説明

ラミネート装置及びこれを用いた太陽電池モジュールの製造方法

【課題】太陽電池モジュールの構成部材をラミネートするときに、構成部材同士のズレや、ガラス基板の割れ等の問題を防止することができるラミネート装置及びこれを用いた太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールの構成部材が重ね合わされた被加工物80をヒータ板40上に載置し、該ヒータ板で前記被加工物80を加熱しながら可撓性シート20を下降させて上方から加圧することにより前記被加工物80をラミネート加工するラミネート加工工程を行うラミネート装置において、前記ヒータ板40と前記可撓性シート20との間の前記被加工物80の周囲のいずれかの箇所に、前記ラミネート加工工程中に前記可撓性シート20が前記被加工物の上面端部から垂れ下がることを防止するスペーサ50を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート装置及びこれを用いた太陽電池モジュールの製造方法に関し、特に、太陽電池モジュールの構成部材が積層された被加工物をヒータ板上に載置し、該ヒータ板で前記被加工物を加熱しながら可撓性シートを下降させて上方から加圧することにより前記被加工物をラミネート加工するラミネート装置及びこれを用いた太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池セルを複数枚接続して必要な電圧と電流を取得できるようにしたパネル状の太陽電池モジュールが知られている。一般的な太陽電池モジュールは、太陽電池素子または太陽電池素子が成膜されたガラス基板が、EVA(エチレンビニルアセテート)やPVB(ポリビニルブチラール)等の充填材によって、カバーガラスに貼り合わされた構成となる。
【0003】
これらの充填材を用いた太陽電池モジュールの製造工程には、カバーガラス、充填材、太陽電池素子が成膜されたガラス基板を、それぞれこの順に重ね合わせ、その後、これらをラミネート装置で真空加熱することにより、充填材を介してカバーガラスと太陽電池素子が成膜されたガラス基板とを固着させるラミネート工程がある。
【0004】
かかるラミネート工程を行うために、装置内部をダイヤフラムにより仕切った上チャンバと、上チャンバに対向する位置に設置され、内部にヒータ板が配置された下チャンバとを有するラミネート装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、図1を参照して、従来の太陽電池モジュールのラミネート工程を説明する。図1は、従来のラミネート装置によるラミネート工程を説明するための図である。
【0006】
図1に示すように、従来のラミネート装置は、ダイヤフラム120と呼ばれる可撓性シートを備える上チャンバ110と、ヒータ板140を備える下チャンバ130とで構成されている。ラミネート工程ではまず、下チャンバ130のヒータ板140の上に、カバーガラス、充填材、太陽電池素子、ガラス基板等の太陽電池モジュールの構成部材を重ね合わせた被加工物180が載置される。
【0007】
図2は、従来のラミネート工程の具体的手順を説明するための図である。図2(A)は、上チャンバ110と下チャンバ130とを密閉した状態を示した図である。図2(A)に示すように、下チャンバ130に上チャンバ110を被せることで、太陽電池モジュールの構成部材からなる被加工物180を密閉する。
【0008】
図2(B)は、脱泡工程を示した図である。図2(A)で示したように上チャンバ110と下チャンバ130を密閉した後、脱泡工程においては、ヒータ板140によって被加工物180を加熱するとともに、下チャンバ130と上チャンバ110とで形成された密閉空間を、真空装置を使って真空状態にする。具体的には、上チャンバ110と下チャンバ130で形成された密閉空間は、上チャンバ110の排気口111と、下チャンバ130の排気口131から真空ポンプ等の真空装置により真空排気される。これにより、被加工物180の各構成部品は脱泡される。また、脱泡工程においては、ダイヤフラム120は、上チャンバ110の内壁に吸い寄せられた状態となる。
【0009】
図2(C)は、ラミネート加工工程を示した図である。ラミネート加工工程においては、被加工物180が存在するダイヤフラム120より下方の密閉空間を真空状態に保った状態で、ダイヤフラム120と上チャンバ110の内壁に囲まれた密閉空間を大気開放する。これにより、ダイヤフラム120が太陽電池モジュールの構成部材からなる被加工物180を加圧し、太陽電池モジュールをラミネート加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−147255号公報
【特許文献2】特開2010−94889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のラミネート工程のラミネート加工工程においては、ダイヤフラム120が被加工物180を加圧する際、被加工物180に横方向に引っ張る応力が作用するため、重ね合わせた太陽電池モジュールの構成部材同士の隙間において、各構成部材同士でズレが発生し易いという問題があった。また、被加工物180の上面端部には下方向に引っ張る応力も作用するため、上面端部において破損が発生し易いという問題もあった。
【0012】
