リクライニング装置
【課題】シ−トバックに力がかかった場合にも、プレートの内歯と遊星ギアとのがたつきが生じ難く、シ−トバックを確実に固定状態に維持できるリクライニング装置を提供する。
【解決手段】第2プレート2に形成された凹部23の内周壁23aと、遊星ギアを保持した第1保持部材5aの楔状空間区画部54とによってそれらの間に、幅広部55aと幅狭部55bとを有する楔状空間55が区画形成されている。第1保持部材5aは凹部23内に配設され、楔状空間55内の規制部材7は付勢部材8により幅狭部55bに食い込む方向に付勢され第1保持部材5aの回動を規制する。
【解決手段】第2プレート2に形成された凹部23の内周壁23aと、遊星ギアを保持した第1保持部材5aの楔状空間区画部54とによってそれらの間に、幅広部55aと幅狭部55bとを有する楔状空間55が区画形成されている。第1保持部材5aは凹部23内に配設され、楔状空間55内の規制部材7は付勢部材8により幅狭部55bに食い込む方向に付勢され第1保持部材5aの回動を規制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のシートのリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等のシートのリクライニング装置は知られており、例えば特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示された装置は、互いに同軸上で回動自在に支持され且つその対向する円孔内に内ギア部を有するベースプレート(第1プレート)及びアームプレート(第2プレート)と、これら両プレートの回動軸上に設けられた制御ギアと、この制御ギアの周囲でこの制御ギアと前記各プレートの内ギア部とに噛合した状態で配置され且つその軸心位置にボス部が突設されている複数個の遊星ギアと、これら各遊星ギアをそれぞれ所定の公転軌道位置で回動自在に保持する保持体とを備え、この保持体を、前記各遊星ギアのボス部にその回動を許容した状態で接し且つこれらの遊星ギアを前記各プレート円孔内の内ギア部に噛合させるように放射方向に付勢する形状をもってばね材により形成したものである。このようにして、両プレートの内歯と遊星ギアとがバックラッシ等によるがたつきを生じ難いものにし、ベースプレートとアームプレートとのがたつきを抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−1335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のようなばね材からなる保持体で遊星ギアを放射方向に付勢しても、例えば保持体の付勢力以上の力がシ−トバックにかかると遊星ギアが保持体の付勢力に抗して径内側に移動して両プレートの内歯と遊星ギアとがたつきを生じる場合がある。その一方、保持体の付勢力を強くすると、遊星ギアの回動抵抗が大きくなってしまい、円滑に回動できなくなってしまう。従って、特許文献1に記載のようなばね材からなる保持体を用いた方法ではプレートの内歯と遊星ギアとのがたつきを十分に抑え難いという問題点がある。
【0005】
又、特許文献1に記載のものにおいては、シ−トバックに繰り返し後傾倒方向の力がかかった状態が続くと、その力でプレートの内歯を遊星ギアが少しずつ徐々に転がり動く場合があり、その結果、シ−トバックがシートクッションに対して徐々に倒れ動いて固定状態を維持し難い場合がある。
【0006】
本発明は、シ−トバックに繰り返し力がかかった場合に、プレートの内歯と遊星ギアとのがたつきが生じ難く、シ−トバックを確実に固定状態に維持できるリクライニング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1プレートと、前記第1プレートに対して回動可能な第2プレートと、前記第1プレート及び第2プレートの夫々に設けられた内歯に噛合した複数の遊星ギアとを備えたリクライニング装置であって、前記第1プレートと第2プレートとのいずれか一方の側面に形成された内周壁を有する凹部と、前記凹部内に回動可能に配設された保持部材と、前記保持部材の回動を規制する規制部材とを備え、前記保持部材は、前記遊星ギアを回動可能に保持しているとともに、前記凹部の内周壁と対向した楔状空間区画部を備え、前記楔状空間区画部は、当該楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に、幅広部とその幅広部の周方向側に前記幅広部よりも幅狭な幅狭部とを有する楔状空間が区画形成されるように構成され、前記規制部材は、前記楔状空間に移動可能に配設されているとともに、付勢部材により、前記保持部材の回動に際して前記幅狭部に食い込むように入り込んで前記保持部材の回動を規制できるように構成されていることを特徴とするリクライニング装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、規制部材を幅狭部に食い込ませるように入り込ませることで、保持部材が規制部材から反力を受け、その反力によって、保持部材は、保持した遊星ギアを第1プレート及び第2プレート夫々の内歯に押し付け、遊星ギアと第1プレート及び第2プレート夫々の内歯との両者間に隙間が無い状態にできる。従って、遊星ギアと第1プレート及び第2プレート夫々の内歯とのがたつきを防止できるとともに、シ−トバックを確実に固定状態に維持できる。
【0009】
又、楔状空間内の規制部材を、付勢部材によって幅狭部側に付勢しているため、規制部材が保持部材に連動して幅広部側に移動するのを防止でき、規制部材を確実に幅狭部側に相対的に移動させることができる。
【0010】
他の一態様では、上記リクライニング装置において、前記保持部材を回動操作する回動操作部材と、前記規制部材による規制を解除する規制解除部材とを、更に備え、前記規制解除部材は、前記回動操作部材による保持部材の回動操作に際し前記付勢部材の付勢力に抗して前記規制部材を前記幅狭部から前記幅広部へ押圧移動させて前記規制を解除し得るように、前記回動操作部材に連結されている。
【0011】
この構成によれば、例えば着座者が回動操作部材を操作し保持部材を回動操作してシートバックを傾倒操作する場合に、保持部材の回動に際して規制解除部材が規制部材を幅狭部から幅広部へ押圧移動させるため、規制部材が幅狭部に入り込んで保持部材が回動し難くなるようなことを防止でき、回動操作部材によって保持部材を円滑に回動操作できる。
【0012】
他の一態様では、上記リクライニング装置において、前記回動操作部材は、前記保持部材を押圧して回動させる押圧操作部を備え、前記規制解除部材は、前記回動操作部材による前記保持部材の回動操作に際し、前記押圧操作部が前記回動操作部材を押圧するよりも前に前記規制部材を前記幅狭部から前記幅広部へ押圧移動させ得るように構成されている。
【0013】
この構成によれば、回動操作部材による保持部材の回動操作に際し、押圧操作部が保持部材を押圧するに先立って規制部材を幅狭部から幅広部へ押圧移動させるため、回動操作部材による保持部材の回動操作を規制部材による規制を解除した状態で行うことができ、保持部材の回動操作を円滑に行うことができる。
【0014】
他の一態様では、上記リクライニング装置において、前記楔状空間区画部は、第1楔状空間区画部と、第2楔状空間区画部とから構成され、前記第1楔状空間区画部は、当該第1楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に第1楔状空間を区画形成するように構成され、前記第1楔状空間は、当該第1楔状空間の幅広部がその第1楔状空間における周方向の一方側に、当該第1楔状空間の幅狭部がその第1楔状空間における周方向の他方側に配設されるように構成され、前記第2楔状空間区画部は、当該第2楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に第2楔状空間を区画形成するように構成され、前記第2楔状空間は、当該第2楔状空間の幅狭部がその第2楔状空間における周方向の一方側に、当該第2楔状空間の幅広部がその第2楔状空間における周方向の他方側に配設されるように構成され、前記規制部材は、前記第1楔状空間と第2楔状空間との夫々に配設され、前記付勢部材は、前記第1楔状空間と第2楔状空間との夫々における前記規制部材夫々を前記幅狭部の方向に付勢している。
【0015】
この構成によれば、第1楔状空間と第2楔状空間とによって、シートバックが前に傾倒する方向の力がかかった場合でも、後に傾倒する方向の力がかかった場合でも、第1楔状空間と第2楔状空間との何れか一方の幅狭部で規制部材を食い込ませる方向に入り込ませることで、保持部材が保持した遊星ギアを第1プレート及び第2プレート夫々の内歯に押し付け、遊星ギアと第1プレート及び第2プレート夫々の内歯との両者間の隙間が無い状態にできるとともに、保持部材が徐々に動くようなことを確実に規制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のリクライニング装置は、シ−トバックに繰り返し荷重がかかった場合に、プレートの内歯と遊星ギアとのがたつきが生じ難く、しかも、シ−トバックを確実に固定状態に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のリクライニング装置を装着した自動車用シートの一実施形態の側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のリクライニング装置の要部の分解斜視図である。
