説明

リサイクル方法およびシステム

リサイクルシステムは、原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼室(42)と、燃焼室(42)の燃焼熱を熱源として該物質を熱分解・ガス化するガス化室(41)とを有する熱分解装置(40)を備える。原料は、常圧蒸留装置(10)、減圧蒸留装置(20)および熱分解装置(28)から排出される残渣油や、廃プラスチック(181)、廃棄物(182)、シュレッダーダスト(183)等の各種廃棄物、およびバイオマス(184)等の有機物を含む。リサイクルシステムは、ガス化室(41)で生成された熱分解生成物(120)を石油精製システムまたは石油化学システムに供給する経路を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル方法およびシステムに係り、特に石油精製プロセスや石油化学プロセスから排出される重質油等の炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物をケミカルリサイクルするリサイクル方法およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油精製プロセスを大まかに捉えると、原油から製品となる軽質成分を徐々に抽出し、C/H比の高い重質成分を残渣油として残すプロセスである。言い換えると、原油から不要な炭素分を重質油分として取り除くプロセスであるとも言える。従って、石油精製プロセスから排出される重質残渣油を再生利用するには、不要な炭素分を如何に処理するかが重要である。
【0003】
不要な炭素分の処理方法としては燃焼させるのが最も簡単であるが、より有効に活用するためにガス化するのも有効である。重質油をガス化するために更に過熱すると、熱分解によって更に軽質分が抜けても最後には炭素分のみが固定炭素(すす、コーク)として残る。従って重質油をガス化するためには、この固定炭素を処理できるガス化方法を採用する必要がある。
【0004】
燃焼反応に比べるとガス化反応速度は遅く、特に固定炭素のガス化反応速度は遅いため、重質油のガス化プロセスはできるだけガス化反応速度を高めるために高温・高圧で運転されるのが一般的である。具体的な運転温度は1000℃〜1500℃、運転圧力は1MPa以上であり、昇温は重質油分の一部酸素と反応させる、所謂部分酸化による直接加熱法で行うのが一般的である。なぜならこの高温度域で熱交換器を用いて熱交換することは困難なので間接加熱法は採用できないからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この部分酸化型ガス化法で得られた生成ガスはH2、CO、CO2、H2Oを主成分とするため、ケミカルリサイクルするためには必要に応じてH2やCOを分離して利用してもよいが、勿論この分離工程を省略してガスタービン等の燃料ガスとして用いることもできる。前述したように通常圧力が高いので、圧縮することなくガスタービンに導入できるしガスタービン導入前にガス洗浄やガス精製する際にも有利である。
【0006】
この部分酸化型高温ガス化法の課題としては、ガス化炉の運転温度が高いためにバーナーや耐火材等の耐熱部材の耐久性が低く、設備コストや保守管理コストを増大させることや、高温高圧プロセスであることから高度な運転技術が必要で、オペレーションコストを増大させてしまうことである。従って、このような部分酸化型の高温ガス化プロセスを採用するためにはできるだけイニシャルコストの負荷を低減すべくスケールメリットを追求するため大型化されることが多く、初期投資額として数百億円かかるのが一般的である。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、低コストで炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物をケミカルリサイクル利用することができるリサイクル方法を提供することを第1の目的とする。
【0008】
本発明の第2の目的は、低コストで炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物をケミカルリサイクル利用することができるリサイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するため、本発明の第1の態様によれば、炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物などの原料をリサイクルする方法が提供される。この方法においては、原料中の炭素分が選択的に燃焼される。前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料が熱分解(サーマルクラック)・ガス化される。前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物が石油精製プロセスまたは石油化学プロセスに供給される。
【0010】
本明細書において、炭化水素系重質残渣油は、石油精製プロセスまたは石油化学プロセスから排出される油として定義される。例えば、炭化水素系重質残渣油は、石油精製プロセスにおける流動接触分解プロセス水素化分解プロセスから排出された残渣油や、エチレン製造プロセスから排出される分解油であってもよい。熱分解生成物は、生成ガスを含む熱分解生成物、比重が0.7〜1.1の油、炭素を主に含む熱分解残渣として定義される。生成ガスは、H、CO、COやメタンのような軽質炭化水素、エタン、プロパンなどを含んでいてもよい。比重が0.7〜1.1の油は、ガソリン留分、ナフサ留分、灯油留分、軽油留分などの軽質油分であってもよい。そのような油の組成は、材料の種類、熱分解温度、ガス化剤の種類などによって変化してもよい。
【0011】
熱分解プロセスは、加熱により原料の炭化水素分子を分解して水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、エチレンのような炭素数が3以下の軽質炭化水素を生成する反応として定義される。熱分解プロセスによれば、原料は、軽質炭化水素、ベンゼンのような芳香族系重質炭化水素、炭素分に分解される。ガス化プロセスは、炭化水素原料から水素、一酸化炭素、および二酸化炭素を主として含む合成ガスを生成する反応として定義される。ガス化プロセスにおいては、酸素、水素、または水蒸気などのガス化剤によって原料の炭化水素の化学的結合が切断される。原料は、ガス化剤と反応して水素、一酸化炭素、メタン、エタン、エチレンのような炭素数が3以下のガス状分子を生成する。固形炭素は、ガス状一酸化物に変換される。合成ガスを生成する方法としては、一般に、触媒を用いない部分酸化法または触媒を用いる水蒸気改質法がある。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物などの原料をリサイクルする方法が提供される。この方法においては、原料中の炭素分が選択的に燃焼される。前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料が熱分解(サーマルクラック)・ガス化される。前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物が冷却および洗浄される。前記冷却および洗浄された熱分解生成物が石油精製プロセスまたは石油化学プロセスに供給される。
