説明

リチウムイオン二次電池

1つの態様において、正極活物質は、コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも一方; ならびにLi(1+x1)(Mn1-y1A’y1)2-x1Oz1の実験式で表されるマンガン酸塩スピネルおよびLi(1-x2)A”x2MPO4の実験式で表されるかんらん石化合物の少なくとも一方を含む混合物を含む。別の態様において、正極活物質は、LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3CO1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるコバルト酸リチウム;およびLi(1+x7)Mn2-Y7Oz7の実験式を有するマンガン酸塩スピネルを含む混合物を含む。リチウムイオン電池および電池パックは、各々独立して、上記の正極活物質を含む正極を使用する。リチウムイオン電池を形成する方法は、上記の正極活物質を形成する工程; 正極活物質を有する正極電極を形成する工程; および電解液を介して正極と電気的に接触している負極電極を形成する工程を含む。システムは、携帯用電子装置および上記のバッテリーパックまたはリチウムイオン電池を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2004年12月28日に出願された米国仮特許出願第60/639,275号、2005年5月12日に出願された米国仮特許出願第60/680,271号;および2005年7月14日に出願された米国仮特許出願第60/699,285号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/639,275号および第60/680,271号の全体の教示は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
リチウムイオン充電池等の充電池は、携帯電話、ポータブルコンピュータ、カムコーダー、デジタルカメラ、PDA等のような電池式携帯電子装置用の電源として、広く用いられている。かかる携帯電子装置用の典型的なリチウムイオンバッテリーパックは、並列に、かつ直列に配置される複数のセルを使用する。例えば、リチウムイオンバッテリーパックは、直列に接続されるいくつかのブロックを含み得、各ブロックは並列に接続される1つ以上のセルを含む。各ブロックは典型的に、ブロックの電圧レベルをモニターする電子制御を有する。理想的な配置において、バッテリーパックに含まれる各セルは同一である。しかし、セルが古くなりサイクルされるとき、セルは初めの理想的な状態からはずれる傾向にあり、不均衡(例えば、非同一的な容量、インピーダンス、放電率および充電率)なセルパックをもたらす。セル間のこの不均衡は、充電池の通常の操作の間に過充電または過放電を引き起こし得、次に爆発(すなわち急速なガス放出および火事の可能性)等の安全性への懸念を強要し得る。
【0003】
伝統的に、従来のリチウムイオン充電池は、リチウムイオン電池正極の活性構成要素としてLiCoO2型物質を使用している。LiCoO2型正極活物質を使用するかかるリチウムイオンセルを完全に充電させるために、充電電圧は通常4.20Vである。充電電圧がより小さいと、容量はより小さく、LiCoO2活物質の利用がより低いことと一致する。一方、充電電圧がより大きいと、セルはさほど安全ではない。一般に、LiCoO2系のリチウムイオンセルが、例えば約3Ahよりも高い大きな容量を有することは、安全性への懸念が大きいために、難題である。安全性への懸念を小さくするために、充電電圧を小さくすることは1つの選択肢である。しかし、これはセル容量を小さくし、次にセルエネルギー密度を小さくする。高容量を得るために、1つのバッテリーパックにおけるセル数を増加させることは、充電電圧を増大させるよりもむしろ別の選択肢であり得る。しかしながら、セル数の増加は、セル間の増大した不均衡の可能性をもたらし得、上記したように、通常の操作の間に過充電または過放電を引き起こし得る。
【0004】
現在、産業において典型的に用いられる最も大きな主流のセルは、いわゆる「18650」セルである。このセルは、約18mmの外径および65mmの長さを有する。典型的に、18650セルはLiCoO2を利用し、1800mAh〜2400mAhの容量を有するが、2600mAhと同等の大きさのセルが目下用いられている。LiCoO2と関連する安全性への懸念のために、18650セルよりも大きなセルにおいてLiCoO2を用いることは安全でないと一般に考えられている。18650セルよりも大きい他のセルが当該分野に存在し、例えば、約26mmの外径および65mmの長さを有する「26650」セルである。26650セルは典型的にLiCoO2を含まず、Wh/kgおよびWh/Lの点から、LiCoO2を使用する18650セルよりも悪い能力特徴を有する。
【0005】
したがって、上記した問題を最小限にするか、または克服するリチウムイオン電池のための新規の正極活物質を開発する必要がある。特に、例えば容量および/またはAh/セルにおいて、従来のLiCoO2系電池(例えば18650セル)よりも大きい、大きな電池の製造が可能な新規の正極活物質を開発する必要がある。
【0006】
(発明の概要)
本発明は、一般に(1)コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも1つ;ならびにマンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも1つの混合物を含む正極活物質、(2)かかる正極活物質を有するリチウムイオン電池、(3)かかるリチウムイオン電池を形成する方法、(4)1つ以上のセルを含み、各セルがかかる正極活物質を含むバッテリーパック、ならびに(5)かかるバッテリーパックまたはリチウムイオン電池および携帯電子装置を含むシステムに関する。
【0007】
一態様において、本発明は、電極物質の混合物を含む正極活物質に関する。混合物は、コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも1つ;ならびにマンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも1つを含む。マンガン酸塩スピネルは、Li(1+x1)(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1(式中:
x1は、0.01以上0.3以下である;
y1は、0.0より大きく0.3以下である;
z1は、3.9以上4.1以下である;および
A'は、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表される。かんらん石化合物は、Li(1-x2)A''x2MPO4(式中:
x2は、0.05以上0.2以下であるか、
x2は、0.0以上0.1以下である;および
Mは、鉄、マンガン、コバルトおよびマグネシウムからなる群の少なくとも1種類である;ならびに
A''は、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ニッケルおよびニオブからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表される。
【0008】
別の態様において、本発明は、LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウム;ならびにLi(1+x7)Mn2-y7Oz7(式中x7およびy7は各々独立して、0.0以上1.0以下である;ならびにz7は3.9以上4.2以下である)の実験式で表されるマンガン酸塩スピネルを含む混合物を含む正極活物質に関する。
【0009】
本発明はまた、上記したような正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン電池に関する。正極活物質は、電極物質の混合物を含む。一態様において、混合物は、コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも1つ;ならびにマンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも1つを含む。マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物は、上記の通りである。別の態様において、混合物は、コバルト酸リチウム、LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウム;ならびに上記したようなマンガン酸塩スピネルを含む混合物を含む。電池は約3.0Ah/セルよりも大きい容量を有する。
【0010】
1つ以上のセル、好ましくは複数のセルを含むバッテリーパックもまた本発明に含まれる。バッテリーパックのセル(1つまたは複数)は、上記したような正極活物質を含む。正極活物質は、電極物質の混合物を含む。一態様において、混合物は、コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも1つ;ならびにマンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも1つを含む。マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物は、上記の通りである。別の態様において、混合物は、コバルト酸リチウム、LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウム;ならびに上記したようなマンガン酸塩スピネルを含む混合物を含む。好ましくは、バッテリーパックは多数のセルを含み、複数のセルの少なくとも1つのセルは約3.0Ah/セルよりも大きい容量を有する。
【0011】
上記のような正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン電池の形成方法もまた、本発明に含まれる。該方法は、上記のような正極活物質を形成する工程を含む。該方法はさらに、正極活物質を有する正極電極を形成する工程;および電解液を介して正極電極と電気的接触する負極電極を形成し、それによりリチウムイオン電池を形成する工程を含む。
【0012】
上記のような携帯電子装置およびバッテリーパックを含むシステムもまた、本発明に含まれる。
【0013】
正極における2つ以上の種々の型の正極活物質の新規なブレンドを使用する、本発明のリチウムイオン電池は、リチウムイオン電池正極の活物質としてLiCoO2のみを使用する従来のリチウムイオン電池よりも、安全な化学的特徴を有する。特に本発明の正極活物質は、エネルギー密度および出力密度の点から一部その安全性および高容量のために、これら携帯装置に使用するための、例えば18650セルよりも大きい、大きな電池の製造を可能とする。本発明はまた、一部より低い正極コストのために、および一部より低い電気コストのために、今日の産業で一般的なもの(例えば18650セル)と比較して、より大きなセルの経済的な製造を可能にする。これら高容量型セルは、全体的な安全性を犠牲にすることなくより低いコストを可能にする。これら高容量型セルは、次に、充電制御に必要な電子部品の数を最小限にし得、直列にまたは並列に接続された複数のセルを利用するバッテリーパックに対して全体的な電子部品コストを低くし得る。
【0014】
本発明は、ポータブルコンピュータ、携帯電話および携帯用電動ツール(power tool)等の移動式電子装置に用いられ得る。本発明はまた、ハイブリッド電気自動車の電池にも用いられ得る。
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明の前記ならびに他の目的、特徴、および利点は、同様の参照文字が異なる図において同一の部分を表す添付図面に例証されるように、以下の本発明の好ましい態様のより詳細な記載から明白になるであろう。図面は必ずしも一定の比例尺ではなく、その代わり本発明の原理を例証することに重点を置く。
【0016】
一態様において、本発明は、リチウムを可逆的に挿入および抽出し得るリチウムイオン電池の電極に使用され得る正極活物質混合物に関する。正極活物質は、コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも1つ;ならびにマンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも1つを含む混合物を含む。
【0017】
本発明に用いられ得るニッケル酸リチウムは、Li原子もしくはNi原子のどちらか、または両方の少なくとも1つのモディファイア(modifier)を含む。本明細書に用いられる場合、「モディファイア」とは、LiNiO2の結晶構造において、Li原子もしくはNi原子の位置、または双方を占める置換原子を意味する。一態様において、ニッケル酸リチウムは、Li原子のモディファイア(「Liモディファイア」)のみを含む。別の態様において、ニッケル酸リチウムは、Ni原子のモディファイア(「Niモディファイア」)のみを含む。さらに別の態様において、ニッケル酸リチウムは、LiおよびNiモディファイアの両方を含む。Liモディファイアの例としては、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)が挙げられる。Niモディファイアの例としては、Liに対するモディファイア、さらにアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)およびホウ素(B)が挙げられる。Niモディファイアの他の例としては、コバルト(Co)およびチタン(Ti)が挙げられる。好ましくは、ニッケル酸リチウムは、LiCoO2で被覆されている。被覆は傾斜(gradient)被覆またはスポットワイズ(spot-wise)被覆であり得る。
【0018】
本発明に用いられ得るニッケル酸リチウムの1つの特定の型は、Lix3Ni1-z3M'z3O2(式中0.05<x3<1.2および0<z3<0.5、ならびにM'は、Co、Mn、Al、B、Ti、Mg、CaおよびSrからなる群より選択される1つ以上の元素である)の実験式で表される。好ましくは、M'は、Mn、Al、B、Ti、Mg、CaおよびSrからなる群より選択される1つ以上の元素である。
【0019】
