説明

リソグラフィ方法、装置およびコントローラ

【課題】パターン付き基板全体にわたるクリティカルディメンジョン(CD)のばらつきなどを軽減し、あるいは除去することができるリソグラフィ装置および/または方法を提供する。
【解決手段】化学増幅型レジストがコーティングされた試験基板上の異なるロケーションについて、露光後ベークステップの中の、時間の関数としての温度を得るステップが含まれている。化学増幅型レジスト上の放射線量とレジスト層中に生成される促進剤の露光後濃度との間の関係が取得される。CDを促進剤の露光後濃度に関連付ける、かつロケーション全体にわたる、時間の関数としての温度に関連付けるモデルを使用して、指定されたCDを得るための放射線量を計算する。基板上の異なるロケーション毎に計算された放射線量を使用して、試験基板と同一基板をパターニングする。この方法を使用して、パターン付き基板全体にわたるCDの均一性を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、リソグラフィ装置およびデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、基板のターゲット部分に所望のパターンを付与するマシンである。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用することができる。その場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用してICの個々の層に対応する回路パターンを生成することができ、放射感応性材料(レジスト)の層を有している基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば部分的に1つまたは複数のダイからなる)にこのパターンの像を形成することができる。通常、1枚の基板には、順次露光される網状の隣接するターゲット部分が含まれている。知られているリソグラフィ装置には、パターン全体を1回でターゲット部分に露光することによってターゲット部分のそれぞれが照射されるいわゆるステッパと、パターンをビームで所与の方向(「スキャンニング」方向)にスキャンし、かつ、基板をこの方向に平行または非平行に同期スキャンすることによってターゲット部分のそれぞれが照射されるいわゆるスキャナがある。
【0003】
[0003] レジストは、通常、基板の表面全体に均一な薄い膜を提供するために使用されるスピン塗布方式などの方法によって基板に塗布される。レジストが塗布されると、通常、基板にプリベークが施され、それによりレジストが固体化され、かつ、安定化される。次に、上で詳細に説明したリソグラフィ装置を使用して放射で露光することによってレジストがパターニングされ、それによりレジスト中に潜像が提供される。露光に応じて、ポジ型レジストは、レジストを露光するために使用されたマスクの像と合致する像を残し、一方、ネガ型レジストは、マスクの反転画像である像を残す。引き続いて、露光済みレジストコーティングに現像液が加えられ、露光済みのポジ型レジストまたは露光されていないネガ型レジストが除去される。これにより、エッチングまたは他の方法によってパターニングすることができる、残留レジストによって保護されていない基板が露出する。
【0004】
[0004] 化学増幅型レジスト(CAR)を使用することにより、サイズが0.2μmより小さいパターンフィーチャの像を基板上に提供することができる。潜像を提供するための露光の後で、化学増幅型レジストが露光後ベーク(PEB)で加熱され、一般的には次に、現像および/またはレジストおよび基板の他の処理に先立って反応を停止させるために冷却される。ポジ型レジストの場合、レジストの露光部分が可溶性になり、現像液によって容易に除去することができる。
【0005】
[0005] より具体的には、化学増幅型レジストを放射で露光している間に促進剤の分子が形成され、引き続いてこの分子がレジストと反応し、現像液に対するレジストの溶解度が修正される。促進剤は、例えば、露光することによって形成される、および/または露光後の露光後ベーク中に形成される触媒または反応物であってもよい。例えば、典型的な化学増幅型レジストは、放射での露光によってレジストの露光部分の内部に形成される酸触媒を有する酸触媒レジストである。この酸触媒レジストは、レジスト中の他の成分と反応し、後続の露光後ベーク(PEB)後にはレジストを塩基可溶性にし、容易に溶解させることができる。
【0006】
