説明

リチウム二次電池用負極活物質、この製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池

【課題】リチウム二次電池用負極活物質、この製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】炭素系物質を含み、この炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値での半値幅が2.5°〜6.0°であり、20°〜30°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比が1.0〜100.0であるリチウム二次電池用負極活物質、この製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極活物質、この製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム二次電池は、有機電解液を用いることにより、既存のアルカリ水溶液を用いた電池よりも2倍以上の高い放電電圧を示し、その結果、高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
このようなリチウム二次電池は、リチウムを挿入(インターカレーション)および脱離(デインターカレーション)することができる正極活物質を含む正極、およびリチウムを挿入および脱離することができる負極活物質を含む負極を含む電池セルに電解液を注入して用いられる。
【0004】
上記リチウム二次電池の長所とスーパーキャパシタの長所をすべて生かした次世代電池、すなわち、高いエネルギー密度、サイクル寿命特性、安定性などに優れた次世代電池に対する研究が初期段階で進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第0496274号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2009−0052775号公報
【特許文献3】韓国登録特許第0960139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的としては、高容量を有し、高率特性および高率寿命特性が優れたリチウム二次電池用負極活物質を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的としては、上記リチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的としては、上記負極活物質を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、炭素系物質を含み、前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値での半値幅が2.5°〜6.0°であり、20°〜30°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比が1.0〜100.0である、リチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0010】
前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、バックグラウンド高さ(A)に対するピーク高さ(B)の比率(RAB)が2.0〜4.0であってもよい。
【0011】
前記炭素系物質に含まれている炭素の層間距離d(002)は、3.370〜3.434Åであってもよい。
【0012】
前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値での半値幅が3.5°〜5.5°であってもよい。
【0013】
前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値に対する42°〜45°の2θ値のピーク面積比が、1.0〜100.0であってもよい。
【0014】
前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、42°〜45°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比が、0.1〜50.0であってもよい。
【0015】
前記炭素系物質の比表面積は、2.5〜20m/gであってもよい。
【0016】
前記炭素系物質に含まれている炭素は、L10〜35Åの格子定数を有してもよい。
【0017】
前記炭素系物質のタップ密度は、0.30〜1.00g/cmであってもよい。
【0018】
前記炭素系物質の真密度は、1.00〜3.00g/cmであってもよい。
【0019】
本発明の他の側面によれば、炭素系物質を準備する段階、前記炭素系物質を900〜150.0℃の温度で焼成する段階を含み、前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値での半値幅が2.5°〜6.0°であり、20°〜30°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比が1.0〜100.0である、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0020】
本発明のさらに他の側面によれば、正極、負極活物質を含む負極、セパレータ、および電解液を含み、前記負極活物質が上記したリチウム二次電池用負極活物質である、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
高容量を有し、高率特性および高率寿命特性が優れたリチウム二次電池、一例としては、高入出力のハイブリッド自動車用リチウムイオン電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態に係るリチウム二次電池を示す概略図である。
【図2A】実施例1による負極活物質のSEM写真を示す。
【図2B】比較例2による負極活物質のSEM写真を示す。
【図3】実施例1と比較例1および2による負極活物質のXRDパターンを示すグラフである。
【図4】実施例1に係る負極活物質のEDS分析グラフである。
【図5】実施例1および比較例2によるリチウム二次電池の高率寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものに過ぎず、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0024】
一実施形態に係るリチウム二次電池用負極活物質は、炭素系物質を含む。
