説明

リニアガイド装置およびシールユニット

【課題】案内レール上に付着した異物を効果的に除去できる新規なリニアガイド装置およびシールユニットの提供。
【解決手段】案内レール10を跨ぐようにスライド自在に係合するスライダ20の端面に、前記案内レール10の表面に付着した異物を除去するシールユニット30を備えると共に、当該シールユニット30は、前記スライダ20の端面に着脱されるケース33と、当該ケース33内に軸支されて前記案内レール10に対して転がり接触するローラー部材31と、当該ローラー部材31に従動して回転しながら前記案内レール10の表面に付着した異物を掃き出して除去する除去部材32とを有する。これによって異物の量が多かったり、案内レール10上に固着しているような場合であってもこれらの異物を効果的に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や産業機械などに好適に適用される直動案内装置の1つであるリニアガイド装置およびこれに適用されるシールユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に係るリニアガイド装置は、直線状の案内レール上に下向きコ字形をしたスライダが複数の転動体(ボール)を介してスライド自在に係合した構造となっている。
そして、これら各転動体は、スライダと案内レールとによって形成される循環路内を高速で転動しながら循環することになるため、その転動体と循環路の軌道面との間での良好な潤滑性を維持すべくその転動体と軌道面との間にゴミなどの異物が侵入するのを防止するための工夫が必要となってくる。
【0003】
従来、このようなスライダ内への異物の侵入を防止する方法としては、その案内レールやスライダ全体を蛇腹状のカバーで覆ったり、そのスライダ端面にシール板を取り付けたりする方法が典型的なものであるが、その他にも例えば以下の特許文献1〜3に示すような様々な方法が提案されている。
先ず、特許文献1では、スライダ端面に取り付けたシールのリップ部を摺接部と非摺接部の2段設け、これら2段のリップ部によって案内レールに付着した大小様々な異物を掻き取ることでスライダ内への異物の侵入を防止するようにしている。
【0004】
一方、特許文献2では、スライダ端面にブラシ状のシールを備え、このブラシ状のシールによって案内レールの上面側に溜まった埃などの異物を掃き出すようにすることでスライダ内への異物の侵入を防止するようにしている。
また、特許文献3では、スライダの端面に空気吹出口を設け、この空気吹出口から高圧エアーを吹き出して案内レール上の異物を吹き飛ばす(エアーブロー)ことでスライダ内への異物の侵入を防止するようにしている。
【特許文献1】実開昭63−145019号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第19961225(DE-A1-019961225)号明細書
【特許文献3】実公平6−38177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1の構成では、異物の量が特に多い場合には、掻き取った異物がシールのリップ部周辺に堆積して異物除去効果が徐々に低下してしまうことから、定期的にリップ部周辺を清掃しなければならず、メンテナンスに多くの手間が掛かるという問題がある。
一方、前記特許文献2の構成では、案内レール上の異物をブラシ状のシールで掃き出すことになるため、シールへの異物の堆積の程度を特許文献1のような構成に比べて少なくすることができるが、このブラシ状のシールはスライダの端面に単に固定されているだけの構造であるため、異物の除去効果は大きくない。従って、異物の量が多かったり、異物が案内レール上に固着しているように場合には、これらの異物を効果的に除去することは困難である。
【0006】
また、前記特許文献3の構成では、高圧のエアーのみによって案内レール上の異物を除去するようにしているため、固着した異物や大量の異物を除去するためには、空気吹出口に送り込む空気の圧力を非常に高くする必要がある。そのため、大型のコンプレッサーなどの大掛かりな付帯設備が必要となり、設備費用や運転コストが高くなる傾向になる。
そこで、本発明は前記のような問題点を解決するために案出されたものであり、その目的は、これらの不都合を回避しつつ案内レール上に付着した異物を効果的に除去できる新規なリニアガイド装置およびシールユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1の発明は、
