説明

リチウムイオン二次電池の製造方法

【課題】正極板と負極板とを重ね合わせつつ巻回する際、その巻回を迅速に行うことができるとともに、正極板と負極板との位置ズレを確実に防止することができるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】リチウムイオン二次電池の製造方法は、正極板2をロール状に巻回して第1のロール11とするとともに、正極板2に巻き癖を付け、負極板3をロール状に巻回して第2のロール12とするとともに、負極板3に巻き癖を付ける第1の巻回工程と、第1のロール11から正極板2を引き出すとともに、第2のロール12から負極板3を引き出し、その引き出された正極板2と負極板3とを、巻き癖がついたままの状態が維持されるように重ね合わせつつ、ロール状に巻回して第3のロール13とする第2の巻回工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウムイオン二次電池には、板状の正極と板状の負極とが重なった状態で渦巻き状に巻回されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構成のリチウムイオン二次電池を製造する工程には、正極と負極とを重ね合わせつつ巻回する巻回工程がある。
【0003】
しかしながら、巻回工程を行なう以前に、正極や負極が例えば折り畳まれて保管されている場合、巻回工程で正極と負極とを重ね合わせつつ巻回しようと、折り畳みによって生じた折り目が原因で、正極と負極との互いの位置関係がズレてしまったり、好適な(リチウムイオン二次電池が使用に耐え得る程度の)渦巻き状に巻回することができず、巻回工程に過大な時間を費やしてしまう等の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−129528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、正極板と負極板とを重ね合わせつつ巻回する際、その巻回を迅速に行うことができるとともに、正極板と負極板との位置ズレを確実に防止することができるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) 可撓性を有する板状体で構成され、導電性を有する正極集電体と、該正極集電体の少なくとも一方の面上に層状に形成された正極活物質とを有する正極板と、可撓性を有する板状体で構成され、導電性を有する負極集電体と、該負極集電体の少なくとも一方の面上に層状に形成された負極活物質とを有する負極板とを備え、前記正極板と前記負極板とが対向配置されるよう前記正極板と前記負極板とを重ね合わせてリチウムイオン二次電池を製造する方法であって、
前記正極板をロール状に巻回して第1のロールとするとともに、前記正極板に巻き癖を付け、前記正極板とは別に前記負極板を前記第1のロールの巻回方向と同方向にロール状に巻回して第2のロールとするとともに、前記負極板に巻き癖を付ける第1の巻回工程と、
前記第1のロールから前記正極板を引き出すとともに、前記第2のロールから前記負極板を引き出し、その引き出された正極板と負極板とを、それぞれ巻き癖がついたままの状態が維持されるように重ね合わせつつ、ロール状に巻回して第3のロールとする第2の巻回工程とを有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0007】
(2) 前記第1の巻回工程での前記正極板および前記負極板に対する各巻回速度と、前記第2の巻回工程での巻回速度とは、同じである上記(1)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0008】
(3) 前記第1の巻回工程での前記正極板および前記負極板に対する各巻回速度と、前記第2の巻回工程での巻回速度とは、異なる上記(1)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0009】
(4) 前記第2の巻回工程での巻回速度は、前記第1の巻回工程での各巻回速度よりも速い上記(3)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0010】
(5) 前記第2の巻回工程を不活性雰囲気中で行なう上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0011】
(6) 前記第2の巻回工程では、前記正極板が前記第3のロールの最も外側に位置するように巻回を行なう上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0012】
(7) 前記リチウムイオン二次電池は、前記正極板と前記負極板との間に介挿された、可撓性を有する板状のセパレータを有するものであり、
前記セパレータを前記巻回方向と同方向にロール状に巻回して、巻き癖が付けられた第4のロールが用意されており、
前記第2の巻回工程では、前記引き出された正極板と負極板とを重ね合わせつつ、ロール状に巻回して前記第3のロールを得る際に、前記第4のロールから前記セパレータを引き出し、その引き出されたセパレータを巻き癖がついたままの状態で、巻回中の前記正極板と前記負極板との間に介挿しつつ、その巻回を行なう上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0013】
(8) 前記リチウムイオン二次電池は、前記正極活物質が前記正極集電体の両面にそれぞれ設けられ、前記負極活物質が前記負極集電体の両面にそれぞれ設けられたものであり、
前記第1の巻回工程に先立って、前記正極集電体の両面にそれぞれ前記正極活物質を付与するとともに、前記負極集電体の両面にそれぞれ前記負極活物質を付与する活物質付与工程を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0014】
(9) 前記リチウムイオン二次電池は、電解液が充填された容器内に前記第3のロールが収納されたものであり、
前記第2の巻回工程後に、未だ前記電解液が充填されていない前記容器内に前記第3のロールを収納する収納工程と、
前記第3のロールが収納された前記容器に前記電解液を充填する充填工程と、
前記容器を液密に封止する封止工程とを有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0015】
(10) 前記正極活物質は、リチウムを含有するものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0016】
(11) 前記負極活物質は、炭素を含有するものである上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【0017】
(12) 前記正極集電体と前記負極集電体とは、異なる金属材料で構成されている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、正極板と負極板とを重ね合わせつつ巻回する際、その巻回に先立って、すなわち、予め正極板、負極板にはそれぞれ同じ方向に巻き癖が付いているため、例えば巻き癖が付いていない場合や折り目が付いている場合に比べて、巻回作業を迅速かつ容易に行なうことができる。
【0019】
また、前記同じ方向に巻き癖が付いているため、巻回中に正極板と負極板とが互いに密着し易くなり、正極板と負極板との位置ズレを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の各工程を順に示す断面側面図である。
【図2】本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の各工程を順に示す断面側面図である。
【図3】本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の各工程を順に示す断面側面図である。