【図3】図2のリクライニング装置の組付け状態の内部構造を表した説明図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】左前方側からの回動操作部材の斜視図である。
【図8】図3における保持部材と規制部材と規制解除部材との位置関係を示す説明図である。
【図9】図8の状態から回動操作部材が時計方向に回動して規制解除部材が規制部材に当接した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【図10】図9の状態から、更に回動操作部材が回動した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【図11】図8の状態から回動操作部材が反時計方向に回動した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【図12】第2実施形態のリクライニング装置の要部の分解斜視図である。
【図13】図12のリクライニング装置の組付け状態の内部構造の説明図である。
【図14】図13のXIV−XIV線断面図である。
【図15】図13のXV−XV線断面図である。
【図16】図13のXVI−XVI線断面図である。
【図17】第2実施形態の回動操作部材の左前方側からの斜視図である。
【図18】図14における保持部材と規制部材と規制解除部材との位置関係を示す説明図である。
【図19】図18の状態から回動操作部材が時計方向に回動して第1規制解除部材が第1規制部材に当接した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【図20】図19の状態から、更に回動操作部材が回動した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のリクライニング装置を装着した自動車用シートの一実施形態の側面図、図2は、本発明の第1実施形態のリクライニング装置の要部の分解斜視図、図3は、図2のリクライニング装置の組付け状態の内部構造の説明図、図4は、図3のIV−IV線断面図、図5は、図3のV−V線断面図、図6は、図3のVI−VI線断面図である。
【0019】
本発明の第1実施形態のリクライニング装置10は、この実施形態では、図1に示すように自動車用シート100に用いられるように構成されている。第1実施形態のリクライニング装置10は、図2〜図6に示すように第1プレート1と、第2プレート2と、複数の遊星ギア3と、太陽ギア4と、遊星ギア3を保持した保持部材5a、5bと、保持部材5a、5bを回動操作する回動操作部材6と、保持部材5a、5bの回動を規制する規制部材7と、規制部材7を付勢する付勢部材8と、規制部材7による規制を解除する規制解除部材9(図7参照)とを備えている。
【0020】
第1プレート1は、中心部に第1プレート用孔11を有するリング板状のものから構成されている。この第1プレート用孔11を区画した内周部には、全周に渡って第1プレート用内歯12が設けられている。この実施形態では、第1プレート用内歯12は、38個の歯から構成されている。
【0021】
又、第1プレート1の右側面には、受容部13が設けられている。受容部13は、第1プレート1の右側面から所定の深さで、円形状に窪まされるようにして形成されている。
【0022】
このように構成された第1プレート1は、この実施形態では、シート100のシートバック102(図1参照)に固定的に取り付けられる。
【0023】
第2プレート2は、第1プレート1と略同形状のもので、中心部に第2プレート用孔21を有するリング板状のものから構成されており、第2プレート用孔21を区画した内周部には、全周に渡って第2プレート用内歯22が設けられている。この実施形態では、第2プレート用内歯22は、35個の歯から構成されている。
【0024】
又、第2プレート2の右側面には、凹部23が設けられている。この凹部23は、第2プレート2の右側面から所定の深さで、円形状に窪まされるようにして形成されており、円形状の内周壁23aを有する。
【0025】
また、第2プレート2の左側面には、嵌合部24が設けられている。この嵌合部24は、第2プレート2の左側面から所定量、突出させるようにして、上記第1プレート1の受容部13に回動自在に嵌まり込み得るように形成されている。
【0026】
この嵌合部24が、第1プレート1の受容部13に嵌まり込むことにより、第1プレート1の第1プレート用内歯12と第2プレート2の第2プレート用内歯22との夫々の中心が位置合わせされて同心になるようになっている。
【0027】
このように構成された第2プレート2は、この実施形態では、シート100のシートクッション101に固定的に取り付けられる。
【0028】
遊星ギア3は、この実施形態では、同一構成を採る3つから構成されている。各遊星ギア3は、10個の歯を有するギア部31と、ギア部31の軸方向の両側夫々に、軸方向に突設された軸部32とを備えている。
【0029】
保持部材は、図2の遊星ギア3の右側に配設された第1保持部材5aと、図2の第1プレート1の左側に配設された第2保持部材5bとの2つから構成されている。第1保持部材5aは、円板状の保持部材本体50と、3つの軸保持孔51と、3つの連結部材挿通孔52と、3つの突片53と、第2プレート2の内周壁23aとの間に後述の楔状空間55を形成した楔状空間区画部54と、付勢部材8を係止する係止部57(図8に図示)とを備えている。
【0030】
軸保持孔51は、上記遊星ギア3夫々の軸部32を回動自在に保持する軸保持部としてのもので、夫々は、保持部材本体50における中心から所定長さ(半径)の位置に周方向に沿って等間隔に配設されている。
【0031】
連結部材挿通孔52は、第1保持部材5aと第2保持部材5bとを連結する連結部材52aを通すためのもので、夫々は、保持部材本体50における軸保持孔51と略同じ半径位置であって隣接する2つの軸保持孔51の間に配設されている。
【0032】
突片53は、回動操作部材6に回動操作される被操作部としてもので、この実施形態では、保持部材本体50における軸保持孔51夫々の径方向の外側に、保持部材本体50の右側面から右側の回動操作部材6側に所定量だけ突設されている。
【0033】
楔状空間区画部54は、保持部材本体50の外周一部に、その保持部材本体50の外周一部をカットするようにして設けられている。
【0034】
係止部57は、図8に示すように保持部材本体50の外周部における楔状空間区画部54の周方向側に設けられており、保持部材本体50の外周一部を径方向内側にほぼ円弧状に窪ますようにして形成された係止凹部57bと、係止凹部57bから保持部材本体50の径方向外側に突設された止め部57aとを備えている。
【0035】
第2保持部材5bは、図2に示すように第1保持部材5aとほぼ同構成を採っている。ただし、この第2保持部材5bは、第1保持部材5aのように突片53及び楔状空間区画部54を有していない。
【0036】
上記のように構成された第1保持部材5aは、図4〜図6に示すように、第2プレート2の凹部23内に回動可能に、第2保持部材5bは第1プレート1の左方側に、夫々配設され、その状態で、夫々の軸保持孔51に遊星ギア3の軸部32が通されているとともに、夫々の連結部材挿通孔52に連結部材53が通されている。
【0037】
この状態で、遊星ギア3夫々のギア部31が第1プレート1の第1プレート用内歯12及び第2プレート2の第2プレート用内歯22に噛合し、第1保持部材5aの回動に伴い遊星ギア3夫々が回動駆動する。
【0038】
又、この状態で、図8に示すように第1保持部材5aの楔状空間区画部54と第2プレート2の凹部23の内周壁23aとの間に、楔状空間区画部54と内周壁23aとによって楔状空間55が区画形成されている。
【0039】
この楔状空間55は、幅広部55aと、その幅広部55aの周方向の図8の反時計方向側(一方側)に、幅広部55aよりも幅狭になるように形成された幅狭部55bと、幅広部55aと幅狭部55bとの間に、幅広部55aから幅狭部55bに漸次幅が狭くなるように形成され両者を連通した連通路55cとから構成されている。
【0040】
次に、太陽ギア4について説明する。太陽ギア4は、図2に示すように、この実施形態では、外周に形成された16個の歯を有するギア部41と、中心部に、軸方向に貫通されるようにして形成された軸挿通孔42とを備えている。
【0041】
そして、この太陽ギア4は、図3に示すように3つの遊星ギア3の径内側に、太陽ギア4のギア部41と遊星ギア3夫々のギア部31とが噛合するようにして回動可能に配設されている。
【0042】
次に、規制部材7について説明する。規制部材7は、この実施形態では、円柱状のローラから構成されており、その径が、楔状空間55の幅広部55aの幅よりも小さく、幅狭部55bの幅よりも大きく設定され、楔状空間55に、幅広部55aと幅狭部55bとの間を移動可能に配設されている。
【0043】
次に、回動操作部材6について説明する。回動操作部材6は、図2に示すように第1保持部材5aと同程度の大きさの円板状のものから構成されており、押圧操作部61a、61bと、連結部材逃がし用孔62とを備えている。
【0044】
押圧操作部61a、61bは、第1保持部材5aの突片53を図8の時計方向に押圧操作して第1保持部材5aを同方向に回動操作する第1押圧操作部61aと、第1保持部材5aの突片53を図8の反時計方向に押圧操作して第1保持部材5aを同方向に回動操作する第2押圧操作部61bとから構成されている。
【0045】
この実施形態では、第1押圧操作部61aと第2押圧操作部61bとは、突片受容孔61を区画形成した内周面の一部から構成されている。
