説明

ランを栽培するための花瓶

【課題】水やりや他のケアに関して最小限の努力だけが必要となり、自然の生息地に適用されたランが栄える花瓶を提供する。
【解決手段】ガラス体を備え、当該ガラス体が、花瓶足部10から延び、花瓶外壁12によって形成され、花瓶外壁12から胴部頂点14で統合し、胴部端部15に至り、このようにして花瓶胴部13を形成し、花瓶開口で開口した花瓶が記載されている。このガラス体は、栽培媒体3が浸る栄養溶液4で満たされ、当該栄養溶液4にランの根20が付着している。ランの自然生息地をまねた環境は、花瓶胴部13の特別な形状によって生じ、根20と葉22によって花瓶の開口が閉じられることによってほとんど完成する。栽培媒体3としての木炭3を用いることによって、めったに栄養溶液4を供給する必要がなくなり、根20が腐ること防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランを栽培する花瓶に係り、中央軸を有するガラス体を備え、当該ガラス体は、花瓶足部と、花瓶開口で開口した花瓶外壁とを含み、前記ガラス体は、栄養溶液と、ランが接着する多孔性栽培媒体とを受けるのに適している花瓶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ランの栽培がますます人気となり、栽培掛け合わせの範囲や可能性が大きくなっており、ますます多くの素人が家庭内の部屋、ガラスの陳列ケースおよび温室でランを栽培しようとしている。とりわけ、人が平均的に一世帯あたりに複数のランに出くわすのは、台湾、タイおよびオランダにおけるランの大量製造のおかげである。
【0003】
一般に、ランは、成長型に従って、限定しない態様で一年中花が咲く。これは、空気湿度、露光量および栄養供給量に関する好ましい条件でのみ可能となる。
【0004】
ランに熱心な人にとっては、ランを適切にケアし、長い寿命を確実にするために、自然の生息地をまねすることがかなり必要となる。
【0005】
ランは、異なる方法および態様で生長する。他の植物上におけるランの成長は着生と呼ばれ、ランは寄生植物ではない。いくつかのランの種は、地上すなわち地面の上で、または岩性すなわち岩や石の上でも成長する。それらが共通して有していることは、水や栄養分を吸収し、土や腐植土に埋められていない気根を形成している。
【0006】
店で最も一般的に売られているのは着生ランである。栽培媒体を有する単純なプラスチックポット内で最も手に入れられ、当該媒体にランは根で付着している。これらは、ランの自然の生息地をまねするために、木の切れ端、小さな小枝または樹皮上に、大抵配置され、この手段によって、自然の木の枝がまねされている。最近、多孔性の粘土、ポリスチレンまたはココナッツ繊維の栽培媒体を手に入れることができる。
【0007】
できるだけ正確に、ランの自然の生息地をまねするために、植物の近辺で湿気があり、暖かい環境を確実にしなければならない。高い温度は大きな問題を起こさないが、適用された栽培媒体の吸収能力に応じて、ランはしばしば水を供給され、ときどき栄養分も供給されなければならない。
【0008】
ランが快適に感じるために、相対的な空気湿度は40%と80%の間になければならないことが分かっている。ヨーロッパの部分的に完全に過剰に加熱されたヨーロッパのリビングルームでは乾ききり、二重ガラスを有するリビングルームでは空気湿度がしばしば20%にまで落ちるので、これらのリビングルームにおいてこれを達成することはとりわけ容易ではない。
【0009】
ランの一般的な水やりは、望ましい湿気レベルに達するための解決法ではない。部屋空気内での比較的低い湿度のため、ランは葉を介して多くの水を蒸発させ、気根は水の中になければならないので、このことによって、人は継続的に繰り返し水をやることが必要となる。
【0010】
従来用いられていた保持容器および花瓶内において、より多くの部分の根があらわとなり、根の表面が妨害されない方法で周りから湿気を吸収するように、根を有するランは、堅固に適用された培養物に付着する。この方法によって、植物は、葉の表面によって湿気を失うだけでなく、根を介しても湿気を失う。
【0011】
これに加え、粘土や人工的に製造された材料だけでなく木や樹皮の片のような従来用いられていた栽培媒体は、湿った環境にあるとき、腐敗し、腐り、菌によって汚染される傾向にあるということが事実である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、水やりや他のケアに関して最小限の努力だけが必要となり、自然の生息地に適用されたランが栄える花瓶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1の特徴を有する装置によって達成される。
