リチウムセルおよびバッテリー用の酸化リチウム電極
非水性リチウムセルまたはバッテリー用酸化リチウム正電極を開示。この正電極は、積層構造を有し、内部酸化または外部酸化後の全体組成がLixMnyM1−yO2であって、0≦x≦0.20、0<y<1、Mnが4+の酸化状態であり、Mは第一列遷移金属すなわちTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuまたは上記構造を過度に崩壊させずに該構造に挿入するのに適したイオン半径を有する他のカチオンすなわちAl、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、Ga、Pのうちの1種以上である。本発明の材料をリチウムセルに適用した例を開示。本発明の材料の製造方法を開示。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水性リチウムセルおよびバッテリー用の酸化リチウム正電極に関する。より詳しくは、本発明は酸化リチウム電極組成物および構造体であって、内部酸化後または外部酸化後の全体組成がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<1であって、Mが上記構造体を過度に崩壊させずに挿入可能な適切なイオン半径を持つ1種以上の遷移金属または他の金属カチオンである。同様な構造体に嵌め込み可能であることが見出されているカチオンとしては、全ての第一列遷移金属、Al、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、Ga、Pがある。望ましいカチオンとしては、第一列遷移金属のうちでTi、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cuなどと、Al、Mg、Mo、W、Ta、Ga、Zrなどの他の金属がある。最も望ましいカチオンとしては、Co、Ni、Ti、Al、Cu、Fe、Mgがある。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリーのカソードとして用いられるものの代表である層状酸化リチウムの理論的なキャパシティーは、現実に達成されるキャパシティーに比べて遥かに大きい。リチウムイオンバッテリーの理論的キャパシティーは、全てのリチウムが構造体の内外を可逆的に循環可能であるとした場合に実現されるキャパシティーである。例えばLiCoO2は、理論キャパシティーが274mAh/gであるのに対して、電気化学セル中で達成される代表的なキャパシティーは160mAh/g程度に過ぎず、理論値の58%である。Co3+の一部をNiのような他の3価のカチオンで置換すると、180mAh/g程度の若干大きな値が得られる(Delams, Saadoune and Rougier, J.Power Source, vol. 43-44, pp. 595-602, 1993)。
【0003】
これよりも複雑なCo、Ni、Mn系の材料、特にLiCo1/3Ni1/3O2について、Ohzukuが詳細に検討している。その報告によると、200mAh/gのキャパシティーが得られ、熱安定性も良好であった(Ohzuku et al. 米国特許出願10/242,052)。
【0004】
MがCo、Ni、Mnの組合せであるLiMO2のR−3m構造について、他に下記文献がある。
【0005】
Yabuuchi and Ohzuku, Journal of Power Sources, volumes 119-121, 1 June 2003, pages 171-174.
Wang et al., Journal of Power Sources, volumes 119-121, 1 June 2003, pages 189-194.
Lu et al., electrochemical and Solid State Letters, v4(2001), A200-203.
その他、Li2MO3とLiM’O2との固溶体をベースとした多くの層状構造体がリチウムイオンバッテリーの正電極として提案されている。上記でMはMn4+またはTi4+であり、M’は第一列遷移金属カチオンまたはその組合せであり、平均の酸化状態が3+である(米国特許6,677,082B2: Thackery et al.および米国特許出願09/799,935: Kieu and Ammundsen)。これらのざいりょうのキャパシティーは組成によって大きく変動するが、概ね110〜170mAh/g程度の範囲内である。
【0006】
これに対して、Li2MnO3とNiOまたはLiMn0.5Ni0.5OでMn4+および2+酸化状態のNiを含むものとの固溶体は、例外的に大きいキャパシティーを発揮する。特に、Li2MnO3とLiNi0.5Mn0.5O2との固溶体は、ある組成について2.5V/4.6V間のサイクルで室温では200mAh/g、55℃では240mAh/gのキャパシティーが観測された(Shin, Sun and Amine, Journal of Power Sources, v112(2002) 634-638)。同様に、Lu and Dahnの報告(J. Electrochem. Soc. v149(2002), A815-822)によると、Li2MnO3とNiOとの固溶体は、セルを4.8Vまで充電したときに、ある組成で230mAh/gに近い可逆的なキャパシティーが達成された。この材料は3.0V/4.4V間のサイクルで観測されたキャパシティーは遥かに小さく、組成によって85〜160mAh/g程度の変動をした。Li2MnO3とLiNi0.5Mn0.5O2との固溶体は、4.4Vより高電圧に充電すると内部変態が生ずるのが観察された。その結果得られた材料は遥かに高い可逆的キャパシティーを持つことが分かった。
【0007】
これまでに報告されている例外的な高キャパシティーはいずれも4.4Vより高電圧に充電した後で達成されており、用いた材料は積層構造の固溶体であって、4+の酸化状態のMnと2+の酸化状態のNiを含むものであった。より典型的には、上記のように高電圧に充電することは、カソード材料の電気化学特性にとって極めて有害である。
【0008】
本発明は、4.4Vより高電圧に充電することにより電気化学セル内での酸化により内部形成されるか、または、化学酸化により外部形成される酸化リチウムにより、可逆的なリチウム挿入のための例外的に高いキャパシティーを発揮する新規な組成物を提供する。
【0009】
特に、本発明においては、Ni2+を全く含有しない、Li2MnO3とLiCoO2との固溶体のような組成物が、高電圧に充電することによって重度に酸化した後に非常に大きなキャパシティーを発揮することができる。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、4.4Vより高電圧に充電することにより電気化学セル内での酸化により内部形成されるか、または、化学酸化により外部形成される酸化リチウムにより、可逆的なリチウム挿入のための例外的に高いキャパシティーを発揮する新規な組成物を提供する。
【0011】
特に、本発明においては、Ni2+を全く含有しない、Li2MnO3とLiCoO2との固溶体のような組成物が、高電圧に充電することによって重度に酸化した後に非常に大きなキャパシティーを発揮することができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、全体組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<1、MnがMn4+であり、Mが1種以上の遷移金属またはその他のカチオンであって構造を過度に崩壊させずに該構造に挿入するのに適したイオン半径を持つ、新規な酸化リチウム材料が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、本発明の新規な材料はリチウムイオンセルまたはバッテリーのような非水性リチウムセル内の正電極として有用な積層結晶構造体である。
【0014】