案内レールと、当該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダとを有するリニアガイド装置であって、前記スライダの一端面または両端面に、前記案内レールの表面に付着または堆積した異物の侵入を防止するシールユニットを備えると共に、当該シールユニットは、前記スライダの端面に着脱されるケースと、当該ケース内に軸支されて前記案内レールに対して転がり接触するローラー部材と、当該ローラー部材に従動して回転しながら前記案内レールの表面に付着した異物を掃き出して除去する除去部材とを有することを特徴とするリニアガイド装置である。
【0008】
また、請求項2の発明は、
案内レールと、当該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダとを有するリニアガイド装置であって、前記スライダの一端面または両端面に、前記案内レールの表面に付着または堆積した異物の侵入を防止するシールユニットを備えると共に、当該シールユニットは、前記スライダの端面に着脱されるケースと、当該ケース内に軸支されて前記案内レールの表面に付着した異物を回転しながら掃き出して除去する除去部材と、当該除去部材を回転駆動するアクチュエータとを有することを特徴とするリニアガイド装置である。
【0009】
また、請求項3の発明は、
請求項2に記載のリニアガイド装置において、前記アクチュエータは、前記除去部材の回転軸を駆動するタービン機構または駆動モータであることを特徴とするリニアガイド装置である。
また、請求項4の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアガイド装置において、前記除去部材は、前記ケース内に軸支された回転軸の周囲に、少なくとも先端部分が前記案内レールの表面に摺接する毛体を多数植設してなるブラシ状をしたものであることを特徴とするリニアガイド装置である。
【0010】
また、請求項5の発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアガイド装置において、前記除去部材は、前記ケース内に軸支された回転軸の周囲に、少なくとも先端部分が前記案内レールの表面に摺接するリップ部を備えてなる円筒状または円柱状をしたものであることを特徴とするリニアガイド装置である。
また、請求項6の発明は、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のリニアガイド装置において、前記スライダ端面とシールユニットの間に、板状のサイドシールを備えたことを特徴とするリニアガイド装置である。
【0011】
また、請求項7の発明は、
スライダを係合する案内レールの表面に付着または堆積した異物の侵入を防止するシールユニットであって、前記スライダの端面に着脱されるケースと、当該ケース内に軸支されて前記案内レールに対して転がり接触するローラー部材と、当該ローラー部材に従動して回転しながら前記案内レールの表面に付着した異物を掃き出して除去する除去部材とを有することを特徴とするシールユニットである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、スライダの端面に取り付けられたシールユニットのケース内に設けられたローラー部材が案内レールの表面に対して転がり接触して回転すると、除去部材がこれに従動して回転しながら案内レールの表面に付着した異物を掃き出して除去するようになるため、付着または堆積した異物の量が多かったり、案内レール上に固着しているような場合であっても、これらの異物を効果的に除去することができる。
【0013】
また、除去部材で除去された異物はそのまま外方に掃き出されるため、大量の異物が付着している場合でもその効果を損なうことがない。
また、この除去部材は、ケース内に軸支されてシールユニットとしてスライダの端面に取り付けられるため、既存のスライダなどをそのまま利用することが可能となり、これにより、製造コストも安価となる。また、そのシールユニットおよびその構成部品などの交換も容易にできる。
【0014】
また、請求項2の発明によれば、スライダの端面に取り付けられたシールユニットのケース内に軸支された除去部材が、請求項3に示すようなタービン機構または駆動モータなどのアクチュエータによって回転しながらその案内レールの表面に付着した異物を掃き出して除去するようになるため、請求項1の発明と同様な作用・効果を発揮することができる。
【0015】
また、請求項4の発明によれば、この除去部材として、回転軸の周囲に毛体を多数植設してなるブラシ状のものを用いたことから、その毛体の先端が絶え間なく連続してその案内レールの表面を摺接することになり、これによって、より確実にその案内レールの表面に付着した異物を掃き出して除去することができる。