【0014】
好ましい具体的形態は、従属項に示されている。
【0015】
本発明は、以降、図面と組み合わせて記載される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ラン、特に着生して成長するラン2、を栽培するための花瓶であり、当該花瓶は、花瓶外壁12から続く花瓶足部10によって形成されたガラス体1からなっている。
【0017】
花瓶足部10に向かい合って存在する花瓶外壁12は、花瓶胴部13を形成している。この花瓶胴部13は、水平状または放射線状に走る胴部頂点14によって形成され、胴部端部15内に至っている。花瓶開口11は、花瓶足部10に対面した胴部端部15の端部に配置されている。
【0018】
このような形状の花瓶本体1は、光透過性を有し耐水性の容器を形成し、当該容器の中に、各々の場合に、一つ以上の根20、擬球根21、葉23、円錐花序23および花24からなるラン2が配置される。根20は、流体吸収し、多孔性の栽培媒体3に接触するようになり、当該栽培媒体3上でラン2は支持される。栽培媒体3と前面で取り付けられた根20とを有するラン2は、花瓶開口11を通過してガラス体1内に導入され、花瓶足部10上に載って配置されている。
【0019】
花瓶開口11の直径は、葉22、円錐花序23および花24だけが、胴部頂点14を超えてガラス体1から外方に突出し、栽培媒体3に付着した根20と擬球根21が花瓶開口11を通過するように選択されなければならない。そして、根20、およびランの種に従って存在し、水と栄養を格納する擬球根21が、ガラス体1内に配置されている。概ね茎のような根20と擬球根21は、少量の空気と蒸気だけが花瓶開口11を通過するよう、ガラス体1の内部空間を閉じる。ラン2の葉22は、花瓶胴部上に付加的に横たわり、このことによって、ガラス体1が付加的に閉じられる。花瓶胴部13の形状と、ガラス体1内にあるラン2の一部、根20および擬球根21は、このようにして、ラン2にとって好ましい環境を生成するほとんど閉じた容積(volume)を形成する。
【0020】
ガラス体の中央軸16を見ると、胴部端部15と中間軸16とが、0より大きく90°より小さな角度αを囲むべきであるという試みが示されている。そして、花瓶胴部13の湾曲は、ガラス体1の内部が、根20および擬球根21により適切な方法で密封されるように設計され、このようにして特別な環境がガラス体1内に形成される。
【0021】
自然に生息するラン2は、できるだけ多くの光を吸収するために、しばしば根20を介して木の上で発見される。水と栄養分を吸収することに加えて、根20は光合成を実行する仕事も有している。この工程をサポートし、根20が花瓶から外方に成長することを避けるために、花瓶はガラス体1のように設計されている。
【0022】
そして、ガラス体1は、吸収特性に応じて流体を吸収する栽培媒体3を湿らせるために、栄養溶液4で満たされている。次に、ランの根20は、栄養溶液4を吸収する。満たすときに、流体の高さは、根20が流体内に突出する程度まで上がらないことには気をつけるべきである。栄養溶液は、水でもよい。この水は、非処理水または軟性の水道水でもよい。ラン2は自然の生息地においてほとんど栄養をとらないので、ランに熱心な人に、極端にわずかな方法で肥料をやるということをアドバイスすることができる。時々、栄養溶液に、専門店で手に入るランの肥料を加えてもよい。
【0023】
一連の試験によって、木炭3が理想的な栽培媒体3であることが示されている。高い炭素成分を有する有機化合物のこの混合物は、低い密度で多孔性部分を形成する。木炭片3は、道具を用いることなく分割され、各ラン2に一つ一つ適用されてもよい。孔は流体の多くの量を収容することができるので、微視的で小さなチャネルによって、木炭は高い吸収能力を有している。この方法によって、水やりに関してたいした苦労もなく、流体を十分に供給することを達成することができる。今日まで、木炭は、流体を綺麗かつ脱色したり、消毒したり、腐りやすい物質を保存したりするために用いられている。一連の試験において、木炭3は、根20が腐ったり腐敗することを防止し、根20の傷を治したりもすることさえ示されている。
【0024】
ラン2の自然の生息地に似た環境は、後述する方法によってガラス体の内部で発生する。
【0025】
