説明

リフロー半田付け方法

【課題】炉内を循環する雰囲気気体の風速の低下等による半田付け不良等の不具合を防止できるようにしたリフロー半田付け方法を提供する。
【解決手段】所定の温度に制御された雰囲気気体を送風機8によって炉1内を循環させ、炉1内を所定の速度に制御されたコンベヤ6で電子部品が搭載された基板7を搬送することにより半田付けを行なうリフロー半田付け方法において、雰囲気気体の風速を管理するために送風機8の駆動モータ9の回転数を検出し、この検出信号に基づいて風速の異常を判定する。風速の異常が判定された場合にそれを表示することが好ましい。上記に代えて、送風機8の駆動モータ9の回転数を検出し、この検出信号に応じてモータ回転数を所定の回転数に維持して雰囲気気体の風速を制御するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー半田付け方法に関し、特に炉内を循環する雰囲気気体の風速を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リフロー半田付け装置は、一般に、搬送ラインに沿った各ゾーンに設けられている送風機によって雰囲気気体が各ゾーン内を循環しており、電子部品が搭載された基板をコンベヤで搬送しながら、ヒータで加熱された雰囲気気体(以下、熱風ともいう。)により電子部品を基板に半田付けする(例えば特許文献1参照)。炉内の各ゾーンを搬送される基板の温度プロファイルの一例を図5に示す。この温度プロファイルを実現するために、各ゾーンの雰囲気気体の温度、基板の搬送速度が所定の値に設定されているとともに、更に送風機の駆動モータの回転数が所定の値に設定される。モータの回転数は、通常、モータに入力されるインバータ出力の周波数によって設定され、それにより送風機の回転数が決定し、送風機から吹き出される雰囲気気体の風速が決定する。すなわち、循環する雰囲気気体の風速すなわち基板に吹き付けられる熱風の風速が決定される。
【0003】
上記図5に示す温度プロファイルを実現するために、各ゾーンの雰囲気気体の温度、基板の搬送速度、インバータ出力周波数は例えば次のように設定される。
(各ゾーンの雰囲気気体温度):
ゾーン1 ゾーン2 ゾーン3 ゾーン4 ゾーン5 ゾーン6 ゾーン7 ゾーン8
195℃ 185℃ 180℃ 175℃ 170℃ 230℃ 250℃ 260℃
(基板の搬送速度):
0.8m/min
(インバータ出力周波数):
35Hz
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−83395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のリフロー半田付け装置において、従来は、各ゾーンの雰囲気気体の温度と、基板の搬送速度については、それぞれ所定の温度、搬送速度になるように制御されている。しかしながら、モータの回転数については制御されていない。したがって、モータベアリングの劣化などによってモータ回転数が変動した場合、変動したモータ回転数でリフロー半田付け装置は運転される。例えば、モータ回転数が所定値まで低下した状態でリフロー半田付け装置が運転されると、送風機の回転数が低下して熱風の風速が低下し、基板に吹き付けられる熱風が少なくなって半田付け不良等の不具合が発生する。
【0006】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、炉内を循環する雰囲気気体の風速の低下等による半田付け不良等の不具合を防止できるようにしたリフロー半田付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は次の解決手段を採る。すなわち、
本発明は、所定の温度に制御された雰囲気気体を送風機によって炉内を循環させ、前記炉内を所定の速度に制御されたコンベヤで電子部品が搭載された基板を搬送することにより半田付けを行なうリフロー半田付け方法において、雰囲気気体の風速を管理するために前記送風機の駆動モータの回転数を検出し、この検出信号に基づいて風速の異常を判定することを特徴とする。
【0008】
上記において、風速の異常が判定された場合にそれを表示することが好ましい。
【0009】
また、本発明は次のように構成してもよい。所定の温度に制御された雰囲気気体を送風機によって炉内を循環させ、前記炉内を所定の速度に制御されたコンベヤで電子部品が搭載された基板を搬送することにより半田付けを行なうリフロー半田付け方法において、雰囲気気体の風速を管理するために前記送風機の駆動モータの回転数を検出し、この検出信号に応じてモータ回転数を所定の回転数に維持して雰囲気気体の風速を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炉内を循環する雰囲気気体の風速の低下などによる半田付け不良等の不具合を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態であるリフロー半田付け装置を示す正面図である。
【図2】モータ回転数の制御ブロック図である。
【図3】(a)はモータ回転数の検出部分を示す正面図、(b)は回転板の平面図である。
【図4】モータ回転数の制御ブロック図である。
【図5】炉内の各ゾーンを搬送される基板の温度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
