説明

リアエンジンバスのエンジン支持装置

【課題】エンジンの仕様や形状の変化によりエンジンの支持位置を変更する必要がある場合でも、車体の大きな構造変更をすることなく、エンジンを高強度で支持可能にする。
【解決手段】エンジン支持装置10は、サイドメンバ14、16及びアウトリガ18に結合された支持ブラケット28、30と、支持ブラケット28、30間に架設された支持台32と、支持台32のウェブ32aの上面に固設されたエンジンサポート38、40とからなる。支持ブラケット28のウェブ28aがサイドメンバ14に結合され、フレーム18bがアウトリガ18のフレーム18aに結合されている。支持ブラケット30のウェブがサイドメンバ16に結合され、フランジ30bがアウトリガ18のフレーム18bに結合されている。エンジン本体42がエンジンマウント44を介してエンジンサポート38、40に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアエンジンバスにおいて、車体後部の床下に搭載されるエンジンの支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バスやトラック等の車体は、通常、下部のシャーシフレームと上部のボディーとが結合されて形成されている。シャーシフレームは、車体前後方向に配置された左右一対のサイドメンバと、これらを結ぶ複数のクロスメンバとのよって形成されている。
特許文献1には、バスやトラック等の車体後部に搭載されるエンジンの支持装置が開示されている。このエンジン支持装置は、左右一対のサイドメンバー間にU字形状のエンジンサポート部材を架設し、該エンジンサポート部材とクロスメンバ〜アウトリガ間に形成される空間にエンジンを配置し、エンジンを該エンジンサポート部材の上面にエンジンマウントを介してエンジンを固定した構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、バスの車体にエンジンを取り付けるエンジン組立方法が開示されている。この組立方法は、予めエンジンを左右一対のサイドメンバー間にエンジン支持フレーム及び該エンジン支持フレームにエンジンマウントが取り付けられており、エンジンをサイドメンバ上を滑らせ、エンジンが該エンジン支持フレームが設けられた組み立て位置に来た時、該組み立て位置でエンジンを該エンジン支持フレームに固定するようにしたものである。
【0004】
バス車体後部の床下にエンジンを搭載したリアエンジンバスにおける、従来のエンジン支持装置を図5により説明する。図5は、路線バス100の後部床下のシャーシフレーム101の構造を示す。図5において、車体前後方向に一対のサイドメンバ104及び105が平行に配設され、アウトリガ106が該サイドメンバと直交する方向、即ち車幅方向に配置され、該サイドメンバ間に架設されている。
【0005】
アウトリガ106には、エンジンの配置箇所を除き防熱パネル108が張設されて、エンジンルームフロントパネル110を構成している。エンジンルームフロントパネル110は、エンジンルーム112とエンジンルーム前方の床下空間とを仕切っている。これによって、エンジンが発する熱がエンジンルームを越えて他の領域に発散されるのを抑制している。
【0006】
アウトリガ106の両端に設けられたフレーム106a及び106bの外側面には、車体ボディが接合され、車体ボディをアウトリガ106で強固に支持している。サイドメンバ104、105には、車幅方向に配置されたクロスメンバ114及びアウトリガ116が架設されている。車体後端に配置されたアウトリガ116には、車体後端を形成する車体ボディが結合される。
【0007】
エンジンルームフロントパネル110の一部を構成するエンジンサポート材118に、一対のエンジンサポート120及び122が取り付けられている。エンジンサポート120、122は、エンジンマウントを固定する傾斜した支持面が向い合わせに配置されている。また、該エンジンサポートの後方のサイドメンバ104、105に、夫々エンジンサポート124及び126が取り付けられている。これら4個のエンジンサポートに、エンジンマウントを介してエンジン(図示省略)が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−282531号公報
【特許文献2】特表2002−520208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、大きな重量を有するエンジンを高強度を有するアウトリガ106の一部を構成するエンジンサポート材118に支持させることで、エンジンの支持強度を高めていた。しかし、エンジンの馬力が変ったり、あるいは手動クラッチ式からオートマ化への移行措置等により、エンジンの構造や形状、大きさが変更されてきており、このような場合、エンジンの支持位置が車体前後方向に変更される。そのため、エンジンをアウトリガ106に直接装着することができなくなるという問題がある。
