説明

リザーバタンクの取り付け構造

【課題】ブレーキ液注入作業などに支障ない剛性を備える一方、衝撃を受けたとき、衝撃を緩和すると共に、ブレーキの作動に支障を来たさないようにしたリザーバタンクの取り付け構造を提供する。
【解決手段】マスタシリンダ14に供給すべきブレーキ液を貯留すると共に、ボンネット26で被覆されつつ、車両16のエンジンルーム24の内部に、マスタシリンダ14よりも前方位置(矢印A)において、エンジンルーム24の壁面24aに固定されたブラケット30に締結部32を介して取り付けられるリザーバタンクの取り付け構造において、締結部32は、リザーバタンク10に重力方向から所定値以上の荷重が作用するとき、リザーバタンク10を下方に変位させると共に、変位した後もマスタシリンダ14に対して所定の高さを維持するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はリザーバタンクの取り付け構造に関し、より具体的にはマスタシリンダに供給すべきブレーキ液を貯蔵するリザーバタンクの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リザーバタンクはブラケットなどで車両のエンジンルームの壁面に取り付けられるが、マスタシリンダを車両の後方(運転席側)に配置すると、リザーバタンクは前方(バンパ側)でフロントボンネットの直下に位置する場合がある。ところで、近時、車両が人と接触したとき、フロントバンパで跳ね上げてフロントボンネットで受けとめることで、歩行者を保護する技術が提案されているが、そのとき、頭部がリザーバタンクの配置位置の上方でフロントボンネットに当たり、直下のリザーバタンクによって傷害を受けることがある。そのため、下記の特許文献1記載の技術にあっては、リザーバタンクをブラケットなどの締結手段に対して相対変位させることで、衝撃を緩和するように構成している。
【特許文献1】特開2004−268864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来技術の場合、リザーバタンクをブラケットなどの締結手段に対して相対変位、即ち、脱落させることで衝突時の衝撃を緩和しているが、リザーバタンクは脱落後もマスタシリンダにブレーキ液を供給してブレーキの作動に支障を来たさないことが望ましい。また、リザーバタンクには取り付けた後、ブレーキ液を注入するときに注入治具の重みが作用することから、それに耐える程度の剛性も要求される。
【0004】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、ブレーキ液注入作業などに支障ない剛性を備える一方、衝撃を受けたとき、その衝撃を緩和すると共に、ブレーキの作動に支障を来たさないようにしたリザーバタンクの取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を解決するために、請求項1にあっては、マスタシリンダに供給すべきブレーキ液を貯留すると共に、ボンネットで被覆されつつ、車両のエンジンルーム内に、前記マスタシリンダよりも前方位置において、前記エンジンルーム壁面に固定されたブラケットに締結部を介して取り付けられるリザーバタンクの取り付け構造において、前記締結部は、前記リザーバタンクに重力方向から所定値以上の荷重が作用するとき、前記リザーバタンクを下方に変位させると共に、変位した後も前記マスタシリンダに対して所定の高さを維持するように構成される如く構成した。
【0006】
請求項2に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、前記締結部は、前記所定の高さを超えて前記リザーバタンクの下方への変位を規制するストッパを備える如く構成した。
【0007】
請求項3に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、前記締結部は、前記リザーバタンクと前記ブラケットに連続する、凹部と凸部の少なくともいずれかを備えた、相互に変位自在な少なくとも2個の構造体からなり、前記2個の構造体は、前記所定値以上の荷重が作用するとき、前記凹部と凸部の少なくともいずれかを変形させて変位することによって前記リザーバタンクを下方に変位させる如く構成した。
【0008】
請求項4に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、前記締結部は、前記リザーバタンクと前記ブラケットに連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の構造体と、前記2個の構造体の少なくともいずれかに形成される脆弱部からなり、前記2個の構造体は、前記所定値以上の荷重が作用するとき、前記脆弱部を破壊して変位することによって前記リザーバタンクを下方に変位させる如く構成した。
【0009】
