説明

リチウム含有電極材料の焼結方法

【課題】本発明は、製造時間とコストを下げることが可能な、リチウム含有電極材料の焼結方法を提供する。
【解決手段】粒状のリチウム化合物とMの混合物を蓋付きの金属容器内に入れる手順と、300〜700℃の温度範囲と500〜900℃の温度範囲の二段階で金属容器を加熱し内部の混合物を熱処理する手順と、熱処理後の混合物を粉砕(研磨)して粉体状のリチウム含有電極材料を得る手順とによってなり、その内、前記Mは、Fe、P、Co、Ni、Mn、V、C元素及びその酸化物或いは化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム含有電極材料の焼結方法に関し、特にリチウムイオン二次電池に適用されるリチウム含有電極材料の焼結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウム電池のリチウム含有電極材料の焼結過程においては、一般的に、焼結炉で反応物を熱と反応させるが、高酸化物の粉体は、焼結炉に不活性気体(例えば、アルゴンAr/水素H2等)を入れ合成物が酸化するのを防がなければならない。例えば、従来のリン酸鉄リチウムの焼結過程では、大量の保護気体を入れ、FeがFe3+を形成するのを防ぐ。大量の保護気体を利用して焼結を行う方法は、台湾特許第544967号、台湾特許第200805734号、米国特許第6716372B2号、米国特許第6730281号などに開示されている。しかし、リチウム含有電極材料粉体材料の焼結過程に、Ar/H2等の消耗性の保護気体を使用する従来の方法は、かなりのコストがかかる。
【0003】
また、従来のリチウム電池電極材料の焼結過程において使用される容器には、高純度のアルミ容器が採用されるが、使用上、いくつか不便な点がある。一つ目は、容器とその蓋体の密着性の確保が難しいことであり、二つ目は、温度を下げた時に、保護気体の温度と容器の温度が異なる現象が生じ、アルミ容器が破裂することである。三つ目は、急激に温度を下げるとアルミ容器に亀裂が入るため、長い時間をかけて温度を冷却しなければならず、それに伴い、焼結過程での保護気体の消費量と製造時間を下げることができないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】台湾特許第544967号明細書
【特許文献2】台湾特許第200805734号明細書
【特許文献3】米国特許第6716372B2号明細書
【特許文献4】米国特許第6730281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、製造時間とコストを下げることが可能な、リチウム含有電極材料の焼結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるリチウム含有電極材料の焼結方法は、粒状のリチウム化合物とMの混合物を蓋付きの金属容器内に入れる手順と、300〜700℃の温度範囲と500〜900℃の温度範囲の二段階で金属容器を加熱し内部の混合物を熱処理する手順と、熱処理後の混合物を粉砕(研磨)して粉体状のリチウム含有電極材料を得る手順とによってなり、その内、前記Mは、Fe、P、Co、Ni、Mn、V、C元素及びその酸化物或いは化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1のフローチャートである。
【図2】本発明の実施例2のフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2の温度の変化を示した説明図である。
【図4】本発明の金属容器が内圧保護を形成する過程を示した説明図である。
【図5】本発明の金属容器が外部保護層を形成した状態を示した説明図である。
【図6】本発明の金属容器を縦に重ねた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によるリチウム含有電極材料の焼結方法は、粒状のリチウム化合物とMの混合物を蓋付きの金属容器内に入れる手順と、300〜700℃の温度範囲及び500〜900℃の温度範囲の二段階で金属容器を加熱し内部の混合物を熱処理する手順と、熱処理後の混合物を粉砕して粉体状のリチウム含有電極材料を得る手順とを含む、その内のMは、Fe、P、Co、Ni、Mn、V、C元素及びその酸化物或いは化合物である。
【0009】
上述の方法において、300〜700℃の温度範囲による第一段階の熱処理では、粉体を合成し、不要な気体と分離し、主要な粒を形成する。第二段階の500〜900℃の温度範囲による熱処理では、粉体の不規則に割れた面を焼結する。この二段階の加熱の形式は、一段階ごとに分けて行う加熱方式と、二段階を連続で行う加熱方式の二種類の形式がある。この加熱形式の違いによって、得られる粉体状のリチウム含有電極材料も異なる。
【0010】
(実施例1)
図1に示すように、本発明の実施例1によるリチウム含有電極材料の焼結方法は、粒状のリチウム化合物とMの混合物を蓋付きの金属容器内に入れる手順と、300〜700℃の温度範囲で金属容器を加熱し内部の混合物を熱処理する手順と、熱処理後の混合物を粉砕(研磨)する手順と、500〜900℃の温度範囲で粉砕(研磨)した後の混合物を熱処理する手順と、熱処理後の混合物をさらに粉砕(研磨)して粉体状のリチウム含有電極材料を得る手順と、によってなる。実施例1のように、一段階ごとに分けて行う加熱方式で焼結して得られる粉体の多くは、単独の粒として成長する。
【0011】
(実施例2)
図2と図3に示すように、本発明の実施例2によるリチウム含有電極材料の焼結方法は、粒状のリチウムとMの混合物を蓋付きの金属容器内に入れる手順と、300〜700℃の温度範囲と500〜900℃の温度範囲の二段階の加熱を連続して金属容器に対して行い内部混合物を熱処理する手順と、熱処理後の混合物を粉砕(研磨)して粉体状のリチウム含有電極材料を得る手順と、によってなる。実施例2のように、二段階を連続して行う加熱方式で焼結して得られる粉体は、複数の小さな粒が集まって一つの粒を形成する粉体構造になることが多い。
【0012】
本発明は固相焼結の方法であり、この方法によって得られるリチウム含有電極材料の形式は、リチウム電池正極材料に用いられるリチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(Li(NiCoMn)O)等を含み、また、リチウム電池負極材料に用いられるLiTi12、LiC、LiSnO等を含む。
【0013】
図4に示すように、材料の焼結の過程において、金属容器10内の混合物30が反応する時、CO2−やその他の気体が生じる。また、金属容器10の蓋体20も同様に熱源の影響を受け、蓋体20付近の気体分子の温度は高くなり、気体分子は金属容器10内で対流する。金属容器10内の体積は一定であるため、内部の圧力が温度の上昇とともに増え、内部圧力が外部の大気圧より高くなった時、気体は、低圧の外部の方向へ移動し(図において、連続した矢印で示している)、金属容器10とその蓋体20の隙間から流出し、流体静力の均衡を達成し、金属容器10内の空気は追い出されて、内圧保護を形成する。それにより、材料30が反応する過程で、その他の不要な物質や酸素と接触することがなくなる。また、図5に示すように、焼結の過程において、温度が上昇する時、金属容器10の酸化特性、及び、金属容器1と蓋体20が金属の熱膨張作用により緊密に接合する特性によって、金属容器10の外部に保護層が形成され、内部材料(特に、鉄(Fe)を含む粉体材料)が酸化しないように保護することができる。それにより、本発明の焼結方法は、保護気体を使用する必要がなくなり(或いは保護気体の量を減らすことができ)、コストを下げることができる。
【0014】
また、本発明の一実施形態において、粉体状のリチウム含有電極材料の焼結の際に使用する原材料は、炭酸リチウム(Lithium carbonate;LiCO)、水酸化リチウム(Lithium hydroxide;LiOH)、リン酸鉄(Iron phosphate;FePO)、グラファイト(Graphite;C)を含む。また、焼結の際の反応生成物及びその他の生成物は、以下の(4−1)、(4−2)化学式で示す。その内、nは反応の合成比率であり、X1、Xは、その他の反応生成物であり、XはCO、COを含む可能性があり、XはCO、CO、HOを含む可能性がある。

