説明

リニアモータ

【課題】薄型化を図ることが可能なリニアモータを提供する。
【解決手段】このリニアモータ10は、互いに離間して配列されたコイル部4aおよび4bを有する固定部2と、コイル部4aおよびコイル部4bと対向する磁極面を有し、コイル部4aおよびコイル部4bの配列方向に沿ってコイル部4aおよびコイル部4b上を移動可能に設けられた磁石1と、磁石1の表面に配置された磁性流体5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータおよびリニアモータを備えた携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルからの電磁力により振動する可動部を備えた振動モータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、円板状のマグネットからなる可動子と、可動子を取り囲むように配置されたコイルとを備えた振動アクチュエータ(振動モータ)が開示されている。上記特許文献1に記載の振動アクチュエータでは、円板状の可動部を取り囲むように上下方向に厚みが大きいコイルが配置されているとともに、そのコイルからの電磁力により円板状の可動部を上下方向(可動部の厚み方向)に直線移動させるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−68688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された振動アクチュエータでは、上下方向に厚みが大きいコイルを用いて円板状の可動部が上下方向(可動部の厚み方向)に移動するように構成されているので、装置の薄型化を図ることが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、薄型化を図ることが可能なリニアモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面によるリニアモータは、互いに離間して配列された電流線を有する固定部と、電流線と対向する磁極面を有し、電流線の配列方向に沿って電流線上を移動可能に設けられた可動部と、可動部の表面の少なくとも一部に配置された磁性流体とを備える。なお、本発明における磁性流体とは、磁性材料と油などの溶媒とを混合させたものである。
【0008】
この発明の第2の局面による携帯機器は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリニアモータを備える。
【発明の効果】
【0009】
この発明の第1の局面によるリニアモータでは、上記の構成により、薄型化を図ることが可能である。また、可動部の固定部に対する摩擦を低減することができるとともに、可動部の移動時の音を低減することができる。
【0010】
この発明の第2の局面による携帯機器では、上記の構成により、薄型化を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるリニアモータを説明するための斜視図である。図2〜図4は、本発明の第1実施形態によるリニアモータを説明するための図である。
【0013】
本発明のリニアモータ10(リニア駆動型振動モータ)は、図1〜図3に示すように、可動部を構成する磁石1と、固定部2とを備えている。固定部2は、磁石1を内部に配置する枠部2aと、枠部2aの開口部分を塞ぐようにそれぞれ配置される第1基板2bおよび第2基板2cとを備えている。また、磁石1は、枠部2aの内部側において2つの板バネ部3により移動可能に支持されている。つまり、磁石1は、固定部2内の密閉された空間に2つの板バネ部3の付勢力により移動可能に保持されている。なお、磁石1は、本発明の「可動部」の一例である。
【0014】
磁石1は、フェライトやネオジウムなどの強磁性材料からなる磁石(永久磁石)で構成され、約10mmの直径と、約1.5mmの厚みとを有する円板形状に形成されている。2つの板バネ部3は、それぞれ、一方端部が枠部2aの内側面側の角部分に設けられた切込み部2dにより保持されている。また、各板バネ部3の他方端部側の部分により磁石1を挟むように構成されている。
【0015】
第1基板2bおよび第2基板2cには、それぞれ、扁平状に形成されるとともに、互いにY方向に離間して配列されたコイル部4aおよびコイル部4bからなる平面コイル4が設けられている。平面コイル4は、約0.2mmの厚みを有する。コイル部4aおよびコイル部4bは、それぞれ、平面的に見て、略矩形状の渦巻形状を有するとともに、コイル部4aおよびコイル部4bに電流が印加された際には互いに逆方向の磁界が発生するように構成されている。なお、Y方向は、本発明の「配列方向」の一例である。
【0016】