【0025】
上記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRD(X線回折)パターンにおいて、20°〜30°の2θ値での半値幅が2.5°〜6.0°の範囲を有するが、具体的には、3.5°〜5.5°の範囲を有してもよい。また、上記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比が1.0〜100.0の範囲を有するが、具体的には、1.0〜50.0の範囲を有してもよい。この範囲の半値幅とピーク面積比を有する炭素系物質は低い結晶性を有するが、これによって低結晶性の炭素系物質を負極活物質として用いる場合、層構造の不完全性によって生じる空隙、先端面、および分子クラスタ間に起こる分子架橋(molecular bridging)反応によって生じる層間によって高容量を得ることができ、高率特性および高率寿命特性を得ることができる。
【0026】
上記半値幅は、ピークの強度の最低点と最高点の間の50%となる点における全幅を意味する。
【0027】
上記ピークの面積は、積分して計算されてもよい。
【0028】
上記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、バックグラウンド高さ(A)に対するピーク高さ(B)の比率(RAB)が2.0〜4.0であってもよい。ここで、上記バックグラウンド高さ(A)は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいてピークの最低点におけるピークの強度を意味し、上記ピーク高さ(B)は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいてピークの最低点と最高点の間のピークの強度を意味する。
【0029】
また、上記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値に対する42°〜45°の2θ値のピーク面積比が1.0〜100.0の範囲を有してもよく、具体的には、1.0〜50.0の範囲を有してもよい。また、上記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、42°〜45°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比が0.1〜50.0の範囲を有してもよく、具体的には、0.1〜20.0の範囲を有してもよい。この範囲のピーク面積比を有する炭素系物質は低い結晶性を有するが、これによって低結晶性の炭素系物質を負極活物質に用いる場合、高率特性および高率における寿命特性が優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0030】
上記炭素系物質は、具体的に、この範囲の半値幅とピーク面積比を有する、例えば、低結晶性のソフトカーボンを用いてもよい。上記ソフトカーボンとは、黒鉛化性カーボンであって、原子配列が層状構造を形成しやすいように配列しており、熱処理温度の増加によって容易に黒鉛構造に変化するカーボンを示す。
【0031】
上記炭素系物質の平均粒径(D50)は5〜20μmであってもよく、具体的には、5〜15μmであってもよい。この範囲の平均粒径(D50)を有する炭素系物質を負極活物質として用いる場合、低結晶性の炭素系物質を得ることができるが、これによって優れた高率特性および高率における寿命特性を得ることができる。
【0032】
上記炭素系物質の炭素の層間距離d(002)は3.00〜5.00Åであってもよく、具体的には、3.370〜3.434Åであってもよい。また、上記炭素系物質は、L1000〜3000ÅおよびL10〜35Åの格子定数を有してもよく、具体的には、L1000〜2000ÅおよびL20〜35Åの格子定数を有してもよい。この範囲の層間距離d(002)および/または格子定数を有する炭素系物質を負極活物質として用いる場合、低結晶性の炭素系物質を得ることができるが、これによって優れた高率特性および高率における寿命特性を得ることができる。
【0033】
上記炭素系物質の比表面積は2.5〜20m/gであってもよく、具体的には、1〜10m/gであってもよい。この範囲の比表面積を有する炭素系物質を負極活物質として用いる場合、低結晶性の炭素系物質を得ることができるが、これによって優れた高率特性および高率における寿命特性を得ることができる。
【0034】
上記炭素系物質のタップ密度は0.30〜1.00g/cmであってもよく、具体的には、0.60〜1.00g/cmであってもよい。また、上記炭素系物質の真密度は1.00〜3.00g/cmであってもよく、具体的には、1.50〜2.50g/cmであってもよい。この範囲のタップ密度および/または真密度を有する炭素系物質を負極活物質として用いる場合、低結晶性の炭素系物質を得ることができるが、これによって優れた高率特性および高率における寿命特性を得ることができる。
【0035】
上記低結晶性を有する炭素系物質は、炭素系物質を900〜15000℃、具体的には、900〜1200℃で焼成させて得てもよい。
【0036】
上記炭素系物質は、ソフトカーボンを用いてもよい。
【0037】
以下、上記負極活物質を含むリチウム二次電池について、図1を参照しながら説明する。
【0038】
図1は、一実施形態に係るリチウム二次電池を示す概略図である。
【0039】
図1を参照すれば、一実施形態に係るリチウム二次電池3は、正極5、負極6、および正極5と負極6の間に位置するセパレータ7を含む電極組立体4が電池ケース8に位置し、このケース上部に注入される電解液を含み、キャッププレート11で密封されている角型タイプの電池である。もちろん、一実施形態に係るリチウム二次電池が上記角型に限定されるものではなく、一実施形態に係るリチウム二次電池用電解液を含んで電池として作動できるものであれば、円筒型、コイン型、パウチ型など、いかなる形態も可能であることは当然である。
【0040】
上記負極は、負極集電体および上記負極集電体上に形成されている負極活物質層を含む。
【0041】
上記負極集電体は、銅箔を用いてもよい。
【0042】
上記負極活物質層は、負極活物質、バインダー、および選択的に導電材を含む。
【0043】
上記負極活物質としては、上述した低結晶性の炭素系物質を用いることができる。
【0044】
上記バインダーは、負極活物質粒子を互いに適切に付着させ、または負極活物質を電流集電体に適切に付着させる役割を行うが、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化したポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレート化したスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