[0006] 製造者は、従来、例えば露光パターンまたは印刷パターンのクリティカルディメンション(CD)などの所望のパターンの鍵となる属性を指定している。このCDを使用してフィーチャサイズを特性化することができ、あるいはパターン中に出現するフィーチャのトポグラフィ(プロファイル)に関連するパラメータを特性化することができる。クリティカルディメンションCDを使用して品質および均一性(例えばダイ上または基板上のフィーチャサイズの空間的ばらつき)のベンチマークレベルを確立することができる。基板上のレジスト上に露光されるパターンのフィーチャのクリティカルディメンションおよびプロファイルは、可能な限り正確に複製されることが望ましい。CDメトリックには、例えば、フィーチャとフィーチャの間の間隙、孔および/またはポストの直径、孔および/またはポストの楕円率、フィーチャの面積、フィーチャ側壁角、フィーチャの頂部の幅、フィーチャの底部の幅およびラインエッジ粗さが含まれることがある。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 基板全体にわたるCDの変動は、結果として得られるパターン上のいくつかのロケーションにおけるCDが、許容範囲を超えて所望のCDと異なる場合、あるいは露光パターンの有効性を維持するために必要なCDを超える場合、歩留りを損なうおそれがある。化学増幅型レジストを使用してリソグラフィパターニングを実施する場合、結果として得られるCDは、パターン付き基板上のロケーションによって変動することがある。
【0008】
[0008] したがって、本明細書において言及されている問題であれ、あるいはそれ以外の問題であれ、従来技術が抱えている、例えばパターン付き基板全体にわたるCDのばらつきに関連する問題などの1つまたは複数の問題を軽減し、あるいは除去することができるリソグラフィ装置および/または方法が提供されることが望ましい。
【0009】
[0009] 化学増幅型レジスト中の放射生成促進剤の、レジストの露光済み領域における化学反応およびレジストの露光済み領域からの拡散は、基板上の任意の特定のロケーションにおける、結果として得られるCDに影響を及ぼすことがあり、また、基板処理におけるPEB/冷却ステップ実行中の基板全体にわたる温度の変動は、すべて、基板上の異なるロケーションで得られるCDの望ましくない変動の原因になることがある。
【0010】
[0010] PEBヒータの性能が改善され、基板全体にわたる良好な均一性が得られているが、PEBステップにおける温度非均一性の問題が依然として未解決であり、そのために場合によってはクリティカルディメンションが最大0.8nmに制限される。
【0011】
[0011] PEB実行中に化学増幅型レジストが加熱されると、少なくとも2つのタイプのプロセスが生じることになる。第1のプロセスは、放射生成促進剤によって変化する、または触媒作用を受けるレジストマトリクス内での化学反応である。例えばポジ型レジストの場合、この化学反応によって露光済み領域のレジストマトリクスが現像液に対してより可溶性になる。第2のプロセスは促進剤の熱駆動拡散である。このプロセスは、レジストの様々な露光済み領域における促進剤の露光後濃度によって決まる。PEB/冷却ステップに入る際のレジスト層中の露光後促進剤濃度は、化学増幅型レジストに印加される、レジスト層の各ロケーションにおける放射露光線量で決まる。
【0012】
[0012] レジスト層中の任意の特定のロケーションにおける化学反応ならびに拡散は、PEB/冷却プロセスの間の局部温度および放射生成促進剤の局部濃度で決まる。これは、任意のロケーションの温度、およびPEBステップ中の時間に伴うその変動が、促進剤および促進剤の拡散によって調整される化学反応に影響を及ぼすことによるものである。
【0013】
[0013] 本発明の一実施形態では、リソグラフィによって基板にパターンを付与するための方法であって、
a)化学増幅型レジストの試験層がコーティングされた試験基板上の1つまたは複数のロケーションで、露光後ベークステップ中の、時間の関数としての温度を得るステップと、
b)化学増幅型レジスト上に導かれる放射線量と該放射線量によって化学増幅型レジスト中に生成される促進剤の露光後濃度との間の関係を得るステップと、
c)1つまたは複数のロケーションそれぞれにおける指定されたクリティカルディメンションを得るために、クリティカルディメンションを促進剤の露光後濃度に関連付ける、かつ、露光後ベークステップ中の1つまたは複数のロケーションのそれぞれにおける、時間の関数としての温度に関連付けるモデルによって、1つまたは複数のロケーションに対する放射線量を計算するステップと、
d)試験基板上の対応するロケーションと等価の基板上の1つまたは複数のロケーションのそれぞれについて、計算された放射線量を使用して、化学増幅型レジストの層がコーティングされた基板をパターニングするステップと、
を含む方法が提供される。
【0014】
[0014] 露光後ベーク中における、時間の関数としての温度は、実質的に同じ露光後ベーク条件にさらされた試験基板に対する測定によって得ることができる。しかしながら、露光後ベーク装置のサプライヤからこのような情報を得ることも可能である。レジストに対する放射線量と促進剤の露光後濃度との間の関係は、例えばレジストの試験層を使用して測定することができ、あるいは化学増幅型レジストのサプライヤの文献などの他所から知ることも可能である。