図3は、従来のラミネート加工工程の問題点を説明するための図である。図3(A)は、太陽電池モジュールの構成部材同士にズレが生じる現象について説明するための図である。図3(A)において、被加工物180は、太陽電池モジュールの構成部材であるカバーガラス181と、充填材182と、太陽電池素子183が形成されたガラス基板184とを備え、これらが積み重ねられて構成されている。図3(A)に示すように、従来のラミネート加工工程においては、ダイヤフラム120が太陽電池モジュールの構成部材181〜184を加圧する際、ダイヤフラム120がヒート板140方向に引っ張られ、太陽電池モジュールの構成部材181〜184の端部において沈み込む。よって、図3(A)に示すように、重ね合わせた構成部材181〜184の端部において下方向の力が作用し、太陽電池モジュールの構成部材181〜184同士の間において横方向の力が作用する。そのため、図3(A)に示すように、ダイヤフラム120の沈み込みによって、ダイヤフラム120と接する構成部材184が移動してしまい、結果、構成部材181〜184同士でズレが生じる。この部材の移動という問題は、充填材を介して2枚のガラス板を貼り合わせた薄膜系太陽電池モジュールの構造に限らず、ガラス板と保護シートとの間に結晶系シリコン等の太陽電池素子を、充填材を介して封入した結晶系太陽電池モジュールの構造にも生じる問題である。
【0013】
図3(B)は、太陽電池モジュールの端部に破損が発生する現象について説明するための図である。図3(B)に示す通り、カバーガラス181とガラス基板184との間に充填材182を介して太陽電池素子183が封止された太陽電池モジュールをラミネートする場合、上述したダイヤフラム120の沈み込みがガラス基板184を撓ませる。その結果、ガラス基板184に割れが発生することになる。
【0014】
なお、ラミネート加工工程を行う前の密閉空間を真空排気する脱泡工程において、前のラミネート加工時の熱が残って高温となったダイヤフラム120が垂れ下がり、被加工物に接触して充填材を溶融させてしまうことを防止するために、被加工物の搬入方向に平行に棒状の接触防止部材を設け、真空引き時のダイヤフラム120の垂れ下がりによる被加工物への接触を防止するようにしたラミネート装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0015】
しかしながら、特許文献2に記載されたラミネート装置においては、真空引きが終了してラミネート加工工程を行うときには、ダイヤフラムがヒータには接触はしないものの、被加工物の上面端部から垂れ下がるような状態となり、やはり被加工物の上面端部に下方向の引っ張り応力が作用し、太陽電池モジュールの構成部材同士のズレや破損を防止することができないという問題があった。
【0016】
そこで、本発明は、太陽電池モジュールの構成部材をラミネートするときに、構成部材同士のズレや、ガラス基板の割れ等の問題を防止することができるラミネート装置及びこれを用いた太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係るラミネート装置は、太陽電池モジュールの構成部材が重ね合わされた被加工物をヒータ板上に載置し、該ヒータ板で前記被加工物を加熱しながら可撓性シートを下降させて上方から加圧することにより前記被加工物をラミネート加工するラミネート加工工程を行うラミネート装置において、
前記ヒータ板と前記可撓性シートとの間の前記被加工物の周囲のいずれかの箇所に、前記ラミネート加工工程中に前記可撓性シートが前記被加工物の上面端部から垂れ下がることを防止するスペーサを設けたことを特徴とする。
【0018】
また、前記スペーサは、前記被加工物の高さ以上の高さを有してもよい。
【0019】
また、前記スペーサは、樹脂から構成されてもよい。
【0020】
また、前記スペーサは、中空構造であってもよい。
【0021】
また、前記スペーサは、前記可撓性シートの下面に設けられた凸部材であってもよい。
【0022】
また、前記可撓性シートは、ダイヤフラムであってもよい。
【0023】
また、前記可撓性シートは、ダイヤフラムの下方に設けられた剥離シートであってもよい。
【0024】
また、前記被加工物が載置された状態で前記ヒータ板上に前記被加工物を搬送する搬送シートを更に有し、
前記スペーサは、該搬送シート上に設けられた凸部材であってもよい。
【0025】
また、前記スペーサは、前記被加工物の対向する2辺を外側から挟むように配置されてもよい。
【0026】
また、前記スペーサは、前記被加工物の周囲全体を覆うように配置されてもよい。
【0027】
また、前記ヒータ板は、複数の前記被加工物を載置できる面積を有し、
前記スペーサは、各々の前記被加工物に設けられてもよい。
【0028】
本発明の他の実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池モジュールの構成部材が重ね合わされた被加工物をヒータ板上に載置し、該ヒータ板で前記被加工物を加熱しながら可撓性シートを下降させて上方から加圧することにより前記被加工物をラミネート加工するラミネート加工工程を有する太陽電池モジュールの製造方法において、
前記ヒータ板と前記可撓性シートとの間の前記被加工物の周囲のいずれかの箇所に、前記可撓性シートが前記被加工物の上面端部から垂れ下がることを防止するスペーサを設けて前記ラミネート加工工程を行うことを特徴とする。
【0029】
また、前記スペーサは、前記被加工物の高さ以上の高さを有してもよい。
【0030】
また、前記スペーサは、樹脂から構成されてもよい。
【0031】
また、前記スペーサは、中空構造であってもよい。
【0032】
また、前記スペーサは、前記可撓性シートの下面に設けられた凸部材であってもよい。
【0033】
また、前記可撓性シートは、ダイヤフラムであってもよい。
【0034】
また、前記可撓性シートは、ダイヤフラムの下方に設けられた剥離シートであってもよい。
【0035】
また、前記被加工物は搬送シート上に載置された状態で前記ヒータ板上に搬送され、
前記スペーサは、前記搬送シート上に設けられた凸部材であってもよい。
【0036】
また、前記スペーサを、前記被加工物の対向する2辺を外側から挟むように配置してもよい。
【0037】
また、前記スペーサを、前記被加工物の周囲全体を覆うように配置してもよい。
【0038】
また、前記ヒータ板上に、複数の前記被加工物を載置し、
前記スペーサを、各々の前記被加工物に設けてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、被加工物に接触するダイヤフラム等の可撓性シートがヒート板方向に垂れ下がることを防止でき、被加工物に不要な応力が加わることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来のラミネート装置によるラミネート工程の説明図である。
