長範囲において平坦な強度波長特性を有し、その結果、ラマン増幅器1〜4によって増幅された光は、第6図に示す利得波長特性と同様の強度波長特性となっているものとする。
まず、ラマン増幅器1〜4によって増幅された光のうち、許容範囲から外れている波長成分の有無を検出し、かかる波長成分が存在する場合にはその波長を検出する(ステップS101)。具体的には、増幅された光は、光分波器15で所定の波長範囲ごとに分波され、光電変換素子16a〜16hで電気信号に変換された後に、制御波長探知部18に入力される。制御波長探知部18は、増幅された光の各波長成分に対応する電気信号について、記憶部17に記憶された許容範囲と対比して、許容範囲から外れた波長成分を検出する。なお、本ステップにおいて許容範囲から外れている波長成分が存在しない場合には、この時点で増幅利得制御部7の動作は終了する。第6図の例では、波長λおよび波長λが検出される。
そして、ステップS101で検出した波長に基づき、所定の利得ピークを有するラマン増幅器を選択する(ステップS102)。具体的には、記憶部17には増幅された光の波長に対応する励起光のピーク波長が記憶されているため、検出した波長成分の波長と同一若しくは近接する利得ピークを検出し、かかる利得ピークを供給するラマン増幅器を選択する。第6図の例においては、λがλに近接し、λ’がλに近接するため、波長λ、λ’の利得ピークを有するラマン増幅器2を選択する。
その後、選沢したラマン増幅器に対して制御信号を送信し、ラマン増幅器の利得波長特性を変化させる(ステップS103)。具体的には、制御信号を受信したラマン増幅器は、制御信号の内容に応じて、内部に備えたファイバグレーティング若しくは半導体レーザ素子の温度、半導体レーザ素子に注入する電流値を必要に応じて変化させる。かかる温度等を変化させることによって、選択されたラマン増幅器における利得ピークの波長と強度の少なくとも一方を変化させている。第6図の例においては、利得ピーク波長λ、λ’に対応した波長の励起光を出力するラマン増幅器2に対して制御信号が与えられ、ラマン増幅器2が有する2本の利得ピークの波長はそれぞれΔλだけ短波長側にシフトし、第8図に示すように、利得ピーク波長もλ−Δλ、λ’−Δλに変化し、曲線l全体も短波長側にシフトして曲線l’に変化する。
そして、変化した利得波長特性に基づいて増幅された光に対して、許容範囲から外れた波長成分の有無を検出する(ステップS104)。具体的には、ステップS101と同様の手法によって許容範囲から外れた波長成分の有無を調べ、許容範囲から外れた波長成分が存在する場合にはステップS102に戻る。ステップS102に戻った場合は、前に選択したラマン増幅器と異なるラマン増幅器を選択し、ステップS103によって再び利得波長特性を変化させる。許容範囲から外れた波長成分が存在しない場合、もはや制御を行う必要は無いため、増幅利得制御部7の動作は終了する。第6図の例においては、第8図に示すように、ラマン増幅装置全体の利得波長特性が平坦化するため、増幅利得制御部7の動作は終了する。
実施の形態1にかかるラマン増幅装置は、以下の利点を有する。まず、増幅利得制御部7を設けたことで、ラマン増幅装置を設置する場所の環境条件による利得波長特性の変動を抑制できるという利点を有する。既に述べたように、長距離伝送を行う光通信システムでは、外部環境の温度等が変動することによって、ラマン増幅を行う増幅用伝送路におけるラマン利得係数や、半導体レーザ素子から出力される励起光の減衰定数が変動する場合がある。従って、環境条件によっては、実際にラマン増幅装置を設置した場合に製造時と異なる利得波長特性となる場合がある。本実施の形態1では、増幅利得制御部7を設けたため、ラマン増幅装置全体の利得波長特性を調整することが可能であり、環境条件の変化に依存しないラマン増幅装置を実現することが可能である。
また、故障による利得波長特性の変動を抑制できるという利点も有する。第6図の例でも示したように、ラマン増幅装置を構成するラマン増幅器1が故障することで、ラマン増幅装置全体の利得波長特性が変化する場合がある。しかし、増幅利得制御部7によってラマン増幅器2の利得波長特性を変化させることで、ラマン増幅装置全体の利得波長特性の変動を解消またはある程度改善することが可能である。ラマン増幅装置が配置される場所によっては故障部品の交換が困難な場合もあるため、交換するまでの期間において利得波長特性を一定のレベルに維持することができることは大きな利点となる。
さらに、本実施の形態1にかかるラマン増幅装置を光通信システム等に利用した場合、信号光源の劣化にも対応できるという利点も有する。本実施の形態1では、増幅利得制御部7はラマン増幅された光(光通信システムにおける信号光)の波長強度特性を直接検出してラマン増幅器1〜4の利得波長特性を制御する構成を有する。そのため、例えばラマン増幅器1〜4は所望の利得波長特性を実現しているにもかかわらず、信号光源の劣化によってラマン増幅装置に入力する信号光の強度波長特性が平坦性を失っている場合でも、増幅利得制御部7はラマン増幅装置から出力される増幅光が平坦な波長強度特性を有するようラマン増幅器1〜4を制御するため、信号光源の劣化による波長強度特性の変動を解消若しくはある程度改善することが可能である。
また、本実施の形態1にかかるラマン増幅装置は、ラマン増幅器1〜4のいずれかの故障が発生した場合に、故障したラマン増幅器を迅速に特定できるという利点も有する。制御波長探知部18は、記憶部17に記憶した情報に基づいて所定の利得ピークを有するラマン増幅器を特定するため、故障したラマン増幅器を迅速に特定することが可能である。特に、本実施の形態1ではラマン増幅器1〜4がそれぞれ異なる波長の利得ピークを有することとしているため、増幅された光において強度が許容範囲から外れている波長と対応するラマン増幅器とが1対1で対応するため、故障したラマン増幅器を容易に特定することが可能である。
また、本実施の形態1にかかるラマン増幅装置は、隣接する利得ピークが異なるラマン増幅器によって形成される構造を有するため、利得波長特性の平坦化を容易に行うことが可能である。既に述べたように、本実施の形態1にかかるラマン増幅装置では、隣接する利得ピークは異なるラマン増幅器によって構成されるため、隣接する利得ピークの波長間隔を6nm以下とすることが可能である。このため、例えば、隣接する利得ピークの波長間隔を各半導体レーザ素子若しくはファイバグレーティングによる利得ピーク波長可変量と同程度とすることができ、増幅利得制御部7による波長可変範囲を広くでき、利得波長特性の平坦化を容易に行うことが可能である。例えば、ファイバグレーティングの温度を制御して励起光のピーク波長を制御する場合、隣接する利得ピークの波長間隔を0.3nm以下とすることが好ましい。ファイバグレーティングによって変化させることができる波長範囲は0.3nm程度であるため、かかる波長間隔とすることで容易に制御を行うことができるためである。