本発明の他の態様によれば、全体組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<1であり、Mが1種以上の遷移金属または他のカチオンであって材料構造の過度の崩壊をもたらさずに該構造中に挿入されるのに適したイオン半径を持っている、新規な酸化リチウム材料を製造する方法であって、下記の工程:文献(Das, Material Letters, v47(2001),344-350)に最初に報告されている周知の「蔗糖法」の改良版を用いて高リチウム含有量の前駆体を用意する工程、および、次いで内部酸化または外部酸化によって組成および構造を改変する工程を含む方法が提供される。この改変は、Li2MnO3とLiNi0.5Mn0.5O2またはNiOとの固溶体相に4.4V以上、望ましくは4.4〜5Vの範囲内の電圧まで充電した際に生ずる内部変態を含んでいる。
【0015】
本発明者は、Mn−Ni系について従来報告されている特異なキャパシティーは、従来考えられていたよりもっと多様性を含む過程であることを見出した。この系の材料では、Niカチオンに代えまたは加えて、多くの金属イオンが作用可能である。その選択は、「イオン半径」すなわち材料の構造を過度に崩壊させずに該構造中に嵌め込み可能であるか否かということに基づいている。同様の構造に嵌め込み可能であることが分かったカチオンとしては、全ての第一列遷移金属と、Al、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、Ga、Pがある。望ましいカチオンは、第一列遷移金属としてTi、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cuと、他の金属としてAl、Mg、Mo、W、Ta、Ga、Zrである。これらの成分を用いた組成は、知見可能な範囲内の酸化状態についての従来の観点に基づいて算出された従来の理論的キャパシティーを超えた、非常に高いキャパシティーを発揮できる。例えば、従来はMn4+もO2−も適用条件下では酸化されないと仮定されていた。上記の成分によるキャパシティーは、このような仮定に基づく計算値を超えている。また、電気化学的に不活性なAl3+などの他のカチオンをこれらの成分で置換すると更に高いキャパシティーと安定なサイクルを得ることができる(実施例5)。加えて、Al添加は材料の平均充電電圧を増加させる効果があった。これら特異なキャパシティーの成因は、Li2MnO3含有量、特にMn4+の含有量であると考えられるし、上記の成分が高電圧下で電解質との間で有害な反応をしない安定性であると考えられる。
【0016】
Li2MnO3−LiCoO2固溶体系列のうち幾つかの組成物については既に報告されている。しかし、これまでの検討においては、この系列の材料に4.4Vより高電圧に充電しておらず、Mn4+についてはキャパシティーが低下することが報告されている(Numata and Yamanaka, Solid State Ionics, vol. 118(1999) pp. 117-120; Numata, Sakai and Yamanaka, Solid State Ionics, vol. 117(1999) pp. 257-263)。
【0017】
Zhan et al(Journal of Power Sources, v117(2003), 137-142)は、MnをTiで置換した材料の挙動について記載している。「不活性な」Li2TiO3は放電キャパシティーに致命的な影響を持つことが見出された。
【0018】
Li2MnO3をLiMO2の添加により広い範囲で化学的改変を行なった場合、例外的に大きい放電キャパシティーが得られた。これら組成物のほとんどはこれまでに報告されておらず、新規な材料系列を代表する。
【0019】
試験した新規な材料の幾つかは、従来では説明がつかないキャパシティーを発揮した。試験結果からは、組成を比較的小さく変動させることによって、放電電圧が調整可能であることも分かった。
【0020】
より複雑な新規材料の幾つかは、同一の結晶学的サイトに属する5種類の系列があった。多くの標準的な合成技術では単一相材料を得るのに十分な均質性が達成できない。このレベルの均質性を達成するために本発明において用いた合成技術は、改良版「蔗糖法」に基づいた分散/燃焼法と高エネルギーボールミリングである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、積層結晶構造を有し、全体組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、Mnが4+の酸化状態であり、Mが該構造を過度に崩壊させずに該構造に挿入するのに適したイオン半径を有する1種以上の遷移金属またはその他のカチオンである、非水性リチウムセル用の酸化リチウム正電極に関する。
【0022】
同様の構造中に嵌め込み可能であることを見出したカチオンとしては、全ての第一列遷移金属と、Al、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、Ga、Pがある。望ましいカチオンは、第一列遷移金属のうちでTi、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cuと、他の金属のうちでAl、Mo、W、Ta、Ga、Zrがある。最も望ましいカチオンは、Co、Ni、Ti、Fe、Cu、Alである。
【0023】
各実施例に記載した広い範囲の組成間で電気化学的な性質が類似しているのは共通のメカニズムが作用しているためであろう。これらの材料で観測されたキャパシティーは、同じ組成について知見可能な酸化状態に対する従来の観点に比べて非常に大きい値である。それが特に顕著なのは、Li2MnO3とLiCoO2との固溶体でNi2+が全く存在せずCoが3価の状態にある組成である。
【0024】
Li1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の組成の場合、理論キャパシティーは下記のようになるはずである。
【0025】
Mn4++M3+ → Mn4++M4+ 〜125mAh/g
900℃でか焼したLi1.2Mn0.4Co0.4O2に、低電流で4.6Vまで傾斜充電(taper-charged)した場合、1回目の充電キャパシティーは345mAh/gであったので、理論値と差は220mAh/gである。酸化される種は酸化物であり、他の成分ではないと仮定すると、下記のようになる。
【0026】
Li1.2Mn4+0.4Co3+0.4O2 →〔125mAh/g〕→ Li0.8Mn4+0.4Co4+0.4O2 →〔220mAh/g〕→ Li0.10Mn4+0.4Co4+0.4O1.65+0.35 'O'
Li0.10Mn0.4Co0.4O1.675は、等価な形としてLi0.125Mn0.5Co0.5O2と既述することができ、元の活性材料の質量について補正した値として約240mAh/gの理論放電キャパシティーを持つ。このメカニズムが、2サイクル目以降の電圧プロファイルが違ってくる原因であろう。1つの興味深い観測結果として、2回のフルサイクル後のLi1.2Mn0.4Co0.4O2の電圧曲線は、LiCo0.5Mn0.5O2(Kajiyama et al, Solid State Ionics, v149(2002)39-45)の電圧曲線と非常に類似しており、どちらの材料も充電曲線の初期では低電圧であるという特徴がある。更に、Li1.2Mn0.4Co0.4O2の電圧曲線は一度形成工程が完了してしまうとLiMn0.5Co0.5O2の電圧曲線(Makimura and Ohzuka, Jounal of Power Sources, v199-121(2003)156-160)と類似している。
【0027】
高電圧に充電する形成工程の後に、新たに内部形成されたカソード材料は長時間に渡って95〜98%に達する可逆性でサイクルできる。この挙動は、化学的手段で作製したLixMn0.5Co0.5O2に比べて明らかに優れており、o−LiMnO2を充放電サイクルして内部形成したLiMn2O4スピネル(Gummow et al, Materials Research Bulletin, v28(1993)1249-1255)に類似している。Al添加材(表1参照)の放電キャパシティーおよびキャパシティー保持率は、LiMn0.5Co0.375Al0.125O2の内部形成を前提とした理論キャパシティー204mAh/gに対して非常に良好である。
【0028】
Mn4+を含有させると、熱安定性、電圧安定性、高温サイクル性、放電キャパシティーが向上すると報告されている。
【0029】