【図2】従来のラミネート工程の具体的手順の説明図である。図2(A)は、上チャンバ110と下チャンバ130とを密閉した状態を示した図である図2(B)は、脱泡工程を示した図である。図2(C)は、ラミネート加工工程を示した図である。
【図3】従来のラミネート加工工程の問題点の説明図である。図3(A)は、太陽電池モジュールの構成部材同士にズレが生じる現象の説明図である。図3(B)は、太陽電池モジュールの端部に破損が発生する現象の説明図である。
【図4】本発明の実施例1に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。
【図5】被加工物の端部とスペーサを拡大して示した断面構成図である。
【図6】本発明の実施例2に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。
【図7】本発明の実施例2に係る太陽電池モジュールの製造方法の説明図である。図7(A)は、上チャンバと下チャンバとを密封した状態を示した図である。図7(B)は、脱泡工程の一例を示した図である。図7(C)は、ラミネート加工工程の一例を示した図である。
【図8】本発明の実施例3に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。
【図9】本発明の実施例4に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。
【図10】本発明の実施例5に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。
【図11】本発明の実施例6に係るラミネート装置のスペーサの平面構成の一例を示した図である。
【図12】本発明の実施例7に係るラミネート装置のスペーサの平面構成の一例を示した図である。
【図13】本発明の実施例8に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【実施例1】
【0042】
図4は、本発明の実施例1に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。図4において、実施例1に係るラミネート装置は、上チャンバ10と、ダイヤフラム20と、下チャンバ30と、ヒータ板40と、スペーサ50とを備える。また、上チャンバ10は排気口11を備え、下チャンバ30は排気口31を備える。また、図4において、関連構成要素として被加工物80が示されている。
【0043】
被加工物80は、ラミネート加工を施す対象物であり、太陽電池モジュールの構成部材が重ね合わされた状態となっている。太陽電池モジュールの構成部材は、カバーガラス、充填材、太陽電池素子、ガラス基板等を含んでよく、上述の順序で下から積み重ねられてよい。太陽電池素子は、ガラス基板上に成膜されて形成され、実質的にガラス基板と一体となっている。よって、ラミネート工程においては、充填材を溶融させて加圧し、カバーガラスとガラス基板とを接着する加工を行う。また、図4においては、被加工物80が2つ同時にラミネート加工される状態が示されている。このように、複数個の被加工物80を同時にラミネート加工するようにしてもよい。
【0044】
上チャンバ10は、被加工物80を上から覆うことにより、下チャンバ30とともに密閉空間を形成する筐体である。同様に、下チャンバ30は、被加工物80を下から囲むことにより、上チャンバ10とともに密閉空間を形成する筐体である。よって、上チャンバ10と下チャンバ30は、両者が重なり合うことにより、内部に密閉空間が形成されるように、両者の接触部分が合同となるように構成されている。上チャンバ10及び下チャンバ30は、被加工物80を内部に収容する密閉空間を形成できれば、種々の形状及び材料から構成されることができる。例えば、太陽電池モジュールの構成部材が重ね合わされた被加工物80は、長方形に構成される場合が多い。よって、上チャンバ10及び下チャンバ30は、長方形の被加工物80を容易に収容可能なように、長方形に構成されてもよい。
【0045】
また、上チャンバ10及び下チャンバ30は、図4に示すように、複数の被加工物80を同時にラミネート加工する場合には、複数の被加工物80を収容可能な大きさに構成される。また、上チャンバ10及び下チャンバ30の材料は、金属等の種々の材料を用いることができる。
【0046】
上チャンバ10は、ダイヤフラム20を下側に備えている。ダイヤフラム20は、上チャンバ10と下チャンバ30で形成される密閉空間を2つの空間12、32に仕切るように、上チャンバ10の内壁の下側に設けられている。ダイヤフラム20の上方は、上チャンバ10の内壁と上面内側とで閉じられた空間12を形成している。また、上チャンバ10の上面には、空間12と連通する排気口11が設けられており、空間12の真空排気や大気開放が可能なように構成されている。
【0047】
同様に、下チャンバ30も底面に排気口31を備えており、密閉時におけるダイヤフラム20より下方の空間32の圧力を調整できるように構成されている。排気口11、31から同時に真空排気を行うことにより、被加工物80の脱泡を行うことができ、図2(B)において説明した脱泡工程を行うことができる。
【0048】
ダイヤフラム20は、被加工物80を上方から加圧するための媒介手段である。ダイヤフラム20は、可撓性シートから構成されてよく、例えば、ゴムのような弾性を有する材料から構成されてよい。ダイヤフラム20の厚さは、用途により種々の厚さとされてよいが、例えば、2〜4mmの厚さに構成されてもよい。
【0049】
ダイヤフラム20の上方の空間12には、上述のように排気口11が設けられているので、空間12の圧力を真空排気と大気開放により制御することができる。上述の脱泡工程の後、排気口11を大気開放し、排気口31を真空排気すれば、ダイヤフラム20を下降させて大気圧で被加工物80を加圧することができ、被加工物80をラミネート加工するラミネート加工工程を行うことができる。