また、本実施の形態1にかかるラマン増幅装置によれば、利得波長特性の制御アルゴリズムを単純化することができるという利点も有する。本実施の形態1にかかるラマン増幅器は、複数存在する利得ピークの波長が、等差数列を形成するよう配置されている。このため、増幅された光において許容範囲から外れた波長成分が存在する場合、かかる波長成分の波長に関わらず、同一のアルゴリズムを用いることができる。すなわち、利得ピークの波長間隔は一定であるため、許容範囲から外れた量に対して隣接する利得ピークの波長をどの程度変化させる必要があるかについては定式化が可能なためである。
なお、本実施の形態1の説明において、ラマン増幅装置が備えるラマン増幅器の個数が4の場合について説明したが、当然のことながらラマン増幅器の個数はこれに限定されず、任意の個数のラマン増幅器によって本実施の形態1にかかるラマン増幅装置を形成することが可能である。
また、ラマン増幅器1〜4の構造についても、上記した構造に限定されるのではない。第2図を例にして説明すれば、ファイバグレーティング10a〜10dが付属する半導体レーザ素子9a〜9dは、互いに6nm以上の波長差を備えていればすべて異なる波長のレーザ光を出力する構造とすることも可能である。実施の形態1では、例えば半導体レーザ素子9a、9bを対にして互いの偏波方向が直交するよう合波されることとしているが、ファイバグレーティング10a〜10dと光結合器11a、11bとの間にデポラライザを配設することによって半導体レーザ素子9a〜9dから出力するレーザ光を直接無偏光化することも可能である。この場合、少ない半導体レーザ素子によって多数の利得ピークを実現することができるため、さらに広い利得帯域を備えたラマン増幅器を実現することが可能である。さらに、これらの構造のみならず、システムの設計によって、任意の波長構成について、かつ任意の合波手段を組み合わせて所望の励起光を実現することが可能である。
また、ラマン増幅器1〜4を形成する半導体レーザ素子についても、単一のピークを有するレーザ光を出力するもののみならず、単一の半導体レーザ素子から複数のピークを有するレーザ光を出力する構造としても良い。また、ファイバグレーティングによってピーク波長を規定する構造とするのではなく、DFB(Distributed Feedback)レーザや、DBR(Distributed Bragg Reflector)レーザのように、半導体レーザ素子内部に回折格子を設けた構造としても良い。この場合、ファイバグレーティングを省略することが可能となる。
また、ラマン増幅器1〜4における励起光のピーク波長を変化させるために、半導体レーザ素子に注入する電流の値を変化させることも好ましい。注入電流を変化させることによっても半導体レーザ素子内部の屈折率は変化し、出力されるレーザ光の波長を変化させることができるためである。具体的には、半導体レーザ素子にVOA(可変光減衰器)を付属せしめ、注入電流を変化させることによって励起光のピーク波長を変化させると共に、注入する電流値の変化による励起光の強度の変動をVOAによって抑制することが好ましい。かかる構造を採用することで、ラマン増幅器1〜4における励起光のピーク波長を注入電流の値によって制御することができる。なお、かかる波長制御を行う場合、ファイバグレーティングを省略できるという利点も有する。
さらに、励起光のピーク波長の変化を半導体レーザ素子の温度を制御することによって行うと共に、温度変化による励起光のピーク強度の変化を注入電流制御によって抑制することも好ましい。この場合にも、励起光のピーク波長の制御は半導体レーザ素子に対して直接行うことが可能であるため、ファイバグレーティングを省略することが可能となる。
また、等差数列を形成する利得ピークの配列順序は、実際にラマン増幅器が配置される順序と無関係に決定して良い。例えば、ラマン増幅器の配列について、ラマン増幅器1、ラマン増幅器3、ラマン増幅器4、ラマン増幅器2の順に配置する事が可能である。
さらに、制御部19による制御についても、増幅された光の波長強度特性において許容範囲から外れた波長成分に最も近接する1本の利得ピークを有するラマン増幅器のみを制御するのではなく、他のラマン増幅器についても併せて制御することとしても良い。具体的には、例えば、許容範囲から外れた波長成分に対して一定の波長間隔の範囲内におけるすべての利得ピークについて制御を行うこととしても良いし、その他の手法を用いても良い。
さらに、ラマン増幅器1〜4を構成する半導体レーザ素子、ファイバグレーティングの個数や、増幅利得制御部7における光電変換素子16a〜16h等の個数については上記のものに限定されず、任意の個数とすることができる。
また、実施の形態1にかかるラマン増幅装置について、その利得波長特性は平坦なものに限定されることはない。上記では理想的な利得波長特性を平坦なものとしたが、これ以外にも、光通信システム全体の損失波長特性を補償するような利得波長特性としても良いし、信号光源から出力される光の強度波長特性を補償するような利得波長特性としても良い。さらには、システム全体として要求される利得波長特性および/またはNFのシステム要求を満足するような利得波長特性としても良い。
【実施例】
実施の形態1にかかるラマン増幅装置について、実際に個々のラマン増幅器の利得ピークを具体的に指定しておき、増幅利得制御部7による制御を行う数値シミュレーションによる実施例について説明する。なお、本実施例において、ラマン増幅器の個数を5(それぞれラマン増幅器A〜Eとする)とし、利得ピークの数を4とする。
第9図(a)は、増幅利得制御部7による制御を行う前の、各ラマン増幅器のそれぞれの利得ピークの波長λp1〜λp4を示し、第9図(b)は、各ラマン増幅器のそれぞれの利得ピークの強度を示す。例えば、増幅利得制御部7の制御前におけるラマン増幅器Aにおいて波長λp1の利得ピークの波長は1424.192nmであって、ピーク強度は186mWである。また、ラマン増幅器Bにおける波長λp4の波長は1493.143nmであって、ピーク強度は179mWである。なお、増幅用伝送路として長さが50kmのSMF(Single Mode Fiber:単一モードファイバ)を用いた。また、簡単のため、本実施例において利得ピークの強度については特に変更することなく、利得ピークの波長を制御することでラマン増幅装置の利得波長特性を制御することとしている。