【0013】
前記熱分解生成物を石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスまたは石油化学プロセスのエチレン製造プロセスに供給してもよい。冷却および洗浄された熱分解生成物が石油精製または石油化学プロセスに供給されるので、石油精製または石油化学プロセスの影響を最小限にすることができる。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物などの原料をリサイクルする方法が提供される。この方法においては、原料中の炭素分が選択的に燃焼される。前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料が熱分解(サーマルクラック)・ガス化される。前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物が留分に分離される。前記留分が石油精製プロセスまたは石油化学プロセスに供給される。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物などの原料をリサイクルする方法が提供される。この方法においては、原料中の炭素分が選択的に燃焼される。前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料が熱分解(サーマルクラック)・ガス化される。前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物が冷却および洗浄される。前記冷却および洗浄された熱分解生成物が留分に分離される。前記留分が石油精製プロセスまたは石油化学プロセスに供給される。
【0016】
前記留分は、ガス、ナフサ、灯油、または軽油であってもよい。前記留分を前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスまたは前記石油化学プロセスのエチレン製造プロセスに供給してもよい。熱分解生成物が分離された留分が石油精製または石油化学プロセスに供給されるので、石油精製または石油化学プロセスの影響を最小限にすることができる。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物などの原料をリサイクルする方法が提供される。この方法においては、原料中の炭素分が選択的に燃焼される。前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料が熱分解(サーマルクラック)・ガス化される。前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物が石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスから排出された留出油または該留出油を精製した油で洗浄される。前記洗浄プロセスにおいて使用された油および前記洗浄された熱分解生成の少なくとも一方が前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスまたは石油化学プロセスに供給される。
【0018】
前記原料は、前記石油精製プロセスまたは前記石油化学プロセスから排出される残渣油であってもよい。前記残渣油は、前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスから排出された炭化水素系重質油であってもよい。前記残渣油は、前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスから排出され減圧フラッシュされた炭化水素系重質油であってもよい。前記残渣油は、前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスまたは減圧蒸留プロセスから排出され熱分解(サーマルクラック)された炭化水素系重質油であってもよい。前記残渣油は、前記石油化学プロセスのエチレン製造プロセスから排出された炭化水素系重質油であってもよい。この場合において、前記残渣油は熱分解タールであってもよい。前記原料は、廃プラスチックやシュレッダーダストなどの廃棄物を含んでいてもよい。さらに、前記廃棄物は、石油精製プロセス、石油化学プロセス、または化学プロセスにおいて生成されたタンクスラッジなどの有機炭化水素化合物を含む工業廃棄物であってもよい。前記原料は、バイオマスなどの有機物を含んでいてもよい。さらに、前記有機物は、オリノコタールやビチューメン褐炭などの低品位化石原料、石炭および石油コークス、またはコークス炉ガス(COG)、溶鉱炉ガス、または転炉ガスのような炭化水素を含むガスであってもよい。
【0019】
前記熱分解・ガス化プロセスのガス化剤として、水素ガス、メタンガス、エチレンガス、エタンガス、プロピレンガス、プロパンガス、または水蒸気を用いてもよい。前記熱分解・ガス化プロセスのガス化剤として、前記石油精製プロセスにおいて回収されるガスを用いてもよい。鉄、コバルト、またはルテニウムなどの金属を含む粒子を前記熱分解・ガス化プロセスの熱媒体として用いて、前記熱分解・ガス化プロセスの炭化水素合成を促進してもよい。酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などの脱硫機能を有する物質を前記熱分解・ガス化プロセスの熱媒体として用いて、前記熱分解・ガス化プロセスの脱硫反応を促進してもよい。
【0020】
前記炭素分を選択的に燃焼する燃焼室と該燃焼室での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化室とを有する熱分解装置によって前記熱分解・ガス化プロセスを行ってもよい。この場合において、前記熱分解装置を内部循環流動床ガス化炉としてもよい。前記原料を前記熱分解装置の燃焼室およびガス化室の双方に供給してもよい。
【0021】
上記第2の目的を達成するため、本発明の第6の態様によれば、原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置を有するリサイクルシステムが提供される。このリサイクルシステムは、前記ガス化部で生成された熱分解生成物を石油精製システムまたは石油化学システムに供給する経路を有している。
【0022】
本発明の第7の態様によれば、原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置を有するリサイクルシステムが提供される。このリサイクルシステムは、前記ガス化部の下流に配置され、前記ガス化部で生成された熱分解生成物を冷却および洗浄するオイルスクラバを有する。また、リサイクルシステムは、前記冷却および洗浄された熱分解生成物を石油精製システムまたは石油化学システムに供給する経路を有する。