【0050】
下チャンバ30は、底面上にヒータ板40を備える。ヒータ板40は、支持脚41により支持されて構成される。ヒータ板40は、上チャンバ10と下チャンバ30との接触面付近に上面が到達するように構成されており、ヒータ板40上の被加工物80をダイヤフラム20により加圧することが可能な構成となっている。ヒータ板40は、平板状に構成され、上面に被加工物80が載置可能なように構成されている。ヒータ板40上には、被加工物80が載置され、ヒータ板40が加熱されて一定温度に保たれた状態でダイヤフラム20を下降させて加圧を行い、被加工物80のラミネート加工を行う。ラミネート加工工程におけるヒータ板40は、被加工物80や加工条件に応じて適切に定められてよいが、例えば、180℃前後に設定されてもよい。ヒータ板40で被加工物80を加熱することにより、被加工物80の充填材を溶融させることができ、この状態でダイヤフラム20を用いて被加工物80を上方から加圧することにより、被加工物80のラミネート加工を行うことができる。また、ヒータ板40は、図4に示すように、複数の被加工物80を同時にラミネート加工する場合には、複数の被加工物80を載置できる面積を有して構成される。
【0051】
スペーサ50は、ラミネート加工工程中において、ダイヤフラム20を下降させて被加工物80が上方から加圧されたときに、ダイヤフラム20が被加工物80の上面端部から垂れ下がることを防止するために、被加工物80の周囲に設けられた部材である。図3(A)、(B)において説明したように、ラミネート加工工程中には、ダイヤフラム20にはヒータ板40方向に力が働くので、被加工物80の上面端部に横方向及び下方向の力が働き、被加工物80にズレや破損を生じる場合がある。本実施例に係るラミネート装置においては、スペーサ50を被加工物80の周囲に配置することにより、ダイヤフラム20により生じる横方向及び下方向の力をスペーサ50が受け、被加工物80に作用しない構成となっている。図4に示すように、スペーサ50は、被加工物80の端部の外側に設けられ、被加工物80を両側から挟むような構成となっている。これにより、被加工物80の上面端部からダイヤフラム20が垂れ下がる状態が無くなり、被加工物80の両側端部には上方からの加圧力のみが加えられ、横方向や下方向の力が作用しない状態となっている。なお、スペーサ50は、必ずしも被加工物80の周囲全体に設けられる必要は無く、ダイヤフラム20の垂れ下がりを防止することが必要な被加工物80の周囲のいずれかの箇所に設けられていればよい。
【0052】
図5は、被加工物80の端部とスペーサ50を拡大して示した断面構成図である。図5において、被加工物80は、カバーガラス81、充填材82、太陽電池素子83及びガラス基板84が下から順に積み重ねられた構成となっており、ヒータ板40上に載置されている。被加工物80の端面85の外側には、少し間隔Dを空けてスペーサ50が設けられている。スペーサ50は、被加工物80の高さと同じ高さに構成されているため、ダイヤフラム20は、被加工物80の上面とスペーサ50の上面の双方に水平に支持され、被加工物80の上面端部からの垂れ下がり又は沈み込みが生じない状態となっている。これにより、ダイヤフラム20から受ける圧力は、鉛直方向下向きの成分のみとなり、被加工物80の構成部材81〜84同士の横ズレ、ガラス基板84の端部の破損を防止することができる。特に、ガラス基板84が、強化ガラスを用いたカバーガラス81と異なり、ソーダライム等を主成分とするあまり強度が大きくないガラスを用いる場合には、スペーサ50を設けることにより、ガラス基板84の破損を大幅に減少させることができる。
【0053】
なお、被加工物80において、充填材82は、用途に応じて種々のものを用いることができるが、例えば、EVA(エチレンビニルアセテート)や、PVB(ポリビニルブチラール)が用いられてもよい。また、太陽電池素子83は、種々の構成を有してよいが、例えば、CIS系太陽電池素子としてガラス基板84の下面に薄膜状に成膜されて形成されてもよい。
【0054】
また、図4及び図5においては、スペーサ50の高さが被加工物80と同じ高さである例を示したが、スペーサ50は被加工物80の高さ以上の高さであればよく、被加工物80の高さより高く構成されてもよい。
【0055】
また、スペーサ50は、ヒータ板40の加熱温度と大気圧(1気圧)による加圧で変形を生じない材料であれば、種々の材料から構成することができる。例えば、シリコン系樹脂やフッ素系樹脂等の樹脂で構成してもよい。これらの樹脂素材は、被加工物80が接触しても、太陽電池モジュールの構成部材81〜84に傷を生じさせるおそれが無いので、好適に用いることができる。
【0056】
スペーサ50は、用途に応じて、種々の設置方法を採ることができる。例えば、ダイヤフラム20の下面に設けた凸部材として設置してもよいし、ヒータ板40の上面に設けた凸部材として設置してもよい。また、独立した直方体片として、被加工物80がヒータ板40上に搬入された後に、被加工物80の周囲の所定位置に挿入設置されてもよい。スペーサ50は、ラミネート加工時に被加工物80の周囲に配置されていれば、種々の方法により設置することができる。
【0057】
スペーサ50と被加工物80の端面85との間隔Dは、ラミネート加工工程中、ダイヤフラム20が被加工物80の上面端部から垂れ下がらない範囲で、用途に応じて種々の距離に設定することができる。つまり、ダイヤフラム20の剛性が高ければ、スペーサ50と被加工物80の端面85との距離Dを比較的大きく設定し、被加工物80とスペーサ50との位置合わせを容易にすることも可能である。
【0058】
このように、実施例1に係るラミネート装置によれば、被加工物80の周囲のいずれかの箇所に、被加工物80の高さ以上の高さを有するスペーサ50を設けることにより、被加工物80の上面端部からダイヤフラム20が垂れ下がることを防ぐことができ、被加工物80である太陽電池モジュールの構成部材81〜84同士の横ズレや、ガラス基板84の破損を防止することができる。