請求項5に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、前記締結部は、前記リザーバタンクと前記ブラケットに連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の構造体と、前記2個の構造体の一方に穿設されて上方に開口するスリットと、前記スリットに挿通されて前記2個の構造体の一方を他方に締結するボルト・ナットからなり、前記2個の構造体の一方は、前記所定値以上の荷重が作用するとき、前記スリットで脱落することによって前記リザーバタンクを下方に変位させる如く構成した。
【0010】
請求項6に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、前記締結部は、前記構造体の重力方向への変位をガイドするガイド部を備える如く構成した。
【0011】
尚、上記において、「前記リザーバタンクと前記ブラケットに連続する、」「2個の構造体」は、2個の構造体が、リザーバタンクとブラケットと別体に設けられる場合と、リザーバタンクとブラケットと一体に設けられる場合の双方を含む。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係るリザーバタンクの取り付け構造においては、締結部は、リザーバタンクに重力方向から所定値以上の荷重が作用するときにリザーバタンクを下方に変位させる如く構成したので、所定値をブレーキ液注入作業などに支障ない荷重を超える値に設定することで、ブレーキ液注入作業などに支障ない剛性を与えることができる一方、その所定値以上の荷重が作用するときは下方に変位させることで、衝撃を受けたとき、その衝撃を緩和することができる。
【0013】
また、リザーバタンクが下方に変位した後もマスタシリンダに対して所定の高さを維持するように構成したので、所定の高さを、マスタシリンダにブレーキ液を供給するのに支障ない高さ、より具体的には重力方向においてマスタシリンダと同程度の高さを維持することで、リザーバタンクの変位によるホース外れなどが生じることがないため、マスタシリンダにブレーキ液を確実に供給することができ、ブレーキが作動しないなど、ブレーキの作動に支障を来たすような不都合が生じるのを防止することができる。
【0014】
請求項2に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、締結部は、所定の高さを超えてリザーバタンクの下方への変位を規制するストッパを備える如く構成したので、上記した効果に加え、ストッパを備えることで、リザーバタンクが下方に変位した後も、マスタシリンダに対して所定の高さを確実に維持することができ、ホース外れによってブレーキが作動しないなどのブレーキの作動に支障を来たすような不都合が生じるのを確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、締結部は、リザーバタンクとブラケットに連続する、凹部と凸部の少なくともいずれかを備えた、相互に変位自在な少なくとも2個の構造体からなり、2個の構造体は、所定値以上の荷重が作用するとき、凹部と凸部の少なくともいずれかを変形させて変位することによってリザーバタンクを下方に変位させる如く構成したので、上記した効果に加え、所定値以上の荷重が作用するときは下方に確実に変位させることができ、衝撃を確実に緩和することができる。
【0016】
請求項4に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、締結部は、リザーバタンクとブラケットに連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の構造体と、2個の構造体の少なくともいずれかに形成される脆弱部からなり、2個の構造体は、所定値以上の荷重が作用するとき、脆弱部を破壊して変位することによってリザーバタンクを下方に変位させる如く構成したので、上記した効果に加え、所定値以上の荷重が作用するときは下方に確実に変位させることができ、衝撃を確実に緩和することができる。
【0017】
請求項5に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、締結部は、リザーバタンクとブラケットに連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の構造体と、2個の構造体の一方に穿設されて上方に開口するスリットと、スリットに挿通されて2個の構造体の一方を他方に締結するボルト・ナットからなり、2個の構造体の一方は、所定値以上の荷重が作用するとき、スリットで脱落することによってリザーバタンクを下方に変位させる如く構成したので、上記した効果に加え、所定値以上の荷重が作用するときは下方に確実に変位させることができ、衝撃を確実に緩和することができる。
【0018】
