説明

ラミネート加工されたガラス用の複合中間層

【課題】ポリウレタンを構成の一部に使用し、高い貫通抵抗を有し、かつ低コストであり、自動車のフロントガラス等に好適したラミネート加工ガラス用複合中間層を提供する。
【解決手段】複合中間層は第2と第3のポリマー層の間に挟まれた可塑化ポリビニルブチラールの層を含む。好ましい実施形態では、第2と第3の層の少なくとも一方、好ましくは両方が0.125mm(0.005インチ)未満の厚さであり、脂肪族ポリウレタンで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート加工されたガラスとそれに使用されるポリマー層に関する。さらに詳細には、本発明は、ラミネート加工ガラスに使用される、多層の複合中間層に関する。複数層のうちの1つが可塑化されたポリビニルブチラール(PVB)である。
【背景技術】
【0002】
そのようなラミネート加工ガラスの主要な性能特性は、普通は2.27kg(5ポンド)のボール落下試験を通じて判定される貫通抵抗であり、そこでは平均破壊高さ(MBH)は階段法またはエネルギー法のいずれかを介して測定することができる。米国で車両に使用するための自動車用フロントガラスはANSI Z26.1規約に見られる[12フィート(3.7メートル)で100%合格]という最低貫通抵抗仕様に合格しなければならない。世界の他の地域で、条件を満たすことを要求される同様の規約が存在する。米国と欧州の両方で、建築用途のラミネート加工ガラスに使用するために最低貫通抵抗が満たすべき特定の規約の必要条件もやはりある。
【0003】
階段法では、そこから様々な高さで鋼球を30.5cm×30.5cm(12インチ×12インチ)のラミネート加工したガラス試料の上に落下させることができる衝撃タワーを使用する。MBHは試料の50%がボールを支えて50%が貫通させるボール落下高さで規定される。試験用ラミネートはANSI Z26.1規約に述べられた支持フレームに水平に支持される。必要であれば、所望の試験温度にラミネートを条件設定するために環境試験チャンバが使用される。支持フレーム内で試料を位置決めし、予期されるMBH付近の高さからラミネート試料上にボールを落下させることによって試験が実施される。もしもボールが貫通すれば結果は失敗として記録され、もしもボールが支えられれば結果は支持として記録される。結果が支持の場合には、前回の試験よりも0.5m高い落下高さからこのプロセスを繰り返す。結果が失敗の場合には、前回の試験よりも0.5m低い落下高さでこのプロセスを繰り返す。普通では、信頼性のある結果を得るために少なくとも12枚のラミネートを試験することが必要である。この手順を試験試料のすべてが使用され尽くすまで繰り返す。その後、結果を表にして、各々の落下高さでの支持のパーセントを算出する。その後、これらの結果を支持パーセント対高さでグラフとし、データの最適合を表わす線がグラフ上に引かれる。その後、グラフから支持パーセントが50%である点でMBHを読み取ることができる。
【0004】
エネルギー試験法では、ラミネートにぶつかるボールにエネルギー保存の原理を当てはめることによってMBHを判定する。ラミネートを貫通後のボールによる運動エネルギーの損失はラミネートによって吸収されるエネルギーの量に等しい。ラミネートに当たるときのボールの運動エネルギーは落下の高さから算出することができる。ラミネートを出た後のボールの運動エネルギーは、ラミネートの下方で分かっている一定の距離で離された2つの磁場検出コイルを使用してボールの速度を測定することによって判定することができる。普通では、信頼性のある結果を得るために、少なくとも6枚のラミネートの試験が必要である。その後、測定された運動エネルギーの変化はMBHを計算するために使用することができる。
【0005】
ガラス/PVB/ガラスラミネートについて許容可能な貫通抵抗を達成するためには、ガラス/PVB界面接着レベルが約2〜7Pummel単位に保たれることが必須である。許容可能な貫通抵抗は2〜7、好ましくは4〜6のPummel接着値で達成される。2未満のPummel接着値ではシートから失われるガラスが多過ぎ、ラミネートの保全性(すなわち層剥離)および長期間の耐久性に関する問題と同様に衝突時のガラス剥落が生じる可能性がある。7を超えるPummel接着性では、シートに対するガラスの接着性は概して高過ぎ、ラミネートが乏しいエネルギー消散と低い貫通抵抗を備える結果になる。