【図4】本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の各工程を順に示す断面側面図である。
【図5】本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の各工程を順に示す斜視図である。
【図6】本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の各工程を順に示す斜視図である。
【図7】消滅γ線のカウント数と陽電子消滅時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は、それぞれ、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の各工程を順に示す図、図7は、消滅γ線のカウント数と陽電子消滅時間との関係を示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1、図2、図5および図6中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図1〜図4中では、正極板、負極板、セパレータの厚さ方向を誇張して描いている。
【0022】
図6に示すリチウムイオン二次電池(以下単に「二次電池」と言う)1は、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法により製造されたものである。二次電池1は、正極板2と、負極板3と、セパレータ4aおよび4bと、これらを一括して収納する容器5と、容器5内に充填された電解液6と、容器5を液密に封止する蓋体(キャップ)7とを備えている(図4〜図6参照)。以下、各部の構成について説明する。
【0023】
正極板2は、可撓性を有する板状体(帯状体)で構成された正極集電体21と、正極集電体21の一方の面に層状に形成された正極活物質(正極材)22aと、正極集電体21の他方の面に層状に形成された正極活物質(正極材)22bとを有する。
【0024】
正極集電体21は、導電性を有する材料で構成され、その材料としては、特に限定されず、例えば、アルミニウムを用いることができる。
【0025】
正極活物質22aおよび22bは、リチウムを含有するものであり、その材料としては、特に限定されず、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)などのリチウムイオン金属酸化物(複合酸化物)を用いることができる。これにより、二次電池1の使用時に、電気伝導を担うリチウムイオンを確実に得る。また、その他に、正極活物質22aおよび22bの構成材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子などを用いることもできる。
【0026】
図1、図2に示すように、正極板2は、容器5に収納される前、すなわち、二次電池1の製造過程の途中では、ロール状に巻回されて第1のロール11となっている。これと同様に、負極板3も、容器5に収納される前、すなわち、二次電池1の製造過程の途中では、ロール状に巻回されて第2のロール12となっている。
【0027】
負極板3は、可撓性を有する板状体(帯状体)で構成された負極集電体31と、負極集電体31の一方の面上に層状に形成された負極活物質(負極材)32aと、負極集電体31の他方の面上に層状に形成された負極活物質(負極材)32bとを有する。
【0028】
負極集電体31は、導電性を有する材料で構成され、その材料としては、正極集電体21とは異なる金属材料で構成されているのが好ましい。例えば、正極集電体21がアルミニウムで構成されている場合には、負極集電体31を、銅、ニッケルで構成することができる。このように正極集電体21と負極集電体31とが異なる金属材料で構成されていることにより、二次電池1の「正極」、「負極」に適した材料を正極集電体21、負極集電体31のそれぞれに用いることができる。
【0029】
負極活物質32aおよび32bは、炭素を含有するものであり、特に、次に述べるリチウムイオン二次電池用炭素材(以下単に「炭素材」と言う場合もある)で構成されるのが好ましい。
【0030】
リチウムイオン二次電池用炭素材は、主材としての黒鉛(グラファイト)と、ハードカーボンとを含むものである。
【0031】
ところで、従来より、炭素材としては、充放電効率(放電容量/充電容量)が高いことから、黒鉛(グラファイト)が用いられてきた。しかしながら、黒鉛は、サイクルを繰り返した際の充放電容量の低下が早く、また、大電流の入出力特性が低いという欠点があった。
【0032】
このような充放電特性の問題を解決する炭素材として、グラファイト結晶構造が発達しにくい高分子を焼成して得られるハードカーボン(難黒鉛化性炭素)が開発されているが、ハードカーボンを負極材として用いた場合、サイクル時の安定性を高め、大電流の入出力特性を改善したものとすることができるが、充放電効率(充電効率、放電効率)が十分に得られないといった問題があった。
【0033】
これに対して、炭素材では、主材としての黒鉛に、ハードカーボンを添加したものを負極活物質32aおよび32bとして用いることにより、黒鉛単体と同程度の充放電効率を維持したままサイクル時の安定性を高め、大電流の入出力特性を改善することができる。さらに、ハードカーボン単体のものと比較して、充放電効率に優れたものとすることができる。その結果、充電容量、放電容量および充放電効率のバランスに優れた二次電池1とすることができる。
【0034】
黒鉛とは、炭素の同素体の1つであり、六炭素環が連なった層からできている層状格子をなす六方晶系、六角板状結晶の物質である。
【0035】
黒鉛をリチウムイオン二次電池用炭素材として用いた場合、充放電効率に優れているが、サイクルを繰り返した際の充放電容量の低下が早く、また、大電流の入出力特性が低いという問題があった。
【0036】
これに対して、黒鉛に後述するようなハードカーボンを添加することにより充放電効率を高いものとしつつ、サイクル時の安定性を高め、大電流の入出力特性を改善することができる。
【0037】
リチウムイオン二次電池用炭素材中における黒鉛の含有量は、55〜95重量%であるのが好ましく、60〜85重量%であるのがより好ましい。黒鉛の含有量が上記範囲であると、充放電効率を高いものとしつつ、サイクル時の安定性を高め、大電流の入出力特性を改善することができる。これに対して、黒鉛の含有量が前記下限値未満であると、十分な充放電効率が得られない。一方、黒鉛の含有量が前記上限値を超えると、サイクル時の安定性、および、大電流の入出力特性の改善効果が十分なものとならない。
【0038】
一方、ハードカーボン(難黒鉛化性炭素)とは、グラファイト結晶構造が発達しにくい高分子を焼成して得られる炭素材であって、アモルファス(非晶質)な物質である。言い換えると、ハードカーボンとは、樹脂または樹脂組成物を炭化処理することにより得られる炭素素材である。
【0039】
このようなハードカーボンは、サイクル時の安定性が高く、大電流の出し入れを容易に行うことができる。しかしながら、ハードカーボンで構成された炭素材を負極として用いた場合、充放電効率が十分に得られないといった問題がある。
【0040】
これに対して、リチウムイオン二次電池用炭素材では、主材としての黒鉛に上記特性を有するハードカーボンを添加することにより、充放電効率を優れたものとしつつ、サイクル時の安定性、および、大電流の入出力特性にも優れたものとすることができる。
【0041】
このようなハードカーボンの含有量は、5〜45重量%であるのが好ましく、15〜40重量%であるのがより好ましい。これにより、優れた充放電効率を損なうことなく、サイクル時の安定性、および、大電流の入出力特性をより効果的に高いものとすることができる。
【0042】
特に、黒鉛の含有量をA[重量%]、ハードカーボンの含有量をB[重量%]としたとき、1.2≦A/B≦19の関係を満足するのが好ましく、1.5≦A/B≦5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、優れた充放電効率を損なうことなく、サイクル時の安定性、および、大電流の入出力特性をさらに効果的に高いものとすることができる。
