説明

リニアガイド装置

【課題】ころのスキューが発生しにくく且つころの進行方向に直交する方向へのころのズレが発生しにくいリニアガイド装置を提供する。
【解決手段】リニアガイド装置は、案内レール1と、軸方向に移動可能に案内レール1に取り付けられたスライダ2と、転動体転動路内に転動自在に装填された複数の円筒ころ3と、円筒ころ3を転動体転動路の終点から始点へ送る転動体戻し路と、を備える。スライダ2の転動体軌道面11には、円筒ころ3を保持して円筒ころ3の進行を案内する転動体案内溝7が軸方向に沿って形成されている。そして、軸方向に直交する平面で転動体案内溝7を切断した場合の断面形状は、溝底7aから開口部に向かって溝幅が徐々に大きくなる略台形状をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニアガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアガイド装置としては、例えば特許文献1に開示のものが知られている。特許文献1に開示の従来のリニアガイド装置を、図28を参照しながら説明する。
軸方向に延びる断面形状略角形の案内レール101の上に、断面形状略コ字状のスライダ102が軸方向に移動可能に組み付けられている。この案内レール101の左右両側面101a,101aには、軸方向に延びる上下2つの傾斜面が略ハ字状に形成されていて、合計4つの傾斜面はそれぞれ転動体軌道面110をなしている。
【0003】
また、スライダ102は、スライダ本体102Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ102Bと、で構成されており、スライダ本体102Aの左右両袖部106,106の内側面には、案内レール101の転動体軌道面110,110,110,110に対向する傾斜面状の転動体軌道面111,111,111,111が形成されている。
【0004】
そして、案内レール101の転動体軌道面110,110,110,110とスライダ102の転動体軌道面111,111,111,111との間に、断面形状略矩形の転動体転動路が形成されていて、これらの転動体転動路は軸方向に延びている。この転動体転動路内には、転動体である複数の円筒ころ103が転動自在に装填されていて、これらの円筒ころ103の転動を介してスライダ102が案内レール101に沿って軸方向に移動するようになっている。
さらに、スライダ102は、スライダ本体102Aの左右両袖部106,106の肉厚部分の上部及び下部に、前記転動体転動路と平行をなして軸方向に貫通する断面略矩形の貫通孔からなる直線状路114,114,114,114を備えている。
【0005】
一方、エンドキャップ102Bは、例えば樹脂材料の射出成形品からなり、断面形状が略コ字状に形成されている。また、エンドキャップ102Bの裏面の左右両側には、断面形状略矩形の半ドーナツ状の湾曲路(図示せず)が上下二段に形成されている。このエンドキャップ102Bをスライダ本体102Aに取り付けると、前記湾曲路によって前記転動体転動路と直線状路114とが連通される。これら直線状路114と両端の湾曲路とで、円筒ころ103を前記転動体転動路の終点から始点へ送る転動体戻し路が構成され、前記転動体転動路と前記転動体戻し路とで、略環状の転動体循環路が案内レール101を挟んで左右両側に形成される。
【0006】
案内レール101に組みつけられたスライダ102が案内レール101に沿って軸方向に移動すると、前記転動体転動路内に装填されている円筒ころ103は、前記転動体転動路内を転動しつつ案内レール101に対してスライダ102と同方向に移動する。そして、円筒ころ103が前記転動体転動路の終点に達すると、前記転動体転動路からすくい上げられ湾曲路へ送られる。湾曲路に入った円筒ころ103はUターンして直線状路114に導入され、直線状路114を通って反対側の湾曲路に至る。ここで再びUターンして前記転動体転動路の始点に戻り、このような転動体循環路内の循環を無限に繰り返す。
【0007】
このようなリニアガイド装置は、転動体として円筒ころ103が使用されていることにより、転動体としてボールが使用されている場合に比べて剛性及び負荷能力が高くなる一方、移動中の円筒ころ103の軸振れ、いわゆるスキューが発生しやすい。その結果、リニアガイド装置の作動性が悪化するおそれがあった。
このような事情から、従来においては、互いに隣り合う円筒ころ103間に樹脂製の保持ピース120を介装することにより、円筒ころ103同士の直接接触を防止すると共に、前記スキューを抑制するようにしていた。すなわち、円筒ころ103の微小角度のスキューを抑制するという目的を達成するために、保持ピース120の形状及び寸法などを最適化していた。これにより、スライダ102の走行を滑らかにすると共に、走行中の騒音低減を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−127338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されたリニアガイド装置においては、樹脂製の保持ピース120は剛性が低いことから、スキューの抑制力が十分ではなく、また、円筒ころ103の進行方向に直交する方向(円筒ころ103の軸方向)への円筒ころ103のズレ(図29を参照)を抑制する力も十分ではなかった。そのため、スキューの抑制力や前記ズレの抑制力を向上させるべく改善の余地があった。
