説明

リチウムイオン二次電池システム及び充放電制御方法

【課題】負極に析出したリチウムを除去し電池特性を向上させることができるリチウムイオン二次電池システムを提供することである。
【解決手段】本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムは、リチウムイオン二次電池11と、リチウムイオン二次電池11の充電および放電を制御する制御部14と、を備える。制御部14は、リチウムイオン二次電池11の電池電圧16が4.1Vを超える充電電流17がリチウムイオン二次電池11に供給された場合、電池電圧16が4.1Vを超える期間における充電電流値よりも小さい放電電流値で、且つ電池電圧16が4.1Vを超える期間における充電時間よりも長い放電時間でリチウムイオン二次電池11の放電を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池システム、及びリチウムイオン二次電池の充放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、充放電を繰り返すことにより経時的に負極にリチウムのデンドライトが析出する。このリチウムのデンドライトはリチウムイオン二次電池の容量低下の原因となる。
【0003】
特許文献1には、デンドライトによるリチウムイオン二次電池の性能低下を防止することができるリチウムイオン二次電池システムに関する技術が開示されている。特許文献1にかかるリチウムイオン二次電池システムは、析出量算出手段および溶解除去手段を有する。析出量算出手段は、リチウムイオン二次電池の充放電にともないリチウムイオン二次電池の負極に析出するリチウムのデンドライトの析出量を算出する。溶解除去手段は、析出量算出手段で算出されたデンドライトの析出量に応じてデンドライトを溶解除去する処理を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−199936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術で説明したように、特許文献1に開示されているリチウムイオン二次電池では、負極に析出したリチウムのデンドライトの析出量を算出し、このデンドライトの析出量が許容値以上か否かを判断し、許容値を超えた場合にデンドライトを溶解除去する処理を実施している。
【0006】
しかしながら、負極に析出したリチウムのデンドライトの表面には時間経過と共に皮膜が形成される。この皮膜はリチウムの溶解除去の妨げとなるため、リチウムの析出量が許容値以上となるまで放置しておくと、負極に析出したリチウムの除去が困難となるという問題があった。
【0007】
上記課題に鑑み本発明の目的は、負極に析出したリチウムを除去し電池特性を向上させることができるリチウムイオン二次電池システム、リチウムイオン二次電池の充放電制御方法、およびリチウムイオン二次電池システムを用いた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムは、リチウムイオン二次電池と、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を制御する制御部と、を備えるリチウムイオン二次電池システムであって、前記制御部は、前記リチウムイオン二次電池の電池電圧が4.1Vを超える充電電流が前記リチウムイオン二次電池に供給された場合、前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電電流値よりも小さい放電電流値で、且つ前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電時間よりも長い放電時間で前記リチウムイオン二次電池の放電を実施する。
【0009】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムは更に補助電池を備え、前記リチウムイオン二次電池および前記補助電池は所定の負荷に電力を供給可能に構成されており、 前記補助電池は、前記リチウムイオン二次電池の放電を実施している期間、前記負荷に電力を供給することができる。
【0010】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記負荷はモータであり、前記リチウムイオン二次電池を前記モータの回生エネルギーを用いて充電してもよい。
【0011】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムは、更に前記リチウムイオン二次電池の放電時に前記リチウムイオン二次電池のエネルギーを熱に変換する抵抗素子を備えていてもよい。
【0012】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムは、前記補助電池を充電することで前記リチウムイオン二次電池の放電を実施してもよい。
【0013】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムにおいて、前記制御部は、前記リチウムイオン二次電池の充電電流値をI(in)、充電時間をt(in)、放電電流値をI(out)、放電時間をt(out)とした場合、I(out)=I(in)×1/5、t(out)=t(in)×5の条件で前記リチウムイオン二次電池の放電を実施してもよい。