第9図(a)、第9図(b)に示す利得波長特性の場合、増幅された光の強度波長特性は、強度の最大値と最小値との差が0.75dBとなる。これに対して、強度の最大値と最小値との差が0.70dB以下となるよう許容範囲を設定した。
仮想的な増幅利得制御部7による制御(実際にはシミュレーション)によって、各ラマン増幅器の利得ピーク波長を第10図に示すように変化させた。具体的には、ラマン増幅器Bの第2の利得ピークの波長を1444.234nmから1444.034nmに変化させ、ラマン増幅器Cの第2の利得ピークおよび第3の利得ピークの波長を、それぞれ1448.544nmから1448.744nmへ、1466.045nmから1465.845nmへ変化させている。また、ラマン増幅器Dの第2の利得ピークおよび第4の利得ピークの波長を、それぞれ1435.616nmから1435.816nmへ、1484.525nmから1484.725nmへ変化させている。さらに、ラマン増幅器Eの第1、第3および第4の利得ピークを、1415.573nmから1415.373nmへ、1448.807nmから1449.007nmへ、1480.215nmから1480.415nmへ変化させている。
このように各利得ピークの波長を変化させることによって、ラマン増幅器A〜Eによって増幅された光の強度波長特性における最大値と最小値の差が0.69dBに変化する。制御前には0.75dBだったのに対し、最大値と最小値の差が0.70dB以下となるよう許容範囲を設定することで、差を0.69dBにまで低減することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかるラマン増幅装置について説明する。実施の形態2にかかるラマン増幅装置は、所定の利得特性を備えたラマン増幅器と、かかるラマン増幅器が備える利得特性に対して、かかる利得特性の周期関数和近似に基づいて定まるシフト量だけ上記所定の増幅利得特性をシフトさせたラマン増幅器とを備えることによって、全体として利得特性の平坦化を実現している。なお、本実施の形態2において、ラマン増幅装置の具体的構成は実施の形態1と同様であり、実施の形態2にかかるラマン増幅装置は、第1図、第2図および第5図に示す構成を有する。以下では、本実施の形態1との相違点である周期関数和近似によるシフト量の導出について説明した後、具体的な実施例について説明する。
ラマン増幅器の利得特性の波形は、―般的な関数の場合と同様に周期関数の和によって近似することが可能である。ここで、利得特性の波形の近似式を構成する周期関数の分布について考察すると、優れた平坦性を有する利得特性の場合には長周期の周期関数または無限大の周期を有する周期関数によって近似式が形成されるか、ほぼ同程度の振幅を有する多種多様の周期関数によって近似式が形成されることでそれぞれの影響が相殺され、全体として平坦な波形を実現している。一方、平坦性に劣る利得特性の場合には、近似式を構成する周期関数の中で、他に比べて振幅の大きい周期関数が存在する。このことは、換言すれば、他に比べて振幅の大きい周期関数の存在により、利得特性の平坦性が乱されているものと考えることができる。
以上の考察に基づいて、本実施の形態2では、基準となる1以上のラマン増幅器によって形成される利得特性の周期関数和近似の結果を用いて、シフト量を決定している。すなわち、周期関数和近似に用いられた周期関数の中から選択した周期関数、例えば最も大きい振幅を有する周期関数の周期に基づいて、かかる周期関数の影響が低減されるよう利得特性のシフト量を決定している。そして、上記基準となるラマン増幅器の利得特性に対して、決定したシフト量だけシフトした利得特性を有するラマン増幅器を新たに追加することで、全体として平坦な利得特性を備えたラマン増幅装置を実現している。
以下、利得特性の周期関数和近似の手法の一つとしてフーリエ変換を用いた場合を例に説明する。なお、以下では、周期関数和近似が行われる利得特性の一例として、増幅利得の周波数依存性である利得周波数特性を用いた例について説明するが、後述するように、周期関数和近似に用いる利得特性として、増幅利得の波長依存性である利得波長特性を用いて行うこととしても良い。
まず、簡単のため、以下では第11図(a)に示すような、任意の利得周波数特性G(f)を有するラマン増幅器と、利得周波数特性G(f)に対して周波数fだけシフトし利得周波数特性G(f−f)を有するラマン増幅器とを備えたラマン増幅装置を考える。かかるラマン増幅装置の全体としての利得周波数特性は、G(f)+G(f−f)で与えられ、以下ではG(f)+G(f−f)が周波数変化に対して平坦な関数となるよう周波数fを定める。
―般に、利得周波数特性G(f)を核exp(−i2πfX)でフーリエ変換することでX空間に写像された関数をF(X)とした場合、利得周波数特性G(f)とF(X)とは以下の関係を有する。

なお、(1)式のフーリエ変換に用いられる変数Xは、近似した周期関数の周期の逆数を意味する変数である。また、利得周波数特性G(f−f)とF(X)とは以下の関係を有する。

以上、(1)式および(2)式から、利得周波数特性G(f)を有するラマン増幅器と、利得周波数特性G(f−f)を有するラマン増幅器とを備えたラマン増幅装置の利得周波数特性のフーリエ変換写像は、{1+exp(−i2πfX)}F(X)となる。かかる写像のパワースペクトルは、

を用いて、

と表される。本実施の形態2にかかるラマン増幅装置では、かかる(4)式で示されるパワースペクトルのピーク値を低減するよう、構成要素たるラマン増幅器の利得特性を調整することによって平坦な利得周波数特性を有するラマン増幅装置を実現することとしている。
具体的には以下の通りである。第11図(b)に示すように、G(f)から得られた|F(X)|に関して、ピーク値を与えるXが存在するため、まず、|F(X)|の最大値を与えるXの値XMAXを導出する。ここで、XMAXの選択にあたってX≠0の中から選択することとする。すなわち、(3)式よりcos(θX)はfの関数であることから、fの値を適当に選択することによって(4)式におけるcos(θX)の値が減少し、X=XMAXにおけるパワースペクトルのピーク値が低減される。具体的には、第11図(c)に示すように、シフト量fの値を1/(4XMAX)以上、3/(4XMAX)以下が選ばれる。より好ましくは、X=XMAXにおける(4)式の値が最小になるようfの値を定める。具体的には、fの値を1/(2XMAX)とすることによってパワースペクトルのピーク値を低減することが可能である。そして、パワースペクトルのピーク値を低減することによってパワースペクトル全体の平坦性が改善され、ラマン増幅装置の利得周波数特性の平坦性も改善されることとなる。