作製した、より複雑な材料の幾つかは、異なる5種が単一の結晶学的サイトを分け合っている。多くの標準的な合成技術では、単相材料を得るのに十分な均質性が達成できない。このレベルの均質性を達成するために本発明で用いた合成技術は、キレート法をベースとして分散/燃焼技術と高エネルギーボールミル法とを組み合わせた技術である。この方法は、文献(Das, Materials Letters, v47(2001), 344-350)を出典とする蔗糖法ベースに改変した方法であり、結晶粒子サイズ<100nmの複合酸化物材料を容易に製造することができる。
【0030】
以下に、積層結晶構造を有し、内部酸化または外部酸化後の全体組成がLixMnyM1−yO2で表され、x≦0.20、Mnが4+の酸化状態であり、Mが適切な半径を持つ1種以上の遷移金属またはその他のカチオンである、非水性リチウムセル用の酸化リチウム正電極の実施例により、本発明の原理を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【実施例】
【0031】
〔実施例〕
本実施例では、〔(1−x)Li2MnO3−xLiNi1−yCoyO2(0≦x≦1、0≦y≦1)〕固溶体系列の諸材料の代表的な合成手順を説明する。Mn(NO3)2・4H2O、Ni(NO3)2・6H2O、Co(NO3)2・H2O、LiNO3を所定モル比で水に完全に溶解させた。全カチオンモル量に対して50%より多いモル量の蔗糖を添加した。濃硝酸で溶液のpHをpH1に調整した。溶液を加熱して水分を蒸発させた。水分がほとんど蒸発し尽くして粘性溶液とした後に更に加熱した。この段階で液は発泡し炭化し始めた。炭化が完了すると、炭素質の固体マトリクスは自然発火した。残留灰分を空気中にて800℃、740℃または900℃で、6時間か焼した。図1は(1−x)Li2MnO3−xLiNi1−yCoyO2(0≦x≦1、0≦y≦1)固溶体系列を示す3元状態図であり、合成した材料を黒塗りの菱形で示した。
【0032】
CuKα線を用いた粉末X線回折により各材料を解析した。前駆体である灰分中には見反応のLi2CO3が含まれていた。これに対し、空気中800℃×6時間のか焼後は、生成した材料の回折パタンにLi2CO3の痕跡は全く認められなかった。
【0033】
図2および図3に、それぞれ(1−x)Li2MnO3−LiNi0.75Co0.25O2(0≦x≦1)系列の材料およびLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2(0≦x≦0.4)系列の材料のX線回折パタンを示す。これらの系列は図1中の垂直および水平の各タイラインに対応している。か焼後の材料にはLi2CO3による反射は全く見られず、各材料とも完全に反応していることが示されている。図2の材料は、Li2MnO3に似たパタンから層状R−3mに似たパタンへの変化を示している。図3の材料は、いずれもLi2MnO3に似たパタンのままである。
【0034】
〔実施例2〕
実施例1で生成した材料から電極を作製した。すなわち、実施例1で得た酸化物材料:約78wt%、グラファイト:7wt%、Super S:7wt%、ポリ(ビニリデン・フロライド)を、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に混合してスラリーにした。このスラリーをアルミニウムフォイル上に載せて、85℃で乾燥させた後、プレス加工して円形の電極を打ち出した。2325コインセル機を用い、アルゴンを充填したグローブ・ボックス内で、得られた電極を電気化学セル内に組み込んだ。リチウム箔をアノードとし、多孔質ポリプロピレンをセパレータとし、1MのLiPF6を1:1のジメチル・カーボネート(DMC)とエチレン・カーボネート(EC)の電解質溶液中に入れた。セパレータを充填するのに総量70μlの電解質を用いた。得られた各セルについて、室温にて、活性物質1g当り10mAの一定電流で2.0Vと4.6Vの間で充放電サイクルを行なった。表1に、1サイクル目と30サイクル目のキャパシティー実測値を示す。図4に、実施例1において800℃のか焼により生成したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2(0≦x≦0.4)系列の材料について最初の3サイクルの電気化学的挙動を示す。図4に示した電圧曲線は、形成工程が早い回のサイクルで起きていることを示している。x=0.1、0.2、0.3の場合、形成工程は1サイクル後に完了しており、それ以降は高キャパシティー・高可逆性でサイクルが進行している。最終的に望みの材料は、化学的に敏感化した組成ではなくて、酸化により形成されたものである。x=0.4の場合は、この形成には1サイクルより多いサイクルが必要であり、2回目の充電時にはリチウムの抽出も増加する。x=0.0の場合のセル分極は、形成過程が極めてゆっくり進行するので、電圧を上げるか粒子径を小さくする必要のあることを示している。
【0035】
図5〜7に、740℃、800℃、900℃でか焼されたLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の各材料の放電キャパシティーを示す。図から、放電キャパシティーの挙動は組成とか焼温度の両方で変わることが分かる。ここに示した各材料は、遷移金属の含有量が従来のリチウムカソードバッテリーよりもかなり少ない。遷移金属の含有量が製造コストにかなりの影響を及ぼすことを考えると、ここに示したリチウムバッテリー用カソード材料すなわちLiMO2が通常有する遷移金属(TM)含有量に対するキャパシティーを比較することが有用である。すなわち、図5〜7において追加したプロットは遷移金属単位量当りの放電キャパシティーを示す。Li:TMの比が、従来のリチウム・バッテリー・カソード材料で1:1であったのに対して、Li1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列は1.2:0.8であるため、遷移金属単位量当りのキャパシティーを得るためのスケールファクターが1/0.8=1.25である。(1−x)Li2MnO3−LiNi1−yCoyO2(0≦x≦1、0≦y≦1)固溶体系列の他の材料、例えばLi1.158Mn0.316Ni0.263Co0.263O2は、スケールファクターが1/0.828=1.188である。
【0036】
極限まで充電した状態の組成は、早い回での非可逆性を考慮した総充電キャパシティーと、各カチオン含有量についての原子吸光分光法から得られた結果とを用いて計算できる。LiMO2組成での総カチオン含有量を2として、原子吸光比を算出した。800℃でか焼したLi2MnO3−LiNi1−xCoxO2(0≦x≦0.4)系列の材料について、上記計算の結果を表2に示す。
【0037】
この結果から、x=0.1、0.2、0.3の組成では充電後の材料はリチウム含有量が0.2未満であり、x=0.4の場合は0.2に非常に近いことが分かる。x=0.0の材料は、同程度のリチウム低下(delithiation)が達成できず、サイクル時のキャパシティーが低かった。
【0038】
〔実施例3〕
多くのリチウムバッテリー用カソード材料が良好な特性を高温で発揮できず、放電キャパシティーはサイクル回数の増加に伴い急速に減少する。本発明の材料の高温での電気化学挙動を評価した。室温に用いたものと同じセルを用いた。図8に、800℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.3Co0.1O2の55℃での放電キャパシティーを示す。1サイクル目以降は、電解質の分解を回避するために電圧限界を下げた。2サイクル目以降は、非常に高い可逆性で非常に安定したキャパシティーを発揮している。55℃での充放電サイクル続行中、平均放電電圧も全く安定していた。
【0039】
〔実施例4〕
実施例1にて800℃のか焼により生成した(1−x)Li2MnO3−xLiNi0.5Co0.5O2系列の組成物を用いて、実施例2と同様にして電気化学セルを作製した。得られた各セルを実施例2と同様に2.0Vと4.6Vの電圧限界値間で試験した。図9に(1−x)Li2MnO3−xLiNi0.5Co0.5O2系列の種々の組成について回折パタンを示し、図10に各組成についての電気化学特性を示す。図10には、遷移金属単位量当りに対して標準化した放電キャパシティーもプロットした。表3に、知見可能な酸化状態および構造の従来の観点に基づく理論キャパシティー値、蓄積充電量、完全充電時の極限リチウム含有量を示す。