上記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を起こさずに電子伝導性材料であれば、いずれのものでも使用が可能であるが、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質、ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、またはこれらの混合物を含む導電性材料を用いてもよい。
【0046】
上記負極は、上記負極活物質、上記導電材、および上記バインダーを溶媒中で混合して負極活物質層組成物を製造し、上記負極活物質層組成物を上記集電体に塗布して製造することができる。上記溶媒としてはN−メチルピロリドンなどを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0047】
低結晶性の炭素系物質を負極活物質として用いて形成された負極の合材密度は2.0〜10.0mg/cmであってもよく、具体的には、2.0〜8.0mg/cmであってもよい。また、上記負極の厚さは45〜100μmであってもよく、具体的には、45〜80μmであってもよい。また、上記負極の電気伝導度は1.00〜4.00s/mであってもよく、具体的には、1.50〜3.50s/mであってもよい。また、上記負極の結着力は0.50〜6.00gf/mmであってもよく、具体的には、2.00〜6.00gf/mmであってもよい。それぞれこの範囲の合材密度、厚さ、電気伝導度、および/または結着力を有する負極を用いる場合、高率特性および高率における寿命特性が優れたリチウム二次電池を実現することができる。
【0048】
上記正極は、集電体および上記集電体に形成される正極活物質層を含む。上記正極活物質層は、正極活物質、バインダー、および選択的に導電材を含む。
【0049】
上記集電体としてはAl(アルミニウム)を用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0050】
上記正極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入および脱離が可能な化合物(リチウム挿入化合物)を用いてもよい。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、またはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上のものを用いてもよく、その具体的な例としては、下記化学式のうちのいずれか1つで表現される化合物を用いてもよい。
【0051】
Li1−b(この式において、0.90≦a≦1.8、および0≦b≦0.5である)、Li1−b2−c(この式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である)、LiE2−b4−c(この式において、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である)、LiNi1−b−cCoα(この式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である)、LiNi1−b−cCo2−αα(この式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiNi1−b−cCo2−α(この式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiNi1−b−cMnα(この式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である)、LiNi1−b−cMnBcO2−αα(この式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiNi1−b−cMn2−α(この式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、LiNi(この式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.50.001≦d≦0.1である)、LiNiCoMn(この式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である)、LiaNiG(この式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である)、LiCoG(この式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である)、LiMnG(この式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である)、LiMn(この式において、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である)、QO、QS、LiQS、V、LiV、LiIO、LiNiVO、Li(3−f)(PO(0≦f≦2)、Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2)、およびLiFePO
【0052】
上記化学式において、AはNi、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり、BはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはこれらの組み合わせであり、DはO、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり、EはCo、Mn、またはこれらの組み合わせであり、FはF、S、P、またはこれらの組み合わせであり、GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組み合わせであり、QはTi、Mo、Mn、またはこれらの組み合わせであり、IはCr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組み合わせであり、JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0053】