【0015】
[0015] 試験基板は、好適にはパターニングされる基板と類似であり、パターニングされる基板と実質的に同一であることが望ましい。試験基板上のCARの試験層は、好適にはパターニングされる基板のCAR層と類似であり、実質的に同一であることが望ましい。
【0016】
[0016] モデルは、好適には、露光後ベークステップ中に放射によって生成される促進剤の化学反応および拡散を反映する。「露光後ベークステップ」または「PEBステップ」は、放射で露光されたCAR層を備えた基板が適切な温度に加熱され、それにより露光の効果を増幅する所望の化学反応を生じさせることができるプロセスステップを意味している。基板は、露光後ベークステップに入り、露光後濃度の放射生成促進剤を基板上の1つまたは複数のロケーションのそれぞれに有することになる。PEBステップの終了時に、現像および他の処理のための装置およびプロセスを介した基板の輸送に先立って、通常、それ以上著しい化学反応または拡散が生じない温度にCARが冷却される。これは、一般に「チリング(chilling)」と呼ばれる。また、本明細書において使用される「露光後ベークステップ」という用語には、基板上のパターンの現像に先立つレジストの任意のチリングが含まれる。
【0017】
[0017] 化学増幅型レジストは、好適には酸触媒レジストである。
【0018】
[0018] 1つまたは複数のロケーションそれぞれにおける指定されたクリティカルディメンションは、ロケーション毎に同じであっても、あるいは実質的に同じであってもよく、それによりパターン付き基板全体にわたって均一なクリティカルディメンションが得られる。
【0019】
[0019] 本発明の一実施形態では、放射線量を有するパターニング放射を、化学増幅型レジストがコーティングされた基板上の複数のロケーションのそれぞれに投射するように構成された照明システムを備えたリソグラフィ装置が提供される。この装置は、本発明の一実施形態の方法に従って複数のロケーションのそれぞれにおける放射線量を調整するように構成されたコントローラを備えている。
【0020】
[0020] 本発明の一実施形態では、放射線量を有するパターニング放射を、化学増幅型レジストがコーティングされた基板上の複数のロケーションのそれぞれに投射するように構成された照明システムを備えたリソグラフィ装置のためのコントローラが提供される。このコントローラは、本発明の一実施形態の方法に従って複数のロケーションのそれぞれにおける放射線量を調整するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
[0021] 以下、本発明の実施形態について、単なる例にすぎないが、添付の概略図を参照して説明する。図において、対応する参照記号は対応する部品を表している。
【0022】
【図1】[0022]本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を示す図である。
【図2】[0023]複数のロケーションに概略的に分割された本発明の一実施形態の基板の平面図である。
【図3】[0024]本発明の一実施形態のためのプロセスレイアウトを示す概略図である。
【図4】[0025]本発明の一実施形態の方法のための概略的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0026] 本明細書においては、とりわけICの製造におけるリソグラフィ装置の使用が参照されているが、本明細書において説明されているリソグラフィ装置は、集積光学システム、磁気ドメインメモリのための誘導および検出パターン、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド、等々の製造などの他のアプリケーションを有することができることを理解されたい。このような代替アプリケーションのコンテキストにおいては、本明細書における「ウェーハ」または「ダイ」という用語の使用はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語の同義語と見なすことができることは当業者には理解されよう。本明細書において参照されている基板は、例えばトラック(通常、基板にレジストの層を加え、かつ、露光済みのレジストを現像するツール)またはメトロロジーツールあるいはインスペクションツール中で、露光前または露光後に処理することができる。適用可能である場合、本明細書における開示は、このような基板処理ツールおよび他の基板処理ツールに適用することができる。さらに、基板は、例えば多層ICを生成するために複数回にわたって処理することができるため、本明細書において使用される基板という用語は、処理済みの複数の層が既に含まれている基板を指している場合もある。
