説明

ランプ用ガラスの製造方法、ランプ用ガラス、ランプ用ガラス管およびランプ

【課題】紫外線遮断性能の高いガラスを製造可能なランプ用ガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】電磁波照射装置または粒子線照射装置を用いて、酸化スズを含有するガラスに電磁波または粒子線を照射して欠陥を生じさせる工程を含むランプ用ガラスの製造方法によりガラスを製造する。特には、ガラスの2mm厚における波長287nmの紫外線透過率が5%以下となるように前記電磁波または粒子線を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ用ガラスの製造方法、その方法で製造されたランプ用ガラス、並びに、そのガラスを用いて作製されたガラス管およびランプに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプは、水銀の励起放射により発生する紫外線でガラスバルブ内壁の蛍光体を励起させて可視光を得る発光メカニズムを有する。ところで、ガラスバルブ内部で発生した紫外線が蛍光体層やガラスバルブを透過しランプ外に漏洩すると、被照明物や灯具がその紫外線を浴びて褪色する。このような紫外線による褪色は、美術品や衣料品を被照明物とする展示照明用ランプにおいて特に深刻な問題である。
【0003】
そこで、紫外線の漏洩を防止するために、例えば、特許文献1には、酸化鉄や酸化セリウムなどの紫外線遮断剤をガラスバルブのガラスに含有させ、当該ガラスの紫外線遮断性能を向上させることが開示されている。
【特許文献1】特開平4−270138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、酸化鉄の含有量が多くなるとガラスが初期着色を起こす。また、酸化セリウムの含有量が多くなるとガラスがソラリゼーション(紫外線を浴びてガラスが着色する現象)を起こす。このように、紫外線遮断剤はその種類ごと何かしらの問題をかかえており、紫外線漏洩防止に十分な量の紫外線遮断剤をガラスに含有させることは困難である。そのため、ガラスの紫外線遮断性能を向上させる新たな技術が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、紫外線遮断性能の高いガラスを製造可能なランプ用ガラスの製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、紫外線遮断性能の高いランプ用ガラス、ランプ用ガラス管およびランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るランプ用ガラスの製造方法は、電磁波照射装置または粒子線照射装置を用いて、酸化スズを含有するガラスに電磁波または粒子線を照射して欠陥を生じさせる工程を含むことを特徴とする。
本発明に係るランプ用ガラスの製造方法の一態様では、照射後のガラスの2mm厚における波長287nmの紫外線透過率が5%以下となるように前記電磁波または粒子線を照射することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るランプ用ガラスの製造方法の一態様では、前記電磁波は、紫外線またはX線の少なくとも一方であることを特徴とする。
本発明に係るランプ用ガラスの製造方法の一態様では、前記ガラスの酸化スズの含有量が0.01〜5wt%であることを特徴とする。
本発明に係るランプ用ガラスの製造方法の一態様では、前記ガラスの酸化鉄の含有量が0.1wt%以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るランプ用ガラスの製造方法の一態様では、前記ガラスの酸化セリウムの含有量が0.5wt%以下であることを特徴とする。
本発明に係るランプ用ガラスは、酸化スズを含有し、電磁波照射装置または粒子線照射装置を用いて電磁波または粒子線を照射することにより2mm厚における波長287nmの紫外線透過率を5%以下としたことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るランプ用ガラス管は、上記ランプ用ガラスからなることを特徴とする。
本発明に係るランプは、上記ランプ用ガラス管をガラスバルブとして用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るランプ用ガラスの製造方法は、紫外線遮断性能の高いガラスを製造することができる。したがって、紫外線遮断剤の含有量を減らした場合や、紫外線遮断剤を全く含有させない場合でも、ランプ用ガラスに必要とされる紫外線遮断性能を備えたガラスを製造することが可能である。このように紫外線遮断剤の量を減らす等できるため、紫外線遮断剤に起因する問題が起こり難い。