リフロー半田付け装置は、図1に示されているように、炉1内に、1個のバッファ室2と、5個の予熱室3と、3個のリフロー室4と、1個の冷却室5とをコンベヤ6の搬送ラインに沿って順に有している。炉1内には、半田の酸化を防止するために不活性気体、本実施形態では窒素ガスが供給されており、電子部品を搭載したプリント基板7がコンベヤ6によって炉1内を搬送される。電子部品を搭載したプリント基板7は、半田付け箇所にペースト状のクリーム半田が塗られている。
【0014】
8は送風機、9は送風機8を駆動するモータ、10はヒータ、11は導風装置である。これらで熱風循環装置12が構成され、予熱室3とリフロー室4には熱風循環装置12がコンベヤ6を挟んで上下に設けられている。冷却室5には、コンベヤ6を挟んで上下に冷却風循環装置13が設けられている。冷却風循環装置13は、上記熱風循環装置12とはヒータを備えていない点でのみ相違し、他の構成は同じである。
【0015】
したがって、電子部品を搭載したプリント基板7は、炉1の入口側でコンベヤ6に載せられ、コンベヤ6によって炉1内を搬送される。予熱室3とリフロー室4と冷却室5では、各室3,4,5内の送風機8がモータ9によって回転駆動される。
【0016】
予熱室3とリフロー室4では、ヒータ10によって加熱された炉1内の雰囲気気体は、送風機8の回転軸方向に臨む吸入口から送風機8内に吸入され、送風機8の半径方向に設けられている吐出口から導風装置11に吐出され、導風装置11に案内されて複数の吹き出し口からコンベヤ6上のプリント基板7に吹き付けられる。その後、上記のように、雰囲気気体は送風機8の吸入口から吸入されて、吐出口から吐出される。このようにして、所定の温度に加熱された雰囲気気体が熱風循環装置12によって各室3,4内を循環し、プリント基板7が加熱される。また、冷却室5では、冷却風としての雰囲気気体が冷却室5内を循環し、コンベヤ6上のプリント基板7を冷却する。
【0017】
したがって、電子部品を搭載したプリント基板7はコンベヤ6で搬送されながら、例えば図5の温度プロファイルに示されているように、予熱室3で所定の高温度に加熱された後、リフロー室4で高温の半田付け温度まで加熱されてクリーム半田が加熱溶融され、冷却室5で溶融半田が冷却固化されて、電子部品が基板上に半田付けされる。
【0018】
図5に示されるような温度プロファイルを実現するために、各予熱室3及びリフロー室4内の雰囲気気体の温度、電子部品を搭載したプリント基板7の搬送速度すなわちコンベヤ6の搬送速度、及び送風機8の駆動モータ9の回転数が管理される。
【0019】
上記において、各予熱室3及びリフロー室4内の雰囲気気体の温度と、コンベヤ6の搬送速度は、それぞれ図示外の制御手段によって制御されており、常に所定の値に維持されるように構成されている。例えば、雰囲気気体の温度については、各予熱室3及びリフロー室4内に設けられた温度センサによって雰囲気気体の温度が検出され、この検出温度に基づいて室内の雰囲気気体の温度が所定の温度になるように温調器によってヒータ10へ供給される電力が制御される。コンベヤ6の搬送速度については、コンベヤチェーン等が巻回されているギヤの回転軸に接続されたロータリエンコーダによって回転数パルスが検出され、その回転数パルスがインバータに取り込まれ、この検出された回転数パルスに基づいてコンベヤの回転軸の回転数が所定の回転数になるようにインバータによって駆動モータへ出力するインバータ出力の周波数が制御される。
【0020】
一方、送風機8の駆動モータ9の回転数については、送風機8の駆動モータ9に入力されるインバータ出力の周波数は設定周波数がそのまま維持される。そのため、本実施形態では、モータ9のベアリングの劣化などによってモータ9の回転数が変動し、モータ9の回転数が所定値まで低下した場合などに異常を知らせるように構成されている。
【0021】
以下、図2により説明すると、14は交流電源、15はインバータ、16はモータ9の回転数を検出する手段である。17はコントローラで、モータ9の回転数が異常か否かを判定する判定手段18と、モータ9の回転数が異常であると判定手段18が判定した場合にそれを表示手段19に出力する出力手段20とを有している。
【0022】
インバータ15は交流電源14とモータ9との間に接続されており、交流電源14の周波数を変換して、モータ9に所定の周波数の交流電力を出力する。モータ9の回転数(rpm)は「インバータ15の出力周波数×60」で算出することができる。例えば、インバータ15の出力周波数が35Hzの場合、モータ9の回転数は35Hz×60=2100rpmとなる。
【0023】
モータ9の回転数検出手段16は、図3にその一例が示されているように、半径方向のスリットを複数有する回転板21がモータ9の回転軸9aに取り付けられており、センサ22がスリットを検出するように構成されている。センサ22は光線が回転板21のスリットを通過することでオンになる光センサで構成されている。なお、モータ9の回転数検出手段16は上記構成に限らない。
【0024】
判定手段18はモータ9の回転数検出手段16から出力された検出信号に基づいてモータ回転数を算出し、そのモータ回転数が所定の範囲内(例えば、±10%以下の誤差を有する範囲内)にあるか否かを判定する。モータ9の回転数が異常であると判定手段18が判定した場合は、それを出力手段20が表示手段19に出力し、表示手段19がそれを表示する。コントローラ17はコンピュータやPLCなどで構成されるが、これらに限らない。表示手段19は異常警告ランプ等の視覚手段や音声等の聴覚手段で異常を表示する。