もちろん、この化合物表面にコーティング層を有するものを用いてもよく、または上記化合物とコーティング層を有する化合物を混合して用いてもよい。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、およびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選択される少なくとも1つのコーティング元素化合物を含んでもよい。これらのコーティング層を形成する化合物は、非晶質または結晶質であってもよい。上記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはこれらの混合物を用いてもよい。コーティング層の形成工程は、上記化合物にこのような元素を用いて正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法)などによってコーティングすることができれば、いかなるコーティング方法を用いてもよいが、これについては当該分野に従事する者によって理解される内容であるため、詳しい説明は省略する。
【0054】
上記バインダーは、正極活物質粒子を互いに適切に付着させ、または正極活物質を集電体に適切に付着させる役割を行うが、具体的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化したポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレート化したスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを挙げてもよいが、これに限定されるものではない。
【0055】
上記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を起こさずに電子伝導性材料であれば、いずれのものでも使用が可能であるが、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを用いてもよく、または、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
上記正極は、活物質、導電材、およびバインダーを溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を集電体に塗布して製造することができる。
【0057】
このような電極製造方法は、当該分野に広く知られた内容であるため、本明細書においては詳細な説明は省略する。上記溶媒としてはN−メチルピロリドンなどを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
上記電解液は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含むことができる。
【0059】
上記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質役割を行う。上記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、および非陽子性溶媒から選択されてもよい。
【0060】
上記カーボネート系溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが用いられてもよい。
【0061】
特に、鎖状カーボネート化合物および環状カーボネート化合物を混合して用いる場合、誘電率を高めると同時に粘性が小さい溶媒として製造することができるため好ましい。この場合、環状カーボネート化合物および鎖状カーボネート化合物は、約1:1〜1:9の体積比で混合して用いてもよい。
【0062】
また、上記エステル系溶媒としては、例えば、メチルアセテート、酢酸エチル、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオン酸塩、エチルプロピオン酸塩、γ−ブチロラクトン、デカノリド、バレロラクトン、メバルロノラクトン、カプロラクトンなどが用いられてもよい。上記エーテル溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが用いられてもよく、上記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどが用いられてもよい。また、上記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが用いられてもよい。
【0063】
上記非水性有機溶媒は、単独または1つ以上を混合して用いてもよく、1つ以上を混合して用いる場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節してもよい。
【0064】
上記非水性電解液は、エチレンカーボネート、ピロカーボネートなどの過充電防止剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0065】
上記リチウム塩は、有機溶媒に溶解し、電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を行う物質である。
【0066】
上記リチウム塩の具体的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0067】
上記リチウム塩の濃度は、約0.1M〜約2.0Mの範囲内で用いることが好ましい。リチウム塩の濃度がこの範囲に含まれれば、電解液が適切な電気伝導度および粘度を有するため優れた電解液性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0068】
上記セパレータは単一膜または多層膜であってもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライド、またはこれらの組み合わせによって生成されてもよい。
【0069】
上記低結晶性の炭素系物質を負極活物質として用いて形成された上記リチウム二次電池の可逆容量は向上することができる。具体的に、上記リチウム二次電池の可逆容量は250〜400mAh/gであってもよく、より具体的には、250〜350mAh/gであってもよい。上記可逆容量は、0.2Cの条件で測定された値である。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例を提示する。ただし、後述する実施例は本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、したがって本発明がこれに制限されてはならない。
【0071】
また、ここに記載されていない内容は、この技術分野において熟練した者であれば十分に技術的に類推できるものであるため、その説明は省略する。
【0072】
(負極活物質の製造)
「実施例1」
