説明

ランタン含有コージェライト体および製造方法

高い強度、ほとんどまたは全くない微小亀裂、および高い耐熱衝撃性を示すランタン含有コージェライト体が提供される。高温への曝露後でも、少ない微小亀裂および高い強度の改善された維持が得られる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2009年5月29日に出願された米国仮特許出願第61/182,417号に対する優先権の利益を主張している。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して多孔質セラミック物品に関し、より詳細にはコージェライトセラミック物品(例えば、排気ガスの(例えば、微粒子除去フィルターまたは触媒担体による)処理における使用のためのもの)および当該物品を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多孔質セラミック物品は、化学的不活性、機械的強度、および耐熱性が望ましい用途の多くにおいて使用されている。一部の用途において、セラミックハニカム微粒子除去フィルターおよびセラミックハニカム触媒担体または支持体は、排気ガス処理系において役立ち得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書において、高い強度、少ない(ほとんどまたは全くない)微小亀裂、および高い耐熱衝撃性を示すコージェライト体が開示される。一部の実施形態において、コージェライト体は、高温または腐食性溶液への曝露後も少ない微小亀裂および高い強度を維持している。一部の実施形態において、コージェライト物品は、高い気孔率を有している。そうしたコージェライト体の製造方法もまた、本明細書において開示される。
【0005】
1つの態様において、少なくとも0.1%の酸化ランタンを含有し、高い強度、高い耐熱衝撃性、およびほとんどまたは全くない微小亀裂を示す多孔質コージェライトセラミック体が、本明細書において開示される。
【0006】
一部の実施形態において、セラミック体は、比較的高い熱膨張係数(例えば、25℃〜800℃の14.0℃−1より大きいCTE25−800)を有していても高い耐熱衝撃性を有する。一部の実施形態において、CTE25−800≧15.0℃−1、≧16.0℃−1、およびさらには≧18.0℃−1であっても、耐熱衝撃性は依然として高いままである。
【0007】
一部の実施形態において、セラミック体は、E800/E25≦1.00、≦0.95、およびさらには≦0.94を有する。一部の実施形態において、セラミック体は、E900/E25≦0.96、≦0.92、≦0.89、およびさらには≦0.85を有する。一部の実施形態において、セラミック体は、E1000/E25≦0.85、≦0.83、≦0.810、≦0.800、≦0.785、およびさらには≦0.77を有する。こうした弾性率比のより低い値は、より低いレベルの微小割れを示している。
【0008】
別の態様において、少なくとも0.1%の酸化ランタンを含有し、かつ少ない鉄含有量を有し、かつ/またはCaOを有する多孔質コージェライトセラミック体が本明細書において開示され、これは、熱への(例えば、950℃の環境への)長時間にわたる曝露の後でも望ましい熱物理的性質を維持し、そのような熱曝露の後でも高い強度、高い耐熱衝撃性、およびほとんどまたは全くない微小亀裂を示す。本発明者らは、少ないFe含有量により、またはCaOの存在により、または一部の実施形態においては、有利にかつ相乗的に、少ないFe含有量およびCaOの存在の両方により、長時間にわたる熱への曝露の後でも向上した特性維持が得られ得ることを見出した。
【0009】
本明細書において開示される多孔質コージェライトセラミック体の様々な実施形態は、ハニカムセラミック物品(例えば、高温排気ガス精製およびレメディエーションにおける触媒担体もしくは微粒子除去フィルターとして、または固体、液体もしくは気体の分離のための濾過膜支持体としての使用のための支持体またはフィルター(目封じされた支持体))として、特に有用である。
【0010】
一連の実施形態において、主要コージェライトセラミック相およびそのセラミックの微細構造内に含まれる少なくとも約0.1重量%の酸化ランタンを含むセラミック体であって、当該セラミック体は、25℃(室温)での4点ビーム曲げ破壊係数MOR;25℃にて音響共振技術により測定される室温弾性率E;および℃−1を単位とする200℃〜1000℃の熱膨張係数CTE200−1000を示し、当該セラミック体は、比MOR/Eにより定義される無次元歪み許容度およびTSL200=200℃+(MOR/E)/CTE200−1000により定義される耐熱衝撃性によって特徴付けられ、当該セラミック体は、室温に次いで少なくとも25時間にわたって800℃〜1100℃の範囲の温度を伴う環境に曝露されることを含む熱処理に供された後に、MOR/E>0.12×10−2およびTSL200≧900℃を示すことを特徴とする、セラミック体が本明細書において開示される。一部の実施形態において、熱処理は、セラミック体を、少なくとも80時間にわたって950℃の温度を伴う環境に曝露すること、または少なくとも80時間にわたって1100℃の温度を伴う環境に曝露すること、または少なくとも20時間にわたって800℃と900℃との間の温度および少なくとも5時間にわたって900℃と1000℃との間の温度および少なくとも2時間にわたって1000℃と1100℃との間の温度を伴う環境に曝露することを含む。例えば、熱処理は、セラミック体を、約82時間にわたって約950℃の温度を伴う環境に曝露すること、または約82時間にわたって約1100℃の温度を伴う環境に曝露することを含み得る。
【0011】
一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にMOR/E≧0.16×10−2を示し、一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にTSL200≧1000℃を示し、一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にMOR/E≧0.16×10−2およびTSL200≧1000℃を示す。一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にMOR/E≧0.18×10−2を示し、一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にTSL200≧1100℃を示し、一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にMOR/E≧0.18×10−2およびTSL200≧1100℃を示す。一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にMOR/E≧0.20×10−2を示し、一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にTSL200≧1200℃を示し、一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にMOR/E≧0.20×10−2およびTSL200≧1200℃を示す。
