リクライニング装置
【課題】ラチェットプレートからのポールの抜け性がよく、操作フィーリングが向上するリクライニング装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ポールの33複数の外歯57のうち、端から少なくとも一枚の外歯57’の歯厚が他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成され、前記歯厚が薄く形成された外歯57’は、2つある歯面のうちの前記端側の歯面57”がカットされ、前記カットされた歯面57”には、前記歯厚が薄い外歯に隣接する歯厚が厚い外歯の2つある歯面のうちの前記歯厚が薄い外歯側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面と平行な倒し面TMを有する。
【解決手段】ポールの33複数の外歯57のうち、端から少なくとも一枚の外歯57’の歯厚が他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成され、前記歯厚が薄く形成された外歯57’は、2つある歯面のうちの前記端側の歯面57”がカットされ、前記カットされた歯面57”には、前記歯厚が薄い外歯に隣接する歯厚が厚い外歯の2つある歯面のうちの前記歯厚が薄い外歯側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面と平行な倒し面TMを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯と外歯との噛合によりロック状態となるリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11−図12を用いて説明する。図11はシートの構成図、図12は従来の車両のシート用のリクライニング装置の側面図である。
【0003】
図11に示すように、シート101は、着座者の臀部を支持するシートクッション102と、シートクッション102に対して前後方向に傾動可能に設けられ、着座者の背部を支持するシートバック103とからなっている。104はシートバック103の傾動の回転軸上に設けられ、シートバック103の傾動を許可/禁止するリクライニング装置である。
【0004】
図12を用いて、リクライニング装置104を説明する。図において、シートクッション側に設けられるロアアームの後部に取付けられるロアアームプレート(第2部材)130には、ヒンジピン131が立設されている。ヒンジピン131には、シートバック側に設けられるアッパアームに固着されるラチェットプレート(第1部材)132が回転可能に設けられている。このラチェットプレート132の下部には、ヒンジピン131を中心とする円弧面を有する凹部が形成され、円弧面には、周方向に複数の内歯133が形成されている。
【0005】
ロアアームプレート130,ラチェットプレート132との間には、ポール134が配置される。ポール134のラチェットプレー ト132の円弧面と対向する面には、内歯133に噛合可能な複数の外歯135が形成されている。
【0006】
一方、ロアアームプレート130には、外歯135が内歯133に噛合するロック位置,外歯135が内歯133に噛合しないロック解除位置の間で、ポール134をヒンジピン131を中心とする円の半径方向に案内するガイド136、137が形成されている。
【0007】
ヒンジピン131に回転可能に設けられたレリーズアーム142には、ラチェットプレート132に形成され、ヒンジピン131を中心とする円弧状の長穴132eを挿通するポール134のピン140が係合する長穴143が形成されている。この長穴143の形状は、ラチェットプレート132の内歯133に近い部分と、内歯133より離れた部分とを有し、レリーズアーム142が回転することにより、ポール134がヒンジピン131を中心とした円の半径方向に移動し、ポール134の外歯135がラチェットプレート132の内歯133に噛合したり、噛合しないようにしたり設定されている。
【0008】
ヒンジピン131には、第1のカム144が回転可能に取り付けられている。
【0009】
ポール134の外歯135が形成された側と反対側の斜面と第1カム144との間には、第2のカム141が設けられている。ポール134の斜面は、円の半径方向と交差する面である。
【0010】
レリーズアーム142は、一方の端部がレリーズアーム142に係止され、他方の端部がロアアームプレート130に係止された付勢手段としてのスプリング150によって、第1のカム144が第2のカム141を介してポール134を押圧する方向の付勢力を与えられている。
【0011】
又、ヒンジピン131の端面には溝が形成され、外端部がラチェットプレート132に立設されたピン155に外端部が係止されたスパイラルスプリング156の内端部がこの溝に係止され、ラチェットプレート132(アッパアーム)を前倒れ方向に付勢している。
【0012】
次に、上記構成の作動を説明する。図12に示す状態は、第1のカム144が、第1のカム144の斜面,ガイド137,ポール134にそれぞれ当接する第2のカム141を介してポール134を押し、ポール134の外歯135がラチェットプレート132の内歯133に噛合し、ラチェットプレート132の回転が禁止され、シートバック103のリクライニング(傾動)がロックされた状態である。
【0013】
この状態より、実線位置にあるレリーズアーム142をスプリング150の付勢力に抗して二点鎖線位置まで回転させると、レリーズアーム142に係合する第1のカム144が同方向に回転し、第1のカム144の第2のカム141を介してポール134を押圧する状態が解除される。
【0014】
又、レリーズアーム142の長穴143に係合するピン140を有するポール134もガイド136,137に案内されヒンジピン131方向へ移動し、ポール134の外歯1 35とラチェットプレート132の内歯133との噛合状態が解除され、ラチェットプレート132(シートバック103)は傾動可能な状態となる。
【0015】
着座者は所望のシートバック103を傾動させ、所望の傾動角を得たならば、レリーズアーム142の操作力を解除する。するとスプリング150の付勢力によって、レリーズアーム142は二点鎖線位置から実線位置に復帰し、第1のカム144は先程とは逆方向に回転し、図12の状態に復帰する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平08−019442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、ポール134に形成された複数の外歯135の歯型は、同一形状である。よって、端の方の外歯135の歯面(外歯135の内歯133と噛み合う面)と、ポール134の移動方向とのなす角度が小さくなる。
【0018】
