リボンビーム用質量分析マグネット
第1及び第2のソレノイドコイルとスチールヨークの配置を有するリボンビーム分析器である。第1及び第2のソレノイドコイルの各々は、イオンリボンビームが走行する空間を画定するほぼ「レーストラック」構造を有する。第1及び第2のソレノイドコイルはリボンビームの走行方向に沿って離して置かれる。第1及び第2のソレノイドコイルの各々は、広いリボンビームの質量分解能を付与するために均一の磁場を生成し、イオン源から生成されるイオンの所望の像を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイス製造の分野に関する。より詳しくは、本発明は半導体及び他のデバイスの製造に用いられるイオン注入器で使用されるイオンリボンビーム用の質量分析マグネットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビームラインイオン注入器は所望のデバイス特性を得るために加工片を処理するイオンビームを供給するものである。一つの用途では、加工片は半導体ウェハであり、この場合にはイオンビームは半導体ウェハに特定の所望の不純物をドープする。他の用途では、イオンビームは加工片に精密な材料変形を与えることができる。半導体ウェハに加えて、加工片は、限定はされないが、フラットパネル、ソーラーパネル及びポリマー基板を含むこともできる。
【0003】
イオン注入器は、一般に、プラズマを生成し、そのプラズマからイオンビームを引出し電極アセンブリによって引き出すイオン源チャンバを含む。イオンビームは次に、所望の電荷対質量比を有するイオンのみが質量分析器を通過するように特定の磁場を生成するよう構成された質量分析マグネットに供給することができる。質量分析されたイオンビームは次に、コレクタマグネット及び加減速レンズなどの当業者に周知の他のイオンビームライン素子で処理して加工片の表面に供給することができる。イオンビームは、イオンビームの移動、加工片の移動又は両者の組み合わせによって加工片の表面全域に分配することができる。イオンは加工片内の電子及び原子核と衝突するとエネルギーを失い、加速エネルギーに基づいて加工片内の所望の深さで静止する。
【0004】
図12は、イオンビーム4が通過するギャップ3を規定する1対の磁極片2を有する従来の質量分析マグネット1を示す。2つの磁極片2はギャップ3を走行するイオンビーム4に曲げ力を与える双極子磁場を生成する。曲げの量はビームの異なるイオン種ごとに僅かに変化し、イオンの荷電状態、エネルギー及び質量に依存する。従来のマグネットの磁極片2の間に生成される磁場はマグネットにより形成される像/焦点の方向に平行である。イオンの電荷に対する質量比が2つの磁極片の間に形成される磁場によりイオンが横方向に加速される程度に影響を与える。従って、イオン源からのイオンビームが従来の質量分析マグネット中を走行するとき、異なるイオン種は異なる軌道を走行し、質量分析マグネットは所望の質量対電荷比と関連する軌道を有するイオンを選択することができる。質量分析マグネットの下流に置かれた質量分解スリットは所望のイオン種(例えばB+)を選択し、望ましくないイオン種は質量分解スリットを取り囲む導電版により収集される。僅かに低いイオン質量を有するイオン(大きな角度で偏向される)又は僅かに高い質量を有するイオン(小さい角度で偏向される)は通過されない。これらの磁気分析器の大部分はリボンビームの長さ方向を双極子磁場に平行に向ける。しかし、これらの質量分析マグネットにより収容されるイオンビームのサイズは磁極片ギャップのサイズにより限定される。
【0005】
加工片のサイズの継続的な増大につれて(例えば、半導体ウェハディスクサイズは直径が300ミリメートル(mm)から450mmに増大し、さらにそれより大きくなり得る)、異なるサイズの加工片を処理する柔軟性を可能にするために、イオンビームの幅をリボンビームに増大するのが有利である。リボンビームは、リボン状又はビームの一方向の第1の寸法が第1の方向に直角の第2の方向の第2の寸法より大きい形状を有するイオンビームである。リボンビームは幅が高さの3倍以上であるおおむね矩形の断面形状を有することができる。
【0006】
異なるイオンを異なる軌道に曲げる従来の質量分析マグネットは、磁極片ギャップが増大するにつれて減少する限定された磁場強度を有する。換言すれば、磁場はビームの幅に反比例する。ビームの幅方向の磁場の均一性も磁極片ギャップの増大により悪化する。曲げの量は異なるイオン種に対して僅かに変化するため、不均一磁場は異なるイオン種が磁場中を走行するときイオン軌道の質量分析に影響を与えるので、不所望な質量分析結果をもたらす。同じ質量及びエネルギーのより幅の広いリボンビームを収容するために、この従来の質量分析マグネットはより大きな曲率半径、従ってより長い軌道長を必要とする。その結果、物理的により大きなマグネットが必要になり、マグネットに所望の電流を供給してギャップ全体に特定の磁場強度を与えるためにより多量の電源電圧が必要とされる。しかし、所定のサイズにおいて、マグネットは飽和し、磁場は不均一のままになる。従って、従来の質量分析マグネットはサイズ、コスト及び電力消費が増大する。別のタイプの質量分析装置が特許文献1に見られる。この装置は細長い磁極片の配列を用い、これらの磁極片は配列延長方向に平行に移動するイオンビームに直角の平面内に構成される。従って、磁場はリボンビームの幅(X軸)及びビーム像の方向(Z軸)の両方に直角である。しかし、このタイプのマグネットはマグネット中を走行するリボンビームの高さ(Y軸)の周囲に巻かれ、動作のためにリボンビームの大きな横への動きを必要とする。これはマグネットのサイズ及びイオンビームが走行しなければならない距離を増大し、ビーム電流の損失の増大をまねく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,498,348号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該分野においては、上述した欠点及び短所を克服する、リボンビーム幅の増大によく対応する改良された質量分析マグネットが必要とされている。更に、当該分野においては、リボンビームの幅方向に不変の均一磁場を提供する質量分析マグネット構造が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の模範的な実施例は、ビームラインイオン注入器に使用され、リボンイオンビーム内を走行する異なるイオン種の質量分析を実行する質量分析マグネットに関する。一つの模範的実施例においては、質量分析器は、イオンリボンビームを受け入れるように構成された入口空間及びイオンリボンビームを出力するように構成された出口空間を画定する第1のソレノイドコイルを含む。第1のソレノイドコイルは、第1のソレノイドコイル中を走行するイオンリボンビーム内のそれぞれのイオン種の軌道をそれぞれのイオンの質量に基づいて偏向するために、印加電流に応答して第1の磁場を生成するように構成される。質量分析器はイオンリボンビームの走行通路に沿って第1のソレノイドコイルから距離d離れて位置する第2のソレノイドコイルを含む。第2のソレノイドコイルは、第1のソレノイドコイルの出口空間からのイオンリボンビームを受け入れるように構成された入口空間を画定する。第2のソレノイドコイルは、印加電流に応答して前記第1の磁場と反対方向に第2の磁場を生成するように構成される。第2のソレノイドコイルは、イオンリボンビーム内のイオンの軌道をそれぞれのイオンの質量に基づいて曲げる。質量分析器は更に第1の凹部及び第2の凹部を有する少なくとも一つのヨークを含む。第1の凹部は第1のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成され、第2の凹部は第2のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成される。ヨークは第1のソレノイドコイル及び第2のソレノイドコイルと接触し、ヨーク、第1のソレノイドコイル及び第2のソレノイドコイルの間に形成される回路を完成する。
【0010】
別の実施例においては、イオン注入器はイオン源、質量分析器及びエンドステーションを含む。イオン源はリボンイオンビームを生成するように動作し得る。質量分析器は入口及び出口を有し、イオン源からの走行リボンイオンビームを入口から受け入れ、リボンビーム内の所望の電荷対質量比を有するイオンを所定の通路に沿って質量分析器の出口に出力するように偏向する。質量分析器はイオンリボンビームの走行方向に沿って指定の距離離れて位置する第1及び第2のソレノイドコイルを備える。ヨークは第1のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成された第1の凹部及び第2のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成された第2の凹部を有する。エンドステーションはリボンビームによる注入処理中加工片を支持するように構成される。
【0011】
本発明のよりよい理解のために、添付図面いついて説明する。図面において、同等の要素は同等の番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の一実施例によるリボンビーム質量分析器を有するビームラインイオン注入器の平面図である。
【図1B】リボンビームの走行方向に下流方向に見た図1Aの1B−1B線に沿った本発明の一実施例による図1Aのリボンビームの断面図である。
【図2】本発明の一実施例による図1のリボンビーム質量分析器の側面図である。
【図2A】本発明の一実施例による図2に示す線2A−2Aに沿った断面図である。
【図3】本発明の一実施レスポンスによる図2の第1のソレノイドコイルの部分斜視図である。
【図4】本発明の一実施例による図2のリターンヨークの側面図である。
【図5A】本発明の一実施例による図2のリターンヨークの端面図である。
【図5B】本発明の一実施例による図2の分析器の入口側の端面図である。
【図6】本発明の一実施例によるイオンビーム軌道を示す図2の分析器の上面図である。
【図7】傾いたソレノイドコイルを有する、本発明の別の実施例によるリボンビーム質量分析器の側面図である。
【図8】図7の実施例によるリターンヨークの斜視図である。
【図9】相対的に傾けられたソレノイドオイルを有し、リボンビームの片側のみにリターンヨークを有する、本発明の別の他の実施例によるリボンビーム質量分析器の側断面図である。
【図10】分析器の各半部の軸上に位置する追加のリターン板及びコイルを有する、本発明の更に別の実施例によるリボンビーム質量分析器の側断面図である。
【図11】本発明によるリボンビーム質量分析器を有するイオン注入器の一例の上面図である。
【図12】従来の分析器マグネットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適実施例が示されている添付図面を参照して本発明を以下に更に詳しく説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態に具体化することができ、ここに記載する実施例に限定されるものと解釈すべきでない。もっと正確に言うと、これらの実施例は本開示が詳細で完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために示されている。図面において、全図を通して同等の要素には同等の番号が付けられている。