【0059】
以下、実施例2以降は、実施例1に係るラミネート装置の構成を基本として、スペーサ50の種々の設置方法や構成についてより具体的に説明する。また、実施例1に係るラミネート装置と同様の構成要素については、同一の参照番号を付し、その説明を省略するものとする。また、実施例2以降、実施例1と同様の説明は繰り返さないが、スペーサ50の高さ、配置、材料等に関する内容や、その他の構成要素に関する実施例1で説明した内容は、実施例2以降にも適用できるものとする。
【実施例2】
【0060】
図6は、本発明の実施例2に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。図6において、実施例2に係るラミネート装置は、上チャンバ10と、ダイヤフラム21と、下チャンバ30と、ヒータ板40と、スペーサ51とを備える。また、ヒータ板40上には、2つの被加工物80が載置されている。
【0061】
図6に示すように、実施例2に係るラミネート装置においては、スペーサ51は、ダイヤフラム21の下面、つまりヒータ板40と対向する面に設けられている。このように、スペーサ51は、ダイヤフラム21の下面に設けるようにしてもよい。また、スペーサ51は、ダイヤフラム21の下面に凸形状を形成するように設けられているので、凸部材と呼んでもよい。スペーサ51は、ダイヤフラム21の下面に接着して設置もよいし、ダイヤフラム21と一体的に加工形成してもよい。
【0062】
スペーサ51は、図5において説明したように、ヒータ板40上に載置される被加工物80のサイズを考慮し、ラミネート加工時には、適切な間隔Dを有して被加工物80の周囲に配置されるようにダイヤフラム21の下面に設けられる。また、被加工物80は、搬入時に、スペーサ51との間隔Dが適切となるようなヒータ板40上の所定位置に配置される。その後、上チャンバ10を下降させ、下チャンバ30と密閉空間を形成したときには、図4及び図5に示した状態となり、被加工物80に不要な応力を付加せずにラミネート加工を行うことができる。
【0063】
次に、図7を用いて、実施例2に係るラミネート装置を用いた太陽電池モジュールの製造方法について説明する。図7は、本発明の実施例2に係る太陽電池モジュールの製造方法を説明するための図であり、ラミネート工程における一連の動作を示している。
【0064】
図7(A)は、上チャンバ10と下チャンバ30とを密封し、被加工物80を密閉空間内に収容した状態を示した図である。この状態で、スペーサ51は、複数の被加工物80を両側から挟むように、スペーサ51の外側に配置され、ヒータ板40上に載置された状態となる。
【0065】
図7(B)は、脱泡工程の一例を示した図である。脱泡工程においては、上チャンバ10の排気口11と、下チャンバ30の排気口31の双方から真空排気が行われ、被加工物80に含まれている気泡を消滅させる。このとき、ダイヤフラム21は、上チャンバ10の内壁に吸引され、スペーサ51はヒータ板40から離間した状態となる。
【0066】
図7(C)は、ラミネート加工工程の一例を示した図である。ラミネート加工工程においては、下チャンバ30の排気口31からは真空排気が継続され、上チャンバ10の排気口11は大気開放され、空間12には大気が入り込み、ダイヤフラム21は約1気圧の大気圧で被加工物80を加圧する。このとき、被加工物80の両側には、ダイヤフラム21に設けられたスペーサ51が配置された状態となり、ダイヤフラム21が被加工物80に横方向及び下方向に応力を発生させることを防止する。よって、ダイヤフラム21は、垂直方向に被加工物80を加圧する。また、ヒータ板40は、充填材82を溶融させる所定温度で被加工物80を加熱しているので、下側のカバーガラス81と上側のガラス基板84とが接着し、ラミネート加工される。なお、ヒータ板40の加熱を開始するタイミングは、ヒータ板40の温度上昇速度や充填材82の溶融温度を考慮されて定められてよく、上チャンバ10と下チャンバ30が密閉後の所定のタイミングに定められてよい。
【0067】
図7(C)に示したラミネート加工工程が終了した後は、上チャンバ10が上昇し、図6に示された状態となる。そして、ラミネート加工が終了した被加工物80が搬出され、新たな被加工物80が搬入される。なお、ラミネート加工が終了した被加工物80は、その後の必要な工程が行われ、太陽電池モジュールとして製造される。
【0068】
このように、実施例2に係る太陽電池モジュールの製造方法によれば、被加工物80に不要な応力を与えることなくラミネート加工を行うことができ、高い歩留まりで確実に太陽電池モジュールを製造することができる。
【0069】
なお、図7(B)に示した脱泡工程は、必要に応じて設けられてよい工程であり、不要であれば省略し、図7(A)に示した密閉状態から、すぐ図7(C)に示したラミネート加工工程を行うようにしてもよい。
【実施例3】
【0070】
図8は、本発明の実施例3に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。図8において、実施例3に係るラミネート装置は、上チャンバ10と、下チャンバ30の構成は実施例2に係るラミネート装置と同様であるが、スペーサ52が、ダイヤフラム20の下面ではなく、ヒータ板42の上面に設けられている点で、実施例2に係るラミネート装置と異なっている。
【0071】
このように、スペーサ52を、ヒータ板42の方に設けるようにしてもよい。この場合、スペーサ52はヒータ板42の上面に凸形状を形成するように設けられるので、凸部材と呼んでもよい。実施例3に係るラミネート装置においては、被加工物80をラミネート装置に搬入するときに、スペーサ52の間の所定位置に被加工物80を載置することになる。これにより、図8に示すような、被加工物80の周囲にスペーサ52が配置された状態とすることができる。
【0072】
