説明

リフトチェーンのメンテナンス時期告知装置

【課題】 フォークリフト等の荷役車両に用いられるリフトチェーンのメンテナンス時期告知装置であって、リフトチェーンの伸び量を逐一測定する必要がなく、それでいてリフトチェーンが伸びてメンテナンスの時期に達した際には、これが容易に判る様にする。
【解決手段】 マスト2、キャリッジ3、リフトチェーン4、チェーン検出器5、告知器6とで構成し、とりわけ、リフトチェーン4が所定量だけ伸びた事を検出するチェーン検出器5と、チェーン検出器5からの信号に依りリフトチェーン4が伸びた事を告知する告知器6とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォークリフト等の荷役車両に用いられるリフトチェーンのメンテナンス時期告知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の荷役車両に於ては、フォーク等の作業具を備えたキャリッジを昇降させる為にリフトチェーンが用いられている。
而して、リフトチェーンは、荷役作業を繰り返して行うと、伸びて弛んでしまう。そこで、この伸びを調整したり、新規なものに交換したりして所謂メンテナンスをする必要が生じて来る。
【0003】
この為、従来にあっては、例えば特許文献1に示す如く、チェーンケージを用いてリフトチェーンの伸び量を測定すると共に、メンテナンスの時期を判定する様にしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3709031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この様なチェーンケージを用いる方法は、運転者の目視に依って測定及び判定を行うものであったので、そもそも運転者がこれを怠れば、メンテナンスの時期を全く知る事ができないと共に、測定及び判定そのものも正確ではなかった。
【0006】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、リフトチェーンの伸び量を逐一測定する必要がなく、それでいてリフトチェーンが伸びてメンテナンスの時期に達した際には、これが容易に判る様にしたリフトチェーンのメンテナンス時期告知装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のリフトチェーンのメンテナンス時期告知装置は、基本的には、マストと、マストに対して昇降可能なキャリッジと、マストとキャリッジとの間に設けられてキャリッジを昇降させる為のリフトチェーンと、固定側に設けられてリフトチェーンが所定量だけ伸びた事を検出するチェーン検出器と、チェーン検出器からの信号に依りリフトチェーンが伸びた事を告知する告知器と、から構成した事に特徴が存する。
【0008】
リフトチェーンは、荷役作業が繰り返されると、伸びて行く。リフトチェーンが所定量だけ伸びると、チェーン検出器に依りこの事が検出される。
チェーン検出器に依りリフトチェーンが所定量だけ伸びた事が検出されると、チェーン検出器からの信号に依り告知器が作動されてリフトチェーンが所定量だけ伸びた事が告知される。
この為、運転者は、リフトチェーンの伸び量を逐一測定する事なく、リフトチェーンの調整や交換等のメンテナンス時期である事が容易に精度良く知る事ができ、これに基づいてリフトチェーンのメンテナンスを行う事ができる。
【0009】
マストに対してキャリッジを昇降させるリフトシリンダと、リフトシリンダを油圧制御するリフト切換弁と、リフトシリンダの下降動作を阻止し得る電磁切換弁と、チェーン検出器からの信号に依りリフトチェーンの所定量の伸びを検出した時にはリフトシリンダのそれ以上の下降動作を阻止すべく電磁切換弁を電気制御する制御器とを備えているのが好ましい。この様にすれば、リフトチェーンが所定量だけ伸びた際には、リフトシリンダに依るキャリッジのそれ以上の下降が阻止されるので、キャリッジに設けられたローラがマストから下方へ飛び出る惧れがなくなる。その結果、これらローラやマストの損傷を防止できて安全性を向上する事ができる。
【0010】
チェーン検出器は、キャリッジとリフトチェーンとの間に設けられたチェーンアンカの位置を検出する近接スイッチにしてあるのが好ましい。この様にすれば、チェーンアンカの位置を検出する事に依りリフトチェーンの伸びを容易に検出する事ができる。
【0011】