【0010】
この対策として、エンジンの支持位置の変化に合わせて、アウトリガの車体前後方向位置を変更する案が考えられる。しかし、アウトリガは車体ボディを支持させるバス車体の基本的な部材であり、アウトリガの位置を変更すると、車体全体の大幅な構造変更を余儀なくされる。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、リアエンジンバスにおいて、エンジンの仕様や形状の変化によりエンジンの支持位置を変更する必要がある場合でも、車体の大きな構造変更をすることなく、エンジンを高強度で支持可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するため、本発明のリアエンジンバスのエンジン支持装置は、
車体後部の床下に配置されたエンジンをシャーシフレームに支持させるリアエンジンバスのエンジン支持装置において、
互いに交差する方向に配置された2つの接合面が形成され、一方の接合面が車体前後方向に配置された一対のサイドメンバに夫々接合され、他方の接合面が該サイドメンバと交差する方向に配置されたアウトリガに接合された一対の支持ブラケットと、
該一対の支持ブラケット間に架設されると共に、上面に一対のエンジンサポートが向い合わせに装着され、該エンジンサポートでエンジンマウントを介してエンジンを支持する支持台とからなるものである。
【0013】
本発明装置では、エンジンサポートを直接アウトリガに取り付けることができない場合でも、前記支持ブラケット間に架設された支持台にエンジンを装着することができる。しかも、該支持ブラケットは、サイドメンバとアウトリガとに接合され、サイドメンバ及びアウトリガよって支持されているので、エンジンの重量に対して十分な強度を有する。
【0014】
本発明装置において、支持ブラケットがL字形状又はコ字形状の断面を有する形鋼からなり、該形鋼の一片がサイドメンバに接合され、該の他の一片がアウトリガに接合されているとよい。通常、アウトリガはサイドメンバに対して直交する方向に交差して固設されるが、支持ブラケットを前記構成を有する形鋼で構成することにより、支持ブラケットのサイドメンバ及びアウトリガへの接合が容易になる。また、支持ブラケットの形状を簡素化できる。
【0015】
本発明装置において、エンジンサポートの傾斜面にエンジンマウントをボルト結合すると共に、エンジンサポートが装着された部位の支持台の隔壁に作業用孔を穿設するようにするとよい。このように、該作業孔をもうけることにより、エンジンマウントをエンジンサポートに固定するボルトのメンテナンスが容易になると共に、支持台に対するエンジンサポートの装着部のメンテナンスも容易になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明装置によれば、車体後部の床下に配置されたエンジンをシャーシフレームに支持させるリアエンジンバスのエンジン支持装置において、互いに交差する方向に配置された2つの接合面が形成され、一方の接合面が車体前後方向に配置された一対のサイドメンバに夫々接合され、他方の接合面が該サイドメンバと交差する方向に配置されたアウトリガに接合された一対の支持ブラケットと、該一対の支持ブラケット間に架設されると共に、上面に一対のエンジンサポートが向い合わせに装着され、該エンジンサポートでエンジンマウントを介してエンジンを支持する支持台とからなるので、エンジンの支持位置が変わっても、車体構造に大きな変更を行なうことなく、エンジンを高強度な支持機構でシャーシフレームに固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明装置をリアエンジンを搭載した路線バスに適用した一実施形態に係り、エンジン及びエンジン支持装置を車体前方から視た正面図である。
【図2】前記実施形態におけるエンジン支持装置を車体後側斜め下方から視た斜視図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】前記実施形態の別な部分の一部拡大斜視図である。
【図5】従来のリアエンジンバスのエンジン支持装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0019】
(実施形態)