磁石1は、図4に示すように、永久磁石の厚み方向に着磁されており、上面1a側はN極に、下面1b側はS極に着磁されている。また、磁石1の上面1aおよび下面1bと平面コイル4とは互いに平行に対向するように配置されている。ここで、平行とは、互いに平行な状態だけでなく、磁石1が往復直線移動(振動)する際の妨げにならない程度に平行な状態からずれた状態を含んでいる。これにより、平面コイル4に電流が流れた際に、平面コイル4に発生する磁場と磁石1から発生する磁場とにより、引力または斥力が発生して、磁石1が第1基板2bおよび第2基板2cに対してY方向(図3参照)に往復直線移動(振動)する。
【0017】
磁石1が配置される枠部2aの内側面のX方向に沿った長さLは、約12mm程度の大きさを有する。したがって、直径約10mmの磁石1は、移動方向と直交する方向(X方向)において、枠部2aの内側面との間に、片側約1mmずつの隙間を有する。なお、平面コイル4は、本発明の「電流線」の一例である。
【0018】
磁石1には、磁石1と板バネ部3との間の側面を含む表面(上面1a、下面1bおよび側面1c)の全域を覆うように磁性流体5が配置されている。磁性流体5は、たとえば、ナノメートルオーダーの鉄などの強磁性材料と、油などの溶媒とを混合することにより形成されている。磁性流体5は、磁場の分布に応じて磁石1に配置されるものであり、磁石1の磁場が強い部分においてより多く保持される。つまり、磁性流体5は、磁石1の上面1aおよび下面1bの中央部分よりも、磁石1の角部1dに対応する位置(磁石1の磁場が強い部分)により多く保持されている。また、磁石1は、移動方向(Y方向)に延びる中心線C1(図3参照)に対して磁場が左右対称に発生するように構成されているとともに、磁性流体5は磁石1の磁場を反映して配置されることから、磁石1の移動方向(Y方向)の中心線C1に対して左右対称に配置される。同様に、磁性流体5は、磁石の移動方向(Y方向)とは垂直方向(Z方向)の中心線C2に対しても左右対称に配置される。
【0019】
以上により、第1実施形態では、横振動型(Y方向への振動)のリニアモータ10を構成することにより、縦振動型(Z方向への振動)のリニアモータに比べて、薄型化が図りやすい。
【0020】
本発明の第1実施形態に係るリニアモータによれば、以下の効果を得ることができる。
【0021】
(1)第1基板2bおよび第2基板2cに扁平状の平面コイル4を配置するとともに、平面コイル4と対向する磁極面を有し、平面コイル4上をコイル部4aおよびコイル部4bの配列方向に沿って直線移動するように振動する磁石1を設ける。これによって、上下方向に厚みが大きいコイルを用いて上下方向に磁石を直線移動させる場合に比べて、磁石1の上下方向(Z方向)への移動範囲(移動空間)を設ける必要がなくなり、Z方向の厚みを小さくすることができる。その結果、リニアモータ10の薄型化を図ることができる。
【0022】
(2)磁石1の表面を覆うように磁性流体5を配置することによって、磁性流体5の潤滑作用によって磁石1の固定部2に対する摩擦を低減することができる。また、磁性流体5は、磁石1を覆うように配置されていることから磁石1の緩衝部材として機能させることができる。これらにより、磁石1の移動時に発生する音を低減することができる。
【0023】
(3)磁性流体5を磁石1の表面(上面1a、下面1bおよび側面1c)の全域を覆うように配置することによって、磁性流体5による摩擦の低減効果および音の低減効果をより向上させることができる。
【0024】
(4)磁性流体5を磁石1の中心線C1およびC2に対して左右対称に配置することによって、磁石1と枠部2aとの間の隙間に配置される磁性流体5の量も左右均等にすることができる。したがって、枠部2aに対する左右の摩擦力が等しくなるので、リニアモータ10の動作を安定化させることができる。
【0025】
(5)平面コイル4に電流が印加された際に、コイル部4aとコイル部4bとでは互いに逆方向の磁界が形成されるように構成する。これによって、コイル部4aと磁石1との間、および、コイル部4bと磁石1との間に、容易に引力および斥力を加えることができる。
【0026】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態によるリニアモータを説明するための図である。この第2実施形態では、磁石1の表面を覆うように磁性流体5を配置した第1実施形態の構成において、配置する磁性流体5の量を調整する例について説明する。
【0027】
第2実施形態では、図5に示すように、第1実施形態に比べてより多量の磁性流体5を磁石1に配置することにより、磁石1の振動方向(図3のY方向)と直交する方向(図3のX方向)における断面(図3の100−100断面)において、枠部2aの内側面と、磁石1との隙間に磁性流体5が隙間なく充填されるように構成されている。これにより、固定部2の内部において、磁石1の移動方向側の内部空間と、磁石1の移動方向とは反対側の内部空間とが磁性流体5によって遮断されるとともに、各内部空間間の空気の移動が遮断される。また、第1基板2bと枠部2aとにより形成される角部分2e、および、第2基板2cと枠部2aとに形成される角部分2fは丸みを帯びている。