なお、本実施の形態2にかかるラマン増幅装置を構成するラマン増幅器の利得特性のシフト量の導出に関して、(1)式に示すフーリエ変換を、計算機を利用した離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transformation)によって代替することとしても良い。離散フーリエ変換は、例えばラマン増幅器Aの利得周波数特性G(f)において、周波数fをf、f+h、f+2h、・・・、f+(n−1)h、・・・、f+(N−1)h(=f)のN個の離散的な値として扱い、それぞれに対応した利得周波数特性Gnに関して以下の演算を行っている。

なお、周波数fおよび利得周波数特性Gnが離散化されたことに伴い、変数Xも離散化され、X=X=kX=k/Nh(k=0、1、・・・、N−1)と表される。
また、(1)式のフーリエ変換によって得られるF(X)に対応する値として、離散フーリエ変換では、フーリエ成分Fが定義されている。具体的には、フーリエ成分Fは、

と表され、かかるフーリエ成分Fの絶対値の自乗が(1)式におけるフーリエ変換のパワースペクトル|F(X)|に対応する。従って、離散フーリエ変換を用いる場合には、ラマン増幅器Aの利得周波数特性Gnについて(5)式に示す離散フーリエ変換を行い、(6)式に示すフーリエ成分の絶対値の自乗が最大となるkを導出すればよい。そして、かかるkに対応したXの値に基づいて、ラマン増幅器Bは、利得周波数特性Gnに対して、1/(4X)以上、3/(4X)以下、より好ましくは1/(2X)だけ周波数がシフトした利得周波数特性を備えることで、平坦な利得周波数特性を有するラマン増幅装置を実現することができる。
【実施例1】
実施の形態2で説明した理論の具体例である実施例1について説明する。実施例1にかかるラマン増幅装置は、第12図に示す利得特性(第12図では波長を横軸としている)を有するラマン増幅器に対して、かかる利得特性に対して、フーリエ変換写像によって得られるシフト量だけシフトした利得特性を有する別のラマン増幅器を組み合わせた構成を有する。
第12図に示す利得特性を有するラマン増幅器(以下、「ラマン増幅器A」と称する)は、増幅対象たる信号光の波長帯域を1530nmから1610nmとし、最も近接する周波数を有する信号光間の周波数間隔たるチャンネル間隔を100GHz、チャンネル数を96チャンネルとした増幅特性を有する。具体的構成としては、ラマン増幅媒体としてファイバ長が80kmのディスパージョンシフトファイバ(DSF)を使用し、かかるラマン増幅媒体に対して8個の半導体レーザ素子から出射される励起光を後方励起方式によって導入する構成を有する。なお、第12図に示すラマン増幅器Aの利得特性は、利得平均値が16.131dBであり、利得の最大値と最小値との差は0.279dBである。また、ラマン増幅器Aにおける励起光波長(単位nm)と、励起光強度(単位mW)との関係は以下の表1に示す通りである。

次に、かかる利得特性を有するラマン増幅器Aと組み合わせることによってラマン増幅装置全体の利得特性を平坦化させるラマン増幅器(以下、「ラマン増幅器B」と称する)の利得特性のシフト量の導出について説明する。まず、ラマン増幅器Aの利得周波数特性をX空間にフーリエ変換し、フーリエ変換によって得られたF(X)の絶対値を自乗したパワースペクトルを導出する。なお、実施例1におけるフーリエ変換は、離散フーリエ変換を用いている。
第13図は、離散フーリエ変換によって導出したパワースペクトルのX依存性について示すグラフである。第13図において横軸は、X=k/Nhにおけるkの値を示す。本実施例1で行う離散フーリエ変換では、周波数帯域(f2−f1)は9.6THzであり、サンプリング周期hは0.1THzである。従って、サンプリング数N=9.6/0.1=96であり、第13図における横軸の値を9.6で除算すればX(THz)−1が求まる。なお、サンプリング定理により、kがN/2以上、すなわち本実施例ではk≧49におけるパワースペクトルは無視することができる。
すなわち、本実施例1では、0≦k≦48の範囲でパワースペクトル|Fが最大となるkを導出すれば良い。第13図に示すグラフからかかるkの値は7であることが明らかであり、X=k/NhかつN=96、h=0.1より、パワースペクトル|Fが最大となるXの値は、7/(96×0.1)となる。
上述したように、ラマン増幅装置全体としての利得周波数特性を平坦化するためには、ラマン増幅器Bの利得周波数特性を、ラマン増幅器Aの利得周波数特性に対して1/(4X)以上、3/(4X)以下、より好ましくは1/(2X)だけシフトさせればよい。従って、本実施例1の場合には、ラマン増幅器Bの利得周波数特性は、ラマン増幅器Aの利得周波数特性に対して0.345THz〜1.035THz、より好ましくは0.69THzだけシフトさせることとなる。
ここで、周波数シフト量を0.69THzとした場合、ラマン増幅器Bの励起光波長(単位nm)と、励起光強度(単位mW)との関係の一例は、以下の表2に示す通りとなる。

第14図は、ラマン増幅器Bの利得周波数特性に関する周波数シフト量を0.69THzとした場合のラマン増幅器Aの利得特性とラマン増幅器Bの利得特性を示すグラフである。なお、第14図では、利得特性の横軸を波長としている。また、第14図において、曲線l13は、ラマン増幅器Aの利得特性を示し、曲線l14は、ラマン増幅器Bの利得特性を示している。なお、周波数をシフトさせる方向は高周波数方向と低周波数方向のいずれでも良いが、実施例1では、第14図でも示すように、ラマン増幅器Bの利得特性は、ラマン増幅器Aの利得特性に対して長波長側(低周波数側)にシフトしている。
第14図に示すように、ラマン増幅器Bの利得特性は、ラマン増幅器Aの利得特性の山の部分に谷が、ラマン増幅器Aの利得特性の谷の部分に山が来るよう形成されている。従って、ラマン増幅器Bの利得特性は、ラマン増幅器Aの利得特性が有する凹凸を平坦化するよう機能していることが明らかである。
第15図は、ラマン増幅器Aの利得特性と、ラマン増幅器Bの利得特性とを足し合わせた、実施例1にかかるラマン増幅装置全体の利得特性を示すグラフである。第15図において、曲線l15はラマン増幅器Aとラマン増幅器Bとを組み合わせた本実施例1のラマン増幅装置全体の利得特性を示し、曲線l16は、比較のためラマン増幅器Aを2個直列接続したラマン増幅装置の利得特性を示している。