【0006】
ガラスに対するPVBの接着性は、ラミネートガラス産業で品質管理目的のために日常的に使用されるPummel接着試験(Pummel接着値は単位を有さない)を使用して測定される。ガラス/PVB/ガラスの複数のラミネートを−18℃(0°F)の条件下で調製し、ガラスを割るために手動操作で各々が1ポンド(454g)の丸頭ハンマで「打ちのめす」。PVBシートに付着していない割れたガラスはすべて取り除く。シートに付着して残ったガラスを判明しているPummel尺度の標準のセットと目視で比較する。その数字が高いほど多くのガラスがシートに付着して残っており、すなわちPummel値ゼロではガラスが付着しておらず、Pummel値10では100%のガラスがシートの表面に付着している。
【0007】
接着性に加えて、貫通抵抗を決定するのに重要な検討事項である別の因子はラミネート内のPVBフィルムの厚さである。フロントガラスの製造に使用されるPVB中間層の大部分は加熱され、その後、車両の屋根の線に適合するように曲率を有するカラーバンドを達成するために成形/伸張されるので、高過ぎる接着性と薄い中間層の組合せは完成したフロントガラスが必要な貫通抵抗性能規格を満たさない原因になる可能性がある。フロントガラスのラミネート加工の後に接着性を下げること(および許容可能な貫通抵抗を達成すること)は不可能なので、最低必要条件に合致しない場合にはフロントガラスは破壊しなければならない。
【0008】
ラミネート加工したガラスの用途に使用するために許容可能な中間層製品を作製するために、一貫した接着性能を備えた製品を製造するためにかなりの努力が費やされる。これは樹脂、可塑剤およびその他の成分の厳重な製造管理、ならびに生産される中間層の各ロットに関する引き剥がし粘着力の品質管理評価を介して為される。PVB中間層はまた、中間層の水分がPVB/ガラスの接着レベルに大きな影響力を有するので、制御された水分のレベルで製造される。顧客の側では、ガラス源、ガラス洗浄、中間層の水分含量などを含めてPVB/ガラスの接着性に影響を与える可能性のある多数の要因が存在する。中間層の水分含量の変化を防止するために、ラミネート組み立て室およびPVBの加工前素材の貯蔵室を制御された湿度と温度に維持することは特に重要である。前節で述べたPVBの成形のような二次加工操作はPVB中間層の水分含量の変化に結びつく可能性があり、かつ付随的な有意の影響をPVB/ガラスの接着性レベルおよび貫通抵抗に対して有する。ガラス表面の清浄度に起因して各々のガラス表面上で極めて異なる接着挙動、またはフロントガラス内部で可変/不揃いの接着性を有する可能性がしばしばあり、それは受容不可能な貫通抵抗とやはり受容不可能な品質に結びつく可能性がある。製造される製品が目標のPummel接着性および必要なMBH仕様に合致することを保証するためにフロントガラス製品のごく一部を破壊的に試験しなければならない。
【0009】
PVBを基本としたラミネートに伴なう別の大きな性能欠陥は貫通抵抗に及ぼす温度の影響である。−18℃(0°F)で観測されるMBHは、23℃(73°F)で達成されるMBHの約30〜40%である。
【0010】
ウレタンポリマー構造(特に軟らかいセグメント部分)の適切な選択をすればガラス/ポリウレタン/ガラスのラミネートの、より低い試験温度に対する貫通抵抗の感受性が、大幅に低減し得ることが長い間知られてきている。
【0011】
PVB中間層が加わらないポリウレタン(PU)中間層の別の大きな用途はガラス/ポリカーボネート/ガラスを含む特殊ラミネートの製造であり、この場合、ガラスラミネートの貫通抵抗はポリカーボネート成分によって主として制御され、PU成分は主としてラミネート構造のための接着剤としてはたらく。市販のPVB中間層に通常使用される可塑剤はポリカーボネート表面を化学的に攻撃すると考えられ、その結果、ひび割れ/曇りおよび許容できない品質につながる。