【0014】
図1Aは、本発明の一実施例によるリボンビーム質量分析器106を有するビームラインイオン注入器100の簡略ブロック図の平面図である。ビームラインイオン注入器100は、チャンバ内に導入された特定のフィードガスに基づいて所望の種のイオンを生成するイオン源チャンバ102を含む。引出しアセンブリ(図示せず)は電界を生成するように構成された複数の電極を含む。電界の強度はイオン源チャンバ102内で生成されたイオンから特定のタイプのイオンリボンビーム104を引き出すために所望のビーム電流に調整される。質量分解スリット116がリボンビーム質量分析器106の下流に置かれ、この質量分析器はイオンが質量分析マグネット106を出るとき特定の軌道を有するイオンを選択するように構成される。エンドステーション156はリボンビーム104で処理される加工片110を支持するチャック112を有するプロセスチャンバを含む。加工片110は一実施例ではディスク状の半導体ウェハとすることができる。加工片110は、限定はされないが、フラットパネル、ソーラーパネル及びポリマー基板であってもよい。エンドステーション156は加工片110を所望の方向に移動させる走査システム(図示せず)を含むこともできる。
【0015】
エンドステーション156は当業者に周知の追加の構成要素を含んでもよい。例えば、エンドステーション156は、典型的には、加工片をイオン注入器100内に導入し、イオン注入後に加工片を取り出す自動加工片取扱装置を含む。リボンビーム104が横断する全通路はイオン注入中排気される。注入器100は注入器の種々のサブシステム及び構成要素を制御するコントローラ(図示せず)も含むことができる。
【0016】
ビーム104はリボン状又はビームの一方向の第1の寸法が第1の方向に直角の第2の方向の第2の寸法より大きい形状を有する。ここに記載する実施例においては、リボンビームの重心がZ軸を規定するカーテシアン座標を規定すると有益である。図1Aの座標系で示されるように、X軸及びY軸で規定されるX−Y平面はZ軸に直角である。
【0017】
図1Bは、リボンビーム104の走行方向に下流側に見た図1Aの線1B−1Bに沿った図1Aのリボンビームの断面を上記の規定の座標系と関連して示す断面図である。本例では、リボンビーム104はほぼ矩形の断面形状を有する。リボンビームの断面形状は図1Bに示される形状に近似する全体的に不規則な形状であってもよいことは当業者に認識されよう。リボンビーム104はX方向に幅(W)を有し、Y方向に高さ(H)を有する。リボンビーム104の重心180はZ軸を規定し、ビームはイオン源120からエンドステーション156へ走行する。リボンビームの幅(W)はここに記載する実施例ではX方向であるが、リボンビームの幅(W)又は長さ次元は任意の方向に位置させることができる。例えば、リボンビーム104の長さ次元はY方向に位置させ、他の成分はそれに応じて再配置させてもよい。
【0018】
動作中、イオン源102のアパーチャに近接して位置する引出し電極アセンブリ(図示せず)はイオン源102内のプラズマからリボンビーム104を引き出す。引出し電極アセンブリは、例えばアークスロット電極、サプレッション電極及び接地電極を含み、これらの電極はイオン源102内で生成されたイオンから特定のタイプのイオンビームを引き出すために所望のビーム電流に調整された特定の強度の電界を生成する。リボンビーム104はリボンビーム質量分析器106により収容できるX方向の幅(W)にすることができる。リボンビーム質量分析器106はここで更に説明されるようにリボンビームの質量分析を実行するため、質量分解スリット116はリボンビームから所望のイオンを選択することができる。質量分析されたリボンビーム104は次に加工片110に向けることができる。加工片110はエンドステーション156内に位置する走査システムによりリボンビーム104の長さ方向に直角の方向又は本例ではY方向に駆動することができる。
【0019】
図2は、本発明の模範的実施例による、一般に入口側250及び出口側252を有する図1のリボンビーム質量分析器106の側面図である。リボンビーム質量分析器106は、上部リターンヨーク202及び下部リターンヨーク204により距離dだけ離して支持された第1のソレノイドコイル208及び第2のソレノイドコイル210を含む。ヨーク202,204は分析器マグネットの帰路を与えるためにスチールなどの強磁性材料で形成することができる。コイル208,210の各々は、図3に示されるコイル208の斜視図により詳しく示されように、「レーストラック」形状にすることができる。コイル208,210は、以下により詳細に説明されるように、マグネット中を走行するイオンビームの偏向/変位を与えるために、X軸の周囲に互いに反対方向に巻かれ、互いに反対向きの磁場を生成する。
【0020】
ソレノイドコイル208及び210は、特定の質量対電荷比を有するイオンを選択するために、同一の一般的形状又は所望の磁場に応じて異なる形状にすることができる。リボンビーム104の入口開口260(図3参照)は第1のソレノイドコイル208の形状により画定することができ、出口開口252は第2のソレノイドコイル210の形状により画定することができる。一つ以上の電源(図示せず)がコイル208,210に必要な電圧を供給してこれらのコイルに矢233,235で示すように反対方向に駆動電流を流す。ヨーク202及び204はそれぞれのコイルと関連する反対方向233及び235の電流の流れの結果としてコイル208及び210間に磁力線の分離を与え、所望の磁場を生成する。一般に、2つのソレノイドコイル208,210は、質量依存性の像を生成するレンズとして作用し、質量分解スリット116により規定される開口240が所望の質量を有する像を選択し他の質量の像は除去することを可能にし、よって質量分解を達成することが可能になる。
【0021】
図2に示されるように、リボンビーム104はリボンビーム分析器106の中央平面280から離れて収束する。それは、分析器106は中央平面280内の軸に平行なイオンの軌道を変更しないためである。換言すれば、中央平面内のイオンに対して質量分解は起こらない。中央平面280に対するリボンビーム104の角度(θ)はイオン軌道の所望の変更を与えるために変化させることができる。一実施例では、角度(θ)は約7.5°〜8.0°とすることができる。動作中、リボンビーム104は第1のソレノイドコイル208により画定される開口260内に分析器106の中央平面280に対して垂直角(θ)で向けられる。第1のソレノイドコイル108を矢233で示す方向に流れる電流により生成される磁場はリボンビーム104にX方向の変位/偏向を与える。第2のソレノイドコイル210を矢235で示す方方向に流れる電流により生成される磁場は同様にX方向であるが第1のソレノイドコイル208による変位/変更と反対方向の第2の変位を与える。従って、それぞれのソレノイドコイルにより生じるX方向の変更は分析器106中で互に相殺することになる。
【0022】
上記の磁場及び関連する変更は質量依存性のリボンビームの像を提供する。例えば、リボンビームの第1の部分222は第1の質量のイオンを含み、第2の部分224は第2の質量のイオンを含み、第3の部分226は第1の質量のイオンを含む。この場合、質量分解スリット116の開口240を所望の質量を有するリボンビームの特定の部分に対応する位置に位置させることによって所望のイオンを選択することができる。図2の実施例においては、質量分解スリット116をZ位置に固定することができ、その位置で開口240をY軸に沿って選択位置に移動可能にすることができる。図2に示す分析器の別の実施例においては、質量分解スリット116の中心をY及びZ軸方向に固定し、コイル208,210の電流を所望の質量を有するイオンが開口240内に位置するように増減させることができる。
【0023】
図2の実施例においては、開口240は質量分析されたリボンビームの第1部分222を選択するようにY軸に沿って定置される。開口240のサイズは異なるサイズのビームを収容するために可変にすることもできる。開口240は、リボンビームの所望部分の最大通過を可能にするために開口の片側又は両側に傾斜縁242によって画定することもできる。質量分析器スリット116の上部116A及び下部116Bは質量分解能を向上するために異なるZ位置に置くこともできる。例えば、図2では質量分析されたリボンビームの第1部分222と第2部分224の最大分離は第2部分224と第3部分226の最大分離と異なるZ位置で起こる。質量分解スリット116を所望の位置に駆動するとともにその開口240のサイズを変更するために、一つ以上のアクチュエータ(図示せず)を質量分解スリット116に機械的に結合することもできる。また、同じ効果を達成するために質量分解スリットはX軸を中心に傾けることもできる。図8はこのように傾けられる質量分解スリットを示す。
【0024】
図2Aは図2に示す分析器マグネットの線2A−2Aに沿った簡略断面図である。ヨーク202は第1の凹部202A及び第2の凹部202Bを含む。同様に、ヨーク204は第1の凹部204A及び第2の凹部204Bを含む。第1のソレノイド208がヨーク202及び204の凹部202A及び204A内にそれぞれ部分的に配置される。第2のソレノイド210がヨーク202及び204の凹部202B及び204B内にそれぞれ部分的に配置される。マグネット106は中央平面280に対してZ方向にビーム104の通路に沿って延在する壁135によって画成される真空容器を含む。スクレーパ130は真空容器壁135から図2に示す中央平面280の上方へY方向に所定の距離、X方向のビーム104の幅に亘って延在する。スクレーパ130はいくつかの機能を有する。第1に、分析器マグネット106は中央平面280の軸に平行なイオンの軌道を変更しないため、スクレーパ130は中央平面に沿って位置するイオンが出口252から質量スリット116に向かって出るのを阻止する。更に、ソレノイド208,210の光学系のために、イオンが分析器106中を走行するにつれてイオンがビーム全域でY方向に曲げられ、中央平面280から遠いイオンは目的より僅かに大きく曲がり、焦点に僅かな収差を生じる。典型的には、最大質量を有するイオンは分析器106によってより少なく曲げられ、中央平面280から遠く離れて走行するが、比較的軽い質量を有するイオンは中央平面に近くなる。しかし、第1のソレノイド208がビーム104内のイオンの軌道を曲げるとき、中央平面から最も遠く離れた重いイオンは収差のために僅かに大きな曲げ角を受け、所望のビーム軌道に向け曲げ戻され、その結果、たとえこれらのより重いイオンが所望のビームと関連する質量を有しない場合でも、質量スリット116により選択される。スクレーパ130はこれらのより重いイオンを質量スリット116に到達する前に除去することによってこの収差を許容する。同様に、重いイオンより中央平面に近い軽いイオンはマグネット106内でより少ない曲げを受け、これらの軽いイオンは所望の質量の軌道に向け戻される。スクレーパ130はこれらのより軽いイオンも質量スリット116に到達する前に除去する。更に、スクレーパ130の追加の部分(図示せず)を上部壁135から延長し、それらの間に、重いイオンがビーム通路に沿ってZ方向に走行するのを阻止するように構成されたアパーチャを与えることもできる。最後に、所望の質量を持たないイオンは典型的にはグラファイトで被覆された壁135に堆積される。時間とともに、壁135へのイオンの衝突は破片(例えば、壁135の小片)を生じ、それらがエンドステーション156に向け走行し得る。スクレーパ130は、グラファイト被覆壁135からのこの不所望な破片がエンドステーションへ走行して所望のドーピングプロファイルを汚染する可能性を低減するように定置される。