着座者がシートバック103にもたれていると、負荷がラチェットプレート132を介してポール134へ伝達される。このとき、ラチェットプレート132の内歯133からポール134の端の方の外歯135への入力に対してポール133の移動方向への分力が小さくなる。よって、ポール134の外歯135とラチェットプレート132の内歯133との噛合状態の解除(以下、ラチェットプレート132からのポール134の抜け性という)が悪化する問題点がある。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ラチェットプレートからのポールの抜け性がよく、操作フィーリングが向上するリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する請求項1に係る発明は、ベースプレートと、該ベースプレートに対して回転可能に重ねられ、前記ベースプレートとの対向面には、回転中心軸を中心とする円弧面を有する凹部が形成され、該凹部の円弧面には周方向に内歯が形成されたラチェットプレートと、前記ラチェットプレートの前記凹部に配置され、前記円弧面と対向する面に前記内歯に噛合可能な複数の外歯が形成され、該複数の外歯のうち、端から少なくとも一枚の外歯の歯厚が他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成されたポールと、前記ベースプレートに設けられ、前記外歯が前記内歯に噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯に噛合しないロック解除位置の間で前記ポールを前記回転中心軸を中心とする円の半径方向に案内するガイドと、を有し、前記歯厚が薄く形成された外歯は、2つある歯面のうちの前記端側の歯面がカットされ、前記カットされた歯面には、前記歯厚が薄い外歯に隣接する歯厚が厚い外歯の2つある歯面のうちの前記歯厚が薄い外歯側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面と平行な倒し面を有することを特徴とするリクライニング装置である。
【0021】
請求項2に係る発明は、前記カットされた歯面の歯底側には前記倒し面が形成され、歯先側には前記倒し面と連続した円弧面が形成されることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置である。
【0022】
請求項3に係る発明は、前記円弧面は、前記倒し面と連続する第1円弧面と、歯先側に形成され、前記第1円弧面と連続し、曲率半径が前記第1円弧面の曲率半径より小さな第2円弧面と、からなることを特徴とする請求項2記載のリクライニング装置である。
【0023】
なお、本明細書において、「歯面」とは、外歯、内歯が噛み合う面をいう。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、ポールの複数の外歯のうち、端から少なくとも一枚の外歯の歯厚が他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成され、前記歯厚が薄く形成された外歯は、2つある歯面のうちの前記端側の歯面がカットされ、前記カットされた歯面には、前記歯厚が薄い外歯に隣接する歯厚が厚い外歯の2つある歯面のうちの前記歯厚が薄い外歯側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面と平行な倒し面を有することにより、ポールの端の外歯のカットされた歯面と、ポールの移動方向とのなす角度が大きくなる。即ち、ラチェットプレートの内歯からポールの端の方の外歯への入力に対してポールの移動方向への分力が大きくなる。よって、ポールの外歯とラチェットプレートの内歯との噛合状態の解除、即ち、ラチェットプレートからのポールの抜け性がよくなり、操作フィーリングが向上する。
【0025】
請求項2に係る発明によれば、前記カットされた歯面の歯底側には前記倒し面が形成され、歯先側には前記倒し面と連続した円弧面が形成されることにより、ポールが抜ける際に急激なエネルギーの解放がなくなることにより、ポールが暴れず、解除音が低減する。
【0026】
請求項3に係る発明によれば、前記円弧面は、前記倒し面と連続する第1円弧面と、歯先側に形成され、前記第1円弧面と連続し、曲率半径が前記第1円弧面の曲率半径より小さな第2円弧面と、からなることにより、ポールが抜ける際に急激なエネルギーの解放がなくなることにより、ポールが暴れず、解除音が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態のポールの外歯を説明する図で、図2のI部分の拡大図である。
【図2】ポールの拡大図である。
【図3】本実施形態のリクライニング装置の分解斜視図である。
【図4】図3のラチェットを矢印A方向からみた斜視図である。
【図5】図4の切断線V−Vの断面図である。
【図6】図5の切断線VI−VIでの断面図で、ポールがロック位置にある状態を説明する図である。
【図7】図6においてフルオープン状態(ポールがロック解除位置にある状態)を説明する図である。
【図8】実施例で用いた他のポールの外歯を説明する図である。
【図9】実施例で用いた他のポールの外歯を説明する図である。
【図10】入力点を変えた場合のポールの歯面接線方向荷重の変化を示す図である。
【図11】シートの構成図である。
【図12】従来の車両のシート用のリクライニング装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
[全体構成]
図3−図7を用いて、本実施形態のリクライニング装置の全体構成を説明する。図3は、本実施形態のリクライニング装置の分解斜視図、図4は図3のラチェットを矢印A方向からみた斜視図、図5は図4の切断線V−Vでの断面図、図6は図5の切断線VI−VIでの断面図で、ポールがロック位置にある状態を説明する図、図7は図6においてフルオープン状態(ポールがロック解除位置にある状態)を説明する図である。
【0029】
本実施の形態例のりクライング装置は、図11に示すリクライニング装置104と同様に、シートバック103の傾動の回転軸上に設けられるものである。
【0030】
図3において、シートバック側に設けられるラチェットプレート21は、円板状の板材をプレスにより半抜加工し、一方の面が開放面となった有底円筒状となっている。このラチェットプレート21の有底円筒(凹部)の内筒面(円弧面)には、円周方向全域に沿って内歯23が形成されている。また、底部21aの中心には、貫通した穴21bが形成されている。
【0031】
シートクッション側に設けられるベースプレート25も、円板状の板材をプレスにより半抜加工し、一方の面が開放面となった有底円筒状となっている。この有底円筒の底部25aの径は、ラチェットプレート21の外径より若干大きく設定されている。そして、底部25aに、ラチェットプレート21が嵌め込まれ、ベースプレート25とラチェットプレート21とは相対回転可能となっている。また、ベースプレート25の中心には、貫通した穴25bが形成されている。
【0032】
そして、図5に示すように、ラチェットプレート21の外周部と、ベースプレート25の外周部とは、リング状の外周リング27により挟持され、ラチェットプレート21とベースプレート25とは、相対回転の軸(図3においてO)方向に分離されることなく、相対回転可能に保持されている。
【0033】
図3に戻って、ラチェットプレート21の底部21aとベースプレート25の底部25aとが形成する空間には、回転カム(第1カム)31が配置される。回転カム31の中心には、非円形(小判形)の貫通穴31aが形成されている。
【0034】
また、ラチェットプレート21の底部21aとベースプレート25の底部25aとが形成する空間には、回転カム31の外側に位置するように、3つのポール33が配置される。このポール33には、内歯23と噛合可能な外歯57を有している。
【0035】
そして、図6に示すように、ベースプレート25には、各ポール33を相対回転の軸の半径方向に案内するガイド25cが形成されている。よって、各ポール33は、相対回転の軸の半径方向に移動可能となっている。
