説明

リクリエーション施設用及び装飾的な使用のための水槽の中の水の効率の良い濾過プロセスであって、濾過が少量の水に対して実施され、水槽の水の全量に対しては行われないプロセス

本発明は、水槽からの水の効率の良い濾過プロセスを有していて、ここで、濾過は、少量の水に対して実施され、水槽からの水の全体に対しては実施されない。本発明のプロセスは、以下のステップを有している:(a)水槽の中に超音波を放射する;(b)水に凝集剤を添加する;(c)吸込みデバイスで水槽の底部をカバーし、この吸込みデバイスで、水の流れを凝集した粒子とともに吸い込んで、流出水収集ラインに排出する;(d)前記流出水収集ラインからの、前記吸込みデバイスの流出水の流れを濾過する;(e)この濾過された流れを前記水槽に戻す。本発明は、更に、前記効率の良い濾過プロセスの中で使用される吸込みデバイスを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴水池、リフレクティング・プール、プール、及び湖のような、大きな水槽の中の水のための、低い投資コスト及び運転コストでの濾過プロセスに係る。
【背景技術】
【0002】
水が、リクリエーション施設用または装飾的な水槽の中に貯えられたとき、水は、水の供給源での浮遊固形物の良い質及び低い水準にも拘わらず、しばしば濁ることがある。環境が、ダスト、土、有機体、その他を、水槽に加える。しかしながら、水の濁りを引き起こす浮遊粒子の主要な源は、しばしば、微生物の不可避の成長であって、特に、微細な藻の成長である。そのような藻は、自然の中の広く存在し、且つ、これらの水の媒体の中に、生存の適切な条件を見出す。
【0003】
藻は、植物の様々なグループであって、それらは広い範囲の生息環境の中に見出される。それらは、葉緑素を含む光合成植物であって、非常にシンプルな生殖成長構造を有しており、また、それらの組織は、根、茎または葉について見分けることができない。微視的な単細胞の藻の平均単一のサイズは、約1μmである。藻は、世界中に見出され、そして、それらは、水槽の中で問題を引き起こすことがある。
【0004】
藻の駆除は、長く残されている問題である。藻は、単細胞の植物有機体であって、太陽の光の下で繁殖する。それらは、植物、空気、土及び水の中に存在する。それらの微視的な芽胞は、風、サンド・ストーム、雨、その他により、水槽の水及び他の水塊の中に連続的に入り込む。それらは、4℃以上の温度で、太陽光に曝されたときに、淀んだ水の中で急速に成長する。それらは、泥および/または臭いを生成することがある。それらは、適切な濾過の中を妨げることがあり、そして、公共のプールにおいて、塩素の必要量を相当程度増大させる。水の中の燐酸塩及び窒化物の圧力が、それらの成長を促進する。
【0005】
プランクトン状の藻は、単細胞の微視的な植物であって、水の中に自由に浮遊する。これらの植物が、極めて多いとき、即ち、“ブルーム(bloom)”したとき、それらは、水槽の中の水を緑色に変える。また、水を、黄色、灰色、褐色または赤を含む他の色にを変えることも珍しくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】チリ国特許第CL43,534号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の一つのアスペクトによれば、水槽の中の水を濾過するのためのプロセスが提供される。この濾過プロセスは、小量の水に対して実施され、水の水槽の全体に対しては実施されない。本発明のプロセスは、水槽の中に超音波を放射すること;水に凝集剤を添加すること;吸込みデバイスで水槽の底部をカバーし、この吸込みデバイスで、水の流れを凝集した粒子とともに吸い込んで、吸込みデバイス流出水を作り出すこと;この吸込みデバイス流出水を、流出水収集ラインに排出すること;この流出水収集ラインからの、前記吸込みデバイス流出水の流れを濾過して、濾過された流れを作り出すこと;及びこの濾過された流れを水槽に戻すこと;を含んでいる。
【0008】
本発明の他のアスペクトによれば、水が入っている水槽の底部で移動するための吸込みデバイスが提供される。この吸込みデバイスは、前記水槽の水の濾過を実現するために、水の流れを凝集した粒子とともにを吸い込む。この吸込みデバイスは、ポンプ・システムへの結合の手段を有する構造的なフレームと;水槽の底部で移動するための、水平方向の軸を備えた回転の手段と;水槽の壁面の近くで移動するための、垂直方向の軸を備えた回転摺動の手段と;複数の吸込みラインを含む吸込みの手段と;洗浄の手段と;前記回転の手段と前記構造的なフレームとの間の旋回の手段と;を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のプロセスが適用される水槽の上面図を示す。
【図2】図2は、従来の濾過システムを備えた水槽の上面図を示す。
【図3】図3は、水槽の底部を示していて、ここに、超音波と凝集剤投入の相乗的な効果のために分散された綿状の小塊が示されている。
【図4】図4は、吸込みデバイスの上面図及び概略図を示す。
【図5】図5は、吸込みデバイスを備えた吸込みの手段の下面図及び概略図を示す。
【図6】図6は、吸込みデバイスの正面図を示す。
【図7】図7は、吸込みデバイスの下面図を示す。
【図8】図8は、吸込みデバイスの長手方向断面の正面図を示す。
【図9】図9は、吸込みデバイスの断面図を示す。
【図10】図10は、吸込みデバイスの詳細の上面図を示す。
【図11】図11は、吸込みデバイスの更なる詳細の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで理解されるべきことは、以上の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両者は、例示的且つ説明的なものであって、特許請求範囲により規定される本発明の更なる説明を提供することが意図されていると言うことである。
【0011】
以下の図面は、この出願の一部を形成するものであって、以下で説明される実施形態のシステム及び方法の例であり、如何なるやり方においても、本発明の範囲を制限することを意図していない。本発明の範囲は、この明細書に添付された請求項に基づいて定められるべきである。
【0012】