【0043】
ハードカーボンの原材料となる、樹脂あるいは、樹脂組成物に含まれる樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいはエチレン製造時に副生する石油系のタールおよびピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分やピッチ、石炭の液化により得られるタール及びピッチのような石油系または石炭系のタール若しくはピッチ、さらには前記タール、ピッチ等を架橋処理したものなどを含有することができ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
また、後述するように、樹脂組成物は、上記樹脂を主成分とするとともに、硬化剤、添加剤などを併せて含有することができ、さらには酸化等による架橋処理なども適宜実施することができる。
【0045】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、シアネート樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。また、これらが種々の成分で変性された変性物を用いることもできる。
【0046】
また、熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン、塩化ビニル、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、などが挙げられる。
【0047】
特にハードカーボンに用いられる主成分となる樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。これにより、ハードカーボンの残炭率をより高めることができる。
【0048】
特に、熱硬化性樹脂の中でも、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、及び、アニリン樹脂、およびこれらの変性物から選ばれるものであることが好ましい。これにより、炭素材の設計の自由度が広がり、低価格で製造することができる。また、得られる炭素材の充電容量、放電容量をさらに高いものとすることができる。
【0049】
また、熱硬化性樹脂を用いる場合には、その硬化剤を併用することができる。
用いられる硬化剤としては、特に限定されず、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合はヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂、ポリアセタール、パラホルムなどを用いることができる。また、エポキシ樹脂の場合は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなどのポリアミン化合物、酸無水物、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、ノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノール型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂など、エポキシ樹脂にて公知の硬化剤を用いることができる。
【0050】
なお、通常は所定量の硬化剤を併用する熱硬化性樹脂であっても、本実施形態で用いられる樹脂組成物においては、通常よりも少ない量を用いたり、あるいは硬化剤を併用しないで用いたりすることもできる。
【0051】
また、ハードカーボンの原材料としての樹脂組成物においては、上記成分の他、添加剤を配合することができる。
【0052】
ここで用いられる添加剤としては特に限定されないが、例えば、200〜800℃にて炭化処理した炭素材前駆体、有機酸、無機酸、含窒素化合物、含酸素化合物、芳香族化合物、および、非鉄金属元素などを挙げることができる。これら添加剤は、用いる樹脂の種類や性状などにより、1種または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
ハードカーボンの原材料として用いられる樹脂としては、後述する含窒素樹脂類を主成分樹脂として含んでいてもよい。また、主成分樹脂に含窒素樹脂類が含まれていないときには主成分樹脂以外の成分として、少なくとも1種以上の含窒素化合物を含んでいてもよいし、含窒素樹脂類を主成分樹脂として含むとともに含窒素化合物を主成分樹脂以外の成分として含んでいてもよい。このような樹脂を炭化処理することにより、窒素を含有するハードカーボンを得ることができる。ハードカーボン中に窒素が含まれると、窒素の有する電気陰性度により、ハードカーボン(リチウムイオン二次電池用炭素材)に好適な電気的特性を付与することができる。これにより、リチウムイオンの吸蔵・放出を促進させ、高い充放電特性を付与することができる。
【0054】
ここで、含窒素樹脂類としては、以下のものを例示することができる。
熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、シアネート樹脂、ウレタン樹脂のほか、アミンなどの含窒素成分で変性されたフェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0055】
熱可塑性樹脂としては、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフタルアミドなどが挙げられる。
【0056】
また、含窒素樹脂類以外の樹脂としては、以下のものを例示することができる。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0057】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。
【0058】
また、主成分樹脂以外の成分として含窒素化合物を用いる場合、その種類としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤であるヘキサメチレンテトラミン、エポキシ樹脂の硬化剤である脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミドなどのほか、硬化剤成分以外にも、硬化剤として機能しないアミン化合物、アンモニウム塩、硝酸塩、ニトロ化合物など窒素を含有する化合物を用いることができる。
上記含窒素化合物としては、主成分樹脂に含窒素樹脂類を含む場合であっても含まない場合であっても、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
ハードカーボンの原材料として用いられる樹脂組成物、あるいは樹脂中の窒素含有量としては特に限定されないが、5〜65重量%であることが好ましく、10〜20重量%であるのがより好ましい。この窒素含有量は、熱伝導度法によって測定することができる。熱伝導度法は、測定試料を、燃焼法を用いて単純なガス(CO、HO、およびN)に変換した後に、ガス化した試料を均質化した上でカラムを通過させる方法である。これにより、これらのガスが段階的に分離され、それぞれの熱伝導率から、炭素、水素、及び窒素の含有量を測定することができる(なお、本発明では、パーキンエルマー社製・元素分析測定装置「PE2400」を用いて実施した。)。
【0060】
このような樹脂組成物あるいは樹脂の炭化処理を行うことにより得られるハードカーボン中における炭素原子含有量は95wt%以上であるのが好ましく、さらに、窒素原子含有量が0.5〜5wt%であるのが好ましい。
【0061】
このように窒素原子を0.5wt%以上、特に1.0wt%以上含有することで、窒素の有する電気陰性度により、ハードカーボンに好適な電気的特性を付与することができる。これにより、リチウムイオンの吸蔵・放出を促進させ、高い充放電特性を付与することができる。