【0025】
図3は、第1のソレノイドコイル208及び上部ヨーク202の切除部分の斜視図を示す。説明を容易にするために、ヨーク204は省略されている。ソレノイドコイル208は、リボンビーム104を受け入れるためにX方向に十分な幅を有する「レーストラック」形の開口260を形成するように横方向に配列された1対の湾曲端区分208A及び1対の直線区分208Bにより画成される。直線区分208Bの各々は極端に広いリボンビームを収容するサイズの寸法(X1)を有する。例えば、寸法X1は約60cmとすることができ、開口260のY方向の寸法を規定する直線区分208B間の距離は26cmとすることができる。前述したように、コイル208は所望の磁場を生成するためにZ軸の周囲に巻かれる。ヨーク202は、Y方向に延在する1対の壁211と、コイルが配置される凹部202Aを画成するように壁211と一体に形成されたZ方向に延在する水平壁212とによって画定される。
【0026】
図4は、上部リターンヨーク202及び下部リターンヨーク204の側面図であり、図を明瞭にするためにコイル208,210は省略されている。上部ヨーク202はコイル208,210の間の分離距離に対応する幅dを有する分離壁211Aを含む壁211と水平壁212とによって画成される。同様に、下部ヨーク204はコイル208,210の間の分離距離に対応する幅dを有する分離壁213Aを含む壁213と水平壁214とによって画成される。凹部202A及び204Aはコイル208の対応する直線部分を受け入れるように整列される。凹部202B及び204Bはコイル210の対応する直線部分を受け入れるように整列される。壁211及び213の外側部分の各々はそれぞれの分離壁211A及び213Aに向かって角度をつけて示されているが、コイル208,210を囲む回路を完成するためにヨーク202,204の各々に対して代替構成の壁構造を利用することもできる。
【0027】
図5Aは上部リターンヨーク202及び下部リターンヨーク204を示す図1の線1A−1Aから見た端面図である。図5Aに示す図の差はX,Y,Z座標の変化に対応する。壁211は上部ヨーク202の幅(X方向)を寸法X2に広がり、壁213は下部ヨーク204の幅を対応する寸法X2に広がる。模範的実施例では、寸法X2は約92cmとすることができる。距離d2は上部ヨーク202と下部ヨーク204との間に規定され、コイル208,210の各々(及び図3に示す開口260)の直線区分間の距離に対応する。
【0028】
図5Bは上部リターンヨーク202を仮想的に示す同様に図1の線1B−1Bから見た分析器106の入口の平面図及びビーム104の断面図である。第1のソレノイドコイル208は、X方向に幅、Y方向に高さを有し、Z方向にマグネット106中を走行するリボンビーム104を受け入れる開口260を画成する。開口260内のX軸に沿う有効体積又は「フィルファクタ」は理想的には最大にすべきである。開口260内の磁場への端効果を最小にするために(さもなければリボンビーム104の幅が制限される)、コイル208に対する上部リターンヨーク202及び下部リターンヨーク(図示せず)の幅(W2)を最適化して開口260内の最大有効体積をもたらすことができる。リターンヨークの寸法を超えて延在する幅W3を有するコイル208,210の一部分を考慮してリターンヨーク202の幅(W2)を選択することによって、リボンビームのX方向の幅次元におけるコイル208,210の有効体積を最大にできることが確かめられた。
【0029】
図6は、コイル208により決定される分析器106の第1半部内のリボンビーム104の水平変位(X方向)及びコイル210により決定される分析器106の第2半部内のリボンビーム104の反対方向の水平変位(X方向)を示す分析器106の上面図である。ビーム104は次に、図2につき説明したように、質量スリットで受け取られ、特定の質量を有する所望のイオンがそれらの軌道に基づいて選択される。このように、距離dで分離されたソレノイド208及び210の使用により発生される分析器の第1半部及び第2半部内のX方向の変位の鏡面反転又は相殺によって分析器106から所望の出力リボンビームが得られる。加えて、X方向のビームの変位の鏡面反転又は相殺によって、コイル208,210ひいては分析器106の全幅をコイル内の均一磁場を維持したまま最小にすることができる。
【0030】
図7は簡略化したビームラインイオン注入器700のブロック側面図を示し、該イオン注入器700はリボン形成のために引き出される所望の種のイオンを発生するイオン源チャンバ702を含む。1対のソレノイドコイル708,710を含む質量分析器マグネット706がイオン源チャンバ702の下流に配置される。質量分解スリット116は特定の軌道を有するイオンをそれらが質量分析器マグネット706から出るとき選択するように構成される。エンドステーション156はリボンビーム104で処理される加工片110を支持するチャック112を有するプロセスチャンバを含む。加工片110は一実施例ではディスク状半導体ウェハとすることができる。
【0031】
図1−6に示す実施例と比較して、この代替実施例の分析器706は、リボンビーム104の通路により密接に適合するように互いに角度β1及びβ2だけ傾けられたソレノイドコイル708,710を含む。各コイル708,710は同様に上部リターンヨーク702及び下部リターンヨーク704の凹部内に部分的に配置され、距離d’だけ分離される。コイル708,710は上述したコイル208,210と同様のレーストラック形状を有する。これは分析器706の曲げ及び分解を可能にする質量エネルギー積を増大する。特に、ソレノイドコイルをビーム104の通路に適合するように傾けることによってビームをマグネット又は真空容器の上壁に衝突させることなく中央平面から大きく離れた位置を走行させることができる。前述したように、ソレノイドレンズの曲げ作用は中央平面から離れる距離とともに増大する。従って、傾斜コイル(708,710)構成は分析器マグネット706の曲げ作用を増大し、分析器の曲げ及び分解を可能にする質量エネルギー積の増大をもたらす。
【0032】
図8は、図7に示す質量分析器マグネット706の一部分の線8−8に沿った斜視断面図である。第1のソレノイドコイル708は上部ヨーク702と下部ヨーク704との間に配置される。上部ヨーク702は横壁712により連結されたY方向に延在する壁711により画定される。凹部702Aは壁711,712の内部表面で形成され、コイル708の上部を収容するように構成される。同様に、下部ヨーク704は横壁714により連結されたY方向に延在する壁713により画定される。凹部704Aは壁713,714の内部表面で形成され、コイル708の下部を収容するように構成される。コイル708内に示す矢の方向はコイルの周囲のX方向の磁場の方向を示す。
【0033】
次に図9は、本発明による質量分析器マグネットの別の実施例の側断面図である。図9は、図7の実施例と同様に、Y軸に対して相対的に曲げられた又は傾けられたソレノイドコイル908,910を有する質量分析器906を示す。しかし、図9の実施例は上部リターンヨーク902のみを有し、下部リターンヨークはない。ソレノイドコイル908は凹部902A内に配置され、ソレノイドコイル910は凹部902B内に配置される。この構成は、ビーム104が質量分析器マグネット906中を走行するため、許容可能なビーム光学系及び質量分解能並びに高い質量エネルギー積をもたらす。下部リターンヨークがないため、必要とされるスチールなどの強磁性材料が少なくなり、構成要素コスト及び設置の節約が得られる。更に、内部真空容器へのアクセスが良くなる。しかし、下部リターンヨークの除去は、さもなければリターンヨーク内を走行し得る磁場の領域における磁場が高くなり得る。これは、周囲磁場の安全基準が満たされるように分析器マグネット及び/又は注入器自体の筐体の周囲に適切なシールドを設置することによって補償することができる。
【0034】
図10は、分割ソレノイド1008及び1010を備える質量分析器マグネット1006の更に別の実施例の側断面図である。この分析器マグネット1006は図2に示す実施例の側断面図に類似し、ソレノイドコイル1008及び1010の各々はレーストラック形状を有する。しかし、1006の分析器マグネットは分析器1006の各半部の軸上に位置するリターン板(例えばスチール板)及びコイルアセンブリを含む。具体的には、ヨーク1002は第1の凹部1002A及び第2の凹部1002Bを含み、ヨーク1004は第1の凹部1004A及び第2の凹部1004Bを含む。第1のソレノイドコイル1008はヨーク1002及び1004のそれぞれの第1の凹部1002A及び1004A内に部分的配置され、第2のソレノイドコイル1010はヨーク1002及び1004のそれぞれの第2の凹部1002B及び1004B内に部分的配置される。分析器1006は、ソレノイド1008に形成された空間内の中央平面軸上に置かれたスチール板1020の周囲にコイル1012が設けられる。コイル1022はソレノイド1010に形成された空間内の中央平面軸上に置かれた第2のスチール板1020の周囲に設けられる。中央平面軸上のコイル及びスチールアセンブリはそれぞれのソレノイド1008,1010内の磁場を再分布するように機能する。これは光学的収差を低減し、位置依存像の品質を向上し、よって種々の質量を有するイオンの分離を向上する。
【0035】
図11は、イオン源1102、質量分析器106及びエンドステーション1156を含む本発明による簡略化されたイオン注入器1100の上面図である。イオン源1102はアークチャンバ内で所望の種のイオンを有するプラズマを生成するように構成される。これらのイオンは特定のタイプのイオンリボンビーム104を形成するためにイオン源1102から引き出される。リボンビーム104を構成するイオンは先に詳述したような1対の分割ソレノイドコイル208,210を有するリボンビーム質量分析器106により質量分析される。ソレノイドコイル208,210は少なくとも一つのヨーク(図示せず)により画定されるスチール帰路内に埋設される。ソレノイド208はソレノイド210に対して反対方向の磁場を生成するように巻かれる。質量分析器106はより幅の広いリボンビームを収容するためにリボンビーム104の幅に亘って均一な磁場を与える。イオン源1102から引き出されたイオンの質量に基づいて、特定のイオン種を質量分析器106により選択し、エンドステーション1156に供給することができる。質量分析器106の下流に位置するエンドステーションは特定のイオン種を含むリボンビーム104による処理のために一以上の加工片1110を支持するように構成される。
【0036】