本発明は、噴水池、リフレクティング・プール、公共のスイミング・プール及び人造湖などような、水槽からの水のための効率の良い且つ経済的な濾過プロセスを説明する。水の中の浮遊固形物は、凝集剤と超音波の相乗的な作用により沈殿し、それらは、次いで、吸込みデバイスによる吸込みにより、底部に集められる。前記吸込みデバイスからの排出水は、次いで、濾過されて、水槽に戻され、水槽の中の水の全体から濁りを取り除くが、非常に小さな流量のみを濾過する。この流量は、前記吸込みデバイスからの排出水に対応していて、水槽の水の全体を濾過する従来の濾過システムにおいて要求される流量と比較して、非常に小さい。それに加えて、本発明のプロセスを実施するために必要な吸込みデバイスが説明される。
【0013】
以上で述べたように、水槽の中に貯えられた水は、数多くのファクターのために濁ることがある。藻、ダスト、有機体、その他のような、浮遊固形物を水槽から取り除くために、濾過システムが、通常、使用されている。濾過は、固形物及び流体、気体または液体の混合物を、多孔質媒体または濾過媒体の中をを通過させることによる技術である。この多孔質媒体または濾過媒体は、フィルタと呼ばれるデバイスの一部であることが可能であり、その中で、混合物の固形成分の大半が取り除かれる。
【0014】
濾過プロセスの使用は、多様であって、人間の活動、家庭生活及び産業の多くの領域において見出されるが、化学的なエンジニアリング技術を要求する工業的なプロセスが、特に重要である。
【0015】
濾過は、人類の発展とともに開発されて来たが、20世紀以来、より理論的な注目を集めている。濾過プロセス及び装置の分類は、多様であって、一般的に、分類のカテゴリーは、互いに排他的ではない。
【0016】
濾過デバイス及びフィルタの多様性は、濾過媒体としてのその使用のために入手可能な多孔質の材料のタイプ、及び各適用対象における特定の条件と同様に多岐に亘り、家庭用のコーヒー・フィルタ、または実験室での分離のための濾過用漏斗のようなシンプルなデバイスから、石油化学工業、及び高い値の触媒回収のための精製、または都市への供給のための飲料水処理システムの中で使用される場合のような、高度に自動化された巨大な複雑なシステムまで、多種多様である。
【0017】
濾過は、流体(液体または気体など)の中の固形物の分離のために使用される機械的なまたは物理的な操作であって、流体の中に、濾過媒体が挿入され、流体は、濾過媒体を横切って流れることが可能であるが、固形物(または、少なくともその一部)が、捕捉される。通常、濾過による分離は、不完全であると考えられていて、ポア・サイズ及び媒体の厚さ、並びに、濾過の間に関係する力学に依存している。一般的に、濾過プロセスにおいて、濾過媒体は、幾つかのレイヤを有しているが、直接の中断、拡散及び遠心力操作などのような、他のメカニズムもまた含まれている。これらのレイヤの中で、粒子は、流線が通る濾過媒体の曲がりくねった経路を辿ることが可能でなく、濾過媒体の繊維の中に、制止されて止まる。
【0018】
二つの主要な濾過技術がある:
前方濾過(Frontal filtration):これは、最も良く知られているものであって、濾過媒体の表面に対して垂直に、流体をを通過させる。この技術は、例えば、家庭用のコーヒー・フィルタで使用されている。粒子は、フィルタの中に維持される。この技術は、濾過媒体表面の中での粒子の集積により制限され、濾過媒体は、最終的に閉塞される。
【0019】
接線濾過(Tangential filtration):他方、これは、流体を接線方向に濾過媒体表面の中を通過させる。流体がフィルタを通過することを可能にするのは、流体の圧力である。この場合には、粒子は、接線方向の流れの中に残り、フィルタの閉塞は、相対的に遅い。しかしながら、この技術は、1ナノメータ(nm)から1マイクロメータ(μm)の、非常に小さい粒子のためにのみ使用されている。
【0020】
更に、濾過媒体のポア・サイズに基いて、濾過のタイプが分類されることが可能である:
− 清澄濾過(clarifying filtration):ポア直径が10から450μmまでのとき;
− 滅菌濾過(sterilizing filtration):ポア直径が0.22μm超のとき;
− 精密濾過(micro filtration):ポア直径が10nmから10μmまでのとき;
− 限外濾過(ultra filtration):ポア直径が1nmから10nmまでのとき;
− 逆浸透(reverse osmosis):ポア直径が0.1nmから1nmまでのとき。
【0021】
濾過の効率は、圧力、濾過媒体、粘度、温度、粒子サイズ及び濃度などような、変数のセットに依存する。
【0022】
一般的に、もし、圧力の増大が、流量または濾過速度の大幅な増大をもたらす場合には、これは、粒状のケークの形成の兆候である。しかしながら、厚いまたは非常に微細なケークに対して、ポンプ圧力の増大は、濾過流量の大幅な増大をもたらすことがない。他の場合には、ケークは、クリティカルな圧力により特徴付けられ、このクリティカルな圧力を超えると、濾過速度が更に減少することになる。実際には、低い圧力で開始する、一定の速度での運転が好ましいが、遠心式のポンプ・システムの広範な使用のために、通常の条件は、可変の圧力及び流量である。
【0023】
理論は、濾過媒体の特徴を考慮することの他に、平均流量が、ケークのに逆比例し、且つ、濾過される面積の二乗に直接的に比例することを指摘している。これらの二つの変数の結果として、同一の量の濾過される流体に対して、注目すべきことは、プロセスの最終段階で、その流量がケークの厚さの二乗に逆比例することである。この観察結果は、最大の生産性は、理論的に、非常に薄い厚さを備えたケークで実現され、その抵抗は、濾過媒体の抵抗を上回ると言うことを含意している。しかしながら、ケークを再生するための時間、その排出の困難さ、及びより広い濾過する表面のコストなどような、他のファクターが、現実には、より厚いケークでの条件下で運転することが好ましいと言うことを説明している。
【0024】
濾過流れ速度は、いつでも、濾過粘度に逆比例する。
濾過温度が増大すると、その粘度が減少し、それ故に、濾過流れ速度が増大する。
ケーク抵抗及びフィルムに対する粒子サイズの効果は、顕著である。粒子の交換の小さな変更でさえも、ケーク抵抗のための式の中の係数に影響を及ぼし、大きな変更は、圧縮性に影響を及ぼす。