【0062】
また、窒素原子を5wt%以下、特に3wt%以下とすることで、ハードカーボンに付与される電気的特性が過剰に強くなってしまうことが抑制され、吸蔵されたリチウムイオンが窒素原子と電気的吸着を起こすことが防止される。これにより、不可逆容量の増加を抑制し、高い充放電特性を得ることができる。
【0063】
ハードカーボン中の窒素含有量は、上記樹脂組成物あるいは樹脂中の窒素含有量のほか、樹脂組成物あるいは樹脂を炭化する条件や、炭化処理の前に硬化処理やプレ炭化処理を行う場合には、それらの条件についても適宜設定することによって、調整することができる。
【0064】
例えば、上述したような窒素含有量である炭素材を得る方法としては、樹脂組成物あるいは樹脂中の窒素含有量を所定値として、これを炭化処理する際の条件、特に、最終温度を調整する方法があげられる。
【0065】
ハードカーボンの原材料として用いられる樹脂組成物の調製方法としては特に限定されず、例えば、上記主成分樹脂と、これ以外の成分とを所定の比率で配合し、これらを溶融混合する方法、これらの成分を溶媒に溶解して混合する方法、あるいは、これらの成分を粉砕して混合する方法などにより調製することができる。
【0066】
また、ハードカーボンは、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上480ピコ秒以下のものであるのが好ましく、380ピコ秒以上460ピコ秒以下のものであるのがより好ましい。陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下である場合には、後述するようにリチウムが出入りしやすいサイズの空隙がハードカーボンに形成されているといえ、リチウムイオン二次電池用炭素材の充電容量、放電容量をさらに高めることができる。
【0067】
なお、陽電子消滅法による陽電子寿命の測定は、以下の条件で行った。
(A)陽電子線源: 電子加速器を用いて電子・陽電子対から陽電子を発生
(B)ガンマ線検出器: BaFシンチレーターおよび光電子増倍管
(C)測定温度及び雰囲気: 25℃、真空中
(D)消滅γ線カウント数: 3×10以上
(E)陽電子ビームエネルギー:10keV
【0068】
かつ、X−ray Photoelectron Spectroscppy(XPS法)により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下である。
【0069】
ここで、陽電子寿命と、空隙サイズとの関係について説明する。
陽電子寿命法とは、陽電子(e)が試料に入射してから、消滅するまでの時間を計測して、空隙の大きさを測定する方法である。
【0070】
陽電子は、電子の反物質であり、電子と同じ静止質量を持つがその電荷は正である。
陽電子は、物質中に入射すると、電子と対(陽電子−電子対(ポジトロニウム))になり、その後消滅することが知られている。炭素材に陽電子を打ち込むと、陽電子(e)は高分子中で叩き出された電子の1つと結合してポジトロニウムを形成する。ポジトロニウムは高分子材料中の電子密度の低い部分、すなわち高分子中の局所空隙にトラップされ、空隙壁から出た電子雲と重なり消滅する。ポジトロニウムが高分子中の空隙中に存在する場合、その空隙の大きさとポジトロニウムの消滅寿命は反比例の関係にある。すなわち、空隙が小さいとポジトロニウムと周囲電子との重なりが大きくなり、陽電子消滅寿命は短くなる。一方、空隙が大きいとポジトロニウムが空隙壁からしみ出した他の電子と重なって消滅する確立が低くなりポジトロニウムの消滅寿命は長くなる。したがって、ポジトロニウムの消滅寿命を測定することにより炭素材中の空隙の大きさを評価することができる。
【0071】
上述したように、炭素材に入射した陽電子は、エネルギーを失った後、電子とともに、ポジトロニウムを形成し消滅する。この際、炭素材からは、γ線が放出されることとなる。
従って、放出されたγ線が測定の終了信号となる。
【0072】
陽電子消滅寿命の測定には、陽電子源として電子加速器や汎用のものとしては放射性同位元素22Naがよく用いられる。22Naは22Neにβ崩壊するときに、陽電子と1.28MeVのγ線を同時放出する。炭素材中に入射した陽電子は、消滅過程を経て511keVのγ線を放出する。したがって、1.28MeVのγ線を開始信号とし、511kevのγ線を終了信号として、両者の時間差を計測すれば陽電子の消滅寿命を求めることができる。具体的には、図7に示すような、陽電子寿命スペクトルが得られる。この陽電子寿命スペクトルの傾きAが陽電子寿命を示しており、陽電子寿命スペクトルから炭素材の陽電子寿命を把握することができる。
【0073】
また、陽電子源として、電子加速器を使用する場合には、タンタルまたはタングステンからなるターゲットに電子ビームを照射することによって発生する制動X線により電子・陽電子対生成を引起こさせ、陽電子を発生させる。電子加速器の場合、陽電子ビームを試料に入射した時点を測定開始点(前記22Naにおける開始信号に相当)とし、終了信号は22Naの場合と同様の原理で測定を実施する。
【0074】
陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒未満の場合には、空孔サイズが小さすぎて、リチウムイオンを吸蔵、放出しにくくなる。また、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が480ピコ秒を超えると、リチウムを吸蔵量は多くなるが、電解液等他の物質の侵入により、静電容量の増加によりリチウムが放出しにくくなると推測される。
【0075】
また、ハードカーボンは、XPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上1.8eV以下であるのが好ましく、0.9eV以上1.6eV以下であるのがより好ましい。XPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が1.8eV以下である場合は、ハードカーボン表面に存在する元素のほとんどが不活性なC−C結合等によるものであり、リチウムイオン等のイオン伝導に関わる活性物質と反応する官能基や不純物が実質的に存在しない状態となる。また285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上の場合には、過度な結晶化などの問題が生じることがない。そのため、炭素材のようにXPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下の場合には、不可逆容量に起因する充放電効率の低下が抑制される。
【0076】
次に、XPS測定と表面状態との関係について説明する。
XPS測定法とは、固体試料表面にX線を照射し、それによって励起された原子から放出された光電子の運動エネルギーを測定することで、原子内における電子の結合エネルギー(原子により固有の値を持つ)が求められ、表面に存在する構成元素の同定を行う方法である。
【0077】
FT−IR法も表面状態を分析することができるが、これは表面から約1μmに存在する化学結合の同定を行うのに対し、XPS測定法では表面から数Åに存在する元素の同定を行うことができる。このことから、より表面に近い官能基の同定を行うにはXPS測定法を用いるのが好ましい。
【0078】
また、ハードカーボンは、広角X線回折法からBragg式を用いて算出される(002)面の平均面間隔d002が3.4Å以上、3.9Å以下であることが好ましい。平均面間隔d002が3.4Å以上、特に3.6Å以上である場合には、リチウムイオンの吸蔵に伴う層間の収縮・膨張が起こり難くなるため、充放電サイクル性の低下を抑制できる。
【0079】
一方で、平均面間隔d002が3.9Å以下、特に3.8Å以下である場合にはリチウムイオンの吸蔵・脱離が円滑に行われ、充放電効率の低下を抑制できる。
【0080】