【0023】
常圧蒸留ユニットは、石油精製システムにおいて分留を行う装置として定義される。前記経路は、前記熱分解生成物を石油精製システムの常圧蒸留ユニットまたは石油化学システムのエチレン製造システムに供給するように構成されていてもよい。このように、オイルスクラバは、石油精製または石油化学プロセスに供給される熱分解生成物を冷却および洗浄することができるので、石油精製または石油化学プロセスへの影響を最小限にすることができる。
【0024】
本発明の第8の態様によれば、原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置を有するリサイクルシステムが提供される。このリサイクルシステムは、前記ガス化部の下流に配置され、前記ガス化部で生成された熱分解生成物を留分に分離する分留塔を有している。また、リサイクルシステムは、前記留分を石油精製システムまたは石油化学システムに供給する経路を有している。
【0025】
本発明の第9の態様によれば、原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置を有するリサイクルシステムが提供される。このリサイクルシステムは、前記ガス化部の下流に配置され、前記ガス化部で生成された熱分解生成物を冷却および洗浄するオイルスクラバを有している。また、リサイクルシステムは、前記ガス化部の下流に配置され、前記冷却および洗浄された熱分解生成物を留分に分離する分留塔を有している。リサイクルシステムは、前記留分を石油精製システムまたは石油化学システムに供給する経路を含んでいる。
【0026】
分留塔は、熱分解生成物の分留を行う装置として定義される。留分は、ガス、ナフサ、灯油、および軽油の少なくとも1つであってもよい。前記経路は、前記留分を前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットまたは前記石油化学システムのエチレン製造システムに供給するように構成されていてもよい。分留塔により、石油精製または石油化学プロセスに供給する熱分解生成物を分離することができるので、石油精製または石油化学プロセスへの影響を最小限にすることができる。
【0027】
本発明の第10の態様によれば、原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置を有するリサイクルシステムが提供される。このリサイクルシステムは、前記ガス化部で生成された熱分解生成物を石油精製システムの常圧蒸留ユニットから排出された留出油または該留出油を精製した油で洗浄する洗浄装置を有している。また、リサイクルシステムは、前記洗浄装置において使用された油および前記洗浄された熱分解生成の少なくとも一方を前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットおよび石油化学システムの少なくとも一方に供給する供給路を有している。
【0028】
前記原料は、前記石油精製システムまたは前記石油化学システムから排出される残渣油であってもよい。前記残渣油は、前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットから排出された炭化水素系重質油であってもよい。前記残渣油は、前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットから排出され減圧フラッシュされた炭化水素系重質油であってもよい。前記残渣油は、前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットまたは減圧蒸留ユニットから排出され熱分解(サーマルクラック)された炭化水素系重質油であってもよい。前記残渣油は、前記石油化学システムのエチレン製造システムから排出された炭化水素系重質油であってもよい。この場合において、前記残渣油は熱分解タールであってもよい。前記原料は、廃プラスチックやシュレッダーダストのような廃棄物を含んでいてもよい。前記原料は、バイオマスのような有機物を含んでいてもよい。
【0029】
前記ガス化部のガス化剤として、水素ガス、メタンガス、エチレンガス、エタンガス、プロピレンガス、プロパンガス、水蒸気の少なくとも1つを用いてもよい。前記ガス化部のガス化剤として、前記石油精製システムにおいて回収されるガスを用いてもよい。前記ガス化部の熱媒体として、鉄、コバルト、またはルテニウムなどの金属を含む粒子を用いて、前記ガス化部における炭化水素合成を促進してもよい。酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム(CaCO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))などの脱硫機能を有する物質を前記熱分解・ガス化プロセスの熱媒体として用いて、前記ガス化部における脱硫反応を促進してもよい。
【0030】
前記熱分解装置は、前記炭素分を選択的に燃焼する燃焼室と、該燃焼室での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化室とを備えていてもよい。この場合において、前記熱分解装置は内部循環流動床ガス化炉であってもよい。リサイクルシステムは、前記原料を前記熱分解装置の燃焼室およびガス化室の双方に供給する経路を含んでいてもよい。
【0031】
本発明によれば、熱分解装置が炭化水素系重質残渣油の炭素分を選択的に燃焼させることができ、炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物を熱分解(サーマルクラック)ガス化して軽質化された熱分解生成物を得ることができる。このため、炭素分をガス化する必要がなく、ことさらに高温化する必要がない。また、炭素分を燃焼処理できるので、アスファルテン分の多い超重質油の処理も可能である。
【0032】
また、高温化しないため、得られる熱分解ガスは完全に軽質化されておらず、エチレン、プロピレン、ブタジエン等の炭化水素ガス、ナフサ、軽油、灯油等の油分を含み、これらを石油精製プロセス、石油化学プロセスに供給することで、残渣油の高付加価値化が可能となる。
【0033】
そして、高温化する必要がないことから、部分酸化による直接加熱法を採用する必要がないので、得られる油分は酸素を含まないかまたは少量しか含まず安定性がよい。また、生成ガスも二酸化炭素や一酸化炭素等の含有酸素化合物を含まないかまたは少量しか含まないものが得られる。
【0034】
また、廃棄物を原料とすることで、化石燃料の消費量を削減し地球環境の保全に貢献できると共に、廃棄物処理費用を得ることで、事業採算性を向上させることが可能となる。
【0035】
炭化水素系重質残渣油のリサイクル率を高めるためには、熱分解生成物中に占める常圧蒸留塔で製品化される留分の割合をできるだけ高めるのが望ましく、ガス化炉内でフィッシャー−トロプシ反応(FT反応)等を行わせることもできる。
【0036】