【0012】
一部の実施形態において、セラミック体は、比MOR/MOR≧0.60を示し、ここで、MORは、熱処理後のMORであり、MORは、熱処理前の室温でのMORであり、他の実施形態において、MOR/MOR≧0.80であり、他の実施形態において、MOR/MOR≧0.90である。
【0013】
一部の実施形態において、セラミック体は、室温に次いで少なくとも80時間にわたって1100℃の温度を伴う環境に供された後に、MOR/E≧0.12×10−2およびTSL200≧900℃を示す。
【0014】
一部の実施形態において、セラミック体は、1.0重量%以下のFeを含有する。
【0015】
一部の実施形態において、セラミック体は、0.10重量%以上のCaOを含有する。
【0016】
一部の実施形態において、セラミック体は、0.60重量%以下のFeおよび0.10重量%以上のCaOを含有する。
【0017】
一部の実施形態において、セラミック体は、複数のチャネルを有するハニカム構造を有し、この構造は、ある正面開口面積および閉鎖正面面積(CFA)を有する端面を有し、室温に次いで熱処理に供された後に、psi(6895Pa/psi)の単位でMOR/CFA≧{8700−120(%気孔率)}であり、その熱処理は、セラミック体を、少なくとも80時間にわたって950℃の温度の空気に曝露すること、または少なくとも20時間にわたって800℃と900℃との間の温度および少なくとも5時間にわたって900℃と1000℃との間の温度および少なくとも2時間にわたって1000℃と1100℃との間の温度を伴う環境に曝露することを含む。セラミック体は、水銀ポロシメトリーにより測定される場合にある総気孔率(「%気孔率」)を有する。一部の実施形態において、熱処理後に、psi(6895Pa/psi)の単位でMOR/CFA≧{9000−120(%気孔率)}である。一部の実施形態において、熱処理後に、psi(6895Pa/psi)の単位でMOR/CFA≧{9300−120(%気孔率)}である。
【0018】
一部の実施形態において、室温での、熱処理前の、焼成したままのセラミック体は、Nb≦0.08を示し、他の実施形態において、室温での、熱処理前の、焼成したままのセラミック体は、Nb≦0.03を示し、他の実施形態においてはNb≦0.02を示し、他の実施形態においてはNb≦0.01を示す。
【0019】
一部の実施形態において、セラミック体は、熱処理後にNb≦0.04を示す。
【0020】
一部の実施形態において、セラミック体は、水銀ポロシメトリーにより測定される場合に50%以上の総気孔率を有する。
【0021】
一部の実施形態において、セラミック体は、0.3重量%と5重量%との間の酸化ランタンを含有する。
【0022】
一部の実施形態において、セラミック体は、0.5重量%と2重量%との間の酸化ランタンを含有する。
【0023】
別の一連の実施形態において、主要コージェライトセラミック相およびそのセラミックの微細構造内に含まれる少なくとも約0.1重量%の酸化ランタンを含むセラミック体であって、当該物品は、25℃〜800℃の14.0×10−7−1より大きい熱膨張係数CTE25−800;弾性率比E800/E25≦1.00;25℃(室温)でのある4点ビーム曲げ破壊係数MOR;および25℃にて音響共振技術により測定される場合のある室温弾性率Eを示し、比MOR/Eは、無次元歪み許容度であり、MOR/E≧0.10%であることを特徴とする、セラミック体が本明細書において開示される。一部の実施形態において、CTE25−800の値は、少なくとも16.0×10−7−1であり、他の実施形態において、CTE25−800の値は、少なくとも17.0×10−7−1である。一部の実施形態において、セラミック体は、℃−1を単位とする200℃〜1000℃のある熱膨張係数CTE200−1000および800℃以上の耐熱衝撃性を示し、当該耐熱衝撃性は、200℃+(MOR/E)/CTE200−1000であり、他の実施形態において、耐熱衝撃性は900℃以上である。一部の実施形態において、セラミック体は、Nb≦0.08を示す。一部の実施形態において、セラミック体は、セル状ハニカム構造を有する。一部の実施形態において、セラミック体は、0.3重量%と5重量%との間の酸化ランタンを含有する。一部の実施形態において、セラミック体は、水銀ポロシメトリーにより測定される場合に50%以上の総気孔率を有する。一部の実施形態において、セラミック体は、弾性率比E900/E25≦0.96を示し、他の実施形態においてはE900/E25≦0.92を示す。一部の実施形態において、セラミック体は、弾性率比E1000/E25≦0.85を示し、他の実施形態においてはE1000/E25≦0.83を示す。一部の実施形態において、セラミック体は、0.78未満のXRD「横I比(transverse I−ratio)」を示す。一部の実施形態において、セラミック体は、0.74またはそれ以下の横I比を示す。一部の実施形態において、CTE25−800は、少なくとも16.0×10−7−1である。
【0024】
別の一連の実施形態において、主要コージェライトセラミック相およびそのセラミックの微細構造内に含まれる少なくとも約0.1重量%の酸化ランタンを含むセラミック体であって、当該物品は、25℃(室温)でのある4点ビーム曲げ破壊係数MOR;25℃にて音響共振技術により測定される場合のある室温弾性率E;および℃−1を単位とする200℃〜1000℃のある熱膨張係数CTE200−1000を示し、当該セラミック体は、比MOR/Eにより定義される無次元歪み許容度およびTSL200=200℃+(MOR/E)/CTE200−1000により定義される耐熱衝撃性によって特徴付けられ、当該セラミック体は、室温に次いで少なくとも25時間にわたって800℃〜1100℃の範囲の温度を伴う環境に曝露されることを含む熱処理に供された後に、MOR/E>0.10×10−2およびTSL200≧800℃を示し、当該セラミック体は、合わせた総量が1.40重量%未満のFeおよびCaOを含有するセラミック体が本明細書において開示される。一部の実施形態において、セラミック体におけるFeおよびCaOの合わせた総量は、1.35重量%未満であり、他の実施形態においては1.30重量%未満であり、他の実施形態においては1.25重量%未満であり、他の実施形態においては1.00重量%未満である。