【0046】
より詳しくは、図7に示すように回動操作部材6には、突片53夫々に対応する位置に、突片53夫々を受容可能に形成された3つの突片受容孔61が穿設されている。そして、第1押圧操作部61aと第2押圧操作部61bとは、その突片受容孔61を区画形成した内周面における周方向の両側部夫々から構成されている。
【0047】
このように構成された回動操作部材6は、回動軸65を介して操作ダイヤル66に回動不能に連結されている。
【0048】
詳しくは、シート100のシートバック102とシートクッション101との連結部に、それらに対して回動可能に配設された四角柱状の回動軸65が設けられている。この回動軸65は、図2に示すようにその第1端65aが第2保持部材5b、第1プレート1の第1プレート用孔11、第2プレート2の第2プレート用孔21、及び太陽ギア4の軸挿通孔42に、回動可能に通されているとともに、それらに通された第1端65aが、回動操作部材6の中心部に形成された四角形状の軸連結孔64に回動不能に通されている。
【0049】
更に、その軸連結孔64に通された回動軸65の第1端65aがリング状のカバー67を介して操作ダイヤル66に回動不能に連結され、操作ダイヤル66の回動に伴う回動軸65の回動によって回動操作部材6が回動するようになっている。
【0050】
次に、付勢部材8について説明する。この付勢部材8は、リング板状のものから構成され、その第1端に、規制部材7を押圧する規制部材押圧部81を備え、その第2端に、上記第1保持部材5aの係止部57に係止された被係止部82を備えている。
【0051】
規制部材押圧部81は、図8に示すように付勢部材8の第1端を径方向外側に折り曲げるようにして形成されている。被係止部82は、第1保持部材5aの係止部57の係止凹部57bに嵌まり込む係止凸部82aと、係止部57の止め部57aに当接する当接片82bとを備えている。
【0052】
そして、付勢部材8は、第1保持部材5aの外周面と第2プレート2の凹部23の内周壁23aとの間に形成される間隙56内に配設され、その状態で、被係止部82の係止凸部82aが第1保持部材5aの係止部57の係止凹部57bに嵌まり込んでいるとともに、当接片82bが係止部57の止め部57aに当接して係止している。
【0053】
又、付勢部材8の規制部材押圧部81は、楔状空間55内の規制部材7と当接して幅狭部55bの方向に押圧している。
【0054】
次に、規制解除部材9について説明する。この規制解除部材9は、図7に示すように回動操作部材6に連結された板状片から構成されている。この実施形態の規制解除部材9は、回動操作部材6の外周側に、回動操作部材6の左側面から第1保持部材5a側の左方側に所定量だけ突出するようにして回動操作部材6と一体的に形成されている。
【0055】
又、この規制解除部材9は、図8に示すように、上記第1保持部材5aの外周面と第2プレート2の凹部23の内周壁23aとの間に形成される間隙56内における規制部材7を挟んで付勢部材8の規制部材押圧部81と反対側の規制部材7の近傍に(付勢部材8の規制部材押圧部81とこの規制解除部材9との間に規制部材7が配設されるように)、回動操作部材6の回動に伴って間隙56内を周方向に移動し得るように配設されている。
【0056】
又、この実施形態では、規制部材7と規制解除部材9との間に生じる隙間t1は、各第1押圧操作部61aと突片53との間に生じる隙間t2よりも小さくなるように設定されている。
【0057】
次、以上のように構成されたリクライニング装置の動作について説明する。
【0058】
このリクライニング装置10が組み込まれたシート100のシートバック102に、図1に示すように、後傾倒方向(X方向)の力がかかり、図3に示すように、シートバック102に固定された第1プレート1が図3の時計方向に回動しようとする力P1がかかると、楔状空間55内の規制部材7が付勢部材8により楔状空間55の幅狭部55bに移動し、規制部材7が幅狭部55bで第1保持部材5aの楔状空間区画部54と第2プレート2の内周壁23aとの間に食い込むように入り込んで両者に挟まれる。
【0059】
これにより、楔状空間区画部54が規制部材7から反力P2(図8に図示)を受け、この反力P2によって保持した遊星ギア3の内の少なくとも1つの軸部32(図3では、上側の遊星ギア3の軸部32及び左下側の遊星ギア3の軸部32)を第2プレート2の径方向外側に押圧する。
【0060】
この押圧により、その軸部32を有する遊星ギア3のギア部31が第2プレート2の内歯22に押し付けられ、その結果、遊星ギア3のギア部31と第2プレート2の内歯22とのバックラッシ分のガタがなくなる。従って、シートバック102がガタつくようなことがなくなる。そして、シートバック102が後傾倒方向(X方向)に大きな力を受け続けても徐々に後傾倒していくようなことを確実に防止できる。
【0061】
一方、例えば着座者の意思でシートバック102を任意な角度に後傾倒する場合は、着座者が操作ダイヤル66(図2に図示)を把持して、図8の時計方向に回動操作する。
【0062】
これにより、回動軸65の回動によって回動操作部材6が同方向に回動する。その回動によって、図9に示すように、第1押圧操作部61aが第1保持部材5aの突片53に当接するよりも先に規制解除部材9が規制部材7に当接する。そして、回動操作部材6が更に回動すると、規制解除部材9が規制部材7を付勢部材8の付勢力に抗して押圧し楔状空間55の幅広部55aに押圧移動させる。
【0063】
この状態で、規制部材7による規制が解除された状態になり、第1保持部材5aが第2プレート2に対して回動可能状態になる。又、この規制解除状態で、図10に示すように第1押圧操作部61a夫々が第1保持部材5aの突片53夫々に当接する。
【0064】
この状態から、更に回動操作部材6が回動すると、規制解除部材9が楔状空間55の幅広部55aに移動させた状態に維持しながら、第1押圧操作部61aが第1保持部材5aの突片53を周方向の時計方向に押圧する。
【0065】
その押圧によって遊星ギア3が第1プレート1の内歯12及び第2プレート2の内歯22に沿って転がる。その際、第1プレート1の内歯12の数が第2プレート2の内歯22の数よりも少ないために、第1プレート1が第2プレート2に対して時計方向に回動し、シートバック102を適宜後傾倒させることができる。
【0066】
一方、シートバック102を任意な角度に前傾倒させる場合は、着座者が操作ダイヤル66(図2に図示)を把持して、上記とは反対方向の図11の反時計方向(Y方向)に回動操作する。
【0067】
これにより、回動軸65の回動によって回動操作部材6が同方向に回動し、その回動によって、図11に示すように、第2押圧操作部61bが第1保持部材5aの突片53に当接して軸部32を同方向に押圧する。
【0068】
又、その回動操作部材6の同方向への回動に際し、楔状空間区画部54も同方向に回動して、楔状空間55内の規制部材7が相対的に楔状空間55の幅広部55aに移動し、第1保持部材5aの楔状空間区画部54と第2プレート2の内周壁23aとの間に規制部材7が挟まれるようなことがなく、第1保持部材5aの回動が規制されることがない。
【0069】
従って、回動操作部材6の回動に伴い第2押圧操作部61bが第1保持部材5aの突片53を押圧し、その押圧によって遊星ギア3のギア部31が第1プレート1の内歯12及び第2プレート2の内歯22に沿って転がり、第1プレート1が第2プレート2に対して反時計方向に回動し、シートバック102を適宜前傾倒させることができる。
【0070】
次に、第2実施形態について、図12〜図21に基づいて説明する。この第2実施形態のリクライニング装置200は、図12に示すように、先の第1実施形態のものと同様に、第1プレート201と、第2プレート202と、複数の遊星ギア203と、太陽ギア204と、保持部材205a、205bと、保持部材205a、205bを回動操作する回動操作部材206と、保持部材205a、205bの回動を規制する規制部材207a、207bと、規制部材207a、207bを付勢した付勢部材208と、規制部材207a、207bによる規制を解除する規制解除部材209a、209bとを備えている。
【0071】
第1プレート201、第2プレート202、遊星ギア203、太陽ギア204及び第2保持部材5bは、先の第1実施形態のものと同構成を採っている。
【0072】
第2実施形態における第1保持部材205aは、図18に示すように保持部材本体250の外周に設けられた第1楔状空間区画部254aと、保持部材本体250の外周における第1楔状空間区画部254aの周方向側に設けられた第2楔状空間区画部254bとの2つの楔状空間区画部を備えたものとされている。
【0073】
第1楔状空間区画部254aは、先の第1実施形態の楔状空間区画部54aと同構成を採っており、この第1楔状空間区画部254aと第2プレート2の凹部223の内周壁223aとによって、第1楔状空間区画部254aと内周壁223aと間に、幅広部255aとその幅広部255aの周方向における図18の反時計方向側(一方向側)に配設された幅狭部255bとを有する第1楔状空間255が区画形成されている。
【0074】
第2楔状空間区画部254bは、第1保持部材205aの中心を通る中心線に対して第1楔状空間区画部254aと対称になるように形成されており、この第2楔状空間区画部254bと第2プレート202の凹部223の内周壁223aとによって、第2楔状空間区画部254bと内周壁23aと間に、幅広部256aとその幅広部256aの周方向における図18の時計方向側(他方向側)に配設された幅狭部256bとを有する第2楔状空間256が区画形成されている。