本発明の上述した目的ならびにその他の目的および効果は、本発明の好ましい実施形態を一例として図示した添付図面と照らし合わせれば、以下に述べる説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態におけるリサイクルシステムを図1から図5を参照して説明する。図面を通して同一または相当する構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0038】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリサイクルシステムを含む石油精製システムを示す。リサイクルシステムは、炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、および有機物をリサイクルする。リサイクルシステムは、石油精製システム(燃料油生産システム)内部に設けられた循環流動床ガス化炉40を含んでいる。石油精製プロセスの各部で生成される炭化水素系重質残渣油を内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に導入して熱分解(サーマルクラック)し、得られた熱分解生成物120を常圧蒸留装置10にそのまま戻すように構成している。
【0039】
すなわち、石油精製システムは、図1に示すように、石油精製プロセスにおいて常圧蒸留を行う常圧蒸留装置(常圧蒸留塔)10を具備する。該常圧蒸留装置10で原油100は常圧下で蒸留することにより、各沸点範囲でナフサ101、灯油102、軽油103、残油104に分離される。また、常圧蒸留装置10から排出されるガス105はガス回収装置11に導入され、軽質ガスG(水素、メタン等の炭化水素ガス)が回収され、更にLPG回収装置12に導入され、製品のLPG106が得られる。
【0040】
ナフサ101はナフサ水素化精製装置13に導入され、該ナフサ水素化精製装置13で軽質ガスGが回収され、更に接触改質装置14に導入され、該接触改質装置14で軽質炭化水素108が回収される。該軽質炭化水素108はLPG回収装置12に導入されて製品のLPG106となり、また、アルキレーション15を通してガソリン調合装置に供給される。接触改質装置14を通ったナフサはベンゼン抽出装置16でベンゼン成分が抽出され、ガソリン調合装置17に供給される。該ガソリン調合装置17でガソリン調合が行われ自動車用ガソリン109や航空ガソリン110が精製される。ナフサの一部は、石油化学プロセスで用いられる製品ナフサ107として回収される。
【0041】
常圧蒸留装置10から留出された灯油102は灯油水素化精製装置18に導入され、該灯油水素化精製装置18で軽質ガスGが抽出され、灯油111、ジェット燃料112が生成される。
【0042】
また、常圧蒸留装置10から留出された軽油103は軽油水素化精製装置19に導入され、該軽油水素化精製装置19で軽質ガスGが抽出され、軽油113が生成される。
【0043】
常圧蒸留装置10から留出された残油104は減圧蒸留(フラッシュ)装置20、残油脱硫(直接脱硫)装置21(ARDS)、重油調合装置22に導入される。減圧蒸留装置20に導入された残油104は減圧下で且つ高温(常圧蒸留装置10より高温)下で蒸留され、減圧軽油脱硫(間接脱硫)装置23(VGO)、(残渣油)流動接触分解装置24、水素化分解装置25、残油脱硫装置21に導入される。減圧軽油脱硫装置23に導入された油は、軽質ガスGが抽出され、重油調合装置22に導入される。また、減圧軽油脱硫装置23からの一部は重質軽油脱硫装置26を通って重油調合装置22に導入される。また、流動接触分解装置24に導入された油は、軽質ガスGが抽出され、ガソリン調合装置17に導入される。また、残油脱硫装置21に導入された油は、軽質ガスGが抽出され重油調合装置22に導入される。そして重油調合装置22に導入された油は調合され、製品の重油114となる。
【0044】
減圧蒸留装置20からの残油の一部はアスファルト製造装置27に導入され、製品のアスファルト115となったり、熱分解装置28に導入され、高温下で炭化水素分子を分解し、軽質炭化水素分子を得、残渣は石油コークスピッチ116となる。
【0045】
また、上記ガス回収装置11、ナフサ水素化精製装置13、灯油水素化精製装置18、軽油水素化精製装置19、流動接触分解装置24、減圧軽油脱硫装置23、残油脱硫装置21で回収された軽質ガスGは硫黄回収装置30で脱硫され、燃料ガス117および硫黄118が回収される。
【0046】
本実施形態の石油精製システムにおいては、炭化水素系重質残渣油のリサイクルシステムが、ガス化室41および燃焼室42を具備する内部循環流動床ガス化炉40を含んでいる。燃焼室42は原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部として機能し、ガス化室41は燃焼部での燃焼熱を熱源として上記原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化部として機能する。原料は、常圧蒸留装置10からの残油104、減圧蒸留装置20からの残油および熱分解装置28からの残油、石油化学プロセス(図示せず)からの残油、廃プラスチック181、廃棄物182、シュレッダーダスト183をはじめとする各種廃棄物、バイオマス184等の有機物を含んでいる。これらの原料を内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に導入し、熱分解(サーマルクラック)する。この結果得られる熱分解生成物120を常圧蒸留装置10または、減圧蒸留装置20に供給している。また、内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に導入する流動化ガスに石油精製プロセスシステムの上記各部で回収された軽質ガスGまたは水蒸気を使用する。
【0047】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るリサイクルシステムを含む石油精製システムを示す。リサイクルシステムは、第1の実施形態と同様に、石油精製システム内に設けられた内部循環流動床ガス化炉40を含んでいる。石油精製システムの各部で生成される炭化水素系重質残渣油、各種廃棄物、有機物を内部循環流動床ガス化炉40のガス化室に導入して熱分解(サーマルクラック)し、得られた熱分解生成物を石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスからの留出油または、留出油を精製した油を用いて洗浄し、洗浄に使用した油を石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスにそのまま戻すように構成している。
【0048】
