説明

リアプロジェクション装置

【課題】投影する画像の揺らぎを効果的に抑制したリアプロジェクション装置を提供する。
【解決手段】投射レンズユニット10は、金属などで形成した保持部材14に集束レンズ鏡筒27、ミラー保持枠22、第二レンズ保持枠13を組み付けて一体的に構成されている。投射レンズユニット10は、この保持部材14により装置本体に固定された光学エンジンの画像光生成ユニットに取り付けられる。このため、集束光学系15、反射光学系、拡散光学系24はそれぞれ保持部材14を介して強固に固定されており、また、保持部材14は高い剛性を有するため、振動を効果的に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに表示した画像の振動を抑制するリアプロジェクション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面テレビとして、リアプロジェクションテレビが注目されている。リアプロジェクションテレビは、筐体に組み込まれたスクリーンと、スクリーンの背後に設置された平面鏡と、プロジェクタの機能を有し、平面鏡に向けて画像光を投映する光学エンジンとから構成されている。光学エンジンは、高輝度光源の光から均一照明光をつくる照明光学系と、照明光を3色に分離して画像表示素子によってそれぞれに画像情報を付与した上で合成する色分離・合成光学系と、こうしてできた画像光を平面鏡へと拡大投射する投射レンズユニットを有する投射光学系とを有している。
【0003】
リアプロジェクションテレビは、液晶テレビやプラズマテレビなどの影響を受けて薄型化が要求されている。この要求を満たすためには、リアプロジェクションテレビに超短焦点の投射レンズを用いる必要があるが、このようなレンズは、形状が大きく、重量も増加する。このため、安価なプラスチックで形成した鏡筒にレンズを収納した場合は、剛性が弱く、スピーカが発する重低音などによりレンズが振動するという問題があった。とりわけ、レンズ保持枠などを連結した場合は連結部の強度不足のため、この問題は深刻であった。
【0004】
従来の投射レンズユニットは、例えば図6のように、反射ミラー60を保持するミラー保持枠54に、投射レンズである第一レンズ56を保持する第一レンズ保持枠52と第二レンズ57、第三レンズ58、第四レンズ59を保持する第二レンズ保持枠53とからなる投射レンズ鏡筒51と、集束レンズ55を保持する集束レンズ鏡筒66に接続された連結筒62とが一体的に取り付けられた構造を有している。このため、最大サイズを有する第一レンズ56を保持する第一レンズ保持枠52が振動すると、その振動は第二レンズ57から第四レンズ59までを保持する第二レンズ保持枠53へ伝わって、最悪の場合はミラー保持枠54及び連結筒62を経由して集束レンズ55まで振動することがある。画像光は、光軸L1に沿って光学エンジンの色分離系・合成光学系から集束レンズ55へ入射し、反射ミラー60で反射されて光軸L2に沿って4つの投射レンズ56、57、58、59によりスクリーンへと投射されるが、このような振動が発生した状態ではスクリーンに表示される画像が揺らいでしまい、品質を著しく損なうこととなる。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1では、投射レンズの鏡筒と集束レンズの鏡筒との締結構造を設けることにより、レンズの振動を抑制するリアプロジェクションテレビが提案されている。
【特許文献1】特開2005−352293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、投射レンズの鏡筒と集束レンズの鏡筒を締結しただけでは、投射レンズの振動がやや緩和するものの、締結部材自体は剛性が弱いため、設計によっては締結部材を介して投射レンズの鏡筒から集束レンズの鏡筒へとかえって振動が伝播する可能性がある。この場合、2つの鏡筒のレンズが振動し、結局はスクリーンに表示される画像が揺らいでしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、投影する画像の揺らぎを効果的に抑制したリアプロジェクション装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のリアプロジェクション装置において、投射レンズユニットは、第一保持枠に保持した集束レンズによって画像光に含まれる光線を集束させる集束光学系と、第二保持枠に保持した反射ミラーによって前記集束光学系から入射した光線を所定の方向へ反射する反射光学系と、第三保持枠に保持した投射レンズによって前記反射光学系から入射した光線を拡散して投射する拡散光学系とを有し、前記第一保持枠と前記第二保持枠と前記第三保持枠とを、金属などの合成を有する素材で形成した共通の保持部材にそれぞれ組み付けることで一体的に構成されている。ここで、前記第一保持枠と前記第二保持枠とが板金などで形成した締結部材により締結してもよい。