実施例3に係るラミネート装置においても、ラミネート加工工程中は、被加工物80の周囲にスペーサ52が配置された状態で加圧を行うので、被加工物80に横ズレや破損を生じさせることなくラミネート加工を行うことができる。
【実施例4】
【0073】
図9は、本発明の実施例4に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。図9において、実施例4に係るラミネート装置は、上チャンバ10と、ダイヤフラム21と、下チャンバ30と、ヒータ板40と、スペーサ51の構成については、実施例2に係るラミネート装置と同様の構成を有する。つまり、ダイヤフラム21の下面にスペーサ51が設けられた構成となっている。一方、実施例4に係るラミネート装置は、搬送シート60が下チャンバ30側に設けられ、搬送シート60を介して被加工物80がヒータ板40の上に載置されている点で、実施例2に係るラミネート装置と異なっている。
【0074】
搬送シート60は、その上面に被加工物80が載置され、搬送シート60が移動することにより載置物の被加工物80を移動させる搬送手段である。搬送シート60は、下チャンバ30上のヒータ板40を横断するように設けられ、搬送シート60の水平方向の移動により、被加工物80をラミネート装置内のヒータ板40上に搬入する。そして、搬送シート60に被加工物80が載置されたまま、上チャンバ10と下チャンバ30が密閉され、脱泡工程、ヒータ板40による加熱を含むラミネート加工工程が行われる。つまり、ラミネート加工工程においては、被加工物80は、搬送シート60を介してヒータ板40により加熱され、スペーサ51も、搬送シート60を介してヒータ板40上に載置された状態で加圧が行われる。この場合であっても、スペーサ51は搬送シート60上で必要な高さの隙間を保持し、ダイヤフラム20が被加工物80の端部から垂れ下がることを防いでいるので、不要な方向の応力を被加工物80に加えることなく、被加工物80のラミネート加工を行うことができる。また、ラミネート加工終了後は、搬送シート60が水平方向に移動し、被加工物80をラミネート装置から搬出する。
【0075】
このように、実施例4に係るラミネート装置によれば、搬送シート60を用いて、被加工物80の搬入・搬出を容易にした場合にも、スペーサ51をダイヤフラム21の下面に設けることにより、確実にラミネート加工を行うことができる。
【0076】
なお、実施例4の変形例として、搬送シート60の上面にスペーサ51を凸状に設け、スペーサ51の間の所定位置に被加工物80を載置した状態で被加工物80をヒータ板40上に搬入するようにしてもよい。被加工物80の周囲にスペーサ51が既に設けられているので、ヒータ板40上で複雑な位置合わせを行うことなくラミネート加工を行うことができる。
【実施例5】
【0077】
図10は、本発明の実施例5に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。図10において、実施例5に係るラミネート装置は、上チャンバ10と、下チャンバ30と、ヒータ板40と、搬送シート60の構成については、図9に示した実施例4に係るラミネート装置と共通する。しかしながら、ダイヤフラム20の下方に剥離シート70を備え、剥離シート70の下面にスペーサ53が設けられている点で、実施例4に係るラミネート装置と異なっている。
【0078】
このように、ダイヤフラム20の下方、つまりダイヤフラム20とヒータ板40又は搬送シート60との間の上チャンバ10側に、剥離シート70を設けるようにしてもよい。剥離シート70は、ダイヤフラム20と同様に、可撓性シートから構成される。剥離シート70は、ラミネート加工工程において、充填材82が溶融して被加工物80の外側にはみ出した場合に、充填材82がダイヤフラム20に付着するのを防ぐためのシートである。ダイヤフラム20は、通常ゴムで構成されており、充填材82が付着し易いが、剥離シート70は、充填材82が付着し難い材料でフィルム状に構成されている。よって、剥離シート70をダイヤフラム20の下方に設けることにより、ラミネート加工後に、ダイヤフラム20と被加工物80が付着してしまうのを防ぐことができる。なお、剥離シート70は、例えば、0.4〜0.8mmの厚さで構成され、ダイヤフラムの2〜4mmと比較して、非常に薄いシートとなっている。
【0079】
剥離シート70を設けた場合には、被加工物80と直接接触するのは、ダイヤフラム20ではなく、剥離シート70となる。また、剥離シート70もダイヤフラム20と同様に、可撓性を有する可撓性シートの一種であるので、排気口11の大気開放時にはダイヤフラム20と同様の動きをする。つまり、剥離シート70は、ダイヤフラム20と重なった状態で下降し、ダイヤフラム20とともに被加工物80を上方から加圧する。このとき、ダイヤフラム20と同様に、ヒータ板40に向かう方向の引っ張り力を発生させるので、被加工物80に横方向の力や下方向の力を与え、被加工物80の構成部材81〜84間の横ズレや上面端部の破損を生じさせる要因となり得る。
【0080】
よって、被加工物80を覆う剥離シート70を設けた場合には、剥離シート70の下面にスペーサ53を設け、剥離シート70による横方向及び下方向の応力が被加工物80に加わるのを防止している。
【0081】
このように、実施例5に係るラミネート装置によれば、ダイヤフラム20の下方に、可撓性シートの一種である剥離シート70を設けた場合であっても、ラミネート加工工程において被加工物80に不要な応力が加えられることを防止し、確実にラミネート加工を行うことができる。
【実施例6】
【0082】
図11は、本発明の実施例6に係るラミネート装置のラミネート加工時におけるスペーサの平面構成の一例を示した図である。図11において、実施例6に係るラミネート装置は、ヒータ板40上の長手方向に、2つの被加工物80が間隔を置いて載置され、各被加工物80の対向する2辺を外側から挟むようにスペーサ54が設けられた平面構成を有している。
【0083】