本発明のリフトチェーンのメンテナンス時期告知装置は、具体的には、固定マストと、固定マストに対して昇降可能な可動マストと、可動マストに対して昇降可能なキャリッジと、固定マストに対して可動マストを昇降させるリフトシリンダと、固定マストとキャリッジとの間に設けられてキャリッジを昇降させるリフトチェーンと、リフトシリンダを油圧制御するリフト切換弁と、リフトシリンダの下降動作を阻止し得る電磁切換弁と、リフトチェーンとキャリッジとの間に設けられたチェーンアンカと、固定マストに設けられてチェーンアンカの位置を検出してリフトチェーンが所定量だけ伸びた事を検出するチェーン検出器と、チェーン検出器からの信号に依りリフトチェーンが所定量だけ伸びた事を告知する告知器と、チェーン検出器からの信号に依りリフトチェーンが所定量だけ伸びた時にはリフトシリンダのそれ以上の下降動作を阻止すべく電磁切換弁を電気制御する制御器と、から構成されている。この様にすれば、固定マストと可動マストとを備えた所謂二段マストのフォークリフトに容易に適用する事ができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) マスト、キャリッジ、リフトチェーン、チェーン検出器、告知器とで構成し、とりわけリフトチェーンが所定量だけ伸びた事を検出するチェーン検出器と、チェーン検出器からの信号に依りチェーンが伸びた事を告知する告知器とを設けたので、リフトチェーンの伸び量を逐一測定する必要がなく、それでいてリフトチェーンが伸びてメンテナンスの時期に達した際には、これが容易に知る事ができる。
(2) マストに対してキャリッジを昇降させるリフトシリンダと、リフトシリンダを油圧制御するリフト切換弁と、リフトシリンダの下降動作を阻止し得る電磁切換弁と、チェーン検出器からの信号に依りリフトチェーンの所定量の伸びを検出した時にはリフトシリンダのそれ以上の下降動作を阻止すべく電磁切換弁を電気制御する制御器とを備えている場合は、リフトチェーンが所定量だけ伸びた際には、リフトシリンダに依るキャリッジのそれ以上の下降が阻止されるので、キャリッジに設けられたローラがマストから飛び出る惧れがなくなり、これらローラやマストの損傷を防止でき、安全性を向上する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のリフトチェーンのメンテナンス時期告知装置に係り、リフトチェーンが初期の状態を示す略式側面図。
【図2】リフトチェーンが所定量だけ伸びた状態を示す図1と同様図。
【図3】油圧回路図。
【図4】電気回路図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜4に於て、メンテナンス時期告知装置1は、マスト2、キャリッジ3、リフトチェーン4、チェーン検出器5、告知器6、リフトシリンダ7、リフト切換弁8、電磁切換弁9、制御器10とからその主要部が構成されて居り、フォークリフト等の荷役車両に適用される。
【0015】
マスト2は、メンテナンス告知装置1の基本部分を為すもので、この例では、荷役車両の車体(図示せず)の前側に設けられて居り、車体に対して前後傾動可能に設けられた固定マスト11と、これに対して昇降可能な可動マスト12とを備えた所謂二段マストにしてある。
マスト2は、車体と固定マスト11との間に設けられたティルトシリンダ(図示せず)に依り前後傾動される。
固定マスト11と可動マスト12との間には、固定マスト11に対して可動マスト12を円滑に昇降させる為のエンドローラやサイドローラ等のローラ(図示せず)が設けられている。
【0016】
キャリッジ3は、マスト2に対して昇降可能なもので、この例では、可動マスト12に対して昇降可能な左右のリフトブラケット13と、これの前側に付設されたフィンガーバー14と、これに懸架された左右のフォーク15とを備えている。
リフトブラケット13には、可動マスト12に対して昇降を円滑にする為のエンドローラやサイドローラ等の上下のローラ16が設けられている。図1及び図2では、エンドローラだけを表描している。
【0017】
リフトチェーン4は、マスト2とキャリッジ3との間に設けられてキャリッジ3を昇降させる為のもので、この例では、左右に一対あって、可動マスト12の上部に設けられたチェーンホイール(シーブ)17に掛渡されて固定マスト11とキャリッジ3との間に介設されている。
リフトチェーン4と固定マスト11との間及びリフトチェーン4とキャリッジ3との間には、チェーンアンカ18が設けられている。固定マスト側のチェーンアンカ18と固定マスト11との間には、図略しているが、長さを調節する為の調節機構が設けられている。
【0018】