また、このようなブラシ状の除去部材は柔軟で容易に変形可能であるため、その先端が摩耗したり、製作誤差によって除去部材と案内レールとの距離などが変化してもその毛体の先端は常に案内レールの表面に接触することになるため、確実にその表面に付着した異物を掃き出して除去することができる。
【0016】
また、請求項5の発明によれば、この除去部材として、回転軸の周囲に多数のリップ部を備えてなる円筒状または円柱状のものを用いたことから、そのリップ部が絶え間なく連続してその案内レールの表面を摺接することになり、これによって、請求項4の発明と同様な作用・効果を発揮することができる。
一方、請求項6の発明によれば、前記スライダ端面とシールユニットの間に、板状のサイドシールを備えたことから、仮に前記シールユニットで除去できない異物が残ったとしても、このサイドシールによってその残った異物を確実に除去することができる。
【0017】
また、請求項7の発明によれば、請求項1と同様に付着または堆積した異物の量が多かったり、案内レール上に固着しているような場合であっても、これらの異物を効果的に除去することができる。
また、このシールユニットは、スライダの端面に取り付けられるため、既存のスライダなどをそのまま利用することが可能となる。また、リニアガイド装置のスライダに対するそのシールユニット自身やその構成部品などの交換も容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係るリニアガイド装置100の実施の一形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るリニアガイド装置100の実施の一形態を示す全体斜視図、図2はその分解斜視図、図3はそのリニアガイド装置100の長手方向一部破断面図である。
図示するようにこのリニアガイド装置100は、直線状に延びる案内レール10と、この案内レール10上にこれを跨ぐようにスライド移動自在に係合された断面下向きコ字形のスライダ20とから主に構成されている。
【0019】
この案内レール10は、図1および図3に示すように断面矩形状に形成された金属から形成されており、その両側面にはそれぞれ断面半円形状をした下段軌道面11,11がその長手方向に沿って連続して形成されている。そして、図3に示すように、この案内レール10側の下段軌道面11,11とそれぞれ対向するようにスライダ20の内面両側部に形成されたスライダ側下段軌道面21、21(図3では一方のみ図示)と、そのスライダ20内をその長手方向に貫通するように形成された下段通過孔22、22(図3では一方のみ図示)によって左右一対の下部循環路23、23(図3では一方のみ図示)が形成され、その下部循環路23、23内にそれぞれ収容された複数の転動体(ボール)Bがこの下段軌道面11,11に沿って転動しながらその下部循環路23、23内を長手方向に循環するようになっている。
【0020】
また、さらにこの案内レール10の上端両角部には、前記下段軌道面11,11と平行になるように断面扇形状をした上段軌道面12,12がその長手方向に沿って連続して形成されている。そして、同じくこの上段軌道面12,12とそれぞれ対向するようにスライダ20の内面両側部に形成されたスライダ側上段軌道面24,24(図3では一方のみ図示)と、そのスライダ20内をその長手方向に貫通するように形成された上段通過孔25,25(図3では一方のみ図示)とによって上部循環路26、26(図3では一方のみ図示)が形成され、同じくその上部循環路26,26内にそれぞれ収容された複数の転動体(ボール)Bがこの上段軌道面12,12に沿って転動しながらその上部循環路26,26内をその長手方向に循環するようになっている。
【0021】
また、図1および図2に示すようにこのスライダ20の両端面には、そのスライダ20の端面形状とほぼ相似形なサイドシール20a、20aを介して一対のシールユニット30,30がそれぞれボルト40,40によって着脱自在に取り付けられている。
このサイドシール20a、20aは、例えばSUSなどからなる金属板にニトリルゴムなどを接着したものであり、案内レール10の外周に多少のしめしろをもって接触することで、細かい異物がスライダ20内に侵入するのを防止するようになっている。
【0022】
一方、シールユニット30は、図3および図4に示すように案内レール10を挟んでその両側面に位置する一対のローラー部材31,31(図4では一方のみ図示)と、この各ローラー部材31,31とそれぞれペアになるようにそのスライダ20の移動方向前後に位置する一対の除去部材32,32と、これらローラー部材31,31および除去部材32,32を収容するケース33とから主に構成されている。
【0023】