このように、スペーサ54を、被加工物80の対向する2辺を両側から挟むように設けてもよい。図11に示すように、ヒータ板40は横長の長方形の平面形状を有しているので、ヒータ板40に対向する可撓性シート(ダイヤフラム20又は剥離シート70)も、ヒータ板40と同様に横長の長方形の平面形状を有する。よって、可撓性シートによる引っ張り応力は、図11における縦方向よりも、横方向に大きく発生する。そこで、実施例6に係るラミネート装置においては、横方向については、被加工物80の両側にスペーサ54を設け、被加工物80を完全にガードしている。
【0084】
一方、図11における縦方向は、可撓性シートによる引っ張り応力の影響が弱まるものの、全く存在しない訳ではない。そこで、被加工物80の縦方向の辺よりも長くスペーサ54を形成し、スペーサ54付近においては、図11における縦方向の引っ張り応力の影響を低減させている。
【0085】
このように、スペーサ54は、被加工物80の周囲の総てに設けられている必要は必ずしも無く、用途に応じて、被加工物80の周囲の必要な箇所に設けるようにしてもよい。なお、図11においては、被加工物80をヒータ板40の長手方向の両側から挟む構成としているが、可撓性シートによる引っ張り応力があまり強くなければ、被加工物80の外側の4隅にのみ設けたり、被加工物80の外縁に沿うように島状に分離して設けられたりしてもよい。スペーサ54の平面形状は、用途に応じて種々の構成とすることができる。また、図11においては、被加工物80が2つの例を挙げているが、被加工物80は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。被加工物80の数が増加しても、各々の被加工物80に対応させてスペーサ54を設けることにより、被加工物80を確実に保護することができる。
【0086】
なお、実施例6に係るラミネート装置の断面構成については、実施例1乃至5で説明した総ての構成を適用することができ、これらの構成と同様であるので、その説明を省略する。
【実施例7】
【0087】
図12は、本発明の実施例7に係るラミネート装置のラミネート加工時におけるスペーサの平面構成の一例を示した図である。図12において、実施例7に係るラミネート装置は、ヒータ板40の長手方向に2つの被加工物80が間隔を有して載置され、被加工物80の周囲の総てをスペーサ55が囲むように設けられた構成を有している。
【0088】
このように、被加工物80の両側のみならず、両側を含んで更に周囲の総てを囲むようにスペーサ55を設けるようにしてもよい。被加工物80は、総ての方向において保護され、ダイヤフラム20、21又は剥離シート70等の可撓性シートから鉛直方向以外の不要な応力を受けず、横ズレや破損を発生させることなくラミネート加工を確実に行うことができる。
【0089】
なお、実施例7に係るラミネート装置の断面構成については、実施例1乃至5で説明した総ての構成を適用することができ、これらの構成と同様であるので、その説明を省略する。
【実施例8】
【0090】
図13は、本発明の実施例8に係るラミネート装置の一例を示した断面構成図である。図13において、実施例8に係るラミネート装置は、中空構造のスペーサ56を備える点で、実施例1乃至7に係るラミネート装置と異なっている。スペーサ56は、被加工物80の高さ以上の高さを有し、上面が平面状に形成されていれば、種々の構成をとることができ、図13に示すような中空構造であってもよい。
【0091】
スペーサ56を中空構造とすることで、スペーサ56を軽量に構成できるとともに、放熱を容易にすることができる。なお、実施例8に係るラミネート装置は、実施例1乃至7に係るラミネート装置と組み合わせることができ、各々の実施例において、スペーサ50〜55の各々を中空構造とすることができる。
【0092】
また、スペーサ56は、中空構造の一例を示したに過ぎず、その他の中空構造を有してもよく、種々の構成をとることができる。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0094】
特に、実施例1乃至8は、互いに矛盾の無い範囲で組み合わせることが可能である。例えば、実施例1乃至5は本実施例に係るラミネート装置の断面構成に関する例であり、実施例6及び7は平面構成に関する例であり、実施例8はスペーサの構成に関する例であるので、実施例1乃至5のいずれかと実施例6及び7のいずれかと実施例8とを組み合わせることは当然に可能である。
【0095】
また、本実施例に係るラミネート装置を用いた太陽電池モジュールの製造方法は、実施例2においてのみ説明しているが、他の実施例にも総て適用することができる。
【0096】
更に、実施例1乃至8においては、2つの被加工物80を同時にラミネート加工する例を挙げて説明したが、1回のラミネート加工工程で1つの被加工物80をラミネート加工してもよいし、3つ以上の被加工物80をヒータ板40上に載置し、これらを同時にラミネート加工するようにしてもよい。
【0097】
なお、本実施例1乃至8においては、被加工物80として、カバーガラス81と薄膜の太陽電池素子83が成膜されたガラス基板84とを充填材82で張り合わせたサブストレート構造を例にとって説明したが、本発明に係るラミネート装置が扱える被加工物80はこれに限らず、カバーガラス81側に薄膜の太陽電池素子83が成膜されたスーパーストレート構造に対しても適用可能であり、また、カバーガラス81と保護シートとの間に太陽電池素子を封入した結晶系太陽電池モジュールの構造にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、太陽電池モジュールの構成部材をラミネート加工するラミネート装置及びこれを用いた太陽モジュールの製造工程に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
10 上チャンバ
11、31 排気口
12、32 空間
20、21 ダイヤフラム
30 下チャンバ
40、42 ヒータ板
41 支持脚
50〜56 スペーサ
60 搬送シート
70 剥離シート
80 被加工物
81 カバーガラス
82 充填材
83 太陽電池素子
84 ガラス基板