チェーン検出器5は、固定側に設けられてリフトチェーン4が所定量だけ伸びた事を検出するもので、この例では、固定マスト11にブラケットを介して設けられていると共に、リフトチェーン4とキャリッジ3との間に設けられたチェーンアンカ18の位置を検出する近接スイッチ(近接センサ)にしてある。
チェーン検出器5は、例えばキャリッジ3を最下降位置にした時のチェーンアンカ18の高さ位置を初期位置としてこれから所定距離A(例えば50mm)だけ下方へ離間した位置に設置してある。つまり、リフトチェーン4が伸びてチェーンアンカ18が初期位置から所定距離Aだけ下方へ移動すると、チェーン検出器5が作動(オン)する様に設定されている。
【0019】
告知器6は、チェーン検出器5からの信号に依りリフトチェーン4が伸びた事を告知するもので、この例では、荷役車両の運転室(図示せず)に設けられて運転者が目視し得る表示灯(インジケータランプ)にしてある。
告知器6は、チェーン検出器5が作動(オン)すると、第一リレー19を介して作動(点灯)する様にしてある。
【0020】
リフトシリンダ7は、マスト2に対してキャリッジ3を昇降させるもので、この例では、左右に一対あって、ポンプ(メインポンプとサブポンプ)20とタンク21とフィルタ22とリリーフ弁23等から成る所謂パワーユニットからの圧油に依り伸縮作動される。
【0021】
リフト切換弁8は、リフトシリンダ7を油圧制御するもので、この例では、ポンプ20からの圧油をリフトシリンダ7に給排するメインバルブ24と、リフトレバー25の手動操作に依りポンプ20からの圧油をメインバルブ24のパイロット部26に給排するパイロットバルブ27とを備えている。
【0022】
電磁切換弁9は、リフトシリンダ7の下降動作を阻止し得るもので、この例では、リフト切換弁8のメインバルブ24の下降用パイロット部26とパイロットバルブ27の下降用バルブとの間を連通するパイロット路28の途中に設けられている。
電磁切換弁9は、三ポート二位置切換弁にしてあり、ソレノイド(SOL)の励磁時には、パイロットバルブ27の下降用バルブからの圧油をメインバルブ24の下降用パイロット部26に供給する供給ポジションになると共に、ソレノイド(SOL)の消磁時には、メインバルブ24の下降用パイロット部26の圧油をタンク21に戻す排出ポジション(図3に於て上側)になる様にしてある。
【0023】
制御器10は、チェーン検出器5からの信号に依りリフトチェーン4の所定量の伸びを検出した時にはリフトシリンダ7のそれ以上の下降動作を阻止すべく電磁切換弁9を電気制御するもので、この例では、前述した第一リレー19と、第一リレー19に依り作動されて電磁切換弁9のソレノイド(SOL)を消磁し得る第二リレー29とを備えている。
【0024】
尚、図4に於て、30はヒューズ、31はダイオードを夫々示している。
【0025】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
図3に於て、リフトレバー25が上昇側(左側)に傾倒されると、パイロットバルブ27の上昇用バルブ(右側)が作動され、ポンプ20からの圧油がパイロットバルブ27を介してメインバルブ24の上昇用パイロット部26(右側)に供給され、メインバルブ24が上昇ポジション(右側)に切換えられる。この為、ポンプ20からの圧油がメインバルブ24を介してリフトシリンダ7のテール側に供給され、リフトシリンダ7が伸張される。
【0026】
逆に、リフトレバー25が下降側(右側)に傾倒されると、パイロットバルブ27の下降用バルブ(左側)が作動され、ポンプ20からの圧油がパイロットバルブ27を介してメインバルブ24の下降用パイロット部26(左側)に供給される。この時、電磁切換弁9は、図4に示す如く、第一リレー19と第二リレー29に依りソレノイド(SOL)が励磁されて居り、供給ポジション(下側)に切換えられている。この為、メインバルブ24が下降ポジション(左側)に切換えられ、リフトシリンダ7のテール側の圧油がメインバルブ24を介してタンク21に戻され、リフトシリンダ7が短縮される。
【0027】
リフトレバー25が中立位置(図3に於て実線で示す直立位置)にされると、パイロットバルブ27の左右のバルブが中立に戻され、メインバルブ24の左右のパイロット部26の圧油がパイロットバルブ27を介してタンク21に戻される。この為、メインバルブ24が中央の中立ポジションに戻されてリフトシリンダ7の伸縮が停止され、その状態に保たれる。
【0028】
図1は、キャリッジ3が最下降位置にあって、リフトチェーン4が伸びていない初期の状態を示している。