一部の実施形態において、セラミック体は、1.0重量%以下のFeを含有し、一部の実施形態において、セラミック体は、0.05重量%以上のCaOを含有し、一部の実施形態において、セラミック体は、1.0重量%以下のFeおよび0.10重量%以上のCaOを含有する。一部の実施形態において、セラミック体は、0.60重量%以下のFeおよび0.10重量以上のCaOを含有する。一部の実施形態において、熱処理後のセラミック体は、Nb≦0.10を示し、一部の実施形態において、熱処理後のセラミック体は、Nb≦0.08を示す。一部の実施形態において、熱処理は、セラミック体を、少なくとも80時間にわたって950℃の温度を伴う環境に曝露すること、または少なくとも80時間にわたって1100℃の温度を伴う環境に曝露すること、または少なくとも20時間にわたって800℃と900℃との間の温度および少なくとも5時間にわたって900℃と1000℃との間の温度および少なくとも2時間にわたって1000℃と1100℃との間の温度を伴う環境に曝露することを含む。例えば、熱処理は、セラミック体を、約82時間にわたって約950℃の温度を伴う環境に曝露すること、または約82時間にわたって約1100℃の温度を伴う環境に曝露することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実質的にゼロの微小亀裂を有する本明細書に開示される実施形態の、温度(℃)に対してプロットされた弾性率E(psi(6895Pa/psi))を図示している。
【図2】僅かな程度の微小亀裂を示す本明細書に開示される別の実施形態の、温度(℃)に対してプロットされた弾性率E(psi(6895Pa/psi))を図示している。
【図3】本明細書に開示される一部の実施例の、微小割れ指数Nbに対してプロットされた弾性率比E800/E25を図示しており、E800/E25の低い値が低度の微小亀裂に対応することを示している。
【図4】実施例についてのCaOの重量%に対してプロットされたFeの推定重量%を図示している。
【図5】%気孔率に対してプロットされた焼成したままのセラミック体のMOR/CFAを図示している。
【図6】微小割れ指数Nbに対してプロットされたMOR/Eを図示している(x軸は対数スケールでプロットされている)。
【図7】焼成したままのセラミック体の熱膨張係数CTE25−800℃に対してプロットされた、82時間950℃で、または32.5時間800〜1100℃にわたって熱処理された実施例の予測熱衝撃限界TSL200を図示している。
【図8】焼成したままのセラミック体の熱膨張係数CTE25−800℃に対してプロットされた、XRD横I比Iを図示している。
【図9】柱状コージェライトクリスタリット(灰色)の合間のランタン含有ガラス相(明るい領域)の存在を示す、本明細書に開示されるさらに別の実施形態の研磨切片の後方散乱電子像である。
【図10】82時間にわたる950℃での熱処理後の図9の実施形態の研磨切片のより高い倍率の二次電子像である。
【図11】82時間にわたる950℃での熱処理後の本明細書に開示されるより鉄含有量の多い実施形態の研磨切片の二次電子像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ハニカムの微細構造内に主要コージェライト相と少なくとも約0.1重量%の酸化ランタン(La)とを含む組成を示す、多孔質セラミックハニカム物品が本明細書において開示される。明確化すると、Laは、ハニカム構造の壁内に含まれており、後に塗布されるウォッシュコート内にはない。
【0027】
本明細書において開示される多孔質コージェライトセラミック体は、好ましくは、高い耐熱衝撃性を有しており、微小亀裂をほとんどまたは全く有していない。一部の実施形態において、セラミック体は、次の属性、すなわち、少なくとも0.10重量%の酸化ランタンを含有する化学組成、少なくとも0.10×10−2のMOR/Eの比、少なくとも800℃の[200+(MOR/E)(CTE200−1000−1]として定義される予測熱衝撃限界、および弾性率比E800/E25≦1.00または微小割れパラメータNb≦0.08を有する。一部の実施形態において、セラミック体は、次の属性、すなわち、少なくとも0.10重量%の酸化ランタンを含有する化学組成、少なくとも0.09×10−2のMOR/Eの比、少なくとも800℃の[200+(MOR/E)(CTE200−1000−1]として定義される予測熱衝撃限界、および0.10未満の微小割れパラメータNbを有し、これらの実施形態のいくつかにおいては0.08未満の微小割れパラメータNbを有する。一部の実施形態において、セラミック体は、次の属性、すなわち、少なくとも0.10重量%の酸化ランタンを含有する化学組成、少なくとも0.12×10−2のMOR/Eの比、少なくとも900℃の[200+(MOR/E)(CTE200−1000−1]として定義される予測熱衝撃限界、および弾性率比E800/E25≦1.00または微小割れパラメータNb≦0.08を有する。
【0028】
本明細書において開示される多孔質コージェライトセラミック体の実施形態は、高温排気ガス精製およびレメディエーションにおける触媒担体もしくは微粒子除去フィルターとして、または固体、液体もしくは気体の分離のための濾過膜支持体としての使用のためのセル状セラミック物品(例えば、ハニカム)として、特に有用であり得る。
【0029】
一部の実施形態において、存在するLaの量は、≧0.30重量%、≧0.50重量%、≧0.75重量%、またはさらには≧1.0重量%である。一部の実施形態において、Laは、0.3重量%と5重量%との間の量で存在し、他の実施形態においては0.5重量%と2重量%との間の量で存在する。
【0030】
一部の実施形態において、MOR/Eの値は、≧0.12×10−2、≧0.14×10−2、≧0.16×10−2、≧0.18×10−2、≧0.20×10−2、≧0.22×10−2、≧0.24×10−2、またはさらには≧0.26×10−2である。本明細書において別段の指定がない限り、MORは、4点ビーム曲げ法(four−point beam bending method)により測定される場合の室温破壊係数である。平行チャネルを含むセラミック体またはセラミック物品(例えば、ハニカム構造物)に関し、MORは、チャネルの方向(軸方向)に対して平行な試験片について測定される。用語MOR/Eにおいて、Eは、MORが測定される試験片と同じ構造の試験片を用いて音響共振技術により測定される場合の室温弾性率である。したがって、MORおよびEは共に、非セル状試験片について測定されるか、またはそれらは共に、同じセラミック物品から切り取られた、試験体間の僅かな差異を斟酌して実質的に同じ単位断面積当たりチャネル数、実質的に同じチャネル幅、および実質的に同じ壁厚を有するセル状試験片について測定される。試験片がセル状構造のものである場合は、弾性率も、試験体の軸方向に沿って測定される。弾性率測定のための典型的な試験体寸法は、およそ1インチ(2.54センチメートル)の幅、0.5インチ(1.27センチメートル)の厚さ、および5インチ(12.7センチメートル)の長さである。破壊係数は、同様な大きさまたはより小さい大きさ(例えば、0.5インチ(1.27センチメートル)の幅、0.25インチ(0.64センチメートル)の厚さ、および2.5インチ(6.35センチメートル)の長さ)の試験片について測定されてもよい。