【0025】
モータ9の回転数と、送風機8から吹き出される雰囲気気体の風速とは相関関係(例えば比例関係)がある。したがって、上記構成によれば、送風機8駆動用のモータ9が正常に回転しているかを判定することによって、雰囲気気体の風速の異常を判定できる。その結果、モータ9の回転数の低下(送風機8の回転数の低下)すなわち雰囲気気体の風速の低下などによる半田付け不良等の不具合を未然に防止できる。
【0026】
なお、上記では、判定手段18は回転数検出手段16が検出した検出信号に基づいてモータ回転数を算出し、そのモータ回転数が所定の範囲内にあるか否かを判定したが、回転数検出手段16が検出した検出信号に基づいてインバータの出力周波数を算出し、その周波数が所定の範囲内にあるか否かを判定するように構成することもできる。
【0027】
本発明は、上記では、雰囲気気体の風速を管理するために、モータ9の回転数が異常か否かを判定して雰囲気気体の風速の異常を判定するようにしたが、雰囲気気体の風速の管理は上記に限らない。モータ9の回転数を所定の回転数に維持するようにインバータ15の出力周波数を制御することによって、雰囲気気体の風速を制御するように構成してもよい。
【0028】
以下、図4により説明すると、14は交流電源、15はインバータ、16はモータ9の回転数を検出する手段、23は制御手段である。
【0029】
交流電源14、インバータ15、モータ9の回転数検出手段16は上記実施形態で説明したものと同じである。
【0030】
制御手段23はモータ9の回転数検出手段16から出力された検出信号に応じて、モータ9の回転数を所定の回転数に維持するようにインバータ15の出力周波数を制御する。すなわち、制御手段23は回転数検出手段16が検出した検出信号に基づいてモータ回転数を算出し、そのモータ回転数と設定されたモータ回転数とを比較して、差があればモータ9の回転数が所定の回転数になるようにインバータ15の出力周波数を補正する。制御手段23はコンピュータやPLCなどで構成されるが、これらに限らない。
【0031】
モータ9の回転数と、送風機8から吹き出される雰囲気気体の風速とは相関関係(例えば比例関係)がある。したがって、上記構成によれば、送風機8駆動用のモータ9が常に所定の回転数に維持されるため、送風機8から吹き出される雰囲気気体の風速は所定の値に維持される。その結果、モータ9の回転数の低下(送風機8の回転数の低下)すなわち雰囲気気体の風速の低下などによる半田付け不良等の不具合を防止できる。
【0032】
なお、本発明は、以上の実施形態においては、送風機8を駆動するモータ9の回転数として、モータ回転軸9aの回転数を検出したが、これに限ることはない。例えば、送風機8の回転数を検出してモータの回転数とすることもできる。
【0033】
また、上記実施形態では、送風機の駆動用のモータとして交流モータを使用したが、直流モータを使用することもできる。直流モータの回転数の変更方法としては、電源電圧を変動、電源の電流値を変動、モータの負荷を変動、あるいは電源を変動パルスで出力するなどの方法が挙げられる。
【0034】
また、本実施形態では炉1内の雰囲気気体として窒素ガスを使用したものを示したが、雰囲気気体は窒素ガスに限らない。例えば、空気を使用する場合もある。
【符号の説明】
【0035】
1・・炉、2・・バッファ室、3・・予熱室、4・・リフロー室、5・・冷却室、6・・コンベヤ、7・・電子部品を搭載したプリント基板、8・・送風機、9・・モータ、9a・・モータ回転軸、10・・ヒータ、11・・導風装置、12・・熱風循環装置、13・・冷却風循環装置、14・・交流電源、15・・インバータ、16・・モータ回転数検出手段、17・・コントローラ、18・・判定手段、19・・表示手段、20・・出力手段、21・・回転板、22・・センサ、23・・制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度に制御された雰囲気気体を送風機によって炉内を循環させ、前記炉内を所定の速度に制御されたコンベヤで電子部品が搭載された基板を搬送することにより半田付けを行なうリフロー半田付け方法において、雰囲気気体の風速を管理するために前記送風機の駆動モータの回転数を検出し、この検出信号に基づいて風速の異常を判定することを特徴とするリフロー半田付け方法。
【請求項2】
風速の異常が判定された場合にそれを表示することを特徴とする請求項1記載のリフロー半田付け方法。
【請求項3】
所定の温度に制御された雰囲気気体を送風機によって炉内を循環させ、前記炉内を所定の速度に制御されたコンベヤで電子部品が搭載された基板を搬送することにより半田付けを行なうリフロー半田付け方法において、雰囲気気体の風速を管理するために前記送風機の駆動モータの回転数を検出し、この検出信号に応じてモータ回転数を所定の回転数に維持して雰囲気気体の風速を制御することを特徴とするリフロー半田付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−20168(P2011−20168A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169744(P2009−169744)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(500379509)有限会社ヨコタテクニカ (31)
【Fターム(参考)】