請求項6に係るリザーバタンクの取り付け構造にあっては、締結部は、構造体の重力方向への変位をガイドするガイド部を備える如く構成したので、上記した効果に加え、所定値以上の荷重が作用するときは下方に一層確実に変位させることができて衝撃を一層確実に緩和することができる。また、リザーバタンクを重力方向に対して傾斜させることがないので、マスタシリンダにブレーキ液を確実に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に即してこの発明に係るリザーバタンクの取り付け構造を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、この発明の第1実施例に係るリザーバタンクの取り付け構造を、車両のエンジンルームに配置される状態で示す説明側面図である。図2は、図1に示すリザーバタンクをマスタシリンダなども含めて示す、その斜視図である。
【0021】
図1と図2を併せ参照して説明すると、リザーバタンク10はタンク本体10aを備え、その内部にはブレーキ液が貯留される。リザーバタンク10は2本のホース(ブレーキ液通路)12によってマスタシリンダ14に接続され、ブレーキ液通路12を通じてマスタシリンダ14にブレーキ液を供給する。
【0022】
車両(乗用車)16の運転席20の床面に配置されたブレーキペダル(図示せず)の運転者による踏力は負圧ブースタ22で倍力され、マスタシリンダ14は倍力された踏力に応じてリザーバタンク10とのブレーキ液通路12を遮断し、各車輪に配置されたブレーキ(図示せず)を作動させる。
【0023】
リザーバタンク10、マスタシリンダ14および負圧ブースタ22からなるブレーキアセンブリは、図1に示す如く、車両16のエンジンルーム24内に配置される。エンジンルーム24は、ボンネット(フロントボンネット)26で被覆される。より具体的には、矢印Aで示す方向を車両16の前方位置とするとき、リザーバタンク10は、マスタシリンダ14よりも前方位置において、エンジンルーム24の壁面24aにボルト止めなどで固定されたブラケット30に締結部32を介して取り付けられる。
【0024】
図3は、その締結部32を詳細に示す、リザーバタンク10の斜視図である。
【0025】
図示の如く、締結部32は、リザーバタンク10とブラケット30(図3で図示省略)に連続する、凹部と凸部の少なくともいずれかを備えた、相互に変位自在な少なくとも2個の第1、第2の構造体320a,320bからなる。
【0026】
第1の構造体320aは、リザーバタンク10に連続する、より具体的にはリザーバタンク10と一体的に形成される基部320a1と、基部320a1と一体的に形成されたプレート部320a2を備えると共に、プレート部320a2の左右の側面には凸部320a3が形成される。
【0027】
第2の構造体320bはブラケット30に連続する、より具体的にはボルト・ナットなどの適宜な手段で締結あるいは溶接されると共に、その内部には構造体320aのプレート部に320a2に相応する形状の空間320b1が形成される。第2の構造体320bの左右の側面には、凹部320b2が穿設される(図3において第2の構造体320bの大きさを第1の構造体320aに対して誇張して示す)。
【0028】
第1の構造体320aにおいてプレート部320a2の上端は左右に突設され、そこにストッパ320a4が形成される。第1の構造体320aは、図3に示す如く、そのプレート部320a2が第2の構造体320bの空間320b1に挿入されて係合され、リザーバタンク10は、エンジンルーム24の壁面24aに固定されたブラケット30に締結部32を介して取り付けられるように構成される。
【0029】
尚、明細書において「上」あるいは「下」は、図1に示す、エンジンルーム24に配置されたリザーバタンク10における「上」あるいは「下」を意味する。
【0030】
リザーバタンク10のタンク本体10aと第1の構造体320aは樹脂、例えばポリプロピレンから一体的に形成(製作)される。ブラケット30と第2の構造体320bは鉄材から形成(製作)される。尚、後述するように、リザーバタンク10のタンク本体10aと第1の構造体320aは一体的に形成(製作)しても良く、ブラケット30と第2の構造体320bも同様に、一体的に形成(製作)しても良い。
【0031】
図4(a)は、第1の構造体320aを第2の構造体320bに係合させた状態を示す模式図である。その状態において第1の構造体320aの凸部320a3は第2の構造体320bの凹部320b2に係合することから、リザーバタンク10は凸部320a3と凹部320b2が係合する位置、即ち、図1の実線で示す位置においてブラケット30に取り付けられる。
【0032】
第1、第2の構造体320a,320bは、重力方向において所定値以上の荷重が作用するとき、主として凸部320a3が物理的に変形し、図4(b)に示す如く、第1の構造体320aが第2の構造体320bに対して下方に変位(落下)し、よってリザーバタンク10を下方に変位させるように構成される。所定値以上の荷重は、ブレーキ液注入作業などに支障ない荷重を例えば30kgfとするとき、余裕をみてそれを超える、例えば60kgfに設定する。
【0033】
これにより、リザーバタンク10にブレーキ液注入作業などに支障ない剛性を与えることができる一方、その所定値以上の荷重が作用するときは下方に変位させることで、衝撃を受けたとき、その衝撃を緩和することができる。