【0010】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、ころのスキューが発生しにくく且つころの進行方向に直交する方向へのころのズレ(以降においては「ころ軸方向ズレ」と記すこともある)が発生しにくいリニアガイド装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の態様は、次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係るリニアガイド装置は、軸方向に延びる転動体軌道面を有する案内レールと、該案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記両転動体軌道面の間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された転動体である複数のころと、を備え、前記案内レールの転動体軌道面及び前記スライダの転動体軌道面のうち少なくとも一方には、前記ころを保持して前記ころの進行を案内する転動体案内溝が軸方向に沿って形成されており、軸方向に直交する平面で前記転動体案内溝を切断した場合の断面形状が、溝底から開口部に向かって溝幅が徐々に大きくなる略台形状をなしていることを特徴とする。
【0012】
このような本発明の一態様に係るリニアガイド装置においては、前記ころは、円筒面と端面との境界部分に形成される角部が面取りされており、前記ころの円筒面が前記転動体案内溝の溝底に接し、前記ころの面取り部が前記転動体案内溝の傾斜側面に接していることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のリニアガイド装置は、案内レールの転動体軌道面及びスライダの転動体軌道面のうち少なくとも一方に、ころを保持してころの進行を案内する転動体案内溝が軸方向に沿って形成されており、軸方向に直交する平面で転動体案内溝を切断した場合の断面形状が、溝底から開口部に向かって溝幅が徐々に大きくなる略台形状をなしているので、ころのスキューが発生しにくく且つころの進行方向に直交する方向へのころのズレが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るリニアガイド装置の第1実施形態の構造を説明する斜視図である。
【図2】図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図である。
【図3】図1のリニアガイド装置の要部を拡大して示した部分拡大図である。
【図4】転動体案内溝の構成を説明する平面図である。
【図5】第1実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図6】本発明に係るリニアガイド装置の第2実施形態の構造を説明する正面図である。
【図7】第2実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図8】本発明に係るリニアガイド装置の第3実施形態の構造を説明する正面図である。
【図9】第3実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図10】本発明に係るリニアガイド装置の第4実施形態の構造を説明する正面図である。
【図11】第4実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図12】本発明に係るリニアガイド装置の第5実施形態の構造を説明する正面図である。
【図13】第5実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図14】本発明に係るリニアガイド装置の第6実施形態の構造を説明する正面図である。
【図15】第6実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図16】本発明に係るリニアガイド装置の第7実施形態の構造を説明する正面図である。
【図17】第7実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図18】本発明に係るリニアガイド装置の第8実施形態の構造を説明する正面図である。
【図19】第8実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図20】本発明に係るリニアガイド装置の第9実施形態の構造を説明する正面図である。
【図21】第9実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図22】本発明に係るリニアガイド装置の第10実施形態の構造を説明する正面図である。
【図23】第10実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図24】本発明に係るリニアガイド装置の第11実施形態の構造を説明する正面図である。
【図25】第11実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図26】本発明に係るリニアガイド装置の第12実施形態の構造を説明する正面図である。
【図27】第12実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する図である。
【図28】従来のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図である。