本発明の範囲は本明細書に記載した特定の実施例に限定されない。以上の説明及び添付図面から、本明細書に記載された実施例に加えて、他の種々の実施例及び変更例が当業者に明らかである。従って、このような他の実施例及び変更例も本発明の範囲に含むことを意図している。更に、本発明は特定の目的に対する特定の環境における特定の実施に関連して記載したが、その有用性はこれに限定されず、本発明は任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実施できることは当業者に認識されよう。従って、以下に記載する請求項は本明細書に記載された本発明の範囲の広さ及び精神を考慮して解釈すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイス製造の分野に関する。より詳しくは、本発明は半導体及び他のデバイスの製造に用いられるイオン注入器で使用されるイオンリボンビーム用の質量分析マグネットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビームラインイオン注入器は所望のデバイス特性を得るために加工片を処理するイオンビームを供給するものである。一つの用途では、加工片は半導体ウェハであり、この場合にはイオンビームは半導体ウェハに特定の所望の不純物をドープする。他の用途では、イオンビームは加工片に精密な材料変形を与えることができる。半導体ウェハに加えて、加工片は、限定はされないが、フラットパネル、ソーラーパネル及びポリマー基板を含むこともできる。
【0003】
イオン注入器は、一般に、プラズマを生成し、そのプラズマからイオンビームを引出し電極アセンブリによって引き出すイオン源チャンバを含む。イオンビームは次に、所望の電荷対質量比を有するイオンのみが質量分析器を通過するように特定の磁場を生成するよう構成された質量分析マグネットに供給することができる。質量分析されたイオンビームは次に、コレクタマグネット及び加減速レンズなどの当業者に周知の他のイオンビームライン素子で処理して加工片の表面に供給することができる。イオンビームは、イオンビームの移動、加工片の移動又は両者の組み合わせによって加工片の表面全域に分配することができる。イオンは加工片内の電子及び原子核と衝突するとエネルギーを失い、加速エネルギーに基づいて加工片内の所望の深さで静止する。
【0004】
図12は、イオンビーム4が通過するギャップ3を規定する1対の磁極片2を有する従来の質量分析マグネット1を示す。2つの磁極片2はギャップ3を走行するイオンビーム4に曲げ力を与える双極子磁場を生成する。曲げの量はビームの異なるイオン種ごとに僅かに変化し、イオンの荷電状態、エネルギー及び質量に依存する。従来のマグネットの磁極片2の間に生成される磁場はマグネットにより形成される像/焦点の方向に平行である。イオンの電荷に対する質量比が2つの磁極片の間に形成される磁場によりイオンが横方向に加速される程度に影響を与える。従って、イオン源からのイオンビームが従来の質量分析マグネット中を走行するとき、異なるイオン種は異なる軌道を走行し、質量分析マグネットは所望の質量対電荷比と関連する軌道を有するイオンを選択することができる。質量分析マグネットの下流に置かれた質量分解スリットは所望のイオン種(例えばB+)を選択し、望ましくないイオン種は質量分解スリットを取り囲む導電版により収集される。僅かに低いイオン質量を有するイオン(大きな角度で偏向される)又は僅かに高い質量を有するイオン(小さい角度で偏向される)は通過されない。これらの磁気分析器の大部分はリボンビームの長さ方向を双極子磁場に平行に向ける。しかし、これらの質量分析マグネットにより収容されるイオンビームのサイズは磁極片ギャップのサイズにより限定される。
【0005】
加工片のサイズの継続的な増大につれて(例えば、半導体ウェハディスクサイズは直径が300ミリメートル(mm)から450mmに増大し、さらにそれより大きくなり得る)、異なるサイズの加工片を処理する柔軟性を可能にするために、イオンビームの幅をリボンビームに増大するのが有利である。リボンビームは、リボン状又はビームの一方向の第1の寸法が第1の方向に直角の第2の方向の第2の寸法より大きい形状を有するイオンビームである。リボンビームは幅が高さの3倍以上であるおおむね矩形の断面形状を有することができる。
【0006】
異なるイオンを異なる軌道に曲げる従来の質量分析マグネットは、磁極片ギャップが増大するにつれて減少する限定された磁場強度を有する。換言すれば、磁場はビームの幅に反比例する。ビームの幅方向の磁場の均一性も磁極片ギャップの増大により悪化する。曲げの量は異なるイオン種に対して僅かに変化するため、不均一磁場は異なるイオン種が磁場中を走行するときイオン軌道の質量分析に影響を与えるので、不所望な質量分析結果をもたらす。同じ質量及びエネルギーのより幅の広いリボンビームを収容するために、この従来の質量分析マグネットはより大きな曲率半径、従ってより長い軌道長を必要とする。その結果、物理的により大きなマグネットが必要になり、マグネットに所望の電流を供給してギャップ全体に特定の磁場強度を与えるためにより多量の電源電圧が必要とされる。しかし、所定のサイズにおいて、マグネットは飽和し、磁場は不均一のままになる。従って、従来の質量分析マグネットはサイズ、コスト及び電力消費が増大する。別のタイプの質量分析装置が特許文献1に見られる。この装置は細長い磁極片の配列を用い、これらの磁極片は配列延長方向に平行に移動するイオンビームに直角の平面内に構成される。従って、磁場はリボンビームの幅(X軸)及びビーム像の方向(Z軸)の両方に直角である。しかし、このタイプのマグネットはマグネット中を走行するリボンビームの高さ(Y軸)の周囲に巻かれ、動作のためにリボンビームの大きな横への動きを必要とする。これはマグネットのサイズ及びイオンビームが走行しなければならない距離を増大し、ビーム電流の損失の増大をまねく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,498,348号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該分野においては、上述した欠点及び短所を克服する、リボンビーム幅の増大によく対応する改良された質量分析マグネットが必要とされている。更に、当該分野においては、リボンビームの幅方向に不変の均一磁場を提供する質量分析マグネット構造が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の模範的な実施例は、ビームラインイオン注入器に使用され、リボンイオンビーム内を走行する異なるイオン種の質量分析を実行する質量分析マグネットに関する。一つの模範的実施例においては、質量分析器は、イオンリボンビームを受け入れるように構成された入口空間及びイオンリボンビームを出力するように構成された出口空間を画定する第1のソレノイドコイルを含む。第1のソレノイドコイルは、第1のソレノイドコイル中を走行するイオンリボンビーム内のそれぞれのイオン種の軌道をそれぞれのイオンの質量に基づいて偏向するために、印加電流に応答して第1の磁場を生成するように構成される。質量分析器はイオンリボンビームの走行通路に沿って第1のソレノイドコイルから距離d離れて位置する第2のソレノイドコイルを含む。第2のソレノイドコイルは、第1のソレノイドコイルの出口空間からのイオンリボンビームを受け入れるように構成された入口空間を画定する。第2のソレノイドコイルは、印加電流に応答して前記第1の磁場と反対方向に第2の磁場を生成するように構成される。第2のソレノイドコイルは、イオンリボンビーム内のイオンの軌道をそれぞれのイオンの質量に基づいて曲げる。質量分析器は更に第1の凹部及び第2の凹部を有する少なくとも一つのヨークを含む。第1の凹部は第1のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成され、第2の凹部は第2のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成される。ヨークは第1のソレノイドコイル及び第2のソレノイドコイルと接触し、ヨーク、第1のソレノイドコイル及び第2のソレノイドコイルの間に形成される回路を完成する。
【0010】
別の実施例においては、イオン注入器はイオン源、質量分析器及びエンドステーションを含む。イオン源はリボンイオンビームを生成するように動作し得る。質量分析器は入口及び出口を有し、イオン源からの走行リボンイオンビームを入口から受け入れ、リボンビーム内の所望の電荷対質量比を有するイオンを所定の通路に沿って質量分析器の出口に出力するように偏向する。質量分析器はイオンリボンビームの走行方向に沿って指定の距離離れて位置する第1及び第2のソレノイドコイルを備える。ヨークは第1のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成された第1の凹部及び第2のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成された第2の凹部を有する。エンドステーションはリボンビームによる注入処理中加工片を支持するように構成される。
【0011】
本発明のよりよい理解のために、添付図面いついて説明する。図面において、同等の要素は同等の番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の一実施例によるリボンビーム質量分析器を有するビームラインイオン注入器の平面図である。
【図1B】リボンビームの走行方向に下流方向に見た図1Aの1B−1B線に沿った本発明の一実施例による図1Aのリボンビームの断面図である。
【図2】本発明の一実施例による図1のリボンビーム質量分析器の側面図である。
【図2A】本発明の一実施例による図2に示す線2A−2Aに沿った断面図である。
【図3】本発明の一実施レスポンスによる図2の第1のソレノイドコイルの部分斜視図である。
【図4】本発明の一実施例による図2のリターンヨークの側面図である。
【図5A】本発明の一実施例による図2のリターンヨークの端面図である。
【図5B】本発明の一実施例による図2の分析器の入口側の端面図である。
【図6】本発明の一実施例によるイオンビーム軌道を示す図2の分析器の上面図である。
【図7】傾いたソレノイドコイルを有する、本発明の別の実施例によるリボンビーム質量分析器の側面図である。
【図8】図7の実施例によるリターンヨークの斜視図である。
【図9】相対的に傾けられたソレノイドオイルを有し、リボンビームの片側のみにリターンヨークを有する、本発明の別の他の実施例によるリボンビーム質量分析器の側断面図である。
【図10】分析器の各半部の軸上に位置する追加のリターン板及びコイルを有する、本発明の更に別の実施例によるリボンビーム質量分析器の側断面図である。
【図11】本発明によるリボンビーム質量分析器を有するイオン注入器の一例の上面図である。
【図12】従来の分析器マグネットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適実施例が示されている添付図面を参照して本発明を以下に更に詳しく説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態に具体化することができ、ここに記載する実施例に限定されるものと解釈すべきでない。もっと正確に言うと、これらの実施例は本開示が詳細で完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために示されている。図面において、全図を通して同等の要素には同等の番号が付けられている。
【0014】