【0014】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の充放電制御方法は、リチウムイオン二次電池の電池電圧を監視し、前記リチウムイオン二次電池の電池電圧が4.1Vを超える充電電流が前記リチウムイオン二次電池に供給された場合、前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電電流値と充電時間とを取得し、前記充電電流値よりも小さい放電電流値で、且つ前記充電時間よりも長い放電時間で前記リチウムイオン二次電池の放電を実施する。
【0015】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の充放電制御方法において、前記リチウムイオン二次電池の放電を実施している期間、前記リチウムイオン二次電池の代わりに補助電池を用いて負荷に電力を供給してもよい。
【0016】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の充放電制御方法において、前記リチウムイオン二次電池の電力を抵抗素子を用いて熱に変換することで前記放電を実施してもよい。
【0017】
本発明にかかるリチウムイオン二次電池の充放電制御方法において、前記補助電池を充電することで前記リチウムイオン二次電池の放電を実施してもよい。
【0018】
本発明にかかる車両は、車輪を駆動するモータおよびエンジンと、前記モータに電力を供給するリチウムイオン二次電池と、前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を制御する制御部と、を備える車両であって、前記制御部は、前記リチウムイオン二次電池の電池電圧が4.1Vを超える充電電流が前記リチウムイオン二次電池に供給された場合、前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電電流値よりも小さい放電電流値で、且つ前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電時間よりも長い放電時間で前記リチウムイオン二次電池の放電を実施する。
【0019】
本発明にかかる車両において、前記エンジンは、前記リチウムイオン二次電池の放電を実施している期間、前記車輪を駆動してもよい。
【0020】
本発明にかかる車両において、前記リチウムイオン二次電池を前記モータの回生エネルギーを用いて充電してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、負極に析出したリチウムを除去し電池特性を向上させることができるリチウムイオン二次電池システム、リチウムイオン二次電池の充放電制御方法、およびリチウムイオン二次電池システムを用いた車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1にかかるリチウムイオン二次電池システムを示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるリチウムイオン二次電池システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】実施の形態1にかかるリチウムイオン二次電池システムの充電時の動作を説明するための図である。
【図4】実施の形態2にかかるリチウムイオン二次電池システムを示すブロック図である。
【図5】実施の形態2にかかるリチウムイオン二次電池システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】実施の形態2にかかるリチウムイオン二次電池システムの他の構成例を示すブロック図である。
【図7】実施の形態3にかかるリチウムイオン二次電池システムを車両に応用した場合を示すブロック図である。
【図8】実施の形態3にかかるリチウムイオン二次電池システムを車両に応用した場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムの試験方法を説明するための図である。
【図10】本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムの試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかるリチウムイオン二次電池システムを示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システム10は、リチウムイオン二次電池11、充電部12、放電部13、制御部14、および負荷15を有する。
【0024】
リチウムイオン二次電池11は、負荷15に電力を供給する。リチウムイオン二次電池11は、単一のリチウムイオン二次電池でもよく、また複数のリチウムイオン二次電池を電気的に接続することで構成された組電池であってもよい。
【0025】