本発明に用いられ得るニッケル酸リチウムの別の特定の型は、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x4は約0.1以上約1.3以下である;x5は0.0以上約0.2以下である;y4は0.0以上約0.2以下である;z4は0.0以上約0.2以下である;aは約1.5より大きく約2.1未満である;A*は、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)からなる群の少なくとも1種類である;ならびにQは、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)およびホウ素(B)からなる群の少なくとも1種類である)の実験式で表される。好ましくは、y4は0より大きい。一つの好ましい態様において、x5は0と等しく、z4は0.0より大きく約0.2以下である。別の態様において、z4は0と等しく、x5は0.0より大きく約0.2以下である。さらに別の態様において、x5およびz4は各々独立して、0.0より大きく約0.2以下である。さらに別の態様において、x5、y4およびz4は各々独立して、0.0より大きく約0.2以下である。x5、y4およびz4が各々独立して、0.0より大きく約0.2以下であるニッケル酸リチウムの種々の例は、米国特許第6,855,461号および6,921,609号(その全教示は、参照として本明細書に援用される)に見出せ得る。
【0020】
ニッケル酸リチウムの具体例は、LiNi0.8Co0.15AlO.05O2である。好ましい具体例は、LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2である。スポットワイズ被覆した正極は、ニッケル酸塩コア粒子の頂部が十分に被覆されていないLiCoO2を有するため、より高活性なニッケル酸塩は不活性化され、それ故により安全となる。LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2の組成は、組成において、Ni:Co:Al間の0.8:0.15:0.05比から自然に少し偏る。偏差は、Niに対しておよそ10〜15%、Coに対して5〜10%、およびAlに対して2〜4%であり得る。
【0021】
ニッケル酸リチウムの別の具体例は、Li0.97Mg0.03Ni0.9Co0.1O2である。好ましい具体例は、LiCoO2被覆Li0.97Mg0.03Ni0.9Co0.1O2である。スポットワイズ被覆した正極は、ニッケル酸塩コア粒子の頂部が十分に被覆されていないLiCoO2を有するため、より高活性なニッケル酸塩は不活性化され、それ故により安全となる。LiCoO2被覆Li0.97Mg0.03Ni0.9Co0.1O2の組成は、組成において、Mg:Ni:Co間の0.3:0.9:0.1比から自然に少し偏る。偏差は、Mgに対しておよそ2〜4%、Niに対して10〜15%、およびCoに対して5〜10%であり得る。
【0022】
本発明に用いられ得る別の好ましいニッケル酸塩は、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2であり、それはまた「333型ニッケル酸塩」とよばれる。この333型ニッケル酸塩は、上記したように、任意にLiCoO2で被覆され得る。
【0023】
本発明に用いられ得るコバルト酸リチウムの適当な例としては、LiおよびCo原子の少なくとも1つのモディファイアで変更(modify)されるLiCoO2を含む。LiNiO2のLiに対するLiモディファイアの例は、上記の通りである。Coモディファイアの例としては、Liに対するモディファイアおよびアルミニウム(Al)、マンガン(Mg)およびホウ素(B)が挙げられる。他の例としては、ニッケル(Ni)およびチタン(Ti)が挙げられる。特に、LiX6M'(1-y6)Co(1-z6)M''z6O2(式中x6は0.05より大きく1.2未満である;y6は0以上0.1未満である;z6は0以上0.5未満である;M'は、マグネシウム(Mg)およびナトリウム(Na)の少なくとも1種類である、ならびにM''は、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)からなる群の少なくとも1種類である)の実験式で表されるコバルト酸リチウムが本発明に用いられ得る。
【0024】
本発明に用いられ得るコバルト酸リチウムの別の例として、LiCoO2が挙げられる。
【0025】
パッキングおよび生産特性を向上させるので、化合物は球状様形態を有することが特に好ましい。
【0026】
好ましくは、各コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの結晶構造は、独立して、R-3m型空間群(変形した(distorted)菱面体晶を含む菱面体晶)である。あるいは、ニッケル酸リチウムの結晶構造は、単斜晶系空間群(例えばP2/mまたはC2/m)中に存在し得る。R-3m型空間群において、リチウムイオンは「3a」サイト(x=0、y=0およびz=0)を占め、遷移金属イオン(すなわちニッケル酸リチウム中のNi、およびコバルト酸リチウム中のCo)は「3b」サイト(x=0、y=0、z=0.5)を占める。酸素は「6a」サイト(x=0、y=0、z=z0、式中z0は金属イオンのモディファイア(1つまたは複数)を含む、金属イオンの種類によって変化する)に配置される。
【0027】
本発明に用いられ得るかんらん石化合物は、通常、一般式Li1-x2A''x2MPO4(式中x2は0.05以上、またはx2は0.0以上および0.1以上である;Mは、Fe、Mn、CoまたはMgからなる群より選択される1つ以上の元素である;ならびにA''は、Na、Mg、Ca、K、Ni、Nbからなる群より選択される)で表される。好ましくは、MはFeまたはMnである。より好ましくは、LiFePO4もしくはLiMnPO4、または双方が本発明に用いられる。好ましい態様において、かんらん石化合物は、カーボンなどの高い導電率を有する物質で被覆される。より好ましい態様において、カーボン被覆LiFePO4、またはカーボン被覆LiMnPO4が本発明に用いられる。MがFeまたはMnであるかんらん石化合物の種々の例は、米国特許第5,910,382号(その全教示は、参照によって本明細書に援用される)に見出し得る。
【0028】
かんらん石化合物は、充電/放電の際、結晶構造において典型的に小さな変化を有し、それがサイクル特性の点からかんらん石化合物を優れたものとする。また、電池が高温度の環境に曝されるときでさえ、安全性は一般に高い。かんらん石化合物(例えば、LiFePO4およびLiMnPO4)の他の利点は、それらの比較的低いコストである。
【0029】
マンガン酸塩スピネル化合物は、LiMn2O4などのマンガン主成分を有する。マンガン酸塩スピネル化合物は、典型的に(例えば、約120〜130mAh/gの範囲内にて)低比容量を有するが、それらは電極に作製されるときに高い電力送達を有し、より高温での化学反応の点から典型的に安全である。マンガン酸塩スピネル化合物の別の利点は、それらの比較的低いコストである。
【0030】
本発明に用いられ得るマンガン酸塩スピネル化合物の1つの型は、Li1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x10z1(式中A'は、1つ以上のMg、Al、Co、NiおよびCrである;x1は、0.01以上0.3以下である;y1は、0.0より大きく0.3以下である;z1は、3.9以上4.1以下である)の実験式で表される。好ましくは、A'としては、Al3+、Co3+、Ni3+およびCr3+などのM3+イオンが挙げられ、より好ましくはAl3+である。一具体例としては、LiMn1.9Al0.1O4が挙げられる。Li1+X1(Mn1-y1A'yI)2-X1Oz1のマンガン酸塩スピネル化合物は、LiMn2O4のマンガン酸塩スピネル化合物と比較して、向上したサイクル能力(cyclability)および電力を有し得る。この型のマンガン酸塩スピネルの例としては、Li1+XMn2-xO4ならびにAlおよびMgモディファイアを有するその変形物が挙げられる。Li1+X1(Mn1-y1A'yI)2-X1Oz1型のマンガン酸塩スピネル化合物の種々の例は、米国特許第4,366,215号、5,196,270号、5,316,877号(その全教示は、参照によって本明細書に援用される)に見出され得る。
【0031】
本発明の正極活物質は、上記した2種類以上の正極活性構成要素(例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物)を、好ましくは粉末形態で混合することで調製され得る。一般に、LiFePO4等のかんらん石化合物、Li1+X1(Mn1-y1A'y1)2-X1Oz1等のマンガン酸塩スピネル化合物、およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2等のニッケル酸リチウムは、高い安全性を有する。一般に、LiCoO2等のコバルト酸リチウム、およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2等のニッケル酸リチウム、ならびにLix4Ni1-y4-z4Coy4Qz4Oa型の化合物は高エネルギー密度を有する。本発明の正極物質に対するいくつかの正極構成要素の一般特性が、表1に要約される。

【0032】
本発明の正極物質の特徴は、容量、サイクル能力および安全性に関する。例えば、本発明の正極物質は、充電/放電率および他の外部条件、例えば電解液の選択および電極作製によって異なる容量を示し得る。「容量」とは、本明細書では、リチウム系物質、例えば本発明のようなものの結晶構造から、可逆的に取り出し得るLiイオンの数として規定される。本明細書で定義される場合、「可逆性」とは、構造が実質的にその完全性を維持し、最初の結晶構造を元に戻すためにLiが挿入され得ることを意味する。理論上、これは非常に小さい割合での容量の定義である。本明細書で定義される場合、「安全性」とは、構造的安定性または構造的完全性を意味する;物質がサイクル工程中に分解するか、もしくは容易に分解されるか、または上昇した温度にてガス発生(gassing)を引き起こす場合、特に分解もしくはガス発生がセルの内部で熱暴走反応の開始を導くか、または内圧上昇を生じる場合、物質は安全でないとみなされる。分極挙動は、容量にさらなる別の寸法を加え、リチウムイオン電池の能力に対する分極挙動の効果は、リチウムイオンセルとバッテリーパックの制御電子回路との相互作用またはリチウムイオンセルを用いる圧着装置(application device)によって測定される。
【0033】
高エネルギーおよび高電力、ならびに十分な安全性に適した電極の作製は、本発明の正極活物質の特定比の構成要素(すなわち、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物)で達成され得る。
【0034】
一態様において、本発明の正極活物質は、Li原子もしくはNi原子のいずれか、または両方の少なくとも1つのモディファイアを含むニッケル酸リチウムを含む。好ましくは、ニッケル酸リチウムは、上記のLix3Ni(1-z3)M'z3O2の実験式で表される。あるいは、ニッケル酸リチウムは、上記のLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaの実験式で表される。具体例において、ニッケル酸リチウムは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)の実験式で表される。ニッケル酸リチウムの具体例は、上記の通りである。
【0035】
第2の態様において、本発明の正極活物質は、上記のLix6Co(1-z6)M''z6O2の実験式で表されるコバルト酸リチウムを含む。コバルト酸リチウムの具体例は、上記の通りである。
【0036】
第3の態様において、本発明の正極活物質は、上記のLi(1-x2)A''x2MPO4の実験式で表されるかんらん石化合物を含む。かんらん石化合物の具体例は、上記の通りである。好ましい態様において、Mは鉄またはマグネシウムである。好ましい態様において、かんらん石化合物はカーボンで被覆されている。
【0037】
第4の態様において、本発明の正極活物質は、LiCoO2等のコバルト酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルを含む。その具体例を含むコバルト酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、上記の通りである。好ましくは、コバルト酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、コバルト酸リチウム:マンガン酸塩スピネルの比において、約0.8:0.2〜約0.4:0.6である。第4の態様の一例において、マンガン酸塩スピネルは、Li1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表される。第4の態様の別の例において、マンガン酸塩スピネルはLi1+x7Mn2-x704、好ましくはLiMn2O4で表される。
【0038】
第5の態様において、本発明の正極活物質は、ニッケル酸リチウムおよび上記のLi1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表されるマンガン酸塩スピネルを含む。具体例を含むニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、上記の通りである。好ましくは、ニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、ニッケル酸リチウム:マンガン酸塩スピネルの比において、約0.9:0.1〜約0.3:0.7である。第5の態様の一例において、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2またはLi0.97Mg0.03Ni0.9Co0.102である。好ましくは、ニッケル酸リチウムは、LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2またはLi0.97Mg0.03Ni0.9Co0.102である。LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2またはLi0.97Mg0.03Ni0.9Co0.102が用いられるとき、ニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、好ましくは、マンガン酸塩スピネルに対するニッケル酸リチウムの比において、約0.9:0.1〜約0.3:0.7である。Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2が用いられるとき、ニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、好ましくは、ニッケル酸リチウム:マンガン酸塩スピネルの比において、約0.7:0.3〜約0.3:0.7である。