ガラス体1の花瓶足部10は、花瓶足部10が熱せられるよう、それを覆う空気を介して熱を吸収し、このことによって、栄養溶液4の温度も上昇する。光放射がガラス体1を通過して木炭に妨害されていない方法で外部から生じるので、木炭3は熱を吸収する。これらの効果は、中央軸16に沿って徐々に上昇する温度を導く。水4は、花瓶足部10の領域内の温度によって、栄養溶液4の容積から外方、および木炭3の孔から外方に蒸発し、空気/水蒸気の混合物は花瓶開口10の方向に上昇する。ラン2の根20、擬球根21および葉22と組み合わされ、記載された花瓶胴部13の形状によって、ほんのわずかな空気だけが、花瓶開口11から外方に出る。
【0026】
特に、根20の表面に蒸発冷気が発生するため、温度傾斜によって、花瓶開口の近辺に低い温度が広がる。水蒸気は、低温であるため、ガラス体1と、根20および擬球根21の上の花瓶開口11近辺で凝縮し、このことは、ラン2が、湿らされ続けるが、過剰になりすぎないことを意味している。
【0027】
空気/水蒸気の流れが、根20が到達していないガラス体1内の容積内に形成される。暖かく湿った空気が逃げはしないが上方に上り、それゆえ水蒸気が凝縮し、これによって空気は再び冷却され、花瓶足部10の方向に沈む。
【0028】
根10によって消散する湿気はガラス体1外方に逃げず、再び根20に導かれる。この循環は図3内で矢印によって示され、栄養溶液4はより速くない速度で蒸発し、このため、とりわけ葉22、円錐花序23および花24からの湿気の蒸発が起こるときだけ、より長いインターバルでだけ補充される必要があるという事実を導く。
【0029】
栽培媒体として木炭3を用いることによって根20が腐ることを防止し、消毒する態様で作用するので、ラン2を別の鉢に植え替えることを遅くしたり、別の鉢に植え替えることをなくしたりすることさえ可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ランを有する、本発明による花瓶を示す図。
【図2】栽培媒体と栄養溶液、および花瓶内に配置されたランとともに、本発明による花瓶を示した断面図。
【図3】ガラス体の詳細な断面図。
【符号の説明】
【0031】
1 ガラス体
10 花瓶足部
11 花瓶開口
12 花瓶外壁
13 花瓶胴部
14 胴部頂点
15 胴部端部
16 中央軸
2 ラン
20 根
21 擬球根
22 葉
23 円錐花序
24 花
3 栽培媒体=木炭
4 栄養溶液=水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランを栽培する花瓶において、
中央軸(16)を有するガラス体(1)を備え、
当該ガラス体(1)は、花瓶足部(10)と、花瓶開口(11)で開口した花瓶外壁(12)とを含み、
前記ガラス体は、栄養溶液(4)と、ラン(2)が付着する多孔性栽培媒体(3)とを受けるのに適しており、
花瓶外壁(12)は、前記開口の上方にあって、花瓶開口(11)内へと導く花瓶胴部(13)を含み、
当該花瓶胴部(13)は、胴部頂点(14)と、ガラス体(1)の中央軸(16)に対して所定の角度で延びる胴部壁(15)とを含むことを特徴とする花瓶。
【請求項2】
胴部端部(15)とガラス体(1)の中央軸(16)との間の角度αは、0°より大きく90°より小さいことを特徴とする請求項1に記載の花瓶。
【請求項3】
胴部頂点(14)は、水平状に延びることを特徴とする請求項1に記載の花瓶。
【請求項4】
胴部頂点(14)は、放射線状に延びることを特徴とする請求項1に記載の花瓶。
【請求項5】
ガラス体(1)は、栽培媒体(3)を有することを特徴とする請求項1に記載の花瓶。
【請求項6】
栽培媒体(3)は、木炭であることを特徴とする請求項5に記載の花瓶。
【請求項7】
請求項1による花瓶の使用方法であって、
花瓶開口(11)は、擬球根(21)およびラン(2)の根(20)が通過することができることを特徴とする記載の花瓶の使用方法。
【請求項8】
ラン(2)の根(20)および葉(22)は、胴部頂点(14)上にあり、
このことによって、ガラス体(1)内の空気が周囲と交換されることを大幅に防止することを特徴とする請求項7に記載の花瓶の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−325582(P2007−325582A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−49721(P2007−49721)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(507066116)シュビガー、クンストゲベルベ、アクチェンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】SCHUBIGER KUNSTGEWERBE AG
【Fターム(参考)】