【0036】
また、ポール33と回転カム31とガイド25cの間には、カム(第2カム)34が配置されている。
【0037】
図3に戻って、ポール33の外歯57が形成された面と反対側には、相対回転の軸の半径方向と交差する方向に延出する凹部33cと、フック部33aとが形成されている。
【0038】
一方、回転カム31の周部には、各ポール33の凹部33cに進入可能な3つのフック部31bが形成されている。また、ポール33の外歯57が形成された面と反対側の面には、カム34が当接可能なロック面33bが形成されている。このロック面33bは、相対回転の軸の半径方向と交差し、カム34により押されると、ポール33をガイド25cに押しつける力と、外歯57が内歯23に噛合する方向(相対回転の軸の半径方向)にポール33を移動させる力とが発生する面に設定されている。
【0039】
更に、ポール33のフック部33aには、回転カム31のフック部31b以外の部分に形成されたカム当接部31cが当接可能な回転カム当接部33dが形成されている。
【0040】
そして、図6に示すように、回転カム31が一方の方向(図において反時計方向)に回転すると、回転カム31のフック部31bがカム34を押接し、カム34はガイド25cとポール33のロック面33bを押接し、ポール33を相対回転の軸から離れる方向に移動させ、ポール33の外歯57がラチェットプレート21の内歯23に噛合するロック位置となる。
【0041】
この時、回転カム31のカム当接部31cと、ポール33の回転カム当接部33dとの間には、隙間が発生している。
【0042】
本形態例では、ラチェットプレート21の内歯23より底部21a側の内筒面に形成された円周方向に沿った3つの円弧状のガイド71と、各ポール33のラチェットプレート21の底部21aとの対向面上に半抜き加工により形成された突部73とからなるロック解除保持機構が設けられている。
【0043】
そして、各ポール33の突部73が、円弧状のガイド71に当接すると、ポール33は、外歯57とラチェットプレート21の内歯23との噛合が解除されたロック解除位置に保持されるようになっている。
【0044】
回転カム31の非円形の貫通穴31aには、断面形状が非円形(小判形)で、回転カム31と一体となって回転する操作シャフト77が嵌合している。操作シャフト77の外周面には、外周面の周方向全域に、操作シャフト77の半径方向に張り出し、ラチェットプレート21の底部21aに当接して、操作シャフト77がラチェット(第1部材)21の底部21aに対してどの方向にも傾くのを禁止するつば部75が形成されている。本実施形態のつば部77は、操作シャフト77の外周面の周方向の全域にわたって形成された1つの連続したつばで構成した。尚、つば部75は、非連続で、複数のつばから構成してもよい。この場合、操作シャフト77がラチェット(第1部材)21の底部21aに対してどの方向にも傾くのを禁止するためには、隣接するつばとのギャップの円周方向の角度が180度未満であればよい。
【0045】
更に、操作シャフト77は、ベースプレート25の貫通した穴25bから外部に露出するような高さに設定されている。
【0046】
また、ベースプレート25の貫通した穴25bには、付勢手段としての長尺のバネ板材を渦巻き状に加工したスパイラルスプリング79が配置される。このスパイラルスプリング79の内端部79aは、操作シャフト77に巻き付けられて係止され、外端部はベースプレート25の貫通した穴25bの周面に形成された切り欠き部25dに係止されている。そして、スパイラルスプリング79の付勢力により、回転カム31を介して、ポール33はロック位置方向に付勢されている。
【0047】
ここで、本実施形態のリクライニング装置の作動を説明する。
【0048】
図6に示すように、回転カム31に操作力を加えていない場合は、スパイラルスプリング79の付勢力により、回転カム31は一方の方向(図において反時計方向)に回転し、回転カム31のフック部31bがカム34を介して、ポール33のロック面33bを押接している。前述したように、ポール33のロック面33bが押されると外歯57が内歯23に噛合する方向(相対回転の半径方向)にポール33を移動させる力が発生し、ポール33の外歯57がラチェットプレート21の内歯23に噛合するロック位置となる。よって、ラチェットプレート21とベースプレート25との相対回転は禁止され、シートバックはシートクッションに対して回転ができない状態(ロック状態)にある。更に、ポール33をガイド25cに押しつける力も発生し、ポール33とガイド25cとの間のガタもなくなっている。
【0049】
ポール33がロック位置にある状態から、スパイラルスプリング79の付勢力に抗して回転カム31(操作シャフト77)が他方の方向(図において時計方向)に回転すると、回転カム31のフック部31bがポール33の凹部33cに進入し、ポール33のフック部33aに係合し(凹部33cの相対回転の回転中心側の内壁面を押接して)、ポール33を相対回転の軸に近づく方向へ引き上げ、ポール33は外歯57とラチェットプレート21の内歯23との噛合が解除された図7に示すロック解除位置(フルオープン状態)となる。よって、ラチェットプレート21とベースプレート25との相対回転が可能となり、シートバックは シートクッションに対して回転可能となる。
[ポールの外歯の詳細な説明]
次に、図1−図2を用いて、本実施形態のポールの外歯の形状を説明する。図1は実施形態のポールの外歯を説明する図で、図2のI部分の拡大図、図2はポールの拡大図である。
【0050】
図1に示すように、本実施形態例では、ポール33の外歯57のうち、端からn1枚の外歯57’の歯厚(同一円周上の弦方向の歯厚)は、他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成されている。図1において、実線が外歯57’の外形を示し、二点鎖線が他の外歯を示す。そして、歯厚が薄く形成された外歯57’は、2つある歯面のうちの端側の歯面57”がカットされ、カットされた歯面の歯底側には倒し面TMが形成され、歯先側には倒し面TMと連続した円弧面EMが形成されている。
【0051】
倒し面TMは、図2に示すように歯厚が薄い外歯57’に隣接する歯厚が厚い外歯57の2つある歯面のうちの歯厚が薄い外歯57’側の歯面のピッチ円(図において一点鎖線で示す)上の接線をすべて含む平面Sと平行な面である。本実施形態例では、平面Sと外歯57、57’が形成された円弧面の中心線Cとなす角(以下、倒し角という)はθであった。また、円弧面EMの曲率半径はr1とした。
【0052】
このような構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0053】
(1) ポール33の外歯57のうち、端からn1枚の外歯57’の歯厚(同一円周上の弦方向の歯厚)は、他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成されている。そして、歯厚が薄く形成された外歯57’は、2つある歯面のうちの端側の歯面57”がカットされ、カットされた歯面の歯底側には倒し面TMが形成され、この倒し面TMは、歯厚が薄い外歯57’に隣接する歯厚が厚い外歯57の2つある歯面のうちの歯厚が薄い外歯57’側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面Sと平行な面であることにより、ポール33の端の外歯57’のカットされた歯面57”と、ポール33の移動方向とのなす角度が大きくなる。即ち、ラチェットプレート21の内歯23からポール33の端の方の外歯57’への入力に対してポール57の移動方向への分力が大きくなる。よって、ポール33の外歯57とラチェットプレート21の内歯23との噛合状態の解除、即ち、ラチェットプレート21からのポール33の抜け性がよくなり、操作フィーリングが向上する。