【0012】
ガラス/PU/ガラスのラミネートでは通常、PVBを基本とするラミネートとは異なり、PU/ガラス接着が高い湿度と温度に対して優れた耐性を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ポリウレタンを基本とするラミネートによって示される利点にもかかわらず、ポリウレタンポリマーの方がコストが高いという理由で、そのようなラミネートはPVBを基本とするラミネートに置き換わらなかった。したがって、コストがより低く、PVBを基本としたラミネートに付随するその他の特性を備え、観測される貫通抵抗に与える温度と接着性の影響を最小限にするラミネート加工ガラスに使用可能な中間層に関する要求が当該技術分野に存在する。本発明はこれらの利点の多くを組み入れる複合中間層を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はラミネート加工ガラスに使用するのに適した改良型複合中間層を提供する。ある好ましい実施形態では、この複合体は第2と第3のポリマー層の間に挟まれた可塑化PVBの層を含む。ある好ましい実施形態では、第2と第3の層の少なくとも一方は0.125mm(0.005インチ)未満の厚さのポリウレタンである。ある好ましい実施形態では第2と第3の層の両方は初め0.125mm(0.005インチ)未満の厚さの可塑化されていないポリウレタンから形成されるが、PVBから可塑剤が移動することによって可塑化された。別の好ましい実施形態では、可塑化されたポリウレタンを使用して、第2と第3の層を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明はラミネート加工ガラスに使用するための多層の複合中間層を対象とする。ある好ましい実施形態では、ポリウレタンの2層の薄層[0.0125〜0.125mm(0.0005〜0.005インチ)]が可塑化されたポリビニルブチラールのコア層の周りを挟んでいる。本発明のラミネートはモノリシックのポリウレタンと同様のいくつかの性能特性を有するが、さらに低コストである。標準的なガラス/PVB/ガラスラミネートに対する改善には、高い接着性での高い貫通抵抗および試験温度に対する貫通抵抗のはるかに低い感受性が含まれる。
【0016】
本発明では、ポリウレタン層は0.125mm(0.005インチ)未満の厚さであることが好ましい。好ましい範囲は0.025〜0.10mm(0.001〜0.004インチ)である。PVB層は概して約1.52mm(0.060インチ)未満の厚さであり、好ましくは0.38〜0.76mm(0.015〜0.030インチ)の範囲にある。好ましい実施形態では、PVB層は0.56〜0.70mm(0.022〜0.028インチ)の厚さであり、ポリウレタンの2つの層の間に挟まれる。
【0017】
本発明は、PVBの単層がポリウレタンの2つの層の間に挟まれる実施形態に限定されない。ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)またはIR反射層でコーティングされたPETフィルムまたはポリカーボネートシートのような構造用プラスティックシートといった追加の機能層をPVBおよびポリウレタンの層と併せて使用することができる。例えば、本発明の範囲内にある多層複合体はポリウレタン層、PVB層、ポリウレタン層、ポリカーボネート層、およびポリウレタン層を順々に含む可能性がある。別の実施形態はポリウレタン層、PVB層、PET層、およびPVBもしくはポリウレタン層を含む可能性がある。しかしながら他の実施形態では、ポリウレタンの単層がPVBの一方の側にのみ付けられる。そのような実施形態は、ポリエチレンテレフタレート(PET)層を有するラミネートに使用することができる。当業者に知られているその他の組合せまたはその他のプラスティック材料もやはりここで使用可能である。
【0018】