図1Aは、本発明の一実施例によるリボンビーム質量分析器106を有するビームラインイオン注入器100の簡略ブロック図の平面図である。ビームラインイオン注入器100は、チャンバ内に導入された特定のフィードガスに基づいて所望の種のイオンを生成するイオン源チャンバ102を含む。引出しアセンブリ(図示せず)は電界を生成するように構成された複数の電極を含む。電界の強度はイオン源チャンバ102内で生成されたイオンから特定のタイプのイオンリボンビーム104を引き出すために所望のビーム電流に調整される。質量分解スリット116がリボンビーム質量分析器106の下流に置かれ、この質量分析器はイオンが質量分析マグネット106を出るとき特定の軌道を有するイオンを選択するように構成される。エンドステーション156はリボンビーム104で処理される加工片110を支持するチャック112を有するプロセスチャンバを含む。加工片110は一実施例ではディスク状の半導体ウェハとすることができる。加工片110は、限定はされないが、フラットパネル、ソーラーパネル及びポリマー基板であってもよい。エンドステーション156は加工片110を所望の方向に移動させる走査システム(図示せず)を含むこともできる。
【0015】
エンドステーション156は当業者に周知の追加の構成要素を含んでもよい。例えば、エンドステーション156は、典型的には、加工片をイオン注入器100内に導入し、イオン注入後に加工片を取り出す自動加工片取扱装置を含む。リボンビーム104が横断する全通路はイオン注入中排気される。注入器100は注入器の種々のサブシステム及び構成要素を制御するコントローラ(図示せず)も含むことができる。
【0016】
ビーム104はリボン状又はビームの一方向の第1の寸法が第1の方向に直角の第2の方向の第2の寸法より大きい形状を有する。ここに記載する実施例においては、リボンビームの重心がZ軸を規定するカーテシアン座標を規定すると有益である。図1Aの座標系で示されるように、X軸及びY軸で規定されるX−Y平面はZ軸に直角である。
【0017】
図1Bは、リボンビーム104の走行方向に下流側に見た図1Aの線1B−1Bに沿った図1Aのリボンビームの断面を上記の規定の座標系と関連して示す断面図である。本例では、リボンビーム104はほぼ矩形の断面形状を有する。リボンビームの断面形状は図1Bに示される形状に近似する全体的に不規則な形状であってもよいことは当業者に認識されよう。リボンビーム104はX方向に幅(W)を有し、Y方向に高さ(H)を有する。リボンビーム104の重心180はZ軸を規定し、ビームはイオン源120からエンドステーション156へ走行する。リボンビームの幅(W)はここに記載する実施例ではX方向であるが、リボンビームの幅(W)又は長さ次元は任意の方向に位置させることができる。例えば、リボンビーム104の長さ次元はY方向に位置させ、他の成分はそれに応じて再配置させてもよい。
【0018】
動作中、イオン源102のアパーチャに近接して位置する引出し電極アセンブリ(図示せず)はイオン源102内のプラズマからリボンビーム104を引き出す。引出し電極アセンブリは、例えばアークスロット電極、サプレッション電極及び接地電極を含み、これらの電極はイオン源102内で生成されたイオンから特定のタイプのイオンビームを引き出すために所望のビーム電流に調整された特定の強度の電界を生成する。リボンビーム104はリボンビーム質量分析器106により収容できるX方向の幅(W)にすることができる。リボンビーム質量分析器106はここで更に説明されるようにリボンビームの質量分析を実行するため、質量分解スリット116はリボンビームから所望のイオンを選択することができる。質量分析されたリボンビーム104は次に加工片110に向けることができる。加工片110はエンドステーション156内に位置する走査システムによりリボンビーム104の長さ方向に直角の方向又は本例ではY方向に駆動することができる。
【0019】
図2は、本発明の模範的実施例による、一般に入口側250及び出口側252を有する図1のリボンビーム質量分析器106の側面図である。リボンビーム質量分析器106は、上部リターンヨーク202及び下部リターンヨーク204により距離dだけ離して支持された第1のソレノイドコイル208及び第2のソレノイドコイル210を含む。ヨーク202,204は分析器マグネットの帰路を与えるためにスチールなどの強磁性材料で形成することができる。コイル208,210の各々は、図3に示されるコイル208の斜視図により詳しく示されように、「レーストラック」形状にすることができる。コイル208,210は、以下により詳細に説明されるように、マグネット中を走行するイオンビームの偏向/変位を与えるために、X軸の周囲に互いに反対方向に巻かれ、互いに反対向きの磁場を生成する。
【0020】
ソレノイドコイル208及び210は、特定の質量対電荷比を有するイオンを選択するために、同一の一般的形状又は所望の磁場に応じて異なる形状にすることができる。リボンビーム104の入口開口260(図3参照)は第1のソレノイドコイル208の形状により画定することができ、出口開口252は第2のソレノイドコイル210の形状により画定することができる。一つ以上の電源(図示せず)がコイル208,210に必要な電圧を供給してこれらのコイルに矢233,235で示すように反対方向に駆動電流を流す。ヨーク202及び204はそれぞれのコイルと関連する反対方向233及び235の電流の流れの結果としてコイル208及び210間に磁力線の分離を与え、所望の磁場を生成する。一般に、2つのソレノイドコイル208,210は、質量依存性の像を生成するレンズとして作用し、質量分解スリット116により規定される開口240が所望の質量を有する像を選択し他の質量の像は除去することを可能にし、よって質量分解を達成することが可能になる。
【0021】
図2に示されるように、リボンビーム104はリボンビーム分析器106の中央平面280から離れて収束する。それは、分析器106は中央平面280内の軸に平行なイオンの軌道を変更しないためである。換言すれば、中央平面内のイオンに対して質量分解は起こらない。中央平面280に対するリボンビーム104の角度(θ)はイオン軌道の所望の変更を与えるために変化させることができる。一実施例では、角度(θ)は約7.5°〜8.0°とすることができる。動作中、リボンビーム104は第1のソレノイドコイル208により画定される開口260内に分析器106の中央平面280に対して垂直角(θ)で向けられる。第1のソレノイドコイル108を矢233で示す方向に流れる電流により生成される磁場はリボンビーム104にX方向の変位/偏向を与える。第2のソレノイドコイル210を矢235で示す方方向に流れる電流により生成される磁場は同様にX方向であるが第1のソレノイドコイル208による変位/変更と反対方向の第2の変位を与える。従って、それぞれのソレノイドコイルにより生じるX方向の変更は分析器106中で互に相殺することになる。
【0022】
上記の磁場及び関連する変更は質量依存性のリボンビームの像を提供する。例えば、リボンビームの第1の部分222は第1の質量のイオンを含み、第2の部分224は第2の質量のイオンを含み、第3の部分226は第1の質量のイオンを含む。この場合、質量分解スリット116の開口240を所望の質量を有するリボンビームの特定の部分に対応する位置に位置させることによって所望のイオンを選択することができる。図2の実施例においては、質量分解スリット116をZ位置に固定することができ、その位置で開口240をY軸に沿って選択位置に移動可能にすることができる。図2に示す分析器の別の実施例においては、質量分解スリット116の中心をY及びZ軸方向に固定し、コイル208,210の電流を所望の質量を有するイオンが開口240内に位置するように増減させることができる。
【0023】
図2の実施例においては、開口240は質量分析されたリボンビームの第1部分222を選択するようにY軸に沿って定置される。開口240のサイズは異なるサイズのビームを収容するために可変にすることもできる。開口240は、リボンビームの所望部分の最大通過を可能にするために開口の片側又は両側に傾斜縁242によって画定することもできる。質量分析器スリット116の上部116A及び下部116Bは質量分解能を向上するために異なるZ位置に置くこともできる。例えば、図2では質量分析されたリボンビームの第1部分222と第2部分224の最大分離は第2部分224と第3部分226の最大分離と異なるZ位置で起こる。質量分解スリット116を所望の位置に駆動するとともにその開口240のサイズを変更するために、一つ以上のアクチュエータ(図示せず)を質量分解スリット116に機械的に結合することもできる。また、同じ効果を達成するために質量分解スリットはX軸を中心に傾けることもできる。図8はこのように傾けられる質量分解スリットを示す。
【0024】
図2Aは図2に示す分析器マグネットの線2A−2Aに沿った簡略断面図である。ヨーク202は第1の凹部202A及び第2の凹部202Bを含む。同様に、ヨーク204は第1の凹部204A及び第2の凹部204Bを含む。第1のソレノイド208がヨーク202及び204の凹部202A及び204A内にそれぞれ部分的に配置される。第2のソレノイド210がヨーク202及び204の凹部202B及び204B内にそれぞれ部分的に配置される。マグネット106は中央平面280に対してZ方向にビーム104の通路に沿って延在する壁135によって画成される真空容器を含む。スクレーパ130は真空容器壁135から図2に示す中央平面280の上方へY方向に所定の距離、X方向のビーム104の幅に亘って延在する。スクレーパ130はいくつかの機能を有する。第1に、分析器マグネット106は中央平面280の軸に平行なイオンの軌道を変更しないため、スクレーパ130は中央平面に沿って位置するイオンが出口252から質量スリット116に向かって出るのを阻止する。更に、ソレノイド208,210の光学系のために、イオンが分析器106中を走行するにつれてイオンがビーム全域でY方向に曲げられ、中央平面280から遠いイオンは目的より僅かに大きく曲がり、焦点に僅かな収差を生じる。典型的には、最大質量を有するイオンは分析器106によってより少なく曲げられ、中央平面280から遠く離れて走行するが、比較的軽い質量を有するイオンは中央平面に近くなる。しかし、第1のソレノイド208がビーム104内のイオンの軌道を曲げるとき、中央平面から最も遠く離れた重いイオンは収差のために僅かに大きな曲げ角を受け、所望のビーム軌道に向け曲げ戻され、その結果、たとえこれらのより重いイオンが所望のビームと関連する質量を有しない場合でも、質量スリット116により選択される。スクレーパ130はこれらのより重いイオンを質量スリット116に到達する前に除去することによってこの収差を許容する。同様に、重いイオンより中央平面に近い軽いイオンはマグネット106内でより少ない曲げを受け、これらの軽いイオンは所望の質量の軌道に向け戻される。スクレーパ130はこれらのより軽いイオンも質量スリット116に到達する前に除去する。更に、スクレーパ130の追加の部分(図示せず)を上部壁135から延長し、それらの間に、重いイオンがビーム通路に沿ってZ方向に走行するのを阻止するように構成されたアパーチャを与えることもできる。最後に、所望の質量を持たないイオンは典型的にはグラファイトで被覆された壁135に堆積される。時間とともに、壁135へのイオンの衝突は破片(例えば、壁135の小片)を生じ、それらがエンドステーション156に向け走行し得る。スクレーパ130は、グラファイト被覆壁135からのこの不所望な破片がエンドステーションへ走行して所望のドーピングプロファイルを汚染する可能性を低減するように定置される。
