説明

リチウム二次電池

【課題】過充電時の安全性を確保することができるリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池は、外装体に4辺を有する矩形状のラミネートフィルムが使用されている。ラミネートフィルムの4辺の辺縁部は熱溶着で封止されており、ラミネートフィルムの対向する2辺にはそれぞれ正極端子及び負極端子が挟み込まれている。ラミネートフィルム内には、正極板14及び負極板15が交互に積層された積層電極群10が封入されている。各正極板14及び負極板15は、正極端子及び負極端子にそれぞれ接続されている。正極板14は、正極端子に接続されていない3辺が熱溶着で袋状に加工されたポリエチレン製のセパレータ12に1枚ずつ挿入されている。過充電時に正負極端子間及び正負極板間の内部短絡が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池に係り、特に、正極板及び負極板がセパレータを介して配置された電極群が4辺を有するラミネート外装フィルムで密閉されたリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、主にVTRカメラやノートパソコン、携帯電話等のポータブル機器用電源として民生用の分野に広く普及してきたが、ポータブル機器の小型化、多機能化が進み、用いられる電源にも小型・軽量化が要望されてきた。このため、リチウム二次電池の外装体として用いられてきた金属缶や樹脂の容器に代えて、食品包装や医療包装の分野で広く用いられている軽量で加工性のよいアルミニウムを基材としたラミネートフィルムを外装体として適用することが検討され、現在では、ポータブル機器用の電源に広く用いられている。
【0003】
一方、自動車産業界においては環境問題に対応すべく、動力源を完全に電池のみとした排出ガスのない電気自動車と、内燃機関エンジン及び電池の両方を動力源とするバイブリッド電気自動車(HEV)の開発が本格化し、一部実用化されている。電気自動車等の移動体用電源として、高エネルギー密度を有するリチウム二次電池が注目されている。また、アシスト自転車や電動スクータ等の小型移動体用の電源としても開発が盛んに進められている。このような移動体用電源の分野においても外装体に金属缶等の容器を用いた電池の開発が先行しているが、ラミネートフィルムを外装体に用いたリチウム二次電池の検討も活発化している。
【0004】
移動体用の電源には、高出力・高エネルギーが要求されるため、電池容量は民生用よりも大きくなり、数十本のリチウム二次電池を接続した電池モジュールとして利用されている。外装体に金属缶等の剛体の容器を用いたリチウム二次電池では、安全性を確保するために電池容器内に電流遮断機構等の安全機構を収容することが比較的容易であり、電池モジュールでは過充電のような電池異常時でも安全性を確保するために複数の保護機能が組み込まれている。
【0005】
これに対して、外装体にラミネートフィルムを用いたリチウム二次電池では、電極群を略矩形状のラミネートフィルムで包み込み、ラミネートフィルムの重ね合わせ(辺縁)部を熱溶着して封止し、熱溶着部の1辺に通電用の正負極端子を挟み込んだ構造を有している。熱溶着の際には、電池内部を減圧にし、大気圧で外装体に電極群を固定するのが一般的なため、電池内に上述した安全機構等を収容することは難しい。安全機構を備えていない電池では、過充電時に、電池が発熱して電解液の気化及び分解ガスの発生により電池内圧が上昇してラミネートフィルムが膨張し、ラミネートフィルムの熱溶着部が剥離して電池外部にガスを噴出する。この発熱及びガス噴出によりセパレータが収縮し、正極板及び負極板が電池内部で短絡すると、短絡電流による急激な発熱が生じ、活物質の熱暴走反応(多量のガス発生を伴う急激な発熱反応)を引き起こす。ラミネートフィルムの膨張を抑制するために、例えば、電極群及びラミネートフィルム間に接着材層を配置する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−151512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、接着材層により電極群及びラミネートフィルム間の膨張は抑制されるものの、ガス発生に伴いラミネートフィルムの熱溶着部に圧力がかかり易くなるため、熱溶着部の剥離やガス噴出を抑制することはできない。また、熱溶着部が剥離してガスを噴出したラミネートフィルムの辺縁部近傍では、セパレータが収縮するため、正負極板間の内部短絡が生じ易い、という問題がある。