すなわち、図2に示すように、炭化水素系重質残渣油のリサイクルシステムは、第1の実施形態の石油精製システムと同様に、ガス化室41および燃焼室42を具備する内部循環流動床ガス化炉40を含んでいる。燃焼室42は原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部として機能し、ガス化室41は燃焼部での燃焼熱を熱源として上記原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化部として機能する。原料は、常圧蒸留装置10からの残油104、減圧蒸留装置20からの残油および熱分解装置28からの残油、石油化学プロセス(図示せず)からの残渣油、廃プラスチック181、廃棄物182、シュレッダーダスト183をはじめとする各種廃棄物、バイオマス184等の有機物を含んでいる。これらの原料を内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に導入し、熱分解(サーマルクラック)する。この結果得られる熱分解生成物120は改質装置50を通して改質され、洗浄装置51において常圧蒸留装置10から抜き出した留出油130を用いて洗浄し、洗浄に使用した留出油131を再び常圧蒸留装置10に戻している。洗浄された熱分解生成物は製品ガス52として使用される。
【0049】
洗浄装置51において使用する留出油は、常圧蒸留装置10から抜出した留出油130に限定されず、例えば、ナフサ101、灯油102、軽油103を使用して熱分解生成物120を洗浄してもよい。また、留出油130、ナフサ101、灯油102、軽油103を精製したものを使用して熱分解生成物120を洗浄してもよく、改質装置50はなくてもよい。
【0050】
図3は、本発明の第3の実施形態に係るリサイクルシステムを含む石油化学システムを示す。図示した例においては、石油化学システムは、エチレン製造システムを含んでいる。図3に示すように、エチレン製造システムは、分解炉60、ガソリン分留塔61、急冷塔62、分解ガス圧縮機63、カセイソーダ洗浄塔64、水素分離工程65、脱メタン塔66、脱エタン塔67、アセチレン水添68、エチレン精留塔69、脱プロパン70、水添71、プロピレン精留塔72、脱ブタン塔73および水添74を具備する。本実施形態のリサイクルシステムは、ガス化室41および燃焼室42を具備する内部循環流動床ガス化炉40を含んでいる。
【0051】
ガソリン分留塔61からの分解重油140、脱ブタン塔73の塔底より分離されたC9分留141、石油精製プロセスまたはその他の石油化学プロセス(図示せず)からの炭化水素系重質残渣油185、廃プラスチック181、廃棄物182、シュレッダーダスト183等の各種廃棄物、バイオマス184等の有機物の少なくとも1つを内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に導入し、熱分解(サーマルクラック)する。その結果得られた熱分解生成物120を分解炉60の出口に供給している。
【0052】
図4は、本発明の第4の実施形態に係るリサイクルシステムを示す。リサイクルシステムは、図1および図2に示すような石油精製プロセスや図3に示すような石油化学プロセス(エチレン製造プロセス)に適用することができる。リサイクルシステムは、ガス化室41と燃焼室42とを有する内部循環流動床ガス化炉40を含んでいる。
【0053】
石油精製プロセスまたは石油化学プロセスの各部で生成される炭化水素系重質残渣油185、廃プラスチック181、廃棄物182、シュレッダーダスト183をはじめとする各種廃棄物、バイオマス184等の有機物を内部循環流動床ガス化炉40のガス化室40に導入して熱分解(サーマルクラック)し、得られた熱分解生成物120を石油精製プロセスまたは石油化学プロセス(エチレン製造プロセス)に供給する。
【0054】
すなわち、リサイクルシステムは、熱分解生成物120の供給先の石油精製または石油化学プロセス300の影響を最小にするために、内部循環流動床ガス化炉40の下流にオイルスクラバ80を有している。オイルスクラバ80では熱分解生成物120を冷却洗浄する。また、リサイクルシステムは、オイルスクラバ80の下流に分留塔81を有している。分留塔81では、冷却洗浄した熱分解生成物121をガス122、ナフサ、灯油、軽油等の各留分123ごとに分ける。その後、ガス122および留分123を石油精製または石油化学プロセス300に供給するように構成している。内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に供給するガス化剤126としては石油精製プロセスのオフガスまたは水蒸気を用いる。ガス化室41からの生成ガスまたはリサイクルシステムからの生成ガスをガス化剤126として内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に供給してもよい。内部循環流動床ガス化炉40の燃焼室42には燃焼用空気125が吹き込まれる。
【0055】
図4に示すリサイクルシステムは、ガス化室41および燃焼室42を具備する内部循環流動床ガス化炉40を含んでいる。石油精製または石油化学プロセス300からの炭化水素重質残渣油185、廃プラスチック181、廃棄物182、ジュレッダーダスト183をはじめとする各種廃棄物、バイオマス184等の有機物の少なくとも1つを内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に導入し、熱分解(サーマルクラック)してこの熱分解生成物120をオイルスクラバ80で冷却洗浄し、冷却洗浄された熱分解生成物121は分留塔81で、ガス122、ナフサ、灯油および軽油等の留分123に分留される。ガス122と留分123は、図1または図2に示す石油精製プロセス300または図3に示す石油化学プロセス300に供給される。
【0056】
図5は、上述した実施形態において用いられる内部循環流動床ガス化炉40の例を示す。図5に示すように、内部循環流動床ガス化炉40はガス化室41と、燃焼室42と、ガス化室41と燃焼室42の間に設けられた仕切壁43とを具備している。また、燃焼室42には仕切壁45、46により熱回収室421、流動媒体沈降室422、主燃焼室423とが形成されている。ガス化室41および燃焼室42の下方に流動媒体(砂等の微粒子)が充填保持されている。図5に示すように、燃焼室42にはその下方から流動媒体を流動させる流動気体として空気200が供給され、ガス化室41にはその下方から流動媒体を流動させる流動気体として軽質ガス201(例えば、水蒸気または水素ガス、メタンガス、エチレンガス、エタンガス、プロピレンガス、プロパンガス等の軽質炭化水素ガス)が供給されるようになっている。
【0057】
上記内部循環流動床ガス化炉40において、ガス化室41の流動媒体は矢印80に示すように流動媒体循環路(図示せず)を通って燃焼室42の主燃焼室423に流入するようになっており、主燃焼室423で炭素分等の燃焼により高温となる。高温の流動媒体は矢印81に示すように仕切壁46を越えて流動媒体沈降室422に流入し、流動媒体沈降室422内の流動媒体は更に仕切壁43に設けられた穴を通ってガス化室41に流入するようになっている。すなわち、ガス化室41と燃焼室42の間では流動媒体は循環している。
【0058】
さらに、燃焼室42の主燃焼室423内の流動媒体は矢印82に示すように、仕切壁45を越えて熱回収室421に流入し、熱回収室421内の流動媒体は仕切壁45に設けられた穴を通って主燃焼室423へ流入するようになっている。すなわち、主燃焼室423と熱回収室421の間では流動媒体は循環している。