さらに、ハードカーボンは、c軸方向((002)面直交方向)の結晶子の大きさLcが8Å以上、50Å以下であることが好ましい。
【0081】
Lcを8Å以上、特に9Å以上とすることでリチウムイオンを吸蔵・脱離することができる炭素層間スペースが形成され、十分な充放電容量が得られるという効果があり、50Å以下、特に15Å以下とすることでリチウムイオンの吸蔵・脱離による炭素積層構造の崩壊や、電解液の還元分解を抑制し、充放電効率と充放電サイクル性の低下を抑制できるという効果がある。
【0082】
Lcは以下のようにして算出される。
X線回折測定から求められるスペクトルにおける002面ピークの半値幅と回折角から次のScherrerの式を用いて決定した。
【0083】
Lc=0.94λ/(βcosθ) (Scherrerの式)
Lc:結晶子の大きさ
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
β:ピークの半値幅(ラジアン)
θ:スペクトルの反射角度
【0084】
ハードカーボンにおけるX線回折スペクトルは、島津製作所製・X線回折装置「XRD−7000」により測定したものである。ハードカーボンにおける、上記平均面間隔の測定方法は以下の通りである。
【0085】
ハードカーボンのX線回折測定から求められるスペクトルより、平均面間隔dを以下のBragg式より算出した。
【0086】
λ=2dhklsinθ (Bragg式(dhkl=d002))
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
θ:スペクトルの反射角度
【0087】
さらに、ハードカーボンは、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が15m/g以下、1m/g以上であることが好ましい。
【0088】
窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が15m/g以下であることで、炭素材と電解液との反応を抑制できる。
【0089】
また、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積を1m/g以上とすることで電解液の炭素材への適切な浸透性が得られるという効果がある。
【0090】
比表面積の算出方法は以下の通りである。
下記(1)式より単分子吸着量Wmを算出し、下記(2)式より総表面積Stotalを算出し、下記(3)式より比表面積Sを求めた。
【0091】
1/[W(Po/P−1)=(C−1)/WmC(P/Po)/WmC・・(1)
式(1)中、P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力、Po:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧、W:吸着平衡圧Pにおける吸着量、Wm:単分子層吸着量、C:固体表面と吸着質との相互作用の大きさに関する定数(C=exp{(E1−E2)RT})[E1:第一層の吸着熱(kJ/mol)、E2:吸着質の測定温度における液化熱(kJ/mol)]
【0092】
Stotal=(WmNAcs)M・・・・・・・・・(2)
式(2)中、N:アボガドロ数、M:分子量、Acs:吸着断面積
【0093】
S=Stotal/w・・・・・・(3)
式(3)中、w:サンプル重量(g)
【0094】
以上のようなハードカーボンは、樹脂あるいは、樹脂組成物の代表例では以下のようにして製造することができる。
【0095】
はじめに、炭化処理すべき、樹脂あるいは、樹脂組成物を製造する。
樹脂組成物の調製のための装置としては特に限定されないが、例えば、溶融混合を行う場合には、混練ロール、単軸あるいは二軸ニーダーなどの混練装置を用いることができる。また、溶解混合を行う場合は、ヘンシェルミキサー、ディスパーザなどの混合装置を用いることができる。そして、粉砕混合を行う場合には、例えば、ハンマーミル、ジェットミルなどの装置を用いることができる。
【0096】
このようにして得られた樹脂組成物は、複数種類の成分を物理的に混合しただけのものであってもよいし、樹脂組成物の調製時、混合(攪拌、混練など)に際して付与される機械的エネルギーおよびこれが変換された熱エネルギーにより、その一部を化学的に反応させたものであってもよい。具体的には、機械的エネルギーによるメカノケミカル的反応、熱エネルギーによる化学反応をさせてもよい。
【0097】
ハードカーボンは、上記の樹脂組成物あるいは、樹脂を炭化処理してなるものである。
ここで炭化処理の条件としては特に限定されないが、例えば、常温から1〜200℃/時間で昇温して、800〜3000℃で0.1〜50時間、好ましくは0.5〜10時間保持して行うことができる。炭化処理時の雰囲気としては窒素、ヘリウムガスなどの不活性雰囲気下、もしくは不活性ガス中に微量の酸素が存在するような、実質的に不活性な雰囲気下、または還元ガス雰囲気下で行うことが好ましい。このようにすることで、樹脂の熱分解(酸化分解)を抑制し、所望の炭素材を得ることができる。
【0098】
このような炭化処理時の温度、時間等の条件は、ハードカーボンの特性を最適なものにするため適宜調整することができる。
【0099】
また、XPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下である炭素材を得るために、樹脂等に応じて適宜条件を定めればよいが、例えば炭化処理時の温度を1000℃以上にしたり、昇温速度を200℃/時間未満にするとよい。
【0100】
このようにすることで、ハードカーボン表面が不活性な官能基等によるものとなり、XPS法により測定した285eV付近に認められるピークの半値幅が0.8eV以上、1.8eV以下であるハードカーボンを得ることができると推測される。
【0101】
なお、上記炭化処理を行う前に、プレ炭化処理を行うことができる。
ここでプレ炭化処理の条件としては特に限定されないが、例えば、200〜600℃で1〜10時間行うことができる。このように、炭化処理前にプレ炭化処理を行うことで、樹脂組成物あるいは樹脂等を不融化させ、炭化処理工程前に樹脂組成物あるいは樹脂等の粉砕処理を行った場合でも、粉砕後の樹脂組成物あるいは樹脂等が炭化処理時に再融着するのを防ぎ、所望とする炭素材を効率的に得ることができるようになる。
【0102】
このとき、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下であるハードカーボンを得るための方法の一例としては、還元ガス、不活性ガスが存在しない状態で、プレ炭化処理を行うことがあげられる。
【0103】
また、ハードカーボン製造用の樹脂として、熱硬化性樹脂や重合性高分子化合物を用いた場合には、このプレ炭化処理の前に、樹脂組成物あるいは樹脂の硬化処理を行うこともできる。
【0104】
硬化処理方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂組成物に硬化反応が可能な熱量を与えて熱硬化する方法、あるいは、樹脂と硬化剤とを併用する方法などにより行うことができる。これにより、プレ炭化処理を実質的に固相でできるため、樹脂の構造をある程度維持した状態で炭化処理またはプレ炭化処理を行うことができ、ハードカーボンの構造や特性を制御することができるようになる。
【0105】
なお、上記炭化処理あるいはプレ炭化処理を行う場合には、上記樹脂組成物に、金属、顔料、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤などを添加して、所望する特性を炭素材に付与することもできる。
【0106】
上記硬化処理および/またはプレ炭化処理を行った場合は、その後、上記炭化処理の前に、処理物を粉砕しておいてもよい。こうした場合には、炭化処理時の熱履歴のバラツキを低減させ、ハードカーボンの表面状態の均一性を高めることができる。そして、処理物の取り扱い性を良好なものにすることができる。
【0107】