平均粒径(D50)が9.8μmの低結晶性のソフトカーボン(GS Caltex社)を負極活物質として用いた。このとき、上記低結晶性のソフトカーボンは、ソフトカーボンを950℃で焼成させて得られた。
【0073】
「比較例1」
平均粒径(D50)が10μmの黒鉛を負極活物質として用いた。
【0074】
「比較例2」
平均粒径(D50)が10μmのソフトカーボン(日立社)を負極活物質として用いた。
【0075】
「評価1:負極活物質のSEM写真分析」
図2Aおよび図2Bはそれぞれ、実施例1と比較例2に係る負極活物質のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示す。
【0076】
図2Aおよび図2Bを参照すれば、実施例1の負極活物質は、比較例2の負極活物質よりも低結晶性を有することが確認できる。
【0077】
「評価2:負極活物質のXRDパターン分析」
図3は、実施例1と比較例1および2による負極活物質のXRD(X線回折)パターンを示すグラフである。また、図3のXRDパターンに示されたピークの面積を計算し、下記表1にその値を示す。
【0078】
XRDパターンは、CuKα線を利用し、40Kvの管電圧と30mAの管電流であって、連続式で10°〜90°の範囲において0.02°ステップで0.5sec/stepで測定された。
【0079】
【表1】

【0080】
図3を参照すれば、一実施形態による低結晶性の炭素系物質を用いた実施例1の場合には20°〜30°の2θ値での半値幅は約4.18°である反面、比較例1の場合には約0.34°、そして比較例2の場合には約1.82°であることが確認できる。
【0081】
また、図3および表1を参照すれば、20°〜30°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比は、実施例1の場合には約3.8、比較例1の場合には約265.5、そして比較例2の場合には約0.71で得られることが確認できる。
【0082】
これにより、実施例1で用いられた炭素系物質は、低結晶性であることが確認できる。
【0083】
「評価3:負極活物質のEDS分析」
図4は、実施例1に係る負極活物質のEDS(エネルギー分散分光分析)分析グラフである。
【0084】
図4を参照すれば、実施例1の負極活物質は、炭素以外の他の物質を含んでいないことが確認できる。
【0085】
「評価4:負極活物質の結晶構造分析」
実施例1と比較例1および2の負極活物質の結晶構造を次のような方法によって分析し、その結果を下記表2に示した。
【0086】
XRDパターンで示されるピークの2θの位置から格子面間の距離であるbasal spacing(d)をブラッグ法則によって求めることができる。これにより、XRDパターンに示されるすべてのピークの位置を分析することにより、結晶構造内の格子面の分布を推定することができる。
【0087】
【表2】

【0088】
表2から、一実施形態による実施例1では、負極活物質として用いられた炭素系物質は低結晶性であることが確認できる。
【0089】
「評価5:負極活物質の比表面積分析」
実施例1と比較例1および2の負極活物質の比表面積を分散分析器(Lumisizer)を利用して測定した結果、実施例1の場合には3m/g、比較例1の場合には2m/g、そして比較例2の場合には2m/gの値が得られた。
【0090】
「評価6:負極活物質のタップ密度および真密度分析」
実施例1と比較例1および2の負極活物質のタップ密度をタップ密度測定装置(TDA−2)を利用して測定した結果、実施例1の場合には0.939g/cm、比較例1の場合には1.08g/cm、そして比較例2の場合には1.09g/cmの値が得られた。
【0091】
また、実施例1と比較例1および2の負極活物質の真密度を連続自動粉粒体真密度測定器を利用して分析した結果、実施例1の場合には1.941g/cm、比較例1の場合には3.05g/cm、そして比較例2の場合には3.08g/cmの値が得られた。これから、一実施形態による実施例1では、負極活物質として用いられた炭素系物質は低結晶性であることが確認できる。
【0092】
(リチウム二次電池の製作)
上記実施例1と比較例1および2でそれぞれ製造された負極活物質85重量%、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)10重量%、およびアセチレンブラック5重量%を混合した後、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極活物質層組成物を製造した。次に、銅箔上に上記負極活物質層組成物を塗布した後、乾燥および圧延して負極を製造した。このとき、実施例1の負極の厚さは60μmであり、比較例1の負極の厚さは53μmであり、比較例2の負極の厚さは65μmであった。
【0093】
平均粒径が5μmのLiCoO85重量%、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)6重量%、アセチレンブラック4重量%、および活性炭5重量%を混合した後、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極活物質層組成物を製造した。上記正極活物質層組成物を厚さ2.0μmのアルミニウム箔に塗布した後、乾燥および圧延して正極を製造した。
【0094】
上記製造された正極および負極と厚さ2.5μmのポリエチレン材質のセパレータを用いて巻き取りおよび圧縮し、50mAh級のポーチ型リチウム二次電池を製作した。
【0095】
このとき、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)の混合体積比が3:3:4の混合溶液に1.15M濃度のLiPFが溶解したものを用いた。
【0096】
「評価7:負極の合材密度評価」
実施例1と比較例1および2の負極活物質から製造されたそれぞれの負極に対して面積あたりの重量を電子秤で測定して合材密度を分析した結果、実施例1の場合には5.05mg/cm、比較例1の場合には5.12mg/cm、そして比較例2の場合には5.52mg/cmの値が得られた。
【0097】
「評価8:負極の電気伝導度評価」
実施例1と比較例1および2の負極活物質から製造されたそれぞれの負極に対して電気伝導度を分析した結果、実施例1の場合には2.504s/m、比較例1の場合には0.683s/m、そして比較例2の場合には2.093s/mの値が得られた。
【0098】
これから、一実施形態による実施例1の負極は、低結晶性の炭素系物質を用いることによって電気伝導度が高まることが分かり、これから優れた高率寿命特性を得ることができる。
【0099】
「評価9:負極の結着力評価」