【0034】
即ち、図1に示す如く、ボンネット26に上方から衝撃が作用するとき、その衝撃はボンネット26の変形を通じてリザーバタンク10に伝えられるが、リザーバタンク10は、図1に想像線で示す如く、重力方向において下方に変位するので、衝撃を受けたときも、その衝撃を緩和することができる。
【0035】
また、図4(b)に示す如く、第1の構造体320aが第2の構造体320bに対して下方に変位(落下)するとき、第1の構造体320aのストッパ320a4が第2の構造体320bの上端に接触するので、それ以上の変位は規制される。
【0036】
従って、第1の構造体320aにおいて凸部320a3からストッパ320a4までの距離を適宜設定することで、図1に想像線で示す如く、リザーバタンク10は、下方に変位した後もマスタシリンダ14に対して所定の高さを維持することができる。
【0037】
尚、この所定の高さを、マスタシリンダ14にブレーキ液を供給するのに支障ない高さ、より具体的には、図1に想像線で示す如く、重力方向においてマスタシリンダ14から僅かに低い高さを維持するように構成することで、リザーバタンク10は、変位した後も、ホース12が外れることがないので、マスタシリンダ14にブレーキ液を確実に供給でき、ブレーキが作動しないような、ブレーキの作動に支障を来たすような不都合が生じるのを防止することができる。
【0038】
また、第2の構造体320bの空間320b1は第1の構造体320aのプレート部320a2に相応した空間とされることから、第1の構造体320aと第2の構造体320bが相互に変位するとき、第2の構造体320bは第1の構造体320aの重力方向への変位をガイドするガイド部材としても機能し、よって、所定値以上の荷重が作用するとき、リザーバタンク10を重力方向に対して傾斜させることなく、下方に一層確実に変位させることができ、衝撃を一層確実に緩和することができると共に、マスタシリンダ14にブレーキ液を確実に供給することができる。
【0039】
図5(a)(b)は、第1実施例に係るリザーバタンク10の取り付け構造の変形例を示す、図4(a)(b)と同様な模式図である。図5(a)(b)に示す例では、第2の構造体320bの底部にストッパ320b3を設けるようにした。
【0040】
従って、図5(b)に示す如く、第1の構造体320aが第2の構造体320bに対して下方に変位(落下)するとき、第1の構造体320aが第2の構造体320bのストッパ320b3に接触する位置で、それ以上の変位は規制される。尚、図4と図5の構成を組み合わせ、構造体320の上下にストッパを設けても良い。
【0041】
また、第1の構造体320aに凸部320a3を、第2の構造体320bに凹部320b2を形成したが、逆であっても良い。また、凸部320a3と凹部320b2の個数をそれぞれ1個としたが、複数個であっても良い。
【実施例2】
【0042】
図6は、この発明の第2実施例に係るリザーバタンクの取り付け構造を示す、リザーバタンクの斜視図である。
【0043】
図示の如く、第2実施例にあっては、締結部32は、リザーバタンク10とブラケット30(図6で図示省略)に連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の第1、第2の構造体320c,320dと、第1、第2の構造体320c,320dの少なくともいずれか、より具体的には第2の構造体320dに形成される脆弱部320d1からなる。
【0044】
第1の構造体320cは、第1実施例の第1の構造体320aと同様、リザーバタンク10に連続する、より具体的にはリザーバタンク10と一体的に形成される基部320c1、基部320c1と一体的に形成されたプレート部320c2を備える。
【0045】
第2の構造体320dはブラケット30(図6で図示省略)に連続する、即ち、接着剤などの適宜な手段で接着あるいは接合されると共に、その内部には第1の構造体320cのプレート部320c2に相応する形状の空間320d2が形成される(図6において第2の構造体320dの大きさを第1の構造体320cに対して誇張して示す)。
【0046】
第2実施例において、リザーバタンク10のタンク本体10aと第1の構造体320cは樹脂、例えばポリプロピレンから一体的に形成(製作)されると共に、ブラケット30と第2の構造体320dも同様に樹脂、例えばポリプロピレンから形成(製作)される。
【0047】
図7および図8に示す如く、第2の構造体320dの底面は側面に比して肉薄にされ、上記した脆弱部320d1が形成される。また、第1の構造体320cのプレート部320c2の上端は左右に突設され、そこにストッパ320c4が形成される。
【0048】
図6に示す如く、第1の構造体320cはプレート部320c2が第2の構造体320dの空間320d2に挿入されて係合され、よってリザーバタンク10は、エンジンルーム24の壁面24aに固定されたブラケット30に締結部32を介して取り付けられるように構成される。
【0049】