さらに、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下のハードカーボンを得るために、たとえば、必要に応じて炭化処理後において、還元ガスまたは不活性ガスの存在下で、800〜500℃まで自然冷却し、その後、100℃以下となるまで100℃/時間で冷却してもよい。
【0108】
このようにすることで、急速冷却によるハードカーボンの割れが抑制され、形成された空隙が維持できるという理由により、陽電子消滅法により測定した陽電子寿命が370ピコ秒以上、480ピコ秒以下であるハードカーボンを得ることができると推測される。
【0109】
このような炭素材で構成された負極活物質32aおよび32bは、負極集電体31の両面に付与されて、負極板3となり、正極活物質22aおよび22bは、正極集電体21の両面に付与されて、正極板2となる。そして、図2〜図4に示すように、正極板2と負極板3とを重ね合わせて巻回すれば、正極板2の正極活物質22aと負極板3の負極活物質32aとを確実に対向させることができ、正極板2の正極活物質22bと負極板3の負極活物質32bとを確実に対向させることができる。これにより、リチウムイオンが電解液6を介して「正極活物質」と「負極活物質」との間を迅速に行き来することができる。
【0110】
なお、正極板2の厚さtと負極板3の厚さtとを比べた場合、t≦tを満足するのが好ましい。
【0111】
また、巻回した正極板2と負極板3との間には、可撓性を有する板状のセパレータ4a、4bがそれぞれ介挿されている。セパレータ4a、4bは、それぞれ、例えば、正極板2と負極板3とが接触して短絡するのを防止する機能、二次電池1内の急激な内圧や温度が上昇するのを防止する機能、過電流により二次電池1が発火するのを防止する機能等を有するものである。
【0112】
セパレータ4a、4bとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質フィルム、不織布等で構成することができる。
【0113】
二次電池1では、正極板2、負極板3、セパレータ4a、4bが重なってロール状に巻回されたもの(以下これを「第3のロール13」と言う)が容器5内に収納されている。
【0114】
なお、図2に示すように、セパレータ4a、4bは、容器5に収納される前、すなわち、二次電池1の製造過程の途中では、それぞれ第4のロール14a、14bとなっている。
【0115】
電解液6は、正極板2と負極板3との間を満たすものであり、充放電によってリチウムイオンが移動する媒体である。
【0116】
電解液6としては、非水系溶媒に電解質となるリチウム塩を溶解したものが用いられる。この非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル類などの混合物などを用いることができる。電解質としては、LiClO、LiPFなどのリチウム金属塩、テトラアルキルアンモニウム塩などを用いることができる。また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルなどに混合し、固体電解質として用いることもできる。
【0117】
第3のロール13を収納する容器5は、有底筒状をなす部材で構成されている。なお、容器5の横断面形状は、図3、図4に示す構成では円形であるが、これに限定されず、例えば、角形や長円形であってもよい。
【0118】
蓋体7は、容器5の上端開口部51に装着され、当該上端開口部51を液密に封止するものである。蓋体7は、天板71と、天板71の縁部から下方に向かって突出形成された壁部72とを有している。そして、この壁部72が容器5の上端開口部51の縁部に嵌合することができ、当該嵌合した部分を例えば溶接することができる。これにより、蓋体7が容器5を確実に液密に封止することができる。
【0119】
なお、容器5および蓋体7の構成材料としては、導通性が比較的高く、成形時の容易性も比較的高い観点から、例えば、アルミニウムを用いるのが好ましい。
【0120】
次に、以上のような構成の二次電池1を製造する方法について説明する。
この製造方法は、活物質付与工程(図1参照)と、第1の巻回工程(図1参照)と、第2の巻回工程(図2参照)と、収納工程(図3参照)と、充填工程(図4参照)と、封止工程(図5、図6参照)とを有している。
【0121】
各工程について説明する前に、本製造方法で用いる装置について説明する。
図1(a)に示すように、活物質付与工程では、ペースト状の正極活物質22a、22bを正極集電体21に向かって吐出する吐出装置20Aと、正極集電体21上に吐出されたペースト状の正極活物質22a、22bを乾燥する乾燥装置30Aと用いる。また、図1(b)に示すように、活物質付与工程では、ペースト状の負極活物質32a、32bを負極集電体31に向かって吐出する吐出装置20Bと、負極集電体31上に吐出されたペースト状の負極活物質32a、32bを乾燥する乾燥装置30Bと用いる。
【0122】
吐出装置20Aと吐出装置20Bとは、吐出する活物質が異なること以外は、同じ構成であるため、以下、吐出装置20Aについて代表的に説明する。また、乾燥装置30Aと乾燥装置30Bとは、乾燥する活物質が異なること以外は、同じ構成であるため、以下、乾燥装置30Aについて代表的に説明する。
【0123】
吐出装置20Aは、上下方向に対向配置された一対のノズル201a、201bを有している。
【0124】
ノズル201aは、ペースト状の正極活物質22aが貯留されたタンク(図示せず)とチューブ(図示せず)を介して接続されており、そのタンクからペースト状の正極活物質22aの供給を受けて、当該ペースト状の正極活物質22aを吐出することができる。これと同様に、ノズル201bも、ペースト状の正極活物質22bが貯留されたタンク(図示せず)とチューブ(図示せず)を介して接続されており、そのタンクからペースト状の正極活物質22bの供給を受けて、当該ペースト状の正極活物質22bを吐出することができる。
【0125】
そして、正極集電体21がノズル201aとノズル201bとの間を通過するときに、正極活物質22aがノズル201aから吐出されて、正極集電体21の一方の面に塗布されることとなり、正極活物質22bがノズル201bから吐出されて、正極集電体21の他方の面に塗布されることとなる。
【0126】
乾燥装置30Aは、チャンバ301を有している。チャンバ301は、例えばヒータ(図示せず)が内蔵されており、内部空間を加熱するよう構成されている。また、チャンバ301は、正極集電体21が入る入口302と、入口302から入った正極集電体21が出る出口303とを有している。そして、このような構成のチャンバ301は、正極集電体21が入口302から入って、出口303から出る間に、正極集電体21に塗布されたペースト状の正極活物質22a、22bを加熱、乾燥することができる。これにより、固形または半固形の正極活物質22a、22bが正極集電体21に層状に形成される(付与される)こととなる。
【0127】
なお、正極集電体21にペースト状の正極活物質22a、22bを塗布する方法としては、ノズル201a、ノズル201bを用いた方法、すなわち、スプレー法に限定されず、例えば、ディッピングでもよい。
【0128】
また、ペースト状の正極活物質22a、22bを乾燥する方法としては、加熱による方法に限定されず、例えば、送風による方法でもよい。
【0129】
図1(a)、(b)、図2に示すように、活物質付与工程、第1の巻回工程、第2の巻回工程では、巻取装置40を用いる。
【0130】
図1(a)に示すように、巻取装置40は、互いに離間して配置された2本の軸部材401Aおよび402Aを有している。軸部材401Aと軸部材402Aとの間には、正極集電体21を掛け渡すことができる。また、軸部材401Aおよび402Aは、それぞれ、回転可能に支持されており、図1(a)に示す構成では、軸部材402Aが主動側であり、軸部材401Aが従動側である。そして、軸部材402Aが回転することにより、正極集電体21を軸部材402Aでロール状(渦巻き状)に巻き取ることができる。この巻き取ったものが第1のロール11となる。