【0031】
一部の実施形態において、予測熱衝撃限界(すなわち耐熱衝撃性)TSL200は、≧1000℃、≧1050℃、≧1100℃、≧1150℃、≧1200℃、≧1300℃、またはさらには≧1400℃である。TSL200の値は、セラミック部品の上または内部の別の位置における最低温度が200℃である場合に、セラミック部品の上または内部のある位置におけるその部品が割れることなく耐え得る最高温度の推定値である。熱膨張係数CTEの値は、MORおよび弾性率の測定に使用された試験体の長さ方向に平行に切断された試験体についての高温膨張計測により測定される。セラミック体またはセラミック物品がセル状構造を有する場合、CTEは、軸方向に沿って測定される。TSL200の計算において、CTE200−1000は、試験体の加熱の間に200℃と1000℃との間で測定される場合の平均熱膨張係数であり、CTE200−1000=[(ΔL200/L)−(ΔL1000/L)]/800として算出される。ここで、ΔL200およびΔ1000は、それぞれ室温から200℃までおよび室温から1000℃まで加熱した時の試験体の長さの変化であり、Lは、試験体の室温での元の長さである。
【0032】
一部の実施形態において、微小割れ指数Nbは、≦0.08、≦0.05、≦0.04、≦0.03、≦0.02、およびさらには≦0.01である。微小割れ指数は、関係式Nb=(9/16)[(E°25/E25)−1]により定義され、ここで、E°25は、米国特許出願第2008/0032091(A1)号明細書に記載されているように、1200℃からの冷却の間に測定された弾性率データより構築された曲線の接線の25℃への外挿により決定される、ゼロ微小亀裂という仮想状態のセラミックの室温弾性率である。Nbの低い値は、低度の微小亀裂に対応する。(図1および2も参照)
一部の実施形態において、弾性率比E800/E25は、≦0.99、≦0.98、≦0.97、≦0.96、およびさらには≦0.95である。E800の値は、加熱後すぐに測定される場合の800℃での弾性率であり、E25の値は、加熱に先立って室温付近で測定される場合の弾性率であり、共に、音響共振技術を用いて測定される場合の値である。E800/E25の低い値は、低度の微小亀裂に対応することが見出された(図3参照)。
【0033】
セラミック物品の破壊強度係数MORをその物品の閉鎖正面面積比CFAで除した値は、その物品がセル状構造(例えば、ハニカム構造)を有する場合のその物品を構成する多孔質壁の固有強度の尺度である。一部の実施形態において、MOR/CFA(psi(6895Pa/psi))の値は、≧17,250−260(%気孔率)であり、他の実施形態においては≧17,500−260(%気孔率)であり、他の実施形態においては≧17,750−260(%気孔率)であり、他の実施形態においては≧18,000−260(%気孔率)である。セル状体に関し、閉鎖正面面積としても知られる閉鎖正面面積比は、多孔質セラミック壁からなるセル状物品の前面の部分面積である。例えば、物品が方形チャネルを有するハニカムである場合、そのハニカムの前面の閉鎖正面面積比は、CFA=(w/1000)[2(N−0.5)−(w/1000)](N)として定義され、ここで、wは、ミル(10−3インチ(2.54センチメートル/インチ))を単位とする壁厚であり、Nは、インチ−2(2.54センチメートル/インチ)を単位とするセル密度である。セラミック物品がチャネルを有さない中実体である場合、CFAの値=1.0であり、MOR/CFAは、中実試験片について測定される場合のMORと同値である。顕微鏡を用いてのセル密度および壁厚の測定に頼らない、セル状体についてのCFAを測定するための代替法は、チャネル軸に対して平行に切断された棒状の試験体の外寸を測定してその外容積を算出し、試験体を計量し、試験体重量を試験体容積で除した値に等しい試験体の嵩密度を計算することである。この試験片の密度は、CFAが関係式CFA=(試験体嵩密度)/{(ゼロ気孔率での試料の理論密度)[1−(%気孔率/100)]}から計算され得るように、試料の閉鎖正面面積および壁の気孔率パーセントと関係付けられる。本明細書において開示される実施形態に即して、ゼロ気孔率での試料の理論密度は、2.51g/cmに相当するコージェライト結晶の密度であると見なされる。このCFA算出方法は、チャネルの形状(方形、六角形、円形など)に影響されないので有用である。
【0034】
一部の実施形態において、気孔率は、≧50%、≧52%、≧54%、≧56%、≧58%、≧60%、またはさらには≧62%である。メジアン細孔径d50は、無機原材料および一時的細孔形成剤(fugitive pore−forming agent)の粒度を制御することによって、所望される用途に適するように調整されてもよい。物品がハニカムフロースルー触媒支持体である場合は、d50は、一部の実施形態においては≧0.5μmかつ≦7μmであり、他の実施形態においては≧1μmかつ≦5μmであり、他の実施形態においては≧1.5μmかつ≦4μmである。物品がウォールフロー微粒子除去フィルターとして使用されることになる場合、例えば、非常に高い濾過効率が必要とされる場合、またはチャネル壁が薄い場合、または触媒(存在する場合)が低塗布量で塗布される場合は、d50は、≧7μmかつ≦13μmまたは≧8μmかつ≦11μmであってもよい。あるいは、d50の値は、物品が例えばより厚い壁またはより高い触媒塗布量を有するウォールフロー微粒子除去フィルターとして使用されることになる場合などは、≧13μmかつ≦30μm、または≧15μmかつ≦25μm、またはさらには≧17μmかつ≦22μmであってもよい。%気孔率およびd50の値は、水銀ポロシメトリーにより測定される。本明細書において別段の指定がない限り、気孔率は、総気孔率をいう。
【0035】