85 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールの構成部材が重ね合わされた被加工物をヒータ板上に載置し、該ヒータ板で前記被加工物を加熱しながら可撓性シートを下降させて上方から加圧することにより前記被加工物をラミネート加工するラミネート加工工程を行うラミネート装置において、
前記ヒータ板と前記可撓性シートとの間の前記被加工物の周囲のいずれかの箇所に、前記ラミネート加工工程中に前記可撓性シートが前記被加工物の上面端部から垂れ下がることを防止するスペーサを設けたことを特徴とするラミネート装置。
【請求項2】
前記スペーサは、前記被加工物の高さ以上の高さを有することを特徴とする請求項1に記載のラミネート装置。
【請求項3】
前記スペーサは、樹脂から構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のラミネート装置。
【請求項4】
前記スペーサは、中空構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のラミネート装置。
【請求項5】
前記スペーサは、前記可撓性シートの下面に設けられた凸部材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のラミネート装置。
【請求項6】
前記可撓性シートは、ダイヤフラムであることを特徴とする請求項5に記載のラミネート装置。
【請求項7】
前記可撓性シートは、ダイヤフラムの下方に設けられた剥離シートであることを特徴とする請求項5に記載のラミネート装置。
【請求項8】
前記被加工物が載置された状態で前記ヒータ板上に前記被加工物を搬送する搬送シートを更に有し、
前記スペーサは、該搬送シート上に設けられた凸部材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のラミネート装置。
【請求項9】
前記スペーサは、前記被加工物の対向する2辺を外側から挟むように配置されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のラミネート装置。
【請求項10】
前記スペーサは、前記被加工物の周囲全体を覆うように配置されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のラミネート装置。
【請求項11】
前記ヒータ板は、複数の前記被加工物を載置できる面積を有し、
前記スペーサは、各々の前記被加工物に設けられたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のラミネート装置。
【請求項12】
太陽電池モジュールの構成部材が重ね合わされた被加工物をヒータ板上に載置し、該ヒータ板で前記被加工物を加熱しながら可撓性シートを下降させて上方から加圧することにより前記被加工物をラミネート加工するラミネート加工工程を有する太陽電池モジュールの製造方法において、
前記ヒータ板と前記可撓性シートとの間の前記被加工物の周囲のいずれかの箇所に、前記可撓性シートが前記被加工物の上面端部から垂れ下がることを防止するスペーサを設けて前記ラミネート加工工程を行うことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項13】
前記スペーサは、前記被加工物の高さ以上の高さを有することを特徴とする請求項12に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記スペーサは、樹脂から構成されたことを特徴とする請求項12又は13に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項15】
前記スペーサは、中空構造であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載のラミネート装置。
【請求項16】
前記スペーサは、前記可撓性シートの下面に設けられた凸部材であることを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項17】
前記可撓性シートは、ダイヤフラムであることを特徴とする請求項16に太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項18】
前記可撓性シートは、ダイヤフラムの下方に設けられた剥離シートであることを特徴とする請求項16に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項19】
前記被加工物は搬送シート上に載置された状態で前記ヒータ板上に搬送され、
前記スペーサは、前記搬送シート上に設けられた凸部材であることを特徴とする請求項12乃至18のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項20】
前記スペーサを、前記被加工物の対向する2辺を外側から挟むように配置することを特徴とする請求項12乃至19のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項21】
前記スペーサを、前記被加工物の周囲全体を覆うように配置することを特徴とする請求項12乃至19のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項22】
前記ヒータ板上に、複数の前記被加工物を載置し、
前記スペーサを、各々の前記被加工物に設けることを特徴とする請求項12乃至21のいずれか一項に記載の太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−196835(P2012−196835A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61611(P2011−61611)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】