更に、正極端子及び負極端子がラミネートフィルムの同一辺から導出されている場合には、熱溶着部の剥離に伴い正負極端子が接触し易くなるため、内部短絡を起こし熱暴走反応に移行し易くなる、という問題もある。従って、過充電時の安全性を保つためには、電池内に蓄積されたガスを速やかに電池外に放出させ、熱暴走反応を生じさせずに充電不能状態とすることが必要となる。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、過充電時の安全性を確保することができるリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、正極板及び負極板がセパレータを介して配置された電極群が4辺を有するラミネート外装フィルムで密閉されたリチウム二次電池において、前記電極群からの正極端子及び負極端子が前記ラミネート外装フィルムの対向する2辺の各1辺からそれぞれ導出されており、前記正極端子が導出された1辺以外の3辺に位置するセパレータ同士が前記正極板を包み込むように熱溶着されていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、正極端子及び負極端子がラミネート外装フィルムの対向する2辺の各1辺からそれぞれ導出されているため、過充電時に発生したガスが正極端子及び負極端子が導出された近傍から放出されても、正極端子及び負極端子間の内部短絡が抑制されると共に、正極端子が導出された辺以外の3辺に位置するセパレータ同士が正極板を包み込むように熱溶着されているため、正極端子及び負極端子がそれぞれ導出された辺以外の2辺からガスが放出されてセパレータが収縮しても、正極板及び負極板間の内部短絡が抑制されるので、熱暴走反応への移行を抑制することができリチウム二次電池の安全性を確保することができる。
【0011】
この場合において、正極端子及び負極端子が、ラミネート外装フィルムから導出された幅を、該導出されたラミネート外装フィルムの辺の長さの1/2以上とすれば、過充電時に正極端子及び負極端子を通じて放熱し易くなるので、電池内部でのガス発生を抑制することができる。また、正極端子及び負極端子をラミネート外装フィルムの長辺からそれぞれ導出するようにしてもよい。更に、ラミネート外装フィルムの4辺のうち、正極端子及び負極端子がそれぞれ導出された辺以外のいずれか1辺をラミネート外装フィルム自体の折り返し部分としてもよい。また、ラミネート外装フィルムの4辺のうち、正極端子及び負極端子がそれぞれ導出された辺以外の2辺をラミネート外装フィルム自体が溶着された溶着部としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、過充電時でも、正極端子及び負極端子がラミネート外装フィルムの対向する2辺の各1辺からそれぞれ導出されているため、正極端子及び負極端子間の内部短絡が抑制されると共に、正極端子が導出された辺以外の3辺に位置するセパレータ同士が正極板を包み込むように熱溶着されているため、正極板及び負極板間の内部短絡が抑制されるので、熱暴走反応への移行を抑制することができリチウム二次電池の安全性を確保することができる、という効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を適用可能なラミネートフィルムを外装体としたリチウムイオン二次電池の実施の形態について説明する。
【0014】
(構成)
本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、図1に示すように、外装体に4辺を有する矩形状のラミネートフィルム2が使用されている。ラミネートフィルム2内には、図示を省略した積層電極群が封入されている。図示を省略した積層電極群の上側のラミネートフィルム2は凸状に、下側のラミネートフィルム2は略平坦状にそれぞれ形成されている。ラミネートフィルム2の辺縁部の4辺は熱溶着で封止されており、リチウムイオン二次電池1は密閉構造とされている。ラミネートフィルム2の辺縁部の対向する2辺には、正極端子4及び負極端子5がそれぞれ先端部を互いに反対方向の外側に突出させて、ラミネートフィルム2の熱溶着部に挟み込まれている。
【0015】
ラミネートフィルム2には、基材として厚さ40μmのアルミニウム(以下、Alと略記する。)箔が用いられている。Al箔は、一面に絶縁保護用の厚さ25μmのナイロン(以下、ONと略記する。)製フィルムが、他面に厚さ80μmの熱溶着樹脂のポリプロピレン(以下、PPと略記する。)製フィルムが積層されている。ラミネートフィルム2は、ON製フィルム、Al箔、PP製フィルムの順に接着剤を介して積層されプレス加工されており、3層構造を有している。