一部の実施形態において、d=(d50−d10)/d50の値は、≦0.45、≦0.40、≦0.35、≦0.30、またはさらには≦0.25である。一部の実施形態において、d=(d90−d10)/d50の値は、≦1.00、≦0.90、≦0.80、≦0.70、またはさらには≦0.60である。dおよびdの低い値は、狭い細孔サイズ分布に対応し、高い細孔連結性、高いMOR/E、および高い耐熱衝撃性のために有益である。狭い細孔サイズ分布は、本明細書において開示される物品がフィルターまたは濾過膜支持体として使用される場合、特に、そのフィルターに回収された粒状物質が部分的に充填された場合の、圧力低下を最小限にするのにさらに有益である。一部の実施形態において、%気孔率/dとして定義される微細孔連結性ファクター(Fine Pore Connectivity Factor)PCFの値は、≧140、≧160、≧180、≧200、≧220、およびさらには≧240である。一部の実施形態において、%気孔率/dとして定義される全幅細孔連結性ファクター(Full−Breadth Pore Connectivity Factor)PCFの値は、≧50、≧60、≧70、≧80、≧90、およびさらには≧100である。PCFおよびPCFの高い値は、MOR/Eの高い値および高TSL200をもたらす傾向がある。用語d10、d50およびd90は、ミクロンまたはマイクロメートル(10−6メートル)の単位での細孔径を示しており、それぞれにおいて、総細孔体積の10%、50%、および90%は、より微細な細孔径のものである。したがって、例えばd90は、そこで細孔の90%(体積で)がより小さい直径のものとなる細孔径(累積水銀侵入体積が総水銀侵入体積の10%に相当するところの細孔径に等しい)である。したがって、例えば、d10<d50<d90ということになる。
【0036】
ハニカム構造を有する物品の一部の実施形態に関し、コージェライト横I比の値は、≧0.70、≧0.72、≧0.74、≧0.76、またはさらには≧0.78である。この横I比は、米国特許出願公開第2008/0032091号明細書に記載されているように、焼成したままのチャネル壁表面についてX線回折法によって測定される場合のものである。本明細書において開示される一部の実施形態において、XRD横I比は、0.78未満であり、一部の実施形態においては、0.74またはそれ以下である。一部の実施形態において、セル状物品の軸I比は、≦0.60、≦0.58、≦0.56、≦0.54、≦0.52、またはさらには≦0.50である。この軸I比は、試験体の軸方向に直交して取られたチャネル壁の断面についてX線回折法によって測定される場合のものである。横I比についての高い値および軸I比についての低い値は、より低い体積熱膨張係数をハニカム体の軸方向および半径方向に与えそれによりセラミック体の耐熱衝撃性を増大するような、負熱膨張z軸がチャネル壁面近くに整列した状態の、コージェライトクリスタリットの好ましい組織配向を示している。
【0037】
一部の実施形態において、X線回折法により測定される場合の焼成セラミック中のムライト+スピネル+サファーリン+コランダムの総量は、多量のこれらの相はセラミックのCTEを上昇させその耐熱衝撃性を低下させるので、≦4.0%、≦3.0%、およびさらには≦2.0%である。
【0038】
1つの態様において、本発明者らは、コージェライトセラミック体の本明細書において開示される実施形態が、少なくとも25時間にわたって少なくとも800℃(例えば、少なくとも80時間にわたって950℃、または少なくとも20時間にわたって800℃と900℃との間および少なくとも5時間にわたって900℃と1000℃との間および少なくとも2時間にわたって1000℃と1100℃との間)の温度を伴う環境に曝露されるなどの熱処理後(長時間にわたる高温への曝露後)でも、高い強度および高い耐熱衝撃性を維持することを見出した。本発明者らは、当該セラミック体には、熱処理または高温曝露後も非常に低い程度の微小亀裂および高い歪み許容度MOR/Eを維持する傾向もあることを見出した。理論に頼る必要はないが、高温曝露後も所望の熱物理的性質を維持する本明細書において開示されるコージェライトセラミック体はまた、長時間にわたる加熱の間にコージェライトクリスタリット間の結晶間ガラス相のより少ない失透を被るものと考えられる(図10および11参照)。本発明者らはまた、本明細書において開示されるランタン含有コージェライトセラミック体は、本体セラミック体中の鉄不純物の量が少ない場合に結晶間ガラス相の失透に対して最も耐性があるということも見出した。さらに、セラミックの鉄含有量が少ない場合に、下記に示されるように、セラミック体は少なくともいくらかの最小限の量のカルシウムを含有することがなおさらに望ましい(図4〜6参照)。
【0039】
高温曝露後に最も高いMORおよびTSL200を維持するためには、本明細書において開示される一部のセラミック体中のFeの量が、≦1.0重量%であるか、もしくはCaOの量が、≧0.02重量%であるか、または好ましくは、本明細書において開示されるセラミック体中のFeの量が、好ましくは≦1.0重量%であって、かつCaOの量が、好ましくは≧0.02重量%である。なぜならこの組合せは、高温での(例えば、950℃での)長時間にわたる熱処理後の、高いMOR、高いMOR/E、少ない微小亀裂、および高いTSL200をもたらすからである。これらの実施形態のいくつかにおいて、Feの量は、好ましくは≦0.80重量%であり、かつCaOの量は、≧0.05重量%である。これらの実施形態のいくつかにおいて、Feの量は、≦0.50重量%であり、かつCaOの量は、≧0.07重量%であり、他の実施形態において、Feの量は、≦0.60重量%であり、かつCaOの量は、≧0.10重量%であり、高温での(例えば、950℃での)長時間にわたる熱処理後の、特に少ない微小亀裂、高いMOR/E、および高いTSL200をもたらした。
【0040】
一部の実施形態において、空気中での少なくとも80時間にわたる950℃への曝露後の熱衝撃限界TSL200は、好ましくは≧1000℃、より好ましくは≧1050℃、≧1100℃、≧1150℃、およびさらには≧1200℃である。
【0041】
一部の実施形態において、空気中での少なくとも80時間にわたる950℃への曝露後のMOR/CFAの値は、≧1200psi(8274kPa)、≧1600psi(11032kPa)、≧2000psi(13790kPa)、≧2400psi(16548kPa)、またはさらには≧2800psi(19306kPa)である。
【0042】
一部の実施形態において、空気中での少なくとも80時間にわたる950℃への曝露後の微小割れ指数Nbの値は、≦0.030、≦0.020、またはさらには≦0.010である。一部の実施形態において、空気中での少なくとも80時間にわたる950℃への曝露後の弾性率比E800/E25の値は、好ましくは≦0.97、より好ましくは≦0.96、さらにより好ましくは≦0.95である。
【0043】
一部の実施形態において、空気中での少なくとも80時間にわたる950℃への曝露後のMOR/Eの値は、好ましくは≧0.15×10−2、より好ましくは≧0.16×10−2、≧0.17×10−2、≧0.18×10−2、≧0.19×10−2、≧0.20×10−2、およびさらには≧0.22×10−2である。
【0044】