【0024】
[0027] 本明細書において使用される「放射」および「ビーム」という用語には、紫外(UV)放射(例えば365nm、248nm、193nm、157nmまたは126nmの波長を有する放射)、および極端紫外(EUV)放射(例えば波長の範囲が5〜20nmの放射)、ならびにイオンビームまたは電子ビームなどの粒子線を含むあらゆるタイプの電磁放射が包含されている。
【0025】
[0028] 本明細書において使用される「パターニングデバイス」という用語は、放射ビームの断面にパターンを付与し、それにより基板のターゲット部分にパターンを生成するように使用することができるデバイスを意味するものとして広義に解釈されたい。放射ビームに付与されるパターンは、基板のターゲット部分における所望のパターンに必ずしも厳密に対応している必要はないことに留意されたい。放射ビームに付与されるパターンは、通常、ターゲット部分に生成されるデバイス、例えば集積回路などのデバイス中の特定の機能層に対応している。
【0026】
[0029] パターニングデバイスは、透過型であってもあるいは反射型であってもよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDパネルがある。マスクについてはリソグラフィにおいてはよく知られており、バイナリ、レベンソン型(alternating)位相シフトおよびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスクタイプ、ならびに様々なハイブリッドマスクタイプが知られている。プログラマブルミラーアレイの例には、マトリックスに配列された、入射する放射ビームが異なる方向に反射するよう個々に傾斜させることができる微小ミラーが使用されており、この方法によれば、反射したビームがパターニングされる。
【0027】
[0030] サポート構造はパターニングデバイスを保持している。サポート構造は、パターニングデバイスの配向、リソグラフィ装置の設計および他の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境中で保持されているか否か等に応じた方法でパターニングデバイスを保持している。サポートには、機械式クランプ技法、真空クランプ技法または他のクランプ技法、例えば真空条件下での静電クランプを使用することができる。サポート構造は、例えば必要に応じて固定または移動させることができ、また、パターニングデバイスを例えば投影システムに対して所望の位置に確実に配置することができるフレームまたはテーブルであってもよい。本明細書における「レチクル」または「マスク」という用語の使用はすべて、より一般的な「パターニングデバイス」という用語の同義語と見なすことができる。
【0028】
[0031] 本明細書において使用される「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射に適した、もしくは液浸液の使用または真空の使用などの他の要因に適した、屈折光学システム、反射光学システムおよび反射屈折光学システムを始めとする様々なタイプの投影システムが包含されているものとして広義に解釈されたい。本明細書における「投影レンズ」という用語の使用はすべて、より一般的な「投影システム」という用語の同義語と見なすことができる。
【0029】
[0032] また、照明システムは、放射のビームを導き、整形し、あるいは制御するための、屈折光学コンポーネント、反射光学コンポーネントおよび反射屈折光学コンポーネントを始めとする様々なタイプの光学コンポーネントを包含することができ、このようなコンポーネントは、以下、総称的または個々に「レンズ」と呼ぶことも可能である。
【0030】
[0033] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または複数のサポート構造)を有するタイプの装置であってもよい。このような「マルチステージ」マシンの場合、追加テーブルを並列に使用することができ、あるいは1つまたは複数の他のテーブルを露光のために使用している間、1つまたは複数のテーブルに対して予備ステップを実行することができる。
【0031】
[0034] また、リソグラフィ装置は、基板が比較的屈折率が大きい液体、例えば水中に浸され、それにより投影システムの最終エレメントと基板の間の空間が充填されるタイプの装置であってもよい。液浸技法は、当分野では、投影システムの開口数を大きくすることでよく知られている。
【0032】
[0035] 図1は、本発明の特定の実施形態によるリソグラフィ装置を概略図で示したものである。この装置は、
− 放射(例えばUV放射)のビームPBを条件付けるための照明システム(イルミネータ)ILと、
− 照明システムによって供給される放射のビームPBの放射線量を、本発明の一実施形態の方法に従って露光される基板上のロケーションに応じて制御するように構成されたコントローラ34と、