【0039】
第6の態様において、本発明の正極活物質は、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2およびLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2からなる群より選択される、少なくとも1つのニッケル酸リチウム;およびLi1+x7Mn2-y70z7、好ましくはLiMn2O4で表されるマンガン酸塩スピネルを含む。好ましくは、ニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、ニッケル酸リチウム:マンガン酸塩スピネルの比において、約0.9:0.1〜約0.3:0.7である。Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2が用いられるとき、ニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、ニッケル酸リチウム:マンガン酸塩スピネルの比において、約0.9:0.1〜約0.5:0.5である。
【0040】
第7の態様において、本発明の正極活物質は、LiCoO2等のコバルト酸リチウム、マンガン酸塩スピネルおよびニッケル酸リチウムを含む。具体例を含むコバルト酸リチウム、マンガン酸塩スピネルおよびニッケル酸リチウムは、上記の通りである。好ましくは、コバルト酸リチウム、マンガン酸塩スピネルおよびニッケル酸リチウムは、コバルト酸リチウム:マンガン酸塩スピネル:ニッケル酸リチウムの比において、約0.05〜約0.8:約0.05〜約0.7(例えば、約0.05〜約0.3、または約0.3〜約0.7):約0.05〜約0.9(例えば、約0.4〜約0.9、または約0.05〜約0.8)である。一例において、ニッケル酸リチウムは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaで表される。第2の例において、ニッケル酸リチウムは、Lix3Ni(1-z3)M'z3O2、より好ましくは、LiCoO2で傾斜またはスポットワイズ被覆されたLiNi0.8Co0.15Al0.05O2で表される。第3の例において、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2である。第4の例において、ニッケル酸リチウムは、Li原子およびNi原子両方の少なくとも1つのモディファイア、例えばLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)を含み、マンガン酸塩スピネルはLi1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表される。好ましくは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4OaおよびLi1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1が用いられるとき、コバルト酸リチウム、マンガン酸塩スピネルおよびニッケル酸リチウムは、コバルト酸リチウム:マンガン酸塩スピネル:ニッケル酸リチウムの比において、約0.05〜約0.30:約0.05〜約0.30:約0.4〜約0.9である。第5の例において、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2または任意にLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2であり、マンガン酸塩スピネルはLi1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表される。この第5の例において、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2が用いられるとき、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、Li1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1、およびコバルト酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2:Li1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1:コバルト酸リチウムの比において、約0.05〜約0.8:約0.3〜約0.7:約0.05〜約0.8である。
【0041】
第8の態様において、本発明の正極活物質は、2つ以上のニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルを含む。具体例を含むニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、上記の通りである。好ましくは、ニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、ニッケル酸リチウム:マンガン酸塩スピネルの比において、約0.05〜約0.8:約0.05〜約0.9である。好ましくは、マンガン酸塩スピネルは、Li1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表される。一例において、ニッケル酸リチウムは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaで表されるニッケル酸リチウムを含む。別の例において、ニッケル酸リチウムは、Lix3Ni(1-z3)M'z3O2で表されるニッケル酸リチウムを含む。あるいは、ニッケル酸リチウムは、Li原子およびNi原子両方の少なくとも1つのモディファイアを含むニッケル酸リチウム、例えばLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)を含む。具体例において、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2およびLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaで表されるニッケル酸リチウムを含む。別の具体例において、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2;ならびにLi原子およびNi原子両方の少なくとも1つのモディファイアを含むニッケル酸リチウム、例えばLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)を含む。さらに別の具体例において、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2およびLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaで表されるニッケル酸リチウムを含み、マンガン酸塩スピネルはLi1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表される。この具体例において、ニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2:Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa:Li1+x1(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1の比において、約0.05〜約0.8:約0.05〜約0.7:約0.05〜約0.9である。
【0042】
第9の態様において、本発明の正極活物質は、LiCoO2等のコバルト酸リチウム、および好ましくはカーボンで被覆された、上記のLi(1-x2)A''x2MPO4で表されるかんらん石化合物を含む。具体例を含むコバルト酸リチウムおよびかんらん石化合物は、上記の通りである。好ましくは、コバルト酸リチウムおよびかんらん石化合物は、コバルト酸リチウム:かんらん石化合物の比において、約0.9:0.1〜約0.3:0.7である。一例において、かんらん石化合物はLi(1-x2)A''x2MPO4(式中、Mは、LiFePO4およびLiMnPO4等の鉄またはマンガンである)で表される。この例において、好ましくは、コバルト酸リチウムおよびかんらん石化合物は、コバルト酸リチウム:かんらん石化合物の比において、約0.8:0.2〜約0.4:0.6である。
【0043】
第10の態様において、本発明の正極活物質は、ニッケル酸リチウム、および好ましくはカーボンで被覆された、上記のLi(1-x2)A''x2MPO4で表されるかんらん石化合物を含む。具体例を含むニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物は、上記の通りである。好ましくは、ニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物は、ニッケル酸リチウム:かんらん石化合物の比において、約0.9:0.1〜約0.3:0.7である。一例において、かんらん石化合物はLi(1-x2)A''x2MPO4(式中、Mは、LiFePO4およびLiMnPO4等の鉄またはマンガンである)で表される。第2の例において、ニッケル酸リチウムは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaで表されるニッケル酸リチウムを含む。第3の例において、ニッケル酸リチウムは、Lix3Ni(1-z3)M'z3O2で表されるニッケル酸リチウムを含む。あるいは、ニッケル酸リチウムは、Li原子およびNi原子両方の少なくとも1つのモディファイアを含むニッケル酸リチウム、例えばLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)を含む。具体例において、ニッケル酸リチウムはLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2であり、かんらん石化合物はLi(1-x2)A''x2MPO4(式中、Mは鉄またはマンガンである)で表される。好ましくは、第2の例において、ニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物は、ニッケル酸リチウム:かんらん石化合物の比において、約0.9:0.1〜約0.5:0.5である。第2の具体例において、ニッケル酸リチウムは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa、好ましくは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)で表され、かんらん石化合物は、Li(1-x2)A''x2MPO4(式中Mは鉄またはマンガンである)で表される。第3の具体例において、ニッケル酸リチウムは、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、好ましくはLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2であり、かんらん石化合物は、Li(1-x2)A''x2MPO4(式中Mは鉄またはマンガンである)で表される。好ましくは、第3の具体例において、ニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物は、ニッケル酸リチウム:かんらん石化合物の比において、約0.9:0.1〜約0.3:0.7である。
【0044】
第11の態様において、本発明の正極活物質は、2つ以上のニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物を含み、好ましくは、かんらん石化合物はLi(1-x2)A''x2MPO4(式中Mは鉄またはマンガンである)で表される。具体例を含むニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物は、上記の通りである。好ましくは、かんらん石化合物はカーボンで被覆されている。この態様において、ニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物は、ニッケル酸リチウム:かんらん石化合物の比において、約0.05〜0.9:約0.05〜0.9である。一例において、ニッケル酸リチウムは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaで表されるニッケル酸リチウムを含む。別の例において、ニッケル酸リチウムは、Lix3Ni(1-z3)M'z3O2で表されるニッケル酸リチウムを含む。あるいは、ニッケル酸リチウムは、Li原子およびNi原子両方の少なくとも1つのモディファイアを含むニッケル酸リチウム、例えばLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)を含む。具体例において、ニッケル酸リチウムは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)の実験式で表される。一具体例において、かんらん石化合物はLi(1-x2)A''x2MPO4(式中Mは、LiFePO4およびLiMnPO4等の鉄またはマンガンである)で表され、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、およびLi原子およびNi原子両方の少なくとも1つのモディファイアを含むニッケル酸リチウム、例えばLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)を含む。この例において、ニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物は、好ましくは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2:ニッケル酸リチウム:かんらん石化合物の比において、約0.05〜約0.8:約0.05〜約0.7:約0.05〜約0.9である。