【図29】ころの進行方向に直交する方向へのころのズレを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るリニアガイド装置の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明に係るリニアガイド装置の第1実施形態の構造を示す斜視図であり、図2は、図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図(ただし、エンドキャップを省略して図示している)である。また、図3は、図1のリニアガイド装置の要部(転動体案内溝の周辺部分)を拡大して示した部分拡大図である。さらに、図4は、転動体軌道面に形成された転動体案内溝の構成を説明する平面図である。なお、これ以降の各図においては、同一又は相当する部分には、同一の符号を付してある。また、これ以降の説明における上,下,左,右等の方向を示す用語は、特に断りがない限り、説明の便宜上、各図におけるそれぞれの方向を意味するものである。
【0016】
軸方向に延びる断面形状略角形の案内レール1上に、断面形状略コ字状のスライダ2が軸方向に移動可能に組み付けられている。この案内レール1の左右両側面1a,1aには、軸方向に延びる凹部がそれぞれ形成されている。そして、それら凹部内には、軸方向に延びる上下2つの傾斜面が略ハ字状にそれぞれ形成されていて、合計4つの傾斜面はそれぞれ転動体軌道面10をなしている。
【0017】
また、スライダ2は、スライダ本体2Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ2B,2Bと、で構成されている。さらに、スライダ2の両端部(各エンドキャップ2Bの端面)には、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口をシールするサイドシール5,5が装着されており、スライダ2の下部には、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口をシールするアンダーシール(図示せず)が装着されている。
【0018】
さらに、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の内側面には、軸方向に延びる凸部が、案内レール1に向かって突出するように形成されている。そして、それら凸部上には、軸方向に延びる上下2つの傾斜面が略ハ字状にそれぞれ形成されていて、合計4つの傾斜面は、それぞれ案内レール1の転動体軌道面10,10,10,10に対向する転動体軌道面11,11,11,11をなしている。
【0019】
そして、案内レール1の転動体軌道面10,10,10,10とスライダ2の転動体軌道面11,11,11,11との間に、断面形状略矩形の転動体転動路がそれぞれ形成されていて、これらの転動体転動路は軸方向に延びている。なお、案内レール1及びスライダ2が備える転動体軌道面10,11の数は片側二列に限らず、例えば片側一列又は三列以上などであってもよい。
【0020】
この転動体転動路内には、転動体である多数の円筒ころ3が転動自在に装填されていて、これらの円筒ころ3の転動を介してスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動するようになっている。そして、互いに隣り合う円筒ころ3同士の接触により円筒ころ3の円滑な転動が妨げられることを防ぐために、互いに隣り合う円筒ころ3,3間には、例えば樹脂製の保持ピース20が介装されている。なお、ころの種類は円筒ころに限定されるものではなく、円すいころ,針状ころ等の他種のころも使用可能である。また、保持ピース20は備えていなくてもよい。
さらに、スライダ2は、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の肉厚部分の上部及び下部に、転動体転動路と平行をなして軸方向に貫通する断面略矩形の貫通孔からなる直線状路14,14,14,14を備えている。
【0021】
一方、エンドキャップ2Bは、例えば樹脂材料の射出成形品からなり、断面形状が略コ字状に形成されている。また、エンドキャップ2Bの裏面(スライダ本体2Aとの当接面)の左右両側には、断面形状略矩形の半ドーナツ状の湾曲路(図示せず)が上下二段に形成されている。このエンドキャップ2Bをスライダ本体2Aに取り付けると、湾曲路によって転動体転動路と直線状路14とが連通される。これら直線状路14と両端の湾曲路とで、円筒ころ3を転動体転動路の終点から始点へ送る転動体戻し路が構成され、転動体転動路と前記転動体戻し路とで、略環状の転動体循環路が案内レール1を挟んで左右両側に形成される。
【0022】
案内レール1に組みつけられたスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動すると、転動体転動路内に装填されている円筒ころ3は、転動体転動路内を転動しつつ案内レール1に対してスライダ2と同方向に移動する。そして、円筒ころ3が転動体転動路の終点に達すると、転動体転動路からすくい上げられ湾曲路へ送られる。湾曲路に入った円筒ころ3はUターンして直線状路14に導入され、直線状路14を通って反対側の湾曲路に至る。ここで再びUターンして転動体転動路の始点に戻り、このような転動体循環路内の循環を無限に繰り返す。
【0023】
このような本実施形態のリニアガイド装置においては、スライダ2の転動体軌道面11,11,11,11に、円筒ころ3を保持して円筒ころ3の進行を案内する転動体案内溝7,7,7,7が軸方向に沿って形成されている。そして、これらの転動体案内溝7の断面形状(軸方向に直交する平面で切断した場合の断面形状)は、図3から分かるように、転動体案内溝7の溝底7aから開口部に向かって溝幅が徐々に大きくなる略台形状をなしている。