第15図に示すように、本実施例1にかかるラマン増幅装置は、ラマン増幅器Aを2個接続した構成と比較して、平坦性に優れた利得特性を実現することができる。具体的には、ラマン増幅器Aを2個接続した場合の、使用帯域における利得の最大値と最小値との差は0.558dBとなるのに対して、本実施例1にかかるラマン増幅装置は、利得の最大値と最小値との差を0.111dBまで低減することが可能である。
【実施例2】
次に、実施例2にかかるラマン増幅装置について説明する。実施例2にかかるラマン増幅装置は、4個のラマン増幅器によって構成されており、既存の2個のラマン増幅器によって実現される利得特性に対して周期関数和による近似を行った上で、既存のラマン増幅器と同様のパターンを有するラマン増幅器のシフト量を決定している。
本実施例2では、既存の2個のラマン増幅器として、実施例1で説明したラマン増幅器Aとラマン増幅器Bとを用いることとしている。そして、かかる既存のラマン増幅器の利得特性の周期関数和近似に基づいて、新たに追加するラマン増幅器Cおよびラマン増幅器Dの利得特性に関するシフト量を決定している。なお、本実施例2において、使用するラマン増幅器の構成は実施例1と同様であり、後述する離散フーリエ変換においても、周波数帯域(f−f)、サンプリング周期h、サンプリング数N等は実施例1と同様であり、サンプリング定理に基づいてk≧49のパワースペクトルを無視できることも同様である。以下、ラマン増幅器Cおよびラマン増幅器Dの利得特性に関するシフト量の導出について具体的に説明する。
まず、ラマン増幅器Aの利得周波数特性とラマン増幅器Bの利得周波数特性との和によって形成される利得周波数特性に関して離散フーリエ変換を行う。第16図は、ラマン増幅器Aの利得周波数特性とラマン増幅器Bの利得周波数特性との和によって形成される利得周波数特性に対して離散フーリエ変換を行った結果を示すグラフである。なお、第16図において、第13図と同様に横軸はXを形成するkの値を示し、縦軸はパワースペクトルの強度を示している。また、第16図において、k≧49におけるパワースペクトルは、第13図の場合と同様にサンプリング定理に基づいて無現される。
第16図に示すように、最大のパワースペクトルを与えるkの値は3であることから、本実施例2においてX=k/NhかつN=96、h=0.1より、パワースペクトルが最大となるXの値は、3/(96×0.1)となる。従って、ラマン増幅器A〜ラマン増幅器Dによって形成される実施例2にかかるラマン増幅装置の利得周波数特性を平坦化するためには、ラマン増幅器C、Dの利得周波数特性を、ラマン増幅器A、Bの利得周波数特性から0.8THz〜2.4THzの範囲、より好ましくは1.6THzだけ周波数シフトさせれば良い。
次に、本実施例2において、ラマン増幅器C、Dの利得周波数特性を、それぞれラマン増幅器A、Bの利得周波数特性から1.6THzだけ高周波数側(短波長側)にシフトさせた場合のラマン増幅器C、Dにおける励起光波長(単位nm)と、励起光強度(単位mW)との関係を、表3および表4にそれぞれ示す。



次に、表3および表4に示す励起光波長および励起光強度を備えたラマン増幅器C、Dを新たに組み合わせた本実施例2にかかるラマン増幅装置の全体としての利得特性について説明する。第17図は、実施例2にかかるラマン増幅装置の全体としての利得特性について示すグラフである。なお、第17図において、曲線l17は本実施例2にかかるラマン増幅装置の利得特性を示し、曲線l18は実施例1にかかるラマン増幅装置を2個直列接続すなわちラマン増幅器Aとラマン増幅器Bとを2個ずつ接続したラマン増幅装置の利得特性を示す。また、曲線l19は、ラマン増幅器Aを4個直列接続した構成における利得特性を示している。
第17図に示すように、本実施例2にかかるラマン増幅装置は、ラマン増幅器Aを4個直列接続した構成や、実施例1にかかるラマン増幅装置を2個直列接続した場合と比較して、より平坦な利得特性を実現することが可能である。具体的には、ラマン増幅器Aを4個直列接続した場合には、使用帯域における利得の最大値と最小値との差は1.116dBであり、実施例1にかかるラマン増幅装置を2個接続した場合の利得の最大値と最小値との差は0.222dBである。これに対して、本実施例2にかかるラマン増幅装置の場合には、使用帯域における利得の最大値と最小値との差は0.180dBであり、さらに利得の平坦性が改善されていることが明らかである。
本実施例2に示すように、基準となる利得特性を実現するラマン増幅器を複数とし、基準となる利得特性に対して所定量だけシフトした利得特性を実現するラマン増幅器を複数としても良い。また、本実施例2では、シフト量を導出した後に、ラマン増幅器Cの利得特性をラマン増幅器Aの利得特性に基づいてシフトし、ラマン増幅器Dの利得特性をラマン増幅器Bの利得特性に基づいてシフトすることとしている。このことは、結果としてはラマン増幅器Aおよびラマン増幅器Bによって得られる利得特性を所定量だけシフトした利得特性を、ラマン増幅器Cおよびラマン増幅器Dによって実現することを意味している。
なお、実施の形態2およびその実施例1、2では、利得特性の例として利得周波数特性を使用し、周波数に関するフーリエ変換による周期関数和近似を行った例について説明している。しかしながら、利得周波数特性を使用するのみならず、利得特性の別の例として利得波長特性を使用し、波長に関するフーリエ変換による周期関数和近似を行うこととしても良い。
例えば、あるラマン増幅器が利得波長特性G(λ)を有する場合に、(1)式における周波数fをλとし、2πXをYとし、dfをdλとすることによって、

と表すことが可能である。また、利得波長特性G(λ−λ)を有するラマン増幅器に関するフーリエ変換は、(2)式と同様に、

と与えられる。従って、G(λ)+G(λ−λ)のフーリエ変換写像は(1+e−iλ0Y)F(Y)で与えられることとなり、以後、利得周波数特性に基づいてシフト量を定めた場合と同様の手法を用いて、YMAXを導出し、波長シフト量λを決定することが可能である。また、波長に関するフーリエ変換を行うにあたって、離散フーリエ変換を利用可能であることも同様である。
また、実施の形態2および実施例では、周期関数和近似によって得られる周期関数のうち、もっともパワースペクトルの大きな周期関数を選択し、かかる周期関数の周期に基づいてシフト量を導出している。しかしながら、周期関数の選択条件としてはかかるものに限定して本発明を解釈する必要はなく、様々な選択条件に基づいて周期関数の選択を行うことが可能である。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかるラマン増幅システムについて説明する。実施の形態3にかかるラマン増幅システムは、実施の形態1または実施の形態2におけるラマン増幅器のグループを多数配置した構造を有し、これら多数のラマン増幅器に対して、単一の全体利得制御装置によって利得波長特性を制御する。第18図は、実施の形態3にかかるラマン増幅システムの構造を示すブロック図であり、以下、第18図を適宜参照して説明する。