本明細書において開示される別の態様によれば、ほとんどまたは全く微小亀裂を有さない多孔質コージェライトセラミックハニカム体を形成する方法であって、(1)マグネシウム源、アルミニウム源、ケイ素源、および無機混合物に少なくとも0.10重量%のLaを与えるのに十分なランタン源から選択される無機原材料混合物を形成し;(2)この無機原材料を、結合剤および液体ビヒクル、ならびに任意選択で細孔形成剤と混合し;(3)この原材料混合物をある物体に成形し;そして(4)この物体を、MOR/E≧0.10×10−2の比、≦1.00の弾性率比E800℃/E25℃または微小割れパラメータNb≦0.08、および少なくとも800℃の[200+(MOR/E)(CTE200−1000−1]として定義される予測熱衝撃限界TSL200を有する実質的にコージェライトのセラミック体を生成するのに十分に高い温度でかつ十分な長さの時間にわたって焼成させることによる方法が提供される。
【0045】
マグネシウム源としては、タルク、焼成タルク、緑泥石、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、およびアルミン酸マグネシウムスピネル、またはそれらの組合せが挙げられる。アルミニウム源としては、カオリン、焼成カオリン、葉蝋石、珪線石、ムライト、藍晶石、ベーマイト、ダイアスポア、水酸化アルミニウム(アルミニウム三水和物としても知られる)、遷移アルミナ(例えば、γ−アルミナ)、およびコランダム、またはそれらの組合せが挙げられる。ケイ素源としては、石英、トリポリシリカ、およびアモルファスシリカ(溶融シリカを含む)、またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態において、この原材料混合物は、好ましくは≦0.80重量%の量のFeおよび好ましくは≧0.05重量%の量のCaO、より好ましくはFe≦0.60重量%およびCaO≧0.10重量%をもたらすように選択される。もたらされるFeの量は、より好ましくは≦0.50重量%であり、CaOの量は、より好ましくは≧0.07重量%である。もたらされるFeの量が≦0.30重量%であり、かつCaOの量が≧0.10重量%であることがさらに好ましい。原材料混合物は、任意選択で、カルシウム源(例えば、珪灰石、白雲石、もしくは炭酸カルシウム、またはそれらの組合せなど)を含んでもよい。
【0046】
一連の実施形態において、バッチ材料は、≦10μm、好ましくは≦5μmまたはさらには≦3μmのメジアン粒径を有する、少なくとも8重量%のカオリンまたは焼成カオリン、および少なくとも8%のマグネシウム源を含み、このマグネシウム源は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、またはアルミン酸マグネシウムスピネルから選択される。
【実施例】
【0047】
いくつかの非限定的な実施例が、下記に示される。
【0048】
これらの実施例を作製するために使用された原材料を、Microtrac粒度分析器によりレーザー回折技術を用いて測定される場合のそれらのメジアン粒径と一緒に、表1に示す。
【表1】

【0049】
X線蛍光分光法、炎光発光分光法、または誘導もしくは直接結合プラズマ分光法により分析される場合の、大部分の無機原材料の金属酸化物成分を、表2に示す。
【表2】

【0050】
実施例についてのバッチ組成を、表3〜8に列挙する。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【0051】
表3〜8に示された各セラミックの計算上の金属酸化物組成は、バッチ中の各無機原材料の重量画分によって寄与される金属酸化物に基づいており、合計して100%になるように再正規化されている。
【0052】
表9は、以下の実施例33〜36についての熱処理サイクルを列挙している。
【表9】

【0053】
表10〜21は、焼結させた実施例についての、および場合により、それに続く高温での曝露後のそれらの実施例についての、種々の物性を示している。
【表10】

【表11】

【表12−1】

【表12−2】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【0054】
無機原材料、細孔形成剤、ならびに固体および液体有機添加剤を、表に示された割合で計量し、蒸留水と混合し、Littleford横型プラウミキサー中でブレンドして可塑化バッチを得た。続いてこの材料を、ラムまたは二軸スクリュー型押出機中に供給し、真空系を用いて脱気し、ダイを通して押出して、表に記載されている種々のセル構造を有する直径2インチ(5.08センチメートル)または5.66インチ(14.38センチメートル)のハニカム製品を形成した。部品を、およそ8インチ(20.32センチメートル)の長さに切断し、マイクロ波乾燥機中で部分的に乾燥させ、続いて対流オーブン中で完全に乾燥させた。この乾燥させた部品を、6インチ(15.24センチメートル)〜7インチ(17.78センチメートル)の長さに切断し、電気またはガス炉中で垂直に焼成した。各試料の物性に関連する具体的な焼成条件は、表中に示されている。焼成速度は、℃/時間を単位とする。焼成サイクルの他の部分中の速度は、製品の亀裂を防ぐように選択された、当該技術分野において周知の速度である。
【0055】
閉鎖正面面積は、関係式CFA=(試験体嵩密度(単位g/cm))/{(2.51)[1−(%気孔率/100)]}から計算した。
【0056】
気孔率は水銀ポロシメトリーにより測定したものであり、%気孔率ならびに体積基準の細孔サイズ分布の1、2、5、10、25、50、75、90、95、98、および99%での細孔径の値が表中に示されている。
【0057】
熱膨張係数(CTE)は、示された温度(℃)間の平均CTEであり、軸状試験体について膨張計測により測定した。
【0058】
本明細書に援用される米国特許出願公開第2008/0032091号明細書に記載されるように、横I比および縦I比は、焼成製品における非ランダムコージェライト結晶配向の程度を表す。
【0059】
焼成試料に残存するムライト、スピネル+サファーリン、およびα−アルミナの重量パーセントは、X線回折法により測定した。スピネルおよびサファーリンの量は、使用されるXRD技術にもよるが、これら2相間を区別することに潜在的な困難さがあるため、一緒にして含まれる。
【0060】
破壊係数(MOR)は、4点ビーム曲げ法を用いて軸方向において測定した。
【0061】
弾性率は、音響共振技術を用いて軸方向において測定した。微小割れ指数Nbは、米国特許出願公開第2008/0032091号明細書に記載されている方法によって測定した。
【0062】
熱衝撃パラメータTSP200は、先に定義されたように、200+(MOR/E)(CTE200−1000−1として算出した。別の熱衝撃パラメータTSP500=500+(MOR/E)(CTE500−900℃−1も計算した。TSL500の値は、部品中のどこか他の場所にある最低温度領域が約500℃である場合にそのセラミックハニカム体が耐え得る最高温度の推定値を提供する。