【0054】
また、カットされた歯面57’の歯底側には倒し面TMが形成され、歯先側には倒し面TMと連続した円弧面EMが形成されることにより、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放がなくなることにより、ポール33が暴れず、解除音が低減する。
【0055】
尚、本発明は上記実施の形態に限定するものではない。上記実施の形態では、シートバック側にラチェットプレート21を設け、シートクッション側にベースプレート25を設けたが、逆に、シートバック側にベースプレート25を設け、シートクッション側にラチェットプレート21を設けてもよい。
【0056】
また、上記実施形態のリクライニング装置では、ポール33が、ガイド25cにより相対回転の軸の半径方向に直線移動して、外歯と内歯とが噛合する構造であったが、他に、ポールが支点を中心に回転し、外歯と内歯とが噛合する構造でもよい。
【実施例】
【0057】
本願発明は、本発明の効果を確かめるために、以下のような実験を行った。
【0058】
ポール33の端の方の外歯57’の形状を図1以外に、図8、図9のような形状の外歯を準備した。
【0059】
図8において、ポール33の外歯のうち、端からn2枚(n2<n1)の外歯157’は、カットされた歯面157”の倒し面TMの倒し角がθ2(θ2<θ1)で、倒し面TMに連続し歯先側に形成される円弧面EMの曲率半径をr2(r2<r1)とした。
【0060】
図9において、ポール33の外歯のうち、端からn2(n2<n1)の外歯257’は、カットされた歯面257”の倒し面TMの倒し角がθ2で、倒し面TMに連続し歯先側に形成される円弧面EMを2つの円弧面で形成した。2つの円弧面のうち1つは、倒し面TMと連続し、曲率半径がr3(r3>r1>r2)の第1円弧面EM1であり、他の一つは、歯先側に形成され、第1円弧面EM1と連続し、曲率半径がr1の第2円弧面EM2である。
【0061】
そして、図1に示す外歯57’、図8に示す外歯157’、図9に示す外歯257’、及び歯面をカットしていない外歯57の入力点を変えた場合の歯面接線方向荷重の変化を調べ、その結果を図10に示す。
【0062】
なお、図において、横軸は、入力点直径である。ポール33をロック解除位置に移動させると、外歯57の歯面57の内歯23の歯面との接触点が刃先方向に移動する。即ち、ラチェットプレート21の内歯23からポール33の外歯57への入力点直径が大きくなる。
【0063】
また、縦軸は入力を「1」とした場合の歯面接線方向の荷重率である。歯面接線方向荷重のポール垂直方向荷重が、ポール133の移動方向への分力となる。
【0064】
図中、二点鎖線は歯面をカットしていない外歯57、実線は図1に示す外歯57’、一点鎖線は図9に示す外歯257’、破線は図8に示す外歯157’である。
【0065】
図に示すように、二点鎖線で示す歯面をカットしていない外歯57では、ポール33をロック解除方向へ移動させた場合、入力点直径約50.7までは、荷重率約0.5のポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が発生している。また、入力点直径が約50.7以上となると、ポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が急激に増加する。即ち、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放が発生している。
【0066】
破線で示す図8の外歯157’では、ポール33をロック解除方向へ移動させた場合、入力点直径約50.6までは、荷重率約0.6のポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が発生している。即ち、歯面をカットしていない場合よりも、ポールの抜け性が向上する。そして、入力点直径が約50.6以上となると、ポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が急激に増加する。しかし、発生したポール垂直方向荷重の増え方が急であり、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放が発生している。
【0067】
実線で示す図1の外歯57’では、ポール33をロック解除方向へ移動させた場合、入力点直径約50.6までは、荷重率約0.7のポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が発生している。即ち、歯面をカットしていない場合よりも、ポールの抜け性が向上する。そして、入力点直径が約50.6以上となると、ポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が急激に増加する。しかし、発生したポール垂直方向荷重の増え方は、カットしていない通常の外歯、図8に示す外歯よりも緩やかであり、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放が発生しない。
【0068】
一点鎖線で示す図9の外歯257’では、ポール33をロック解除方向へ移動させた場合、入力点直径約50.6までは、荷重率が約0.7から約0.8へ緩やかに増加する。歯面をカットしていない場合よりも、ポールの抜け性が向上する。そして、入力点直径が約50.6以上となると、ポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が急激に増加する。しかし、発生したポール垂直方向荷重の増え方は、カットしていない通常の外歯、図8に示す外歯よりも緩やかであり、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放が発生しない。
【符号の説明】
【0069】
21 ラチェット
23 内歯
25 ベースプレート
33 ポール
57、57’ 外歯
57” 歯面
TM 倒し面
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯と外歯との噛合によりロック状態となるリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11−図12を用いて説明する。図11はシートの構成図、図12は従来の車両のシート用のリクライニング装置の側面図である。
【0003】
図11に示すように、シート101は、着座者の臀部を支持するシートクッション102と、シートクッション102に対して前後方向に傾動可能に設けられ、着座者の背部を支持するシートバック103とからなっている。104はシートバック103の傾動の回転軸上に設けられ、シートバック103の傾動を許可/禁止するリクライニング装置である。
【0004】
図12を用いて、リクライニング装置104を説明する。図において、シートクッション側に設けられるロアアームの後部に取付けられるロアアームプレート(第2部材)130には、ヒンジピン131が立設されている。ヒンジピン131には、シートバック側に設けられるアッパアームに固着されるラチェットプレート(第1部材)132が回転可能に設けられている。このラチェットプレート132の下部には、ヒンジピン131を中心とする円弧面を有する凹部が形成され、円弧面には、周方向に複数の内歯133が形成されている。