【0131】
図1(b)に示すように、巻取装置40は、軸部材401Aおよび402Aと異なる位置に、互いに離間して配置された2本の軸部材401Bおよび402Bを有している。軸部材401Bと軸部材402Bとの間には、負極集電体31を掛け渡すことができる。また、軸部材401Bおよび402Bは、それぞれ、回転可能に支持されており、図1(b)に示す構成では、軸部材402Bが主動側であり、軸部材401Bが従動側である。そして、軸部材402Bが回転することにより、負極集電体31を軸部材402Bでロール状(渦巻き状)に巻き取ることができる。この巻き取ったものが第2のロール12となる。
【0132】
図2に示すように、巻取装置40は、軸部材401Aおよび401Bと異なる位置に、軸部材403A、403Bおよび404を有している。軸部材403A、403Bおよび404は、それぞれ、回転可能に支持されている。図2に示す構成では、軸部材404が主動側であり、軸部材402A、402B、403A、403Bがそれぞれ従動側である。
【0133】
軸部材403Aには、予め、セパレータ4aが第4のロール14aとしてロール状に巻回して用意されている。これと同様に、軸部材403Bにも、予め、セパレータ4bが第4のロール14bとしてロール状に巻回して用意されている。
【0134】
そして、軸部材404が回転することにより、第1のロール11から正極板2を、第2のロール12から負極板3を、第4のロール14aからセパレータ4aを、第4のロール14bからセパレータ4bを当該軸部材404で一括して巻き取ることができる。この巻き取ったものが第3のロール13となる。
【0135】
なお、巻取装置40では、軸部材404に対する軸部材402A、402B、403A、403Bの各離間距離(軸間距離)をできる限り短くするのが好ましい。これにより、後述する正極板2、負極板3、セパレータ4a、4bの巻き癖を確実に維持することができる。各離間距離としては、特に限定されず、例えば、50〜10000mmであるのが好ましく、100〜5000mmであるのがより好ましい。
【0136】
また、図2に示すように、正極板2、負極板3、セパレータ4a、4bは、軸部材404で巻回されるまでは、途中で湾曲せずに直線状に伸ばされているのが好ましい。
【0137】
次に、各工程について説明する。
[1] 活物質付与工程
図1(a)に示すように、軸部材401Aと軸部材402Aとの間には、正極集電体21が掛け渡されている。この正極集電体21は、初期状態では、軸部材401A側で、予め巻回されている。そして、この状態から軸部材402Aが図1中時計回りに回転すると、正極集電体21が図中右側に搬送される。
【0138】
また、このとき、吐出装置20Aのノズル201aからはペースト状の正極活物質22aが吐出され、ノズル201bからはペースト状の正極活物質22bが吐出される。これにより、正極集電体21の両面には、それぞれ、正極活物質22a、22bが供給される。
【0139】
正極集電体21に供給された正極活物質22a、22bは、正極集電体21とともに乾燥装置30Aのチャンバ301内を通過する最中に、加熱、乾燥される。これにより、正極集電体21の一方の面に固化した正極活物質22aが付与され、他方の面にも固化した正極活物質22bが付与され、正極板2が得られる。
【0140】
図1(b)に示すように、軸部材401Bと軸部材402Bとの間には、負極集電体31が掛け渡されている。この負極集電体31は、初期状態では、軸部材401B側で、予め巻回されている。そして、この状態から軸部材402Bが図1中時計回りに回転すると、負極集電体31が図中右側に搬送される。
【0141】
また、このとき、吐出装置20Bのノズル201aからはペースト状の負極活物質32aが吐出され、ノズル201bからはペースト状の正極活物質22bが吐出される。これにより、負極集電体31の両面には、それぞれ、負極活物質32a、32bが供給される。
【0142】
負極集電体31に供給された負極活物質32a、32bは、負極集電体31とともに乾燥装置30Bのチャンバ301内を通過する最中に、加熱、乾燥される。これにより、負極集電体31の一方の面に固化した負極活物質32aが付与され、他方の面にも固化した負極活物質32bが付与され、負極板3が得られる。
【0143】
なお、図1(a)に示す工程と図1(b)に示す工程とは、並行して行なってもよいし、時間差をもって、すなわち、順番に行なってもよい。
【0144】
[2] 第1の巻回工程
図1(a)に示すように、前工程で得られた正極板2は、軸部材402Aの回転に伴って、当該軸部材402A回り(時計回り)にロール状に巻回され、第1のロール11となる。また、この第1のロール11では、正極板2に巻き癖が付いている。ここで、「巻き癖」とは、外力を付与しない自然状態で、第1のロール11の巻回数に応じた曲率と同程度の曲率で、正極板2に湾曲した状態が維持されることをいう。
【0145】
一方、図1(b)に示すように、前工程で得られた負極板3は、軸部材402Bの回転に伴って、当該軸部材402B回り(時計回り)にロール状に巻回され、第2のロール12となる。また、この第2のロール12では、負極板3に巻き癖が付いている。ここで、「巻き癖」とは、外力を付与しない自然状態で、第2のロール12の巻回数に応じた曲率と同程度の曲率で、負極板3に湾曲した状態が維持されることをいう。
【0146】
[3] 第2の巻回工程
図2に示すように、第4のロール14a、14bは、それぞれ、第1のロール11や第2のロール12と同方向に巻回して用意されている。第4のロール14aでは、セパレータ4aに巻き癖が付いており、第4のロール14bでも、セパレータ4bに巻き癖が付いている。
【0147】
また、第1の巻回工程後、第1のロール11(正極板2)の外側の端部と、第2のロール12(負極板3)の外側の端部と、第4のロール14a(セパレータ4a)の外側の端部と、第4のロール14b(セパレータ4b)の外側の端部とを軸部材404に支持させる。このときの配置順番(重ねる順番)は、軸部材404側から外側に向かって、セパレータ4b、負極板3、セパレータ4a、正極板2となる(図2参照)。
【0148】
そして、図2に示すように、軸部材404が図中反時計回りに回転すると、第1のロール11からは正極板2が軸部材404に向かって引き出され、第2のロール12からは負極板3が軸部材404に向かって引き出され、第4のロール14aからはセパレータ4aが軸部材404に向かって引き出され、第4のロール14bからはセパレータ4bが軸部材404に向かって引き出される。
【0149】
これにより、前記引き出された正極板2と、前記引き出された負極板3とは、それぞれ、巻き癖が消失しない程度に、すなわち、巻き癖がついたままの状態が維持されるように、重ね合わさりつつ、軸部材404回りにロール状に巻回していく。また、前記引き出されたセパレータ4a、4bは、それぞれ、巻き癖がついたままの状態で正極板2と負極板3との間に介挿されていく。
【0150】
このような巻回を行なう際、その巻回に先立って、すなわち、予め正極板2、負極板3、セパレータ4a、4bにはそれぞれ同じ方向に巻き癖が付いているため、例えば巻き癖が付いていない場合や折り目が付いている場合に比べて、巻回作業を迅速かつ容易に行なうことができる。これにより、本工程に費やす時間を抑制することができる。
【0151】
また、前記同じ方向に巻き癖が付いているため、巻回中に正極板2とセパレータ4aと負極板3とセパレータ4bとが互いに密着し易くなり、これら部材同士の位置ズレを確実に防止することができ、また、皺やよじれが生じるのも防止することができる。
【0152】
このような第2の巻回工程を経ることにより、正極板2と負極板3とが対向配置された第3のロール13が得られる。この第3のロール13では、正極板2が最も外側に位置している。
【0153】
[4] 収納工程