リチウムイオン二次電池11は、正極活物質を担持した正電極板、負極活物質を担持した負電極板、正電極板および負電極板の間に介在するセパレータ、および非水電解液を備える。リチウムイオン二次電池11は、例えば帯状の正電極板と帯状の負電極板とを帯状のセパレータを介して捲回した捲回状の電極体を備えるものや、複数の正電極板と複数の負電極板とを、セパレータを介して交互に積層した積層状の電極体を備えるものなどが挙げられる。
【0026】
正極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)およびこれらの混合物等を用いることができる。負極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えば、黒鉛(グラファイト)等からなる粉末状の炭素材料を用いることができる。非水電解液の非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる群から選択された一種または二種以上の材料を用いることができる。また、非水電解液の支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。セパレータとしては、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、および多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜等を用いることができる。
【0027】
充電部12は、制御部14から出力された充電制御信号18に応じて、リチウムイオン二次電池11を充電する。充電部12がリチウムイオン二次電池11を充電する際は、所定の充電電流17をリチウムイオン二次電池11に供給する。充電部12は、リチウムイオン二次電池11の充電に必要な電力を外部電源(不図示)から取得してもよく、また、負荷15がモータである場合はモータから供給される回生エネルギー(回生電流)を用いてもよい。
【0028】
放電部13は、制御部14から出力された放電制御信号19に応じて、リチウムイオン二次電池11に蓄積されている電力を放電する処理を実施する。放電部13は、例えば抵抗素子を備えており、この抵抗素子に電流を流して電力を熱に変換することでリチウムイオン二次電池11の放電を実施することができる。
【0029】
制御部14は、リチウムイオン二次電池11の充電および放電を制御する。つまり、制御部14は、充電部12に充電制御信号18を供給することでリチウムイオン二次電池11の充電を制御し、放電部13に放電制御信号19を供給することでリチウムイオン二次電池11の放電を制御する。
【0030】
制御部14は、充電部12から出力された充電電流17、およびリチウムイオン二次電池11の電池電圧16をモニタすることができる。そして、制御部14は、リチウムイオン二次電池11の電池電圧16が4.1Vを超えるような充電電流17がリチウムイオン二次電池11に供給された場合、リチウムイオン二次電池11の放電を実施する。このとき、制御部14は、電池電圧が4.1Vを超える期間における充電電流値よりも小さい放電電流値で、且つ電池電圧が4.1Vを超える期間における充電時間よりも長い放電時間で放電を実施する。なお、リチウムイオン二次電池11は、電池電圧が4.1Vを超えた場合にリチウムのデンドライトが負極に析出しやすくなる。また、リチウムイオン二次電池11の電池電圧16が4.1Vを超えるような充電電流17がリチウムイオン二次電池11に供給される場合とは、例えば充電部12に電力を供給している外部電源(不図示)からの電力供給量が急激に増加した場合などである。一例を挙げると、例えば充電部12に供給される電力がモータの回生エネルギーであり、モータに急激に回生ブレーキが働くことで、モータから充電部12に急激に回生エネルギーが供給されるような場合である。
【0031】
負荷15は、リチウムイオン二次電池11から供給される電力を用いて動作する。負荷15としては、例えばモータ等の駆動装置や、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器等である。
【0032】
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムの動作について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0033】
制御部14はリチウムイオン二次電池11の電池電圧16を監視し(ステップS11)、この監視結果に応じて充電部12に充電制御信号18を出力する。通常動作時において、制御部14は、例えば、リチウムイオン二次電池11の電池電圧16が所定の電圧よりも低くなった場合、充電部12に充電を指示する充電制御信号18を出力する。このとき、充電部12は、リチウムイオン二次電池11に所定の充電電流17を供給してリチウムイオン二次電池11を充電する。また、例えば、制御部14は、リチウムイオン二次電池11の電池電圧16が所定の電圧よりも高くなった場合、充電部12に充電の休止を指示する充電制御信号18を出力する。このとき、充電部12は、リチウムイオン二次電池11の充電を休止する。
【0034】
また、制御部14は、異常動作を検知した場合、つまりリチウムイオン二次電池11の電池電圧16が4.1Vを超えるような充電電流17がリチウムイオン二次電池11に供給されたことを検知した場合(ステップS12:Yes)、充電部12にリチウムイオン二次電池11の充電を休止することを指示する充電制御信号18を出力して、リチウムイオン二次電池11の充電を休止する(ステップS13)。
