説明

リンク作動装置

【課題】 コンパクトでありながら、可動部の可動範囲が広く、かつ姿勢調整精度が高く、しかも剛性が高いリンク作動装置を提供する。
【解決手段】 基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構11〜13を介して姿勢を変更可能に連結する。そのうちの少なくとも2組に、端部リンク部材11a〜13aを回動させて基端側のリンクハブ14に対して先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータ30と、その動作量を端部リンク部材11a〜13aに減速して伝達する減速機構31とを設ける。減速機構31は、アクチュエータ30の駆動で回転させられる小歯車36と、端部リンク部材11a〜13aに設けられた大歯車37との噛み合いからなる歯車式の減速部33を有する。大歯車37のピッチ円半径は、端部リンク部材11a〜13aのアーム長Lの1/2以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三次元空間における複雑な加工や物品の取り回し等の作業を高速かつ精密に実行するパラレルリンク機構やロボット関節等のリンク機構に利用されるリンク作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パラレルリンク機構を具備する作業装置の一例が、特許文献1に開示されている。この作業装置は、ツールを取付けたトラベリングプレートの位置および姿勢をパラレルリンク機構により変更するようにしたものである。パラレルリンク機構は、下端にトラベリングプレートが連結された複数のリンクを備え、これらリンクの上部が自在継手により角度変更可能に支持されると共に、リンクごとに、自在継手よりも下方へ位置する有効長さを変更可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−94245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のパラレルリンク機構は、各リンクの作動角が小さいため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定するためには、リンク長さを長くする必要がある。それにより、機構全体の寸法が大きくなって、装置が大型になってしまうという問題があった。また、リンク長さを長くすると、機構全体の剛性の低下を招く。そのため、トラベリングプレートに搭載されるツールの重量、つまりトラベリングプレートの可搬重量も小さいものに制限されるという問題もあった。
【0005】
この発明は、コンパクトでありながら、可動部の可動範囲が広く、かつ姿勢調整精度が高く、しかも剛性が高いリンク作動装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状である。言い換えると、この発明のリンク作動装置は、基端側および先端側のそれぞれに設けた基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに対して回転可能に端部リンク部材を連結し、基端側と先端側のそれぞれの端部リンク部材を中央リンク部材に対して回転可能に連結したリンク機構を3組以上有し、各リンク機構の中央部における横断面に関して基端側と先端側を幾何学的に同一としたものである。
この発明は、上記リンク作動装置において、前記3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組に、前記基端側の端部リンク部材を回動させて前記基端側のリンクハブに対して前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータと、このアクチュエータの動作量を前記基端側の端部リンク部材に減速して伝達する減速機構とを設けた。前記減速機構は、前記アクチュエータの駆動で回転させられる小歯車と、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸を回転中心として回転自在に前記基端側の端部リンク部材に設けられた大歯車との噛み合いからなる歯車式の減速部を有し、前記大歯車は、前記小歯車よりもピッチ円半径が大きく、かつそのピッチ円半径が、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸の軸方向中心点から、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶軸の軸方向中心点を前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸に直交してその軸方向中心点を通る平面に投影した点までの距離である基端側の端部リンク部材のアーム長の1/2以上であることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、3組以上のリンク機構とで、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、先端側のリンクハブの可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の最大折れ角は約±90°であり、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組のリンク機構の基端側の端部リンク部材に対して、アクチュータの回転を減速機構で減速して伝達し、これら基端側の端部リンク部材を定められた角度だけ回転させることにより、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させる。
【0008】
大歯車のピッチ円半径を基端側の端部リンク部材のアーム長の1/2以上とすることで、先端負荷による基端側の端部リンク部材の曲げモーメントが小さくなるため、リンク作動装置全体の剛性を必要以上に高くしなくて済み、かつ基端側の端部リンク部材の軽量化を図れる。また、大歯車のピッチ円半径が比較的大きいため、大歯車の歯部の面圧が減少し、リンク作動装置全体の剛性が高くなる。さらに、小歯車と大歯車とからなる歯車式の減速部の減速比を高く設定できるため、アクチュエータの小型化が可能となると共に、エンコーダ等による位置決め分解能が高くなることにより、先端側のリンクハブの位置決め分解能が向上する。