【0025】
図3は、第1のソレノイドコイル208及び上部ヨーク202の切除部分の斜視図を示す。説明を容易にするために、ヨーク204は省略されている。ソレノイドコイル208は、リボンビーム104を受け入れるためにX方向に十分な幅を有する「レーストラック」形の開口260を形成するように横方向に配列された1対の湾曲端区分208A及び1対の直線区分208Bにより画成される。直線区分208Bの各々は極端に広いリボンビームを収容するサイズの寸法(X1)を有する。例えば、寸法X1は約60cmとすることができ、開口260のY方向の寸法を規定する直線区分208B間の距離は26cmとすることができる。前述したように、コイル208は所望の磁場を生成するためにZ軸の周囲に巻かれる。ヨーク202は、Y方向に延在する1対の壁211と、コイルが配置される凹部202Aを画成するように壁211と一体に形成されたZ方向に延在する水平壁212とによって画定される。
【0026】
図4は、上部リターンヨーク202及び下部リターンヨーク204の側面図であり、図を明瞭にするためにコイル208,210は省略されている。上部ヨーク202はコイル208,210の間の分離距離に対応する幅dを有する分離壁211Aを含む壁211と水平壁212とによって画成される。同様に、下部ヨーク204はコイル208,210の間の分離距離に対応する幅dを有する分離壁213Aを含む壁213と水平壁214とによって画成される。凹部202A及び204Aはコイル208の対応する直線部分を受け入れるように整列される。凹部202B及び204Bはコイル210の対応する直線部分を受け入れるように整列される。壁211及び213の外側部分の各々はそれぞれの分離壁211A及び213Aに向かって角度をつけて示されているが、コイル208,210を囲む回路を完成するためにヨーク202,204の各々に対して代替構成の壁構造を利用することもできる。
【0027】
図5Aは上部リターンヨーク202及び下部リターンヨーク204を示す図1の線1A−1Aから見た端面図である。図5Aに示す図の差はX,Y,Z座標の変化に対応する。壁211は上部ヨーク202の幅(X方向)を寸法X2に広がり、壁213は下部ヨーク204の幅を対応する寸法X2に広がる。模範的実施例では、寸法X2は約92cmとすることができる。距離d2は上部ヨーク202と下部ヨーク204との間に規定され、コイル208,210の各々(及び図3に示す開口260)の直線区分間の距離に対応する。
【0028】
図5Bは上部リターンヨーク202を仮想的に示す同様に図1の線1B−1Bから見た分析器106の入口の平面図及びビーム104の断面図である。第1のソレノイドコイル208は、X方向に幅、Y方向に高さを有し、Z方向にマグネット106中を走行するリボンビーム104を受け入れる開口260を画成する。開口260内のX軸に沿う有効体積又は「フィルファクタ」は理想的には最大にすべきである。開口260内の磁場への端効果を最小にするために(さもなければリボンビーム104の幅が制限される)、コイル208に対する上部リターンヨーク202及び下部リターンヨーク(図示せず)の幅(W2)を最適化して開口260内の最大有効体積をもたらすことができる。リターンヨークの寸法を超えて延在する幅W3を有するコイル208,210の一部分を考慮してリターンヨーク202の幅(W2)を選択することによって、リボンビームのX方向の幅次元におけるコイル208,210の有効体積を最大にできることが確かめられた。
【0029】
図6は、コイル208により決定される分析器106の第1半部内のリボンビーム104の水平変位(X方向)及びコイル210により決定される分析器106の第2半部内のリボンビーム104の反対方向の水平変位(X方向)を示す分析器106の上面図である。ビーム104は次に、図2につき説明したように、質量スリットで受け取られ、特定の質量を有する所望のイオンがそれらの軌道に基づいて選択される。このように、距離dで分離されたソレノイド208及び210の使用により発生される分析器の第1半部及び第2半部内のX方向の変位の鏡面反転又は相殺によって分析器106から所望の出力リボンビームが得られる。加えて、X方向のビームの変位の鏡面反転又は相殺によって、コイル208,210ひいては分析器106の全幅をコイル内の均一磁場を維持したまま最小にすることができる。
【0030】
図7は簡略化したビームラインイオン注入器700のブロック側面図を示し、該イオン注入器700はリボン形成のために引き出される所望の種のイオンを発生するイオン源チャンバ702を含む。1対のソレノイドコイル708,710を含む質量分析器マグネット706がイオン源チャンバ702の下流に配置される。質量分解スリット116は特定の軌道を有するイオンをそれらが質量分析器マグネット706から出るとき選択するように構成される。エンドステーション156はリボンビーム104で処理される加工片110を支持するチャック112を有するプロセスチャンバを含む。加工片110は一実施例ではディスク状半導体ウェハとすることができる。
【0031】
図1−6に示す実施例と比較して、この代替実施例の分析器706は、リボンビーム104の通路により密接に適合するように互いに角度β1及びβ2だけ傾けられたソレノイドコイル708,710を含む。各コイル708,710は同様に上部リターンヨーク702及び下部リターンヨーク704の凹部内に部分的に配置され、距離d’だけ分離される。コイル708,710は上述したコイル208,210と同様のレーストラック形状を有する。これは分析器706の曲げ及び分解を可能にする質量エネルギー積を増大する。特に、ソレノイドコイルをビーム104の通路に適合するように傾けることによってビームをマグネット又は真空容器の上壁に衝突させることなく中央平面から大きく離れた位置を走行させることができる。前述したように、ソレノイドレンズの曲げ作用は中央平面から離れる距離とともに増大する。従って、傾斜コイル(708,710)構成は分析器マグネット706の曲げ作用を増大し、分析器の曲げ及び分解を可能にする質量エネルギー積の増大をもたらす。
【0032】
図8は、図7に示す質量分析器マグネット706の一部分の線8−8に沿った斜視断面図である。第1のソレノイドコイル708は上部ヨーク702と下部ヨーク704との間に配置される。上部ヨーク702は横壁712により連結されたY方向に延在する壁711により画定される。凹部702Aは壁711,712の内部表面で形成され、コイル708の上部を収容するように構成される。同様に、下部ヨーク704は横壁714により連結されたY方向に延在する壁713により画定される。凹部704Aは壁713,714の内部表面で形成され、コイル708の下部を収容するように構成される。コイル708内に示す矢の方向はコイルの周囲のX方向の磁場の方向を示す。
【0033】
次に図9は、本発明による質量分析器マグネットの別の実施例の側断面図である。図9は、図7の実施例と同様に、Y軸に対して相対的に曲げられた又は傾けられたソレノイドコイル908,910を有する質量分析器906を示す。しかし、図9の実施例は上部リターンヨーク902のみを有し、下部リターンヨークはない。ソレノイドコイル908は凹部902A内に配置され、ソレノイドコイル910は凹部902B内に配置される。この構成は、ビーム104が質量分析器マグネット906中を走行するため、許容可能なビーム光学系及び質量分解能並びに高い質量エネルギー積をもたらす。下部リターンヨークがないため、必要とされるスチールなどの強磁性材料が少なくなり、構成要素コスト及び設置の節約が得られる。更に、内部真空容器へのアクセスが良くなる。しかし、下部リターンヨークの除去は、さもなければリターンヨーク内を走行し得る磁場の領域における磁場が高くなり得る。これは、周囲磁場の安全基準が満たされるように分析器マグネット及び/又は注入器自体の筐体の周囲に適切なシールドを設置することによって補償することができる。
【0034】
図10は、分割ソレノイド1008及び1010を備える質量分析器マグネット1006の更に別の実施例の側断面図である。この分析器マグネット1006は図2に示す実施例の側断面図に類似し、ソレノイドコイル1008及び1010の各々はレーストラック形状を有する。しかし、1006の分析器マグネットは分析器1006の各半部の軸上に位置するリターン板(例えばスチール板)及びコイルアセンブリを含む。具体的には、ヨーク1002は第1の凹部1002A及び第2の凹部1002Bを含み、ヨーク1004は第1の凹部1004A及び第2の凹部1004Bを含む。第1のソレノイドコイル1008はヨーク1002及び1004のそれぞれの第1の凹部1002A及び1004A内に部分的配置され、第2のソレノイドコイル1010はヨーク1002及び1004のそれぞれの第2の凹部1002B及び1004B内に部分的配置される。分析器1006は、ソレノイド1008に形成された空間内の中央平面軸上に置かれたスチール板1020の周囲にコイル1012が設けられる。コイル1022はソレノイド1010に形成された空間内の中央平面軸上に置かれた第2のスチール板1020の周囲に設けられる。中央平面軸上のコイル及びスチールアセンブリはそれぞれのソレノイド1008,1010内の磁場を再分布するように機能する。これは光学的収差を低減し、位置依存像の品質を向上し、よって種々の質量を有するイオンの分離を向上する。
【0035】
図11は、イオン源1102、質量分析器106及びエンドステーション1156を含む本発明による簡略化されたイオン注入器1100の上面図である。イオン源1102はアークチャンバ内で所望の種のイオンを有するプラズマを生成するように構成される。これらのイオンは特定のタイプのイオンリボンビーム104を形成するためにイオン源1102から引き出される。リボンビーム104を構成するイオンは先に詳述したような1対の分割ソレノイドコイル208,210を有するリボンビーム質量分析器106により質量分析される。ソレノイドコイル208,210は少なくとも一つのヨーク(図示せず)により画定されるスチール帰路内に埋設される。ソレノイド208はソレノイド210に対して反対方向の磁場を生成するように巻かれる。質量分析器106はより幅の広いリボンビームを収容するためにリボンビーム104の幅に亘って均一な磁場を与える。イオン源1102から引き出されたイオンの質量に基づいて、特定のイオン種を質量分析器106により選択し、エンドステーション1156に供給することができる。質量分析器106の下流に位置するエンドステーションは特定のイオン種を含むリボンビーム104による処理のために一以上の加工片1110を支持するように構成される。
【0036】
本発明の範囲は本明細書に記載した特定の実施例に限定されない。以上の説明及び添付図面から、本明細書に記載された実施例に加えて、他の種々の実施例及び変更例が当業者に明らかである。従って、このような他の実施例及び変更例も本発明の範囲に含むことを意図している。更に、本発明は特定の目的に対する特定の環境における特定の実施に関連して記載したが、その有用性はこれに限定されず、本発明は任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実施できることは当業者に認識されよう。従って、以下に記載する請求項は本明細書に記載された本発明の範囲の広さ及び精神を考慮して解釈すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するリボンイオンビーム内の異なるイオン種の質量分析を実行し、その像を生成するイオン質量分析器であって、前記分析器は、