【0045】
第12の態様において、本発明の正極活物質は、ニッケル酸リチウム、LiCoO2等のコバルト酸リチウム、および上記のLi(1-x2)A''x2MPO4で表されるかんらん石化合物を含む。具体例を含むニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウムおよびかんらん石化合物は、上記の通りである。この態様において、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウムおよびかんらん石化合物は、好ましくは、コバルト酸リチウム:かんらん石化合物:ニッケル酸リチウムの比において、約0.05〜約0.8:約0.05〜約0.7:約0.05〜約0.9である。一例において、ニッケル酸リチウムは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaで表されるニッケル酸リチウムを含む。別の例において、ニッケル酸リチウムは、Lix3Ni(1-z3)M'z3O2で表されるニッケル酸リチウムを含む。あるいは、ニッケル酸リチウムは、Li原子およびNi原子両方の少なくとも1つのモディファイアを含むニッケル酸リチウム、例えばLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4は、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)を含む。一具体例において、ニッケル酸リチウムは、Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa、好ましくは、x5、y4およびz4が、各々独立して0.0より大きく約0.2以下であるLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaで表され、かんらん石化合物は、Li(1-x2)A''x2MPO4(式中Mは鉄またはマンガンである)で表される。この具体例において、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウムおよびかんらん石化合物は、好ましくは、コバルト酸リチウム:かんらん石化合物:ニッケル酸リチウムの比において、約0.05〜約0.30:約0.05〜約0.30:約0.4〜約0.9である。第2の具体例において、ニッケル酸リチウムはLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2であり、かんらん石化合物はLi(1-x2)A''x2MPO4(式中、Mは鉄またはマンガンである)で表される。第2の具体例において、好ましくは、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウムおよびかんらん石化合物は、ニッケル酸リチウム:かんらん石:コバルト酸リチウムの比において、約0.05〜0.8:約0.3〜0.7:約0.05〜0.8である。第3の具体例において、ニッケル酸リチウムは、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、好ましくはLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2であり、かんらん石化合物は、Li(1-x2)A''x2MPO4(式中Mは鉄またはマンガンである)で表される。
【0046】
第13の態様において、本発明の正極活物質は、マンガン酸塩スピネル、かんらん石化合物、好ましくはLi(1-x2)A''x2MPO4(式中Mが鉄またはマンガンである)で表されるかんらん石化合物、およびニッケル酸リチウムを含む。具体例を含むマンガン酸塩スピネル、かんらん石化合物およびニッケル酸リチウムは、上記の通りである。この態様において、マンガン酸塩スピネル、かんらん石化合物およびニッケル酸リチウムは、好ましくは、マンガン酸塩スピネル:かんらん石:ニッケル酸リチウムの比において、約0.05〜0.9:約0.05〜0.9:約0.05〜0.9である。一例において、マンガン酸塩スピネルはLi(1+x1)(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表される。別の例において、マンガン酸塩スピネルはLi1+x7Mn2-x704、好ましくはLiMn2O4で表される。一具体例において、マンガン酸塩スピネルはLi(1+x1)(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表され、ニッケル酸リチウムは、Li原子およびNi原子両方の少なくとも1つのモディファイア、例えばLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4が、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)で表されるニッケル酸リチウムを含む。第2の具体例において、マンガン酸塩スピネルはLi(1+x1)(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表され、ニッケル酸リチウムはLix3Ni(1-z3)M'z3O2、好ましくはLiNi0.8Co0.15Al0.05O2、より好ましくはLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2で表される。第3の具体例において、マンガン酸塩スピネルはLi(1+x1)(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1で表され、ニッケル酸リチウムはLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2である。第4の具体例において、マンガン酸塩はLi1+x7Mn2-x7O4、好ましくはLi1+xMn2-xO4、ならびにAlおよびMgで変更されたその変形物で表され、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2およびLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2からなる群より選択される。
【0047】
第14の態様において、本発明の正極活物質は、上記のように2つ以上のニッケル酸リチウムを含む。一例において、正極活物質はLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2を含む。具体例において、正極活物質はLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、およびLi原子およびNi原子両方の少なくとも1つのモディファイアを含むニッケル酸リチウム、例えばLix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oa(式中x5、y4およびz4が、各々独立して0.0より大きく約0.2以下である)で表されるニッケル酸リチウムを含む。好ましくは、この例では、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2:Lix4A*x5Ni(1-y4-z4)Coy4Qz4Oaの比において、約0.7:0.3〜約0.3:0.7である。別の具体例において、正極活物質は、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2およびLiNi0.8Co0.15Al0.05O2、より好ましくはLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2を含む。好ましくは、この例では、ニッケル酸リチウムは、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2:LiNi0.8Co0.15Al0.05O2の比において、約0.8:0.2〜約0.2:0.8である。
【0048】
本発明の別の局面は、上記した本発明の正極活物質を使用するリチウムイオン電池に関する。好ましくは、電池は約2.2Ah/セルより大きい容量を有する。より好ましくは、電池は、約3.0Ah/セルより大きい容量、例えば約3.3Ah/セル以上;約3.5Ah/セル以上;約3.8Ah/セル以上;約4.0Ah/セル以上;約4.2Ah/セル以上;約3.0Ah/セル〜約6Ah/セル;約3.3Ah/セル〜約6Ah/セル;約3.3Ah/セル〜約5Ah/セル;約3.5Ah/セル〜約5Ah/セル;約3.8Ah/セル〜約5Ah/セル;および約4.0Ah/セル〜約5Ah/セルを有する。
【0049】
一態様において、本発明の電池は、コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも1つ;ならびに上記したLi(1+x1)(Mn1-y1A'y1)2-x1Oz1の実験式で表されるマンガン酸塩スピネル、および上記したLi(1-x2)A''x2MPO4の実験式で表されるかんらん石化合物の少なくとも1つを含む混合物を含む正極活物質を含む。別の態様において、本発明の電池は、コバルト酸リチウムおよびLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2とLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウムの少なくとも1つ;ならびに上記したLi(1+x7)Mn2-y70z7の実験式を有するマンガン酸塩スピネルを含む混合物を含む正極活物質を含む。さらに別の態様において、本発明の電池は、LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウム;ならびに上記したLi(1+x7)Mn2-y70z7の実験式を有するマンガン酸塩スピネルを含む混合物を含む正極活物質を含む。各々が独立している電池は、上記のような、好ましくは約3.0Ah/セルより大きい容量を有する。
【0050】
好ましい態様において、本発明の電池のためのセル構築は、Ah/セルの点から、18650セルの場合のように産業で現在用いられているものより大きな形式を利用する。
【0051】
図1は、円筒型リチウムイオン電池(10)を示し、それはアルミニウムホイル上を被覆した正極(1)、銅ホイル上を被覆した負極(2)、正極および負極間に配置されたセパレーター(3)、巻きつけられた構成要素を含む缶(4)、缶上が波形(crimped)になった(5b)電気的に絶縁された(缶からの)頂部(5a)(頂部は電流遮断素子CID、およびベント(5c)を含み得る)、負極と頂部とを電気的に接続するニッケル導線、および正極と缶とを電気的に接続するアルミニウム導線(6)を含む。PTCスイッチ(7)は、缶の内側または外側に配置され得る。ホイル同士が接触するのを妨げ得る絶縁体もまた、缶の頂部(8)および底部(9)に配置され、ホイル末端を缶から遮断する。
【0052】
負極活物質(負極)は、リチウムを物質中に挿入し得るか、または物質から取り出し得る任意の物質を含み得る。かかる物質の例としては、炭素系物質、例えば非グラファイト系カーボン、人工カーボン、天然グラファイト、熱分解性カーボン、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等のコークス、グラファイト、ガラス状カーボン、またはフェノール樹脂、フラン樹脂、もしくは同一の炭素繊維を炭化することで得られる熱処理有機ポリマー化合物、および活性炭が挙げられる。さらに、金属リチウム、リチウム合金、およびその合金または化合物が、負極活物質として有用である。特に、リチウムと共に合金もしくは化合物を形成し得る金属元素または半導体素子は、限定されないが、ケイ素もしくはスズ等、第四族金属元素または半導体素子であり得る。特に、コバルトもしくは鉄/ニッケル等の遷移金属がドープされた非晶質スズは、これらの型の電池における負極物質に対して高い有望性を有する金属である。比較的低ポテンシャルで、リチウムを酸化物中に挿入し得るか、または酸化物から取り出し得る、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタニウム、および酸化スズ等の酸化物および窒化物は、同様に負極活物質として有用であり得る。
【0053】
本発明の電池またはセルの正極は、上記した本発明の正極活物質を含む。特に本発明の電池は、ニッケル酸リチウム(例えば、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2もしくはLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)、またはコバルト酸リチウム(例えばLiCoO2)の高比容量;かんらん石化合物(例えばLiFePO4)またはマンガン酸塩スピネル(例えばLiMn2O4)の比較的高い安全性、の2つ以上の利点を含む正極活物質を使用する。本発明の正極活物質が、本発明のリチウム電池における使用のために正極構造に用いられるとき、得られる電池は十分に安全であり、Wh/kgおよび/またはWh/Lの点から高容量を有する。本発明のセルは、現在入手可能な18650セル(すなわち183665形状因子(form factor))と比較して、絶対容積およびAh/セルの両方の点から、より大きな形状因子を典型的に有する。増大したセルサイズおよび容量が、混合した正極の比較的より高い安全性によって、少なくとも部分的に可能となる。リチウム電池用の本発明のセルは、正極物質としてLiCoO2のみを利用する対応のセルよりも安全な特性を有し得るが、該セルは同様の容量、またはより高容量を有する。
【0054】
混合物中の各正極成分は、特有の化学的性質を有するので、各化学物質のSEI形成に適した添加剤を有する電解質を有することは、特に重要である。例えば、マンガン酸塩スピネルおよびコバルト酸リチウムを含有する正極、ならびにグラファイトを含有する負極を有する、電池に適切な電解質は、これらの型の化合物に適するLiBOB、PSおよびVCの添加剤を含み得る。
【0055】