【0035】
図3を用いて具体的に説明すると、リチウムイオン二次電池11の電池電圧16が4.1Vを超えるような充電電流17がリチウムイオン二次電池11に供給された場合(ステップS12:Yes)、充電部12は、タイミングt1において、リチウムイオン二次電池11の充電を休止する(ステップS13)。これにより、リチウムイオン二次電池11の電池電圧は徐々に低下し、3.75V付近で一定となる。
【0036】
そして、制御部14は、電池電圧16が4.1Vを超えた際(図3においてハッチング線で示す)の充電電流17の値I(in)と、充電時間t(in)とを取得する(ステップS14)。その後、制御部14は、放電電流値I(out)<充電電流値I(in)、および放電時間t(out)>充電時間t(in)の条件を満たすような放電電流値I(out)および放電時間t(out)で、リチウムイオン二次電池11の放電を行なう(ステップS15)。
【0037】
このとき、放電電流値I(out)を小さくするほど、また放電時間t(out)を大きくするほど、リチウムイオン二次電池11の電池特性(容量維持率)が向上する。しかし、放電電流値I(out)を小さくし、放電時間t(out)を大きくすると放電に時間がかかる。この点を考慮すると、本実施の形態では、放電電流値I(out)=充電電流値I(in)×1/5、放電時間t(out)=充電時間t(in)×5の条件を満たすように放電することで、最も効果的にリチウムイオン二次電池11の放電を実施することができる。リチウムイオン二次電池11の放電処理が終了した後、制御部14は、再度リチウムイオン二次電池11の電池電圧16の監視を開始する(ステップS11)。
【0038】
背景技術で説明したように、特許文献1に開示されているリチウムイオン二次電池では、負極に析出したリチウムのデンドライトの析出量を算出し、このデンドライトの析出量が許容値以上か否かを判断し、許容値を超えた場合にデンドライトを溶解除去する処理を実施していた。
【0039】
しかしながら、負極に析出したリチウムのデンドライトの表面には時間経過と共に皮膜等が形成される。この皮膜はリチウムの溶解除去の妨げとなるため、リチウムの析出量が許容値以上となるまで放置しておくと、負極に析出したリチウムの除去が困難となるという問題があった。そして、負極に析出したリチウムは負極における反応に寄与しないため、リチウムイオン二次電池の容量が低下するという問題があった。
【0040】
これに対して本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムでは、リチウムイオン二次電池の電池電圧が4.1Vを超えるような充電電流がリチウムイオン二次電池に供給された場合、リチウムイオン二次電池の放電を実施している。このように、電池電圧が4.1Vを超えるような充電電流がリチウムイオン二次電池11に供給される度に、リチウムイオン二次電池の放電を実施することで、負極に析出したリチウムの表面に皮膜が形成される前に、負極に析出したリチウムを除去することができる。よって、負極に析出したリチウムを確実に除去することができる。
【0041】
また、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムでは、電池電圧が4.1Vを超える期間における充電電流値よりも小さい放電電流値で、且つ電池電圧が4.1Vを超える期間における充電時間よりも長い放電時間でリチウムイオン二次電池の放電を実施することで、負極に析出したリチウムの溶解量(除去量)を増加させることができる。
【0042】
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、負極に析出したリチウムを除去し電池特性を向上させることができるリチウムイオン二次電池システムおよびリチウムイオン二次電池の充放電制御方法を提供することができる。
【0043】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図4は、本発明の実施の形態2にかかるリチウムイオン二次電池システム20を示すブロック図である。図4に示す本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システム20は、補助電池21を有する点が実施の形態1にかかるリチウムイオン二次電池システム10と異なる。これ以外は実施の形態1にかかるリチウムイオン二次電池システム10と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0044】
補助電池21は、制御部14から出力された補助電池制御信号25に応じて、負荷15に電力を供給する。具体的には、補助電池21は、リチウムイオン二次電池11の放電を実施している期間、リチウムイオン二次電池11の代わりに負荷15に電力を供給する。補助電池21は、例えばリチウム電池等の一次電池で構成してもよく、またリチウムイオン二次電池等の二次電池で構成してもよい。
【0045】
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムの動作について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0046】