【0024】
図3,4から分かるように、円筒ころ3は、その一部分が転動体案内溝7に収容されており、円筒ころ3の進行方向に直交する方向への円筒ころ3の動きが転動体案内溝7の傾斜側面7bによって規制されるので、円筒ころ3の進行方向に直交する方向への円筒ころ3のズレ、すなわちころ軸方向ズレが発生しにくい。また、円筒ころ3のスキューも発生しにくい。よって、円筒ころ3の円滑な循環が確保されるため、リニアガイド装置の作動性が優れている。
【0025】
さらに、円筒ころ3は、円筒面3aと端面3bとの境界部分に形成される角部が面取りされていて、斜面状の面取り部3cが形成されている。そして、円筒ころ3の円筒面3aが転動体案内溝7の溝底7aに接し、円筒ころ3の面取り部3cが転動体案内溝7の傾斜側面7bに接している。このような構成であれば、円筒ころ3の面取り部3cが転動体案内溝7の傾斜側面7bで保持されるため、円筒ころ3のスキュー及びころ軸方向ズレがより発生しにくい。なお、転動体案内溝7の幅寸法は、円筒ころ3の長さと略同一とするか、又は、円筒ころ3の進行方向の動きを妨げない程度に、円筒ころ3の長さよりも若干大きく設定するとよい。
【0026】
次に、転動体案内溝7の形成方法を、図5を参照しながら説明する。転動体案内溝7の形成方法は特に限定されるものではないが、砥石を用いて転動体軌道面11を研削することによって形成することができる。また、4つの転動体案内溝7は、1つずつ別々に形成してもよいが、複数を同時に形成してもよい。
本実施形態においては転動体案内溝7の断面形状が前記のような略台形状をなしているため、図5に示すような2つの研削部を有する砥石50を用いることにより、左側(又は右側)の袖部6の内側面に、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができる。すなわち、転動体案内溝7の断面形状が長方形状である場合は、転動体案内溝7の側面がスライダ2の前記凸部に形成された傾斜面に対して直角をなしているため、砥石50を左右方向に移動させることによっては上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができない。
【0027】
しかしながら、転動体案内溝7の断面形状が略台形状である場合は、転動体案内溝7の傾斜側面7bの傾斜角度を適宜設定すれば、砥石50を左右方向に移動させることによって上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができる。例えば、転動体案内溝7の傾斜側面7bと、スライダ2の前記凸部に形成された上下2つの傾斜面の線対称軸とが、平行となるように、転動体案内溝7の傾斜側面7bの傾斜角度を設定すれば、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができる。
このように、本実施形態のリニアガイド装置は、左側(又は右側)の袖部6の内側面に、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができるので、加工効率が高く生産性が優れている。よって、生産コストが抑えられる。
【0028】
また、転動体案内溝7の断面形状が長方形状である場合は、転動体案内溝7の深さを、円筒ころ3の面取り部3cが全て転動体案内溝7に収容されるように設定する必要がある。しかしながら、転動体案内溝7の断面形状が略台形状である場合は、円筒ころ3の面取り部3cが転動体案内溝7の傾斜側面7bに接して保持されるため、転動体案内溝7の深さを、円筒ころ3の面取り部3cが全て転動体案内溝7に収容されるように設定する必要はない。よって、転動体案内溝7の深さを最小限度に抑えることができるので、生産性が優れ、生産コストが抑えられる。
【0029】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明に係るリニアガイド装置の第2実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図7は、図6のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第2実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第1実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0030】
図6に示すように、本実施形態のリニアガイド装置は、スライダ2の4つの転動体軌道面11のうち下側の2つの転動体軌道面11に転動体案内溝7が形成されている。上側の2つの転動体軌道面11については、転動体案内溝7は形成されておらず、平坦面となっている。
このような構成により、第1実施形態と同様の作用・効果が奏されるが、特に、スライダ2に対して下向きの外部荷重が作用する場合には、外部荷重が下側の2つの転動体軌道面11に作用し、上側の2つの転動体軌道面11には外部荷重が作用しないので、上側の2つの転動体軌道面11には転動体案内溝7を形成する必要がない。その結果、生産コストを低減することができる。
【0031】
〔第3実施形態〕