【0059】
上記内部循環流動床ガス化炉40において、原料203をガス化室41に定量的に供給する。原料203は、石油精製システム(図1参照)の常圧蒸留装置10、減圧蒸留装置20、熱分解装置28、石油化学プロセスから排出される炭化水素系重質残渣油、廃プラスチック等の各種廃棄物、バイオマス等の有機物を含んでいる。したがって、原料203の揮発成分が熱分解(サーマルクラック)され、熱分解生成物120となる。ガス化室41で熱分解されない原料203の炭素分を含む流動媒体は、矢印80に示すように燃焼室42に移動し、炭素成分は該燃焼室42内で燃焼する。この燃焼熱により流動媒体は高温となる。その後、高温の流動媒体は矢印81に示すようにガス化室41に流入し、ガス化室41に投入される原料203(炭化水素系重質残渣油)の熱分解(サーマルクラック)に寄与する。
【0060】
また、熱分解(サーマルクラック)する原料203が揮発分が多く固定炭素が少ない場合、矢印80で示される流動媒体に同伴し、燃焼室42に移動する炭素分が少ないため、燃焼室42での燃焼量が少なく、ガス化室41で必要とする熱量を確保することができない。このような場合は、燃焼室42側にも炭化水素系重質残渣油、廃棄プラスチック等の各種廃棄物、バイオマス等の有機物をはじめとする原料204を燃焼室42に供給し、燃焼室42での燃焼量を補う。
【0061】
上記のように、石油精製システム(図1参照)の常圧蒸留装置10、減圧蒸留装置20、熱分解装置28、石油化学プロセスからの炭化水素系重質残渣油、廃プラスチック等の各種廃棄物、バイオマス等の有機物の原料203を内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に導入して熱分解(サーマルクラック)する。熱分解(サーマルクラック)されない炭素分を流動媒体と伴に燃焼室42へ移動させ、残渣油中の炭素分を選択的に燃焼させることができる。このように炭化水素系重質残渣油のような原料203を熱分解(サーマルクラック)するのに高温雰囲気が必要でないことから、部分酸化による直接加熱法を採用する必要がなく、得られる油分は酸素を含まないまたは少量しか含まないため安定性がよい。また、生成ガスも二酸化炭素や一酸化炭素等の含酸素化合物を含まないかまたは少量しか含まない。
【0062】
また、原料203を熱分解(サーマルクラック)するのに高温雰囲気が必要でないため、得られる熱分解生成物120はエチレン、プロピレン、ブタジエン等の炭化水素ガス、ナフサ、軽油等の油分を含み、これらを石油精製プロセスおよび/または石油化学プロセスに供給することで、炭化水素系重質残渣油、廃プラスチック、シュレッダーダスト等の各種廃棄物、バイオマス等の有機物のケミカルサイクルが可能である。
【0063】
上述の実施形態では、内部循環流動床ガス化炉40のガス化室41に供給する軽質ガス201として、石油精製システムの各部で得られる軽質ガスGを使用したが、この軽質ガス201としては、水素ガス(H2)、メタンガス(CH4)、エチレンガス(C24)、エタンガス(C26)、プロピレンガス(C36)、プロパンガス(C38)、または水蒸気、あるいはこれらの混合ガスを用いてもよい。
【0064】
内部循環流動床ガス化炉40の流動媒体として鉄、コバルト、ルテニウム等の金属を含む物質の微粒子を用いてもよい。この場合には、ガス化室41内での炭化水素合成を促進させることができる。あるいは、酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などの脱硫機能を有する物質を内部循環流動床ガス化炉40の熱媒体として用いてもよい。
【0065】
本発明に係るリサイクルシステムは、石油精製プロセスだけではなく、石油化学プロセスにも適用できる。また、上述の実施形態では、原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と、その燃焼熱を熱源として該原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置として内部循環流動床ガス化炉を用いたが、熱分解装置は内部循環流動床ガス化炉に限定されるものではない。すなわち、原料中の炭素分を燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として原料を熱分解(サーマルクラック)・ガス化するガス化部を有する熱分解装置であればどのようなものでもよい。
【0066】
これまで本発明の実施形態について図示および説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更および改変が可能であることは容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、石油精製プロセスや石油化学プロセスから排出される重質油等の炭化水素系残渣油、各種廃棄物、有機物をケミカルリサイクルするリサイクル方法およびシステムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリサイクルシステムを含む石油精製システムを示すフロー図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るリサイクルシステムを含む石油精製システムを示すフロー図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るリサイクルシステムを含む石油化学システムを示すフロー図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るリサイクルシステムを示すフロー図である。
【図5】本発明に係るリサイクルシステムに使用する内部循環流動床ガス化炉を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料中の炭素分を選択的に燃焼し、
前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化し、
前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物を石油精製プロセスおよび石油化学プロセスの少なくとも一方に供給する、リサイクル方法。
【請求項2】
原料中の炭素分を選択的に燃焼し、
前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化し、
前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物を冷却および洗浄し、
前記冷却および洗浄された熱分解生成物を石油精製プロセスおよび石油化学プロセスの少なくとも一方に供給する、リサイクル方法。
【請求項3】
前記供給プロセスは、前記熱分解生成物を石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスに供給する、請求項1または2に記載のリサイクル方法。
【請求項4】
前記供給プロセスは、前記熱分解生成物を石油化学プロセスのエチレン製造プロセスに供給する、請求項1または2に記載のリサイクル方法。