【0025】
上述した理由のために、濾過は、シンプルなプロセスではなく、特に、大きな流量が濾過される場合に、シンプルなプロセスではない。
【0026】
公共のプール及び噴水池などのような、装飾的な及びリクリエーション施設用の水槽において、珪藻土(diatomaceous)システム、カートリッジ・システム、及びサンド・システムが使用されていて、後者は、広汎に使用されているシステムである。
【0027】
サンド・フィルタは、20μmのサイズまでの粒子の除去を要求する、低または中程度のコンタミナントの負荷での、水の濾過において最も良く使用される要素である。水により運ばれる浮遊粒子は、それらがサンドの濾過床を通過する際に、捕捉される。フィルタに不純物が溜まり、予め定められた負荷損失に到達すると、上流フラッシングで、フィルタが再生されることが可能である。
【0028】
濾過の質は、様々なパラメータに依存するが、中でも、フィルタの形状、濾過床の高さ、濾過マスの特徴及び粒度分布、濾過速度、その他に依存する。
【0029】
これらのフィルタは、ポリエステル樹脂及びグラス・ファイバーで製造されることが可能であり、それらは、腐食に対するそれらの完全な抵抗のため、川及び海の水の濾過に対して適切である。ステンレス鋼及び炭素鋼もまた、圧力に対するより高い抵抗が要求される実施形態に対して使用されている。
【0030】
リフレクティング・プール及びスイミング・プールのような、装飾的な及びリクリエーション施設用の水槽において、濾過システムの使用が世界中で広く広まっている。しかしながら、これらの水槽のサイズが増大したときに、それらのスケールを制約する二つの問題が出現する。
【0031】
第一の制約は、高い投資コスト及び運転コストである。事実、世界中に、2,500m(オリンピック・プールの容積)を上回る濾過水量の、リクリエーション施設用の水槽は、非常に少なく、また、これらの容積の水槽には、高い運転コストを要している。
【0032】
例えば、9,000mの容積を備えた居住用コンドミニアムの中のプールの場合、公共のプールにおける濾過のための衛生の規制基準の推奨値に適合するために、416L/sの濾過速度が要求される。これらの運転容積は、初期投資、濾過システムで占められる面積、複雑さ、そして特に、運転コストのために、このタイプの建設プロジェクトに対して扱い難いものになっている。
【0033】
しかしながら、大きな水塊における濾過を複雑にする第二の問題があり、それは、水の体積の全体を均一に濾過することの困難さに関係している。通常のプールまたは噴水池においては、吸込みのための一つのポイント及び排出のための一つのポイントで、水の全体の比較的均一な濾過を実現するために十分である。水塊の容積が増大すると、吸込みポイントの影響の及ぶ範囲が、その周囲を取り囲む領域に限定され、それは、全体の容積に対する効果を有しいない。これは、多数の吸込み及び排出ポイントを備えた複雑で且つコストが掛かるパイプのネットワークが計画されなければならないと言うことを意味している。このタイプのシステムは、高い圧力損失を有していて、また、濾過液の流れの中に短絡回路が形成され、即ち、同一の水が何回も濾過され、システムの効率の減少を招くことになる。
【0034】
上述した理由のための、濾過システムを用いて大きな水塊を維持することは、経済的に実行可能ではなく、且つ非常に効率が悪く、それ故に、装飾的なまたはリクリエーション施設用の使用のための大きな濾過式水槽は、世界中に無い。
【0035】
現状の技術の中に、チリの登録特許第CL43,534号が有る。この特許は、リクリエーション施設用の使用のための、大きな水塊を得ることを指向している。この特許は、大きな体積の水または水塊を得るためのプロセス(即ち、設備及び維持)について説明している。その目的は、プールまたは熱帯の海と同様の、優れた色合い、高い透明度、及び清浄度を備えた、湖及びプールなどような、リクリエーション施設で、特に15,000mより大きな水塊のために、低いコストで水を濾過することにある。
【0036】
本発明は、以下のような、構造的な特徴を規定する:それらは、油除去のためのスキマー、水収集システム、建設の詳細、ライナーのタイプ及び色、循環システム及び添加剤の噴射、供給水に対する要求、pH測定、塩の添加、アルジサイド(algaecides)及び凝集剤の使用、新鮮な水の交換率、添加物及び酸化プロセス、及び、ボートで駆動される吸込み手段である。
【0037】
上記の特許CL43,534において、水の循環のためのオープン・システムが使用されていて、それ故に、水を回収するためのやり方については、考慮されず、いかなるタイプの濾過も使用されていない。水槽の壁面及び底部に形成されるバイオフィルム(biofilm)の問題も、解決されていない。このバイオフィルムは、小さな塊の状態で、人手により取り除かれるが、それを、より大きな水槽において実行することは不可能である。
【0038】
本発明の狙いは、上記の特許CL43,534の狙いとは異なっている。反対に、この特許出願においては、水の回収を可能にする低コストの濾過システムが規定される。本発明によれば、今日知られている水槽において、高価な水の濾過システムで行われているような水槽の水の全体を濾過することはなく、また、上述した特許において行われているような吸込みシステムから水を廃棄することもない。そのような水の大量廃棄は、より大量の水の使用を意味していて、結局、自然流れへ、沈殿物を含む水を排出することになる。
【0039】
上記の特許CL43,534においては、水が廃棄され、濾過システムを有していない。それ故に、吸込みシステムの効率、そして明らかに、濾過自体は、クリティカルな問題ではない。しかしながら、低流量の水で(これは、流出水が濾過されなければならない場合のクリティカルなポイントである)、効率の良いやり方で、より大きな水槽の底部から水を吸込むことは、複雑な問題である。その理由は、大きな面積をカバーするために、吸入装置が高速度で移動しなければならず、それ故に、沈殿物の雲が巻き上げられ、それが水を濁らし、且つ、システムの効率を減少させるからである。次に、コスト、関係する大量の水、及び衛生についての規制のために、大量の凝集剤の使用に対して、経済的及び法律的な制約がある。他方、この沈殿物の特徴は、効率の良い濾過のために適切でない。
【0040】