図8は、本発明に係るリニアガイド装置の第3実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図9は、図8のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第3実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第1実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0032】
第1実施形態においては、4つの転動体案内溝7はスライダ2の転動体軌道面11に形成されていたが、第3実施形態においては、4つの転動体案内溝7が案内レール1の転動体軌道面10に形成されている。このような構成により、第1実施形態と同様の作用・効果が奏される。また、第1実施形態と同様に、図9に示すような2つの研削部を有する砥石50を用いることにより、案内レール1の左側(又は右側)の側面1aに、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができる。
【0033】
〔第4実施形態〕
図10は、本発明に係るリニアガイド装置の第4実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図11は、図10のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第4実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第3実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0034】
図10に示すように、本実施形態のリニアガイド装置は、案内レール1の4つの転動体軌道面10のうち下側の2つの転動体軌道面10に転動体案内溝7が形成されている。上側の2つの転動体軌道面10については、転動体案内溝7は形成されておらず、平坦面となっている。
このような構成により、第3実施形態と同様の作用・効果が奏されるが、特に、スライダ2に対して下向きの外部荷重が作用する場合には、外部荷重が下側の2つの転動体軌道面10に作用し、上側の2つの転動体軌道面10には外部荷重が作用しないので、上側の2つの転動体軌道面10には転動体案内溝7を形成する必要がない。その結果、生産コストを低減することができる。
【0035】
〔第5実施形態〕
図12は、本発明に係るリニアガイド装置の第5実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図13は、図12のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第5実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第1,3実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0036】
第5実施形態においては、案内レール1の転動体軌道面10とスライダ2の転動体軌道面11との全てに転動体案内溝7が形成されている。すなわち、合計8つの転動体案内溝7が形成されている。このような構成により、第1,3実施形態と同様の作用・効果が奏される。また、第1,3実施形態と同様に、図13の(a),(b)に示すような2つの研削部を有する砥石50を用いることにより、左側(又は右側)の袖部6の内側面に、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができるとともに、案内レール1の左側(又は右側)の側面1aに、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができる。
【0037】
〔第6実施形態〕
図14は、本発明に係るリニアガイド装置の第6実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図15は、図14のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第6実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第5実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0038】
図14に示すように、本実施形態のリニアガイド装置は、スライダ2の4つの転動体軌道面11のうち下側の2つの転動体軌道面11に転動体案内溝7が形成されている。上側の2つの転動体軌道面11については、転動体案内溝7は形成されておらず、平坦面となっている。また、案内レール1の4つの転動体軌道面10のうち下側の2つの転動体軌道面10に転動体案内溝7が形成されている。上側の2つの転動体軌道面10については、転動体案内溝7は形成されておらず、平坦面となっている。
【0039】
このような構成により、第5実施形態と同様の作用・効果が奏されるが、特に、スライダ2に対して下向きの外部荷重が作用する場合には、外部荷重が下側の4つの転動体軌道面10,10,11,11に作用し、上側の4つの転動体軌道面10,10,11,11には外部荷重は作用しない。よって、上側の4つの転動体軌道面10,10,11,11には転動体案内溝7を形成する必要がないので、生産コストを低減することができる。
【0040】
〔第7実施形態〕