【0075】
第2実施形態の規制部材は、第1楔状空間255に配設された第1規制部材207aと、第2楔状空間256に配設された第2規制部材207bとの2つから構成されている。
【0076】
第2実施形態の付勢部材208は、その第1端に、第1規制部材207aを押圧する第1規制部材押圧部281を備えている。また、付勢部材208は、その第2端に、先の第1実施形態の被係止部82に代えて、第2規制部材207bを押圧する第2規制部材押圧部282を備えている。
【0077】
第2実施形態の規制解除部材は、図18に示すように第1規制部材207aによる規制を解除する第1規制解除部材209aと、第2規制部材207bによる規制を解除する第2規制解除部材209bとの2つを備えている。
【0078】
これらの第1規制解除部材209aと第2規制解除部材209bとは、図17に示すように回動操作部材206の外周部に、第1保持部材205aの第1楔状空間区画部254aと第2楔状空間区画部254bとの夫々に対応する位置に、回動操作部材206と一体的に形成されている。尚、第2実施形態におけるその他は、先の第1実施形態のものと同構成を採っている。
【0079】
以上のように構成された第2実施形態においては、シートバック102に後傾倒方向(X方向)の力がかかった場合は、先の第1実施形態の場合と同様に、第1楔状空間255内の第1規制部材207a等の作用によって、遊星ギア203のギア部231が第2プレート202の内歯222(図13に図示)に押し付けられ、遊星ギア203のギア部231と第2プレート202の内歯222とのバックラッシ分のガタがなくなり、シートバック102がガタつくようなことがなくなる。又、シートバック102が後傾倒方向に大きな力を受けても後傾倒するようなことを確実に防止できる。
【0080】
一方、シートバック102に前傾倒方向(図1のY方向)の力がかかった場合は、第2楔状空間256内の第2規制部材207bが相対的に幅狭部256bに移動し、第2規制部材207bが第1保持部材205aの第2楔状空間区画部254bと第2プレート202の内周壁223aとの間に食い込むようにして入り込む。
【0081】
これにより、第1保持部材205aが第2規制部材207bから反力を受けて遊星ギア203の内の少なくとも1つの軸部232(図では下側の遊星ギア203の軸部232)を第2プレート202の径方向外側に押圧する。そして、この押圧により、その軸部232を有する遊星ギア203のギア部231が第2プレート202の内歯222に押し付けられ、その結果、遊星ギア203のギア部231と第2プレート202の内歯222とのバックラッシ分のガタがなくなる。従って、シートバック102がガタつくようなことがなくなる。又、シートバック102が前傾倒方向(Y方向)に大きな力を受けた場合も前傾倒するようなことを確実に防止できる。
【0082】
又、着座者の意思でシートバック102を任意な角度に後傾倒する場合は、着座者が操作ダイヤル266(図12に図示)を把持して、図18の時計方向に回動操作する。
【0083】
これにより、図19に示すように、回動軸265の同方向への回動によって回動操作部材206が同方向に回動し、その回動によって、押圧操作部261aが第1保持部材205aの突片253に当接するよりも先に第1規制解除部材209aが第1規制部材207aに当接する。
【0084】
そして、回動操作部材206が更に回動すると、第1規制解除部材209aが第1規制部材207aを付勢部材208の付勢力に抗して押圧し第1楔状空間255の幅広部256aに移動させ、第1規制部材7による規制が解除された状態になる。
【0085】
この状態から、更に回動操作部材206が回動すると、図20に示すように押圧操作部261aが第1保持部材205aの突片253を周方向の時計方向に押圧し、先の第1実施形態の場合と同様に、第1プレート201が第2プレート202に対して時計方向に回動し、シートバック102を後傾倒させることができる。
【0086】
尚、回動操作部材206の上記方向への回動に際して、第2楔状空間256内の第2規制部材207bは、第2楔状空間256の幅広部256aに相対的に移動するため、回動操作部材206の上記方向への回動が妨げられることがない。
【0087】
一方、シートバック102を任意な角度に前傾倒させる場合は、着座者が操作ダイヤル266(図12に図示)を把持して、図18の反時計方向に回動操作する。
【0088】
これにより、図示しないが、回動軸265の同方向への回動によって回動操作部材206が同方向に回動し、その回動によって、押圧操作部261bが第1保持部材205aの突片253に当接するよりも先に第2規制解除部材209bが第1規制部材207bに当接し、回動操作部材206が更に回動すると、第2規制解除部材209bが第2規制部材207bを付勢部材208の付勢力に抗して押圧し第2楔状空間256の幅広部256aに移動させ、第2規制部材207bによる規制が解除された状態になり、第1プレート201が第2プレート202に対して反時計方向に回動し、シートバック102を前傾倒させることができる。
【0089】
尚、この場合も、その回動操作部材206の同方向への回動に際し、第1楔状空間255内の第1規制部材207aが相対的に第1楔状空間255の幅広部256aに移動するため、第1保持部材205aの回動が規制されることがない。
【0090】
尚、上記実施形態では、第1プレート1をシートバック102に、第2プレート2をシートクッション101に、夫々取り付けたが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。例えば第2プレート2をシートバック102に、第1プレート1をシートクッション101に、夫々取り付けるようにしてもよい。
【0091】
又、上記実施形態では、本発明のリクライニング装置を、車両用のシートに用いているが、電車や飛行機等の種々のシートに用いることができ、適宜変更使用できる。
【符号の説明】
【0092】
1、201 第1プレート
2、202 第2プレート
3、203 遊星ギア
4、204 太陽ギア
5a、205a 第1保持部材(保持部材)
6、206 回動操作部材
7、207a、207b 規制部材
8、208 付勢部材
9,209 規制解除部材
55、255、256 楔状空間
10、200 リクライニング装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のシートのリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等のシートのリクライニング装置は知られており、例えば特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示された装置は、互いに同軸上で回動自在に支持され且つその対向する円孔内に内ギア部を有するベースプレート(第1プレート)及びアームプレート(第2プレート)と、これら両プレートの回動軸上に設けられた制御ギアと、この制御ギアの周囲でこの制御ギアと前記各プレートの内ギア部とに噛合した状態で配置され且つその軸心位置にボス部が突設されている複数個の遊星ギアと、これら各遊星ギアをそれぞれ所定の公転軌道位置で回動自在に保持する保持体とを備え、この保持体を、前記各遊星ギアのボス部にその回動を許容した状態で接し且つこれらの遊星ギアを前記各プレート円孔内の内ギア部に噛合させるように放射方向に付勢する形状をもってばね材により形成したものである。このようにして、両プレートの内歯と遊星ギアとがバックラッシ等によるがたつきを生じ難いものにし、ベースプレートとアームプレートとのがたつきを抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−1335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のようなばね材からなる保持体で遊星ギアを放射方向に付勢しても、例えば保持体の付勢力以上の力がシ−トバックにかかると遊星ギアが保持体の付勢力に抗して径内側に移動して両プレートの内歯と遊星ギアとがたつきを生じる場合がある。その一方、保持体の付勢力を強くすると、遊星ギアの回動抵抗が大きくなってしまい、円滑に回動できなくなってしまう。従って、特許文献1に記載のようなばね材からなる保持体を用いた方法ではプレートの内歯と遊星ギアとのがたつきを十分に抑え難いという問題点がある。
【0005】
又、特許文献1に記載のものにおいては、シ−トバックに繰り返し後傾倒方向の力がかかった状態が続くと、その力でプレートの内歯を遊星ギアが少しずつ徐々に転がり動く場合があり、その結果、シ−トバックがシートクッションに対して徐々に倒れ動いて固定状態を維持し難い場合がある。
【0006】