− パターニングデバイス(例えばマスク)MAをサポートするためのサポート構造(例えばサポート構造)MTであって、パターニングデバイスをアイテムPLに対して正確に位置決めするための第1の位置決めデバイスPMに接続されたサポート構造MTと、
− 基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するための基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTであって、基板をアイテムPLに対して正確に位置決めするための第2の位置決めデバイスPWに接続された基板テーブルWTと、
− パターニングデバイスMAによって放射ビームPBに付与されたパターンの像を基板Wのターゲット部分C(例えば1つまたは複数のダイが含まれている)に形成するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズ)PLと、
を備えている。
【0033】
[0036] 図に示されているように、この装置は、透過型(例えば透過型マスクを使用した)タイプの装置である。別法としては、この装置は、反射型(例えば上で参照したタイプのプログラマブルミラーアレイを使用した)タイプの装置であってもよい。
【0034】
[0037] イルミネータILは、放射源SOから放射のビームを受け取っている。放射源が例えばエキシマレーザである場合、放射源およびリソグラフィ装置は、個別の構成要素にすることができる。このような場合、放射源は、リソグラフィ装置の一部を形成しているとは見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを備えたビームデリバリシステムBDを使用して放射源SOからイルミネータILへ引き渡される。それ以外の例えば放射源が水銀灯などの場合、放射源はリソグラフィ装置の一構成要素にすることができる。放射源SOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDと共に放射システムと呼ぶことができる。
【0035】
[0038] イルミネータILは、ビームの角度強度分布を調整するための調整手段AMを備えることができる。通常、イルミネータの瞳面内における強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(一般に、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)は調整が可能である。また、イルミネータILは、通常、インテグレータINおよびコンデンサCOなどの他の様々なコンポーネントを備えている。このイルミネータによって、所望する均一な強度分布をその断面に有する、条件付けられた放射のビームPBが提供される。
【0036】
[0039] サポート構造MTの上に保持されているパターニングデバイス(例えばマスク)MAに放射ビームPBが入射する。パターニングデバイスMAを通過したビームPBは、ビームを基板Wのターゲット部分Cに集束させる投影システムPLを通過する。基板テーブルWTは、第2の位置決めデバイスPWおよび位置センサIF(例えば干渉計デバイス)を使用して正確に移動させることができ、それにより例えば異なるターゲット部分CをビームPBの光路内に配置することができる。同様に、第1の位置決めデバイスPMおよびもう1つの位置センサ(図1には明確に示されていない)を使用して、例えばマスクライブラリから機械的に検索した後、またはスキャン中に、パターニングデバイスMAをビームPBの光路に対して正確に配置することができる。通常、オブジェクトテーブルMTおよびWTの移動は、位置決めデバイスPMおよびPWの一部を形成しているロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を使用して実現することができる。しかしながら、ステッパの場合(スキャナではなく)、サポート構造MTは、ショートストロークアクチュエータのみに接続することができ、あるいは固定することも可能である。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して整列させることができる。
【0037】
[0040] 図に示されている装置は、以下のモードで使用することができる。
【0038】
[0041] 1.ステップモード:サポート構造MTおよび基板テーブルWTが基本的に静止状態に維持され、ビームPBに付与されたパターン全体がターゲット部分Cに1回で投影される(すなわち単一静止露光)。次に、基板テーブルWTがX方向および/またはY方向にシフトされ、異なるターゲット部分Cが露光される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静止露光で結像するターゲット部分Cのサイズが制限される。