制御部14はリチウムイオン二次電池11の電池電圧16を監視している(ステップS21)。そして、制御部14は、リチウムイオン二次電池11の電池電圧16が4.1Vを超えるような充電電流17がリチウムイオン二次電池11に供給されたことを検知した場合(ステップS22:Yes)、充電部12にリチウムイオン二次電池11の充電を休止することを指示する充電制御信号18を出力して、リチウムイオン二次電池11の充電を休止する(ステップS23)。
【0047】
また、制御部14は、補助電池21に対して、負荷15に電力を供給することを指示する補助電池制御信号25を出力する。これにより、負荷15には補助電池21から電力が供給される(ステップS24)。
【0048】
制御部14は、電池電圧16が4.1Vを超えた際の充電電流17の値I(in)と、充電時間t(in)とを取得する(ステップS25)。その後、制御部14は、放電電流値I(out)<充電電流値I(in)、および放電時間t(out)>充電時間t(in)の条件を満たすような放電電流値I(out)および放電時間t(out)で、リチウムイオン二次電池11の放電を行なう(ステップS26)。リチウムイオン二次電池11の放電処理が終了した後、補助電池21から負荷15への電力供給を休止し、リチウムイオン二次電池11から負荷15への電力供給を再開する(ステップS27)。そして、制御部14は、再度リチウムイオン二次電池11の電池電圧16の監視を開始する(ステップS21)。
【0049】
以上で説明したように、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システム20では、リチウムイオン二次電池11が放電処理中のために負荷15に電力を供給することができない場合であっても、補助電池21を用いることで負荷15に電力を供給することができる。よって、負荷15への電力供給を継続することができる。
【0050】
図6は、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムの他の構成例を示すブロック図である。図6に示すリチウムイオン二次電池システム20'では、放電部13'が補助電池21を充電することができるように構成している。つまり、放電部13'は、リチウムイオン二次電池11を放電する際の電力を用いて補助電池21を充電することができる。このように、放電部13'を用いて補助電池21を充電することで、エネルギーの無駄を抑制することができる。なお、放電部13'は抵抗素子を備えていてもよく、補助電池21が満充電の状態の場合は、抵抗素子を用いてリチウムイオン二次電池11の放電を実施してもよい。
【0051】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図7は、本発明の実施の形態3にかかるリチウムイオン二次電池システムを車両に応用した場合を示すブロック図である。本実施の形態にかかる車両30では、負荷としてモータ32を用いている点、動力制御部31、エンジン33、および車輪34を有する点が、実施の形態1にかかるリチウムイオン二次電池システム10と異なる。これ以外は実施の形態1にかかるリチウムイオン二次電池システム10と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0052】
動力制御部31は、制御部14から出力された動力制御信号35に応じて、モータ32を用いて車輪34を駆動する場合、エンジン33を用いて車輪34を駆動する場合、またはモータ32とエンジン33の両方を用いて車輪34を駆動する場合を切り替える。
【0053】
モータ32は、動力制御部31から出力されたモータ制御信号に応じて車輪34を駆動する。また、モータ32は、モータ32を回生ブレーキとして用いた場合に生成される回生エネルギー36を充電部12に供給する。また、エンジン33は動力制御部31から出力されたエンジン制御信号に応じて車輪34を駆動する。
【0054】
次に、本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池システムを車両に応用した場合の動作について、図8に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下では、初期状態において、モータ32を用いて、またはモータ32とエンジン33の両方を用いて車輪34を駆動しているものとする。
【0055】
制御部14はリチウムイオン二次電池11の電池電圧16を監視している(ステップS31)。そして、制御部14は、リチウムイオン二次電池11の電池電圧16が4.1Vを超えるような充電電流17がリチウムイオン二次電池11に供給されたことを検知した場合(ステップS32:Yes)、充電部12にリチウムイオン二次電池11の充電を休止することを指示する充電制御信号18を出力して、リチウムイオン二次電池11の充電を休止する(ステップS33)。例えば、急ブレーキをかけた際にモータ32から大きな回生エネルギー36が充電部12に供給された場合、充電部12からリチウムイオン二次電池11に電池電圧16が4.1Vを超えるような充電電流17が供給される。
【0056】