このとき、第1の構造体320cはその底面が第2の構造体320dの脆弱部320d1に当接する位置で第2の構造体320dに係合することから、リザーバタンク10はその位置で、具体的には図1の実線で示す位置においてブラケット30に取り付けられる。ここで、重力方向において上記した所定値以上の荷重が作用するとき、第1の構造体320cは、第2の構造体320dの脆弱部320d1を物理的に破壊して下方に変位(落下)し、よってリザーバタンク10を下方に変位させるように構成される。
【0050】
これにより、第1実施例と同様、リザーバタンク10にブレーキ液注入作業などに支障ない剛性を与えることができる一方、所定値以上の荷重が作用するときはリザーバタンク10を下方に変位させることができ、衝撃を受けたとき、その衝撃を緩和することができる。
【0051】
また、第1の構造体320cが第2の構造体320dに対して下方に変位(落下)するとき、第1の構造体320cのストッパ320c4が第1の構造体320dの上端に接触することから、それ以上の変位は規制される。従って、第1の構造体320cにおいて突起320c3からストッパ320c4までの距離を適宜設定することで、リザーバタンク10は、下方に変位した後も、マスタシリンダ14に対して所定の高さを維持することができ、ホース12が外れてブレーキが作動しないような、ブレーキの作動に支障を来たす不都合が生じるのを防止することができる。
【0052】
また、第2の構造体320dの内部には第1の構造体320cのプレート部320c2に相応した空間320d2が形成されることから、第1の構造体320cと第2の構造体320dが相互に変位するとき、第2の構造体320dは第1の構造体320cの重力方向への変位をガイドするガイド部材としても機能し、よって、所定値以上の荷重が作用するとき、リザーバタンク10を下方に、重力方向から傾斜させることなく、一層確実に変位させることができて衝撃を一層確実に緩和することができると共に、マスタシリンダ14にブレーキ液を確実に供給することができる。
【0053】
尚、図6および図8に示す如く、第1の構造体320cのプレート部320c2の底部に下方に向けて突出する突起320c3を2個形成しても良い。突起320c3は脆弱部320d1への応力を集中させことができ、脆弱部320d1の破壊を容易にすることができる。
【実施例3】
【0054】
図9および図10は、この発明の第3実施例に係るリザーバタンクの取り付け構造を示す、リザーバタンク10の斜視図である。
【0055】
図示の如く、第3実施例にあっては、締結部32は、リザーバタンク10とブラケット30に連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の第1、第2の構造体320e,320fと、2個の構造体の一方、即ち、第1の構造体320eに穿設されて上方に開口するスリット320e1と、スリット320e1に挿通されて2個の構造体の一方、即ち、第1の構造体320eを他方、即ち、第2の構造体320fに締結するボルト320f1とウェルドナット320f2(図10に破線で示す)からなるように構成した。
【0056】
より具体的には、第1の構造体320eは、リザーバタンク10に連続する、より具体的にはリザーバタンク10と一体的に形成される基部320e2と、基部320e2と一体的に形成されるスライダ部320e3を備える。スライダ320e3の上端は穿設され、前記した上方に開口するスリット320e1が穿設される。
【0057】
第2の構造体320fは、ブラケット30に連続する、即ち、ボルト・ナットなどの適宜な手段で締結あるいは溶接されると共に、そこから上方に延ばされたレール状部材からなる。第1の構造体320eは、第2の構造体320fに相互に重力方向に変位自在に取り付けられる。第2の構造体320fの底部にはストッパ320f3が形成され、第1の構造体320eが図10に示すように下方に変位(落下)したとき、それ以上の変位を規制する。
【0058】
第3実施例において、リザーバタンク10のタンク本体10aと第1の構造体320eは樹脂、例えばポリプロピレンから一体的に形成(製作)されると共に、ブラケット30と第2の構造体320fは鉄材から形成(製作)される。
【0059】
図9および図10に示す如く、第1の構造体320eは、スリット320e1に挿通されるボルト320f1を第2の構造体320fの裏側に溶接されたウェルドナット320f2で締めることで第2の構造体320fに締結され、よってリザーバタンク10は、エンジンルーム24の壁面24aに固定されたブラケット30に締結部32を介して取り付けられるように構成される。
【0060】
そして、重力方向において上記した所定値以上の荷重が作用するとき、第1の構造体320eのスリット320e1で脱落、即ち、スリット320e1がウェルドナット320f2の締結力に打ち勝ってボルト320f1から脱落し、よってリザーバタンク10を下方に変位させる。
【0061】
これにより、第1実施例と同様、リザーバタンク10にブレーキ液注入作業などに支障ない剛性を与えることができる一方、所定値以上の荷重が作用するときはリザーバタンク10を下方に変位させることができ、衝撃を受けたとき、その衝撃を緩和することができる。