実施の形態3にかかるラマン増幅システムは、ラマン増幅器21a〜21nが順次接続されたグループ21Aと、ラマン増幅器22a〜22nが順次接続されたグループ22Aと、ラマン増幅器23a〜23nが順次接続されたグループ23Aと、ラマン増幅器24a〜24nが順次接続されたグループ24Aとを備える。グループ21A〜24Aは入力端20に対して順次接続されており、グループ24Aには光分岐器25が接続され、光分岐器25の一方の出力端には全体利得制御部26が接続され、光分岐器25の他方の出力端27から増幅された光が出力される構造を有する。
ラマン増幅器21a〜21nは、実施の形態1または実施の形態2におけるラマン増幅器1〜4と同様に、それぞれ異なる利得波長特性を有し、互いに異なる波長の利得ピークを有する。このため、同一利得波長特性からなるラマン増幅器を複数備えた場合と比較して、利得偏差が重畳されることを防止している。また、ラマン増幅器21a〜21nから得られる利得ピークの波長は、等差数列を形成するよう構成されており、各利得ピークの波長間隔が等しくなるためにグループ21A全体の利得波長特性は平坦化される。ここで、隣接する利得ピークは異なるラマン増幅器から得られるものとする。このため、ラマン増幅器21a〜21nそれぞれにおける利得ピークの波長間隔は6nm以上としているにもかかわらず、グループ21A全体としては利得ピークの波長間隔を6nm以下とすることが可能であり、さらなる平坦化を図っている。なお、ラマン増幅器21a〜21n等は、それぞれ第2図と同等の構造を有し、利得ピークの数についても複数であれば2以外としても良い。また、等差数列の公差については、グループを形成する任意のラマン増幅器における隣接利得ピーク間の波長間隔の平均値とすることが好ましい。
そして、異なるグループに属するラマン増幅器のうち、ラマン増幅器21a、22a、23a、24aは、ほぼ同一の利得波長特性を有し、ほぼ等しい波長の利得ピークを有する。同様に、ラマン増幅器21b〜24b、ラマン増幅器21c〜24c等もそれぞれほぼ同一の利得波長特性を有し、ほぼ等しい波長の利得ピークを有する。このため、グループ22A〜24Aは、グループ21Aと同一の利得波長特性を有し、グループ21Aと同様に平坦な利得波長特性となる。
このように、異なるグループに属し、同一の利得波長特性を有するラマン増幅器が存在するため、同一の利得波長特性を有するラマン増幅器ごとにセットを設定する。すなわち、ラマン増幅器21a〜24aをセット28aとし、ラマン増幅器21b〜24bをセット28bとし、以後同様に分類してセット28a〜28nを設定する。
次に、全体利得制御部26の構造について、第19図を適宜参照して説明する。第19図は、全体利得制御部26の構造を示すブロック図である。全体利得制御部26は、光分岐器25から入力された光を波長ごとに分波する光分波器29と、分波された光をそれぞれ電気信号に変換する光電変換素子30a〜30hと、必要な情報を記憶する記憶部31と、光電変換素子30a〜30hおよび記憶部31と接続された制御波長探知部32と、記憶部31、制御波長探知部32およびセット28a〜28nを制御する制御部33とを有する。
光分波器29は、複数の光ファイバを溶融結合させた溶融型カプラや、アレイ導波路、回折格子等によって構成されており、所定の波長範囲ごとに入力された光を分波するものである。また、光電変換素子30a〜30hは、フォトダイオード等によって形成されている。
記憶部31は、光分波器29で分波された光の強度の許容範囲に関する情報と、分波された光の波長成分と対応する利得ピークの波長およびかかるピーク波長がセット28a〜28nのいずれによって供給される利得ピークかについて記憶する。また、制御波長探知部32は、分波された波長成分に対応した電気信号を入力し、記憶部31に記憶された情報を適宜参照することで、許容範囲から外れた波長成分に対応するセットを検出して制御部33に出力する機能を有する。
制御部33は、記憶部31、制御波長探知部32およびセット28a〜28nを制御するためのものである。具体的には、記憶部31および制御波長探知部32の動作を制御すると共に、制御波長探知部32から出力された情報に基づいてセット28a〜28nに所属するラマン増幅器の利得波長特性を制御する機能を有する。
次に、全体利得制御部26の動作について説明する。第20図は、全体利得制御部26の動作を示すフローチャートである。以下、第20図に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、入力された増幅光について、許容範囲外の波長成分の有無を検出し、かかる波長成分が存在する場合はその波長を検出する(ステップS201)。具体的には、多数のラマン増幅器によって増幅された光は第19図に示す光分波器29によって所定の波長成分ごとに分波され、光電変換素子30a〜30hによって電気信号に変換された後、制御波長探知部32に入力される。制御波長探知部32は、各波長成分に対応する電気信号の強度について、記憶部31に記憶された情報を参照して許容範囲から外れた波長成分の有無を検出し、存在する場合にはその波長を検出する。なお、許容範囲から外れた波長成分が検出されない場合は全体利得制御部26の動作は終了する。
そして、検出した波長成分の波長に基づいて所定の利得ピークを有するセットを選択する(ステップS202)。具体的には、記憶部31に増幅された光の各波長成分に対応するピーク波長およびかかるピーク波長がどのセットに所属するラマン増幅器によるものかについて記憶されており、かかる情報に基づいて適切なセットを選沢する。
その後、選択されたセットに所属するラマン増幅器を選択し(ステップS203)、かかるラマン増幅器の利得波長特性を変化させる(ステップS204)。ここで、セットに所属するラマン増幅器はそれぞれほぼ同一の利得波長特性を有するため、セットに属する任意のラマン増幅器を選択し、かかるラマン増幅器の利得波長特性を変化させる。選択されたラマン増幅器では、ファイバグレーティングおよび半導体レーザ素子の温度や、半導体レーザ素子への注入電流を変化させて利得ピークの波長及び強度を変化させる。このように、選択したラマン増幅器の利得波長特性を変化させることで、ラマン増幅システム全体の利得波長特性が変化する。