【0063】
図1は、加熱の間の値(塗りつぶした丸)と冷却の間の値(白抜きの四角)との重複によって示されるように実質的にゼロの微小亀裂を有する本明細書に開示される実施形態の、温度(℃)に対してプロットされた弾性率E(psi(6895Pa/psi))を図示している。破線は、加熱の間の800℃でのEであるE800の値を示している。加熱する前の室温でのEであるE25の値は、最初の(最も左側の)塗りつぶした丸で示されている。
【0064】
図2は、加熱の間に収集されたデータ(塗りつぶした丸)と冷却の間に収集されたデータ(白抜きの四角)との間のヒステリシス(不一致)によって示されるように僅かな程度の微小亀裂を示す本明細書に開示される別の実施形態の、温度(℃)に対してプロットされた弾性率E(psi(6895Pa/psi))を図示している。E25およびE800の値は、図1中のとおりである。100.0%非微小割れ試験体の値であるE°25の値(白抜きの三角)も示されている。
【0065】
図3は、本明細書に開示される一部の実施例の、微小割れ指数Nbに対してプロットされた弾性率比E800/E25を図示しており、E800/E25の低い値が低度の微小亀裂に対応することを示している。破線は、非微小割れコージェライトセラミック体に対応する、約0.94に等しい、E800/E25のおよその最小値を示している。塗りつぶした丸は、焼成したままの実施例についての値を示し、白抜きの丸は、82時間950℃で、または32.5時間800〜1100℃にわたって熱処理した実施例についての値を示す。
【0066】
図4は、実施例についてのCaOの重量%に対してプロットされたFeの推定重量%を図示している。塗りつぶした丸は、82時間950℃で、または32.5時間800〜1100℃にわたって処理した後でも、元のMORの少なくとも80%を維持する実施例を示す。白抜きの丸は、82時間950℃で、または32.5時間800〜1100℃にわたって処理した後は、初期のMORの80%未満を維持する実施例を示す。
【0067】
図5は、%気孔率に対してプロットされた焼成したままのセラミック体のMOR/CFAを図示している。塗りつぶした丸は、本開示のより高い強度およびより高い気孔率の実施例を示す。白抜きの丸は、より低い強度および/またはより低い気孔率の実施例を示す。実線は、有利なMOR/CFAを有する一連の実施形態の境界を示している。
【0068】
図6は、微小割れ指数Nbに対してプロットされたMOR/Eを図示している(x軸は対数スケールでプロットされている)。実線は、有利なMOR/Eおよび微小割れ指数を有する一連の実施形態の境界を示している。記号は図4中と同じである。
【0069】
図7は、焼成したままのセラミック体の熱膨張係数CTE25−800℃に対してプロットされた、82時間950℃で、または32.5時間800〜1100℃にわたって熱処理された実施例の予測熱衝撃限界TSL200を図示している。記号は図5中と同じである。
【0070】
図8は、焼成したままのセラミック体の熱膨張係数CTE25−800℃に対してプロットされた、XRD横I比Iを図示している。記号は図5中と同じである。
【0071】
図9は、柱状コージェライトクリスタリット(灰色)の合間のランタン含有ガラス相(明るい領域)の存在を示す、本明細書に開示されるさらに別の実施形態の研磨切片の後方散乱電子像である。左下隅の黒い領域は、細孔である。ランタン含有量の多いガラス相は、ランタン含有量の少ないガラスの極小滴(灰色)も含有している。
【0072】
図10は、82時間にわたる950℃での熱処理後の図9の実施形態の研磨切片のより高い倍率の二次電子像である。中間の灰色のマトリックスが、コージェライトである。角張った領域は、ランタン含有量の多い低シリカガラス(明るい相)およびランタン含有量の少ない高シリカガラス(周囲のコージェライトよりも僅かに淡い灰色)を含有している。
【0073】
図11は、82時間にわたる950℃での熱処理後の本明細書に開示されるより鉄含有量の多い実施形態の研磨切片の二次電子像である。中間の灰色のマトリックスが、コージェライトである。角張った領域は、シリカ含有量の多いガラスの散乱残留球状小滴を含む、実質的に失透して少なくとも2つの結晶相(淡灰色および極淡灰色)となった、以前はガラスであった領域を含有している。
【0074】
実施例1A〜8B(表10、11および12)は、一部の例においては酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化チタン、およびそれらの組合せの種々の添加を伴い、低い鉄含有量および低いカルシウム含有量を有する緑泥石、アルミナならびに石英をベースとするバッチへの1.0重量%のLaの添加により生成された、本明細書において開示されるセラミック体を示している。実施例1B〜6Bは、特性の組合せが82時間にわたる950℃への曝露後も維持されることを例証している。高い強度および低い微小割れ指数は、添加された酸化鉄を含まない実施例1B〜4Bによって示される。カルシウムの添加物を含むが添加された酸化鉄を含まない実施例2Bおよび4Bについては、高い計算熱衝撃限界もまた保持される。これに比べて、添加された酸化鉄を含む実施例5B〜8Bは、熱処理後により高い微小割れ指数、より低い強度および/またはより低いTSL200値を示す傾向がある。カルシウムおよび鉄の添加の組合せ(実施例7Bおよび8B)は、例えば鉄を欠いたカルシウムの添加と比べて、強度保持にとっては特に好ましくなく、実施例7Bおよび8Bは、もはや≦0.08の微小割れ指数を示さず、0.10未満すら示さない。Fe≦0.60重量%を伴うCaO≧0.05重量%の利点を、図4〜6に図示する。より多い量のFeと組合せたより多い量のCaOは、例えば実施例5B、6B、7B、8B、13Bおよび14Bにより見られるように、熱処理後により低い強度、より低いTSL200、および/またはより高い程度の微小亀裂をもたらし得る。これらの実施例におけるそれぞれのセラミック体中のFeおよびCaOの合わせた重量%は、1.301、1.300、1.416、1.415、1.499、および1.492であったが、残りの例示的な実施例は、1.30未満のFeおよびCaOの合わせた重量%を有していた。したがって、一部の実施形態において、セラミック体は、1.5重量%未満のFeを含有し、一部の実施形態において、セラミック体は、0.05重量%より多くのCaOを含有する。一部の実施形態において、セラミック体は、1.5重量%未満のFeおよび0.05重量%より多くのCaOを含有し、これらの実施形態のいくつかにおいて、セラミック体中のFeおよびCaOの合わせた総量は、1.40重量%未満、好ましくは1.35重量%未満、より好ましくは1.30重量%未満であり、一部の実施形態においては1.25重量%未満であり、これらの実施形態のいくつかにおいては1.00重量%未満である。