このローラー部材31は、少なくともその表面がゴムやエラストマーなどの案内レール10の表面との接触摩擦力が大きい材料からなる円筒体31aと、その円筒体31aの中心部から突出する軸31bとから構成されており、その円筒体31aの表面が案内レール10の表面(側面)と密着するようにその軸31bの上下端がケース33の内側に軸支されることでスライダ20の移動に伴ってその案内レール10に対して転がり接触(回転)するようになっている。
【0024】
また、除去部材32は、図4および図5に示すように、ケース33内に上下に軸支された軸32aの周囲に、ナイロンなどの適度な柔軟性や耐摩耗性などに優れた毛体32bを多数束ねて放射状に植設したブラシ状に形成されている。そして、この毛体32bは、その植設によって長さが異なっており、その外径形状は、案内レール10の側面に倣うようになっている。すなわち、案内レール10の上下各軌道面11,11,12,12に位置する毛体32bは長くなっているのに対し、その間に位置している毛体32bは短く形成されており、これによって、除去部材32が案内レール10の下軌道面11から上軌道面12に亘ってほぼ均一な圧力で接触するようになっている。
【0025】
また、この除去部材32は、その軸32aの上端に設けられたプーリー32cと、前記ローラー部材31の軸31aとがドライブベルト34でクロス連結されており、図5に示すようにローラー部材31が案内レール10の側面を転がり接触して図中右回り方向(時計回り方向)に回転すると、その回転力がドライブベルト39を介して除去部材32側に伝わってこれを図中左回り(反時計回り方向)に回転駆動するようになっている。
【0026】
従って、このような構成をしたシールユニット30,30を備えた本発明のリニアガイド装置100にあっては、図5に示すように案内レール10上をスライダ20が移動すると、この動きに伴ってこのシールユニット30の各ローラー部材31,31が案内レール10の両側面に対して転がり接触(回転)すると共に、これら各ローラー部材31,31の回転に伴ってブラシ状の除去部材32も回転し、その表面が前記案内レール10の両側面のうち、特に前記転動体Bが転動する案内レール10の上下各軌道面11,11,12,12およびその間に付着した異物を掻き出して除去するようになっている。
【0027】
すなわち、この除去部材32の回転により、その毛体32aの先端がその案内レール10の表面に絶え間なく連続して摺接することになり、これによってその案内レール10の表面に付着した異物を確実に掃き出して除去することになる。また、異物を外方に掃き出すようにして除去するための、大量の異物が付着しても十分に対応することができる。
また、このようなブラシ状の除去部材32の毛体32bは柔軟で容易に変形可能であるため、その先端が摩耗したり製作誤差などによって除去部材32bと案内レール10との距離が変化してもその毛体32bの先端は常に案内レール10の表面に適度な圧をもって接触することになるため、確実にその表面に付着した異物を外方に掃き出して除去することができる。
【0028】
これによって前記公知文献の技術のように掻き取った異物がシール端面に堆積したり、異物を除去するための大型のコンプレッサーなどの大掛かりな付帯設備を用いることなく、案内レール10上に付着した異物を経済的に且つ効果的に除去することができる。
また、この除去部材31は、ケース33内に軸支されてシールユニット30としてスライダ20の端面に着脱自在に取り付けられるため、既存のスライダなどをそのまま利用することが可能となり、その製造コストも比較的安価となる。
【0029】
また、異物の除去機能が低下したり、喪失した場合には、そのシールユニット30全体、あるいはその構成部品単位での交換も容易にできる。
また、本発明のリニアガイド装置100では、スライダ20端面とシールユニット30の間に板状のサイドシール20aを備えたことから、仮にこのシールユニット30で除去できない異物が残ったとしてもこのサイドシール20aによってその残った異物を確実に除去することができるため、スライダ20内への異物の混入をより確実に防止することができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、スライダ20の両端面にそれぞれシールユニット30,30を備えた例で説明したが、このシールユニット30は、スライダ20の一端面のみに設けるようにしても良いことは勿論である。
また、本発明のリニアガイド装置100のシールユニット30を構成するローラー部材31や除去部材32を案内レール10側に対して近接・離間自在に軸支し、例えばコイルバネや板バネ、ゴムなどの付勢部材によってこれらローラー部材31や除去部材32を案内レール10表面に対して常に適当な押圧力で押し付けるようにすれば、これら各部材31,32が空回りしたりすることがなくなって常に良好に機能させることができる。
【0031】