図16は、本発明に係るリニアガイド装置の第7実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図17は、図16のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第7実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第1実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
案内レール1の左右両側面1a,1aには、軸方向に延びる凸部が、スライダ2に向かって突出するように形成されている。そして、それら凸部上には、軸方向に延びる上下2つの傾斜面が略ハ字状にそれぞれ形成されていて、合計4つの傾斜面はそれぞれ転動体軌道面10をなしている。
【0041】
また、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の内側面には、軸方向に延びる凹部がそれぞれ形成されている。そして、それら凹部内には、軸方向に延びる上下2つの傾斜面が略ハ字状にそれぞれ形成されていて、合計4つの傾斜面は、それぞれ案内レール1の転動体軌道面10,10,10,10に対向する転動体軌道面11,11,11,11をなしている。
【0042】
このような本実施形態のリニアガイド装置においては、スライダ2の転動体軌道面11,11,11,11に、円筒ころ3を保持して円筒ころ3の進行を案内する転動体案内溝7,7,7,7が軸方向に沿って形成されている。そして、これらの転動体案内溝7の断面形状(軸方向に直交する平面で切断した場合の断面形状)は、転動体案内溝7の溝底7aから開口部に向かって溝幅が徐々に大きくなる略台形状をなしている。
このような構成により、第1実施形態と同様の作用・効果が奏される。また、第1実施形態と同様に、図17に示すような2つの研削部を有する砥石50を用いることにより、スライダ本体2Aの左側(又は右側)の袖部6の内側面に、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができる。
【0043】
〔第8実施形態〕
図18は、本発明に係るリニアガイド装置の第8実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図19は、図18のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第8実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第7実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0044】
図18に示すように、本実施形態のリニアガイド装置は、スライダ2の4つの転動体軌道面11のうち上側の2つの転動体軌道面11に転動体案内溝7が形成されている。下側の2つの転動体軌道面11については、転動体案内溝7は形成されておらず、平坦面となっている。
このような構成により、第7実施形態と同様の作用・効果が奏されるが、特に、スライダ2に対して下向きの外部荷重が作用する場合には、外部荷重が上側の2つの転動体軌道面11に作用し、下側の2つの転動体軌道面11には外部荷重が作用しないので、下側の2つの転動体軌道面11には転動体案内溝7を形成する必要がない。その結果、生産コストを低減することができる。
【0045】
〔第9実施形態〕
図20は、本発明に係るリニアガイド装置の第9実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図21は、図20のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第9実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第7実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0046】
第7実施形態においては、4つの転動体案内溝7はスライダ2の転動体軌道面11に形成されていたが、第9実施形態においては、4つの転動体案内溝7が案内レール1の転動体軌道面10に形成されている。このような構成により、第7実施形態と同様の作用・効果が奏される。また、第7実施形態と同様に、図21に示すような2つの研削部を有する砥石50を用いることにより、案内レール1の左側(又は右側)の側面1aに、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができる。
【0047】
〔第10実施形態〕
図22は、本発明に係るリニアガイド装置の第10実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図23は、図22のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第10実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第9実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0048】
図22に示すように、本実施形態のリニアガイド装置は、案内レール1の4つの転動体軌道面10のうち上側の2つの転動体軌道面10に転動体案内溝7が形成されている。下側の2つの転動体軌道面10については、転動体案内溝7は形成されておらず、平坦面となっている。
