説明

ランプ取付構造

【課題】バンパカバーにランプを取り付けるランプ取付構造であって、衝突時においてランプの破損を防止することができ、さらに、意匠面で制約を受けることなく、コスト及び質量の増加を抑制する。
【解決手段】バンパカバー1にランプ10を取り付けるランプ取付構造であって、前記バンパカバー1に設けられ、前記ランプ10の一端部を固定して支持する台座3と、少なくとも前記ランプ10の一部を前記バンパカバー1に係止させる係止手段4a,10aとを備え、前記ランプ10は、前記係止手段4a,10aによる係止が解除された状態で、前記台座3側を軸として回動自在である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパカバーにランプを取り付けるためのランプ取付構造に関し、特に、自動車の軽衝突時においてランプを保護することのできるランプ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のバンパ(カバー)に埋込むように設けられたフォグランプがある。従来そのようなフォグランプ40は、例えば図7(a)に示すように、車両本体50の前部及び/または後部において、バンパカバー52(に形成された孔)に嵌め込む形で取り付けられている。
【0003】
このようなフォグランプの取付構造にあっては、バンパカバー52に他の車両60等が衝突した場合、図7(b)に示すようにバンパカバー52が押し潰されると同時にフォグランプ40が後方へ押し込まれ、フォグランプ40がバンパビーム51や車両本体50に激しく当たって破損するという課題があった。
【0004】
そのような課題に対し、フォグランプ40の破損を最小限に止めるために、従来、図8(a)に示すように、フォグランプ40の後方であって、車両本体50との間に緩衝部材55を設け、衝突時の衝撃を緩衝部材55により吸収する構造がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−72264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図8(a)に示すように緩衝部材55を設ける場合、衝突時におけるランプの破損率は低下するものの、部品点数が増えるため、コストが嵩み、質量も増加するという課題があった。
【0006】
また、ランプ破損を防止する、その他の方法として、例えば図8(b)に示すように、バンパカバー52のストロークsの長さを大きくとり、衝突時におけるフォグランプ40の他部材との緩衝を回避する方法がある。
しかしながら、この方法にあっては、バンパカバー52が大きく出っ張り、意匠面で制約が生じる上、部材が大きくなるためコストが嵩み、質量も増加するという課題があった。
【0007】
また、さらに他の方法として、例えば図8(c)に示すように、フォグランプ40の取付位置を、衝突時において、他部材と干渉しない部位に設ける方法が考えられる。
しかしながら、その方法にあっても、フォグランプ40の取付位置が限定されるため、意匠面で制約が生じるという課題があった。
【0008】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、バンパカバーにランプを取り付けるランプ取付構造であって、衝突時においてランプの破損を防止することができ、さらに、意匠面で制約を受けることなく、コスト及び質量の増加を抑制することのできるランプ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明に係るランプ取付構造は、バンパカバーにランプを取り付けるランプ取付構造であって、前記バンパカバーに設けられ、前記ランプの一端部を固定して支持する台座と、少なくとも前記ランプの一部を前記バンパカバーに係止させる係止手段とを備え、前記ランプは、前記係止手段による係止が解除された状態で、前記台座側を軸として回動自在であることに特徴を有する。
尚、前記バンパカバーには前記ランプの取付孔が形成され、前記台座と前記係止手段とは、前記取付孔内に設けられることが望ましい。
また、前記ランプは、前記台座に対し螺子締めにより固定されることが望ましい。
【0010】
このようにランプの一端部を固定し、その固定部以外の部分をバンパカバーと係止する取付構造とすることにより、衝突時に係止状態が解除され、固定部側を軸としてランプを回動させることができる。
これにより、ランプがリアビーム等の車体構造物に衝突しても、バンパカバーの外に向けて押し出すことができ、また、一部固定により落下することもないため、衝突によるランプの破損を防止することができる。
また、本発明に係るランプ取付構造は簡単な構造で実現可能であるために、コスト及び質量の増加を抑制することができ、取付位置が限定されないため、意匠面に制約を与えることがない。
【0011】
また、前記台座は、前記ランプの奥行き方向に沿って少なくとも1本のスリットが形成されていることが望ましい。
このように台座にスリットが形成されていることにより、ランプが回動した際に台座が湾曲しやすくなり、回動に対する制動力を減少することができる。
【0012】
また、前記係止手段は、係止突起と該係止突起に係止する係止孔からなり、前記係止突起と係止孔とは、前記バンパカバーと前記ランプのいずれかに、それぞれが対応するように設けられていることが望ましい。その場合、前記係止突起の先端はテーパ状に形成されていることが望ましい。