イオンリボンビームが通る空間を画定する第1のソレノイドコイルを備え、前記第1のソレノイドコイルは、前記第1のソレノイドコイルの空間中を走行する前記イオンリボンビーム内のイオンと関連する軌道を前記イオンのそれぞれの質量に基づいて偏向するために印加電流に応答して第1の方向に第1の磁場を生成するように構成されており、
前記第1のソレノイドコイルから前記走行イオンリボンビームの方向に距離dだけ下流に置かれ、前記第1のソレノイドコイルから受け取った前記イオンリボンビームが走行する空間を確定する第2のソレノイドコイルを備え、前記第2のソレノイドコイルは、印加電流に応答して前記第1の磁場と反対方向に第2の磁場を生成するように構成され、前記第1のソレノイドコイルからの前記イオンリボンビーム内のイオンの軌道を前記イオンのそれぞれの質量に基づいて更に曲げるように構成されており、
更に第1の凹部及び第2の凹部を有する少なくとも一つのヨークを備え、前記第1の凹部は前記第1のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成され、前記第2の凹部は前記第2のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成され、前記ヨークは前記ヨーク、前記第1のソレノイドコイル及び前記第2のソレノイドコイルの間に形成される回路を完成するために前記第1及び第2のソレノイドコイルに接続されている、
イオン質量分析器。
【請求項2】
前記第1のソレノイドコイルは前記空間内に規定された中央平面を有し、前記第1のソレノイドコイルの前記空間内に受け取られる前記イオンリボンビームは前記中央平面から離れている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項3】
前記第2のソレノイドコイルは前記空間内に規定された中央片面を有し、前記第1のソレノイドコイルから前記第2のソレノイドコイルにより受け取られる前記イオンリボンビームは前記中央平面から離れている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項4】
前記第1及び第2のソレノイドコイルの各々は上部及び下部を有し、前記ヨークの前記第1及び第2の凹部は前記第1及び第2のソレノイドコイルの各々の上部を受け入れるように構成されている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項5】
前記ヨークは第1のヨークであり、前記質量分析器は前記第1及び第2のソレノイドコイルの各々の下部を受け入れるように構成された第1及び第2の凹部を有する第2のヨークを更に備える、請求項4記載のイオン質量分析器。
【請求項6】
前記第1のソレノイドコイルは、第1及び第2の湾曲部分と、前記第1及び第2の湾曲部分を連結する第1及び第2のほぼ直線部分とを有し、前記第1及び第2の湾曲部分と前記第1及び第2のほぼ直線部分は前記入口及び出口空間を確定する、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項7】
前記第2のソレノイドコイルは、第1及び第2の湾曲部分と、前記第1及び第2の湾曲部分を連結する第1及び第2のほぼ直線部分とを有し、前記第1及び第2の湾曲部分と前記第1及び第2のほぼ直線部分は前記第2のソレノイドコイルの前記入口空間を確定する、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項8】
前記リボンビームは幅を有し、前記第1のソレノイドコイルの前記第1及び第2のほぼ直線部分は前記リボンビームの幅より大きい長さを有する、請求項6記載のイオン質量分析器。
【請求項9】
前記リボンビームは幅を有し、前記第2のソレノイドコイルの前記第1及び第2のほぼ直線部分は前記リボンビームの幅より大きい長さを有する、請求項7記載のイオン質量分析器。
【請求項10】
前記ヨークは、前記第1のソレノイドコイルの前記第1及び第2のほぼ直線部分の前記長さにほぼ等しい幅を有する、請求項6記載のイオン質量分析器。
【請求項11】
前記ヨークは、前記第2のソレノイドコイルの前記第1及び第2のほぼ直線部分の前記長さにほぼ等しい幅を有する、請求項9記載のイオン質量分析器。
【請求項12】
前記第1及び第2のソレノイドコイルにより画定された前記空間中を走行する前記イオンリボンビームの通路に沿って配置された少なくとも一つの壁を有する真空容器と、
前記容器の少なくとも一つの容器壁から直角にある距離突出し、特定の質量を有するイオンが前記第2のソレノイドコイルの空間中を通過するのを阻止するように構成されたスクレーパと、
を更に備える、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項13】
前記リボンビームは前記第1及び第2のソレノイドコイルのそれぞれの空間中を第1の方向に走行し、前記第1及び第2のソレノイドコイルは前記第1の方向に対して直角に構成されている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項14】
前記リボンビームは前記第1及び第2のソレノイドコイルのそれぞれの空間中を第1の方向に基準角で走行し、前記第1のソレノイドコイルは前記基準角に対してある角度(β1)をなしている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項15】
前記リボンビームは前記第1及び第2のソレノイドコイルのそれぞれの空間中を第1の方向に基準角で走行し、前記第2のソレノイドコイルは前記基準角に対してある角度(β2)をなしている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項16】
前記第1のソレノイドコイルにより画定された空間内に前記中央平面に沿って置かれた第1の板及びコイルアセンブリと、
前記第2のソレノイドコイルにより画定された空間内に前記中央平面に沿って置かれた第2の板及びコイルアセンブリと、
を更に備える、請求項2記載のイオン質量分析器。
【請求項17】
リボンイオンビームを生成するように動作し得るイオン源と、
入口及び出口を有し、イオン源からの走行するリボンイオンビームを前記入口から受け入れ、リボンビーム内の所望の電荷対質量比を有するイオンを所定の通路に沿って前記出口に出力するように偏向する質量分析器と、
前記質量分析器の下流にあって、前記リボンビームによる注入処理中加工片を支持するように構成されたエンドステーションと、
を備え、前記質量分析器は、
イオンリボンビームの走行方向に沿って規定の距離離れて位置し、それぞれ前記リボンイオンビームが走行する空間を画定する第1及び第2のソレノイドコイルと、
前記第1のソレノイドコイルの第1の部分を受け入れるように構成された第1の凹部及び前記第2のソレノイドコイルの第1の部分を受け入れるように構成された第2の凹部を有するヨークと、
を備える、イオン注入システム。
【請求項18】
前記第1及び第2のソレノイドコイルは均一磁場を生成し、前記リボンイオンビームが前記均一磁場中を走行する、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項19】
前記第1のソレノイドコイルは前記リボンビームが走行する第1の空間を画定する、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項20】
前記第2のソレノイドコイルは前記リボンビームが走行する第1の空間を画定する、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項21】
前記ヨークは第1のヨークであり、前記イオン注入システムは前記第1のソレノイドコイルの第2の部分を受け入れるように構成された第1の凹部及び前記第2のソレノイドコイルの第2の部分を受け入れるように構成された第2の凹部を有する第2のヨークを更に備える、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項22】
前記第1のソレノイドコイルは前記空間内に規定される中央平面を有し、前記第1のソレノイドコイルの前記空間内で受け取られるイオンリボンビームは前記中央平面から離れて位置する、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項23】
前記質量分析器は、
前記第1及び第2のソレノイドコイルにより画定された前記空間中を走行する前記イオンリボンビームの通路に沿って配置された少なくとも一つの壁を有する真空容器と、
前記容器の少なくとも一つの壁から直角にある距離突出し、特定の質量を有するイオンが前記第2のソレノイドコイルの空間中を通過するのを阻止するように構成されたスクレーパと、
を更に備える、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項24】
前記質量分析器と前記エンドステーションとの間に位置する質量スリットを更に備え、前記質量スリットは、特定の質量及び軌道を有するイオンリボンビームからのイオンを質量分析器の出力イオンとして選択するように構成されている、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項25】
前記第1のソレノイドコイルは、前記第1のソレノイドコイルの空間中を走行する前記イオンリボンビーム内のイオンと関連する軌道を前記イオンのそれぞれの質量に基づいて偏向するために印加電流に応答して第1の方向に第1の磁場を生成するように構成されている、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項26】
前記第2のソレノイドコイルは、印加電流に応答して前記第1の磁場と反対方向に第2の磁場を生成するように構成され、前記イオンリボンビームが前記第2のソレノイドコイル中を走行するとき、前記第1のソレノイドコイルからの前記イオンリボンビーム内のイオンの軌道を前記イオンのそれぞれの質量に基づいて更に曲げるように構成されている、請求項25記載のイオン注入システム。
【請求項27】
前記少なくとも一つの壁が第1の壁であり、前記真空容器は第2の壁を更に備え、前記スクレーパは前記少なくとも一つの壁から突出する第1の部分及び前記第2の壁から突出する第2の部分を備え、前記第1及び第2の部分は特定の質量を有するイオンが前記第2のソレノイドコイルの空間を通過するのを更に阻止するアパーチャを画成する、請求項23記載のイオン注入システム。
【請求項1】
走行するリボンイオンビーム内の異なるイオン種の質量分析を実行し、その像を生成するイオン質量分析器であって、前記分析器は、
イオンリボンビームが通る空間を画定する第1のソレノイドコイルを備え、前記第1のソレノイドコイルは、前記第1のソレノイドコイルの空間中を走行する前記イオンリボンビーム内のイオンと関連する軌道を前記イオンのそれぞれの質量に基づいて偏向するために印加電流に応答して第1の方向に第1の磁場を生成するように構成されており、