この様な状態から、荷役作業が繰り返されてリフトチェーン4が所定量だけ伸びると、図2に示す如く、チェーンアンカ17が初期位置から所定距離Aだけ下方へ移動されるので、チェーン検出器5に依りこの事が検出される。
チェーン検出器5に依りリフトチェーン4が所定量だけ伸びた事が検出されると、図4に示す如く、チェーン検出器5からの信号に依り第一リレー19を介して告知器6が作動されて運転室の運転者にリフトチェーン4が所定量だけ伸びた事が告知される。
【0029】
この為、運転者は、リフトチェーン4の伸び量を逐一測定する事なく、運転室に居ながら、リフトチェーン4の調整や交換等のメンテナンス時期である事が容易に判り、リフトチェーン4のメンテナンスを行う事ができる。
【0030】
告知器6に依る運転者への告知と同時に、制御器10の第二リレー29が第一リレー19に依り作動されて電磁切換弁9のソレノイド(SOL)が消磁される。
そうすると、電磁切換弁9が排出ポジション(上側)になり、メインバルブ24の下降用パイロット部26(左側)の圧油が電磁切換弁9を介してタンク21に戻され、メインバルブ24が中立ポジションに戻される。そうすると、リフトシリンダ7の下降が停止され、キャリッジ3のそれ以上の下降が阻止される。
その結果、キャリッジ3のローラ15が可動マスト11から下方へ飛び出る事がなくなり、ローラ15やマスト2の損傷等を防止する事ができる。従って、安全性を大幅に向上する事ができる。
【0031】
尚、マスト2は、先の例では、二段マストであったが、これに限らず、例えば一段マストや三段マスト等でも良い。
チェーン検出器5は、先の例では、固定側に高さ調整不能に設けられていたが、これに限らず、例えば高さ調整可能に設けられていても良い。この様にすれば、所定距離Aを容易に調整する事ができる。
チェーン検出器5は、先の例では、近接スイッチであったが、これに限らず、例えばリミットスイッチ等でも良い。
チェーン検出器5は、先の例では、固定マスト10に設けたが、これに限らず、例えばリフトシリンダ7等の他の固定側に設けても良い。
告知器6は、先の例では、表示灯であったが、これに限らず、例えばブザー等でも良い。
リフト切換弁8は、先の例では、メインバルブ24とパイロットバルブ27とを用いたパイロット式のものであったが、これに限らず、例えばこれ以外のものでも良い。
【符号の説明】
【0032】
1…メンテナンス時期告知装置、2…マスト、3…キャリッジ、4…リフトチェーン、5…チェーン検出器、6…告知器、7…リフトシリンダ、8…リフト切換弁、9…電磁切換弁、10…制御器、11…固定マスト、12…可動マスト、13…リフトブラケット、14…フィンガーバー、15…フォーク、16…ローラ、17…チェーンホイール、18…チェーンアンカ、19…第一リレー、20…ポンプ、21…タンク、22…フィルタ、23…リリーフ弁、24…メインバルブ、25…リフトレバー、26…パイロット部、27…パイロットバルブ、28…パイロット路、29…第二リレー、30…ヒューズ、31…ダイオード、A…所定距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マストと、マストに対して昇降可能なキャリッジと、マストとキャリッジとの間に設けられてキャリッジを昇降させる為のリフトチェーンと、固定側に設けられてリフトチェーンが所定量だけ伸びた事を検出するチェーン検出器と、チェーン検出器からの信号に依りリフトチェーンが伸びた事を告知する告知器と、から構成した事を特徴とするリフトチェーンのメンテナンス時期告知装置。
【請求項2】
マストに対してキャリッジを昇降させるリフトシリンダと、リフトシリンダを油圧制御するリフト切換弁と、リフトシリンダの下降動作を阻止し得る電磁切換弁と、チェーン検出器からの信号に依りリフトチェーンの所定量の伸びを検出した時にはリフトシリンダのそれ以上の下降動作を阻止すべく電磁切換弁を電気制御する制御器とを備えている請求項1に記載のリフトチェーンのメンテナンス時期告知装置。
【請求項3】
チェーン検出器は、キャリッジとリフトチェーンとの間に設けられたチェーンアンカの位置を検出する近接スイッチにしてある請求項1に記載のリフトチェーンのメンテナンス時期告知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−166903(P2012−166903A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29389(P2011−29389)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】