そして、変化した利得波長特性に基づいて増幅された光に対して、ステップS201で検出した波長成分の強度が許容範囲内に抑制されたかを調べる(ステップS205)。具体的には、ステップS201と同様の手法によって許容範囲から外れた波長成分の有無を調べ、存在する場合にはステップS203に戻って、同一セットに属する他のラマン増幅器を選択する。許容範囲から外れた波長成分が存在しない場合には、全体利得制御部26の動作は終了する。
ステップS203において所定のセットに属する任意のラマン増幅器を選択することとしたのは次の理由である。すなわち、全体利得制御部26は、増幅された光に対してステップS201によって許容範囲外の波長成分を検出し、かかる波長成分がどのセットに所属するラマン増幅器に起因するかを判断するが、どのラマン増幅器に起因するかを判断することはできない。そのため、制御対象となるセットを特定した後、かかるセットに属する任意のラマン増幅器を選択することとなる。
実施の形態3にかかるラマン増幅システム全体の利得波長特性に乱れが生じた場合、同時に複数のラマン増幅器に異常が生じている可能性は低く、通常は単一のラマン増幅器が故障等することで全体の利得波長特性が変化する。従って、選択したセットにおいて故障等したラマン増幅器を選択する可能性は低く、正常なラマン増幅器の利得波長特性を変化させることでシステム全体において所望の利得波長特性を実現することができる。なお、万が一ステップS203で選択したラマン増幅器が故障等しており、ステップS204でシステム全体の利得波長特性を改善できない場合であっても、ステップS205において全体の利得波長特性を再度チェックすることによって再びステップS203に戻って別のラマン増幅器を選択して利得波長特性を変化させることができる。
実施の形態3にかかるラマン増幅システムは、以下の利点を有する。まず、全体利得制御部26を備えたことで、システムを構成するラマン増幅器の増幅利得波長特性に異常を生じた際におけるシステム全体の利得波長特性の変動を抑制することができる。このため、ラマン増幅システムを構成するラマン増幅器の故障や、配置した場所における環境条件によって個々の利得波長特性が変動した場合であってもシステム全体として所望の利得波長特性を実現することができる。また、入力する信号光の波長強度特性が劣化している場合でも、所望の波長強度特性を有する増幅光を出力することができる。
また、本実施の形態3にかかるラマン増幅システムは、全体の利得波長特性の制御を容易に行うことができるという利点を有する。通常、長距離伝送を行う光通信システムにおいては、ラマン増幅装置は所定距離だけ離隔して複数配置される。このように複数のラマン増幅装置を配置する場合、実施の形態1または実施の形態2にかかるラマン増幅装置を用いることとしても所望の利得波長特性を実現することは可能である。しかし、本実施の形態3にかかるラマン増幅システムを用いた場合には、かかる複数のラマン増幅装置(本実施の形態3における複数のグループ)全体を制御対象とする全体利得制御部26のみによって利得波長特性の制御を行うことができる。このため、低コストのラマン増幅システムを実現することができる。
さらに、ほぼ同一の利得波長特性を備えたラマン増幅器ごとに分類してセット28a〜28nを設定して制御を行うこととしたため、制御を容易に行えるという利点を有する。各セットに属するラマン増幅器はほぼ同一の利得波長特性を備えるため、選択したセットに属する任意のラマン増幅器の利得波長特性を変化させることで容易にシステム全体の利得波長特性を制御することができる。
なお、本実施の形態3にかかるラマン増幅システムにおいて、グループ21A〜24Aの末端にそれぞれ実施の形態1において説明した増幅利得制御部7を設けた構造としても良い。この場合、2通りの制御機構を用いることでより容易にラマン増幅システムにおける利得波長特性を制御することが可能となる。例えば、全体利得制御部26によって故障したラマン増幅器が所属するセットを特定するのと共に、増幅利得制御部7によって故障したラマン増幅器が所属するグループを特定することで、故障したラマン増幅器を一意に特定することが可能である。かかる場合には、故障したラマン増幅器が所属するセットに所属する他のラマン増幅器を確実に選択することが可能であるため、上記のステップS203において故障したラマン増幅器を選択することを避けることが可能となる。したがって、セット制御とグループ制御をあわせて行うことで、故障したラマン増幅器を迅速に特定することが可能になると共に、システム全体の利得波長特性の制御を迅速に行うことが可能となる。
また、実施の形態1〜3において用いるラマン増幅器の具体的配置としては、分布型でも良いし、集中型としても良い。さらに、利得特性を具体的に検出する構成としては、各ラマン増幅器から出力される励起光に基づいて利得特性を検出することとしても良いし、実際に増幅された信号光の強度分布に基づいて利得特性を検出することとしても良い。さらに、実施の形態2において、利得特性をシフトさせる際のシフト方向は、プラス方向でも良いし、マイナス方向としても良い。また、実施の形態2において、それぞれのラマン増幅器において励起光の数、すなわち、個々のラマン増幅器における利得ピークの数を多くすることが好ましい。かかる構成とすることによって増幅波長(周波数)帯域が拡大するためである。
以上説明したように、本発明によれば、複数のラマン増幅器を有することとし、第1のラマン増幅器の隣接利得ピークの間に第2の利得ピークが位置する構成としたため、ラマン増幅装置全体として隣接利得ピークの波長間隔を任意に設定できると共に、増幅利得制御手段を備えることとしたため、所望の利得波長特性を実現することができるという効果を奏する。
また、隣接する利得ピークが異なるラマン増幅器によって供給されるため、隣接利得ピークの波長間隔を6nm以下とすることができ、利得波長特性が平坦化すると共に、増幅利得制御手段による制御を容易かつ精密に行うことができる。
また、次の発明によれば、第1利得特性を備えるラマン増幅器と、第1利得特性に対して周期関数和近似を行い、かかる近似から得られた周期関数の周期分布に基づいて定まるシフト量だけ第1利得特性に対してシフトさせた第2利得特性を備えるラマン増幅器とを備えることで、第1利得特性と第2利得特性とが、互いに凹凸を相殺し、全体として平坦な利得特性を実現することができるという効果を奏する。