非水性電解質の例としては、電解質塩を非水性溶媒に溶解させることで調製される非水性電解液溶液、固体電解質(電解質塩を含む無機電解質またはポリマー電解質)、および電解質をポリマー化合物等に混合もしくは溶解させることで調製される固体またはゲル様電解質が挙げられる。
【0056】
非水性電解液溶液は、塩を有機溶媒に溶解させることによって調製される。有機溶媒は、一般にこの型の電池に用いられる任意の適切な型を含み得る。かかる有機溶媒の例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、アセテート、ブチレート、プロピオネート等が挙げられる。プロピレンカーボネート等の環状カーボネート、またはジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネート等の直鎖カーボネートを用いるのが好ましい。これらの有機溶媒は単独で、または2種以上の組み合わせで用いられ得る。
【0057】
VC(ビニルカーボネート)、VEC(ビニルエチレンカーボネート)、EA(エチレンアセテート)、TPP(トリフェニルホスフェート)、ホスファゼン、LiBOB、LiBETI、LiTFSI、BP(ビフェニル)、PS(プロピレンサルファイト)(propylene sulfite)、ES(エチレンサルファイト)、AMC(アリルメチルカーボネート)、およびAPV(ジビニルアジペート)等の添加剤または安定剤もまた、電解質中に存在し得る。これらの添加剤は、負極および正極安定剤または難燃剤として用いられ、形成、サイクル効率、安全性および寿命の点で、電池がより高い性能を有し得る。混合物における各正極構成要素は、特有の化学的性質を有するので、各化学物質のSEI形成に適した添加剤を有する電解質を有することは、特に重要である。例えば、スピネルとコバルト酸塩が混合した正極、およびグラファイト負極を有するリチウムイオン電池に適切な電解質は、それぞれが個々の化合物のSEI形成に適した、LiBOB、PSおよびVC安定剤の添加剤を含み得る。
【0058】
固体電解質は、物質がリチウムイオン伝導性を有する範囲で、無機電解質、ポリマー電解質等を含み得る。無機電解質としては、例えば、窒化リチウム、ヨー化リチウム等が挙げられる。ポリマー電解質は、電解質塩および該電解質塩が溶解されるポリマー化合物で構成される。ポリマー電解質に用いられるポリマー化合物の例として、ポリエチレンオキシドおよび架橋化ポリエチレンオキシド等のエーテル系ポリマー、ポリメタクリレートエステル系ポリマー、アクリレート系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で、または混合物もしくは2種以上のコポリマーの形態で用いられ得る。
【0059】
ゲル電解質のマトリクスは、上記の非水性電解液溶液を吸収することでポリマーがゲル化する限り、任意のポリマーであり得る。ゲル電解質に用いられるポリマーの例として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)等のようなフルオロカーボンポリマーが挙げられる。
【0060】
ゲル電解質に用いられるポリマーの例としてはまた、ポリアクリロニトリルおよびポリアクリロニトリルのコポリマーが挙げられる。共重合に用いられるモノマー(ビニル系モノマー)の例としては、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、イタコン酸、水素化メチルアクリレート、水素化エチルアクリレート、アクリルアミド(acrlyamide)、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、および塩化ビニリデンが挙げられる。ゲル電解質に用いられるポリマーの例としては、さらに、アクリロニトリル-ブタジエンコポリマーゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー樹脂、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-プロピエンジエン-スチレンコポリマー樹脂、アクリロニトリル-塩化ビニルコポリマー樹脂、アクリロニトリル-メタクリレート(methacylate)樹脂、およびアクリロニトリル(acrlylonitrile)-アクリレートコポリマー樹脂が挙げられる。
【0061】
ゲル電解質に用いられるポリマーの例としては、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドのコポリマー、および架橋化ポリエチレンオキシド等のエーテル系ポリマーが含まれる。共重合に用いられるモノマーの例として、ポリプロピレンオキシド、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレートが挙げられる。
【0062】
特に酸化-還元安定性の見地から、フルオロカーボンポリマーが、好ましくは、ゲル電解質のマトリクスに用いられる。
【0063】
電解質に用いられる電解質塩は、この型の電池に適した任意の電解質塩であり得る。電解質塩の例としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiB(C2O4)2、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiCl、LiBr等が挙げられる。
【0064】
図1に戻ると、本発明の一態様において、セパレーター3は正極1を負極2から分離する。セパレーター3としては、一般にこの型の非水性電解質二次電池のセパレーターを形成するのに用いられる任意のフィルム様物質、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、または2つの層状の組み合わせから作られる微孔性ポリマーフィルムが挙げられ得る。さらに、電池10の電解質として、固体電解質またはゲル電解質が用いられる場合、セパレーター3は必ずしも提供される必要はない。ある場合において、ガラス繊維またはセルロース材料から作られた微孔性セパレーターがまた用いられ得る。セパレーターの厚さは、典型的に約9〜25μmである。
【0065】
正極2は、約94wt%の正極物質を約3wt%の導電剤(例えばアセチレンブラック)および約3wt%のバインダー(例えばPVDF)と共に混合することで、典型的に形成される。スラリーを調製するために、混合物を溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP))に分散させる。次いでこのスラリーを、典型的に約20um厚を有するアルミニウム集電箔の両表面に適用し、約100〜150℃にて乾燥させる。次いで、乾燥電極をロールプレスでカレンダーにかけ、圧縮された正極を得る。
【0066】
負極は、典型的に、負極活物質としての約93wt%のグラファイト、約3wt%の導電性カーボン(例えばアセチレンブラック)、および約4wt%のバインダー(例えばPVDF)を混合することで作製される。次いで負極を、典型的に10〜15μm厚である銅集電箔が用いられる以外は、正極に対して上記したものと同様の過程におけるこの混合物から作製する。
【0067】
負極および正極ならびにミクロポアを有し、約25um厚のポリマーフィルム(例えばポリエチレン)から形成されるセパレーターは、積層されており、らせん型電極要素を作り出すためにらせん状に巻きつけられる。好ましくはこのロールは長円形状を有する。
【0068】
1つ以上の正極リード電流タブ(current carrying tab)が、正極集電装置と接続され、次いで電池の頂部と溶接される。ベントもまた、例えば電池の頂部に設置可能である。ニッケル金属でできた負極リード線は、負極集電装置とバッテリー缶の底部とを接続する。
【0069】
例えば1MのLiPF6を有するPC、EC、DMC、DEC溶媒、およびVC、LiBOB、PF、LiTFSI、BP等の適切な添加剤を各0.5〜3wt.%で含有する電解液溶液を、らせん状に巻きつけられた「ゼリーロール(jelly roll)」を有するバッテリー缶4に真空で満たし、次いで電池を絶縁シールガスケット8で密閉する。安全性を高めるために、安全弁5c、電流遮断装置、およびPTC素子もまた電池の頂部に存在し得る。図1に示されるような18mmの外径および65mmの高さを有する、円筒型非水性電解質リチウムイオン二次電池は、産業に用いられるリチウムイオンセルの典型である。
【0070】
図2に示すような長円形状を有するセルでは、電極が作製され、例えば、17または18 mmの厚さ、44または36 mmの幅、65 mmの高さを有する長円形状を有するセルを形成するために巻きつけられる以外は、本発明の円筒状セルで上記のものと同様の方法が使用され得る。
【0071】
本発明のセルまたは電池は、円筒状またはプリズム状(prismatic) (積層もしくは巻きつけられた)、好ましくはプリズム状、より好ましくは、長円であるプリズム状形状であり得る。本発明は、すべての型のプリズム状の缶が使用され得るが、一部、以下に記載する2つの特徴のため、長円缶が好ましい。
【0072】
図5(a)〜5(d)に示すように、183665形状因子などの長円形状の利用可能な内容積は、同じ外容積の積層体を比較した場合、2つの18650セルの容積よりも大きい。特に、図5(a)〜(b)は、長円断面(図5(a))と2つの18650セルの円筒状断面(図5(b))の比較を示す。追加の使用可能な空間は12%である。バッテリーパックに組み立てた場合、長円セルは、バッテリーパックに占められるより多くの空間を充分に利用する。これは、今日の産業において見られるものに対してセル容量を犠牲にすることなく、重要な性能特徴を増大させ得る内部セル構成要素に対する新規な設計変更を可能にする。したがって、パックレベルで高い容量を実現しつつ、より高い安全性だが比較的低い容量である構成要素の混在などの設計特徴が利用可能である。また、これも利用可能な容積がより大きいことにより、比較的長いサイクル寿命を有するより薄い電極の使用が選択され得る。より薄い電極はまた、より高い定格能力(rate capability)を有する。さらにまた、長円(またはプリズム状)の缶は、より長期の柔軟性を有し得る。例えば、長円形状は、円筒状の形状と比べ、ウエスト部分でより柔軟であり得、これは、充電時に積層圧が増加するにつれて、柔軟性が低くなるのを可能にする。柔軟性の増加により、電極上での機械的疲労が減少し、これにより、長いサイクル寿命がもたらされる。また、セパレーター細孔の詰まりは、比較的低い積層圧によって改善される。
【0073】
比較的高い安全性を可能にする特に望ましい特徴は、その断面を図5(c)に示すプリズム状の缶と比べ、長円形状の缶に利用可能である。長円形状は、ゼリーロールに対してとまりばめを提供し、これは、電池に必要な電解液の量を最小限にする。比較的少量の電解液により、誤用の状況での利用可能な反応性材料が少なくなり、したがって安全性が高くなる。また、少量の電解液によりコストも下がる。その断面を図5(d)に示す積層電極構造を有するプリズム状の缶の場合、不必要な電解液なしで全容積の利用が可能であるが、この型の缶設計は、より困難であり、したがって、製造の観点からより高価である。
【0074】
別の局面において、本発明は、本発明のリチウムイオン電池のための、上記のセルを1つ以上含むバッテリーパックに関する。
【0075】
好ましい態様において、バッテリーパックは複数のセルを含み、セルの各々は、上記の正極活物質を含む。本発明のバッテリーパックのセルは、互いに直列もしくは並列に接続されているか、または直列および並列に接続されている(例えば、2つのセルを並列で、および3つのセルを直列で有するパック、いわゆる2p3s構成)。特定の態様において、本発明のバッテリーパックの各セルは、コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに上記の実験式Li(1+x1)(Mn1-y1A’y1)2-x1Oz1で表されるマンガン酸塩スピネルおよび上記の実験式Li(1-x2)A”x2MPO4で表されるかんらん石化合物の少なくとも一方を含む混合物を含む正極活物質を含む。別の特定の態様において、バッテリーパックの各セルは、コバルト酸リチウムならびにLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに上記のLi(1+x7)Mn2-y7Oz7の実験式を有するマンガン酸塩スピネルを含む混合物を含む正極活物質を含む。バッテリーパックの少なくとも1つのセルは、約3.0 Ah/セルより大きい容量を有する。また別の特定の態様において、バッテリーパックの各セルは、LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3CO1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウム; ならびに上記のLi(1+x7)Mn2-y7Oz7の実験式を有するマンガン酸塩スピネルを含む混合物を含む正極活物質を含む。好ましくは、バッテリーパックに含まれるセルの少なくとも1つのセルが、約3.0 Ah/セルより大きい容量を有する。
【0076】
より好ましい態様において、バッテリーパックは、複数のセルを含み、本発明のバッテリーパックのセルは、直列にのみ接続され、並列に接続されたセルはない。かかる構成を、概略的に図3および図4に示す。パックの非並列の特徴は、ソフトウェアおよびプローブ端末への余分なアルゴリズムの組込みにより高価で厄介な並列に接続されたセルのための個々のセルパラメータの検出のための余分な回路を組み込む必要なく、あまり高価でない個々の制御、およびパックの各セルのモニタリングを可能にする。
【0077】
図3は、直列に接続された本発明の3つのセルを示す本発明の1つの態様を示す。これらのセルは、そのより安全な性能特性により、正極活物質の選択としてLiCoO2を用いたセルと比べて、大きくすることができる。これは、並列に接続されたセルが少ないパックにセルを接続することを可能にする。
【0078】
図4は、本発明の3つのセル32が互いに直列に接続された本発明のバッテリーパック30の上面透視図を示す。
【0079】
1つの特定の態様において、本発明のバッテリーパックは、現在のラップトップ市場で典型的に使用される従来の18650型セルに見られ得るような、セルが、2つのセルを並列に、および3つのセルを直列に有するパックに組み立てられた2p3s構成を有する。他の態様において、本発明のバッテリーパックは3sまたは4s構成を有し、本発明によって可能となるより大きなセル容量を利用して、得られるバッテリーパックが簡素化され、したがって、コストが下がり、安全性が改善される。