【0039】
[0042] 2.スキャンモード:ビームPBに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影されている間、サポート構造MTおよび基板テーブルWTが同期スキャンされる(すなわち単一動的露光)。サポート構造MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPLの倍率(縮小率)および画像反転特性によって決まる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の幅(非スキャン方向の幅)が制限され、また、スキャン運動の長さによってターゲット部分の高さ(スキャン方向の高さ)が決まる。
【0040】
[0043] 3.その他のモード:プログラマブルパターニングデバイスを保持するようにサポート構造MTが基本的に静止状態に維持され、ビームPBに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影されている間、基板テーブルWTが移動またはスキャンされる。このモードでは、通常、パルス放射源が使用され、スキャン中、基板テーブルWTが移動する毎に、あるいは連続する放射パルスと放射パルスの間に、必要に応じてプログラマブルパターニングデバイスが更新される。この動作モードは、上で参照したタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを利用しているマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0041】
[0044] 図に示されている実施形態では、コントローラ34は、基板上の任意の特定のロケーションにおける放射線量露光が本発明の一実施形態の方法に従って確実に実施されるよう補助するために、放射源SOおよび位置センサIFに機能的に接続されている。他の実施形態では、コントローラは、放射源SOの強度を直接制御するのではなく、イルミネータILを修正して放射線量を制御することができる。
【0042】
[0045] 図2は、本発明の一実施形態の基板21を概略平面図で示したもので、基板21の表面は、線形デカルト格子によって個々のロケーションiに恣意的に分割されている。基板は、物理的にこのようなロケーションに分割されているわけではないこと、また、ロケーションiのサイズおよび位置は任意であり、デカルト格子は単なる例にすぎないことに留意されたい。
【0043】
[0046] 試験基板およびパターニングされる基板は実質的に同一ものを使用することができるため、図2は、本発明の実施形態における試験基板またはパターニングされる基板に等しく適用される。図2は、図3および4の実施形態の説明の際にも参照される。
【0044】
[0047] 図3は、本発明の一実施形態を実施するためのプロセスレイアウトの一実施形態を概略図で示したものである。図1に関連して詳細に説明したリソグラフィ装置31は、コンピュータプログラムによって駆動されるコントローラの形態のコントローラ34を備えている。このコントローラ34は、本発明の一実施形態の方法を実施することができるよう、放射源SOおよび位置センサIFに機能的に接続されている。CAR層を有する基板21は、装置31によってパターン付き放射で露光される。コントローラ34は、基板上のロケーションi毎に、パターニングのために使用される線量(D)が、クリティカルディメンションを促進剤の露光後濃度(A)に関連付ける、かつ露光後ベークステップ中のロケーションi毎の、時間の関数としての温度に関連付けるモデルによって指定され、かつ、計算された線量Dと促進剤の露光後濃度Aとの間の既知の関係から特定される線量に確実になるように補助する。
【0045】
[0048] 次に、いわゆるウェーハすなわち基板トラック装置によって基板21がPEB/冷却ユニット32、つまりPEBプロセスを加え、引き続いて冷却ステップを加えるように構成されたデバイスへ輸送される。ここでは、露光された基板は、基板21上のロケーションi毎の、時間の関数としての温度が実質的に試験基板の温度と同一温度になるよう、実質的に試験基板のPEB/冷却条件と同じ条件下におかれる。
【0046】
[0049] PEB/冷却ユニット32内での基板の処理が終了すると、ウェーハトラックは基板を現像および他の処理ユニット33に引き渡し、そこで基板が現像され、かつ、処理されて、指定されたクリティカルディメンションCを有するパターンフィーチャを含む印刷パターンがレジスト中に提供される。
【0047】
[0050] 図4は、図1ないし3に示されている本発明の実施形態のための概略的な流れ図を示したものである。
【0048】
[0051] プロセスステップAは、初期露光後促進剤濃度Aとレジストに印加される放射線量Dとの間の関係を得るステップである。この関係は、次の式Iで表すことができる。