【化1】

【0015】
上の式から分かるように、焼結の過程においては、X、Xに含まれる気体が内圧保護を形成し、外部気体が焼結構造内に進入できなくするため、高酸化物の粉体の焼結は保護される。
【0016】
また、金属容器10とその蓋体20は、鉄或いは非鉄金属からなり、金属容器10とその蓋体20の材質は互いに異なるか、或いは互いに同じであり、急速に温度を下げた場合でも亀裂が生じない。従って、強制的に温度を下げることで焼なましの時間を大幅に短縮することができ、製造時間を短くできる。また、金属容器10とその蓋体20の連結箇所はニーズに応じて相互に対応する接合面にすることができ、蓋をしたときの密着性を高めることができる。図6に示すように、一実施形態において、金属容器10は、複数個を横に配列するか、或いは縦に重ねて加熱を行うことができる。また、縦に重ねた時、上層の金属容器10の底部は、下層の金属容器10の蓋体を形成する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状のリチウム化合物とMの混合物を蓋付きの金属容器内に入れる手順と、
300〜700℃の温度範囲と500〜900℃の温度範囲の二段階で金属容器を加熱し内部の混合物を熱処理する手順と、
熱処理後の混合物を粉砕して粉体状のリチウム含有電極材料を得る手順と、からなり、
その内、前記Mは、Fe、P、Co、Ni、Mn、V、C元素及びその酸化物或いは化合物であることを特徴とする、リチウム含有電極材料の焼結方法。
【請求項2】
粒状のリチウム化合物とMの混合物を蓋付きの金属容器内に入れる手順と、
300〜700℃の温度範囲で金属容器を加熱し内部の混合物を熱処理する手順と、
熱処理後の混合物を粉砕する手順と、
500〜900℃の温度範囲で粉砕した後の混合物を熱処理する手順と、
熱処理後の混合物をさらに粉砕して粉体状のリチウム含有電極材料を得る手順と、からなることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム含有電極材料の焼結方法。
【請求項3】
粒状のリチウム化合物とMの混合物を蓋付きの金属容器内に入れる手順と、
300〜700℃の温度範囲と500〜900℃の温度範囲の二段階の加熱を連続して
金属容器に対して行い内部混合物を熱処理する手順と、
熱処理後の混合物を粉砕して粉体状のリチウム含有電極材料を得る手順と、
からなることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム含有電極材料の焼結方法。
【請求項4】
粉体状のリチウム含有電極材料の焼結の際に使用する原材料は、炭酸リチウム(Lithium carbonate;LiCO)、水酸化リチウム(Lithium hydroxide;LiOH)、リン酸鉄(Iron phosphate;FePO)、グラファイト(Graphite;C)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム含有電極材料の焼結方法。
【請求項5】
該金属容器とその蓋体は、鉄或いは非鉄金属からなり、該金属容器とその蓋体の材質は、互いに異なるか、或いは互いに同じであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム含有電極材料の焼結方法。
【請求項6】
該金属容器とその蓋体の連結箇所は、平面或いは凹凸形状であることを特徴とする、請求項5に記載のリチウム含有電極材料の焼結方法。
【請求項7】
加熱を行う際、該金属容器は、横に複数個並べられるか、或いは縦に複数個重ねられ、縦に複数個重ねた場合は、上層の金属容器の底部が下層の金属容器の蓋体を形成することを特徴とする、請求項1に記載のリチウム含有電極材料の焼結方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−249338(P2011−249338A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119269(P2011−119269)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(311003318)ハーモニー ブラザー カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】