【0009】
さらに、このリアプロジェクション装置において、装置本体に固定され、前記画像光を生成するとともに前記投射レンズユニットと接続して前記集束光学系へ画像光を出射する画像光生成ユニットを備え、前記保持部材は、組み付けられた前記第一保持枠の近傍に、前記画像光生成ユニットと接続するための接続部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
このようなリアプロジェクション装置では、投射レンズユニットを構成する各光学系の保持枠を共通の保持部材に組み付けているため、各保持枠が高い剛性を有して高精度に位置及び姿勢を保持されると同時に、保持枠間で振動が直接伝播することがない。したがって、効果的に振動を抑制することができる。また、この保持部材を金属で形成することで保持部材自体の剛性を向上し、投射レンズユニット全体の強度と剛性をさらに高めることができる。さらに、画像光が所定の光軸に沿って入射してくる集束光学系の保持枠と、画像の揺らぎへの寄与が大きい反射光学系の保持枠とを締結部材で締結して、投射レンズユニットが前記第一保持枠の近傍において、画像光を出射する画像光生成ユニットと接続することで、さらに振動抑制の効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1において、リアプロジェクション装置1は、筐体2の前面に設けられたスクリーン4と、スクリーン4の背後に設けられた平面鏡5と、固定部7を介して装置本体である筐体2の底部に固定された光学エンジン3とを備えている。平面鏡5は、斜め45度よりもスクリーン4と平行に近い姿勢に傾斜して取り付けられている。光学エンジン3は、画像光の生成を行う画像生成ユニット6と、画像光を投射する投射レンズユニット10とを接続することで構成されている。光学エンジン3は、投射レンズユニット10から投射される画像光の光軸がスクリーン4に対して傾斜して組み込まれており、画像光は平面鏡5で反射されて、スクリーン4に画像が投影される。ここで、画像はスクリーン4の背面に左右反転して投影されるが、画像は正面から見ると正しく表示されている。
【0012】
図2は、光学エンジン3の構成の概略を示す斜視図である。この光学エンジン3は、前述した画像生成ユニット6を構成する光源装置30、照明光学系31、色分離・合成光学系32と、投射レンズユニット10を構成する投影光学系39とからなる。光源装置30には、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプなどの高輝度光源が用途に応じて使用される。光源装置30からの出射光は、照明光学系31を透過して強度の均一な照明光となる。照明光学系31は、フライアイレンズや偏光変換素子、コンデンサレンズなどを備えている。
【0013】
色分離・合成光学系32は、ダイクロイックミラー33、偏光プリズム34、ダイクロイックプリズム35、合成プリズム36等を備えている。ダイクロイックミラー33は、白色照明光を青色照明光とイエロー照明光とに分離する。青色照明光はダイクロイックミラー33を透過して直進し、イエロー照明光はダイクロイックミラー33を反射して直角方向に進行する。
【0014】
偏光プリズム34は、青色照明光の進行方向に対して45度に傾斜した偏光反射面34aを有し、ダイクロイックミラー33を透過した青色照明光を液晶表示素子38Bに向けて反射するとともに、液晶表示素子38Bを反射した画像情報を有する青色投影光を透過させる。
【0015】
ダイクロイックプリズム35は、ダイクロイックミラー33を反射したイエロー照明光を赤色照明光と緑色照明光とに分離するダイクロイック面35aを有する。液晶表示素子38Gは、ダイクロイック面35aを反射した緑色照明光を、画像情報を有する緑色投影光に変調する。液晶表示素子38Rは、ダイクロイック面35aを透過した赤色照明光を、画像情報を有する赤色投影光に変調する。液晶表示素子38Gから出射された緑色投影光は、ダイクロイック面35aを透過して直進し、液晶表示素子38Rから出射された赤色投影光は、ダイクロイック面35aを反射して直角方向に進行して二色の投影光が合成される。