【0040】
〔実施例5〕
置換成分を添加した組成についても検討した。図11に示すように、置換成分としてTi、Cu、Alを添加した材料も単一相として生成できた。これらの材料の生成も実施例1と同じくキレート法に基づくプロセスを行なったが、所要モル量の前駆体を添加した。すなわち、前駆体としては、(NH4)2TiO(C2H4)2・H2O、Cu(NO3)2・3H2O、Al(NO3)3・9H2Oを用いた。表1に、これら置換成分Al、Cu、Tiを添加した材料の1サイクル後と30サイクル後の放電キャパシティーを示す。Cu添加材およびTi添加材では放電キャパシティーが打撃を受けたが、キャパシティーはサイクル続行中、非常に安定していた。Li1.2Mn0.4Ni0.2Co0.1Al0.1O2はAl添加量が非常に多いため、非常に高い放電キャパシティーが得られた。従来のリチウムバッテリー用カソード材料ではこのように多量のAlを添加すると放電キャパシティーに大きな打撃を及ぼすと考えられていた。図12に、同じ材料について30サイクル目の充放電電圧曲線を示す。同図から、Ti添加は放電曲線に大きな影響を及ぼし、3.3V付近に明瞭な屈曲が生じていることが分かる。Al添加は平均放電電圧を増加させる効果がある。Li1.2Mn0.4Ni0.2Co0.1Al0.1O2はAl添加量が非常に多いため、放電キャパシティーが非常に大きく、30サイクル後で186mAh/gである。
【0041】
表3に、Al添加材、Ti添加材について、検知可能な酸化状態および構造の従来の観点に基づく理論キャパシティー値と、蓄積充電量、完全充電時の極限リチウム含有量を示す。
【0042】
〔実施例6〕
単一相のLi1.2Mn0.4Ni0.3Co0.1O2の生成には硝酸塩を用いる必要はない。X線回折の結果、前駆体として全て酢酸塩を用いるか、リチウム蟻酸塩と金属酢酸塩の組合せを用いれば、単一相の材料を生成できることが分かった。その他の生成条件は実施例1および実施例2と同じである。表1に、前駆体として硝酸塩を用いた場合およびリチウム蟻酸塩と酢酸塩の組合せを用いた場合の放電キャパシティーを示す。リチウム蟻酸塩と酢酸塩の組合せを用いた場合に特性が向上することが分かる。30サイクル後の放電キャパシティーは、硝酸塩の前駆体を用いた場合より約20mAh/g高い。
【0043】
〔実施例7〕
本実施例では、溶液ベースのキレート法以外の方法によって、同等の特性を持つ材料が生成できることを示す。Li2MnO3とLiCoO2をモル比1:1で混合し、高エネルギーボールミルで9時間混練した。得られた粉末に空気中にて740℃で6時間のか焼を施した。か焼前およびか焼後の材料をX線回折した結果、Li2MnO3の存在は認められなかった。か焼後の材料は単一相であり、混練した前駆体より結晶性が強かった。
【0044】
表1に示すように、ボールミルにより生成した材料の放電キャパシティーは、実施例2と同じサイクル条件下において、溶液ベースのキレート法により生成した材料とほぼ同等であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】Li2MnO3−LiCoO2−LiNiO2系三元状態図。菱形プロットは合成し検査した単一相材料を示す。
【図2】Li2MnO3−LiNi0.75−Co0.25O2固溶体系列の諸材料のX線回折パタン。
【図3】Li1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2(0≦x≦0.4)系列の諸材料のX線回折パタン。
【図4】1800℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の諸材料について、室温での1回目の充電−放電サイクル。サイクルは10mA/gで2.0V−4.6V間で行なった。
【図5】740℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の諸材料の、充電前の酸化リチウムの質量から算出した放電キャパシティーであり、遷移金属の含有量に対して標準化した値である。
【図6】800℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の諸材料の、充電前の酸化リチウムの質量から算出した放電キャパシティーであり、遷移金属の含有量に対して標準化した値である。
【図7】900℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の諸材料の、充電前の酸化リチウムの質量から算出した放電キャパシティーであり、遷移金属の含有量に対して標準化した値である。図中に示したように、Li1.2Mn0.4Co0.4O2については3サイクル分について30mA/gに変更した。
【図8】800℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.3Co0.1O2の、充電前の酸化リチウムの質量から算出した55℃における放電キャパシティーであり、遷移金属の含有量に対して標準化した値である。
【図9】800℃でか焼したLi2MnO3−LiNi0.5Co0.5O2固溶体系列の諸材料のX線回折パタン。
【図10】800℃でか焼したLi2MnO3−LiNi0.5Co0.5O2固溶体系列の諸材料の放電キャパシティー。
【図11】800℃でか焼した置換成分添加材のX線回折パタン。
【図12】800℃でか焼した種々の材料について30サイクル目の充放電電圧曲線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水性リチウムセルおよびバッテリー用の酸化リチウム正電極に関する。より詳しくは、本発明は酸化リチウム電極組成物および構造体であって、内部酸化後または外部酸化後の全体組成がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<1であって、Mが上記構造体を過度に崩壊させずに挿入可能な適切なイオン半径を持つ1種以上の遷移金属または他の金属カチオンである。同様な構造体に嵌め込み可能であることが見出されているカチオンとしては、全ての第一列遷移金属、Al、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、Ga、Pがある。望ましいカチオンとしては、第一列遷移金属のうちでTi、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cuなどと、Al、Mg、Mo、W、Ta、Ga、Zrなどの他の金属がある。最も望ましいカチオンとしては、Co、Ni、Ti、Al、Cu、Fe、Mgがある。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリーのカソードとして用いられるものの代表である層状酸化リチウムの理論的なキャパシティーは、現実に達成されるキャパシティーに比べて遥かに大きい。リチウムイオンバッテリーの理論的キャパシティーは、全てのリチウムが構造体の内外を可逆的に循環可能であるとした場合に実現されるキャパシティーである。例えばLiCoO2は、理論キャパシティーが274mAh/gであるのに対して、電気化学セル中で達成される代表的なキャパシティーは160mAh/g程度に過ぎず、理論値の58%である。Co3+の一部をNiのような他の3価のカチオンで置換すると、180mAh/g程度の若干大きな値が得られる(Delams, Saadoune and Rougier, J.Power Source, vol. 43-44, pp. 595-602, 1993)。
【0003】
これよりも複雑なCo、Ni、Mn系の材料、特にLiCo1/3Ni1/3O2について、Ohzukuが詳細に検討している。その報告によると、200mAh/gのキャパシティーが得られ、熱安定性も良好であった(Ohzuku et al. 米国特許出願10/242,052)。
【0004】
MがCo、Ni、Mnの組合せであるLiMO2のR−3m構造について、他に下記文献がある。
【0005】
Yabuuchi and Ohzuku, Journal of Power Sources, volumes 119-121, 1 June 2003, pages 171-174.