解決策が、より大きな水槽のための経済的な水の濾過問題に対して、見出された。この解決策では、既存のシステムで行われているような水の容積の全体を濾過することは、必要とされない。凝集剤と超音波の結合された使用の開発及び実証が行われた。この結合された使用は、水槽の底部に、互に分離されて分散された綿状の小塊を生成し、それらの小塊は、特別にデザインされた吸込みデバイスにより容易に吸引可能であり、この吸い込みデバイスは、短時間で大きい表面をカバーすることが可能であり、濾過液の質のために、高い効率で濾過が行われる。この濾過は、市場で入手可能なサンド・フィルタまたは他の小さく且つ経済的なフィルタのような、シンプルなデバイスを使用して、低い濃度の凝集剤を使用して行われる。
【0041】
より大きな水槽における超音波の照射は、吸込みデバイスを用いて、非常に効率が良い且つ容易な吸込みを可能にする。これは、容易な吸込み及び濾過による、大きく且つ分散された綿状の小塊形成のためのみではなく、超音波の照射をも可能にする。超音波の照射は、水槽の中でのバイオフィルムの成長を抑制することを可能にし、そして、藻が水槽の壁面及び底部に付着する環境を排除する。
【0042】
バイオフィルムは、ホスト表面の上に形成されたバクテリアのレイヤから構成され、藻の付着するポイントを作り出し、それらの藻は水槽の表面から取り除くことが容易でない。これらの場合に対して、超音波は、バイオフィルムのベース・レイヤの形成を防ぎ、プランクトン状の浮遊バクテリアの大半が、表面上で成長するための強い接着力を備えた固着性のバクテリアになることを防止する。バイオフィルムのベース・レイヤは、池の中に浸漬された表面を洗浄した後、僅か20分から3時間の間に、形成され始める。
【0043】
凝集プロセスにおける、超音波の照射により、本発明のプロセスは、事実、藻の細胞、粒子、ダスト及び濁りを、全般的に、水から取り除き、凝集剤の凝集における超音波の効果のために、凝集効率を大幅に改善する。藻、粒子、ダスト及び濁りの90%の除去を、全般的に実現するために、音波処理は、凝集剤の量の3分の2を減少させる。本発明のプロセスは、水槽の水を濾過する従来のやり方に対して、非常に低い投資コスト及び運転コスト、及び高い水の濾過効率に関して、大きな優位性を有している。
【0044】
事実、より低い投資コスト及び運転コストで、従来の水槽濾過システムと比較して優れた結果が、水の清澄度の水準に関して、得られる。その理由は、本発明のプロセスが、浮遊粒子の凝集と音波処理との間の相乗的なシステムを使用しているからであって、それは、大きなサイズの綿状の小塊の形成のために、吸込みデバイスにより容易に吸引され、それらの小塊は、個別に融合され且つ吸い込みが容易であり、バイオフィルムが存在することなく、そしてまた、沈殿物の質のために、市場で容易に入手可能な、小さな、標準、経済的なフィルタによる効率の良い濾過が実現されることになる。これは、非常に低い水準の凝集剤を使用して、実現される。究極的に、吸込みデバイスからの流出水に対応する、全体的な水の量の小さいパーセンテージのみを濾過し、水塊の全体を濾過する従来のシステムに等しいかあるいはそれと比べて良い結果を実現する。
【0045】
本発明は、水槽の水の、効率が良く且つ経済的な濾過をもたらす。ここで、濾過は、少量の水に対して実施され、水槽の水の全体に対しては実施されない。本発明の方法は、以下のステップを有している:
a.水槽の中に超音波を放射する;
b.水に凝集剤を添加する;
c.水槽の底部を吸込みデバイスでカバーし、この吸い込みデバイスで、水の流れを凝集した粒子とともに吸い込んで、流出水の収集ラインに排出する;
d.流出水の前記収集ラインから、吸込みデバイスの流出水の流れを濾過する;
e.濾過された流れを水槽に戻す。
【0046】
好ましくは、本発明のステップa)において、超音波が、毎日1時間から24時間までの期間に亘って、20kHzから100kHzの周波数、及び10Wから45Wの範囲内の電力で、放射される。
【0047】
好ましくは、本発明のプロセスのステップa)において、超音波は、12時間から24時間の期間に亘って放射され、より好ましくは、20時間から24時間の期間に亘って放射される。
【0048】
超音波は、放射デバイスにより放射されることが可能である。これらのデバイスは、放射状に180度の範囲内で、且つ、半径150mの距離で、超音波を放射する。それ故に、超音波の放射デバイスは、水槽からの全ての水が放射された超音波を受けるように、水の表面の下側に、100mから150mの範囲内半径で間隔を空けて、配置される。
【0049】
通常、超音波の放射装置は、水槽の縁に設けられる;しかしながら、300mより大きい直径を備えた水槽の場合には、中央の島または他の中央プラットフォームが形成されることが可能である。この中央プラットフォームは、放射デバイスを水槽の中央に設けることを可能にし、この放射デバイスは、全体の表面が、使用される放射デバイスのカバー範囲に基づいて、超音波を受けるように配置される。
【0050】
本発明のプロセスのステップa)の目的は:
− 水の中の浮遊固形物の主要な構成成分である、微小な藻の量を減少させる;
− 吸込みプロセスを容易にし、生態学的な方法を用いて、低いコストで、後続する濾過の効率を増大させ、それは、化学薬品の投入量を減少させて、低い運転コストと言う最終的な目的を達成する;
【0051】
− バイオフィルムの形成を無くす。このバイオフィルムは、通常、水槽の壁面及び底部に形成され、且つ、藻成長の源である。それは、吸込みデバイスの使用をより効率の良いものにし、且つ、人手による壁面の洗浄を減少させ、相乗効果を生ずる;
− 凝集剤の量を減少させ、吸込みデバイスを用いて底部から除去するために、全般的に藻及び粒子の凝集を容易にする;
【0052】
− 超音波と凝集剤との間の相乗効果のために、吸込みデバイスを用いた吸込みを容易にする。その理由は、これが、吸込みデバイスが水槽の底部をカバーする際に浮遊粒子の雲を形成することなく、容易な吸込みで、より大きな綿状の小塊を得ることを可能にするからである;
【0053】
− シンプルなサンド・フィルタを使用することにより、更なる凝集が生ずることなく、濾過を容易にする;
− 水槽の水の濁りを、凝集剤とともに、取り除く。
【0054】