本発明で使用されるポリウレタンの薄層は、脂肪族イソシアネートポリエーテル(もしくはポリエステル)ウレタンを含めて脂肪族を母体とするポリウレタンに基づくことが好ましく、熱およびUV光に曝露されるときに必要な安定性を達成するためにUV安定剤と抗酸化剤を含むことが好ましい。さらに、ポリウレタン層は、シランカップリング剤または他の適切な化学薬剤の混合によってガラスに対する高い接着性を得るように処方されることが好ましい。そのような技術は当業者によく知られている。適切な技術は米国特許第3,965,057号に開示されている。
【0019】
通常、PVB樹脂はポリビニルアルコールポリマー(PVOH)を酸性触媒の存在下でブチルアルデヒドと反応させる知られている水性または溶剤性のアセタール化処理、その後の触媒の中和、樹脂の分離、安定化および乾燥によって生成される。Butvar(登録商標)樹脂としてSolutia Inc.から市販されている。通常、PVB樹脂は低角度レーザ光散乱を使用してサイズ排除クロマトグラフィーによって測定したときの平均分子量70,000以上、好ましくは約100,000〜250,000を有する。重量ベースでPVBは通常、ポリビニルアルコール(PVOH)として算出したときのヒドロキシル基を22%未満、好ましくは約17〜19%、ポリビニルエステル、例えば酢酸エステルとして算出したときの残りのエステル基を最大10%、好ましくは0〜3%含み、アセタール、好ましくはブチルアルデヒドアセタールで平衡化されるが、場合によってはブチラール以外のアセタール基、例えば2−エチルヘキサナールを少量含む。
【0020】
シートのPVB樹脂は、通常、先ず樹脂100部当たり可塑剤約10〜70、さらに普通には30〜45部(pphr)で可塑化される。PVBシート中の可塑剤の最終濃度は、発生する移動の量に依存してさらに低くなるであろう。発生する移動の量は下記でさらに詳細に検討するいくつかの要因によって制御することができる。一般に使用される可塑剤は多塩基酸または多価アルコールのエステルである。適切な可塑剤はトリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘプチルおよびノニルアジペートの混合物、ジブチルセバシン酸エステル、オイル修飾したセバシン酸アルキドのようなポリマー可塑剤、およびフォスフェートとアジペートの混合物、アジペートとアルキルベンジルフタレートの混合物、およびC〜CアルキルアルコールとシクロC〜C10アルコールから生成された混合アジペートである。ジヘキシルアジペートなどのC〜Cアジペートエステルは好ましい可塑剤である。さらに好ましい可塑剤はトリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)である。使用する可塑剤の量はPVBの硬度を変更および制御するための便利な手段である。硬度に関する有用な代理特性はガラス転移温度(Tg)であり、これは可塑剤のレベルに直接的に関係する。本発明のポリマー複合体に使用される可塑化PVB成分は、概して、可塑剤の平衡化が実行された後に約30〜45℃のガラス転移温度Tgを有するであろう。本発明のポリウレタンポリマー成分の軟らかいセグメントに関するガラス転移温度は、通常、約−50℃から−60℃であることが知られている。
【0021】
ここで使用したように、可塑化ポリビニルブチラールおよびポリウレタンポリマーなどの中間層材料のガラス転移温度は流体測定動力学分析、例えば剪断保存係数(G’)に対する剪断損失係数(G”)の比率、または場合によっては張力保存係数(E’)に対する張力損失係数(E”)の比率とすることができるピークtanδの測定によって判定することができる。PVBについてここに報告した数値は以下の手順を使用して剪断モード分析によって判定した。例えば、熱可塑性ポリマー材料を直径25ミリメートル(mm)の試料ディスクに成形する。このポリマーの試料ディスクをRheometrics Dynamic Spectrometer IIの直径25mmの2枚の平行プレートの検査治具の間に設置する。ポリマーの試料ディスクを、試料の温度を2℃/minの速度で−20から70℃に上げながら、1ヘルツの振動周波数で剪断モードにて試験する。温度に依存してプロットされたtanδ(減衰)の最大値の位置を使用してTgを判定する。本方法が+/−1℃以内で再現性のあることは経験的に示されている。
【0022】