【0016】
正極端子4には断面の厚さ0.1mm、幅が後述する所定幅のAl板が使用されており、Al板の外周にはシールテープとして厚さ100μm、幅10mmのPP製テープが貼り付けられている。負極端子5には断面の厚さ0.1mm、幅が後述する所定幅のニッケル(以下、Niと略記する。)板が使用されており、Ni板の外周にはシールテープとして厚さ100μm、幅10mmのPP製テープが貼り付けられている。正極端子4及び負極端子5の周囲には、熱溶着時に軟化したラミネートフィルム2のPP樹脂が隙間なく密着している。
【0017】
図2に示すように、積層電極群10は、10枚の正極板14と11枚の負極板15とが、積層電極群10の上下両端が負極板15となるように交互に積層されている。正極板14は、厚さ40μmで矩形状のポリエチレン製フィルムの3辺が熱溶着で袋状に加工されたセパレータ12に1枚ずつ挿入されている。このため、各正極板14及び負極板15間にはセパレータ12が介在している。また、積層電極群10の対向する2辺のうち1辺には図示を省略した正極リード片が位置し、他辺には図示しない負極リード片が位置するように積層されている。正極リード片及び負極リード片はそれぞれ集合させて正極端子4及び負極端子5にそれぞれ超音波溶接で接続されている。
【0018】
積層電極群10を構成する正極板14は、正極集電体として厚さ20μmのアルミニウム箔を有している。アルミニウム箔の両面には、正極活物質としてマンガン酸リチウムを含む正極合剤が塗着されている。正極合剤には、例えば、マンガン酸リチウム100重量部に対して、導電剤として鱗片状黒鉛の10重量部及び結着剤としてポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略記する。)の5重量部が配合されている。正極合剤のアルミニウム箔への塗布時には、分散溶媒としてN−メチルピロリドン(以下、NMPと略記する。)が使用される。正極合剤塗布後、乾燥、プレス、裁断することで厚さ90μmで矩形状の正極板14が形成される。なお、正極集電体の1辺には、アルミニウム製で帯状の正極リード片が超音波溶接されている。
【0019】
一方、負極板15は、負極集電体として厚さ10μmの圧延銅箔を有している。圧延銅箔の両面には、負極活物質として非晶質炭素粉末を含む負極合剤が塗着されている。負極合剤には、例えば、非晶質炭素粉末90重量部に対して、結着剤としてPVDFの10重量部が配合されている。負極合剤の圧延銅箔への塗布時には分散溶媒としてNMPが使用される。負極合剤塗布後、乾燥、プレス、裁断することで厚さ70μmで矩形状の負極板15が形成される。なお、負極集電体の一辺には、銅製で帯状の負極リード片が超音波溶接されている。
【0020】
(電池組立)
積層電極群10の形状に合わせて凹部が形成されたシリコンゴム製の受け台に、ラミネートフィルム2、積層電極群10をこの順に受け台の凹部に合わせて載置した。凹部のラミネートフィルム2に非水電解液15mlを注液後、別の1枚のラミネートフィルム2を被せて2枚のラミネートフィルム2の辺縁部同士を重ね合わせた。このとき、正極端子4及び負極端子5の先端部がラミネートフィルム2の対向する2辺の辺縁部からそれぞれ反対方向の外側に突出するようにした。積層電極群10に被せたラミネートフィルム2の上側にPP製フィルムの溶融温度に加熱した金属板を減圧雰囲気下で押し当てることでラミネートフィルム2の辺縁部を熱溶着させて電池重量約80g、容量4Ahのリチウムイオン二次電池1の組立を完成させた。非水電解液には、例えば、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒にリチウム塩(電解質)として6フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットル(1M)溶解したものを用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下、本実施形態に従い作製したリチウムイオン二次電池1の実施例について説明する。なお、比較のために作製した比較例のリチウムイオン二次電池についても併記する。各実施例では図3に、各比較例では図4にそれぞれ示すように、ラミネートフィルム2を、縦方向の長さL1、横方向の長さL2の外寸とし、正極端子4及び負極端子5のラミネートフィルム2の辺に沿う幅W1として説明する。
【0022】
(実施例1)