【0005】
ロアアームプレート130,ラチェットプレート132との間には、ポール134が配置される。ポール134のラチェットプレー ト132の円弧面と対向する面には、内歯133に噛合可能な複数の外歯135が形成されている。
【0006】
一方、ロアアームプレート130には、外歯135が内歯133に噛合するロック位置,外歯135が内歯133に噛合しないロック解除位置の間で、ポール134をヒンジピン131を中心とする円の半径方向に案内するガイド136、137が形成されている。
【0007】
ヒンジピン131に回転可能に設けられたレリーズアーム142には、ラチェットプレート132に形成され、ヒンジピン131を中心とする円弧状の長穴132eを挿通するポール134のピン140が係合する長穴143が形成されている。この長穴143の形状は、ラチェットプレート132の内歯133に近い部分と、内歯133より離れた部分とを有し、レリーズアーム142が回転することにより、ポール134がヒンジピン131を中心とした円の半径方向に移動し、ポール134の外歯135がラチェットプレート132の内歯133に噛合したり、噛合しないようにしたり設定されている。
【0008】
ヒンジピン131には、第1のカム144が回転可能に取り付けられている。
【0009】
ポール134の外歯135が形成された側と反対側の斜面と第1カム144との間には、第2のカム141が設けられている。ポール134の斜面は、円の半径方向と交差する面である。
【0010】
レリーズアーム142は、一方の端部がレリーズアーム142に係止され、他方の端部がロアアームプレート130に係止された付勢手段としてのスプリング150によって、第1のカム144が第2のカム141を介してポール134を押圧する方向の付勢力を与えられている。
【0011】
又、ヒンジピン131の端面には溝が形成され、外端部がラチェットプレート132に立設されたピン155に外端部が係止されたスパイラルスプリング156の内端部がこの溝に係止され、ラチェットプレート132(アッパアーム)を前倒れ方向に付勢している。
【0012】
次に、上記構成の作動を説明する。図12に示す状態は、第1のカム144が、第1のカム144の斜面,ガイド137,ポール134にそれぞれ当接する第2のカム141を介してポール134を押し、ポール134の外歯135がラチェットプレート132の内歯133に噛合し、ラチェットプレート132の回転が禁止され、シートバック103のリクライニング(傾動)がロックされた状態である。
【0013】
この状態より、実線位置にあるレリーズアーム142をスプリング150の付勢力に抗して二点鎖線位置まで回転させると、レリーズアーム142に係合する第1のカム144が同方向に回転し、第1のカム144の第2のカム141を介してポール134を押圧する状態が解除される。
【0014】
又、レリーズアーム142の長穴143に係合するピン140を有するポール134もガイド136,137に案内されヒンジピン131方向へ移動し、ポール134の外歯1 35とラチェットプレート132の内歯133との噛合状態が解除され、ラチェットプレート132(シートバック103)は傾動可能な状態となる。
【0015】
着座者は所望のシートバック103を傾動させ、所望の傾動角を得たならば、レリーズアーム142の操作力を解除する。するとスプリング150の付勢力によって、レリーズアーム142は二点鎖線位置から実線位置に復帰し、第1のカム144は先程とは逆方向に回転し、図12の状態に復帰する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平08−019442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、ポール134に形成された複数の外歯135の歯型は、同一形状である。よって、端の方の外歯135の歯面(外歯135の内歯133と噛み合う面)と、ポール134の移動方向とのなす角度が小さくなる。
【0018】
着座者がシートバック103にもたれていると、負荷がラチェットプレート132を介してポール134へ伝達される。このとき、ラチェットプレート132の内歯133からポール134の端の方の外歯135への入力に対してポール133の移動方向への分力が小さくなる。よって、ポール134の外歯135とラチェットプレート132の内歯133との噛合状態の解除(以下、ラチェットプレート132からのポール134の抜け性という)が悪化する問題点がある。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、ラチェットプレートからのポールの抜け性がよく、操作フィーリングが向上するリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する請求項1に係る発明は、ベースプレートと、該ベースプレートに対して回転可能に重ねられ、前記ベースプレートとの対向面には、回転中心軸を中心とする円弧面を有する凹部が形成され、該凹部の円弧面には周方向に内歯が形成されたラチェットプレートと、前記ラチェットプレートの前記凹部に配置され、前記円弧面と対向する面に前記内歯に噛合可能な複数の外歯が形成され、該複数の外歯のうち、端から少なくとも一枚の外歯の歯厚が他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成されたポールと、前記ベースプレートに設けられ、前記外歯が前記内歯に噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯に噛合しないロック解除位置の間で前記ポールを前記回転中心軸を中心とする円の半径方向に案内するガイドと、を有し、前記歯厚が薄く形成された外歯は、2つある歯面のうちの前記端側の歯面がカットされ、前記カットされた歯面には、前記歯厚が薄い外歯に隣接する歯厚が厚い外歯の2つある歯面のうちの前記歯厚が薄い外歯側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面と平行な倒し面を有することを特徴とするリクライニング装置である。
【0021】
請求項2に係る発明は、前記カットされた歯面の歯底側には前記倒し面が形成され、歯先側には前記倒し面と連続した円弧面が形成されることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置である。
【0022】
請求項3に係る発明は、前記円弧面は、前記倒し面と連続する第1円弧面と、歯先側に形成され、前記第1円弧面と連続し、曲率半径が前記第1円弧面の曲率半径より小さな第2円弧面と、からなることを特徴とする請求項2記載のリクライニング装置である。
【0023】
なお、本明細書において、「歯面」とは、外歯、内歯が噛み合う面をいう。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、ポールの複数の外歯のうち、端から少なくとも一枚の外歯の歯厚が他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成され、前記歯厚が薄く形成された外歯は、2つある歯面のうちの前記端側の歯面がカットされ、前記カットされた歯面には、前記歯厚が薄い外歯に隣接する歯厚が厚い外歯の2つある歯面のうちの前記歯厚が薄い外歯側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面と平行な倒し面を有することにより、ポールの端の外歯のカットされた歯面と、ポールの移動方向とのなす角度が大きくなる。即ち、ラチェットプレートの内歯からポールの端の方の外歯への入力に対してポールの移動方向への分力が大きくなる。よって、ポールの外歯とラチェットプレートの内歯との噛合状態の解除、即ち、ラチェットプレートからのポールの抜け性がよくなり、操作フィーリングが向上する。