好ましい実施形態で組み立てられたPU/PVB/PU複合体のPU成分がPVB層から移行したあるレベルの可塑剤を含むことに留意することが重要である。このレベルはPVB層からの可塑剤の移動によって制御され、ポリウレタンとPVB層の間の可塑剤の仕切り方によって決まる。測定して可塑剤の移動と層の平衡組成を予測するのに使用することができる分配係数はポリウレタン層の組成、使用する可塑剤のタイプおよび使用する樹脂のヒドロキシル含量によって左右される。製造方法(例えば同時押し出し成形、押し出し成形コーティングなど)によって主に制御される可塑化PVBとPU層の間の界面の表面形状は、いったん層が組み合わされると平衡が達成される速度に影響を与える。しかしながら、移動が生じないか、またはPU層からPVB層へと可塑剤の移動が生じる状況で複合体を作製することができることは理解されるであろう。
【0023】
PVBにUV吸収剤を組み入れることもやはりしばしば有用または望ましいことである。可塑剤および場合によって入れるUV吸収剤に加えて、PVBシートはシートの全部もしくは一部を着色するための色素もしくは染料、抗酸化剤などといった他の性能促進添加物を含むことができる。PVB/ガラスの接着性は概してこの使用法に対して検討事項ではないはずなので、PVBシートに対する接着性制御薬剤の添加の必要は概してない。PVBシートは可塑剤とその他の添加物(例えばUV吸収剤など)の組合せをPVB樹脂と混合すること、および金型の開口を通じて圧力下でその混合物を押し出してシートを形成することによって調製される。
【0024】
本発明のラミネートは当業者によく知られている従来の方法によって調製することができる。平滑な界面形状と許容可能な界面の光学性を達成するために、PUと可塑化PVB層を組み合わせる好ましい処理方法は同時押し出し成形である。必要な適合性を達成するためのPVBとPUの組成の適切な選択を通じて、ラミネートの品質に負の影響を伴なわない有効な材料利用および一層低いコストのためにPU/PVB/PU複合体を低レベルでPVBコア層中に再混合することが可能である。推奨度の落ちる処理方法には2枚重ねのラミネート加工によって引き継がれる押し出し成形コーティングおよび2回通しの押し出しコーティングが含まれる。しかしながら、これら好ましくない方法を使用すると、PUとPVB成分の屈折率が非常に合っていても、PU/PVB界面の表面形状を慎重に制御することが必要であり、さもないと望ましくない光学的曇りに直面する可能性がある。
【0025】
シート表面の粗さは普通、メルトフラクチャのような当業者に知られている現象を通じて発生し、そのような望ましい特性は押し出し金型の開口の設計に由来する可能性がある。押し出しシートの1つまたは複数の側に粗い表面を作り出す他の知られている技術は以下のうちの1つの指定または制御を含み、すなわちポリマーの分子量の分布、溶融物の水分含量および温度である。これらの技術は米国特許第2,904,844号、第2,909,810号、第3,994,654号、第4,575,540号および欧州特許第0185,863号に開示されている。金型の下流でシートをエンボス加工することもやはり所望の表面粗さを作り出すのに使用される可能性がある。本発明で使用されることが可能な規則的パターンの表面を伴なってエンボス加工されたプラスティックシートの範例は米国特許第5,425,977号および第5,455,103号に述べられている。この表面粗さは初期のラミネート処理の間のガラス/可塑化PU界面の空気抜きを容易にするために必要とされ、その後のオートクレーブのラミネート加工の間に完全に除外される。
【0026】
本発明の多層ポリマーラミネートは、ガラスの2枚のシートの間にラミネートが挟まれるラミネート加工ガラスに使用することが好ましい。他の実施形態では、ポリカーボネートのシートは複合中間層に貼り付けることができる。ガラスシートは、透明ガラスとティンテッドガラスの両方を含み、かつアニール処理、耐熱処理または強化処理されたガラスを含むいかなるタイプのガラスのいかなる組合せであることも可能である。本発明の複合ラミネートは、従来の安全ガラスラミネートを形成するのに使用されるもの、例えば単層の可塑化PVB安全フィルムを含む安全ガラスラミネートを形成する処理と同じ方式で使用でき、かつ同じ装置を使ってラミネートすることができるという利点を有する。通常の市販安全ガラスのラミネート加工処理は次の段階、すなわち