下表1に示すように、実施例1では、ラミネートフィルム2の外寸を、縦(L1)80mm、横(L2)100mmとし、正極端子4及び負極端子5の幅(W1)をいずれも20mmとした。正極端子4及び負極端子5をラミネートフィルム2の対向する2辺にそれぞれ挟み込み、ラミネートフィルム2の4辺を熱溶着した。このため、実施例1のリチウムイオン二次電池1では、正極端子4及び負極端子5の挟み込まれた辺以外の2辺も熱溶着されている(図3参照)。熱溶着されたラミネートフィルム2の熱溶着部3は、熱溶着幅5mmに設定されている。
【0023】
【表1】

【0024】
(実施例2〜実施例3)
表1に示すように、実施例2〜実施例3では、正極端子4及び負極端子5の幅W1を変える以外は実施例1と同様にした。幅W1は、実施例2では40mm、実施例3では60mmとした。
【0025】
(実施例4)
表1に示すように、実施例4では、ラミネートフィルム2の外寸を縦(L1)100mm、横(L2)80mmとする以外は実施例3と同様にした。
【0026】
(実施例5)
表1に示すように、実施例5では、外寸が縦200mm、横80mmのラミネートフィルム2を使用し、縦方向に折り返して3辺を熱溶着する以外は実施例3と同様にした。このため、実施例5のリチウムイオン二次電池1では、正極端子4及び負極端子5の挟み込まれた2辺以外の2辺のうち1辺がラミネートフィルム2の折り返し部分となり、外寸が縦(L1)100mm、横(L2)80mmとなる。
【0027】
(比較例1)
表1に示すように、比較例1では、正極端子4及び負極端子5をラミネートフィルム2の同一辺に挟み込ませる以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した(図4参照)。
【0028】
(比較例2)
表1に示すように、比較例2では、ラミネートフィルム2の外寸を縦(L1)100mm、横(L2)80mmとする以外は比較例1と同様にした。
【0029】
(試験)
作製した実施例及び比較例の電池の各20個について、過充電試験を実施し、電池中央部の最高温度、電池の現象及び発火発生率を測定した。過充電試験は、電流値4A(10C相当)とし、満充電状態から破裂発火等の現象が生じて通電不能になるまで、又は、何の現象も生じない場合は過充電率200%(12分)まで実施した。下表2に過充電試験の結果を示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2に示すように、正極端子4及び負極端子5がラミネートフィルム2の同一辺に挟み込まれた比較例1及び比較例2の電池では、それぞれ10%及び15%の割合の電池が激しく白煙を噴出した後に発火に到り、最高温度は測定不能であった。これに対し、正極端子4及び負極端子5がラミネートフィルム2の対向する2辺にそれぞれ挟み込まれた実施例1〜実施例5の電池では、穏やかに白煙が発生したのみで発火に到るものは認められなかった。また、正極端子4及び負極端子5の幅W1が長さL1の1/2未満の実施例1の電池では、最高温度が160°Cであるのと比較して、幅W1を長さL1の1/2以上とした実施例2及び実施例3の電池では、最高温度も135〜145°Cと低く抑えられることが判った。更に、正極端子4及び負極端子5が挟み込まれた2辺をラミネートフィルム2の長辺とした(L1>L2)実施例4及び実施例5の電池では、最高温度130°Cと更に低く抑えられることが判った。また、正極端子4及び負極端子5が挟み込まれた辺以外の2辺のうち1辺をラミネートフィルム2の折り返し部分とした実施例5の電池でも、最高温度が130°Cに抑えられることが判った。
【0032】
(作用等)
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池1の作用等について説明する。
【0033】
従来のラミネートフィルムを外装体としたリチウムイオン二次電池では、過充電時に電池が発熱して非水電解液の気化及び分解ガスの発生により電池の内圧が上昇すると、ラミネートフィルムの熱溶着部が剥離し、発生したガスが電池外部に噴出する。この発熱及びガス噴出によりセパレータが収縮して正極板と負極板とが電池内部で短絡すると、短絡電流による急激な発熱が起こり、活物質の熱暴走反応に移行して激しい反応を引き起こす。過充電時の安全性を確保するために、本発明者らは、鋭意検討した結果、ガスを噴出したラミネートフィルムの熱溶着部近傍で正極板及び負極板間の内部短絡が生じることを見出した。また、正負極端子が挟み込まれた周辺では、正負極端子を通じて外部に放熱されるため、電池が発熱した際の温度上昇が抑えられ、ラミネートフィルムの熱溶着部の剥離強度が強い反面、正極端子及び負極端子が同一辺に挟み込まれている(正極端子及び負極端子の取り出し方向が同一方向である)場合に、正極端子及び負極端子間の内部短絡から熱暴走反応に移行し易いことを見出した。従って、過充電時の安全性の確保には、電池内に蓄積されたガスを速やかに電池外に放出させ、熱暴走反応を生じさせずに充電不能とすることが必要となる。