【0075】
実施例9A〜14C(表12、13および14)は、一部の例においては金属酸化物の中でもとりわけ付加的なカルシウムおよび鉄を供給するアタパルジャイトまたはベントナイトの添加を伴い、鉄分の多いまたは鉄分の少ないタルクとアルミナ、ベーマイトおよび石英との混合物への1.0重量%のLaの添加により作製された、本明細書において開示されるセラミック体を提供する。図9は、実施例9A中のランタン含有ガラス相の分布を示している。低い鉄含有量を有する実施例9Bおよび10Bは、82時間にわたる950℃への曝露後に、高い強度、低い微小割れ指数、および高いTSL200値を示す。図10は、実施例9B中のガラス相の大部分が2つの異なる組成のガラスにさらに分離されたが、失透しなかったことを示している。中程度の量の酸化カルシウムと共に多くの鉄を含有する実施例11Bは、実施例9Bおよび10Bより劣るが、依然として強度、微小割れ指数、およびTSL200の十分な値を保持する。より多くの鉄およびより多くのカルシウムの組合せを有する実施例13Bおよび14Bは、82時間にわたる950℃への曝露後に、強度、歪み許容度、およびTSL200の極めて大幅な喪失と共に甚大な微小亀裂を被った。図11は、実施例14B中のガラス相が大きく失透して少なくとも2つの結晶相になったことを示している。実施例9B〜14Bについての結果もまた図4〜6に図示されており、熱安定性に対する低い鉄含有量の有益性を示している。82時間1100℃で保持された実施例9C〜14Cについての結果は、鉄およびカルシウムをより多く含む組成物について、これらの組成物が950℃で保持される場合に比べて特性の劣化が深刻ではないことを示している。理論に頼る必要はないが、ガラスポケット中のクリスタリットの部分的な再吸収(resorption)が、恐らくは部分的な融解を伴って、1100℃で起こり、それにより、冷却して室温に戻った後により多くの残留ガラスをもたらすということが提唱される。
【0076】
実施例15および16は、本明細書において開示されるセラミック体の特性、特に、82時間にわたる950℃への曝露後の強度、少ない微小亀裂、歪み許容度、およびTSL200の優れた保持が、水酸化マグネシウムおよびカオリンを含み、その上≦0.6重量%のFeおよび≧0.10%のCaOを含有するランタン含有原材料組合せについて達成されることを示している。
【0077】
実施例17A〜19Aは、本明細書において開示されるセラミック体の特性が、スピネルおよびカオリンを含有するランタン含有原材料組合せについて達成されることを示している。低レベルの微小亀裂が、Fe≦0.90%およびCaO≧0.10%により、82時間にわたる950℃または1100℃への曝露後も維持される。
【0078】
実施例44および45は、ランタン(または酸化ランタン)を実質的に全く含まない比較例である。非常に高い値の微小亀裂が、熱処理後に生じた。
【0079】
したがって、本明細書において開示されるセラミック体の実施形態は、十分なランタンがない公知のコージェライトセラミック物品と比較して、極めて少ない微小亀裂をもたらすための増大した強度を、所与のセル構造、%気孔率、および細孔サイズ分布に与え得る。少ない鉄含有量を有する一部の実施形態は、ランタンが不足するかまたは多量の鉄を含有する公知のコージェライトセラミックに比べて、改善された、長時間にわたる高温での曝露後の強度の残率および予測耐熱衝撃性を示す。
【0080】
非常に多くの本発明の改変および変更が可能である。したがって、次に続く特許請求の範囲の範囲内で、具体的に記載されたものとは別のやり方で、本発明を実施し得ることが理解されるべきである。本発明は特定の好ましい実施形態に関して記載されているが、本発明に対する様々な変更、改変、および追加が、当業者には明らかとなるであろう。全てのそのような改変、変更、および追加は、本特許の範囲内に包含されることが意図されており、その範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要コージェライトセラミック相および前記セラミックの微細構造内に含まれる少なくとも約0.1重量%の酸化ランタンを含むセラミック体であって、前記セラミック体は、25℃(室温)での4点ビーム曲げ破壊係数MOR;25℃にて音響共振技術により測定される室温弾性率E;および℃−1を単位とする200℃〜1000℃の熱膨張係数CTE200−1000を示し、前記セラミック体は、比MOR/Eにより定義される無次元歪み許容度およびTSL200=200℃+(MOR/E)/CTE200−1000により定義される耐熱衝撃性によって特徴付けられ、前記セラミック体は、室温に次いで少なくとも25時間にわたって800℃〜1100℃の範囲の温度を伴う環境に曝露されることを含む熱処理に供された後に、MOR/E>0.12×10−2およびTSL200≧900℃を示すことを特徴とする、セラミック体。
【請求項2】
前記熱処理が、前記セラミック体を、少なくとも80時間にわたって950℃の温度を伴う環境に曝露すること、または少なくとも80時間にわたって1100℃の温度を伴う環境に曝露すること、または少なくとも20時間にわたって800℃と900℃との間の温度および少なくとも5時間にわたって900℃と1000℃との間の温度および少なくとも2時間にわたって1000℃と1100℃との間の温度を伴う環境に曝露することを含むことを特徴とする、請求項1に記載のセラミック体。
【請求項3】
前記セラミック体が、熱処理後にMOR/E≧0.16×10−2またはTSL200≧1000℃を示すことを特徴とする、請求項1に記載のセラミック体。
【請求項4】
前記セラミック体が、室温に次いで少なくとも80時間にわたって1100℃の温度を伴う環境に供された後に、MOR/E≧0.12×10−2およびTSL200≧900℃を示すことを特徴とする、請求項1に記載のセラミック体。
【請求項5】
前記セラミック体が、0.60重量%以下のFeおよび0.10重量%以上のCaOを含有することを特徴とする、請求項1に記載のセラミック体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−528074(P2012−528074A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513287(P2012−513287)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036549
【国際公開番号】WO2010/138801
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】