また、制御部14は、動力制御部31に対して、モータ32の駆動を停止し、エンジン33のみを用いて車輪34を駆動するような動力制御信号35を出力する。これにより、エンジン33のみを用いて車輪34が駆動される(ステップS34)。
【0057】
制御部14は、電池電圧16が4.1Vを超えた際の充電電流17の値I(in)と、充電時間t(in)とを取得する(ステップS35)。その後、制御部14は、放電電流値I(out)<充電電流値I(in)、および放電時間t(out)>充電時間t(in)の条件を満たすような放電電流値I(out)および放電時間t(out)で、リチウムイオン二次電池11の放電を行なう(ステップS36)。リチウムイオン二次電池11の放電処理が終了した後、リチウムイオン二次電池11はモータ32への電力供給を再開し、モータ32は車輪34の駆動を再開する(ステップS37)。このとき、動力制御部31は、モータ32のみを用いて車輪34を駆動してもよく、またモータ32とエンジン33の両方を用いて車輪34を駆動してもよい。そして、制御部14は、再度リチウムイオン二次電池11の電池電圧16の監視を開始する(ステップS31)。
【0058】
以上で説明したように、本実施の形態では、リチウムイオン二次電池11が放電処理中のためにモータ32に電力を供給することができない場合であっても、エンジン33を用いることで車輪34を駆動することができる。
【実施例】
【0059】
次に、本発明の実施例について説明する。以下で説明する実施例では、所定の条件で充放電を繰り返した際のリチウムイオン二次電池の容量維持率について説明する。なお、試験には、上記で説明したリチウムイオン二次電池を用いた。
【0060】
図9は、本発明にかかるリチウムイオン二次電池システムの試験方法を説明するための図である。本実施例では、下記の3つの条件で充放電試験を実施した。なお、以下に示す試験条件では、充電電流と充電時間との積および放電電流と放電時間との積が同じ値となるように設定した。
【0061】
(1)リチウムイオン二次電池を45Cの充電電流で10秒間充電した後、5分間休止し、その後、45Cの放電電流で10秒間放電する処理をそれぞれ300回繰り返した(サンプルA)。なお、リチウムイオン二次電池を45Cの充電電流で10秒間充電する条件は、負極にリチウムのデンドライトが析出する条件である。
(2)リチウムイオン二次電池を45Cの充電電流で10秒間充電した後、5分間休止し、その後、15Cの放電電流で30秒間放電する処理をそれぞれ300回繰り返した(サンプルB)。
(3)リチウムイオン二次電池を45Cの充電電流で10秒間充電した後、5分間休止し、その後、9Cの放電電流で50秒間放電する処理をそれぞれ300回繰り返した(サンプルC)。
【0062】
また、容量維持率の測定は次のようにして行なった。充放電試験前の放電容量を放電容量A、充放電試験後の放電容量を放電容量Bとして、下記の式を用いて容量維持率を求めた。
容量維持率(%)=(放電容量B/放電容量A)×100
なお、放電容量Aおよび放電容量Bは、次のようにして算出した。まず、20℃の温度環境下で、各リチウムイオン二次電池について電流密度0.2mA/cmの定電流で、電池電圧が上限電圧値4.2Vから下限電圧値3.0Vに至るまで放電を行なった。このときの放電電気量(mAh)を、各リチウム二次電池内の正極活物質の質量(g)で除して、放電容量Aおよび放電容量Bを算出した。
【0063】
図10に、各サンプルの充放電試験後の容量維持率を示す。図10に示すように、充放電条件が放電電流値I(out)=充電電流値I(in)=45C、放電時間t(out)=充電時間t(in)=10秒であるサンプルAでは、容量維持率が91.4%であった。また、充放電条件が放電電流値I(out)=充電電流値I(in)×1/3=15C、放電時間t(out)=充電時間t(in)×3=30秒であるサンプルBでは、容量維持率が97.0%であった。また、充放電条件が放電電流値I(out)=充電電流値I(in)×1/5=9C、放電時間t(out)=充電時間t(in)×5=50秒であるサンプルCでは、容量維持率が98.6%であった。
【0064】
よって、図10に示す試験結果から、放電電流値I(out)<充電電流値I(in)、および放電時間t(out)>充電時間t(in)の条件を満たすような放電電流値I(out)および放電時間t(out)で、リチウムイオン二次電池の放電を行なうことで、容量維持率が向上することがわかった。
【0065】
更に、放電電流値I(out)を小さくするほど、また、放電時間t(out)を大きくするほど、リチウムイオン二次電池の容量維持率が向上することがわかった。特に、本実施例では、放電電流値I(out)=充電電流値I(in)×1/5、放電時間t(out)=充電時間t(in)×5の条件を満たすように放電することで、容量維持率が最も向上した(サンプルC)。
【0066】
以上、本発明を上記実施形態および実施例に即して説明したが、上記実施形態および実施例の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
10、20、20' リチウムイオン二次電池システム
11 リチウムイオン二次電池
12 充電部
13 放電部
14 制御部
15 負荷
16 電池電圧
17 充電電流
18 充電制御信号
19 放電制御信号