Wang et al., Journal of Power Sources, volumes 119-121, 1 June 2003, pages 189-194.
Lu et al., electrochemical and Solid State Letters, v4(2001), A200-203.
その他、Li2MO3とLiM’O2との固溶体をベースとした多くの層状構造体がリチウムイオンバッテリーの正電極として提案されている。上記でMはMn4+またはTi4+であり、M’は第一列遷移金属カチオンまたはその組合せであり、平均の酸化状態が3+である(米国特許6,677,082B2: Thackery et al.および米国特許出願09/799,935: Kieu and Ammundsen)。これらのざいりょうのキャパシティーは組成によって大きく変動するが、概ね110〜170mAh/g程度の範囲内である。
【0006】
これに対して、Li2MnO3とNiOまたはLiMn0.5Ni0.5OでMn4+および2+酸化状態のNiを含むものとの固溶体は、例外的に大きいキャパシティーを発揮する。特に、Li2MnO3とLiNi0.5Mn0.5O2との固溶体は、ある組成について2.5V/4.6V間のサイクルで室温では200mAh/g、55℃では240mAh/gのキャパシティーが観測された(Shin, Sun and Amine, Journal of Power Sources, v112(2002) 634-638)。同様に、Lu and Dahnの報告(J. Electrochem. Soc. v149(2002), A815-822)によると、Li2MnO3とNiOとの固溶体は、セルを4.8Vまで充電したときに、ある組成で230mAh/gに近い可逆的なキャパシティーが達成された。この材料は3.0V/4.4V間のサイクルで観測されたキャパシティーは遥かに小さく、組成によって85〜160mAh/g程度の変動をした。Li2MnO3とLiNi0.5Mn0.5O2との固溶体は、4.4Vより高電圧に充電すると内部変態が生ずるのが観察された。その結果得られた材料は遥かに高い可逆的キャパシティーを持つことが分かった。
【0007】
これまでに報告されている例外的な高キャパシティーはいずれも4.4Vより高電圧に充電した後で達成されており、用いた材料は積層構造の固溶体であって、4+の酸化状態のMnと2+の酸化状態のNiを含むものであった。より典型的には、上記のように高電圧に充電することは、カソード材料の電気化学特性にとって極めて有害である。
【0008】
本発明は、4.4Vより高電圧に充電することにより電気化学セル内での酸化により内部形成されるか、または、化学酸化により外部形成される酸化リチウムにより、可逆的なリチウム挿入のための例外的に高いキャパシティーを発揮する新規な組成物を提供する。
【0009】
特に、本発明においては、Ni2+を全く含有しない、Li2MnO3とLiCoO2との固溶体のような組成物が、高電圧に充電することによって重度に酸化した後に非常に大きなキャパシティーを発揮することができる。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、4.4Vより高電圧に充電することにより電気化学セル内での酸化により内部形成されるか、または、化学酸化により外部形成される酸化リチウムにより、可逆的なリチウム挿入のための例外的に高いキャパシティーを発揮する新規な組成物を提供する。
【0011】
特に、本発明においては、Ni2+を全く含有しない、Li2MnO3とLiCoO2との固溶体のような組成物が、高電圧に充電することによって重度に酸化した後に非常に大きなキャパシティーを発揮することができる。
【0012】
本発明の一態様によれば、全体組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<1、MnがMn4+であり、Mが1種以上の遷移金属またはその他のカチオンであって構造を過度に崩壊させずに該構造に挿入するのに適したイオン半径を持つ、新規な酸化リチウム材料が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、本発明の新規な材料はリチウムイオンセルまたはバッテリーのような非水性リチウムセル内の正電極として有用な積層結晶構造体である。
【0014】
本発明の他の態様によれば、全体組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<1であり、Mが1種以上の遷移金属または他のカチオンであって材料構造の過度の崩壊をもたらさずに該構造中に挿入されるのに適したイオン半径を持っている、新規な酸化リチウム材料を製造する方法であって、下記の工程:文献(Das, Material Letters, v47(2001),344-350)に最初に報告されている周知の「蔗糖法」の改良版を用いて高リチウム含有量の前駆体を用意する工程、および、次いで内部酸化または外部酸化によって組成および構造を改変する工程を含む方法が提供される。この改変は、Li2MnO3とLiNi0.5Mn0.5O2またはNiOとの固溶体相に4.4V以上、望ましくは4.4〜5Vの範囲内の電圧まで充電した際に生ずる内部変態を含んでいる。
【0015】
本発明者は、Mn−Ni系について従来報告されている特異なキャパシティーは、従来考えられていたよりもっと多様性を含む過程であることを見出した。この系の材料では、Niカチオンに代えまたは加えて、多くの金属イオンが作用可能である。その選択は、「イオン半径」すなわち材料の構造を過度に崩壊させずに該構造中に嵌め込み可能であるか否かということに基づいている。同様の構造に嵌め込み可能であることが分かったカチオンとしては、全ての第一列遷移金属と、Al、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、Ga、Pがある。望ましいカチオンは、第一列遷移金属としてTi、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cuと、他の金属としてAl、Mg、Mo、W、Ta、Ga、Zrである。これらの成分を用いた組成は、知見可能な範囲内の酸化状態についての従来の観点に基づいて算出された従来の理論的キャパシティーを超えた、非常に高いキャパシティーを発揮できる。例えば、従来はMn4+もO2−も適用条件下では酸化されないと仮定されていた。上記の成分によるキャパシティーは、このような仮定に基づく計算値を超えている。また、電気化学的に不活性なAl3+などの他のカチオンをこれらの成分で置換すると更に高いキャパシティーと安定なサイクルを得ることができる(実施例5)。加えて、Al添加は材料の平均充電電圧を増加させる効果があった。これら特異なキャパシティーの成因は、Li2MnO3含有量、特にMn4+の含有量であると考えられるし、上記の成分が高電圧下で電解質との間で有害な反応をしない安定性であると考えられる。
【0016】
Li2MnO3−LiCoO2固溶体系列のうち幾つかの組成物については既に報告されている。しかし、これまでの検討においては、この系列の材料に4.4Vより高電圧に充電しておらず、Mn4+についてはキャパシティーが低下することが報告されている(Numata and Yamanaka, Solid State Ionics, vol. 118(1999) pp. 117-120; Numata, Sakai and Yamanaka, Solid State Ionics, vol. 117(1999) pp. 257-263)。
【0017】
Zhan et al(Journal of Power Sources, v117(2003), 137-142)は、MnをTiで置換した材料の挙動について記載している。「不活性な」Li2TiO3は放電キャパシティーに致命的な影響を持つことが見出された。
【0018】
Li2MnO3をLiMO2の添加により広い範囲で化学的改変を行なった場合、例外的に大きい放電キャパシティーが得られた。これら組成物のほとんどはこれまでに報告されておらず、新規な材料系列を代表する。
【0019】
試験した新規な材料の幾つかは、従来では説明がつかないキャパシティーを発揮した。試験結果からは、組成を比較的小さく変動させることによって、放電電圧が調整可能であることも分かった。
【0020】