【0034】
本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、正極端子4及び負極端子5がラミネートフィルム2の対向する2辺の各1辺にそれぞれ挟み込まれている。このため、過充電時に発生したガスが正極端子4及び負極端子5の挟み込まれた近傍から放出されても、正極端子及び負極端子間の内部短絡を防止することができる。また、セパレータ12が正極板14の正極端子4に接続された辺以外の3辺で正極板14を包み込むように袋状に熱溶着されている。このため、過充電時に発生したガスが正極端子4及び負極端子5がそれぞれ挟み込まれた辺以外の2辺から放出されても、正極板14及び負極板15間の内部短絡を抑制することができる。従って、正負極端子間及び正負極板間の内部短絡が抑制されるので、熱暴走反応への移行を抑制してガスを穏やかに放出させることができ、リチウムイオン二次電池1の安全性を確保することができる。
【0035】
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、ラミネートフィルム2の対向する2辺に互いに反対方向に挟み込まれた正極端子4及び負極端子5を通じて放熱される。このため、正極端子4及び負極端子5近傍では温度上昇が抑制されるので、ガス放出及び内部短絡を正極端子4及び負極端子5がそれぞれ挟み込まれたラミネートフィルム2の対向する2辺以外の2辺側で発生させるように制限することができる。更に、正極板14及び負極板15間の内部短絡が正極端子4及び負極端子5近傍で生じても熱暴走反応への移行を抑制することができる。
【0036】
更に、本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、正極端子4及び負極端子5が、ラミネートフィルム2に挟み込まれた幅W1を、挟み込まれたラミネートフィルム2の辺の長さL1の1/2以上とすることで、過充電時の発熱が正極端子4及び負極端子5を通じて放熱し易くなるため、電池中央部の最高温度を低く抑えることができる(実施例2及び実施例3参照)。また、長方形状のラミネートフィルム2を使用したときに、正極端子4及び負極端子5をラミネートフィルム2の長辺にそれぞれ挟み込むことで、幅W1をより大きく設定することができるため、正極端子4及び負極端子5を通じた放熱が更に容易となり、電池中央部の最高温度を更に低く抑えることができる(実施例4参照)。更に、正極端子4及び負極端子5の幅W1を大きくすることで正負極端子の断面積が大きくなるので、大電流通電を可能とすることができる。
【0037】
また更に、本実施形態のリチウムイオン二次電池1では、ラミネートフィルム2を半分に折り返して積層電極群10を封入することで正極端子4及び負極端子5がそれぞれ挟み込まれた辺以外の2辺のうち1辺をラミネートフィルム2の折り返し部分とすることができる。このため、ガス放出及び内部短絡を折り返し部分と対向する辺側で発生させるように制限することができる(実施例5参照)ので、熱暴走反応への移行を抑制することができ、リチウムイオン二次電池1の安全性を確保することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、ラミネートフィルム2に、ON製フィルム/Al箔/PP製フィルムの3層で構成され、各構成層の厚さが、ON=25μm、Al=40μm、PP=80μmのものを例示したが、本発明はラミネートフィルム2を構成する材料や各構成層の厚さに特に制限されるものではない。通常、絶縁保護層、基材層及び熱溶着層の3層であればよく、これらの層間に他の構成層を有していてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、正極端子4及び負極端子5がラミネートフィルム2の対向する2辺にそれぞれ挟み込まれている例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ラミネートフィルム2の対向する2辺からそれぞれ導出されていればよい。更に、本実施形態では、長方形状のラミネートフィルム2を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、正方形状、菱形状としてもよい。
【0040】