【0080】
好ましくは、バッテリーパックに含まれるセルは、図2に一般的に示す長円形状の缶20を有する。この形状の好ましいものを図5に示し、全容積の利用を含み、セル缶内部に不必要な電解液がなく、製造が比較的容易である。バッテリーパックのセルの容量は、典型的には約3.3 Ah以上である。セルの内部インピーダンスは好ましくは、約50ミリオーム未満、より好ましくは30ミリオーム未満である。
【0081】
上記の本発明の新規な電池設計は、より大きなセルサイズを利用し得、潜在的に、 2つの並列18650セル(2pブロック)と置き換え得る。この構成を使用する利点は、制御電子回路が2つではなくブロック内の1つのセルだけをモニターし得ることであり、これは、18650セルの2pブロックの場合である。この型のモニタリングは、セル内のショートなどの欠陥、1つの欠陥および1つの非欠陥セルを有するブロックでは検出され得ないエラーの検出を可能にし得る。また、バッテリーパックごとに、PTCおよびCID素子およびセルを並列に接続して回路を制御する電子部品配線などの比較的少ない電池構成要素を使用することによりコストの利点が実現され得る。
【0082】
18650セルの容量を上げるため、ソニー、サンヨー、MBI (パナソニック)、LGおよびサムスンなどの企業は、90年代初期に実施して以来、セル内の活物質 (グラファイトおよびコバルト酸塩)の充填レベルを徐々に増加している。より高度の充填は、一部、電極幅に関して電極寸法を増加させること、電極の緻密性の増加、電極の厚さの増加、負極容量/正極容量比の過剰容量に対する低許容性、および電池スチール缶内のゼリーロールの気密適合により達成された。しかしながら、これらのアプローチの欠点の1つは、最近の当該分野における安全性事故レベルの増加によって見られる安全性の低下であった。別の欠点は、サイクル寿命の減少である。また、典型的な18650セル缶は、スチールによって作製されている。この型のセルの容量は増大したので、電極の密度および厚さも、缶内のゼリーロールの充填の程度とともに増大した。18650セルの負極および正極電極中のグラファイトおよび金属酸化物粒状物は、充電および放電時にリチウムが挿入および脱着(de-intercalate)されると、連続的にその寸法を変化させる。多くの金属酸化物材料は、リチウムが構造から除去されると、格子定数の増加により、その大きさが増加する。LiCoO2およびLiNiO2は、リチウムが徐々に構造から除去されると、そのc軸が増加する正極材料の2つの例である。同様に、リチウムがグラファイト内に挿入されるとc軸格子定数が増加する。これは、LiCoO2系およびグラファイト系電極を含む電池の充電時、負極および正極両方の電極はその厚さが増加することを意味する。これは、スチール缶が膨張を制限するため、一般的にセル内の積層圧の増加をもたらす。円筒状の従来のLiCoO2系リチウムセル内での2つの典型的な型の分解は、(1) 頑強な円筒状スチール缶によって課される積層圧の増加は、電極のセパレーター細孔の詰まりを引き起こす、および(2) 比較的厚い電極の機械的疲労は、不充分な連結性により早くに電極の分解を引き起こし、電気伝導性の減少をもたらすと考えられる。
【0083】
他方において、本明細書に記載の本発明は、一方が高容量を有し、他方が比較的高い安全性を有する2種類以上の活物質構成要素を有する正極のための電極材料の組合せは、高い安全性と同時にこれらのセル、特に長円形状のセルを用いたバッテリーパックの高容量を達成するリチウムイオン電池を可能にし得ることを実現する。また、セルは、商品化の目的に充分安全で充分高容量であるだけでなく、有意に高いサイクル寿命も示す。例えば、高さ約64 mm、幅約36 mmおよび厚さ約18 mm の外寸を有する長円形状のセル(実施例4参照)は、LGおよびサンヨーの市販の18650セルよりも高い電圧、良好なサイクル寿命および良好な定格能力を示した(実施例6参照)。優れたサイクル寿命、高い安全性および高容量を有するより大きなセルはまた、本発明を利用することにより作製され得る。電力セルでさえ、本発明は、当該技術分野の18650-型または26mm直径の電力セルと置き換え得ると考えられる。また、HEV-型電池は本発明の利益を被り得る。
【0084】
また別の局面において、本発明はまた、携帯用電子装置およびセルまたは電池(例えば、リチウムイオン電池) を含むシステム、ならびに上記のバッテリーパックを含む。携帯用電子装置の例としては、携帯用コンピュータ、電動器具、玩具、携帯電話、カムコーダー、PDA、およびハイブリッド電気自動車が挙げられる。1つの態様において、システムは、本発明のバッテリーパックを含む。バッテリーパックの特徴は上記のとおりである。
【0085】
本発明を、限定することが全く意図されない以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0086】
実施例1〜3および比較例
放電容量、平均放電電圧、最初の放電対最初の充電効率および材料密度を含む既知の正極活物質性能特性を用い、性能特徴を、正極材料の混合物から得られる電池について比較し得る。上記のリチウムイオン電池では、コバルト酸リチウム (x%)、マンガン酸塩スピネル (y%)およびニッケル酸リチウム (z%)を含む正極活物質の混合物からなる正極を使用する。マンガン酸塩スピネルおよびニッケル酸リチウム正極材料は、上記の説明文に記載した好ましい型のものである。これらの正極材料の性能の特徴は代表的な種類におけるその個々の正極材料に代表的なものであり、容量、平均放電電圧、最初のサイクル効率、および密度について、コバルト酸リチウム - 145 mAh/g、3.70 V、96.0%、4.9 g/cm3; マンガン酸塩スピネル - 115 mAh/g、3.80 V、94.0%、4.1 g/cm3; ニッケル酸リチウム - 180 mAh/g、3.50 V、92.0%、4.6 g/cm3である。x = 40、y = 60、およびz = 0である場合、この例で得られる正極活物質は、127 mAh/g、3.75 V、94.8%、および4.4 g/cm3の特性を有する。
【0087】
固定容量5 Ahのリチウムイオンセルを設計すること、および容量要件が達成されるように電池の重量を変えるのを可能にすることにより、異なる正極状況下での比較のための重要な電池性能およびコスト面の特徴の計算が可能になる。電池設計において固定されなければならないさらに重要なパラメータとしては、セル断面積 (4.4×6.4 cm)、セル厚さ (1.85 cm)、正極被覆面積 (2079 cm2)、正極電極面積 (2×1099 cm2)、負極被覆面積 (2181 cm2)、負極電極面積 (2×1127 cm2)、セパレーター面積 (2416 cm2)、Alケースの厚さ (500μm)および密度(3.70 g/cm3)、被覆正極組成(formulation)(94%の活物質、3%の導電性炭素、3%のバインダー)、正極導電性炭素材料密度(1.50 g/cm3)、正極バインダー材料密度(1.80 g/cm3)、正極多孔度(20%)、正極Alホイルの厚さ (15μm)および密度(2.70 g/cm3)、被覆負極組成 (93%の活物質、2%の導電性炭素、5%のバインダー)、負極活物質の容量 (330 mAh/g)および密度(2.20 g/cm3)、負極最初の放電対最初の充電効率 (93%)、負極導電性炭素材料密度(1.50 g/cm3)、負極バインダー材料密度(1.80 g/cm3)、負極多孔度(30%)、Cu負極ホイルの厚さ (12μm)および密度(8.90 g/cm3)、負極/正極容量比 (1.1)、セパレーターの厚さ (25μm)および多孔度(45%)、電解液密度(1.20 g/cm3)、セル絶縁体およびタブ重量(1.00 g)、被覆溶媒本体(identity)(NMP)および割合(60容積%)、ならびに関連する材料コストパラメータが挙げられる。
【0088】
この例に記載する正極物質の使用により得られるリチウムイオン電池は、表2に示す特性を有する。



【0089】
実施例4: LiCoO2/LiMn2O4を含む正極活物質を有する高容量を有する長円セル
LiCoO2:LiMn2O4について70:30の重量比を有する94wt%の混合正極、3wt%のカーボンブラックおよび3wt%のPVDFを攪拌下、NMP中で混合した。電極スラリーを、15マイクロメートル厚のAl集電装置に被覆した。Al集電装置は、56 mmの幅および1568 mmの長さの寸法を有した。スラリーを、Al集電装置の両面に被覆した。被覆の長さは、 第1側面および第2側面で1510および1430 mmであった。被覆電極を150℃で数分間加熱することによりプロセス媒体NMPを除去した。被覆密度を制御するために電極をプレス加工した。2面被覆はどの局面でも同一であった。全電極の厚さは140マイクロメートルであった。複合正極密度は3.6 g/ccであった。約3 mmの幅、55 mmの長さおよび0.2 mmの厚さを有する2つのAlタブを、非被覆Al集電装置に溶接した。
【0090】
93wt%のグラファイト、2wt%のカーボンブラックおよび5wt%のPVDFバインダーを攪拌下、NMP中で混合した。電極スラリーを、12マイクロメートル厚のCu集電装置に被覆した。Cu集電装置は、57.5 mm幅および1575 mmの長さの寸法を有した。スラリーを、Cu集電装置の両面に被覆した。被覆の長さは、第1側面および第2側面で、それぞれ1495および1465 mmであった。被覆電極を150℃で数分間加熱することによりプロセス媒体NMPを除去した。被覆密度を制御するために電極をプレス加工した。2面被覆はどの局面でも同一であった。全電極の厚さは130マイクロメートルであった。複合負極密度は1.8g/ccであった。約3 mmの幅、55 mmの長さおよび0.2 mmの厚さを有する2つのNiタブを、非被覆Cu集電装置に溶接した。
【0091】
正極および負極を、25マイクロメートルの厚さ、60 mmの幅および310 cmの長さを有する微小孔性セパレーターによって分離した。これをゼリーロール中に巻き込んだ。ゼリーロールをプリズム状形態にプレス加工した。
【0092】
プレス加工したゼリーロールを、0.4 mmのAl 厚さを有するプリズム状Alケースに挿入した。ケースは、約64 mmの高さ、36 mmの幅および18 mmの厚さの外寸を有した。正極タブを上部Alキャップに溶接し、負極タブを、Alケースを通る連結部(connection)に溶接した。AlキャップをAlケースに溶接した。およそ10 gの1M LiPF6 EC/PC/EMC/DMC電解液溶液を、真空下でセルに添加した。形成後、セルを完全に密閉した。
【0093】
このセルは、C/5放電率で4.4 Ahの容量を有した。正味電圧は3.7 Vであった。全セル重量はおよそ89 gであった。セルエネルギー密度はおよそ183 Wh/kgおよび440 Wh/リットルであった。
【0094】
実施例5A (予言的実施例): LiCoO2/LiMn1.9Al0.1O4を含む正極活物質を有するセル
この実施例では、LiCoO2/LiMn1.9Al0.1O4を含む正極活物質を有するプリズム状セルを設計する。このセルは、実施例4で上記のものと同様の手順によって作製され得る。この実施例では、正極ミックスは、LiCoO2:LiMn1.9Al0.1O4について70:30の重量比を有する94wt%の混合正極、3wt%のカーボンブラックおよび3wt%のPVDFを含む。電極スラリーを15マイクロメートル厚のAl集電装置に被覆する。Al集電装置は、56 mmの幅および1913 mmの長さの寸法を有する。スラリーをAl集電装置の両面に被覆する。被覆の長さは第1側面および第2側面で1913および1799 mmである。被覆電極を150℃で数分間加熱することによりプロセス媒体NMPを除去する。25%容積の多孔度に制御するために電極をプレス加工する。2面被覆はどの局面でも同一である。単一の被覆層の厚さは50マイクロメートルである。複合正極密度は3.36 g/ccである。5 mm幅、64 mmの長さおよび0.1 mm厚さを有するAlタブを、非被覆Al集電装置に溶接する。
【0095】
93wt%のグラファイト、2wt%のカーボンブラックおよび5wt%のPVDFバインダー を攪拌下、NMP中で混合する。電極スラリーを12マイクロメートル厚のCu集電装置に被覆する。Cu集電装置は、58 mmの幅および1940 mmの長さの寸法を有する。スラリーをCu集電装置の両面に被覆する。被覆の長さは、第1側面および第2側面で、それぞれ1903および1857 mmであり、10 mm Cuを被覆せずに残す。被覆電極を150℃で数分間加熱することによりによりプロセス媒体NMPを除去する。37%容積の多孔度に制御するために電極をプレス加工する。2面被覆はどの局面でも同一である。そして単一の被覆層の厚さは53マイクロメートルである。計算される複合負極密度は1.35g/ccである。5 mmの幅、64 mmの長さおよび0.5 mmの厚さを有するNiタブを、非被覆Cu集電装置に溶接させ得る。
【0096】
正極および負極を、25マイクロメートルの厚さ、60 mmの幅および4026 mmの長さを有する微小孔性セパレーターによって分離する。次いで、これをゼリーロール中に巻き込む。ゼリーロールをプリズム状形態にプレス加工する。
【0097】
プレス加工したゼリーロールを、0.5 mmのAl厚さを有する直方形のAlケースに挿入する。ケースは、64 mmの高さ、44 mmの幅および17 mmの厚さの外寸を有する。正極タブを上部Alキャップに溶接し、負極タブをAlケースに溶接する。AlキャップをAlケースに溶接する。およそ12.3 gの1M LiPF6 EC/EMC/DMC電解液溶液を真空下でセルに添加する。形成後、セルを完全に密閉する。
【0098】
このセルは、C/5放電率で4.5 Ahの計算容量を有する。計算される正味電圧は3.7Vである。計算される全セル重量はおよそ96 gである。計算されるセルエネルギー密度はおよそ174 Wh/kgおよび350 Wh/Lである。
【0099】
実施例5B (予言的実施例): LiCoO2/LiMn1.9Al0.1O4/LiNi0.8Al0.05Co0.15O2を含む正極活物質を有するセル