【0028】
なお、第2実施形態のその他の構成および動作は、第1実施形態と同様である。
【0029】
本発明の第2実施形態に係るリニアモータによれば、以下の効果を得ることができる。
【0030】
(6)固定部2の内部において、磁石1の移動方向側の領域と反対側の領域とが磁性流体5によって遮断される。これによって、各内部空間間の空気の移動が遮断されるので、磁石1の移動時に磁石1の移動方向側の内部空間の空気が圧縮される。その結果、圧縮された空気が空気ばねとして機能するので、その空気ばねを磁石1の振動にさらに加えることができる。
【0031】
(7)上記の構成において、空気ばねがある分、板バネ部3の厚みを小さくすることができる。したがって、板バネ部3の厚みが小さくなる分、磁石1の移動距離を大きくすることができる。
【0032】
(8)第1基板2bと枠部2aとにより形成される角部分2e、および、第2基板2cと枠部2aとに形成される角部分2fが丸みを帯びるように構成する。これによって、磁石1に配置された磁性流体5を上記の角部分2eおよび2fに密着させやすくすることができる。その結果、磁性流体5によって、磁石1の移動方向側の領域と、磁石1の移動方向とは反対側の領域との間の空気の移動を容易に遮断することができる。
【0033】
なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0034】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態によるリニアモータを説明するための断面図である。図7は、本発明の第3実施形態によるリニアモータに配置される磁石の磁束について説明するための図である。この第3実施形態では、磁石1の表面を覆うように磁性流体5を配置した第1実施形態の構成において、磁石1の角部1eが面取りされた例について説明する。
【0035】
第3実施形態では、図6に示すように、円板形状の磁石1は、全周に渡って角部1eが丸み(円弧形状)を帯びるように面取りされた形状を有する。具体的には、角部1eの円弧形状の部分は約0.2mm以上の長さを有する。
【0036】
なお、第3実施形態のその他の構成および動作は、第1実施形態と同様である。
【0037】
本発明の第3実施形態に係るリニアモータによれば、以下の効果を得ることができる。
【0038】
(9)磁石1の角部1eを丸みを帯びるように面取り形状に形成する。これによって、図7に示すように、磁石1から発生する磁束は磁石1の表面に対して直角方向に発生することから、磁石1の丸みを帯びた面取り形状の角部1eの部分からも磁束が発生する。したがって、磁石1の角部が直角である場合に比べてより多量の磁束が発生することになる。また、磁石1の角部が直角である場合に比べて発生する磁束の長さは短くなる。以上により、磁石1の角部1eの磁束密度は角部が直角である場合に比べてより増加するので、その分、磁石1の角部1eに対応する位置により多量の磁性流体5を配置することができる。その結果、磁性流体5による摩擦の低減効果および音の低減効果をより向上させることができる。
【0039】
なお、第3実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0040】
(第4実施形態)
図8および図9は、それぞれ、本発明の第4実施形態における第1〜第3実施形態によるリニアモータを用いた携帯機器の一例を説明するための図である。なお、図9は、図8のリニアモータを含む部分の一断面である。
【0041】
第4実施形態において、本発明の第1〜第3実施形態によるリニアモータ10は、図8および図9に示すように、携帯電話50などに用いることが可能である。携帯電話50は、リニアモータ10と、CPU20と、表示部30とを備えている。リニアモータ10は、携帯電話50の表示部30が配置された側とは反対側の面に配置されている。表示部30は、タッチパネル方式のパネルにより構成されているとともに、表示部30に表示されたボタン部30aを押圧することにより携帯電話50を操作するように構成されている。そして、リニアモータ10は、表示部30に表示されたボタン部30aが押圧されたことを検知した場合や、電話を着信した際にマナーモードに設定されている場合などに振動するようにCPU20に制御される。
【0042】
本発明の第4実施形態に係るリニアモータを備えた携帯機器(携帯電話)によれば、以下の効果を得ることができる。
【0043】
(10)薄型化が可能なリニアモータ10を備えることによって、携帯電話50の薄型化を図ることができる。
【0044】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
たとえば、第1〜第3実施形態では、ナノメートルオーダーの強磁性材料である鉄に油を混合した磁性流体5を用いる例を示したが、本発明ではこれに限らず、鉄以外の強磁性材料により磁性流体5を構成してもよい。