本発明は、シ−トバックに繰り返し力がかかった場合に、プレートの内歯と遊星ギアとのがたつきが生じ難く、シ−トバックを確実に固定状態に維持できるリクライニング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1プレートと、前記第1プレートに対して回動可能な第2プレートと、前記第1プレート及び第2プレートの夫々に設けられた内歯に噛合した複数の遊星ギアとを備えたリクライニング装置であって、前記第1プレートと第2プレートとのいずれか一方の側面に形成された内周壁を有する凹部と、前記凹部内に回動可能に配設された保持部材と、前記保持部材の回動を規制する規制部材とを備え、前記保持部材は、前記遊星ギアを回動可能に保持しているとともに、前記凹部の内周壁と対向した楔状空間区画部を備え、前記楔状空間区画部は、当該楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に、幅広部とその幅広部の周方向側に前記幅広部よりも幅狭な幅狭部とを有する楔状空間が区画形成されるように構成され、前記規制部材は、前記楔状空間に移動可能に配設されているとともに、付勢部材により、前記保持部材の回動に際して前記幅狭部に食い込むように入り込んで前記保持部材の回動を規制できるように構成されていることを特徴とするリクライニング装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、規制部材を幅狭部に食い込ませるように入り込ませることで、保持部材が規制部材から反力を受け、その反力によって、保持部材は、保持した遊星ギアを第1プレート及び第2プレート夫々の内歯に押し付け、遊星ギアと第1プレート及び第2プレート夫々の内歯との両者間に隙間が無い状態にできる。従って、遊星ギアと第1プレート及び第2プレート夫々の内歯とのがたつきを防止できるとともに、シ−トバックを確実に固定状態に維持できる。
【0009】
又、楔状空間内の規制部材を、付勢部材によって幅狭部側に付勢しているため、規制部材が保持部材に連動して幅広部側に移動するのを防止でき、規制部材を確実に幅狭部側に相対的に移動させることができる。
【0010】
他の一態様では、上記リクライニング装置において、前記保持部材を回動操作する回動操作部材と、前記規制部材による規制を解除する規制解除部材とを、更に備え、前記規制解除部材は、前記回動操作部材による保持部材の回動操作に際し前記付勢部材の付勢力に抗して前記規制部材を前記幅狭部から前記幅広部へ押圧移動させて前記規制を解除し得るように、前記回動操作部材に連結されている。
【0011】
この構成によれば、例えば着座者が回動操作部材を操作し保持部材を回動操作してシートバックを傾倒操作する場合に、保持部材の回動に際して規制解除部材が規制部材を幅狭部から幅広部へ押圧移動させるため、規制部材が幅狭部に入り込んで保持部材が回動し難くなるようなことを防止でき、回動操作部材によって保持部材を円滑に回動操作できる。
【0012】
他の一態様では、上記リクライニング装置において、前記回動操作部材は、前記保持部材を押圧して回動させる押圧操作部を備え、前記規制解除部材は、前記回動操作部材による前記保持部材の回動操作に際し、前記押圧操作部が前記回動操作部材を押圧するよりも前に前記規制部材を前記幅狭部から前記幅広部へ押圧移動させ得るように構成されている。
【0013】
この構成によれば、回動操作部材による保持部材の回動操作に際し、押圧操作部が保持部材を押圧するに先立って規制部材を幅狭部から幅広部へ押圧移動させるため、回動操作部材による保持部材の回動操作を規制部材による規制を解除した状態で行うことができ、保持部材の回動操作を円滑に行うことができる。
【0014】
他の一態様では、上記リクライニング装置において、前記楔状空間区画部は、第1楔状空間区画部と、第2楔状空間区画部とから構成され、前記第1楔状空間区画部は、当該第1楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に第1楔状空間を区画形成するように構成され、前記第1楔状空間は、当該第1楔状空間の幅広部がその第1楔状空間における周方向の一方側に、当該第1楔状空間の幅狭部がその第1楔状空間における周方向の他方側に配設されるように構成され、前記第2楔状空間区画部は、当該第2楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に第2楔状空間を区画形成するように構成され、前記第2楔状空間は、当該第2楔状空間の幅狭部がその第2楔状空間における周方向の一方側に、当該第2楔状空間の幅広部がその第2楔状空間における周方向の他方側に配設されるように構成され、前記規制部材は、前記第1楔状空間と第2楔状空間との夫々に配設され、前記付勢部材は、前記第1楔状空間と第2楔状空間との夫々における前記規制部材夫々を前記幅狭部の方向に付勢している。
【0015】
この構成によれば、第1楔状空間と第2楔状空間とによって、シートバックが前に傾倒する方向の力がかかった場合でも、後に傾倒する方向の力がかかった場合でも、第1楔状空間と第2楔状空間との何れか一方の幅狭部で規制部材を食い込ませる方向に入り込ませることで、保持部材が保持した遊星ギアを第1プレート及び第2プレート夫々の内歯に押し付け、遊星ギアと第1プレート及び第2プレート夫々の内歯との両者間の隙間が無い状態にできるとともに、保持部材が徐々に動くようなことを確実に規制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のリクライニング装置は、シ−トバックに繰り返し荷重がかかった場合に、プレートの内歯と遊星ギアとのがたつきが生じ難く、しかも、シ−トバックを確実に固定状態に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のリクライニング装置を装着した自動車用シートの一実施形態の側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のリクライニング装置の要部の分解斜視図である。
【図3】図2のリクライニング装置の組付け状態の内部構造を表した説明図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】左前方側からの回動操作部材の斜視図である。
【図8】図3における保持部材と規制部材と規制解除部材との位置関係を示す説明図である。
【図9】図8の状態から回動操作部材が時計方向に回動して規制解除部材が規制部材に当接した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【図10】図9の状態から、更に回動操作部材が回動した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【図11】図8の状態から回動操作部材が反時計方向に回動した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【図12】第2実施形態のリクライニング装置の要部の分解斜視図である。
【図13】図12のリクライニング装置の組付け状態の内部構造の説明図である。
【図14】図13のXIV−XIV線断面図である。
【図15】図13のXV−XV線断面図である。
【図16】図13のXVI−XVI線断面図である。
【図17】第2実施形態の回動操作部材の左前方側からの斜視図である。
【図18】図14における保持部材と規制部材と規制解除部材との位置関係を示す説明図である。
【図19】図18の状態から回動操作部材が時計方向に回動して第1規制解除部材が第1規制部材に当接した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【図20】図19の状態から、更に回動操作部材が回動した状態の上記位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のリクライニング装置を装着した自動車用シートの一実施形態の側面図、図2は、本発明の第1実施形態のリクライニング装置の要部の分解斜視図、図3は、図2のリクライニング装置の組付け状態の内部構造の説明図、図4は、図3のIV−IV線断面図、図5は、図3のV−V線断面図、図6は、図3のVI−VI線断面図である。
【0019】
本発明の第1実施形態のリクライニング装置10は、この実施形態では、図1に示すように自動車用シート100に用いられるように構成されている。第1実施形態のリクライニング装置10は、図2〜図6に示すように第1プレート1と、第2プレート2と、複数の遊星ギア3と、太陽ギア4と、遊星ギア3を保持した保持部材5a、5bと、保持部材5a、5bを回動操作する回動操作部材6と、保持部材5a、5bの回動を規制する規制部材7と、規制部材7を付勢する付勢部材8と、規制部材7による規制を解除する規制解除部材9(図7参照)とを備えている。
【0020】
第1プレート1は、中心部に第1プレート用孔11を有するリング板状のものから構成されている。この第1プレート用孔11を区画した内周部には、全周に渡って第1プレート用内歯12が設けられている。この実施形態では、第1プレート用内歯12は、38個の歯から構成されている。
【0021】
又、第1プレート1の右側面には、受容部13が設けられている。受容部13は、第1プレート1の右側面から所定の深さで、円形状に窪まされるようにして形成されている。
【0022】
このように構成された第1プレート1は、この実施形態では、シート100のシートバック102(図1参照)に固定的に取り付けられる。
【0023】
第2プレート2は、第1プレート1と略同形状のもので、中心部に第2プレート用孔21を有するリング板状のものから構成されており、第2プレート用孔21を区画した内周部には、全周に渡って第2プレート用内歯22が設けられている。この実施形態では、第2プレート用内歯22は、35個の歯から構成されている。
【0024】
又、第2プレート2の右側面には、凹部23が設けられている。この凹部23は、第2プレート2の右側面から所定の深さで、円形状に窪まされるようにして形成されており、円形状の内周壁23aを有する。
【0025】
また、第2プレート2の左側面には、嵌合部24が設けられている。この嵌合部24は、第2プレート2の左側面から所定量、突出させるようにして、上記第1プレート1の受容部13に回動自在に嵌まり込み得るように形成されている。