【0016】
合成プリズム36は、偏光プリズム34から入射した青色投影光と、ダイクロイックプリズム35から入射した赤色・緑色投影光を、フルカラーの画像情報を有する画像光として合成する。合成した画像光は、投射レンズユニット10の集束光学系15へと出射される。
【0017】
液晶表示素子38B,38G,38Rは、多数の液晶画素がマトリクス状に配列されて構成され、各色照明光を画素ごとに変調し、照明光に画像情報を付与する。3枚の液晶表示素子により、各色の照明光は画像情報を有する投影光に変調される。各液晶表示素子は、例えば16対9のアスペクト比を有する長方形状の表示画面を有しており、互いの表示画面の短辺が平行となる横長姿勢で配置されている。
【0018】
投影光学系39は、集束光学系15、反射光学系(すなわち反射ミラー20)、拡散光学系24とからなり、画像光生成ユニット6と接続して、この画像光生成ユニット6に実装された合成プリズム36から入射する画像光を平面鏡5に投射する機能を有する。図3、図4、図5のように、集束光学系15、反射ミラー20、拡散光学系24は共通の保持部材14に組み付けられて投射レンズユニット10として一体的に構成されている。
【0019】
集束光学系15は、レンズ保持枠である集束レンズ鏡筒27に保持された集束レンズ25であり、合成プリズム36から入射してくる画像光に含まれる光線を集束させて光軸L1に沿って反射ミラー20へと出射する。反射ミラー20はミラー保持枠22に保持されており、集束光学系15から光軸L1に沿って入射してくる画像光が光軸L2に沿って拡散光学系24へと入射するように反射する。なお、集束光学系15とミラー保持枠22は、連結筒23によって連結されており、集束レンズ25により集束された光線が漏れなく反射ミラー20へ到達するようになっている。また、集束レンズ15は、1枚とは限られず、設計に応じて適当なレンズの種類及び枚数で構成されるものである。
【0020】
また、拡散光学系24は、略円筒形状の第一レンズ保持枠12に保持された第一レンズ16と、第一レンズ保持枠12よりも小さい径を有した第二レンズ保持枠13に保持された第二レンズ17、第三レンズ18、第四レンズ19とからなり、光軸L2に沿って入射してくる光線を拡散して平面鏡5へと投射する。第一レンズ保持枠12と第二レンズ保持枠13は、互いの円環部分を重ねるようにして嵌合された上、側面側から止め具21によって固定されており、前述した4つの投射レンズ16、17、18、19の投射レンズ鏡筒11として機能する。なお、投射レンズ16、17、18、19は本実施形態では4枚としたが、これに限定されるものではなくリアプロジェクション装置の設計に応じて適宜決定されるものである。
【0021】
保持部材14は、金属で形成した第一厚板14dと第二厚板14eを直角に組み合わせて構成されている。第一厚板14dと第二厚板14eとには、それぞれ開口14a、14bが設けられており、集束レンズ鏡筒27及び第二レンズ保持枠13が各々嵌入されて保持されている。ここで、連結筒23は、集束レンズ鏡筒27とともに一部が、この開口14aに嵌入されている。また、第二レンズ保持枠13は、開口14bの縁に設けられた円環状の側壁14cの一部において止め具21により固定されている。さらに、第二レンズ保持枠13の下方には、ミラー保持枠22が螺子止め又は接着などの手段によって第二厚板14eの下面に取り付けられて保持されている。このように、投射レンズユニット10は、保持部材14に集束レンズ鏡筒27、ミラー保持枠22、第二レンズ保持枠13を組み付けて一体的に構成されている。
【0022】