【0046】
また、第1〜第3実施形態では、弾性部材の一例として2つの板バネ部3により磁石1を移動可能に支持する例を示したが、本発明はこれに限らず、コイルバネまたはゴム部材などの板バネ以外の弾性部材を使用してもよい。また、3つ以上の板バネ部3により磁石1を支持してもよい。
【0047】
また、第1〜第3実施形態では、第1基板2bおよび第2基板2cの両方の基板に平面コイル4を配置する例を示したが、本発明はこれに限らず、平面コイル4は第1基板2bおよび第2基板2cの一方の基板のみに配置されていてもよい。
【0048】
また、第1〜第3実施形態では、第1基板2bおよび第2基板2cのそれぞれの一方の面に平面コイル4を配置する例を示したが、本発明はこれに限らず、各基板の両面に平面コイルを2層重ねた状態で形成してもよい。
【0049】
また、第1〜第3実施形態では、磁性流体5を磁石1の表面の全域を覆うように配置する例を示したが、本発明はこれに限らず、たとえば、磁石1の角部分など、磁石1の表面の少なくとも一部を覆うように配置されていてもよい。
【0050】
また、第3実施形態では、磁石1の角部1eを丸みを帯びた面取り形状に形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、磁石1の角部1eは丸みを帯びていない直線状のC面取り形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態によるリニアモータについて説明するための斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるリニアモータについて説明するための分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるリニアモータについて説明するための平面図である。
【図4】図3の100−100線に沿った断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるリニアモータについて説明するための断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態によるリニアモータについて説明するための断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるリニアモータに配置される磁石の磁束について説明するための図である。
【図8】本発明の第4実施形態において、第1〜第3実施形態によるリニアモータを備えた携帯電話について説明するための平面図である。
【図9】本発明の第4実施形態において、第1〜第3実施形態によるリニアモータを備えた携帯電話について説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 磁石(可動部)
1e 角部
2 固定部
4 平面コイル(電流線)
5 磁性流体
10 リニアモータ
50 携帯電話(携帯機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間して配列された電流線を有する固定部と、
前記電流線と対向する磁極面を有し、前記電流線の配列方向に沿って前記電流線上を移動可能に設けられた可動部と、
前記可動部の表面の少なくとも一部に配置された磁性流体とを備えた、リニアモータ。
【請求項2】
前記電流線は、一対の平面コイルを含み、
前記一対の平面コイルは電流が印加された際に、互いに逆方向の磁界を形成するように構成されている、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記固定部は、密閉された内部空間を有するとともに、前記可動部は、前記固定部の内部空間を移動するように構成されており、
前記磁性流体は、前記可動部の移動方向側の内部空間と前記可動部の移動方向とは反対方向側の内部空間との空気の移動を遮断するように設けられている、請求項1または2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
少なくとも前記可動部の移動方向に直交する方向に沿った断面における前記可動部の角部が面取りされている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記磁性流体は、前記可動部の表面の略全領域を覆うように配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のリニアモータを備えた、携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−22988(P2010−22988A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190373(P2008−190373)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】