【0026】
この嵌合部24が、第1プレート1の受容部13に嵌まり込むことにより、第1プレート1の第1プレート用内歯12と第2プレート2の第2プレート用内歯22との夫々の中心が位置合わせされて同心になるようになっている。
【0027】
このように構成された第2プレート2は、この実施形態では、シート100のシートクッション101に固定的に取り付けられる。
【0028】
遊星ギア3は、この実施形態では、同一構成を採る3つから構成されている。各遊星ギア3は、10個の歯を有するギア部31と、ギア部31の軸方向の両側夫々に、軸方向に突設された軸部32とを備えている。
【0029】
保持部材は、図2の遊星ギア3の右側に配設された第1保持部材5aと、図2の第1プレート1の左側に配設された第2保持部材5bとの2つから構成されている。第1保持部材5aは、円板状の保持部材本体50と、3つの軸保持孔51と、3つの連結部材挿通孔52と、3つの突片53と、第2プレート2の内周壁23aとの間に後述の楔状空間55を形成した楔状空間区画部54と、付勢部材8を係止する係止部57(図8に図示)とを備えている。
【0030】
軸保持孔51は、上記遊星ギア3夫々の軸部32を回動自在に保持する軸保持部としてのもので、夫々は、保持部材本体50における中心から所定長さ(半径)の位置に周方向に沿って等間隔に配設されている。
【0031】
連結部材挿通孔52は、第1保持部材5aと第2保持部材5bとを連結する連結部材52aを通すためのもので、夫々は、保持部材本体50における軸保持孔51と略同じ半径位置であって隣接する2つの軸保持孔51の間に配設されている。
【0032】
突片53は、回動操作部材6に回動操作される被操作部としてもので、この実施形態では、保持部材本体50における軸保持孔51夫々の径方向の外側に、保持部材本体50の右側面から右側の回動操作部材6側に所定量だけ突設されている。
【0033】
楔状空間区画部54は、保持部材本体50の外周一部に、その保持部材本体50の外周一部をカットするようにして設けられている。
【0034】
係止部57は、図8に示すように保持部材本体50の外周部における楔状空間区画部54の周方向側に設けられており、保持部材本体50の外周一部を径方向内側にほぼ円弧状に窪ますようにして形成された係止凹部57bと、係止凹部57bから保持部材本体50の径方向外側に突設された止め部57aとを備えている。
【0035】
第2保持部材5bは、図2に示すように第1保持部材5aとほぼ同構成を採っている。ただし、この第2保持部材5bは、第1保持部材5aのように突片53及び楔状空間区画部54を有していない。
【0036】
上記のように構成された第1保持部材5aは、図4〜図6に示すように、第2プレート2の凹部23内に回動可能に、第2保持部材5bは第1プレート1の左方側に、夫々配設され、その状態で、夫々の軸保持孔51に遊星ギア3の軸部32が通されているとともに、夫々の連結部材挿通孔52に連結部材53が通されている。
【0037】
この状態で、遊星ギア3夫々のギア部31が第1プレート1の第1プレート用内歯12及び第2プレート2の第2プレート用内歯22に噛合し、第1保持部材5aの回動に伴い遊星ギア3夫々が回動駆動する。
【0038】
又、この状態で、図8に示すように第1保持部材5aの楔状空間区画部54と第2プレート2の凹部23の内周壁23aとの間に、楔状空間区画部54と内周壁23aとによって楔状空間55が区画形成されている。
【0039】
この楔状空間55は、幅広部55aと、その幅広部55aの周方向の図8の反時計方向側(一方側)に、幅広部55aよりも幅狭になるように形成された幅狭部55bと、幅広部55aと幅狭部55bとの間に、幅広部55aから幅狭部55bに漸次幅が狭くなるように形成され両者を連通した連通路55cとから構成されている。
【0040】
次に、太陽ギア4について説明する。太陽ギア4は、図2に示すように、この実施形態では、外周に形成された16個の歯を有するギア部41と、中心部に、軸方向に貫通されるようにして形成された軸挿通孔42とを備えている。
【0041】
そして、この太陽ギア4は、図3に示すように3つの遊星ギア3の径内側に、太陽ギア4のギア部41と遊星ギア3夫々のギア部31とが噛合するようにして回動可能に配設されている。
【0042】
次に、規制部材7について説明する。規制部材7は、この実施形態では、円柱状のローラから構成されており、その径が、楔状空間55の幅広部55aの幅よりも小さく、幅狭部55bの幅よりも大きく設定され、楔状空間55に、幅広部55aと幅狭部55bとの間を移動可能に配設されている。
【0043】
次に、回動操作部材6について説明する。回動操作部材6は、図2に示すように第1保持部材5aと同程度の大きさの円板状のものから構成されており、押圧操作部61a、61bと、連結部材逃がし用孔62とを備えている。
【0044】
押圧操作部61a、61bは、第1保持部材5aの突片53を図8の時計方向に押圧操作して第1保持部材5aを同方向に回動操作する第1押圧操作部61aと、第1保持部材5aの突片53を図8の反時計方向に押圧操作して第1保持部材5aを同方向に回動操作する第2押圧操作部61bとから構成されている。
【0045】
この実施形態では、第1押圧操作部61aと第2押圧操作部61bとは、突片受容孔61を区画形成した内周面の一部から構成されている。
【0046】
より詳しくは、図7に示すように回動操作部材6には、突片53夫々に対応する位置に、突片53夫々を受容可能に形成された3つの突片受容孔61が穿設されている。そして、第1押圧操作部61aと第2押圧操作部61bとは、その突片受容孔61を区画形成した内周面における周方向の両側部夫々から構成されている。
【0047】
このように構成された回動操作部材6は、回動軸65を介して操作ダイヤル66に回動不能に連結されている。
【0048】
詳しくは、シート100のシートバック102とシートクッション101との連結部に、それらに対して回動可能に配設された四角柱状の回動軸65が設けられている。この回動軸65は、図2に示すようにその第1端65aが第2保持部材5b、第1プレート1の第1プレート用孔11、第2プレート2の第2プレート用孔21、及び太陽ギア4の軸挿通孔42に、回動可能に通されているとともに、それらに通された第1端65aが、回動操作部材6の中心部に形成された四角形状の軸連結孔64に回動不能に通されている。
【0049】
更に、その軸連結孔64に通された回動軸65の第1端65aがリング状のカバー67を介して操作ダイヤル66に回動不能に連結され、操作ダイヤル66の回動に伴う回動軸65の回動によって回動操作部材6が回動するようになっている。
【0050】
次に、付勢部材8について説明する。この付勢部材8は、リング板状のものから構成され、その第1端に、規制部材7を押圧する規制部材押圧部81を備え、その第2端に、上記第1保持部材5aの係止部57に係止された被係止部82を備えている。
【0051】
規制部材押圧部81は、図8に示すように付勢部材8の第1端を径方向外側に折り曲げるようにして形成されている。被係止部82は、第1保持部材5aの係止部57の係止凹部57bに嵌まり込む係止凸部82aと、係止部57の止め部57aに当接する当接片82bとを備えている。
【0052】
そして、付勢部材8は、第1保持部材5aの外周面と第2プレート2の凹部23の内周壁23aとの間に形成される間隙56内に配設され、その状態で、被係止部82の係止凸部82aが第1保持部材5aの係止部57の係止凹部57bに嵌まり込んでいるとともに、当接片82bが係止部57の止め部57aに当接して係止している。
【0053】
又、付勢部材8の規制部材押圧部81は、楔状空間55内の規制部材7と当接して幅狭部55bの方向に押圧している。
【0054】
次に、規制解除部材9について説明する。この規制解除部材9は、図7に示すように回動操作部材6に連結された板状片から構成されている。この実施形態の規制解除部材9は、回動操作部材6の外周側に、回動操作部材6の左側面から第1保持部材5a側の左方側に所定量だけ突出するようにして回動操作部材6と一体的に形成されている。
【0055】
又、この規制解除部材9は、図8に示すように、上記第1保持部材5aの外周面と第2プレート2の凹部23の内周壁23aとの間に形成される間隙56内における規制部材7を挟んで付勢部材8の規制部材押圧部81と反対側の規制部材7の近傍に(付勢部材8の規制部材押圧部81とこの規制解除部材9との間に規制部材7が配設されるように)、回動操作部材6の回動に伴って間隙56内を周方向に移動し得るように配設されている。
【0056】
又、この実施形態では、規制部材7と規制解除部材9との間に生じる隙間t1は、各第1押圧操作部61aと突片53との間に生じる隙間t2よりも小さくなるように設定されている。
【0057】
次、以上のように構成されたリクライニング装置の動作について説明する。
【0058】
このリクライニング装置10が組み込まれたシート100のシートバック102に、図1に示すように、後傾倒方向(X方向)の力がかかり、図3に示すように、シートバック102に固定された第1プレート1が図3の時計方向に回動しようとする力P1がかかると、楔状空間55内の規制部材7が付勢部材8により楔状空間55の幅狭部55bに移動し、規制部材7が幅狭部55bで第1保持部材5aの楔状空間区画部54と第2プレート2の内周壁23aとの間に食い込むように入り込んで両者に挟まれる。
【0059】