この実施例では、LiCoO2/LiMn1.9Al0.1O4/LiNi0.8Al0.05Co0.15O2を含む正極活物質を有するプリズム状セルを設計する。このセルは、実施例4で上記のものと同様の手順によって作製され得る。
【0100】
LiCoO2:LiMn1.9Al0.1O4:LiNi0.8Al0.05Co0.15O2について10:50:40の重量比を有する94wt%の混合正極、3wt%のカーボンブラックおよび3wt%のPVDFを攪拌下、NMP中で混合する。電極スラリーを15マイクロメートル厚のAl集電装置に被覆する。Al集電装置は、56 mmの幅および1913 mmの長さの寸法を有する。スラリーをAl集電装置の両面に被覆する。被覆の長さは、第1側面および第2側面で1913および1799 mmである。被覆電極を150℃で数分間加熱することによりによりプロセス媒体NMPを除去する。25%容積の多孔度に制御するために電極をプレス加工する。2面被覆はどの局面でも同一である。そして、単一の被覆層の厚さは56マイクロメートルである。計算される複合正極密度は3.2 g/ccである。5 mmの幅、64 mmの長さおよび0.1 mmの厚さを有するAlタブを、非被覆Al集電装置に溶接する。
【0101】
93wt%のグラファイト、2wt%のカーボンブラックおよび5wt%のPVDFバインダーを攪拌下、NMP中で混合する。電極スラリーを12マイクロメートル厚のCu集電装置に被覆する。Cu集電装置は、58 mmの幅および1940 mmの長さの寸法を有する。スラリーをCu集電装置の両面に被覆する。被覆の長さは、第1側面および第2側面で、それぞれ1903および1857 mmであり、10 mm Cuを被覆せずに残す。被覆電極を150℃で数分間加熱することによりによりプロセス媒体NMPを除去する。37%の容積の多孔度に制御するために電極をプレス加工する。2面被覆はどの局面でも同一である。単一の被覆層の厚さは60マイクロメートルである。計算される複合負極密度は1.35g/ccである。5 mmの幅、64 mmの長さおよび0.5 mmの厚さを有するNiタブを非被覆Cu集電装置に溶接する。
【0102】
正極および負極を、25マイクロメートルの厚さ、60 mmの幅および4026 mmの長さを有する微小孔性セパレーターによって分離する。これをゼリーロール中に巻き込む。次いで、ゼリーロールをプリズム状形態にプレス加工する。
【0103】
プレス加工したゼリーロールを、0.5 mmのAl厚さを有する直方形のAlケースに挿入する。ケースは、64 mmの高さ、44 mmの幅および17 mmの厚さの外寸を有する。正極タブを上部Alキャップに溶接し、負極タブをAlケースに溶接する。AlキャップをAlケースに溶接する。およそ12.3 gの1M LiPF6 EC/EMC/DMC 電解液溶液を真空下でセルに添加する。形成後、セルを完全に密閉する。
【0104】
このセルは、C/5放電率で5 Ahの計算容量を有する。計算される正味電圧は3.67Vである。計算される全セル重量はおよそ101 gである。計算されるセルエネルギー密度はおよそ181 Wb/kgおよび362 Wh/Lである。
【0105】
実施例6 セル試験
実施例4のセルを、以下のようにしてサイクル使用 (すなわち、充電および放電)した。
【0106】
セルを0.7Cの定電流で4.2 Vの電圧に充電し、次いで、4.2 Vの定電圧を用いて充電した。電流が44 mAに達したとき定電圧充電を終了した。開回路状態で30分間置いた後、C/5の定電流で放電させた。セル電圧が2.75 Vに達したとき放電を終了した。これらの手順を3回繰返した。
【0107】
次いで、セルを0.7Cの定電流で4.2 Vの電圧に充電し、次いで続いて4.2 Vの定電圧を用いて充電した。電流が44 mAに達したとき定電圧充電を終了した。開回路状態で30分間置いた後、1Cの定電流で放電させた。セル電圧が2.75 Vに達したとき放電を終了した。これらの手順を連続的に繰り返し、サイクル寿命データを得た。
【0108】
定格能力試験のため、8個のセルを上記(described about)のようにして充電し、C/5〜2Cの値の範囲の異なる電流比(current rate)を用いて2.75 Vまで放電を行なった。
【0109】
比較例として、韓国ソウルLGのLG 18650(「LG」) およびサンヨー18650セルを上記の手順により試験した。セルは、典型的に、23℃(室温)および60℃で試験した。セル試験の結果を図6〜9に示した。図6〜9に見られるように、本発明のセルは、より高い電圧 (図6)、室温でより良好なサイクル寿命(図7)、60℃でより良好なサイクル寿命、(図8)およびより良好な定格能力 (図9) を示した。
【0110】
均等物
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、今日典型的に市販用に消費され、特に18650型リチウムイオン電池の代表である円筒型リチウムイオン電池の断面図である。
【図2】図2は、本発明のリチウムイオン電池用の長円形状缶の一例の概略図である。
【図3】図3は、バッテリーパック中に一緒に配置されるとき、どのようにして本発明のセルを好ましく接続させるかを示す、概略の回路構成である。
【図4】図4は、本発明のバッテリーパックの上部透視図写真である。
【図5】図5(a)〜図5(d)は、本発明の電池(図5(a))ならびに並列した2つの18650セルを含む(図5(b))、巻かれたゼリーロール電極構造を含むプリズム状セル(図5(c))、および積層電極構造を含むプリズム状セル(図5(d))を含む、今日用いられている市販の電池の典型的な比較例の種々の電池形成因子の異なる空間利用を比較する概略図である。
【図6】図6は、室温にて、本発明の電池および対照の電池の典型的な充電曲線を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の電池および2つの対照電池の、室温での充電−放電サイクル間の相対容量保持を示すグラフである。サイクル条件:0.7C一定充電、その後4.2Vにて一定電圧充電、次いで2.75Vまでの1C放電を用いる定充電電圧(CCCV)充電。
【図8】図8は、図7に記載された条件下で、本発明の電池および対照の電池の60℃での充電−放電サイクル間の相対容量保持を示すグラフである。
【図9】図9は、図7に記載された充電条件下で電池を充電し、図中に示された割合で2.75Vまで放電する場合、本発明の8つの電池および2つの対照の市販用18650電池の平均標準偏差に対する定格能力を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも一方;
b) マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも一方、
ここで、マンガン酸塩スピネルは、
Li(1+x1)(Mn1-y1A’y1)2-x1Oz1(式中、
x1は、0.01以上、0.3以下である;
y1は0.0より大きく、0.3以下である;
z1は、3.9以上、4.1以下である;および
A’は、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群の少なくとも1種類である)の実験式で表される、ならびに、
かんらん石化合物は、
Li(1-x2)A”x2MPO4(式中、
x2は、0.05以上、0.2以下であるか、または
x2は、0.0以上、0.1下である;および
Mは、鉄、マンガン、コバルトおよびマグネシウムからなる群の少なくとも1種類である;ならびに
A”は、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ニッケルおよびニオブからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表される、
を含む混合物を含む正極活物質。
【請求項2】
正極物質が、Li原子もしくはNi原子のいずれか、または両方の少なくとも1種類のモディファイアを含むニッケル酸リチウムを含む、請求項1記載の正極活物質。
【請求項3】
正極物質が、
Lix3Ni(1-Z3)M’z3O2(式中、
x3は0.05より大きく、1.2未満である;
z3は0より大きく、0.5未満である;および
M’は、コバルト、マンガン、アルミニウム、ホウ素、チタン、マグネシウム、カルシウムおよびストロンチウムからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表されるニッケル酸リチウムを含む、請求項2記載の正極活物質。
【請求項4】
ニッケル酸リチウムが、傾斜被覆またはスポットワイズ被覆としてLiCoO2で被覆されている、請求項3記載の正極活物質。
【請求項5】
ニッケル酸リチウムがLiNi0.8Co0.15Al0.05O2である、請求項4記載の正極活物質。
【請求項6】
ニッケル酸リチウムがLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2である、請求項2記載の正極活物質。
【請求項7】
正極物質が、
Lix6M’(1-y6)Co(1-Z6)M”Z6O2(式中、
x6は0.05より大きく、1.2未満である;
y6は0以上であり、0.1未満である;
z6は0以上であり、0.5未満である;
M’は、マグネシウム(Mg)およびナトリウム(Na)の少なくとも一方である、ならびに
M”は、マンガン、アルミニウム、ホウ素、チタン、マグネシウム、カルシウムおよびストロンチウムからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表されるコバルト酸リチウムを含む、請求項1記載の正極活物質。
【請求項8】
コバルト酸リチウムがLiCoO2である、請求項7記載の正極活物質。
【請求項9】
正極物質が、Li(1-x2)A”x2MPO4
(式中、Mは鉄またはマンガンである)
のかんらん石化合物を含む、請求項1記載の正極活物質。
【請求項10】
かんらん石化合物がLiFePO4またはLiMnPO4である、請求項9記載の正極活物質。
【請求項11】
正極物質が、ニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルを含む、請求項1記載の正極活物質。
【請求項12】
ニッケル酸リチウムがLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2である、請求項11記載の正極活物質。
【請求項13】
ニッケル酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルが、約0.9:0.1〜約0.2:0.8のニッケル酸リチウム:マンガン酸塩スピネル比である、請求項11記載の正極活物質。
【請求項14】
LiおよびNi原子両方の少なくとも1種類のモディファイアを含むニッケル酸リチウムをさらに含む、請求項12記載の正極活物質。
【請求項15】
ニッケル酸リチウムがLiCoO2被覆LiNi0.8CoO.15Al0.05O2である、請求項11記載の正極活物質。
【請求項16】
正極物質が、ニッケル酸リチウム、マンガン酸塩スピネルおよびコバルト酸リチウムを含む、請求項1記載の正極活物質。
【請求項17】
コバルト酸リチウム、マンガン酸塩スピネルおよびニッケル酸リチウムが、約0.05〜0.8:約0.05〜0.7:約0.05〜0.9のコバルト酸リチウム:マンガン酸塩スピネル:ニッケル酸リチウム比である、請求項16記載の正極活物質。
【請求項18】
ニッケル酸リチウムがLiおよびNi原子両方の少なくとも1種類のモディファイアを含む、請求項16記載の正極活物質。
【請求項19】
ニッケル酸リチウムがLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2である、請求項16記載の正極活物質。
【請求項20】
ニッケル酸リチウムがLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2である、請求項16記載の正極活物質。
【請求項21】
正極物質が、コバルト酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルを含む、請求項1記載の正極活物質。
【請求項22】
コバルト酸リチウムおよびマンガン酸塩スピネルが、約0.8:0.2〜約0.4:0.6のコバルト酸リチウム:マンガン酸塩スピネル比である、請求項21記載の正極活物質。
【請求項23】
正極物質が、コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも一方、およびかんらん石化合物を含む、請求項1記載の正極活物質。
【請求項24】
正極物質が、Li(1-x2)A”x2MPO4(式中、Mは鉄またはマンガンである)のかんらん石化合物を含む、請求項23記載の正極活物質。
【請求項25】
正極物質が、ニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物を含む、請求項24記載の正極活物質。
【請求項26】
ニッケル酸リチウムおよびかんらん石化合物が、約0.9:0.1〜約0.5:0.5のニッケル酸リチウム:かんらん石化合物比である、請求項25記載の正極活物質。
【請求項27】
ニッケル酸リチウムがLiおよびNi原子両方の少なくとも1種類のモディファイアを含む、請求項25記載の正極活物質。
【請求項28】
ニッケル酸リチウムがLiNi0.8Co0.15Al0.05O2である、請求項25記載の正極活物質。
【請求項29】
ニッケル酸リチウムがLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2である、請求項25記載の正極活物質。
【請求項30】
LiおよびNi原子両方の少なくとも1種類のモディファイアを含むニッケル酸リチウムをさらに含む、請求項29記載の正極活物質。
【請求項31】
正極物質が、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、およびかんらん石化合物を含む、請求項1記載の正極活物質。
【請求項32】
コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム およびかんらん石化合物が、約0.05〜0.8:約0.05〜0.7:約0.05〜0.9のコバルト酸リチウム:かんらん石:ニッケル酸リチウム比である、請求項31記載の正極活物質。
【請求項33】
ニッケル酸リチウムがLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2である、請求項31記載の正極活物質。