このように構成することにより、係止状態を形成することができ、係止突起の先端をテーパ状とすることにより係止及びその解除をより容易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バンパカバーにランプを取り付けるランプ取付構造であって、衝突時においてランプの破損を防止することができ、さらに、意匠面で制約を受けることなく、コスト及び質量の増加を抑制することのできるランプ取付構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るランプ取付構造の実施の形態について図面に基づき説明する。
先ず、図1乃至図4に基づき、例えばリアバンパカバーに(1つの)フォグランプを取り付ける場合のランプ取付構造について説明する。
【0015】
図1(a)は、本発明に係るランプ取付構造が採用されたフォグランプ10及びリアバンパカバー1の全体を示す正面図であり、図1(b)は、図1(a)のフォグランプ10及びリアバンパカバー1におけるランプ取付部の拡大正面図である。
また、図2は、フォグランプ10がリアバンパカバー2に取り付けられた状態を示す全体の正面図であり、図3は図2のB−B矢視断面図、図4は図2のA−A矢視断面図である。
【0016】
図示する例では、フォグランプ10は、リアバンパカバー1の略中央部に取り付けられる。また、フォグランプ10の形状は正面から見て方形状に形成されている。
リアバンパカバー1は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)等の複合材料により形成され、略中央部にフォグランプ10を取り付けるための取付孔2が設けられている。この取付孔2の縁部形状はフォグランプ10の正面部形状に合わせて方形状に形成されている。
【0017】
取付孔2には、図1(b)に示すように、その底部においてフォグランプ10を支持するための台座3が設けられ、この台座3によりフォグランプ10の略全荷重が支持されるようになされている。
また、取付孔2内の左右両側には、奥行き方向に所定幅を有する壁部4が形成され、この壁部4によりフォグランプ10の側部が支持されるようになされている。
【0018】
図1(b)に示すように、台座3は取付孔2の縁部から奥行き方向に延設された載置台3cと、載置台3cの後端部から立設された固定部3dとからなる。
固定部3dには例えば2つの螺子穴3aが形成され、この螺子穴3aに螺合する螺子締めにより、フォグランプ10が固定部3d(台座3)に対して固定されるようになされている。
【0019】
ここで、図3に示すように、フォグランプ10が台座3に対して固定された状態では、フォグランプ10は固定部3dによって支持され、載置台3cに対しては固定されない。好ましくは、図示するように、フォグランプ10が載置台3cと接触しないようになされ、載置台3cが容易に湾曲可能な状態となされる。
【0020】
また、より好ましくは、図1(b)に示すように、載置台3cには、中央から2分割するように、奥行き方向に沿ってスリット3bが形成される。これにより、載置台3cがより湾曲し易い状態とすることができる。
尚、載置台3cに形成されるスリットは、1本のスリットに限らず、フォグランプ10の奥行き方向に沿って複数本形成されていてもよい。
【0021】
また、図1(b)に示すように前記壁部4には、所定の径を有する貫通孔である係止孔4aが形成されている。ここで、フォグランプ10の左右両側には、前記係止孔4aに係止する係止突起10aが設けられており、フォグランプ10の取付時において、係止突起10aをリアバンパカバー1側の係止孔4aに係止させてフォグランプ10の左右両側を支持するようになされている。このように係止孔4aと係止突起10aとにより係止手段が構成される。
【0022】
このように構成されたフォグランプ10とリアバンパカバー1の取付孔2において、取付孔2にフォグランプ10を取り付けるには、取付孔2の壁部4に形成された係止孔4aに対し、フォグランプ10の左右両側に設けられた係止突起10aを係止させる。
尚、係止突起10aの先端はテーパ状に先細りしたテーパ部10bが形成されており、係止孔4aに対し係止突起10aが容易に挿入されるようになされている。
【0023】
次いで、図3に示すようにフォグランプ10の後部に設けられた取付ステー10bを台座3の固定部3dに固定する。即ち、フォグランプ10の取付ステー10bに形成された螺子穴(図示せず)と、固定部3dの螺子穴3aとの位置を合わせ、螺子20を両螺子穴に螺合することによってフォグランプ10を台座3(固定部3d)に対して固定する。
このようにして、フォグランプ10は、台座3への固定と壁部4との係止によりリアバンバカバー1(取付孔2)に取り付けられる。
【0024】
続いて、このようなランプ取付構造において、バンパ(リアバンパ)が他車のバンパ等に衝突した際の作用について図5、図6に基づき説明する。
図5は、本発明のランプ取付構造に他車のバンパが衝突した際の状態遷移を示すリアバンパカバー2の断面図、図6は、衝突時におけるフォグランプ10の状態遷移を示す断面図である。
【0025】
図5(a)に示すように、例えば他車のバンパ60がリアバンパカバー1に追突すると、図5(b)に示すように、リアバンパカバー1は奥行き方向に押し潰される。
リアバンパカバー1が押し潰さると、リアバンパカバー1の取付孔2も瞬間的に奥行き方向に移動し、これによりフォグランプ10も奥行き方向に移動し、フォグランプ10の後部が車体の構造物(この場合、バンパビーム51とする)に強く接触する。
【0026】
これにより、フォグランプ10はバンパビーム51から反作用の力を受け、台座3側を軸としてバンパ外に向けてモーメントが発生する。
即ち、フォグランプ10がリアバンパカバー1に対して固定されているのは、台座3の固定部3dのみであるため、フォグランプ10には台座側(例えば図6に示す縁部3e)を軸として回動する力が作用する。
【0027】