更に、本実施形態では、セパレータ12の材質にポリエチレンを使用する例を示したが、本発明は、セパレータの材質や厚さ等に特に制限されるものではない。例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂のフィルムを使用してもよく、複数の材質のフィルムを積層して使用してもよい。
【0041】
また更に、本実施形態では、短冊状の正極板14及び負極板15を交互に積層して積層電極群10を作製する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、帯状に形成した正極板14及び負極板15を扁平状に捲回して作製してもよい。
【0042】
更にまた、本実施形態では、正極活物質にマンガン酸リチウムを、負極活物質に非晶質炭素を使用する例を示したが、本発明は正極活物質及び負極活物質に制限されるものではない。通常リチウムイオン二次電池に使用される正負極の活物質を使用してもよい。また、本実施形態では、非水電解液にLiPFを電解質とし、有機溶媒としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒を用いる例を示したが、本発明は、使用される電解質及び有機溶媒に特に制限されるものではない。更に、正極端子4にAl板、負極端子5にNi板を用いる例を示したが、本発明はこれらの材料に限定されるものではなく、一般に電池の端子として使用される材料を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は過充電時の安全性を確保することができるリチウム二次電池を提供するため、リチウム二次電池の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明を適用可能な実施形態の外装体にラミネートフィルムを使用したリチウムイオン二次電池の斜視図である。
【図2】実施形態のリチウムイオン二次電池の電極群を示す断面図である。
【図3】実施形態に従い作製した実施例のリチウムイオン二次電池について外寸及び正負極端子の幅を示す平面図である。
【図4】比較例のリチウムイオン二次電池について外寸及び正負極端子の幅を示す平面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 リチウムイオン二次電池(リチウム二次電池)
2 ラミネートフィルム(ラミネート外装フィルム)
4 正極端子
5 負極端子
10 積層電極群
12 セパレータ
14 正極板
15 負極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板及び負極板がセパレータを介して配置された電極群が4辺を有するラミネート外装フィルムで密閉されたリチウム二次電池において、前記電極群からの正極端子及び負極端子が前記ラミネート外装フィルムの対向する2辺の各1辺からそれぞれ導出されており、前記正極端子が導出された辺以外の3辺に位置するセパレータ同士が前記正極板を包み込むように熱溶着されていることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項2】
前記正極端子及び負極端子は、前記ラミネート外装フィルムから導出された幅が、該導出されたラミネート外装フィルムの辺の長さの1/2以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記正極端子及び負極端子は、前記ラミネート外装フィルムの長辺からそれぞれ導出されていることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記ラミネート外装フィルムの4辺のうち、前記正極端子及び負極端子がそれぞれ導出された辺以外のいずれか1辺は、前記ラミネート外装フィルム自体の折り返し部分であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記ラミネート外装フィルムの4辺のうち、前記正極端子及び負極端子がそれぞれ導出された辺以外の2辺は、前記ラミネート外装フィルム自体が溶着された溶着部であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−66311(P2006−66311A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249665(P2004−249665)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】