【0062】
また、第1の構造体320eが第2の構造体320fに対して下方に変位(落下)するとき、第1の構造体320eのスライダ部320e3が第2の構造体320fのストッパ320f3に接触する位置で、それ以上の変位は規制される。従って、構造体320fにおいてボルト330f1の位置からストッパ320f3までの距離を適宜設定することで、リザーバタンク10は、下方に変位した後も、マスタシリンダ14に対して所定の高さを維持することができ、ホース12が外れてブレーキが作動しないような、ブレーキの作動に支障を来たすような不都合が生じるのを防止することができる。
【0063】
尚、第2の構造体320fの高さは、ストッパ320f3に第1の構造体320eが接したときのリザーバタンク10の上端部より低くすることで、衝撃に対する影響はリザーバタンク10のみとした。
【0064】
また、第2の構造体320fはレール状を呈することから、第1の構造体320eと第2の構造体320fが相互に変位するとき、第2の構造体320fは第1の構造体320eの重力方向への変位をガイドするガイド部材としても機能し、よって、所定値以上の荷重が作用するとき、リザーバタンク10を下方に、重力方向に傾斜させることなく、一層確実に変位させることができて衝撃を一層確実に緩和することができると共に、マスタシリンダ14にブレーキ液を確実に供給することができる。
【0065】
尚、第3実施例において、第1の構造体320eの上方を延長させると共に、側方に突出させても良い。その場合、第2の構造体320fに形成されたストッパ320f3に代え、第1の構造体320eの側方に突出させた部位が第2の構造体320fの上端に当接することで、それ以上の変位を規制することができる。
【0066】
以上の如く、この発明の第1から第3実施例にあっては、マスタシリンダ14に供給すべきブレーキ液を貯留すると共に、ボンネット26で被覆されつつ、車両16のエンジンルーム24の内部に、前記マスタシリンダ14よりも前方位置(矢印A)において、前記エンジンルーム24の壁面24aに固定されたブラケット30に締結部32を介して取り付けられるリザーバタンクの取り付け構造において、前記締結部32は、前記リザーバタンク10に重力方向から所定値以上の荷重が作用するとき、前記リザーバタンク10を下方に変位させると共に、変位した後も前記マスタシリンダ14に対して所定の高さを維持するように構成される如く構成した。
【0067】
また、前記締結部32は、前記所定の高さを超えて前記リザーバタンク10の下方への変位を規制するストッパ(320a4,320b3,320c4,320f3)を備える如く構成した。
【0068】
また、前記締結部32は、前記リザーバタンク10と前記ブラケット30に連続する、凹部320b2と凸部320a3の少なくともいずれかを備えた、相互に変位自在な少なくとも2個の第1、第2構造体320a,320bからなり、前記2個の構造体は、前記所定値以上の荷重が作用するとき、前記凹部と凸部の少なくともいずれかを変形させて変位することによって前記リザーバタンク10を下方に変位させる如く構成した。
【0069】
また、前記締結部32は、前記リザーバタンク10と前記ブラケット30に連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の第1、第2の構造体320c,320dと、前記2個の構造体の少なくともいずれかに形成される脆弱部320d1からなり、前記2個の構造体は、前記所定値以上の荷重が作用するとき、前記脆弱部320d1を破壊して変位することによって前記リザーバタンク10を下方に変位させる如く構成した。
【0070】
また、前記締結部32は、前記リザーバタンク10と前記ブラケット30に連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の第1、第2の構造体320e,320fと、前記2個の構造体の一方に穿設されて上方に開口するスリット320e1と、前記スリットに挿通されて前記2個の構造体の一方320eを他方320fに締結するボルト320f1とウェルドナット320f2からなり、前記2個の構造体の一方320eは、前記所定値以上の荷重が作用するとき、前記スリット320e1で脱落することによって前記リザーバタンク10を下方に変位させる如く構成した。
【0071】
また、前記締結部32は、前記構造体の重力方向への変位をガイドするガイド部(第2の構造体320b,320d,320f)を備える如く構成した。
【0072】
尚、上記したように、リザーバタンク10のタンク本体10aと第1の構造体320aは一体的に製作しても良い。また、ブラケット30と第2の構造体320bも同様に、一体的に製作しても良い。
【0073】
即ち、特許請求の範囲の記載において、「前記リザーバタンクと前記ブラケットに連続する、」「2個の構造体」は、2個の構造体320a,320b(320c,320d,320e,320f)が、リザーバタンク10とブラケット30と別体に設けられる場合と、リザーバタンク10とブラケット30と一体的に設けられる場合の双方を含む。