前記第1のソレノイドコイルから前記走行イオンリボンビームの方向に距離dだけ下流に置かれ、前記第1のソレノイドコイルから受け取った前記イオンリボンビームが走行する空間を確定する第2のソレノイドコイルを備え、前記第2のソレノイドコイルは、印加電流に応答して前記第1の磁場と反対方向に第2の磁場を生成するように構成され、前記第1のソレノイドコイルからの前記イオンリボンビーム内のイオンの軌道を前記イオンのそれぞれの質量に基づいて更に曲げるように構成されており、
更に第1の凹部及び第2の凹部を有する少なくとも一つのヨークを備え、前記第1の凹部は前記第1のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成され、前記第2の凹部は前記第2のソレノイドコイルの一部分を受け入れるように構成され、前記ヨークは前記ヨーク、前記第1のソレノイドコイル及び前記第2のソレノイドコイルの間に形成される回路を完成するために前記第1及び第2のソレノイドコイルに接続されている、
イオン質量分析器。
【請求項2】
前記第1のソレノイドコイルは前記空間内に規定された中央平面を有し、前記第1のソレノイドコイルの前記空間内に受け取られる前記イオンリボンビームは前記中央平面から離れている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項3】
前記第2のソレノイドコイルは前記空間内に規定された中央片面を有し、前記第1のソレノイドコイルから前記第2のソレノイドコイルにより受け取られる前記イオンリボンビームは前記中央平面から離れている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項4】
前記第1及び第2のソレノイドコイルの各々は上部及び下部を有し、前記ヨークの前記第1及び第2の凹部は前記第1及び第2のソレノイドコイルの各々の上部を受け入れるように構成されている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項5】
前記ヨークは第1のヨークであり、前記質量分析器は前記第1及び第2のソレノイドコイルの各々の下部を受け入れるように構成された第1及び第2の凹部を有する第2のヨークを更に備える、請求項4記載のイオン質量分析器。
【請求項6】
前記第1のソレノイドコイルは、第1及び第2の湾曲部分と、前記第1及び第2の湾曲部分を連結する第1及び第2のほぼ直線部分とを有し、前記第1及び第2の湾曲部分と前記第1及び第2のほぼ直線部分は前記入口及び出口空間を確定する、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項7】
前記第2のソレノイドコイルは、第1及び第2の湾曲部分と、前記第1及び第2の湾曲部分を連結する第1及び第2のほぼ直線部分とを有し、前記第1及び第2の湾曲部分と前記第1及び第2のほぼ直線部分は前記第2のソレノイドコイルの前記入口空間を確定する、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項8】
前記リボンビームは幅を有し、前記第1のソレノイドコイルの前記第1及び第2のほぼ直線部分は前記リボンビームの幅より大きい長さを有する、請求項6記載のイオン質量分析器。
【請求項9】
前記リボンビームは幅を有し、前記第2のソレノイドコイルの前記第1及び第2のほぼ直線部分は前記リボンビームの幅より大きい長さを有する、請求項7記載のイオン質量分析器。
【請求項10】
前記ヨークは、前記第1のソレノイドコイルの前記第1及び第2のほぼ直線部分の前記長さにほぼ等しい幅を有する、請求項6記載のイオン質量分析器。
【請求項11】
前記ヨークは、前記第2のソレノイドコイルの前記第1及び第2のほぼ直線部分の前記長さにほぼ等しい幅を有する、請求項9記載のイオン質量分析器。
【請求項12】
前記第1及び第2のソレノイドコイルにより画定された前記空間中を走行する前記イオンリボンビームの通路に沿って配置された少なくとも一つの壁を有する真空容器と、
前記容器の少なくとも一つの容器壁から直角にある距離突出し、特定の質量を有するイオンが前記第2のソレノイドコイルの空間中を通過するのを阻止するように構成されたスクレーパと、
を更に備える、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項13】
前記リボンビームは前記第1及び第2のソレノイドコイルのそれぞれの空間中を第1の方向に走行し、前記第1及び第2のソレノイドコイルは前記第1の方向に対して直角に構成されている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項14】
前記リボンビームは前記第1及び第2のソレノイドコイルのそれぞれの空間中を第1の方向に基準角で走行し、前記第1のソレノイドコイルは前記基準角に対してある角度(β1)をなしている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項15】
前記リボンビームは前記第1及び第2のソレノイドコイルのそれぞれの空間中を第1の方向に基準角で走行し、前記第2のソレノイドコイルは前記基準角に対してある角度(β2)をなしている、請求項1記載のイオン質量分析器。
【請求項16】
前記第1のソレノイドコイルにより画定された空間内に前記中央平面に沿って置かれた第1の板及びコイルアセンブリと、
前記第2のソレノイドコイルにより画定された空間内に前記中央平面に沿って置かれた第2の板及びコイルアセンブリと、
を更に備える、請求項2記載のイオン質量分析器。
【請求項17】
リボンイオンビームを生成するように動作し得るイオン源と、
入口及び出口を有し、イオン源からの走行するリボンイオンビームを前記入口から受け入れ、リボンビーム内の所望の電荷対質量比を有するイオンを所定の通路に沿って前記出口に出力するように偏向する質量分析器と、
前記質量分析器の下流にあって、前記リボンビームによる注入処理中加工片を支持するように構成されたエンドステーションと、
を備え、前記質量分析器は、
イオンリボンビームの走行方向に沿って規定の距離離れて位置し、それぞれ前記リボンイオンビームが走行する空間を画定する第1及び第2のソレノイドコイルと、
前記第1のソレノイドコイルの第1の部分を受け入れるように構成された第1の凹部及び前記第2のソレノイドコイルの第1の部分を受け入れるように構成された第2の凹部を有するヨークと、
を備える、イオン注入システム。
【請求項18】
前記第1及び第2のソレノイドコイルは均一磁場を生成し、前記リボンイオンビームが前記均一磁場中を走行する、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項19】
前記第1のソレノイドコイルは前記リボンビームが走行する第1の空間を画定する、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項20】
前記第2のソレノイドコイルは前記リボンビームが走行する第1の空間を画定する、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項21】
前記ヨークは第1のヨークであり、前記イオン注入システムは前記第1のソレノイドコイルの第2の部分を受け入れるように構成された第1の凹部及び前記第2のソレノイドコイルの第2の部分を受け入れるように構成された第2の凹部を有する第2のヨークを更に備える、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項22】
前記第1のソレノイドコイルは前記空間内に規定される中央平面を有し、前記第1のソレノイドコイルの前記空間内で受け取られるイオンリボンビームは前記中央平面から離れて位置する、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項23】
前記質量分析器は、
前記第1及び第2のソレノイドコイルにより画定された前記空間中を走行する前記イオンリボンビームの通路に沿って配置された少なくとも一つの壁を有する真空容器と、
前記容器の少なくとも一つの壁から直角にある距離突出し、特定の質量を有するイオンが前記第2のソレノイドコイルの空間中を通過するのを阻止するように構成されたスクレーパと、
を更に備える、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項24】
前記質量分析器と前記エンドステーションとの間に位置する質量スリットを更に備え、前記質量スリットは、特定の質量及び軌道を有するイオンリボンビームからのイオンを質量分析器の出力イオンとして選択するように構成されている、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項25】
前記第1のソレノイドコイルは、前記第1のソレノイドコイルの空間中を走行する前記イオンリボンビーム内のイオンと関連する軌道を前記イオンのそれぞれの質量に基づいて偏向するために印加電流に応答して第1の方向に第1の磁場を生成するように構成されている、請求項17記載のイオン注入システム。
【請求項26】
前記第2のソレノイドコイルは、印加電流に応答して前記第1の磁場と反対方向に第2の磁場を生成するように構成され、前記イオンリボンビームが前記第2のソレノイドコイル中を走行するとき、前記第1のソレノイドコイルからの前記イオンリボンビーム内のイオンの軌道を前記イオンのそれぞれの質量に基づいて更に曲げるように構成されている、請求項25記載のイオン注入システム。
【請求項27】
前記少なくとも一つの壁が第1の壁であり、前記真空容器は第2の壁を更に備え、前記スクレーパは前記少なくとも一つの壁から突出する第1の部分及び前記第2の壁から突出する第2の部分を備え、前記第1及び第2の部分は特定の質量を有するイオンが前記第2のソレノイドコイルの空間を通過するのを更に阻止するアパーチャを画成する、請求項23記載のイオン注入システム。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−508957(P2012−508957A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536458(P2011−536458)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/064159
【国際公開番号】WO2010/056823
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500239188)ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/064159
【国際公開番号】WO2010/056823
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(500239188)ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】
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