より複雑な新規材料の幾つかは、同一の結晶学的サイトに属する5種類の系列があった。多くの標準的な合成技術では単一相材料を得るのに十分な均質性が達成できない。このレベルの均質性を達成するために本発明において用いた合成技術は、改良版「蔗糖法」に基づいた分散/燃焼法と高エネルギーボールミリングである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、積層結晶構造を有し、全体組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、Mnが4+の酸化状態であり、Mが該構造を過度に崩壊させずに該構造に挿入するのに適したイオン半径を有する1種以上の遷移金属またはその他のカチオンである、非水性リチウムセル用の酸化リチウム正電極に関する。
【0022】
同様の構造中に嵌め込み可能であることを見出したカチオンとしては、全ての第一列遷移金属と、Al、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、Ga、Pがある。望ましいカチオンは、第一列遷移金属のうちでTi、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cuと、他の金属のうちでAl、Mo、W、Ta、Ga、Zrがある。最も望ましいカチオンは、Co、Ni、Ti、Fe、Cu、Alである。
【0023】
各実施例に記載した広い範囲の組成間で電気化学的な性質が類似しているのは共通のメカニズムが作用しているためであろう。これらの材料で観測されたキャパシティーは、同じ組成について知見可能な酸化状態に対する従来の観点に比べて非常に大きい値である。それが特に顕著なのは、Li2MnO3とLiCoO2との固溶体でNi2+が全く存在せずCoが3価の状態にある組成である。
【0024】
Li1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の組成の場合、理論キャパシティーは下記のようになるはずである。
【0025】
Mn4++M3+ → Mn4++M4+ 〜125mAh/g
900℃でか焼したLi1.2Mn0.4Co0.4O2に、低電流で4.6Vまで傾斜充電(taper-charged)した場合、1回目の充電キャパシティーは345mAh/gであったので、理論値と差は220mAh/gである。酸化される種は酸化物であり、他の成分ではないと仮定すると、下記のようになる。
【0026】
Li1.2Mn4+0.4Co3+0.4O2 →〔125mAh/g〕→ Li0.8Mn4+0.4Co4+0.4O2 →〔220mAh/g〕→ Li0.10Mn4+0.4Co4+0.4O1.65+0.35 'O'
Li0.10Mn0.4Co0.4O1.675は、等価な形としてLi0.125Mn0.5Co0.5O2と既述することができ、元の活性材料の質量について補正した値として約240mAh/gの理論放電キャパシティーを持つ。このメカニズムが、2サイクル目以降の電圧プロファイルが違ってくる原因であろう。1つの興味深い観測結果として、2回のフルサイクル後のLi1.2Mn0.4Co0.4O2の電圧曲線は、LiCo0.5Mn0.5O2(Kajiyama et al, Solid State Ionics, v149(2002)39-45)の電圧曲線と非常に類似しており、どちらの材料も充電曲線の初期では低電圧であるという特徴がある。更に、Li1.2Mn0.4Co0.4O2の電圧曲線は一度形成工程が完了してしまうとLiMn0.5Co0.5O2の電圧曲線(Makimura and Ohzuka, Jounal of Power Sources, v199-121(2003)156-160)と類似している。
【0027】
高電圧に充電する形成工程の後に、新たに内部形成されたカソード材料は長時間に渡って95〜98%に達する可逆性でサイクルできる。この挙動は、化学的手段で作製したLixMn0.5Co0.5O2に比べて明らかに優れており、o−LiMnO2を充放電サイクルして内部形成したLiMn2O4スピネル(Gummow et al, Materials Research Bulletin, v28(1993)1249-1255)に類似している。Al添加材(表1参照)の放電キャパシティーおよびキャパシティー保持率は、LiMn0.5Co0.375Al0.125O2の内部形成を前提とした理論キャパシティー204mAh/gに対して非常に良好である。
【0028】
Mn4+を含有させると、熱安定性、電圧安定性、高温サイクル性、放電キャパシティーが向上すると報告されている。
【0029】
作製した、より複雑な材料の幾つかは、異なる5種が単一の結晶学的サイトを分け合っている。多くの標準的な合成技術では、単相材料を得るのに十分な均質性が達成できない。このレベルの均質性を達成するために本発明で用いた合成技術は、キレート法をベースとして分散/燃焼技術と高エネルギーボールミル法とを組み合わせた技術である。この方法は、文献(Das, Materials Letters, v47(2001), 344-350)を出典とする蔗糖法ベースに改変した方法であり、結晶粒子サイズ<100nmの複合酸化物材料を容易に製造することができる。
【0030】
以下に、積層結晶構造を有し、内部酸化または外部酸化後の全体組成がLixMnyM1−yO2で表され、x≦0.20、Mnが4+の酸化状態であり、Mが適切な半径を持つ1種以上の遷移金属またはその他のカチオンである、非水性リチウムセル用の酸化リチウム正電極の実施例により、本発明の原理を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【実施例】
【0031】
〔実施例〕
本実施例では、〔(1−x)Li2MnO3−xLiNi1−yCoyO2(0≦x≦1、0≦y≦1)〕固溶体系列の諸材料の代表的な合成手順を説明する。Mn(NO3)2・4H2O、Ni(NO3)2・6H2O、Co(NO3)2・H2O、LiNO3を所定モル比で水に完全に溶解させた。全カチオンモル量に対して50%より多いモル量の蔗糖を添加した。濃硝酸で溶液のpHをpH1に調整した。溶液を加熱して水分を蒸発させた。水分がほとんど蒸発し尽くして粘性溶液とした後に更に加熱した。この段階で液は発泡し炭化し始めた。炭化が完了すると、炭素質の固体マトリクスは自然発火した。残留灰分を空気中にて800℃、740℃または900℃で、6時間か焼した。図1は(1−x)Li2MnO3−xLiNi1−yCoyO2(0≦x≦1、0≦y≦1)固溶体系列を示す3元状態図であり、合成した材料を黒塗りの菱形で示した。
【0032】
CuKα線を用いた粉末X線回折により各材料を解析した。前駆体である灰分中には見反応のLi2CO3が含まれていた。これに対し、空気中800℃×6時間のか焼後は、生成した材料の回折パタンにLi2CO3の痕跡は全く認められなかった。
【0033】
図2および図3に、それぞれ(1−x)Li2MnO3−LiNi0.75Co0.25O2(0≦x≦1)系列の材料およびLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2(0≦x≦0.4)系列の材料のX線回折パタンを示す。これらの系列は図1中の垂直および水平の各タイラインに対応している。か焼後の材料にはLi2CO3による反射は全く見られず、各材料とも完全に反応していることが示されている。図2の材料は、Li2MnO3に似たパタンから層状R−3mに似たパタンへの変化を示している。図3の材料は、いずれもLi2MnO3に似たパタンのままである。
【0034】
〔実施例2〕
実施例1で生成した材料から電極を作製した。すなわち、実施例1で得た酸化物材料:約78wt%、グラファイト:7wt%、Super S:7wt%、ポリ(ビニリデン・フロライド)を、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に混合してスラリーにした。このスラリーをアルミニウムフォイル上に載せて、85℃で乾燥させた後、プレス加工して円形の電極を打ち出した。2325コインセル機を用い、アルゴンを充填したグローブ・ボックス内で、得られた電極を電気化学セル内に組み込んだ。リチウム箔をアノードとし、多孔質ポリプロピレンをセパレータとし、1MのLiPF6を1:1のジメチル・カーボネート(DMC)とエチレン・カーボネート(EC)の電解質溶液中に入れた。セパレータを充填するのに総量70μlの電解質を用いた。得られた各セルについて、室温にて、活性物質1g当り10mAの一定電流で2.0Vと4.6Vの間で充放電サイクルを行なった。表1に、1サイクル目と30サイクル目のキャパシティー実測値を示す。図4に、実施例1において800℃のか焼により生成したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2(0≦x≦0.4)系列の材料について最初の3サイクルの電気化学的挙動を示す。図4に示した電圧曲線は、形成工程が早い回のサイクルで起きていることを示している。x=0.1、0.2、0.3の場合、形成工程は1サイクル後に完了しており、それ以降は高キャパシティー・高可逆性でサイクルが進行している。最終的に望みの材料は、化学的に敏感化した組成ではなくて、酸化により形成されたものである。x=0.4の場合は、この形成には1サイクルより多いサイクルが必要であり、2回目の充電時にはリチウムの抽出も増加する。x=0.0の場合のセル分極は、形成過程が極めてゆっくり進行するので、電圧を上げるか粒子径を小さくする必要のあることを示している。