【数1】


上式で、φは、露光後促進剤濃度Aを露光線量Dに関連付ける関数である。これは、個々の測定および解析技法によって得ることができ、あるいは、例えばサプライヤの文献からなど、この実施形態に使用されるCARおよび放射タイプについて周知のものとすることができる。
【0049】
[0052] ステップBは、基板21上のロケーションi毎の温度をPEB/冷却プロセスステップの中の、時間の関数として得るステップである。これは、ロケーションi毎の温度T(t)として表すことができ、ここで時間tは、PEB/冷却プロセスステップ開始時のtからPEB/冷却プロセスステップ終了時のtまで変化する。試験基板の基板全体にわたる温度ならびに温度時間依存性の空間分布またはばらつきを測定することができる。別法または追加として、例えば、PEB/冷却装置と共にサプライヤからこのような情報を得ることも可能である。試験基板は、パターニングされる1つまたは複数の基板と実質的に同一であることが望ましく、また、パターニングされる基板と共に使用されるCAR層と実質的に同一層中の実質的に同じCARでコーティングされることが望ましい。
【0050】
[0053] 試験基板のPEB/冷却プロセスの間、従来の方法を使用して温度がモニタされる。例えば熱電対を使用することができる。今日、極めて高い再現性でPEB/冷却プロセスを制御することが可能であり、したがって、試験基板および試験CAR層がパターニングされる基板およびそのCAR層と実質的に同一であることを条件として、パターニングされる基板の温度T(t)を試験基板の温度T(t)と実質的に同一にすることができる。ロケーションi毎の温度T(t)を直接測定する必要はない。その代わりに、他の多数のロケーションの温度を測定し、かつ、補間することによってT(t)を引き出すことも可能である。
【0051】
[0054] ステップCは、各ロケーションiにおけるクリティカルディメンションCを各ロケーションiにおける露光後促進剤濃度AおよびT(t)に関連付けるモデルを確立するステップである。典型的なモデルは、式IIの形を有することになる。
【0052】
【数2】


この式では、Fは、クリティカルディメンションCが露光後促進剤濃度Aおよび温度T(t)の局部値に応じて露光後ベークおよび冷却中に時間の経過につれてどうなるかを詳細に記述する関数を表している。上式で、A=φ(D)であり、したがって指定されたCを与えるために設定すべきDの値を、CをAに関連付けるモデルからのT(t)の知識から引き出すことができ、かつ、T(t)を確立することができる。
【0053】
[0055] 適切な様々なモデルを使用することができる。例えば、公開されている米国特許第5,717,612号の中で提案されているモデルまたは米国特許第6,295,637号の中で提案されているモデルを参照されたい。
【0054】
[0056] 場合によっては式IIIに示されているような簡易モデルを使用することが望ましい。
【0055】
【数3】


このモデルでは、Ψは、ロケーションiにおけるクリティカルディメンションCがiにおける初期露光後促進剤濃度Aにどのように依存しているかを表す関数であり、一方、Rは、クリティカルディメンションが時間の経過に伴ってiにおける局部温度T(t)に応じてどうなるかを記述する反応速度関数である。式IIIのモデルでは、クリティカルディメンションに対する露光後促進剤濃度の影響は、温度T(t)で決まる反応速度定数Rを使用することによってモデル化することができることが仮定されている。例えば、アレニウスの式に基づく単純ないわゆるQ10モデルを使用することができ、温度が10℃高くなる毎に係数Qだけ反応速度が変化することが仮定されている。係数Qに使用される値は、典型的には2である。
【0056】
[0057] プロセスステップDは、各ロケーションにおける指定されたクリティカルディメンションCを与えるために、モデルから計算され、また、式Iから計算されるロケーションi毎の線量Dを提供する。
【0057】
[0058] ステップEは、図3のプロセスレイアウトを使用した実際の基板のパターニングに関係している。試験基板上に使用されるCARの層と実質的に同一CARの層を備えた、実質的に試験基板と同一基板の上にパターンが投影される。ステップAないしDに基づいてプログラムされたコントローラ34は、ロケーションi毎の放射線量Dがモデルに従った指定されたクリティカルディメンションCを与えるために必要な線量であることを保証するように補助する。
【0058】
[0059] ステップFでは、結果として得られる、各ロケーションiにおける露光後促進剤濃度Aを有する露光済み基板に、試験基板の場合と同様、時間tからtまで継続する露光後ベークおよび冷却が施される。最後に、ステップGで基板およびCARが現像され、かつ、処理され、基板上のロケーションi毎に指定されたクリティカルディメンションCを有するデバイスがもたらされる。