【0011】
本発明者等は、酸化スズを含有するガラスに電磁波または粒子線を照射すると当該ガラスに欠陥が生じることを突き止めた。さらに、このようにして欠陥を生じさせたガラスは、紫外線遮断性能が向上していることを突き止めた。
ガラスに電磁波または粒子線を照射すると欠陥が生じるのは、当該ガラスのガラスネットワーク構造が歪んだり、一部で結合が切断されたりするからであると推測される。また、ガラスに欠陥が生じると紫外線遮断性能が向上するのは、欠陥で紫外線が吸収されるからであると推測される。さらに、酸化スズを含有しないガラスに電磁波または粒子線を照射しても欠陥は殆ど生じないことから、欠陥はスズに起因するところが大きいと推測される。
【0012】
このようにして電磁波または粒子線の照射により生じた欠陥は経時的に安定しており、一旦欠陥を生じさせるとガラスは元の欠陥のない状態に戻り難い。したがって、ガラスの紫外線遮断性能は経時的に安定している。
なお、電磁波とは、電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、ガンマ線および高エネルギー線等を意味し、粒子線とは、電子線、陽子線、炭素線および中性子線等を意味する。
【0013】
上記ランプ用ガラスの製造方法において、電磁波または粒子線を、照射後のガラスの2mm厚における波長287nmの紫外線透過率が5%以下となるように照射した場合、ランプ用として十分な紫外線遮断性能を有するガラスを製造することができる。
上記ランプ用ガラスの製造方法において、電磁波が紫外線またはX線の少なくとも一方である場合、設備面或いは作業面において実施が容易である。
【0014】
上記ランプ用ガラスの製造方法において、ガラスの酸化スズ(SnO+SnO)の含有量が0.01〜5wt%である場合、酸化鉄を含有していてもガラスの初期着色が起こり難く、さらに、酸化セリウムを含有していてもソラリゼーションが起こり難い。
上記ランプ用ガラスの製造方法において、ガラスの酸化鉄(Fe+FeO)の含有量が0.1wt%以下である場合、ガラスが初期着色を起こし難い。したがって、ガラスの着色により可視光の透過率が低下しランプ光束が低下する事態が起こり難い。
【0015】
上記ランプ用ガラスの製造方法において、ガラスの酸化セリウム(CeO+Ce)の含有量が0.5wt%以下である場合、ガラスがソラリゼーションを起こし難い。したがって、ガラスの着色により可視光の透過率が低下しランプ光束が低下する事態が起こり難い。
本発明に係るランプ用ガラスは、2mm厚における波長287nmの紫外線透過率が5%以下であるため紫外線遮断能力が高い。したがって、ランプ用ガラスとして好適である。
【0016】
本発明に係るランプ用ガラス管は、上記ランプ用ガラスからなるため、紫外線遮断性能が高く、ランプのガラスバルブ用として好適である。
本発明に係るランプは、上記ランプ用ガラス管をガラスバルブとして用いているため当該ガラスバルブの紫外線遮蔽性能が高く、ランプ外に紫外線が漏洩し難いため被照明物や灯具が褪色し難い。したがって、紫外線漏洩が深刻な問題となる衣料品や美術品等の展示照明用のランプとして特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るランプ用ガラスの製造方法、ランプ用ガラス、ランプ用ガラス管およびランプについて、図面に基づき説明する。
(ランプ用ガラスの説明)
図1は、本発明の実施の形態に係るガラス等の組成および特性を示す。本実施の形態に係るランプ用ガラスの組成は、図1におけるNo.1〜8に示すとおりである。
【0018】
なお、本発明に係るランプ用ガラスの組成は、No.1〜8に示す組成に限定されないが、ランプ用としての特性を保つためには、実質的に、酸化物換算で、SnO+SnO:0.01〜5wt%、Fe+FeO:0〜0.1wt%、CeO+Ce:0〜0.5wt%、SiO:55〜80wt%、B:0〜25wt%、Al:0〜10wt%、LiO+NaO+KO:0〜25wt%、LiO:0〜10wt%、NaO:0〜18wt%、KO:0〜15wt%、MgO:0〜10wt%、CaO:0〜10wt%、SrO:0〜10wt%、BaO:0〜10wt%、ZnO:0〜10wt%であることが好ましい。
【0019】
SnO+SnOは、ガラスにSnに起因する欠陥を生じさせる目的で添加する。SnO+SnOが0.01wt%よりも少ないと、Snに起因する欠陥を十分に生じさせることができない。また、SnO+SnOが5wt%よりも多いと、ガラスの溶融時に強い酸化性雰囲気となるため、CeやFeが酸化し易くガラスが初期着色を起こし易い。