【請求項5】
原料中の炭素分を選択的に燃焼し、
前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化し、
前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物を留分に分離し、
前記留分を石油精製プロセスおよび石油化学プロセスの少なくとも一方に供給する、リサイクル方法。
【請求項6】
原料中の炭素分を選択的に燃焼し、
前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化し、
前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物を冷却および洗浄し、
前記冷却および洗浄された熱分解生成物を留分に分離し、
前記留分を石油精製プロセスおよび石油化学プロセスの少なくとも一方に供給する、リサイクル方法。
【請求項7】
前記留分は、ガス、ナフサ、灯油、および軽油の少なくとも1つである、請求項5または6に記載のリサイクル方法。
【請求項8】
前記供給プロセスは、前記留分を前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスに供給する、請求項5から7のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項9】
前記供給プロセスは、前記留分を前記石油化学プロセスのエチレン製造プロセスに供給する、請求項5から7のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項10】
原料中の炭素分を選択的に燃焼し、
前記燃焼プロセスにおける燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化し、
前記熱分解・ガス化プロセスにより生成された熱分解生成物を石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスから排出された留出油または該留出油を精製した油で洗浄し、
前記洗浄プロセスにおいて使用された油および前記洗浄された熱分解生成の少なくとも一方を前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスおよび石油化学プロセスの少なくとも一方に供給する、リサイクル方法。
【請求項11】
前記原料は、前記石油精製プロセスまたは前記石油化学プロセスから排出される残渣油である、請求項1から10のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項12】
前記残渣油は、前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスから排出された炭化水素系重質油である、請求項11に記載のリサイクル方法。
【請求項13】
前記残渣油は、前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスから排出され減圧フラッシュされた炭化水素系重質油である、請求項11に記載のリサイクル方法。
【請求項14】
前記残渣油は、前記石油精製プロセスの常圧蒸留プロセスまたは減圧蒸留プロセスから排出され熱分解された炭化水素系重質油である、請求項11に記載のリサイクル方法。
【請求項15】
前記残渣油は、前記石油化学プロセスのエチレン製造プロセスから排出された炭化水素系重質油である、請求項11に記載のリサイクル方法。
【請求項16】
前記残渣油は熱分解タールである、請求項15に記載のリサイクル方法。
【請求項17】
前記原料は廃棄物を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項18】
前記廃棄物は、廃プラスチックおよびシュレッダーダストの少なくとも1つである、請求項17に記載のリサイクル方法。
【請求項19】
前記原料は有機物を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項20】
前記有機物はバイオマスである、請求項19に記載のリサイクル方法。
【請求項21】
前記熱分解・ガス化プロセスのガス化剤として、水素ガス、メタンガス、エチレンガス、エタンガス、プロピレンガス、プロパンガス、水蒸気の少なくとも1つを用いる、請求項1から20のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項22】
前記熱分解・ガス化プロセスのガス化剤として、前記石油精製プロセスにおいて回収されるガスを用いる、請求項1から20のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項23】
前記熱分解・ガス化プロセスの熱媒体として、金属を含む粒子を用いる、請求項1から20のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項24】
前記金属は、鉄、コバルト、またはルテニウムである、請求項23に記載のリサイクル方法。
【請求項25】
前記熱分解・ガス化プロセスの熱媒体として、脱硫機能を有する物質を用いる、請求項1から20のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項26】
前記物質は、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、または水酸化カルシウムである、請求項25に記載のリサイクル方法。
【請求項27】
前記熱分解・ガス化プロセスは、前記炭素分を選択的に燃焼する燃焼室と該燃焼室での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化するガス化室とを有する熱分解装置によって行われる、請求項1から26のいずれか一項に記載のリサイクル方法。
【請求項28】
前記熱分解装置は内部循環流動床ガス化炉である、請求項27に記載のリサイクル方法。
【請求項29】
前記原料を前記熱分解装置の燃焼室およびガス化室の双方に供給する、請求項27または28に記載のリサイクル方法。
【請求項30】
原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置と、
前記ガス化部で生成された熱分解生成物を石油精製システムおよび石油化学システムの少なくとも一方に供給する経路と、
を備えた、リサイクルシステム。
【請求項31】
原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置と、
前記ガス化部の下流に配置され、前記ガス化部で生成された熱分解生成物を冷却および洗浄するオイルスクラバと、
前記冷却および洗浄された熱分解生成物を石油精製システムおよび石油化学システムの少なくとも一方に供給する経路と、
を備えた、リサイクルシステム。
【請求項32】
前記経路は、前記熱分解生成物を石油精製システムの常圧蒸留ユニットに供給するように構成されている、請求項30または31に記載のリサイクルシステム。