(1)2片のガラスおよび多層ポリマーラミネートの手作業組み立て段階、
(2)閉じ込められた空気を除去するために組み立て品を室温で圧力噛みロールに通す段階、
(3)通常は約100℃のガラス表面温度に到達するまでIR放射体または対流手段を介して組み立て品を短時間加熱する段階、
(4)組み立て品に充分な一時的接着性を与えてラミネートのエッジをシールし、かつさらなる取り扱いを可能にするために高温の組み立て品を噛みロールの第2の対に通す段階、および
(5)通常は130〜150℃の間の温度、および1050〜1275kN/sq.mの圧力で約30〜90分間、組み立て品をオートクレーブ処理する段階、
を含む。
【0027】
プラスティック/ガラスの界面の空気抜きとエッジのシール(段階2〜4)に使用するための、当業者に知られていてかつ商業的に実施されている他の手段は真空バッグおよび真空リング処理であり、そこでは空気を取り除くために真空が利用される。
【0028】
本発明はガラスラミネートに使用される先行技術の中間層を上回る数多くの利点を提供する。これらの改善には高い接着性での高い貫通抵抗、および温度に対する貫通抵抗のはるかに少ない感受性が含まれる。付け加えると、接着性に与える水分の影響は本発明ではるかに少なくなる。
【実施例】
【0029】
(実施例1〜6)
様々なガラスラミネートに関する接着性と温度と貫通抵抗の間の関係を示すために一連の試料を試験した。表1の以下の結果は23℃(73°F)および−18℃(0°F)で貫通抵抗に与えるPummel接着および界面/複合体タイプの影響を示している。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例1と実施例2〜3の間の試験結果の比較は、特許請求される本発明の実施例(1)と標準的なガラス/PVB/ガラスの比較例2、3の間で、高いガラス接着レベルと低い試験温度における優れた貫通抵抗を示した。
【0032】
実施例4と5は、コア層としてポリウレタンを組み入れることは、標準的なPVBラミネート(実施例2と3)と比較したとき、PVB/ガラス接着性と貫通抵抗の間で予期された関係に有意の影響を与えないことを示した。また、そのようなPVB/PU/PVB多層から作製されたラミネートに関する試験温度と貫通抵抗の間の関係もやはり単層PVBのラミネートについて見受けられたそれと同様であった(実施例5対実施例3、および実施例4対実施例2の比較)。
【0033】
実施例1と同じPUを使用したガラス/PU/ガラスのラミネートであった実施例6は試験温度に対する貫通抵抗の低い感受性を示したが、本発明の実施例1よりも有意に低いレベルであった。
【0034】
(実施例7〜10)
表2に示した実施例は、層の組み立て後のPVBとPUの両方に生じる組成変化(可塑剤の移動)を示している。示した結果は、PVBおよびPUのポリマーに関する可塑剤取り込みの別々の測定およびその後の各々のポリマーに関する分配係数の計算によって開発された経験的なモデルに基づいており、その方法は下記に説明される。これらの実施例もやはり複合体について重要な検討事項である特性(ガラス転移温度Tgおよび屈折率RI)の変化を浮き彫りにしている。これらの実施例はまた、異なる厚さを使用することがいかに異なる複合体構造(すなわち各々の成分に関する異なる平衡可塑剤レベル)に結びつくかを示しており、それは物理的特性(係数/硬度)、流動学的(例えばラミネート組み立て時の取り扱い特性およびオートクレーブによるラミネート加工時の流動特性)および光学的特性(RIの不整合および曇りへの付随効果)に影響を与える。
【0035】