CeO+Ceは、紫外線の透過を抑制する目的で添加される。CeO+Ceが0.5wt%より多いと、ガラスがソラリゼーションを起こし易い。
【0020】
Fe+FeOは、紫外線を吸収させる目的で添加される。Fe+FeOが、0.1wt%より多くなると、ガラスが初期着色を起こし易い。
SiOは、ガラス骨格を形成する目的で添加されている。SiOが55wt%より少ないと、熱膨張係数が高くなり過ぎ、化学的耐久性も劣化する。一方、SiOが80wt%より多いと、熱膨張係数が低くなり過ぎて加工が困難となる。
【0021】
は、ガラスの溶融性向上と粘度調整の目的で添加される。Bが25wt%より多いとガラスの化学的耐久性が低下する。Bの好ましい範囲は、ソーダガラスの場合は0〜5wt%、ホウケイ酸ガラスの場合は6〜25wt%である。
Alは、ガラスの耐候性および失透性を向上させる目的で添加される。Alが10wt%より多いと、ガラスの溶融性が悪化する。Alの好ましい範囲は2〜7wt%であり、この範囲であればランプ用としてより好適である。
【0022】
アルカリ金属酸化物であるLiO、NaOおよびKOは、ガラスの粘性を低下させ、溶融加工性を向上させる目的で添加される。LiO、NaOおよびKOの合計が25wt%より多くなると、ガラスの熱膨張係数が大きくなり過ぎる。また、ガラスからアルカリ成分が溶出し易くなり、当該アルカリ成分と蛍光体や水銀との反応量が増加し、ランプ光束が低下する。LiOの好ましい範囲は0〜10wt%、NaOの好ましい範囲は0〜18wt%、KOの好ましい範囲は0〜15wt%であり、これらの範囲であればランプ用としてより好適である。
【0023】
アルカリ土類金属酸化物であるMgOおよびCaOは、電気絶縁性および化学的耐久性を向上させる目的で添加される。いずれも10wt%より多くなるとガラスが失透し易い。
同じくアルカリ土類金属酸化物であるSrOおよびBaOは、ガラスの溶融性およびランプ作製時におけるガラスバルブの加工性を向上させる目的で添加される。いずれも10wt%より多くなるとガラスが失透し易い。
【0024】
なお、本発明に係るガラスは、紫外線遮断剤として、TiO、V、WOなどを含有させても良い。さらに、その他の成分として、例えば、ZnO、P、ZrO、Tb、MoO、Sb、PbO、As等を含有させても良い。但し、地球環境保護の観点から、Sb、PbOおよびAsは含有しない方が好ましい。
【0025】
(ランプ用ガラスの製造方法の説明)
以上のように説明した本発明に係るガラスは、所定の組成となるように調合したガラス原料をガラス溶融窯に投入し、例えば1500〜1600℃で溶融させ、ガラス化させて製造する。なお、酸化スズは必須のガラス原料である。得られたガラスをダンナー法等の管引き法によって管状に成形し、所定の寸法に切断してランプ用ガラス管を得る。
【0026】
次に、紫外線照射装置(例えば、殺菌灯)を用いて、前記ガラス管に波長254nmの紫外線を0.45mW/cmの照度で6時間照射し、前記ガラス管を形成するガラスに欠陥を生じさせる。欠陥は、上記条件で紫外線を照射すれば十分に生じさせることができる。これにより、紫外線照射後のガラスの2mm厚における波長287nmの紫外線透過率が5%以下になる。
【0027】
ESR(Electron Spin Resonance)スペクトルを測定したところ、例えば、組成がSnO+SnO:1.3wt%、Fe+FeO:0.04wt%、SiO:69.16wt%、B:0.8wt%、Al:1.5wt%、NaO:16.5wt%、KO:1.3wt%、MgO:3.0wt%、CaO:6.4wt%のガラスでは、照射前は信号強度(arbitary unit)が0であったのに対し照射後は信号強度が50000となり、ガラスに欠陥が生じていることが確認された。
【0028】
なお、ガラスに欠陥を生じさせる方法は上記方法限定されず、他の波長の紫外線、紫外線以外の電磁波、或いは粒子線を照射したりすることが考えられる。電磁波は公知の電磁波照射装置(例えば、紫外線照射装置、X線照射装置)を用いて、粒子線は公知の粒子線照射装置(例えば、電子線照射装置)を用いて照射することが考えられる。また、照射時間は6時間に限定されず、波長287nmの紫外線透過率を5%以下にするために十分な量を照射すれば良い。
【0029】
ガラスの欠陥を加熱により生じさせることも考えられる。例えば、ガラス原料をガラス溶融窯に投入後、当該ガラス溶融窯内の温度を溶融温度(例えば1500〜1600℃)まで上昇させる前に、溶融温度よりも低い温度(例えば、800〜1100℃)で0.5〜10時間加熱処理する方法が考えられる。前記加熱処理はガラス原料がガラス化する前に行う。