また、大歯車のピッチ円半径が前記アーム長の1/2以上であると、大歯車が、基端側のリンクハブと基端側の端部リンク部材の回転対偶部に設置する軸受の外径よりも十分大きな径となるため、大歯車の歯部と軸受との間にスペースができ、大歯車の設置が容易である。
【0009】
この発明において、前記大歯車のピッチ円半径は、前記基端側の端部リンク部材のアーム長以上であっても良い。
これにより、大歯車のピッチ円半径がさらに大きくなり、前記作用・効果がより一層顕著に現れる。加えて、小歯車をリンク機構よりも外径側に設置することが可能となる。その結果、小歯車の設置スペースを容易に確保することができ、設計の自由度が増す。また、小歯車と他の部材との干渉が起こり難くなり、リンク作動装置の可動範囲が広くなる。
【0010】
この発明において、前記大歯車は、前記基端側の端部リンク部材と別部材であり、前記基端側の端部リンク部材に対して着脱自在としても良く、あるいは前記基端側の端部リンク部材と一体の部材としても良い。
基端側の端部リンク部材と別部材である場合は、減速機構の減速比、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの作動範囲等の仕様の変更が容易となり、リンク作動装置の量産性が向上する。つまり、同じリンク作動装置を、大歯車を変えるだけで、様々な用途に適用することが可能である。また、メンテナンス性が良い。例えば、減速機構に障害が生じた場合に、減速機構のみを交換するだけで対処可能である。
基端側の端部リンク部材と一体の部材である場合は、部品点数を減らすことができ、組立性が向上する。また、基端側の端部リンク部材と大歯車との滑りが無くなるため、リンク作動装置の剛性および位置決め精度が向上する。
【0011】
この発明において、前記歯車式の減速部の減速比を10以上とすると良い。
このように減速比が高いと、低出力のアクチュエータを使用することができ、かつアクチュエータに減速機構を設ける必要がなくなることから、アクチュエータの小型化が可能となる。また、エンコーダ等による位置決め分解能が高くなるため、先端側のリンクハブの位置決め分解能が向上する。
【0012】
この発明において、前記小歯車を、前記大歯車と噛み合う歯部と、この歯部から軸方向の両側に延びる一対の軸部とを有する構成とし、これら一対の軸部を軸受で回転自在に支持するのが良い。
このように小歯車を軸方向両側で支持すると、小歯車の支持剛性が高くなるため、先端負荷による基端側の端部リンク部材の角度保持剛性が高くなり、リンク作動装置の剛性や位置決め精度の向上に繋がる。
【0013】
この発明において、前記小歯車および大歯車は、それぞれ平歯車とするのが良い。
平歯車である小歯車および大歯車の製作が容易であり、しかも回転の伝達効率が高い。
【0014】
小歯車および大歯車が平歯車であり、前記アクチュエータがロータリアクチュエータである場合、このロータリアクチュエータの回転軸心および前記小歯車の回転軸心を同軸上に位置させ、これらの回転軸心を、前記基端側のリンクハブの中心軸に垂直で、かつ前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸を通る平面上に配置するのが良い。
この構成であると、ロータリアクチュエータの回転軸心、小歯車の回転軸心、および基端側のリンクハブと基端側の端部リンク部材の回転対偶軸が同一平面上にあるため、全体的なバランスが良く、組立性が向上する。
【0015】
この発明において、前記小歯車はウォームであり、前記大歯車はウォームホイールであっても良い。
この場合、小歯車および大歯車を容易に構成でき、大きな減速比を得られる。また、ウォームとウォームホイールの場合、ウォームホイール側からウォームへの逆入力ができないように設計することができるため、先端負荷が作用してもウォームホイールからウォームへ動力が伝達されず、基端側の端部リンク部材の角度保持剛性が高くなり、リンク作動装置の剛性の向上に繋がる。
【0016】
この発明において、前記リンク機構を3組有し、これら3組のリンク機構のすべてに、前記アクチュエータおよび前記減速機構を設けると良い。
リンク作動装置を構成する最低限のリンク機構の数は3組であるため、リンク機構を3組とすることで、リンク作動装置全体がコンパクトな構成となる。また、3組のリンク機構のすべてにアクチュエータおよび減速機構を設けることで、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブがどのような姿勢をとっていてもバランス良く駆動できる。つまり、駆動力のバランスが良い。これにより、各アクチュエータを小型化できる。また、3組のリンク機構のすべてにアクチュエータおよび減速機構を設けることで、リンク機構部や減速機構のガタを詰めるように制御することが可能となり、先端側のリンクハブの位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置自体の高剛性化を実現できる。
【0017】
この発明において、前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブにおける前記各リンク機構の球面リンク中心間に力を発生させる予圧機構を設けると良い。
基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブの球面リンク中心間に予圧を与えることで、リンク作動装置のガタが詰まるため、先端側のリンクハブの位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置自体の高剛性化を実現できる。
【0018】