これにより、楔状空間区画部54が規制部材7から反力P2(図8に図示)を受け、この反力P2によって保持した遊星ギア3の内の少なくとも1つの軸部32(図3では、上側の遊星ギア3の軸部32及び左下側の遊星ギア3の軸部32)を第2プレート2の径方向外側に押圧する。
【0060】
この押圧により、その軸部32を有する遊星ギア3のギア部31が第2プレート2の内歯22に押し付けられ、その結果、遊星ギア3のギア部31と第2プレート2の内歯22とのバックラッシ分のガタがなくなる。従って、シートバック102がガタつくようなことがなくなる。そして、シートバック102が後傾倒方向(X方向)に大きな力を受け続けても徐々に後傾倒していくようなことを確実に防止できる。
【0061】
一方、例えば着座者の意思でシートバック102を任意な角度に後傾倒する場合は、着座者が操作ダイヤル66(図2に図示)を把持して、図8の時計方向に回動操作する。
【0062】
これにより、回動軸65の回動によって回動操作部材6が同方向に回動する。その回動によって、図9に示すように、第1押圧操作部61aが第1保持部材5aの突片53に当接するよりも先に規制解除部材9が規制部材7に当接する。そして、回動操作部材6が更に回動すると、規制解除部材9が規制部材7を付勢部材8の付勢力に抗して押圧し楔状空間55の幅広部55aに押圧移動させる。
【0063】
この状態で、規制部材7による規制が解除された状態になり、第1保持部材5aが第2プレート2に対して回動可能状態になる。又、この規制解除状態で、図10に示すように第1押圧操作部61a夫々が第1保持部材5aの突片53夫々に当接する。
【0064】
この状態から、更に回動操作部材6が回動すると、規制解除部材9が楔状空間55の幅広部55aに移動させた状態に維持しながら、第1押圧操作部61aが第1保持部材5aの突片53を周方向の時計方向に押圧する。
【0065】
その押圧によって遊星ギア3が第1プレート1の内歯12及び第2プレート2の内歯22に沿って転がる。その際、第1プレート1の内歯12の数が第2プレート2の内歯22の数よりも少ないために、第1プレート1が第2プレート2に対して時計方向に回動し、シートバック102を適宜後傾倒させることができる。
【0066】
一方、シートバック102を任意な角度に前傾倒させる場合は、着座者が操作ダイヤル66(図2に図示)を把持して、上記とは反対方向の図11の反時計方向(Y方向)に回動操作する。
【0067】
これにより、回動軸65の回動によって回動操作部材6が同方向に回動し、その回動によって、図11に示すように、第2押圧操作部61bが第1保持部材5aの突片53に当接して軸部32を同方向に押圧する。
【0068】
又、その回動操作部材6の同方向への回動に際し、楔状空間区画部54も同方向に回動して、楔状空間55内の規制部材7が相対的に楔状空間55の幅広部55aに移動し、第1保持部材5aの楔状空間区画部54と第2プレート2の内周壁23aとの間に規制部材7が挟まれるようなことがなく、第1保持部材5aの回動が規制されることがない。
【0069】
従って、回動操作部材6の回動に伴い第2押圧操作部61bが第1保持部材5aの突片53を押圧し、その押圧によって遊星ギア3のギア部31が第1プレート1の内歯12及び第2プレート2の内歯22に沿って転がり、第1プレート1が第2プレート2に対して反時計方向に回動し、シートバック102を適宜前傾倒させることができる。
【0070】
次に、第2実施形態について、図12〜図21に基づいて説明する。この第2実施形態のリクライニング装置200は、図12に示すように、先の第1実施形態のものと同様に、第1プレート201と、第2プレート202と、複数の遊星ギア203と、太陽ギア204と、保持部材205a、205bと、保持部材205a、205bを回動操作する回動操作部材206と、保持部材205a、205bの回動を規制する規制部材207a、207bと、規制部材207a、207bを付勢した付勢部材208と、規制部材207a、207bによる規制を解除する規制解除部材209a、209bとを備えている。
【0071】
第1プレート201、第2プレート202、遊星ギア203、太陽ギア204及び第2保持部材5bは、先の第1実施形態のものと同構成を採っている。
【0072】
第2実施形態における第1保持部材205aは、図18に示すように保持部材本体250の外周に設けられた第1楔状空間区画部254aと、保持部材本体250の外周における第1楔状空間区画部254aの周方向側に設けられた第2楔状空間区画部254bとの2つの楔状空間区画部を備えたものとされている。
【0073】
第1楔状空間区画部254aは、先の第1実施形態の楔状空間区画部54aと同構成を採っており、この第1楔状空間区画部254aと第2プレート2の凹部223の内周壁223aとによって、第1楔状空間区画部254aと内周壁223aと間に、幅広部255aとその幅広部255aの周方向における図18の反時計方向側(一方向側)に配設された幅狭部255bとを有する第1楔状空間255が区画形成されている。
【0074】
第2楔状空間区画部254bは、第1保持部材205aの中心を通る中心線に対して第1楔状空間区画部254aと対称になるように形成されており、この第2楔状空間区画部254bと第2プレート202の凹部223の内周壁223aとによって、第2楔状空間区画部254bと内周壁23aと間に、幅広部256aとその幅広部256aの周方向における図18の時計方向側(他方向側)に配設された幅狭部256bとを有する第2楔状空間256が区画形成されている。
【0075】
第2実施形態の規制部材は、第1楔状空間255に配設された第1規制部材207aと、第2楔状空間256に配設された第2規制部材207bとの2つから構成されている。
【0076】
第2実施形態の付勢部材208は、その第1端に、第1規制部材207aを押圧する第1規制部材押圧部281を備えている。また、付勢部材208は、その第2端に、先の第1実施形態の被係止部82に代えて、第2規制部材207bを押圧する第2規制部材押圧部282を備えている。
【0077】
第2実施形態の規制解除部材は、図18に示すように第1規制部材207aによる規制を解除する第1規制解除部材209aと、第2規制部材207bによる規制を解除する第2規制解除部材209bとの2つを備えている。
【0078】
これらの第1規制解除部材209aと第2規制解除部材209bとは、図17に示すように回動操作部材206の外周部に、第1保持部材205aの第1楔状空間区画部254aと第2楔状空間区画部254bとの夫々に対応する位置に、回動操作部材206と一体的に形成されている。尚、第2実施形態におけるその他は、先の第1実施形態のものと同構成を採っている。
【0079】
以上のように構成された第2実施形態においては、シートバック102に後傾倒方向(X方向)の力がかかった場合は、先の第1実施形態の場合と同様に、第1楔状空間255内の第1規制部材207a等の作用によって、遊星ギア203のギア部231が第2プレート202の内歯222(図13に図示)に押し付けられ、遊星ギア203のギア部231と第2プレート202の内歯222とのバックラッシ分のガタがなくなり、シートバック102がガタつくようなことがなくなる。又、シートバック102が後傾倒方向に大きな力を受けても後傾倒するようなことを確実に防止できる。
【0080】
一方、シートバック102に前傾倒方向(図1のY方向)の力がかかった場合は、第2楔状空間256内の第2規制部材207bが相対的に幅狭部256bに移動し、第2規制部材207bが第1保持部材205aの第2楔状空間区画部254bと第2プレート202の内周壁223aとの間に食い込むようにして入り込む。
【0081】
これにより、第1保持部材205aが第2規制部材207bから反力を受けて遊星ギア203の内の少なくとも1つの軸部232(図では下側の遊星ギア203の軸部232)を第2プレート202の径方向外側に押圧する。そして、この押圧により、その軸部232を有する遊星ギア203のギア部231が第2プレート202の内歯222に押し付けられ、その結果、遊星ギア203のギア部231と第2プレート202の内歯222とのバックラッシ分のガタがなくなる。従って、シートバック102がガタつくようなことがなくなる。又、シートバック102が前傾倒方向(Y方向)に大きな力を受けた場合も前傾倒するようなことを確実に防止できる。
【0082】
又、着座者の意思でシートバック102を任意な角度に後傾倒する場合は、着座者が操作ダイヤル266(図12に図示)を把持して、図18の時計方向に回動操作する。
【0083】
これにより、図19に示すように、回動軸265の同方向への回動によって回動操作部材206が同方向に回動し、その回動によって、押圧操作部261aが第1保持部材205aの突片253に当接するよりも先に第1規制解除部材209aが第1規制部材207aに当接する。
【0084】
そして、回動操作部材206が更に回動すると、第1規制解除部材209aが第1規制部材207aを付勢部材208の付勢力に抗して押圧し第1楔状空間255の幅広部256aに移動させ、第1規制部材7による規制が解除された状態になる。
【0085】
この状態から、更に回動操作部材206が回動すると、図20に示すように押圧操作部261aが第1保持部材205aの突片253を周方向の時計方向に押圧し、先の第1実施形態の場合と同様に、第1プレート201が第2プレート202に対して時計方向に回動し、シートバック102を後傾倒させることができる。
【0086】
尚、回動操作部材206の上記方向への回動に際して、第2楔状空間256内の第2規制部材207bは、第2楔状空間256の幅広部256aに相対的に移動するため、回動操作部材206の上記方向への回動が妨げられることがない。