また、除去部材32の先端(表面)は、案内レール10の表面に対して常に適度な圧をもって接触している状態が望ましいが、この除去部材32をその案内レール10の表面に付着した異物にのみ接触するような極めて微小な間隔をもって設置すれば、この除去部材32の摩耗を抑えることが可能となり、その長寿命化を図ることができる。
【0032】
次に、図6〜図10は、本発明に係るリニアガイド装置100の他の実施の形態を示したものである。
先ず、図6は、本発明のリニアガイド装置100のシールユニット30を構成する除去部材32として他の構造例を示したものであり、図示するように本実施の形態では、この除去部材32として前述したようなブラシ状のものに代えて回転軸32aの周囲に多数のリップ部32d、32d…を備えてなる円筒状または円柱状のものを用いたものである。
そして、このような形態の除去部材32であってもその回転に伴ってそのリップ部32d、32d…が絶え間なく連続してその案内レール10の表面に摺接することになり、これによって前記実施の形態と同様な作用・効果を発揮することができる。なお、このリップ部32d、32dの材質としては特に限定されるものではないが、エラストマーやゴムなどの適度な弾性のある材料を用いることが望ましい。
【0033】
次に、図7は、本発明のリニアガイド装置100のシールユニット30を構成するローラー部材31と除去部材32とを案内レール10の上面側に位置するように設けたものである。
すなわち、リニアガイド装置100の案内レール10が平置き状態(ほぼ水平状態)で利用されるようなケースでは、その側面よりもその上面側に集中して異物が付着・堆積することになる。そのため、そのようなケースで利用される場合には、本実施の形態に示すようなシールユニット30を用いれば、主に案内レール10の上面側に付着・堆積した大量の異物を効果的に除去することができる。
【0034】
さらに、図8に示すようにこのような構成に前記実施の形態のような構成を付加すれば、案内レール10の上面のみならず、その側面に付着した異物も同時に除去することができる。なお、各図においてローラー部材31は、除去部材32の紙面方向前後に位置するため図示を省略する。
また、図9および図10は、それぞれ本発明のリニアガイド装置100のシールユニット30を構成する除去部材32を回転駆動するための駆動源(アクチュエータ)として、前記ローラー部材31に代わってタービン機構(図9)や駆動モータ(図10)などの他のアクチュエータ50を用いたものである。
【0035】
図9に示すシールユニット30では、除去部材32の軸32aの上端にタービンブレード51を接続すると共にその周囲に圧縮空気を流通する空気流路52を設けたものであり、その空気流路52の入口52aから出口52bにかけて高圧のエアーを流すことで除去部材32を強制的に回転駆動させるようにしたものである。
また、一方の図10に示すシールユニット30では、除去部材32の軸32aの上端に電動モータなどの駆動モータ53を直結あるいは図示しないギア機構を介して接続したものであり、この駆動モータ53の駆動力によって同じく除去部材32を強制的に回転駆動させるようにしたものである。
従って、これらの各構成によっても前記実施の形態と同様な作用・効果を発揮することができる。
【0036】
しかも、本実施の形態によれば、スライダ20の動きの有無に拘わらず除去部材32の回転駆動速度を自在にコントロールできるため、スライダ20が停止している場合や異物の付着状況などに応じて除去部材32を最適に回転駆動することができる。例えば、電子制御などによって異物の量が多い場合にはその電動モータの回転数を多めにし、異物の量が少ない場合にはその回転数を少なめにするといった設定が容易にできる。なお、この電動モータを駆動するための電源は、ケーブルなどを介して外部から供給しても良いが、シールユニット30やスライダ20に乾電池などのバッテリーを内蔵するようにすれば配線の手間がなくより簡便な使用が可能となる。
【0037】
一方、タービン機構を用いた場合では、その空気流量をコントロールすることで同様な作用・効果が得られることは勿論、圧縮空気の圧力が比較的小さい場合でも確実に除去部材32を駆動することができるため、前記の先行技術のように圧縮空気で直接異物を吹き飛ばす方式に比べてもよりも確実な異物除去が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るリニアガイド装置の実施の一形態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明に係るリニアガイド装置の実施の一形態を示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係るリニアガイド装置の実施の一形態を示す長手方向一部破断面図である。