集束レンズ鏡筒27を嵌入した第一厚板14dの周囲には、画像光生成ユニット6との接続部としてフランジ14fが設けられている。このフランジ14fの四隅には取り付け穴26が設けられており、螺子止めなどの手段により画像光生成ユニット6と接続される。したがって、集束光学系15は集束レンズ鏡筒27の近傍において画像光生成ユニット6と強固に接続されるとともに、反射光学系、拡散光学系24もそれぞれ保持部材14を介して強固に固定されており、さらに、保持部材14は高い剛性を有するため、第一レンズ16などの振動を効果的に抑制することができる。また、投射レンズユニット10の側面には、例えば板金などで形成した補強板29が、締結部材として、ミラー保持枠22と集束レンズ鏡筒27を締結するように複数の螺子28で固定されている。これにより、投射レンズユニット10は、強度がさらに高められている。なお、集束レンズ鏡筒27の側面には、図3のように補強板29を螺子28で固定するための螺子穴27aが設けられている。
【0023】
このように構成されたリアプロジェクション装置1では、合成プリズム36によって合成された画像光が集束光学系15に入射する。集束光学系15を透過した画像光は、反射ミラー20によって画像光の光軸方向が光軸L1から光軸L2となるように反射された後、拡散光学系24に入射する。拡散光学系24は、反射ミラー20によって反射された画像光を平面鏡5に向けて出射する。これにより、画像光はスクリーン4上で結像される。
【0024】
このようなリアプロジェクション装置1は、光学系の保持枠同士の連結構造を有さず、前述した投射レンズユニット10が高い強度を有しているために、径の大きな投射レンズを使用していても振動を効果的に抑制することができ、スクリーン4の投影画像がほとんど揺らぐことがない。したがって、ユーザーは快適に画像を鑑賞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のリアプロジェクション装置の光学系の構成を示す内部の側面図である。
【図2】光学エンジンの光学系の構成である。
【図3】投射レンズユニットの側方断面図である。
【図4】投射レンズユニットの側面図である。
【図5】投射レンズユニットの斜視図である。
【図6】従来の投射レンズユニットの側方断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 リアプロジェクション装置
2 筐体
3 光学エンジン
4 スクリーン
6 画像光生成ユニット
10 投射レンズユニット
11 投射レンズ鏡筒
12 第一レンズ保持枠
13 第二レンズ保持枠
14 保持部材
14f フランジ
15 集束光学系
16 第一レンズ
17 第二レンズ
18 第三レンズ
19 第四レンズ
20 反射ミラー
22 ミラー保持枠
23 連結筒
24 拡散光学系
25 集束レンズ
29 補強板
30 光源装置
31 照明光学系
32 色分離・合成光学系
39 投影光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射レンズユニットからスクリーンの背面に画像を投映して表示するリアプロジェクション装置において、
前記投射レンズユニットは、第一保持枠に保持した集束レンズによって画像光に含まれる光線を集束させる集束光学系と、第二保持枠に保持した反射ミラーによって前記集束光学系から入射した光線を所定の方向へ反射する反射光学系と、第三保持枠に保持した投射レンズによって前記反射光学系から入射した光線を拡散して投射する拡散光学系とを有し、前記第一保持枠と前記第二保持枠と前記第三保持枠とを共通の保持部材にそれぞれ組み付けることで一体的に構成されていることを特徴とするリアプロジェクション装置。
【請求項2】
前記保持部材は、金属で形成されていることを特徴とする請求項1記載のリアプロジェクション装置。
【請求項3】
前記第一保持枠と前記第二保持枠とが締結部材により締結されていることを特徴とする請求項1または2記載のリアプロジェクション装置。
【請求項4】
装置本体に固定され、前記画像光を生成するとともに前記投射レンズユニットと接続して前記集束光学系へ画像光を出射する画像光生成ユニットを備え、
前記保持部材は、組み付けられた前記第一保持枠の近傍に、前記画像光生成ユニットと接続するための接続部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載のリアプロジェクション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−180749(P2008−180749A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12155(P2007−12155)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】