好ましくは、本発明のプロセスのステップb)において、凝集剤は、イオンのポリマーである。より好ましくは、前記イオンのポリマーは、生物分解性のカチオンの高分子電解質である。
【0055】
好ましくは、本発明のプロセスのステップb)において、凝集剤は、6日毎に少なくも一回、0.005ppmから2ppmの濃度で、水槽の水に添加され、好ましくは、4日毎に少なくも1回、0.01ppmから0.5ppmの濃度で添加され;より好ましくは、24時間毎に、0.0125ppmから0.04ppmの濃度で添加される。
【0056】
好ましくは、本発明のプロセスのステップc)において、凝集した粒子を含む水の流速は、1L/sから30L/sの範囲内である。より好ましくは、凝集した粒子を含む水の流速は、10L/sから20L/sの範囲内である。
【0057】
他方、本発明のステップc)において、水槽の底部が吸込みデバイスでカバーされるとき、この吸込みデバイスは、様々な牽引の手段により、移動されることが可能であり、それは例えば、水槽表面のボート;水槽の底部のレール上の移動カート;モータ駆動式の、自動化されたおよび/または遠隔制御式のロボット;または、ケーブル及びプーリシステムなどである。
【0058】
ステップd)において、水の流速は、吸込みデバイスのサイズに依存して可変であり、この吸い込みデバイスは、次に、水槽の容積に関係付けられる。好ましくは、本発明のプロセスのステップd)において、吸込みデバイスからの流出水の流量は、1L/sから30L/sの範囲内で濾過され、より好ましくは、10L/sから20L/sの範囲内で濾過される。
【0059】
吸込みデバイスからの流出水の流れは、吸込みデバイスに接続された可動のポンプにより汲み出され、フレキシブルな吸込みホースが、水槽の水面の縁に沿って、可動のまたは固定されたプラットフォームの上に、またはボートの上に、配置される。吸込みデバイスからの流出水は、流出水収集ラインに送られ;前記流出水収集ラインから、水が、濾過のための遠心ポンプを使用して、好ましくは1L/sから30L/sの流量で、汲み出され、より好ましくは、10L/sから20L/sの流量で汲み出され;100kPaから300kPa(1バールから3バール)の圧力で、フィルタの方へ汲み出される。前記フィルタは、吸込みデバイスにより吸引される流出水の流れに基づく、サンド・フィルタ、珪藻土(diatomaceous)フィルタ、またはカートリッジ・フィルタであることが可能である。
【0060】
ステップe)において、濾過された水は、水槽の縁に配置され、且つホースまたは管で供給ラインに接続された再循環ポンプを使用して水槽に戻され;濾過された水は、インジェクタを使用して、前記供給ラインから水槽に戻されて、再循環サイクルを終了し、このようにして、システムの中に水を維持する。
【0061】
ここで銘記すべきことは、本発明のプロセスにおいて、吸込みデバイスの狙いは、水槽の底部を洗浄することにあり、これは、従来のプールにおける吸込みデバイスと同様であるが、しかしまた、凝集剤及び超音波照射とともに、公共のスイミング・プールの従来の濾過システムが、全体的に置き換えられると言うことである。換言すれば、吸込みデバイスは、底部にある材料(羽、枝、土、その他)を当然にを取り除くのみではなく、そのほかに、全ての浮遊粒子を取り除き、そして、公共のスイミング・プールの場合には、これらは、一日に4回、水の全体の濾過により取り除かれる。本発明の場合には、浮遊粒子が、超音波及び凝集剤を介して、綿状の小塊となり(吸入のために容易なより大きな粒子)、そして、吸込みデバイスにより吸引され、次いで濾過され、除去コストを2桁減少させる。即ち、従来のシステムにおいて全ての水を濾過する代わりに、吸込みデバイスからの流出水の流れのみが濾過される。
【0062】
オプションとして、本発明の濾過液は、特に水槽の水の表面レイヤを取り除くために、表面の廃棄溝または出口(スキマーからの水を含む)ことが可能である。上記表面レイヤは、油類及び浮遊粒子を有することがある。スキマーを使用して汲み出された流れは、本発明のステップd)と同様に、それを濾過するために、流出水収集ラインに繰り入れられることが可能である。その理由は、スキマーは、1L/sから5L/sのような非常に低い流速で、表面水レイヤのみを取り除くからである。これは、本発明のプロセスにおいて使用される、市場で入手可能な経済的なフィルタの処理量に影響を及ぼすことがない。
【0063】
留意すべきことは、一部の従来の濾過システムにおいても、水がスキマーからフィルタに繰り入れられることである、しかし、この場合には、これは、より大きな流量に対応していて、このより大きな流量は、表面レイヤを取り除くことのみではなく、水の全体をも濾過する。本願のプロセスにおいて、それは、表面近くのレイヤのみをを濾過する問題であって、それにより、流れが、2桁小さい流量で濾過されることになる。
【0064】
本発明において、水槽の水の下の大きな面積カバーすることが可能な吸込みデバイスが必要であり、それは、例えば、3時間で1ヘクタールをカバーすることが可能なものであり、即ち、0.93m/sの速度で移動することが可能なものである;前記吸込みデバイスは、市場では見出されない。それ故に、本発明のプロセスのステップc)を実施するために、吸込みデバイスが、特別にデザインされた。このデバイスは、同一の期間で、少なくとも、水槽の底部と比べて100倍大きい面積をカバーし、他の既存のデバイスと比べて優れている。
【0065】
図4から11から分かるように、本発明のプロセスのステップc)の中で使用される吸込みデバイスは、本質的に、構造的なフレーム(10)と;ポンプ・システムへの結合の手段(20)と;水槽の底部の上方での移動ための、水平方向の軸を備えた回転の手段(30)と;水槽壁面の周囲を取り囲む移動のための、垂直方向の軸を備えた回転摺動の手段(40)と;水の流れを、凝集した粒子とともに、水槽の底部から結合の手段(20)の方へ吸い込む複数の吸込みラインを有する吸込みの手段(50)と;ブラシ・ラインを有する洗浄の手段(60)と;回転の手段(30)と、水槽の底部の突起に吸込みデバイスを適合させるための構造的なフレーム(10)との間の、旋回の手段(70)と;を有し、前記構造的なフレーム(10)は、遠隔制御式のロボット化された潜水カートのような、牽引の手段に取り付けるための、旋回可能な従属の手段(80)と;前記吸込みの手段(50)、前記洗浄の手段(60)と、前記構造的なフレーム(10)との間の締結の手段(90)と;を有している。