【0087】
一方、シートバック102を任意な角度に前傾倒させる場合は、着座者が操作ダイヤル266(図12に図示)を把持して、図18の反時計方向に回動操作する。
【0088】
これにより、図示しないが、回動軸265の同方向への回動によって回動操作部材206が同方向に回動し、その回動によって、押圧操作部261bが第1保持部材205aの突片253に当接するよりも先に第2規制解除部材209bが第1規制部材207bに当接し、回動操作部材206が更に回動すると、第2規制解除部材209bが第2規制部材207bを付勢部材208の付勢力に抗して押圧し第2楔状空間256の幅広部256aに移動させ、第2規制部材207bによる規制が解除された状態になり、第1プレート201が第2プレート202に対して反時計方向に回動し、シートバック102を前傾倒させることができる。
【0089】
尚、この場合も、その回動操作部材206の同方向への回動に際し、第1楔状空間255内の第1規制部材207aが相対的に第1楔状空間255の幅広部256aに移動するため、第1保持部材205aの回動が規制されることがない。
【0090】
尚、上記実施形態では、第1プレート1をシートバック102に、第2プレート2をシートクッション101に、夫々取り付けたが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。例えば第2プレート2をシートバック102に、第1プレート1をシートクッション101に、夫々取り付けるようにしてもよい。
【0091】
又、上記実施形態では、本発明のリクライニング装置を、車両用のシートに用いているが、電車や飛行機等の種々のシートに用いることができ、適宜変更使用できる。
【符号の説明】
【0092】
1、201 第1プレート
2、202 第2プレート
3、203 遊星ギア
4、204 太陽ギア
5a、205a 第1保持部材(保持部材)
6、206 回動操作部材
7、207a、207b 規制部材
8、208 付勢部材
9,209 規制解除部材
55、255、256 楔状空間
10、200 リクライニング装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プレートと、前記第1プレートに対して回動可能な第2プレートと、前記第1プレート及び第2プレートの夫々に設けられた内歯に噛合した複数の遊星ギアとを備えたリクライニング装置であって、
前記第1プレートと第2プレートとのいずれか一方の側面に形成された内周壁を有する凹部と、前記凹部内に回動可能に配設された保持部材と、前記保持部材の回動を規制する規制部材とを備え、
前記保持部材は、前記遊星ギアを回動可能に保持しているとともに、前記凹部の内周壁と対向した楔状空間区画部を備え、
前記楔状空間区画部は、当該楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に、幅広部とその幅広部の周方向側に前記幅広部よりも幅狭な幅狭部とを有する楔状空間が区画形成されるように構成され、
前記規制部材は、前記楔状空間に移動可能に配設されているとともに、付勢部材により前記幅狭部に食い込む方向に付勢され前記保持部材の回動を規制できるように構成されていることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記保持部材を回動操作する回動操作部材と、前記規制部材による規制を解除する規制解除部材とを、更に備え、
前記規制解除部材は、前記回動操作部材による保持部材の回動操作に際し前記付勢部材の付勢力に抗して前記規制部材を前記幅狭部から前記幅広部へ押圧移動させて前記規制を解除し得るように構成されていることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置。
【請求項3】
前記回動操作部材は、前記保持部材を押圧して回動させる押圧操作部を備え、
前記規制解除部材は、前記回動操作部材による前記保持部材の回動操作に際し、前記押圧操作部が前記回動操作部材を押圧するよりも前に前記規制部材を前記幅狭部から前記幅広部へ押圧移動させ得るように構成されていることを特徴とする請求項2記載のリクライニング装置。
【請求項4】
前記楔状空間区画部は、第1楔状空間区画部と、第2楔状空間区画部とから構成され、
前記第1楔状空間区画部は、当該第1楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に第1楔状空間を区画形成するように構成され、
前記第1楔状空間は、当該第1楔状空間の幅広部がその第1楔状空間における周方向の一方側に、当該第1楔状空間の幅狭部がその第1楔状空間における周方向の他方側に配設されるように構成され、
前記第2楔状空間区画部は、当該第2楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に第2楔状空間を区画形成するように構成され、
前記第2楔状空間は、当該第2楔状空間の幅狭部がその第2楔状空間における周方向の一方側に、当該第2楔状空間の幅広部がその第2楔状空間における周方向の他方側に配設されるように構成され、
前記規制部材は、前記第1楔状空間と第2楔状空間との夫々に配設され、
前記付勢部材は、前記第1楔状空間と第2楔状空間との夫々における前記規制部材夫々を前記幅狭部の方向に付勢していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のリクライニング装置。
【請求項1】
第1プレートと、前記第1プレートに対して回動可能な第2プレートと、前記第1プレート及び第2プレートの夫々に設けられた内歯に噛合した複数の遊星ギアとを備えたリクライニング装置であって、
前記第1プレートと第2プレートとのいずれか一方の側面に形成された内周壁を有する凹部と、前記凹部内に回動可能に配設された保持部材と、前記保持部材の回動を規制する規制部材とを備え、
前記保持部材は、前記遊星ギアを回動可能に保持しているとともに、前記凹部の内周壁と対向した楔状空間区画部を備え、
前記楔状空間区画部は、当該楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に、幅広部とその幅広部の周方向側に前記幅広部よりも幅狭な幅狭部とを有する楔状空間が区画形成されるように構成され、
前記規制部材は、前記楔状空間に移動可能に配設されているとともに、付勢部材により前記幅狭部に食い込む方向に付勢され前記保持部材の回動を規制できるように構成されていることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記保持部材を回動操作する回動操作部材と、前記規制部材による規制を解除する規制解除部材とを、更に備え、
前記規制解除部材は、前記回動操作部材による保持部材の回動操作に際し前記付勢部材の付勢力に抗して前記規制部材を前記幅狭部から前記幅広部へ押圧移動させて前記規制を解除し得るように構成されていることを特徴とする請求項1記載のリクライニング装置。
【請求項3】
前記回動操作部材は、前記保持部材を押圧して回動させる押圧操作部を備え、
前記規制解除部材は、前記回動操作部材による前記保持部材の回動操作に際し、前記押圧操作部が前記回動操作部材を押圧するよりも前に前記規制部材を前記幅狭部から前記幅広部へ押圧移動させ得るように構成されていることを特徴とする請求項2記載のリクライニング装置。
【請求項4】
前記楔状空間区画部は、第1楔状空間区画部と、第2楔状空間区画部とから構成され、
前記第1楔状空間区画部は、当該第1楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に第1楔状空間を区画形成するように構成され、
前記第1楔状空間は、当該第1楔状空間の幅広部がその第1楔状空間における周方向の一方側に、当該第1楔状空間の幅狭部がその第1楔状空間における周方向の他方側に配設されるように構成され、
前記第2楔状空間区画部は、当該第2楔状空間区画部と前記内周壁とによってそれらの間に第2楔状空間を区画形成するように構成され、
前記第2楔状空間は、当該第2楔状空間の幅狭部がその第2楔状空間における周方向の一方側に、当該第2楔状空間の幅広部がその第2楔状空間における周方向の他方側に配設されるように構成され、
前記規制部材は、前記第1楔状空間と第2楔状空間との夫々に配設され、
前記付勢部材は、前記第1楔状空間と第2楔状空間との夫々における前記規制部材夫々を前記幅狭部の方向に付勢していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のリクライニング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−112063(P2013−112063A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258024(P2011−258024)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000109738)デルタ工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000109738)デルタ工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
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