【0030】
図2は、紫外線照射前後のガラスの紫外線透過率を示す図である。図2に示すように、紫外線照射前のガラス(A)と紫外線照射後のガラス(B)とを比較すると、波長287nm付近をピークとする紫外線領域において透過率が低下していることがわかる。
このようにして得られたガラス管をガラスバルブとして用いて、公知のランプ製造方法により各種ランプを作製することができる。
【0031】
(ランプの説明)
本発明に係るランプの一実施形態として、直管形蛍光ランプについて図面に基づき説明する。図3は、本発明の一実施形態にかかる直管形蛍光ランプの要部構成を示す断面図である。図3に示すように、蛍光ランプ10の構造は、基本的に従来技術による蛍光ランプの構造に準じるものである。
【0032】
ガラスバルブ1には、本発明に係るガラスからなるランプ用ガラス管が用いられている。ガラスバルブ1の両端には、それぞれステム2が気密に封着されている。なお、各ステム2は、本発明に係るガラスからなるランプ用ガラスで作製されていてもよい。
各ステム2には、一対のリード線3が前記ステム2を貫通するようにして気密に封着されている。また、一対のリード線3のガラスバルブ内部側の端部間には、電子放射性物質が塗布されたフィラメント電極4が取り付けられている。
【0033】
ガラスバルブ1の両端部には、口金5が固定されており、これら口金5にはリ−ド線3と電気的に接続された口金ピン6が取り付けられている。ガラスバルブ1には、その内面に蛍光体層7が形成され、その内部に所定量の水銀(不図示)とアルゴン等の希ガス(不図示)とが封入されている。
以上、本発明に係る直管形蛍光ランプを実施の形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明の内容は、上記の実施の形態に限定されない。
【0034】
(実験の説明)
図1に示す各組成のガラスを作製し、波長254nmの紫外線照射前後のガラスの特性を評価した。実施例であるガラス1〜8は、本発明に係るガラスの組成範囲を満足するガラスである。一方、比較例であるガラス9は、SnO+SnOを含有しないガラス、すなわち本発明に係るガラスの組成範囲を満足しないガラスである。
【0035】
各ガラスは、図1に示す組成となるように調合したガラス原料をアルミナ坩堝で加熱溶融して得た。そして、得られたガラスを実験用の管引き装置により肉厚2mm、外径20mmに成形しガラス管を作製した。さらに、殺菌灯を用いて波長254nmの紫外線を0.45mW/cmの照度で6時間ガラス管に照射し、ガラスにSnに起因する欠陥を生じさせた。
【0036】
紫外線遮断性能は、波長287nmの紫外線の透過率により評価した。波長287nmとした理由は、欠陥で吸収される紫外線のピーク波長が287nm付近であるため、透過率の変化が大きく評価に適しているからである。紫外線透過率の測定は、ガラス管を半円筒形状にカットし、分光光度計を用いて測定した。
ガラスの初期着色およびソラリゼーションの有無は、目視により評価した。
【0037】
図1に示すように、実施例であるガラス1〜8の紫外線照射後の透過率は、紫外線照射前の透過率よりも低くなっている。すなわち、ガラスの紫外線遮断性能が向上している。
なお、蛍光ランプ10のガラスバルブ1内では、水銀の励起放射により主として波長254nmや波長313nm等の紫外線が発生する。したがって、紫外線の漏洩を効果的に防止するためには、それら波長の紫外線を遮断する性能が高いことが重要である。実施例であるガラス1〜8は、紫外線遮断性能の評価の指標とした波長287nmの紫外線の透過率だけでなく、波長254nmや波長313nmの紫外線を含む紫外域全体において紫外線透過率が低くなっていた。したがって、本発明に係るガラスは、ランプ用として有用であると評価することができる。
【0038】
ガラス1〜5は、SnO+SnOの含有量が5wt%以下であるため、紫外線照射後の波長287nmの紫外線の透過率が5%以下であり、灯具の樹脂部材の褪色も起こらなかった。また、ガラスの初期着色も、ソラリゼーションも認められなかった。
ガラス6は、SnO+SnOの含有量が5wt%を超えるため、紫外線照射後の波長287nmの紫外線の透過率は低いものの、ガラス溶融時に強い酸化性雰囲気となりFeおよびCeが酸化し易くなって、ガラスの初期着色およびソラリゼーションが僅かに起こった。
【0039】
ガラス7は、Fe+FeOの含有量が0.1wt%を超えるため、紫外線照射後の波長287nmの紫外線の透過率は低いものの、Feに起因するガラスの初期着色が僅かに起こった。