【0066】
図5から分かるように、回転の手段(3)は、半硬質のポリウレタン保護ローラ(32)が配置されたステンレス鋼の水平方向の軸(31)と;構造的なフレーム(10)の支持及び移動のための、高密度ポリエチレンのような、自動潤滑プラスチックで作られた、支持ホイール(33)と;を有している。それに加えて、前記回転の手段(30)は、吸込みの手段(50)及び洗浄の手段(60)の側に配置されたエポキシ樹脂ベアリング(35)の中に、ステンレス鋼で作られた第二の軸(34)を有し;前記第二の軸(34)の中には、吸込みの手段(50)及び洗浄の手段(60)の、支持及び移動のための、高密度ポリエチレンのような、自動潤滑プラスチックで作られた第二のホイール(36)が配置されている。それに加えて、回転摺動の手段(40)は、垂直方向の軸と;高密度ポリエチレンのような、自動潤滑プラスチックで作られた、横方向の保護ホイールと;を有している。
【0067】
図6から分かるように、結合の手段(20)は、ポンプ・システムに接続されたフレキシブルなホースのための、ホース・ノズル(21)と;PVCコネクター(22)と;吸込みの手段に接続され、且つポンプ・システムから来る吸込み力の分配を可能にする、フレキシブルなコルゲート・パイプ(23)と;を有している。
【0068】
図7から分かるように、吸込みの手段(5)は、ステンレス鋼で作られた折り畳まれた吸込みチャネル(51)を有し、この吸込みチャネルは、ステンレス鋼の管で作られた吸込み入口(52)に接続され、これらの吸込み入り口は、前記吸込みチャネル(51)に連続する溶接ビードでアルゴン溶接されている;前記吸込み手段は、更に、PVCコネクター(53)、及び結合の手段(20)に接続されたフレキシブルなコルゲート・パイプ(54)を有している。
【0069】
図8から分かるように、旋回の手段(70)は、構造的なフレーム(10)、回転の手段(30)、及び水平方向の軸(31)の周りの吸込みの手段(50)を接続する。更に、ここで留意すべきことは、従属の旋回可能な手段(80)が、構造的なフレーム(10)に、牽引の手段(この図には示されていない)を接続することである。
【0070】
図9において、留意すべきことは、締結の手段(90)が、コード、例えば、プラスチック・コードを有していることである。このコードは、水槽の底部から2cm以下の位置で、吸込みの手段(50)及び洗浄の手段(60)を構造的なフレーム(10)からつるす。
【0071】
図10から分かるように、構造的なフレーム(10)は、内側のスペースを規定するための、互いに絡み合わされたアーチ(11)を有していて、この内側のスペースは、締結の手段(90)により吊り下げられた吸込みの手段(50)及び洗浄の手段(60)を含んでいる。構造的なフレーム(10)の互いに絡み合わされたアーチ(11)は、プラスチック・ボルトにより固定されている。前記互いに絡み合わされたアーチの下端部には、水平方向の軸(31)の周りで旋回する旋回の手段(70)が固定されている。各支持ホイール(33)、保護ローラ(32)と第二のホイール(36)との間には、旋回の手段(70)と旋回可能な従属の手段(80)との間と同様に、高密度ポリエチレン・ワッシャ(図には示されていない)が設けられている。
【0072】
図11は、吸込みの手段(50)の中での吸込み入口(52)の分布、及び中央ブラシ・ラインとしての洗浄の手段(60)を示している。
【0073】
本発明のプロセスは、噴水池、リフレクティング・プール、スイミング・プール及び湖のような、水槽の中の水の効率の良い濾過を、低い投資及び運転コストで可能にする。本発明のプロセスを実施するために、以下のステップが実施された。
【0074】
人工的な湖と同様な水槽(A)が建設され、チリ(Chile)の中央海岸に配置された。この水槽は、図1に示されているように、約6,000mの面積及び90,000mの容積を備えている。図1の中に、水槽(A)の正面図が、本発明のプロセスを実施するための必要な構造とともに示されている。図2の中に、同一の水槽の正面図が、従来の濾過を実施するための必要な構造とともに示されていて、ここでは水槽の水の全体が濾過される。
【0075】
従来の濾過と本発明のプロセスに基づく濾過の間の構造の相違を、図1及び2の中に見ることが可能である;図1の構造は、図2の構造と比べて、よりシンプルで且つより経済的である。特に、図2は、従来の濾過のための必要な設備を示していて、ここでは、全ての必要なフィルタ運転のための濾過領域としての、水槽の縁に対する管に対する大きな要求を、見ることが可能である。従来の濾過のための必要とされる全体の基盤施設を、見ることが可能であり、これは、非常に高い運転コスト及び基盤施設コストを作り出す;他方、図1は、本発明に基づく水の濾過プロセスのための必要とされる構造の単純さを示していて、それ故に、運転及び基盤施設コストの節減を示している。
【0076】
本発明のプロセスが、以下のステップで実施された:ステップa)において、超音波が超音波放射装置(8)で放射された。この装置は、以降において音波処理機(商標名:“LG Sonics model XL”)と呼ばれ、20kHz及び100kHzでダブルの周波数を有し、45Wの出力を有し、“LG SOUND, Gerrit van der Veenstraat 752321 CD, Leiden, The Netherlands”により製造されている。このデバイスを用いて、バイオフィルムの形成が防止され、凝集剤ポリマーの投入の75%が減少された。前記音波処理機(8)は、浮きを使用して、水面の下、10cmから30cmに配置され、且つ、図1に示されているように、水槽の縁に配置された。
【0077】
図3に示されているように、浮遊粒子が、分散された大きいサイズの綿状の小塊に、規則的な形状で凝集された。それは、超音波の放射と凝集剤の投入との間の相乗効果のためであって、この相乗効果は、吸込みデバイスからの流出水の流れの、より容易な吸込み及び効率の良い濾過を可能にする。
【0078】
ステップb)において、カチオンのポリマー(“Crystal Clear”(登録商標))が添加された。このポリマーは、生物分解性のカチオンの高分子電解質であって、“AP Aquarium products, USA”により製造され、24時間毎に0.08ppmの濃度で添加された。