【0025】
請求項2に係る発明によれば、前記カットされた歯面の歯底側には前記倒し面が形成され、歯先側には前記倒し面と連続した円弧面が形成されることにより、ポールが抜ける際に急激なエネルギーの解放がなくなることにより、ポールが暴れず、解除音が低減する。
【0026】
請求項3に係る発明によれば、前記円弧面は、前記倒し面と連続する第1円弧面と、歯先側に形成され、前記第1円弧面と連続し、曲率半径が前記第1円弧面の曲率半径より小さな第2円弧面と、からなることにより、ポールが抜ける際に急激なエネルギーの解放がなくなることにより、ポールが暴れず、解除音が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態のポールの外歯を説明する図で、図2のI部分の拡大図である。
【図2】ポールの拡大図である。
【図3】本実施形態のリクライニング装置の分解斜視図である。
【図4】図3のラチェットを矢印A方向からみた斜視図である。
【図5】図4の切断線V−Vの断面図である。
【図6】図5の切断線VI−VIでの断面図で、ポールがロック位置にある状態を説明する図である。
【図7】図6においてフルオープン状態(ポールがロック解除位置にある状態)を説明する図である。
【図8】実施例で用いた他のポールの外歯を説明する図である。
【図9】実施例で用いた他のポールの外歯を説明する図である。
【図10】入力点を変えた場合のポールの歯面接線方向荷重の変化を示す図である。
【図11】シートの構成図である。
【図12】従来の車両のシート用のリクライニング装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
[全体構成]
図3−図7を用いて、本実施形態のリクライニング装置の全体構成を説明する。図3は、本実施形態のリクライニング装置の分解斜視図、図4は図3のラチェットを矢印A方向からみた斜視図、図5は図4の切断線V−Vでの断面図、図6は図5の切断線VI−VIでの断面図で、ポールがロック位置にある状態を説明する図、図7は図6においてフルオープン状態(ポールがロック解除位置にある状態)を説明する図である。
【0029】
本実施の形態例のりクライング装置は、図11に示すリクライニング装置104と同様に、シートバック103の傾動の回転軸上に設けられるものである。
【0030】
図3において、シートバック側に設けられるラチェットプレート21は、円板状の板材をプレスにより半抜加工し、一方の面が開放面となった有底円筒状となっている。このラチェットプレート21の有底円筒(凹部)の内筒面(円弧面)には、円周方向全域に沿って内歯23が形成されている。また、底部21aの中心には、貫通した穴21bが形成されている。
【0031】
シートクッション側に設けられるベースプレート25も、円板状の板材をプレスにより半抜加工し、一方の面が開放面となった有底円筒状となっている。この有底円筒の底部25aの径は、ラチェットプレート21の外径より若干大きく設定されている。そして、底部25aに、ラチェットプレート21が嵌め込まれ、ベースプレート25とラチェットプレート21とは相対回転可能となっている。また、ベースプレート25の中心には、貫通した穴25bが形成されている。
【0032】
そして、図5に示すように、ラチェットプレート21の外周部と、ベースプレート25の外周部とは、リング状の外周リング27により挟持され、ラチェットプレート21とベースプレート25とは、相対回転の軸(図3においてO)方向に分離されることなく、相対回転可能に保持されている。
【0033】
図3に戻って、ラチェットプレート21の底部21aとベースプレート25の底部25aとが形成する空間には、回転カム(第1カム)31が配置される。回転カム31の中心には、非円形(小判形)の貫通穴31aが形成されている。
【0034】
また、ラチェットプレート21の底部21aとベースプレート25の底部25aとが形成する空間には、回転カム31の外側に位置するように、3つのポール33が配置される。このポール33には、内歯23と噛合可能な外歯57を有している。
【0035】
そして、図6に示すように、ベースプレート25には、各ポール33を相対回転の軸の半径方向に案内するガイド25cが形成されている。よって、各ポール33は、相対回転の軸の半径方向に移動可能となっている。
【0036】
また、ポール33と回転カム31とガイド25cの間には、カム(第2カム)34が配置されている。
【0037】
図3に戻って、ポール33の外歯57が形成された面と反対側には、相対回転の軸の半径方向と交差する方向に延出する凹部33cと、フック部33aとが形成されている。
【0038】
一方、回転カム31の周部には、各ポール33の凹部33cに進入可能な3つのフック部31bが形成されている。また、ポール33の外歯57が形成された面と反対側の面には、カム34が当接可能なロック面33bが形成されている。このロック面33bは、相対回転の軸の半径方向と交差し、カム34により押されると、ポール33をガイド25cに押しつける力と、外歯57が内歯23に噛合する方向(相対回転の軸の半径方向)にポール33を移動させる力とが発生する面に設定されている。
【0039】
更に、ポール33のフック部33aには、回転カム31のフック部31b以外の部分に形成されたカム当接部31cが当接可能な回転カム当接部33dが形成されている。
【0040】
そして、図6に示すように、回転カム31が一方の方向(図において反時計方向)に回転すると、回転カム31のフック部31bがカム34を押接し、カム34はガイド25cとポール33のロック面33bを押接し、ポール33を相対回転の軸から離れる方向に移動させ、ポール33の外歯57がラチェットプレート21の内歯23に噛合するロック位置となる。
【0041】
この時、回転カム31のカム当接部31cと、ポール33の回転カム当接部33dとの間には、隙間が発生している。
【0042】
本形態例では、ラチェットプレート21の内歯23より底部21a側の内筒面に形成された円周方向に沿った3つの円弧状のガイド71と、各ポール33のラチェットプレート21の底部21aとの対向面上に半抜き加工により形成された突部73とからなるロック解除保持機構が設けられている。
【0043】
そして、各ポール33の突部73が、円弧状のガイド71に当接すると、ポール33は、外歯57とラチェットプレート21の内歯23との噛合が解除されたロック解除位置に保持されるようになっている。
【0044】
回転カム31の非円形の貫通穴31aには、断面形状が非円形(小判形)で、回転カム31と一体となって回転する操作シャフト77が嵌合している。操作シャフト77の外周面には、外周面の周方向全域に、操作シャフト77の半径方向に張り出し、ラチェットプレート21の底部21aに当接して、操作シャフト77がラチェット(第1部材)21の底部21aに対してどの方向にも傾くのを禁止するつば部75が形成されている。本実施形態のつば部77は、操作シャフト77の外周面の周方向の全域にわたって形成された1つの連続したつばで構成した。尚、つば部75は、非連続で、複数のつばから構成してもよい。この場合、操作シャフト77がラチェット(第1部材)21の底部21aに対してどの方向にも傾くのを禁止するためには、隣接するつばとのギャップの円周方向の角度が180度未満であればよい。