そして、フォグランプ10の回動力により、取付孔2の壁部4に形成された係止孔4aからフォグランプ10の係止突起10aが外れ、フォグランプ10はリアビーム51に押し出されるような形で、破損することなくリアバンパカバー1の外側に飛び出る。
ここで、係止突起10aは、その先端にテーパ部10bが形成されているため、係止孔4aに対し係止突起10aが容易に外れる。
また、載置台3cは、前記したようにフォグランプ10に対して固定されず、さらにスリット3bが形成されているため、前記回動力によって容易に湾曲し、フォグランプ10の回動に対する制動力が減少する。
【0028】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、フォグランプ10の一端部を固定し、その固定部以外の部分をリアバンパカバー2と係止する取付構造とすることにより、衝突時に係止状態が解除され、固定部側を軸としてフォグランプ10を回動させることができる。
これにより、フォグランプ10がリアビーム51等の車体構造物に衝突しても、リアバンパカバー1の外に向けて押し出すことができ、また、一部固定により落下することもないため、衝突によるフォグランプ10の破損を防止することができる。
また、本発明に係るランプ取付構造は簡単な構造で実現可能であるために、コスト及び質量の増加を抑制することができ、取付位置が限定されないため、意匠面に制約を与えないようにすることができる。
【0029】
尚、前記実施の形態においては、リアバンパカバーにフォグランプを取り付ける例を示したが、リアに限らず、フロントにバンパカバーに対するランプ取付構造にも本発明を適用することができる。また、ランプはフォグランプに限らず、あらゆるランプを適用することができる。
また、本実施の形態においては、フォグランプ10側に係止突起10aを設け、取付孔2側に係止孔4aを設けた例を示したが、ランプ側に係止孔を設け、取付孔側に係止突起を設けた構造であってもよい。
また、係止突起10aと係止孔4aの組み合わせ(係止手段)はフォグランプ10の左右両側の2箇所としたが、少なくとも1箇所の係止手段があれば、本発明に係るランプ取付構造を適用することができる。
また、ランプの正面形状は方形状に限らず、円形であっても本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、バンパカバーにランプを取り付けるランプ取付構造に関し、例えば自動車部品の製造業において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明に係るランプ取付構造が採用されたフォグランプ及びリアバンパカバーを示す正面図である。
【図2】図2は、図1のフォグランプがリアバンパカバーに取り付けられた状態を示す全体の正面図である。
【図3】図3は、図2のB−B矢視断面図である。
【図4】図4は、図2のA−A矢視断面図である。
【図5】図5は、本発明のランプ取付構造に他車のバンパが衝突した際の状態遷移を示すリアバンパカバーの断面図である。
【図6】図6は、衝突時におけるフォグランプの状態遷移を示す断面図である。
【図7】図7は、従来における衝突時のランプ破損を説明するための図である。
【図8】図8は、従来の衝突時におけるランプ破損を防止するための技術を説明するため図である。
【符号の説明】
【0032】
1 リアバンパカバー(バンパカバー)
2 取付孔
3 台座
3a 螺子穴
3b スリット
3c 載置台
3d 固定部
3e 縁部
4 壁部
4a 係止孔(係止手段)
10 フォグランプ(ランプ)
10a 係止突起(係止手段)
10b テーパ部
20 螺子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパカバーにランプを取り付けるランプ取付構造であって、
前記バンパカバーに設けられ、前記ランプの一端部を固定して支持する台座と、
少なくとも前記ランプの一部を前記バンパカバーに係止させる係止手段とを備え、
前記ランプは、前記係止手段による係止が解除された状態で、前記台座側を軸として回動自在であることを特徴とするランプ取付構造。
【請求項2】
前記バンパカバーには前記ランプの取付孔が形成され、
前記台座と前記係止手段とは、前記取付孔内に設けられることを特徴とする請求項1に記載されたランプ取付構造。
【請求項3】
前記台座は、前記ランプの奥行き方向に沿って少なくとも1本のスリットが形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたランプ取付構造。
【請求項4】
前記ランプは、前記台座に対し螺子締めにより固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたランプ取付構造。
【請求項5】
前記係止手段は、係止突起と該係止突起に係止する係止孔からなり、
前記係止突起と係止孔とは、前記バンパカバーと前記ランプのいずれかに、それぞれが対応するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたランプ取付構造。
【請求項6】
前記係止突起の先端はテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載されたランプ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−248841(P2009−248841A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101271(P2008−101271)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】