本実施形態のエンジン支持装置10は、リアエンジンを搭載した路線バスに適用した例であり、以下その構成を図1〜図4に基づいて説明する。図1及び図2において、一対のサイドメンバ14及び16が互いに間隔を置いて車体前後方向に並列に配設されている。これらサイドメンバ14、16と直角方向に、即ち車幅方向に交差するようにアウトリガ18が配設されている。アウトリガ18の一部を構成し上下方向に配置された中空角形断面を有するフレーム18a及び18bが、夫々サイドメンバ14及び16に固着されている。
【0020】
アウトリガ18には防熱パネル20が張設されて、エンジンルームフロントパネル22を形成している。エンジンルームフロントパネル22によって、路線バスの車体後部の床下にエンジンルームを形成すると共に、エンジンから発散される熱が車体の前方側に伝わるのをエンジンルームフロントパネル22で抑制するようにしている。また、アウトリガ18の車体左側部位には、マフラーハンガーブラケット23が装着されている。
【0021】
アウトリガ18の車幅方向両端部を形成するフレーム18c及び18dは、上端が微小量車体中央側に微小角度傾斜している。フレーム18c、18dの外側面に車体ボディが嵌合されて結合される。サイドメンバ14及び16はコ字形状の断面を有し、サイドメンバ14、16のウェブ14a、16aにフレーム18a、18bが固着されている。サイドメンバ14、16には、車幅方向に配置されたクロスメンバ24及びアウトリガ26が架設されている。サイドメンバ14、16の後端に架設されたアウトリガ26には、車体後端を形成する図示省略の車体ボディが取り付けられる。
【0022】
図3に示すように、アウトリガ18より車体後側でフレーム18aに隣接した位置に、上下方向にコ字形状の断面を有する支持ブラケット28が設けられている。即ち、支持ブラケット28を構成するウェブ28aがサイドメンバ14のウェブ14aに溶接されている。また、ウェブ28aと直交したフランジ28bが、サイドメンバ14のウェブ14aと直交した方向に配置されているフレーム18aに溶接されている。
【0023】
また、図4に示すように、アウトリガ18より後側でフレーム18bに隣接した位置に、上下方向にL字形状の断面を有する支持ブラケット30が設けられている。即ち、支持ブラケット30のウェブ30aがサイドメンバ16のウェブ16aに溶接されている。また、ウェブ30aと直交したフランジ30bが、サイドメンバ16のウェブ16aと直交した方向に配置されているフレーム18bに溶接されている。支持ブラケット28と支持ブラケット30間には、コ字形状断面を有する形鋼からなる支持台32が架設されている。
【0024】
図3に示すように、支持ブラケット28のウェブ28aには、下端にフランジ34aを有する補強板34が溶接されている。支持ブラケット28の下端には下部フランジ28cが設けられ、下部フランジ28c及びフランジ34aには、夫々2個の取付孔28d及び34bが穿設されている。一方、支持台32のウェブ32aに該取付孔28d、34bに対応する位置に取付孔32bが穿設されている。これら取付孔を介して支持ブラケット28と支持台32とがナット36で結合されている。
【0025】
支持ブラケット28と支持台32との結合部近傍で、支持台32のウェブ32aの上面に、エンジンサポート38が装着されている。エンジンサポート38の側面に溶接孔38bが穿設されており、エンジンサポート38は、該溶接孔38bで支持台32に線溶接されている。また、支持台32の他端でウェブ32aの上面に、エンジンサポート40が装着されている。エンジンサポート40の側面に溶接孔40bが穿設されており、エンジンサポート40は、該溶接孔40bで支持台32に線溶接されている。
【0026】
エンジンサポート38及び40には、互いに向かい合う方向に傾斜した支持面38a及び40aを備えている。
図1に示すように、これら支持面38a、40aにエンジン本体42がエンジンマウント44を介して固定されている。
【0027】
図4に示すように、支持ブラケット30及びエンジンサポート40の背面40cには取付孔30c及び40dが穿設されている。支持ブラケット30と支持台32とは、間に取付ブラケット46を介してボルト48により結合される。取付ブラケット46の上端にはフランジ46aが形成されており、ボルト49によりこのフランジ46aがサイドメンバ16のフランジ16aに結合されている(図2参照)。また、エンジンサポート38及び40を装着した部位の支持台32のウェブ32aには、作業用孔50及び52が穿設されている。
【0028】
エンジンサポート38、40よりさらに車体後方で、サイドメンバ14にエンジンサポート54が装着されていると共に、サイドメンバ16にエンジンサポート56が装着されている。エンジン本体42は、4個のエンジンサポート38、40、54及び56でエンジンマウント44を介してシャーシフレームに固定されている。