【0035】
図5〜7に、740℃、800℃、900℃でか焼されたLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の各材料の放電キャパシティーを示す。図から、放電キャパシティーの挙動は組成とか焼温度の両方で変わることが分かる。ここに示した各材料は、遷移金属の含有量が従来のリチウムカソードバッテリーよりもかなり少ない。遷移金属の含有量が製造コストにかなりの影響を及ぼすことを考えると、ここに示したリチウムバッテリー用カソード材料すなわちLiMO2が通常有する遷移金属(TM)含有量に対するキャパシティーを比較することが有用である。すなわち、図5〜7において追加したプロットは遷移金属単位量当りの放電キャパシティーを示す。Li:TMの比が、従来のリチウム・バッテリー・カソード材料で1:1であったのに対して、Li1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列は1.2:0.8であるため、遷移金属単位量当りのキャパシティーを得るためのスケールファクターが1/0.8=1.25である。(1−x)Li2MnO3−LiNi1−yCoyO2(0≦x≦1、0≦y≦1)固溶体系列の他の材料、例えばLi1.158Mn0.316Ni0.263Co0.263O2は、スケールファクターが1/0.828=1.188である。
【0036】
極限まで充電した状態の組成は、早い回での非可逆性を考慮した総充電キャパシティーと、各カチオン含有量についての原子吸光分光法から得られた結果とを用いて計算できる。LiMO2組成での総カチオン含有量を2として、原子吸光比を算出した。800℃でか焼したLi2MnO3−LiNi1−xCoxO2(0≦x≦0.4)系列の材料について、上記計算の結果を表2に示す。
【0037】
この結果から、x=0.1、0.2、0.3の組成では充電後の材料はリチウム含有量が0.2未満であり、x=0.4の場合は0.2に非常に近いことが分かる。x=0.0の材料は、同程度のリチウム低下(delithiation)が達成できず、サイクル時のキャパシティーが低かった。
【0038】
〔実施例3〕
多くのリチウムバッテリー用カソード材料が良好な特性を高温で発揮できず、放電キャパシティーはサイクル回数の増加に伴い急速に減少する。本発明の材料の高温での電気化学挙動を評価した。室温に用いたものと同じセルを用いた。図8に、800℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.3Co0.1O2の55℃での放電キャパシティーを示す。1サイクル目以降は、電解質の分解を回避するために電圧限界を下げた。2サイクル目以降は、非常に高い可逆性で非常に安定したキャパシティーを発揮している。55℃での充放電サイクル続行中、平均放電電圧も全く安定していた。
【0039】
〔実施例4〕
実施例1にて800℃のか焼により生成した(1−x)Li2MnO3−xLiNi0.5Co0.5O2系列の組成物を用いて、実施例2と同様にして電気化学セルを作製した。得られた各セルを実施例2と同様に2.0Vと4.6Vの電圧限界値間で試験した。図9に(1−x)Li2MnO3−xLiNi0.5Co0.5O2系列の種々の組成について回折パタンを示し、図10に各組成についての電気化学特性を示す。図10には、遷移金属単位量当りに対して標準化した放電キャパシティーもプロットした。表3に、知見可能な酸化状態および構造の従来の観点に基づく理論キャパシティー値、蓄積充電量、完全充電時の極限リチウム含有量を示す。
【0040】
〔実施例5〕
置換成分を添加した組成についても検討した。図11に示すように、置換成分としてTi、Cu、Alを添加した材料も単一相として生成できた。これらの材料の生成も実施例1と同じくキレート法に基づくプロセスを行なったが、所要モル量の前駆体を添加した。すなわち、前駆体としては、(NH4)2TiO(C2H4)2・H2O、Cu(NO3)2・3H2O、Al(NO3)3・9H2Oを用いた。表1に、これら置換成分Al、Cu、Tiを添加した材料の1サイクル後と30サイクル後の放電キャパシティーを示す。Cu添加材およびTi添加材では放電キャパシティーが打撃を受けたが、キャパシティーはサイクル続行中、非常に安定していた。Li1.2Mn0.4Ni0.2Co0.1Al0.1O2はAl添加量が非常に多いため、非常に高い放電キャパシティーが得られた。従来のリチウムバッテリー用カソード材料ではこのように多量のAlを添加すると放電キャパシティーに大きな打撃を及ぼすと考えられていた。図12に、同じ材料について30サイクル目の充放電電圧曲線を示す。同図から、Ti添加は放電曲線に大きな影響を及ぼし、3.3V付近に明瞭な屈曲が生じていることが分かる。Al添加は平均放電電圧を増加させる効果がある。Li1.2Mn0.4Ni0.2Co0.1Al0.1O2はAl添加量が非常に多いため、放電キャパシティーが非常に大きく、30サイクル後で186mAh/gである。
【0041】
表3に、Al添加材、Ti添加材について、検知可能な酸化状態および構造の従来の観点に基づく理論キャパシティー値と、蓄積充電量、完全充電時の極限リチウム含有量を示す。
【0042】
〔実施例6〕
単一相のLi1.2Mn0.4Ni0.3Co0.1O2の生成には硝酸塩を用いる必要はない。X線回折の結果、前駆体として全て酢酸塩を用いるか、リチウム蟻酸塩と金属酢酸塩の組合せを用いれば、単一相の材料を生成できることが分かった。その他の生成条件は実施例1および実施例2と同じである。表1に、前駆体として硝酸塩を用いた場合およびリチウム蟻酸塩と酢酸塩の組合せを用いた場合の放電キャパシティーを示す。リチウム蟻酸塩と酢酸塩の組合せを用いた場合に特性が向上することが分かる。30サイクル後の放電キャパシティーは、硝酸塩の前駆体を用いた場合より約20mAh/g高い。
【0043】
〔実施例7〕
本実施例では、溶液ベースのキレート法以外の方法によって、同等の特性を持つ材料が生成できることを示す。Li2MnO3とLiCoO2をモル比1:1で混合し、高エネルギーボールミルで9時間混練した。得られた粉末に空気中にて740℃で6時間のか焼を施した。か焼前およびか焼後の材料をX線回折した結果、Li2MnO3の存在は認められなかった。か焼後の材料は単一相であり、混練した前駆体より結晶性が強かった。
【0044】
表1に示すように、ボールミルにより生成した材料の放電キャパシティーは、実施例2と同じサイクル条件下において、溶液ベースのキレート法により生成した材料とほぼ同等であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】Li2MnO3−LiCoO2−LiNiO2系三元状態図。菱形プロットは合成し検査した単一相材料を示す。
【図2】Li2MnO3−LiNi0.75−Co0.25O2固溶体系列の諸材料のX線回折パタン。
【図3】Li1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2(0≦x≦0.4)系列の諸材料のX線回折パタン。
【図4】1800℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の諸材料について、室温での1回目の充電−放電サイクル。サイクルは10mA/gで2.0V−4.6V間で行なった。
【図5】740℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の諸材料の、充電前の酸化リチウムの質量から算出した放電キャパシティーであり、遷移金属の含有量に対して標準化した値である。