【0059】
[0060] 特定のシステムに対するステップAないしCが一度確立されると、使用される基板が実質的に試験基板およびそのCAR層と同一状態を維持し、また、PEB/冷却プロセスステップが実質的に不変の状態を維持することを条件として、CAR層を備えた多くの基板に対して、必要に応じて、ステップAないしCを繰り返す必要なくステップDないしGを繰り返すことができる。
【0060】
[0061] 以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、上で説明した以外の方法で本発明を実践することも可能であることは理解されよう。以上の説明には、本発明を制限することは意図されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィによって基板にパターンを付与するための方法であって、
a)化学増幅型レジストの試験層がコーティングされた試験基板上の1つまたは複数のロケーションで、露光後ベークステップ中の、時間の関数としての温度を得るステップと、
b)前記化学増幅型レジスト上に導かれる放射線量と前記放射線量によって前記化学増幅型レジスト中に生成される促進剤の露光後濃度との間の関係を得るステップと、
c)1つまたは複数のロケーションそれぞれにおける指定されたクリティカルディメンションを得るために、前記クリティカルディメンションを促進剤の露光後濃度に関連付ける、かつ、前記1つまたは複数のロケーションのそれぞれにおける前記露光後ベークステップ中の、時間の関数としての温度に関連付けるモデルによって、前記1つまたは複数のロケーションに対する放射線量を計算するステップと、
d)前記試験基板上の対応するロケーションと等価の前記基板上の前記1つまたは複数のロケーションのそれぞれについて、計算された放射線量を使用して、前記化学増幅型レジストの層がコーティングされた前記基板をパターニングするステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記試験基板がパターニングされる前記基板と実質的に同一である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学増幅型レジストの前記試験層が、パターニングされる前記基板にコーティングされた化学増幅型レジストの層と実質的に同一である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記モデルが、前記露光後ベークステップ中における前記促進剤の化学反応および拡散を反映する、
請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記露光後ベークステップが、前記基板上の前記パターンの現像に先立って前記化学増幅型レジストを冷却するステップを含む、
請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記化学増幅型レジストが酸触媒レジストである、
請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
1つまたは複数のロケーションそれぞれにおける前記指定されたクリティカルディメンションが1つまたは複数のロケーション毎に同じである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
放射線量を有するパターニング放射を、化学増幅型レジストがコーティングされた基板上の複数のロケーションのそれぞれに投射するように構成された照明システムを備えたリソグラフィ装置であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法に従って、前記複数のロケーションのそれぞれにおける前記放射線量を調整するように構成されたコントローラを備える、
リソグラフィ装置。
【請求項9】
放射線量を有するパターニング放射を、化学増幅型レジストがコーティングされた基板上の複数のロケーションのそれぞれに投射するように構成された照明システムを備えるリソグラフィ装置のためのコントローラであって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法に従って、前記複数のロケーションのそれぞれにおける前記放射線量を調整するように構成された、
コントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−103527(P2010−103527A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−236752(P2009−236752)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】