21 補助電池
25 補助電池制御信号
30 車両
31 動力制御部
32 モータ
33 エンジン
34 車輪
35 動力制御信号
36 回生エネルギー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池と、
前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を制御する制御部と、を備えるリチウムイオン二次電池システムであって、
前記制御部は、前記リチウムイオン二次電池の電池電圧が4.1Vを超える充電電流が前記リチウムイオン二次電池に供給された場合、前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電電流値よりも小さい放電電流値で、且つ前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電時間よりも長い放電時間で前記リチウムイオン二次電池の放電を実施する、
リチウムイオン二次電池システム。
【請求項2】
前記リチウムイオン二次電池システムは更に補助電池を備え、
前記リチウムイオン二次電池および前記補助電池は所定の負荷に電力を供給可能に構成されており、
前記補助電池は、前記リチウムイオン二次電池の放電を実施している期間、前記負荷に電力を供給する、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項3】
前記負荷はモータであり、
前記リチウムイオン二次電池は前記モータの回生エネルギーを用いて充電される、
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項4】
前記リチウムイオン二次電池システムは、更に前記リチウムイオン二次電池の放電時に前記リチウムイオン二次電池のエネルギーを熱に変換する抵抗素子を備える、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項5】
前記リチウムイオン二次電池システムは、前記補助電池を充電することで前記リチウムイオン二次電池の放電を実施する、請求項2または3に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記リチウムイオン二次電池の充電電流値をI(in)、充電時間をt(in)、放電電流値をI(out)、放電時間をt(out)とした場合、I(out)=I(in)×1/5、t(out)=t(in)×5の条件で前記リチウムイオン二次電池の放電を実施する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池システム。
【請求項7】
リチウムイオン二次電池の電池電圧を監視し、
前記リチウムイオン二次電池の電池電圧が4.1Vを超える充電電流が前記リチウムイオン二次電池に供給された場合、前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電電流値と充電時間とを取得し、
前記充電電流値よりも小さい放電電流値で、且つ前記充電時間よりも長い放電時間で前記リチウムイオン二次電池の放電を実施する、
リチウムイオン二次電池の充放電制御方法。
【請求項8】
前記リチウムイオン二次電池の放電を実施している期間、前記リチウムイオン二次電池の代わりに補助電池を用いて負荷に電力を供給する、
請求項7に記載のリチウムイオン二次電池の充放電制御方法。
【請求項9】
前記リチウムイオン二次電池の電力を抵抗素子を用いて熱に変換することで前記放電を実施する、請求項7または8に記載のリチウムイオン二次電池の充放電制御方法。
【請求項10】
前記補助電池を充電することで前記リチウムイオン二次電池の放電を実施する、請求項8または9に記載のリチウムイオン二次電池の充放電制御方法。
【請求項11】
車輪を駆動するモータおよびエンジンと、
前記モータに電力を供給するリチウムイオン二次電池と、
前記リチウムイオン二次電池の充電および放電を制御する制御部と、を備える車両であって、
前記制御部は、前記リチウムイオン二次電池の電池電圧が4.1Vを超える充電電流が前記リチウムイオン二次電池に供給された場合、前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電電流値よりも小さい放電電流値で、且つ前記電池電圧が4.1Vを超える期間における充電時間よりも長い放電時間で前記リチウムイオン二次電池の放電を実施する、
車両。
【請求項12】
前記エンジンは、前記リチウムイオン二次電池の放電を実施している期間、前記車輪を駆動する、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記リチウムイオン二次電池は前記モータの回生エネルギーを用いて充電される、請求項11または12に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−110885(P2013−110885A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255085(P2011−255085)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】