【図6】800℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の諸材料の、充電前の酸化リチウムの質量から算出した放電キャパシティーであり、遷移金属の含有量に対して標準化した値である。
【図7】900℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.4−xCoxO2系列の諸材料の、充電前の酸化リチウムの質量から算出した放電キャパシティーであり、遷移金属の含有量に対して標準化した値である。図中に示したように、Li1.2Mn0.4Co0.4O2については3サイクル分について30mA/gに変更した。
【図8】800℃でか焼したLi1.2Mn0.4Ni0.3Co0.1O2の、充電前の酸化リチウムの質量から算出した55℃における放電キャパシティーであり、遷移金属の含有量に対して標準化した値である。
【図9】800℃でか焼したLi2MnO3−LiNi0.5Co0.5O2固溶体系列の諸材料のX線回折パタン。
【図10】800℃でか焼したLi2MnO3−LiNi0.5Co0.5O2固溶体系列の諸材料の放電キャパシティー。
【図11】800℃でか焼した置換成分添加材のX線回折パタン。
【図12】800℃でか焼した種々の材料について30サイクル目の充放電電圧曲線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層結晶構造を有し、全体組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<1、Mnが4+の酸化状態であり、Mが1種以上の遷移金属またはその他のカチオンである酸化リチウム電極組成物および構造体。
【請求項2】
請求項1において、Mが他の全ての第一列遷移金属すなわちTi、V、Cr、Fe、Co、NiおよびCuと、適切なイオン半径を持つ他のカチオンすなわちAl、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、GaおよびPとから選択され、ただしNi単独ではない、ことを特徴とする材料。
【請求項3】
請求項1において、Mが第一列遷移金属すなわちTi、V、Cr、Fe、Co、NiおよびCuと、Al、Mo、W、Ta、GaおよびZrのような他の金属カチオンとから選択された1種以上の遷移金属または他のカチオンであることを特徴とする材料。
【請求項4】
請求項1において、Mが第一列遷移金属とAlとから選択された1種以上の遷移金属または他の金属カチオンであることを特徴とする材料。
【請求項5】
先行する請求項のいずれかの材料の、リチウムイオンセル等の非水性Liセルの正電極としての使用。
【請求項6】
組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<2、Mnが4+の酸化状態であり、Mが1種以上の遷移金属またはその他のカチオンである材料の作製方法において、組成がLixMnyM1−yO2、xは0以上、Mは1種以上の遷移金属または他のカチオンである材料をリチウムイオンセル中のカソードとして準備し、そして該セルに高電圧で充電することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6において、Mが他の全ての第一列遷移金属すなわちTi、V、Cr、Fe、Co、NiおよびCuと、適切なイオン半径を持つ他のカチオンすなわちAl、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、GaおよびPとから選択され、ただしNi単独ではない、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6において、Mが第一列遷移金属すなわちTi、V、Cr、Fe、Co、NiおよびCuと、Al、Mo、W、Ta、GaおよびZrのような他の金属カチオンとから選択された1種以上の遷移金属または他のカチオンであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6において、Mが第一列遷移金属とAlとから選択された1種以上の遷移金属または他の金属カチオンであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項6から9までのいずれか1項において、上記高電圧が4.4V〜5Vの範囲内であることを特徴とする方法。
【請求項1】
積層結晶構造を有し、全体組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<1、Mnが4+の酸化状態であり、Mが1種以上の遷移金属またはその他のカチオンである酸化リチウム電極組成物および構造体。
【請求項2】
請求項1において、Mが他の全ての第一列遷移金属すなわちTi、V、Cr、Fe、Co、NiおよびCuと、適切なイオン半径を持つ他のカチオンすなわちAl、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、GaおよびPとから選択され、ただしNi単独ではない、ことを特徴とする材料。
【請求項3】
請求項1において、Mが第一列遷移金属すなわちTi、V、Cr、Fe、Co、NiおよびCuと、Al、Mo、W、Ta、GaおよびZrのような他の金属カチオンとから選択された1種以上の遷移金属または他のカチオンであることを特徴とする材料。
【請求項4】
請求項1において、Mが第一列遷移金属とAlとから選択された1種以上の遷移金属または他の金属カチオンであることを特徴とする材料。
【請求項5】
先行する請求項のいずれかの材料の、リチウムイオンセル等の非水性Liセルの正電極としての使用。
【請求項6】
組成式がLixMnyM1−yO2で表され、0≦x≦0.20、0<y<2、Mnが4+の酸化状態であり、Mが1種以上の遷移金属またはその他のカチオンである材料の作製方法において、組成がLixMnyM1−yO2、xは0以上、Mは1種以上の遷移金属または他のカチオンである材料をリチウムイオンセル中のカソードとして準備し、そして該セルに高電圧で充電することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6において、Mが他の全ての第一列遷移金属すなわちTi、V、Cr、Fe、Co、NiおよびCuと、適切なイオン半径を持つ他のカチオンすなわちAl、Mg、Mo、W、Ta、Si、Sn、Zr、Be、Ca、GaおよびPとから選択され、ただしNi単独ではない、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6において、Mが第一列遷移金属すなわちTi、V、Cr、Fe、Co、NiおよびCuと、Al、Mo、W、Ta、GaおよびZrのような他の金属カチオンとから選択された1種以上の遷移金属または他のカチオンであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6において、Mが第一列遷移金属とAlとから選択された1種以上の遷移金属または他の金属カチオンであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項6から9までのいずれか1項において、上記高電圧が4.4V〜5Vの範囲内であることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−503102(P2007−503102A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529498(P2006−529498)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000770
【国際公開番号】WO2004/107480
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(302046528)ナショナル・リサーチ・カウンシル・オブ・カナダ (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000770
【国際公開番号】WO2004/107480
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(302046528)ナショナル・リサーチ・カウンシル・オブ・カナダ (15)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]