【0045】
更に、操作シャフト77は、ベースプレート25の貫通した穴25bから外部に露出するような高さに設定されている。
【0046】
また、ベースプレート25の貫通した穴25bには、付勢手段としての長尺のバネ板材を渦巻き状に加工したスパイラルスプリング79が配置される。このスパイラルスプリング79の内端部79aは、操作シャフト77に巻き付けられて係止され、外端部はベースプレート25の貫通した穴25bの周面に形成された切り欠き部25dに係止されている。そして、スパイラルスプリング79の付勢力により、回転カム31を介して、ポール33はロック位置方向に付勢されている。
【0047】
ここで、本実施形態のリクライニング装置の作動を説明する。
【0048】
図6に示すように、回転カム31に操作力を加えていない場合は、スパイラルスプリング79の付勢力により、回転カム31は一方の方向(図において反時計方向)に回転し、回転カム31のフック部31bがカム34を介して、ポール33のロック面33bを押接している。前述したように、ポール33のロック面33bが押されると外歯57が内歯23に噛合する方向(相対回転の半径方向)にポール33を移動させる力が発生し、ポール33の外歯57がラチェットプレート21の内歯23に噛合するロック位置となる。よって、ラチェットプレート21とベースプレート25との相対回転は禁止され、シートバックはシートクッションに対して回転ができない状態(ロック状態)にある。更に、ポール33をガイド25cに押しつける力も発生し、ポール33とガイド25cとの間のガタもなくなっている。
【0049】
ポール33がロック位置にある状態から、スパイラルスプリング79の付勢力に抗して回転カム31(操作シャフト77)が他方の方向(図において時計方向)に回転すると、回転カム31のフック部31bがポール33の凹部33cに進入し、ポール33のフック部33aに係合し(凹部33cの相対回転の回転中心側の内壁面を押接して)、ポール33を相対回転の軸に近づく方向へ引き上げ、ポール33は外歯57とラチェットプレート21の内歯23との噛合が解除された図7に示すロック解除位置(フルオープン状態)となる。よって、ラチェットプレート21とベースプレート25との相対回転が可能となり、シートバックは シートクッションに対して回転可能となる。
[ポールの外歯の詳細な説明]
次に、図1−図2を用いて、本実施形態のポールの外歯の形状を説明する。図1は実施形態のポールの外歯を説明する図で、図2のI部分の拡大図、図2はポールの拡大図である。
【0050】
図1に示すように、本実施形態例では、ポール33の外歯57のうち、端からn1枚の外歯57’の歯厚(同一円周上の弦方向の歯厚)は、他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成されている。図1において、実線が外歯57’の外形を示し、二点鎖線が他の外歯を示す。そして、歯厚が薄く形成された外歯57’は、2つある歯面のうちの端側の歯面57”がカットされ、カットされた歯面の歯底側には倒し面TMが形成され、歯先側には倒し面TMと連続した円弧面EMが形成されている。
【0051】
倒し面TMは、図2に示すように歯厚が薄い外歯57’に隣接する歯厚が厚い外歯57の2つある歯面のうちの歯厚が薄い外歯57’側の歯面のピッチ円(図において一点鎖線で示す)上の接線をすべて含む平面Sと平行な面である。本実施形態例では、平面Sと外歯57、57’が形成された円弧面の中心線Cとなす角(以下、倒し角という)はθであった。また、円弧面EMの曲率半径はr1とした。
【0052】
このような構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0053】
(1) ポール33の外歯57のうち、端からn1枚の外歯57’の歯厚(同一円周上の弦方向の歯厚)は、他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成されている。そして、歯厚が薄く形成された外歯57’は、2つある歯面のうちの端側の歯面57”がカットされ、カットされた歯面の歯底側には倒し面TMが形成され、この倒し面TMは、歯厚が薄い外歯57’に隣接する歯厚が厚い外歯57の2つある歯面のうちの歯厚が薄い外歯57’側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面Sと平行な面であることにより、ポール33の端の外歯57’のカットされた歯面57”と、ポール33の移動方向とのなす角度が大きくなる。即ち、ラチェットプレート21の内歯23からポール33の端の方の外歯57’への入力に対してポール57の移動方向への分力が大きくなる。よって、ポール33の外歯57とラチェットプレート21の内歯23との噛合状態の解除、即ち、ラチェットプレート21からのポール33の抜け性がよくなり、操作フィーリングが向上する。
【0054】
また、カットされた歯面57’の歯底側には倒し面TMが形成され、歯先側には倒し面TMと連続した円弧面EMが形成されることにより、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放がなくなることにより、ポール33が暴れず、解除音が低減する。
【0055】
尚、本発明は上記実施の形態に限定するものではない。上記実施の形態では、シートバック側にラチェットプレート21を設け、シートクッション側にベースプレート25を設けたが、逆に、シートバック側にベースプレート25を設け、シートクッション側にラチェットプレート21を設けてもよい。
【0056】
また、上記実施形態のリクライニング装置では、ポール33が、ガイド25cにより相対回転の軸の半径方向に直線移動して、外歯と内歯とが噛合する構造であったが、他に、ポールが支点を中心に回転し、外歯と内歯とが噛合する構造でもよい。
【実施例】
【0057】
本願発明は、本発明の効果を確かめるために、以下のような実験を行った。
【0058】
ポール33の端の方の外歯57’の形状を図1以外に、図8、図9のような形状の外歯を準備した。
【0059】
図8において、ポール33の外歯のうち、端からn2枚(n2<n1)の外歯157’は、カットされた歯面157”の倒し面TMの倒し角がθ2(θ2<θ1)で、倒し面TMに連続し歯先側に形成される円弧面EMの曲率半径をr2(r2<r1)とした。
【0060】
図9において、ポール33の外歯のうち、端からn2(n2<n1)の外歯257’は、カットされた歯面257”の倒し面TMの倒し角がθ2で、倒し面TMに連続し歯先側に形成される円弧面EMを2つの円弧面で形成した。2つの円弧面のうち1つは、倒し面TMと連続し、曲率半径がr3(r3>r1>r2)の第1円弧面EM1であり、他の一つは、歯先側に形成され、第1円弧面EM1と連続し、曲率半径がr1の第2円弧面EM2である。
【0061】
そして、図1に示す外歯57’、図8に示す外歯157’、図9に示す外歯257’、及び歯面をカットしていない外歯57の入力点を変えた場合の歯面接線方向荷重の変化を調べ、その結果を図10に示す。
【0062】