ポリウレタンポリマーの各々のタイプに関する分配係数(K)は、一定量のトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)可塑剤中への個々のポリウレタンと可塑化PVBフィルムの24時間浸漬、および比重計法を使用した相対平衡濃度の判定によって判定された。[K=pphr(PU)/pphr(PVB)]モデルの経験的確認は、PU/PVB/PU複合体を手作業で組み立て、平衡を生じさせ、その後、(抽出法を介して)個々の層について可塑剤の分析を行うことによって実施した。モデルは完全に正確であると示され、組成の平衡は極めて迅速に生じることが見出され、変化を達成するのにオートクレーブによるラミネート加工を必要としなかった。
【0036】
【表2】

【0037】
本発明は好ましい実施形態に関して説明されてきたが、本発明の精神または範囲から逸脱することなく開示の実施形態に対して数多くの変形が為され得ることを当業者は理解するであろう。したがって、本発明の範囲は前記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑化されたポリビニルブチラールを含み、かつ上面と底面を有する第1の層、
前記第1の層の前記上面に隣接する第2の層、および
前記第1の層の前記底面に隣接する第3の層を含み、
前記第2および第3の層の少なくとも一方が0.125mm(0.005インチ)未満の厚さを有する可塑化されたポリウレタンを含む
多層の複合体。
【請求項2】
前記第2および第3の層の両方が0.125mm(0.005インチ)未満の厚さを有するポリウレタンを含む請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
ポリウレタン層が脂肪族を母体とするポリウレタンを含む請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記第2の層に隣接した第1のガラス層をさらに含む請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
前記第3の層に隣接した第2のガラス層をさらに含む請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
前記ポリウレタンが、層の組合せ後に第1の層からの可塑剤の移動によって可塑化される請求項2に記載の複合体。
【請求項7】
前記第2の層に隣接した第1のガラス層をさらに含む請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記第3の層に隣接した第2のガラス層をさらに含む請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
ポリビニルブチラールを含む第1の層、および
0.125mm(0.005インチ)未満の厚さを有する、可塑化されたポリウレタンの第2の層を含み、前記第2の層が第1の層の第1の側に付けられる多層複合体。
【請求項10】
第1の層の第2の側に付けられたポリエチレンテレフタレートの層をさらに含む請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
前記第2の層に隣接したポリカーボネートの層をさらに含む請求項9に記載の複合体。
【請求項12】
可塑化されたポリビニルブチラールを含む第1の層と、前記第1の層に隣接し、可塑化されたポリウレタンを含む第2の層を形成する段階、および
形成段階の間および後に層の間で可塑剤を移行させる段階を含む、多層の複合体を形成するための方法。
【請求項13】
可塑化されたポリビニルブチラールを含む第1の層と、前記第1の層に隣接し、0.125mm(0.005インチ)未満の厚さを有する可塑化されたポリウレタンを含む第2の層を形成する段階を含む、多層複合体を形成するための請求項12に記載の方法。

【公開番号】特開2009−1480(P2009−1480A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151341(P2008−151341)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【分割の表示】特願2003−512030(P2003−512030)の分割
【原出願日】平成14年7月5日(2002.7.5)
【出願人】(500276390)ソリユテイア・インコーポレイテツド (43)
【Fターム(参考)】