【請求項34】
ニッケル酸リチウムがLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2である、請求項31記載の正極活物質。
【請求項35】
正極物質が、ニッケル酸リチウム、マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物を含む、請求項1記載の正極活物質。
【請求項36】
a) LiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2および
Li(Ni1/3CO1/3Mn1/3)O2
からなる群より選択されるニッケル酸リチウム;ならびに
b) Li(1+x7)Mn2-y7Oz7(式中、x7およびy7は、各々独立して、0.0以上、1.0以下である;ならびにz7は、3.9以上、4.2以下である)
の実験式で表されるマンガン酸塩スピネル
を含む混合物を含む正極活物質。
【請求項37】
マンガン酸塩スピネルがLiMn2O4である、請求項36記載の正極活物質。
【請求項38】
コバルト酸リチウムをさらに含む、請求項36記載の正極活物質。
【請求項39】
混合物が、
Li(1-x2)A”x2MPO4(式中、
x2は、0.05以上、0.2以下であるか、または
x2は、0.0以上、0.1以下である;および
Mは、鉄、マンガン、コバルトおよびマグネシウムからなる群の少なくとも1種類である;ならびに
A”は、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ニッケルおよびニオブからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表される、かんらん石化合物をさらに含む、請求項36記載の正極活物質。
【請求項40】
a) コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに
b) マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも一方、ここで、マンガン酸塩スピネルは、
Li(1+x1)(Mn1-y1A’y1)2-x1Oz1(式中、
x1は、0.01以上、0.3以下である;
y1は、0.0以上、0.3以下である;
z1は、3.9以上、4.1以下である;および
A’は、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群の少なくとも1種類である)の実験式で表される、ならびに、
かんらん石化合物は、
Li(1-x2)A”x2MPO4
(式中、x2は、0.05以上、0.2以下であるか、または
x2は、0.0以上、0.1以下である;および
Mは、鉄、マンガン、コバルトおよびマグネシウムからなる群の少なくとも1種類である;ならびに
A”は、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ニッケルおよびニオブからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表される、
を含む混合物を含む正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン電池。
【請求項41】
正極物質が、Li原子もしくはNi原子のいずれか、または両方の少なくとも1種類のモディファイアを含むニッケル酸リチウムを含む、請求項40記載のリチウムイオン電池。
【請求項42】
正極物質が、
LiX3Ni(1-z3)M’z3O2(式中、
x3は0.05より大きく、1.2未満である;
z3は0より大きく、0.5未満である;および
M’は、コバルト、マンガン、アルミニウム、ホウ素、チタン、マグネシウム、カルシウムおよびストロンチウムからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表されるニッケル酸リチウムを含む、請求項41記載のリチウムイオン電池。
【請求項43】
ニッケル酸リチウムが、勾配被覆またはスポット様被覆としてLiCoO2で被覆されている、請求項42記載のリチウムイオン電池。
【請求項44】
ニッケル酸リチウムがLiNi0.8Co0.15Al0.05O2である、請求項43記載のリチウムイオン電池。
【請求項45】
ニッケル酸リチウムがLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2である、請求項41記載のリチウムイオン電池。
【請求項46】
正極物質が、
Lix6Co(1-z6)M”Z6O2(式中、
x6は0.05より大きく、1.2未満である;
z6は0以上であり、0.5未満である;および
M”は、マンガン、アルミニウム、ホウ素、チタン、マグネシウム、カルシウムおよびストロンチウムからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表されるコバルト酸リチウムを含む、請求項40記載のリチウムイオン電池。
【請求項47】
コバルト酸リチウムがLiCoO2である、請求項46記載のリチウムイオン電池。
【請求項48】
正極物質が、
Li(1-x2)A”x2MPO4(式中、Mは鉄またはマンガンである)
のかんらん石化合物を含む、請求項40記載のリチウムイオン電池。
【請求項49】
かんらん石化合物がLiFePO4またはLiMnPO4である、請求項48記載のリチウムイオン電池。
【請求項50】
a) コバルト酸リチウムならびにLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに
b) Li(1+x7)Mn2-y7Oz7(式中、x7およびy7は、各々独立して、0.0以上、1.0以下である;ならびにz7は、3.9以上、4.2以下である)の実験式で表されるマンガン酸塩スピネル
を含む混合物を含む正極活物質を含む正極を有し、
約3.0Ahより大きい容量を有する、
リチウムイオン電池。
【請求項51】
a) i) コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに
ii) マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも一方、
ここで、マンガン酸塩スピネルは、
Li(1+x1)(Mn1-y1A’y1)2-x1Oz1(式中、
x1は、0.01以上、0.3以下である;
y1は0.0より大きく、0.3以下である;
z1は、3.9以上、4.1以下である;および
A’は、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群の少なくとも1種類である)の実験式で表される、ならびに、
かんらん石化合物は、
Li(1-x2)A”x2MPO4(式中、
x2は、0.05以上、0.2以下であるか、または
x2は、0.0以上、0.1以下である;および
Mは、鉄、マンガン、コバルトおよびマグネシウムからなる群の少なくとも1種類である;ならびに
A”は、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ニッケルおよびニオブからなる群の少なくとも1種類である)の実験式で表される、
を含む混合物を含む正極活物質を形成する工程;
b) 正極活物質を有する正極電極を形成する工程;および
c) 電解液を介して正極と電気的接触している負極電極を形成し、それによりリチウムイオン電池を形成する工程
を含む、リチウムイオン電池の形成方法。
【請求項52】
a) i) コバルト酸リチウムならびにLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3CO1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに
ii) Li(1+x7)Mn2-y70z7(式中、x7およびy7は、各々独立して、0.0以上、1.0以下である;ならびにz7は、3.9以上、4.2以下である)
の実験式で表されるマンガン酸塩スピネル
を含む混合物を含む正極活物質を形成する工程、
b) 正極活物質を有する正極電極を形成する工程;および
c) 電解液を介して正極と電気的接触している負極電極を形成し、それによりリチウムイオン電池を形成する工程
を含む、約3.0Ah/セルより大きい容量を有するリチウムイオン電池の形成方法。
【請求項53】
セルの各々が、
a) コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに
b) マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも一方、ここで、マンガン酸塩スピネルは、
Li(1+x1)(Mn1-y1A’y1)2-x1Oz1(式中、
x1は、0.01以上、0.3以下である;
y1は0.0より大きく、0.3以下である;
z1は、3.9以上、4.1以下である;および
A’は、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表される、ならびに、かんらん石化合物は、
Li(1-x2)A”x2MPO4(式中、
x2は、0.05以上、0.2以下であるか、または
x2は、0.0以上、0.1以下である;および
Mは、鉄、マンガン、コバルトおよびマグネシウムからなる群の少なくとも1種類である;ならびに
A”は、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ニッケルおよびニオブからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表される、
を含む混合物を含む正極活物質を含む、複数のセルを含むバッテリーパック。
【請求項54】
セルの容量が、約3.3 Ah/セル以上である、請求項53記載のバッテリーパック。
【請求項55】
セルの内部インピーダンスが約50ミリオーム未満である、請求項53記載のバッテリーパック。
【請求項56】
セルが直列であり、並列に接続されたセルがない、請求項53記載のバッテリーパック。
【請求項57】
セルの各々が、
a) コバルト酸リチウムならびにLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに
b) Li(1+x7)Mn2-y70z7(式中、x7およびy7は、各々独立して、0.0以上、1.0以下である;ならびにz7は、3.9以上、4.2以下である)
の実験式で表されるマンガン酸塩スピネル
を含む混合物を含む正極活物質を含み、
セルの少なくとも1つが約3.0Ah/セルより大きい容量を有する、
複数のセルを含むバッテリーパック。
【請求項58】
セルの容量が約3.3 Ah/セル以上である、請求項57記載のバッテリーパック。
【請求項59】
セルの内部インピーダンスが約50ミリオーム未満である、請求項57記載のバッテリーパック。
【請求項60】
セルが直列であり、並列に接続されたセルがない、請求項57記載のバッテリーパック。
【請求項61】
a) 携帯用電子装置;および
b) セルの各々が互いに接続され、セルの各々が、
i) コバルト酸リチウムおよびニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに
ii) マンガン酸塩スピネルおよびかんらん石化合物の少なくとも一方、ここで、マンガン酸塩スピネルは、
Li(1+x1)(Mn1-y1A’y1)2-x1Oz1(式中、
x1は、0.01以上、0.3以下である;
y1は0.0より大きく、0.3以下である;
z1は、3.9以上、4.1以下である;および
A’は、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表される、ならびに、かんらん石化合物は、
Li(1-x2)A”x2MPO4(式中、
x2は、0.05以上、0.2以下であるか、または
x2は、0.0以上、0.1以下である;および
Mは、鉄、マンガン、コバルトおよびマグネシウムからなる群の少なくとも1種類である;ならびに
A”は、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ニッケルおよびニオブからなる群の少なくとも1種類である)
の実験式で表される、
を含む混合物を含む正極活物質を含む、複数のセルを含むバッテリーパック
を含むシステム。
【請求項62】
携帯用電子装置が、ラップトップコンピュータ、電動ツール、PDA、携帯電話、およびハイブリッド電気自動車からなる群より選択される、請求項61記載のシステム。
【請求項63】
a) 携帯用電子装置;および
b) セルの各々が互いに接続され、セルの各々が、
i) コバルト酸リチウムならびにLiCoO2被覆LiNi0.8Co0.15Al0.05O2およびLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2からなる群より選択されるニッケル酸リチウムの少なくとも一方;ならびに
ii) Li(1+x7)Mn2-y70z7(式中、x7およびy7は、各々独立して、0.0以上、1.0以下である;ならびにz7は、3.9以上、4.2以下である)
の実験式で表されるマンガン酸塩スピネル
を含む混合物を含む正極活物質を含む、複数のセルを含むバッテリーパック
を含み、
セルの少なくとも1つが約3.0Ah/セルより大きい容量を有する、
を含むシステム。
【請求項64】
携帯用電子装置が、ラップトップコンピュータ、電動ツール、PDA、携帯電話、およびハイブリッド電気自動車からなる群より選択される、請求項63記載のシステム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−525973(P2008−525973A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548600(P2007−548600)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/047383
【国際公開番号】WO2006/071972
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507213639)ボストン−パワー,インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】