【0074】
また、上記において、リザーバタンク10、ブラケット30および第1、第2の構造体320a,320b,320c,320d,320e,320fの構造あるいは材質などは例示であり、それに限定されるものではない。また、ストッパを設ける側の構造体も適宜変更して良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の第1実施例に係るリザーバタンクの取り付け構造を車両のエンジンルームに配置される状態で示す説明側面図である。
【図2】図1に示すリザーバタンクをマスタシリンダなども含めて示す、その斜視図である。
【図3】図1に示す締結部を詳細に示す、リザーバタンクの斜視図である。
【図4】2個の構造体の係合状態を示す模式図である。
【図5】同様に、2個の構造体の係合状態を示す模式図である。
【図6】この発明の第2実施例に係るリザーバタンクの取り付け構造を示す、図3と同様なリザーバタンクの斜視図である。
【図7】図6に示す構造体の斜視図である。
【図8】図6に示す2個の構造体の係合状態を示す説明断面図である。
【図9】この発明の第3実施例に係るリザーバタンクの取り付け構造を示す、図3と同様なリザーバタンクの斜視図である。
【図10】同様に、第3実施例に係るリザーバタンクの取り付け構造を示す、図3と同様なリザーバタンクの斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
10 リザーバタンク、12 ホース(ブレーキ液通路)、14 マスタシリンダ、16 車両、22 負圧ブースタ、24 エンジンルーム、24a エンジンルーム壁面、26 ボンネット、32 締結部、320a,320c,320e 第1の構造体、302b,320d,320f 第2の構造体(ガイド部材)、320a4,320b3,320c4,320f3 ストッパ、320d1 脆弱部、320e1 スリット、320f1 ボルト、320f2 ウェルドナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタシリンダに供給すべきブレーキ液を貯留すると共に、ボンネットで被覆されつつ、車両のエンジンルーム内に、前記マスタシリンダよりも前方位置において、前記エンジンルーム壁面に固定されたブラケットに締結部を介して取り付けられるリザーバタンクの取り付け構造において、前記締結部は、前記リザーバタンクに重力方向から所定値以上の荷重が作用するとき、前記リザーバタンクを下方に変位させると共に、変位した後も前記マスタシリンダに対して所定の高さを維持するように構成されることを特徴とするリザーバタンクの取り付け構造。
【請求項2】
前記締結部は、前記所定の高さを超えて前記リザーバタンクの下方への変位を規制するストッパを備えることを特徴とする請求項1記載のリザーバタンクの取り付け構造。
【請求項3】
前記締結部は、前記リザーバタンクと前記ブラケットに連続する、凹部と凸部の少なくともいずれかを備えた、相互に変位自在な少なくとも2個の構造体からなり、前記2個の構造体は、前記所定値以上の荷重が作用するとき、前記凹部と凸部の少なくともいずれかを変形させて変位することによって前記リザーバタンクを下方に変位させることを特徴とする請求項1または2記載のリザーバタンクの取り付け構造。
【請求項4】
前記締結部は、前記リザーバタンクと前記ブラケットに連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の構造体と、前記2個の構造体の少なくともいずれかに形成される脆弱部からなり、前記2個の構造体は、前記所定値以上の荷重が作用するとき、前記脆弱部を破壊させて変位することによって前記リザーバタンクを下方に変位させることを特徴とする請求項1または2記載のリザーバタンクの取り付け構造。
【請求項5】
前記締結部は、前記リザーバタンクと前記ブラケットに連続する、相互に変位自在な少なくとも2個の構造体と、前記2個の構造体の一方に穿設されて上方に開口するスリットと、前記スリットに挿通されて前記2個の構造体の一方を他方に締結するボルト・ナットからなり、前記2個の構造体の一方は、前記所定値以上の荷重が作用するとき、前記スリットで脱落することによって前記リザーバタンクを下方に変位させることを特徴とする請求項1または2記載のリザーバタンクの取り付け構造。
【請求項6】
前記締結部は、前記構造体の重力方向への変位をガイドするガイド部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のリザーバタンクの取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−68717(P2008−68717A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248588(P2006−248588)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】