【0079】
ステップc)において、水槽の底部が、図4から6の中に示されている吸込みデバイスでカバーされた。この吸い込みデバイスは、前記凝縮された粒子を含む15L/sの流量の水を、2日毎に2時間の間、吸込んで、凝縮された粒子を捕捉する。図1に示されているように、吸込みデバイスからの(2c)流出水は、可動のポンプ(2e)により吸引された。このポンプは、6.98kW(9.5hp)の出力を備え、直径10.16cm(4インチ)及び長さ150mのフレキシブルなプラスチック・ホース(2d)により、吸込みデバイスに接続されている。この流出水は、流出水収集管(4)の方へ送られ、この流出水収集管は、幾つかのコンクリートの流出水チャンバ(2a)の中に排出し、それらの全ては、流出水収集管(4)により接続されている。
【0080】
前記吸込みデバイスは、水槽の底部をカバーし、水槽の水の中に沈められ、3時間の間に、0.93m/sの速度で、1ヘクタールをカバーする。この速度は、市場で入手可能な同様な装置の速度と比べて非常に優れている。この特別にデザインされたデバイスは、水槽の底部の、市場で入手可能な他のデバイスと比べて少なくともの100倍以上の面積を、同一の期間でカバーする。
【0081】
ステップd)において、吸込みデバイスからの流出水が濾過される。遠心ポンプ(“VOGTR”(登録商標),型番“N 628”)により、5.52kW(7.5hp)の力の及び15L/sの流量で、一つまたはそれ以上のコンクリートの流出水チャンバから水が汲み上げられた。この遠心ポンプは、内径10.16cm(4インチ)のシュートに接続されている。“Aguasin”(登録商標)サンド・フィルタ(型番“QMA-210-E”)が使用された;このサンド・フィルタには、支持材であるC−5砂礫、及び二つの濾過するレイヤ(一方は“CARENTI C-8”、他方は“CARENIT AN”)が充填されている。本発明のプロセスのステップd)において、全体の流出水が、1時間半で吸込みデバイスにより濾過され、それ故に、1.5時間/日に対して、15L/sが濾過された。
【0082】
ステップe)において、濾過された水は、三つの再循環ポンプを使用して、水槽に戻された。これらの循環ポンプはそれぞれ、1.84kW(2.5hp)の力及び5L/sの流量であって、それ故に、トータルで15L/sの再循環流量が得られる。
【0083】
バイオフィルムが形成されることがなく、それ故に、壁面及び吸込みデバイスの人手による洗浄は、必要でなかった;水の全体的な濁りが取り除かれ、ポリマー沈殿された不純物は、容易に且つ効率良く、全体的に取り除かれ、底部は完全に清浄なまま維持された。デバイスは、水槽の底部から15L/sの流量を吸引し、水槽の底部の表面を、粒子、綿状の小塊及び残留物レイヤの無い状態に維持し、優れた洗浄として、単純な浚渫とは異なっている。吸込みデバイスは、流れを水槽の底部に凝集した粒子とともにを吸い込むために、2日毎に2時間の間、湖の底部で運転され、水を完全に透明に維持した。それは、直接接触するリクリエーション施設用の水に対する清澄度の標準、及び、本願の実施形態が用いられた国のスイミング・プールの規制基準、即ち、規制基準NCh1333、NCh209、及びNCh409に適合し且つ上回っている。
【表1】

【表2】

【0084】
大量の水の濾過は、技術的に複雑であり且つ高いコストを要する、それ故に、透明な水塊の規模の拡大に対する障壁となる。
【0085】
本発明の吸込みデバイスは、凝集剤及び音波処理により凝縮された浮遊固形物を、効率が良く且つ経済的なやり方で取り除き、フィルタへの流量を、約100倍、減少させて、フィルタ、パイプの投資コスト及び運転の際のエネルギー・コストを、従来の水槽濾過システムと比較して減少させる。それらは、消毒剤、凝集剤、アジサイドの使用を減少させることを可能にし、バイオフィルムを取り除くこと、水槽壁面の人手による洗浄をなくすこと、及び吸込みデバイスの運転をより効率の良いものにすることを可能にする。
従来の濾過システムは、高いコストに加えて、水槽の底部を洗浄しない。
【0086】
この中で説明された技術は、投資及び運転コストの削減を顕著に実現するものであって、リクリエーション施設用及び装飾的な使用のための、より透明度の高い水槽を建設するための、主要な障壁の一つを取り除く可能性を有している。
【0087】
実現されたプロセスの主要な優位性は、エネルギー及び化学薬品の大幅な節約であって、それは、環境の保護、及び以下の比較表の中に示された投資コスト及びメンテナンス・コストの優位性を維持しながら実現される。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の中の水を濾過するためのプロセスであって、
濾過が、少量の水に対して実施され、水槽からの水の全体に対しては実施されず:
a. 水槽の中に超音波を放射し;
b. 水に凝集剤を添加し;
c. 吸込みデバイスで水槽の底部をカバーし、この吸込みデバイスで、水の流れを凝集した粒子とともに吸い込んで、吸込みデバイス流出水を作り出し;
d. この吸込みデバイス流出水を流出水収集ラインに排出し;
e. この流出水収集ラインからの、前記吸込みデバイス流出水の流れを濾過して、濾過された流れを作り出し;
f. この濾過された流れを水槽に戻すこと、
を特徴とするプロセス。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1のプロセス:
超音波が、1時間から24時間まで期間の間、20kHzから100kHzまでの周波数及び10Wから45Wまでの範囲内の電力で、放射される。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2のプロセス:
超音波が、12時間から24時間まで期間の間、放射される。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項3のプロセス:
超音波が、20時間から24時間まで期間の間、放射される。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のプロセス:
超音波が、水面の下に配置された超音波放射デバイスを使用して、放射される。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5のいずれか1項に記載のプロセス:
凝集剤が、6日毎に少なくも1回、0.005ppmから2ppmの濃度で、水の前記水槽に添加される。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項6に記載のプロセス:
凝集剤が、4日毎に少なくも1回、0.01ppmから0.5ppmの濃度で、水の前記水槽に添加される。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項7に記載のプロセス:
凝集剤が、24時間毎に、0.0125ppmから0.04ppmの濃度で、水の前記水槽に添加される。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1に記載のプロセス:
ステップc、d、e及びfにおいて、流速は、1L/sから30L/sの範囲内である。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項9に記載のプロセス:
ステップc、d、e及びfにおいて、流速は、10L/sから20L/sの範囲内である。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項1に記載のプロセス:
前記吸込みデバイスは、前記水槽の水面上のボートを使用して、可動である。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項1に記載のプロセス:
前記吸込みデバイスは、前記水槽の底部のレールの上の移動カートを使用して、可動である。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項1に記載のプロセス:
前記吸込みデバイスは、モータ駆動式の自動化されたロボットまたは遠隔制御式のロボットにより、可動である。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項1に記載のプロセス:
前記吸込みデバイスは、ケーブルとプーリのシステムを使用して、可動である。
【請求項15】
下記特徴を有する請求項1に記載のプロセス:
濾過が、サンド・フィルタ、珪藻土フィルタ、またはカートリッジ・フィルタにより実施される。
【請求項16】
水が入っている水槽の底部で移動するための吸込みデバイスであって、当該デバイスは、前記水槽の水の濾過を実現するために、水の流れを凝集した粒子とともに吸い込むものであり:
ポンプ・システムへの結合の手段を有する構造的なフレームと;
前記水槽の底部で移動するための、水平方向の軸を備えた回転の手段と;
前記水槽の壁面に隣接して移動するための、垂直方向の軸を備えた回転摺動の手段と;
複数の吸込みラインを含む吸込みの手段と;
洗浄の手段と;
前記回転の手段と前記構造的なフレームとの間の旋回の手段と;
を有することを特徴とする吸い込みデバイス。
【請求項17】
下記特徴を有する請求項16に記載の吸込みデバイス:
前記構造的なフレームは、牽引の手段への取り付けのための、旋回可能な従属の手段と;
前記吸込みの手段、前記洗浄の手段と前記構造的なフレームとの間の締結の手段と;
を有している。
【請求項18】
下記特徴を有する請求項16に記載の吸込みデバイス:
ステンレス鋼で作られた、前記回転の手段の水平方向の軸を有し、そこに半硬質のポリウレタン保護ローラが配置され、且つ、そこに前記構造的なフレームの支持及び移動のための、高密度ポリエチレンで作られた支持ホイールが配置されている。
【請求項19】
下記特徴を有する請求項18に記載の吸込みデバイス:
前記構造的なフレームを接続する旋回の手段を有し、
前記回転の手段及び前記吸込みの手段は、水平方向の軸の周りに配置されている。
【請求項20】
下記特徴を有する請求項19に記載の吸込みデバイス:
前記回転の手段は、更に、前記吸込みの手段及び前記洗浄の手段の側に配置されたエポキシ樹脂ベアリングの中に、ステンレス鋼で作られた第二の軸を有し、
前記吸込みの手段及び前記洗浄の手段の、支持及び移動のための、高密度ポリエチレンで作られた第二のホイールが、前記第二の軸の中に配置されている。
【請求項21】
下記特徴を有する請求項16に記載の吸込みデバイス:
垂直方向の軸を備えた前記回転摺動の手段は、更に、高密度ポリエチレンで作られた横方向の保護ホイールを有している。
【請求項22】
下記特徴を有する請求項16に記載の吸込みデバイス:
前記結合の手段は、
前記ポンプ・システムに接続されたフレキシブルなホースのためのホース・ノズルと;
PVCコネクターと;
前記吸込みの手段に接続されたフレキシブルなコルゲート・パイプと;
を有している。
【請求項23】
下記特徴を有する請求項16に記載の吸込みデバイス:
前記吸込みの手段は、
折り畳まれたステンレス鋼で作られた吸込みチャネルと;
PVCコネクターと;
前記結合の手段に接続されたフレキシブルなコルゲート・パイプと;を有し、
前記吸込みチャネルは、ステンレス鋼の管で作られ且つ前記吸込みチャネルに連続的な溶接ビードでアルゴン溶接された吸込み入口に接続されている。
【請求項24】
下記特徴を有する請求項16に記載の吸込みデバイス:
前記締結手段は、複数のコードを有し、これらのコードは、前記吸込みの手段及び前記洗浄の手段を、前記水槽の底部から2cm以下の位置で、前記構造的なフレームからつるす。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−524802(P2011−524802A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513510(P2011−513510)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/036809
【国際公開番号】WO2010/074770
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(507383127)クリスタル・ラグーンズ・コーポレーション・エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】