なお、図において、横軸は、入力点直径である。ポール33をロック解除位置に移動させると、外歯57の歯面57の内歯23の歯面との接触点が刃先方向に移動する。即ち、ラチェットプレート21の内歯23からポール33の外歯57への入力点直径が大きくなる。
【0063】
また、縦軸は入力を「1」とした場合の歯面接線方向の荷重率である。歯面接線方向荷重のポール垂直方向荷重が、ポール133の移動方向への分力となる。
【0064】
図中、二点鎖線は歯面をカットしていない外歯57、実線は図1に示す外歯57’、一点鎖線は図9に示す外歯257’、破線は図8に示す外歯157’である。
【0065】
図に示すように、二点鎖線で示す歯面をカットしていない外歯57では、ポール33をロック解除方向へ移動させた場合、入力点直径約50.7までは、荷重率約0.5のポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が発生している。また、入力点直径が約50.7以上となると、ポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が急激に増加する。即ち、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放が発生している。
【0066】
破線で示す図8の外歯157’では、ポール33をロック解除方向へ移動させた場合、入力点直径約50.6までは、荷重率約0.6のポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が発生している。即ち、歯面をカットしていない場合よりも、ポールの抜け性が向上する。そして、入力点直径が約50.6以上となると、ポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が急激に増加する。しかし、発生したポール垂直方向荷重の増え方が急であり、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放が発生している。
【0067】
実線で示す図1の外歯57’では、ポール33をロック解除方向へ移動させた場合、入力点直径約50.6までは、荷重率約0.7のポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が発生している。即ち、歯面をカットしていない場合よりも、ポールの抜け性が向上する。そして、入力点直径が約50.6以上となると、ポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が急激に増加する。しかし、発生したポール垂直方向荷重の増え方は、カットしていない通常の外歯、図8に示す外歯よりも緩やかであり、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放が発生しない。
【0068】
一点鎖線で示す図9の外歯257’では、ポール33をロック解除方向へ移動させた場合、入力点直径約50.6までは、荷重率が約0.7から約0.8へ緩やかに増加する。歯面をカットしていない場合よりも、ポールの抜け性が向上する。そして、入力点直径が約50.6以上となると、ポール垂直方向荷重(歯面接線方向荷重)が急激に増加する。しかし、発生したポール垂直方向荷重の増え方は、カットしていない通常の外歯、図8に示す外歯よりも緩やかであり、ポール33が抜ける際に急激なエネルギーの解放が発生しない。
【符号の説明】
【0069】
21 ラチェット
23 内歯
25 ベースプレート
33 ポール
57、57’ 外歯
57” 歯面
TM 倒し面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
該ベースプレートに対して回転可能に重ねられ、前記ベースプレートとの対向面には、回転中心軸を中心とする円弧面を有する凹部が形成され、該凹部の円弧面には周方向に内歯が形成されたラチェットプレートと、
前記ラチェットプレートの前記凹部に配置され、前記円弧面と対向する面に前記内歯に噛合可能な複数の外歯が形成され、該複数の外歯のうち、端から少なくとも一枚の外歯の歯厚が他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成されたポールと、
前記ベースプレートに設けられ、前記外歯が前記内歯に噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯に噛合しないロック解除位置の間で前記ポールを案内するガイドと、
を有し、
前記歯厚が薄く形成された外歯は、2つある歯面のうちの前記端側の歯面がカットされ、
前記カットされた歯面には、
前記歯厚が薄い外歯に隣接する歯厚が厚い外歯の2つある歯面のうちの前記歯厚が薄い外歯側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面と平行な倒し面を有することを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記カットされた歯面の歯底側には前記倒し面が形成され、
歯先側には前記倒し面と連続した円弧面が形成されることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置。
【請求項3】
前記円弧面は、
前記倒し面と連続する第1円弧面と、
歯先側に形成され、前記第1円弧面と連続し、曲率半径が前記第1円弧面の曲率半径より小さな第2円弧面と、
からなることを特徴とする請求項2記載のリクライニング装置。
【請求項1】
ベースプレートと、
該ベースプレートに対して回転可能に重ねられ、前記ベースプレートとの対向面には、回転中心軸を中心とする円弧面を有する凹部が形成され、該凹部の円弧面には周方向に内歯が形成されたラチェットプレートと、
前記ラチェットプレートの前記凹部に配置され、前記円弧面と対向する面に前記内歯に噛合可能な複数の外歯が形成され、該複数の外歯のうち、端から少なくとも一枚の外歯の歯厚が他の外歯の歯厚より歯先に行くに従って薄くなるように形成されたポールと、
前記ベースプレートに設けられ、前記外歯が前記内歯に噛合するロック位置,前記外歯が前記内歯に噛合しないロック解除位置の間で前記ポールを案内するガイドと、
を有し、
前記歯厚が薄く形成された外歯は、2つある歯面のうちの前記端側の歯面がカットされ、
前記カットされた歯面には、
前記歯厚が薄い外歯に隣接する歯厚が厚い外歯の2つある歯面のうちの前記歯厚が薄い外歯側の歯面のピッチ円上の接線をすべて含む平面と平行な倒し面を有することを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記カットされた歯面の歯底側には前記倒し面が形成され、
歯先側には前記倒し面と連続した円弧面が形成されることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置。
【請求項3】
前記円弧面は、
前記倒し面と連続する第1円弧面と、
歯先側に形成され、前記第1円弧面と連続し、曲率半径が前記第1円弧面の曲率半径より小さな第2円弧面と、
からなることを特徴とする請求項2記載のリクライニング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−100021(P2013−100021A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244783(P2011−244783)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]