図3に示すように、未だ電解液6が充填されていない、空の容器5を用意する。この容器5内に第3のロール13を収納する。このとき、容器5の中心軸と第3のロール13の中心軸とは、一致しているのが好ましい。
【0154】
[5] 充填工程
次に、図4に示すように、第3のロール13が収納された容器5に電解液6を充填する。この電解液6は、容器5の上端開口部51から充填することができる。
【0155】
また、前述したように、第3のロール13は、正極板2とセパレータ4aと負極板3とセパレータ4bとが互いに密着している。これにより、電解液6は、毛細管現象により、これら部材同士の間に迅速に入り込むことができ、よって、電解液6の充填時間の短縮に寄与する。
【0156】
[6] 封止工程
図5に示すように、蓋体7を用意する。そして、図6に示すように、蓋体7を容器5の上端開口部51に装着して、当該容器5を液密に封止する。
【0157】
以上のような工程を経ることにより、二次電池1が得られる。
また、封止工程後には、二次電池1が良品か不良品かを判断する試験を行なうことができる。
【0158】
本製造方法では、第1の巻回工程で、正極板2を巻回して第1のロール11を得るときの巻回速度vと、負極板3を巻回して第2のロール12を得るときの巻回速度vとは、ほぼ同じであるのが好ましい。
【0159】
また、巻回速度vおよびvと、第2の巻回工程で第3のロール13を得るときの巻回速度vとは、同じかまたは異なるのが好ましい。異なる場合、巻回速度vは、巻回速度vおよびvよりも速い。第2の巻回工程では、正極板2、負極板3に巻き癖があるため、その分だけ、巻回速度を高速にすることができる。これにより、全製造工程の時間の短縮に寄与する。
【0160】
また、本製造方法では、第2の巻回工程以降の工程、すなわち、第2の巻回工程から封止工程までの工程を不活性雰囲気中で行なうのが好ましい。この工程では、露点温度を所定の大きさに設定するのが好ましいため、不活性雰囲気中で行なうことにより、露点温度の管理を容易に行なうことができる。
【0161】
以上、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、リチウムイオン二次電池を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0162】
1 リチウムイオン二次電池(二次電池)
2 正極板
21 正極集電体
22a、22b 正極活物質(正極材)
3 負極板
31 負極集電体
32a、32b 負極活物質(負極材)
4a、4b セパレータ
5 容器
51 上端開口部
6 電解液
7 蓋体(キャップ)
71 天板
72 壁部
11 第1のロール
12 第2のロール
13 第3のロール
14a、14b 第4のロール
20A、20B 吐出装置
201a、201b ノズル
30A、30B 乾燥装置
301 チャンバ
302 入口
303 出口
40 巻取装置
401A、401B、402A、402B、403A、403B、404 軸部材
A 傾き
、t 厚さ
、v、v 巻回速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する板状体で構成され、導電性を有する正極集電体と、該正極集電体の少なくとも一方の面上に層状に形成された正極活物質とを有する正極板と、可撓性を有する板状体で構成され、導電性を有する負極集電体と、該負極集電体の少なくとも一方の面上に層状に形成された負極活物質とを有する負極板とを備え、前記正極板と前記負極板とが対向配置されるよう前記正極板と前記負極板とを重ね合わせてリチウムイオン二次電池を製造する方法であって、
前記正極板をロール状に巻回して第1のロールとするとともに、前記正極板に巻き癖を付け、前記正極板とは別に前記負極板を前記第1のロールの巻回方向と同方向にロール状に巻回して第2のロールとするとともに、前記負極板に巻き癖を付ける第1の巻回工程と、
前記第1のロールから前記正極板を引き出すとともに、前記第2のロールから前記負極板を引き出し、その引き出された正極板と負極板とを、それぞれ巻き癖がついたままの状態が維持されるように重ね合わせつつ、ロール状に巻回して第3のロールとする第2の巻回工程とを有することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1の巻回工程での前記正極板および前記負極板に対する各巻回速度と、前記第2の巻回工程での巻回速度とは、同じである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記第1の巻回工程での前記正極板および前記負極板に対する各巻回速度と、前記第2の巻回工程での巻回速度とは、異なる請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記第2の巻回工程での巻回速度は、前記第1の巻回工程での各巻回速度よりも速い請求項3に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記第2の巻回工程を不活性雰囲気中で行なう請求項1ないし4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記第2の巻回工程では、前記正極板が前記第3のロールの最も外側に位置するように巻回を行なう請求項1ないし5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記リチウムイオン二次電池は、前記正極板と前記負極板との間に介挿された、可撓性を有する板状のセパレータを有するものであり、
前記セパレータを前記巻回方向と同方向にロール状に巻回して、巻き癖が付けられた第4のロールが用意されており、
前記第2の巻回工程では、前記引き出された正極板と負極板とを重ね合わせつつ、ロール状に巻回して前記第3のロールを得る際に、前記第4のロールから前記セパレータを引き出し、その引き出されたセパレータを巻き癖がついたままの状態で、巻回中の前記正極板と前記負極板との間に介挿しつつ、その巻回を行なう請求項1ないし6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記リチウムイオン二次電池は、前記正極活物質が前記正極集電体の両面にそれぞれ設けられ、前記負極活物質が前記負極集電体の両面にそれぞれ設けられたものであり、
前記第1の巻回工程に先立って、前記正極集電体の両面にそれぞれ前記正極活物質を付与するとともに、前記負極集電体の両面にそれぞれ前記負極活物質を付与する活物質付与工程を有する請求項1ないし7のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記リチウムイオン二次電池は、電解液が充填された容器内に前記第3のロールが収納されたものであり、
前記第2の巻回工程後に、未だ前記電解液が充填されていない前記容器内に前記第3のロールを収納する収納工程と、
前記第3のロールが収納された前記容器に前記電解液を充填する充填工程と、
前記容器を液密に封止する封止工程とを有する請求項1ないし8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記正極活物質は、リチウムを含有するものである請求項1ないし9のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記負極活物質は、炭素を含有するものである請求項1ないし10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記正極集電体と前記負極集電体とは、異なる金属材料で構成されている請求項1ないし11のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73840(P2013−73840A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213136(P2011−213136)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】