【請求項33】
前記経路は、前記熱分解生成物を石油化学システムのエチレン製造システムに供給するように構成されている、請求項30または31に記載のリサイクルシステム。
【請求項34】
原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置と、
前記ガス化部の下流に配置され、前記ガス化部で生成された熱分解生成物を留分に分離する分留塔と、
前記留分を石油精製システムおよび石油化学システムの少なくとも一方に供給する経路と、
を備えた、リサイクルシステム。
【請求項35】
原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置と、
前記ガス化部の下流に配置され、前記ガス化部で生成された熱分解生成物を冷却および洗浄するオイルスクラバと、
前記ガス化部の下流に配置され、前記冷却および洗浄された熱分解生成物を留分に分離する分留塔と、
前記留分を石油精製システムおよび石油化学システムの少なくとも一方に供給する経路と、
を備えた、リサイクルシステム。
【請求項36】
前記留分は、ガス、ナフサ、灯油、および軽油の少なくとも1つである、請求項34または35に記載のリサイクルシステム。
【請求項37】
前記経路は、前記留分を前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットに供給するように構成されている、請求項34から36のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項38】
前記経路は、前記留分を前記石油化学システムのエチレン製造システムに供給するように構成されている、請求項34から36のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項39】
原料中の炭素分を選択的に燃焼する燃焼部と該燃焼部での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化するガス化部とを有する熱分解装置と、
前記ガス化部で生成された熱分解生成物を石油精製システムの常圧蒸留ユニットから排出された留出油または該留出油を精製した油で洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄装置において使用された油および前記洗浄された熱分解生成の少なくとも一方を前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットおよび石油化学システムの少なくとも一方に供給する供給路と、
を備えた、リサイクルシステム。
【請求項40】
前記原料は、前記石油精製システムまたは前記石油化学システムから排出される残渣油である、請求項30から39のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項41】
前記残渣油は、前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットから排出された炭化水素系重質油である、請求項40に記載のリサイクルシステム。
【請求項42】
前記残渣油は、前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットから排出され減圧フラッシュされた炭化水素系重質油である、請求項40に記載のリサイクルシステム。
【請求項43】
前記残渣油は、前記石油精製システムの常圧蒸留ユニットまたは減圧蒸留ユニットから排出され熱分解された炭化水素系重質油である、請求項40に記載のリサイクルシステム。
【請求項44】
前記残渣油は、前記石油化学システムのエチレン製造システムから排出された炭化水素系重質油である、請求項40に記載のリサイクルシステム。
【請求項45】
前記残渣油は、熱分解タールである、請求項44に記載のリサイクルシステム。
【請求項46】
前記原料は廃棄物を含む、請求項30から39のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項47】
前記廃棄物は、廃プラスチックおよびシュレッダーダストの少なくとも1つである、請求項46に記載のリサイクルシステム。
【請求項48】
前記原料は有機物を含む、請求項30から39のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項49】
前記有機物はバイオマスである、請求項48に記載のリサイクルシステム。
【請求項50】
前記ガス化部のガス化剤として、水素ガス、メタンガス、エチレンガス、エタンガス、プロピレンガス、プロパンガス、水蒸気の少なくとも1つを用いる、請求項30から49のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項51】
前記ガス化部のガス化剤として、前記石油精製システムにおいて回収されるガスを用いる、請求項30から49のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項52】
前記ガス化部の熱媒体として、金属を含む粒子を用いる、請求項30から49のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項53】
前記金属は、鉄、コバルト、またはルテニウムである、請求項52に記載のリサイクルシステム。
【請求項54】
前記ガス化部の熱媒体として、脱硫機能を有する物質を用いる、請求項30から49のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項55】
前記物質は、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、または水酸化カルシウムである、請求項54に記載のリサイクルシステム。
【請求項56】
前記熱分解装置は、前記炭素分を選択的に燃焼する燃焼室と、該燃焼室での燃焼熱を熱源として前記原料を熱分解・ガス化するガス化室とを備える、請求項30から55のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。
【請求項57】
前記熱分解装置は内部循環流動床ガス化炉である、請求項56に記載のリサイクルシステム。
【請求項58】
前記原料を前記熱分解装置の燃焼室およびガス化室の双方に供給する経路をさらに備えた、請求項30から57のいずれか一項に記載のリサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−504292(P2007−504292A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524535(P2006−524535)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012674
【国際公開番号】WO2005/021686
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】