また、次の発明によれば、ラマン増幅器によって形成される複数のグループに対して、利得波長特性の制御を単一の全体利得制御手段によって行うこととしたため、利得波長特性の制御を容易に行うことができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明にかかるラマン増幅装置およびラマン増幅システムは、利得偏差の小さい利得特性を得ることが可能であり、例えば光通信の分野に利用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅利得が極大となる利得ピークを有する利得波長特性を備えた複数のラマン増幅器を含むラマン増幅装置であって、
第1の利得ピークおよび該第1の利得ピークに隣接する第2の利得ピークを含む複数の利得ピークを有する利得波長特性を備えた第1のラマン増幅器と、
前記第1の利得ピークおよび前記第2の利得ピークの間に位置する波長の第3の利得ピークを含む1以上の利得ピークを有する利得波長特性を備えた第2のラマン増幅器と、
前記第1の利得ピークおよび前記第2の利得ピークの間に位置し、前記第1の利得ピークの波長と前記第3の利得ピークの波長との間で等差数列を形成する波長の第4の利得ピークを有する利得波長特性を備えた第3のラマン増幅器と、
を備えたことを特徴とするラマン増幅装置。
【請求項2】
隣接する利得ピーク間の波長間隔は、6nm以下であることを特徴とする請求の範囲1に記載のラマン増幅装置。
【請求項3】
隣接する利得ピーク間の波長間隔は、0.3nm以下であることを特徴とする請求の範囲1に記載のラマン増幅装置。
【請求項4】
前記等差数列の公差は、前記第1のラマン増幅器から得られる隣接利得ピーク間の波長間隔の平均値をラマン増幅器の個数で除算した値にほぼ等しいことを特徴とする請求の範囲1に記載のラマン増幅装置。
【請求項5】
増幅利得が極大となる利得ピークを有する利得特性を備えた複数のラマン増幅器を含むラマン増幅装置であって、
第1利得特性を備えた1以上のラマン増幅器と、
前記第1利得特性に対する周期関数和近似より得られる周期分布に基づいて定まるシフト量だけ前記第1利得特性からシフトした第2利得特性を備えた1以上のラマン増幅器と、
を備えたことを特徴とするラマン増幅装置。
【請求項6】
前記シフト量は、前記第1利得特性に対する周期関数和近似を形成する周期関数のうち、最大振幅を有する周期関数の周期に基づいて定まることを特徴とする請求の範囲5に記載のラマン増幅装置。
【請求項7】
前記シフト量は、前記第1利得特性に対する周期関数和近似を形成する周期関数のうち、最大振幅を有する周期関数の周期の1/4以上、3/4以下であることを特徴とする請求の範囲5に記載のラマン増幅装置。
【請求項8】
前記周期関数和近似は、フーリエ変換により行われることを特徴とする請求の範囲5に記載のラマン増幅装置。
【請求項9】
前記第1利得特性は、隣接する利得ピーク間の波長差または周波数差が、ほぼ一定の値であることを特徴とする請求の範囲5に記載のラマン増幅装置。
【請求項10】
前記複数のラマン増幅器によって増幅された光の強度波長特性に基づいて、複数の前記ラマン増幅器の利得波長特性を制御する増幅利得制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求の範囲1〜9のいずれか一つに記載のラマン増幅装置。
【請求項11】
前記増幅利得制御手段は、増幅された光において、光強度が所定の許容範囲から外れた波長成分の波長と最も近接する波長の利得ピークを有するラマン増幅器を選択する波長探知手段をさらに備え、選択したラマン増幅器が有する前記所定の利得ピークの波長および/またはピーク強度を変化させることで前記増幅された光の強度を前記許容範囲以内に抑制するよう前記複数のラマン増幅器の利得波長特性を制御することを特徴とする請求の範囲10に記載のラマン増幅装置。
【請求項12】
前記複数のラマン増幅器は、
レーザ光を出力する複数の半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子から出射されたレーザ光を合波するための光結合器と、
をそれぞれ備えることを特徴とする請求の範囲1〜9のいずれか一つに記載のラマン増幅装置。
【請求項13】
前記増幅利得制御手段は、前記半導体レーザ素子の温度を制御することによって前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の強度波長特性を変化させることを特徴とする請求の範囲12に記載のラマン増幅装置。
【請求項14】
前記複数のラマン増幅器は、前記半導体レーザ素子の出射波長を規定するファイバグレーティングをさらに備えることを特徴とする請求の範囲13に記載のラマン増幅装置。
【請求項15】
前記増幅利得制御手段は、前記ファイバグレーティングの温度を制御することによって前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の強度波長特性を変化させることを特徴とする請求の範囲14に記載のラマン増幅装置。
【請求項16】
互いに異なる波長の利得ピークを有する複数のラマン増幅器を備えた第1のグループと、
該第1のグループの末端に接続され、互いに異なる波長の利得ピークを有する複数のラマン増幅器を備えた第2のグループと、
該第2のグループの末端に接続され、前記第1および第2のグループに属するラマン増幅器を所定のセットに分類し、利得波長特性を制御する全体利得制御手段と、
を備えたことを特徴とするラマン増幅システム。
【請求項17】
前記全体利得制御手段は、選択したセットに属するラマン増幅器が有する所定の利得ピークの波長および/または強度を変化させることで増幅された光の強度を所定の許容範囲以内に抑制するよう前記第1および前記第2のグループに属するラマン増幅器の利得波長特性を制御することを特徴とする請求の範囲16に記載のラマン増幅システム。
【請求項18】
前記第1のグループ末端に接続され、前記第1のグループによって増幅された光の強度波長特性に基づいて、前記第1のグループを構成するラマン増幅器の利得波長特性を制御する第1の増幅利得制御手段と、
前記第2のグループ末端に接続され、前記第2のグループによって増幅された光の強度波長特性に基づいて、前記第2のグループを構成するラマン増幅器の利得波長特性を制御する第2の増幅利得制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求の範囲16に記載のラマン増幅システム。

【国際公開番号】WO2004/031847
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541216(P2004−541216)
【国際出願番号】PCT/JP2003/010981
【国際出願日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】