【図4】本発明に係るシールユニットの実施の一形態を示す一部破断斜視図である。
【図5】本発明に係るシールユニットの作用を示す概念図である。
【図6】本発明に係るシールユニットの他の実施の形態を示す概念図である。
【図7】本発明に係るシールユニットの他の実施の形態を示す概念図である。
【図8】本発明に係るシールユニットの他の実施の形態を示す概念図である。
【図9】本発明に係るシールユニットの他の実施の形態を示す概念図である。
【図10】本発明に係るシールユニットの他の実施の形態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0039】
100…リニアガイド装置
10…案内レール
11…下段側軌道面
12…上段側軌道面
20…スライダ
20a…サイドシール
30…シールユニット
31…ローラー部材
31a…円筒体
31b…軸
32…除去部材
32a…軸
32b…毛体
32c…プーリー
32d…リップ部
33…ケース
34…ドライブベルト
50…アクチュエータ
51…タービンブレード
53…駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、当該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダとを有するリニアガイド装置であって、
前記スライダの一端面または両端面に、前記案内レールの表面に付着または堆積した異物の侵入を防止するシールユニットを備えると共に、
当該シールユニットは、前記スライダの端面に着脱されるケースと、当該ケース内に軸支されて前記案内レールに対して転がり接触するローラー部材と、当該ローラー部材に従動して回転しながら前記案内レールの表面に付着した異物を掃き出して除去する除去部材とを有することを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項2】
案内レールと、当該案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダとを有するリニアガイド装置であって、
前記スライダの一端面または両端面に、前記案内レールの表面に付着または堆積した異物の侵入を防止するシールユニットを備えると共に、
当該シールユニットは、前記スライダの端面に着脱されるケースと、当該ケース内に軸支されて前記案内レールの表面に付着した異物を回転しながら掃き出して除去する除去部材と、当該除去部材を回転駆動するアクチュエータとを有することを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項3】
請求項2に記載のリニアガイド装置において、
前記アクチュエータは、前記除去部材の回転軸を駆動するタービン機構または駆動モータであることを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアガイド装置において、
前記除去部材は、前記ケース内に軸支された回転軸の周囲に、少なくとも先端部分が前記案内レールの表面に摺接する毛体を多数植設してなるブラシ状をしたものであることを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアガイド装置において、
前記除去部材は、前記ケース内に軸支された回転軸の周囲に、少なくとも先端部分が前記案内レールの表面に摺接するリップ部を備えてなる円筒状または円柱状をしたものであることを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のリニアガイド装置において、
前記スライダ端面とシールユニットの間に、板状のサイドシールを備えたことを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項7】
スライダを係合する案内レールの表面に付着または堆積した異物の侵入を防止するシールユニットであって、
前記スライダの端面に着脱されるケースと、当該ケース内に軸支されて前記案内レールに対して転がり接触するローラー部材と、当該ローラー部材に従動して回転しながら前記案内レールの表面に付着した異物を掃き出して除去する除去部材とを有することを特徴とするシールユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−175316(P2008−175316A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10169(P2007−10169)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】