【0029】
エンジン支持装置10はかかる構成を有し、支持ブラケット28及び30に両端を結合された支持台32でエンジン本体42の前側端部を支持している。そのため、エンジンの仕様変更により、アウトリガ18の配置位置から車体前後方向に外れた位置にエンジンマウント38、40を配置する必要が生じた場合でも、エンジン本体42の固定が可能になる。
【0030】
また、支持ブラケット28は、コ字形状断面を有し、支持ブラケット28のウェブ28aがサイドメンバ14に結合されていると共に、支持ブラケット28のフランジ28bがアウトリガ18を構成するフレーム18aに結合されているので、支持台32の支持強度を従来どおりに高く維持できる。
【0031】
また、L字断面を有する支持ブラケット30も、そのウェブ30aがサイドメンバ16に結合されていると共に、支持ブラケット30のフランジ30bがアウトリガ18を構成するフレーム18bに結合されているので、支持ブラケット28と同様支持台32の支持強度を従来どおりに高く維持できる。
さらに、支持ブラケット30は、取付ブラケット46を介してサイドメンバ16にボルト結合されているので、支持ブラケット30の取付強度をさらに高めることができる。
【0032】
また、支持ブラケット28及び30は、L字形状又はコ字形状の断面を有する簡単な形状の形鋼からなり、本実施形態のエンジン支持装置10を低コストで製造できる。
また、エンジンサポート38、40が装着された部位の支持台32のウェブ32aに、作業用孔50及び52が穿設されているので、エンジンマウント44をエンジンサポート38、40に結合しているボルト(図示省略)や、エンジンサポート40を支持ブラケット30に結合しているボルト48等の固定具のメンテナンスが容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、リアエンジンバスにおいて、エンジンの形状や構造が変更されても、エンジンをシャーシフレームに高強度で固定できるエンジン支持装置を実現できる。
【符号の説明】
【0034】
10 エンジン支持装置
14,16 サイドメンバ
14a、16a ウェブ
18 アウトリガ
18a、18b、18c、18d フレーム
20 防熱パネル
22 エンジンルームフロントパネル
23 マフラーハンガーブラケット
24 クロスメンバ
26 アウトリガ
28,30 支持ブラケット
28a、30a ウェブ
28b、30b フランジ
28d、30c、32b、34b、40d 取付孔
32 支持台
32a ウェブ
34 補強板
34a フランジ
36、48,49 ボルト
38,40、54,56 エンジンサポート
38a、40a 支持面(傾斜面)
38b、40b 溶接孔
40c 背面
42 エンジン本体
44 エンジンマウント
46 取付ブラケット
50,52 作業用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の床下に配置されたエンジンをシャーシフレームに支持させるリアエンジンバスのエンジン支持装置において、
互いに交差する方向に配置された2つの接合面が形成され、一方の接合面が車体前後方向に配置された一対のサイドメンバに夫々接合され、他方の接合面が該サイドメンバと交差する方向に配置されたアウトリガに接合された一対の支持ブラケットと、
該一対の支持ブラケット間に架設されると共に、上面に一対のエンジンサポートが向い合わせに装着され、該エンジンサポートでエンジンマウントを介してエンジンを支持する支持台とからなることを特徴とするリアエンジンバスのエンジン支持装置。
【請求項2】
前記支持ブラケットがL字形状又はコ字形状の断面を有する形鋼からなり、該形鋼の一片がサイドメンバに接合され、該の他の一片がアウトリガに接合されていることを特徴とする請求項1に記載のリアエンジンバスのエンジン支持装置。
【請求項3】
前記エンジンサポートの傾斜面に前記エンジンマウントをボルト結合すると共に、エンジンサポートが装着された部位の支持台の隔壁に作業用孔を穿設したことを特徴とする請求項1に記載のリアエンジンバスのエンジン支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−121441(P2011−121441A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279635(P2009−279635)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】