このような構成により、第9実施形態と同様の作用・効果が奏されるが、特に、スライダ2に対して下向きの外部荷重が作用する場合には、外部荷重が上側の2つの転動体軌道面10に作用し、下側の2つの転動体軌道面10には外部荷重が作用しないので、下側の2つの転動体軌道面10には転動体案内溝7を形成する必要がない。その結果、生産コストを低減することができる。
【0049】
〔第11実施形態〕
図24は、本発明に係るリニアガイド装置の第11実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図25は、図24のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第11実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第7及び第9実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0050】
第11実施形態においては、案内レール1の転動体軌道面10とスライダ2の転動体軌道面11との全てに転動体案内溝7が形成されている。すなわち、合計8つの転動体案内溝7が形成されている。このような構成により、第7及び第9実施形態と同様の作用・効果が奏される。また、第7及び第9実施形態と同様に、図25の(a),(b)に示すような2つの研削部を有する砥石50を用いることにより、左側(又は右側)の袖部6の内側面に、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができるとともに、案内レール1の左側(又は右側)の側面1aに、上下2つの転動体案内溝7,7を同時に形成することができる。
【0051】
〔第12実施形態〕
図26は、本発明に係るリニアガイド装置の第12実施形態の構造を示す正面図(リニアガイド装置を軸方向から見た図)である。ただし、エンドキャップを省略して図示している。また、図27は、図26のリニアガイド装置の転動体案内溝の形成方法を説明する図である。なお、第12実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第11実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0052】
図26に示すように、本実施形態のリニアガイド装置は、スライダ2の4つの転動体軌道面11のうち上側の2つの転動体軌道面11に転動体案内溝7が形成されている。下側の2つの転動体軌道面11については、転動体案内溝7は形成されておらず、平坦面となっている。また、案内レール1の4つの転動体軌道面10のうち上側の2つの転動体軌道面10に転動体案内溝7が形成されている。下側の2つの転動体軌道面10については、転動体案内溝7は形成されておらず、平坦面となっている。
【0053】
このような構成により、第11実施形態と同様の作用・効果が奏されるが、特に、スライダ2に対して下向きの外部荷重が作用する場合には、外部荷重が上側の4つの転動体軌道面10,10,11,11に作用し、下側の4つの転動体軌道面10,10,11,11には外部荷重は作用しない。よって、下側の4つの転動体軌道面10,10,11,11には転動体案内溝7を形成する必要がないので、生産コストを低減することができる。
【0054】
なお、上記の各実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は各実施形態に限定されるものではない。例えば、軸方向に延びる断面形状略コ字状の案内レールの内側に、断面形状略角形のスライダが軸方向に移動可能に組み付けられているタイプのリニアガイド装置に対しても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 案内レール
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ
3 円筒ころ
3a 円筒面
3b 端面
3c 面取り部
7 転動体案内溝
7a 溝底
7b 傾斜側面
10 転動体軌道面
11 転動体軌道面
20 保持ピース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる転動体軌道面を有する案内レールと、前記案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体軌道面及び前記スライダの転動体軌道面の間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された転動体である複数のころと、を備え、
前記案内レールの転動体軌道面及び前記スライダの転動体軌道面のうち少なくとも一方には、前記ころを保持して前記ころの進行を案内する転動体案内溝が軸方向に沿って形成されており、軸方向に直交する平面で前記転動体案内溝を切断した場合の断面形状が、溝底から開口部に向かって溝幅が徐々に大きくなる略台形状をなしていることを特徴とするリニアガイド装置。
【請求項2】
前記ころは、円筒面と端面との境界部分に形成される角部が面取りされており、前記ころの円筒面が前記転動体案内溝の溝底に接し、前記ころの面取り部が前記転動体案内溝の傾斜側面に接していることを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−220014(P2012−220014A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90352(P2011−90352)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】