ガラス8は、CeO+Ceの含有量が0.5wt%を超えるため、紫外線照射後の波長287nmの紫外線の透過率は低いものの、Ceに起因するソラリゼーションが僅かに起こった。
【0040】
比較例であるガラス9は、SnO+SnOが含有していないため、紫外線照射前後で波長287nmの紫外線の透過率の変化に乏しく、紫外線遮断性能が向上しているとは言い難い。
次に、各ガラスを用いて32Wのコンパクト形蛍光ランプ(FHT32EX−N)を作製した。これらのランプを2000時間点灯させ、100時間点灯させた時点におけるランプ光束(初期光束)と2000時間点灯後におけるランプ光束とを評価した。さらに、それらランプ光束から光束維持率を算出した。また、2000時間点灯させた後、紫外線の漏洩によって灯具の樹脂部材が褪色・劣化を起こしているか否かを観察し評価した。
【0041】
その結果、実施例であるガラス1〜8は、2000時間点灯後も紫外線の漏洩による樹脂部材の褪色・劣化は認められず、ランプ光束および光束維持率も良好であった。一方、比較例であるガラス9は、紫外線の漏洩による樹脂部材の褪色・劣化が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のランプ用ガラスは、コンパクト形蛍光ランプ、環形蛍光ランプおよび直管形蛍光ランプなどの蛍光ランプや、蛍光ランプ以外の水銀蒸気放電ランプ等、ランプ全般に広く利用できる。また、本発明のランプ用ガラス管は、ガラスバルブやステム等のランプ用ガラス部品に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係るガラスの組成および特性を示す。
【図2】紫外線照射前後のガラスの紫外線透過率を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる蛍光ランプの要部構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ガラスバルブ
10 蛍光ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波照射装置または粒子線照射装置を用いて、酸化スズを含有するガラスに電磁波または粒子線を照射して欠陥を生じさせる工程を含むことを特徴とするランプ用ガラスの製造方法。
【請求項2】
照射後のガラスの2mm厚における波長287nmの紫外線透過率が5%以下となるように前記電磁波または粒子線を照射することを特徴とする請求項1記載のランプ用ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記電磁波は、紫外線またはX線の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1または2に記載のランプ用ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記ガラスの酸化スズの含有量が0.01〜5wt%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のランプ用ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記ガラスの酸化鉄の含有量が0.1wt%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のランプ用ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記ガラスの酸化セリウムの含有量が0.5wt%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のランプ用ガラスの製造方法。
【請求項7】
酸化スズを含有し、電磁波照射装置または粒子線照射装置を用いて電磁波または粒子線を照射することにより2mm厚における波長287nmの紫外線透過率を5%以下としたことを特徴とするランプ用ガラス。
【請求項8】
請求項7記載のランプ用ガラスからなることを特徴とするランプ用ガラス管。
【請求項9】
請求項8に記載のランプ用ガラス管をガラスバルブとして用いたことを特徴とするランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−24564(P2008−24564A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201111(P2006−201111)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】