実施例1と比較例1および2の負極活物質から製造されたそれぞれの負極に対して結着力を分析した結果、実施例1の場合には4.05gf/mm、比較例1の場合には3.24gf/mm、そして比較例2の場合には3.24gf/mmの値が得られた。
【0100】
これから、一実施形態による実施例1の負極は、低結晶性の炭素系物質を用いることによって結着力が高まることが分かり、これによって優れた高率寿命特性を得ることができる。
【0101】
「評価10:リチウム二次電池の不可逆容量評価」
実施例1と比較例1および2の負極活物質から製造されたそれぞれのリチウム二次電池に対して下記表3の条件で充放電した。容量の結果を下記表4に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
表4から、一実施形態による低結晶状の炭素系物質を負極活物質として用いた実施例1の場合は、不可逆容量面において、比較例2と比較して多少優れていることが分かる。
【0105】
「評価11:リチウム二次電池の高率寿命特性評価」
実施例1と比較例1および2の負極活物質から製造されたそれぞれのリチウム二次電池に対して次のような条件で充放電した。高率寿命特性の結果を下記表5に示す。
【0106】
CCモードで4.2Vまで充電し、0.05CでCVモードで充電し、CCモードで2.0Vまで放電してカット−オフ(cut−off)させた。
【0107】
下記充電容量維持率(%)および放電容量維持率(%)はそれぞれ、1Cにおける容量と対比して50Cにおける容量の百分率値である。
【0108】
【表5】

【0109】
表5から、一実施形態による低結晶状の炭素系物質を負極活物質として用いた実施例1の場合は、比較例1および2の場合と対比して優れた高率充電特性を得ることが確認できる。
【0110】
「評価12:リチウム二次電池の高率寿命特性評価」
実施例1と比較例1および2の負極活物質から製造されたそれぞれのリチウム二次電池に対して次のような条件で充放電した。高率寿命特性の結果を図5に示す。
30C充電モード:30C充電電流で30sec充電
30C放電モード:30C放電電流で30sec放電
【0111】
図5は、実施例1および比較例2に係るリチウム二次電池の高率寿命特性を示すグラフである。
【0112】
図5を参照すれば、実施例1の場合には120000サイクル進行後にも寿命劣化現象が発生しない反面、比較例2の場合には50000サイクル進行後に寿命劣化現象が発生することが確認できる。
【0113】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明の権利範囲がこれに限定されるものではなく、添付の特許請求範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0114】
3:リチウム二次電池
4:電極組立体
5:正極
6:負極
7:セパレータ
8:電池ケース
11:キャッププレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系物質を含み、前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値での半値幅が2.5°〜6.0°であり、20°〜30°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比が1.0〜100.0である、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、バックグラウンド高さ(A)に対するピーク高さ(B)の比率(RAB)が2.0〜4.0である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記炭素系物質に含まれている炭素の層間距離d(002)は、3.370〜3.434Åである、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値での半値幅が3.5°〜5.5°である、請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値に対する42°〜45°の2θ値のピーク面積比が1.0〜100.0である、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、42°〜45°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比が0.1〜50.0である、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項7】
前記炭素系物質の比表面積は2.5〜20m/gである、請求項1から6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項8】
前記炭素系物質に含まれている炭素は、L10〜35Åの格子定数を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項9】
前記炭素系物質のタップ密度は、0.30〜1.00g/cmである、請求項1から8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項10】
前記炭素系物質の真密度は、1.00〜3.00g/cmである、請求項1から9のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項11】
炭素系物質を準備する段階、前記炭素系物質を900〜1500℃の温度で焼成する段階、を含み、前記炭素系物質は、CuKα線を利用したXRDパターンにおいて、20°〜30°の2θ値での半値幅が2.5°〜6.0°であり、20°〜30°の2θ値に対する50°〜53°の2θ値のピーク面積比が1.0〜100.0である、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項12】
正極、負極活物質を含む負極、セパレータ、および電解液を含み、前記負極活物質が請求項1から10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極活物質である、リチウム二次電池。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2013−4519(P2013−4519A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119280(P2012−119280)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】