前記予圧機構は、例えば、両端部が球面形状に形成された棒状部材を有し、この棒状部材の球面形状の両端部を、前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに形成されて前記各リンク機構の球面リンク中心を中心とする球面形状の凹部に摺動自在に嵌らせたものとすることができる。あるいは、前記予圧機構は、前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブを、それぞれの前記各リンク機構の球面リンク中心を結ぶ直線状に配置した弾性部材により連結したものとしても良い。
いずれであっても、基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブにおける各リンク機構の球面リンク中心間に力を発生させることができ、先端側のリンクハブの位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置自体の高剛性化を実現できる。
【0019】
この発明において、前記基端側のリンクハブに対する前記基端側の端部リンク部材の回転角をβn、前記基端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸と、前記先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸とが成す角度をγ、基準となる基端側の端部リンク部材に対する各基端側の端部リンク部材の円周方向の離間角をδn、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度をθ、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度をφとした場合に、
cos(θ/2)sinβn−sin(θ/2)sin(φ+δn)cosβn+sin(γ/2)=0
で表される式を逆変換することで、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を制御するのが良い。
基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢を指定すると、上記式より、各基端側の端部リンク部材の回転角を計算できる。その計算値に基づき、各基端側の端部リンク部材を駆動するアクチュエータに出力することにより、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの姿勢を制御できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であるものにおいて、前記3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組に、前記基端側の端部リンク部材を回動させて前記基端側のリンクハブに対して前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータと、このアクチュエータの動作量を前記基端側の端部リンク部材に減速して伝達する減速機構とを設け、前記減速機構は、前記アクチュエータの駆動で回転させられる小歯車と、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸を回転中心として回転自在に前記基端側の端部リンク部材に設けられた大歯車との噛み合いからなる歯車式の減速部を有し、前記大歯車は、前記小歯車よりもピッチ円半径が大きく、かつそのピッチ円半径が、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸の軸方向中心点から、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶軸の軸方向中心点を前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸に直交してその軸方向中心点を通る平面に投影した点までの距離である基端側の端部リンク部材のアーム長の1/2以上であるため、コンパクトでありながら、可動部の可動範囲が広く、かつ姿勢調整精度が高く、しかも剛性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態にかかるリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
【図2】同リンク作動装置の異なる状態を示す一部を省略した正面図である。
【図3】同リンク作動装置の斜視図である。
【図4】同リンク作動装置のリンク機構の一つを直線で表現した図である。
【図5】同リンク作動装置の基端側のリンクハブ、基端側の端部リンク部材、および中央リンク部材の断面図である。
【図6】図5の部分拡大図である。
【図7】この発明の異なる実施形態にかかるリンク作動装置の基端側のリンクハブ、基端側の端部リンク部材、および中央リンク部材の断面図である。
【図8】この発明のさらに異なる実施形態にかかるリンク作動装置の基端側のリンクハブ、基端側の端部リンク部材、および中央リンク部材の断面図である。
【図9】この発明のさらに異なる実施形態にかかるリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
【図10】同リンク作動装置の部分断面図である。
【図11】同リンク作動装置の構造体の拡大図である。
【図12】この発明のさらに異なる実施形態にかかるリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
【図13】この発明のさらに異なる実施形態にかかるリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を図1〜図6と共に説明する。図1および図2に示すように、このリンク作動装置1は、基台2に対して、リンク機構部3を介して、医療用器具等が取付けられる先端取付部材4を姿勢変更可能に連結したものである。リンク機構部3は、基台2にスペーサ5を介して固定された基端側のリンクハブ14と、先端取付部材4に固定された先端側のリンクハブ15と、これら基端側のリンクハブ14と先端側のリンクハブ15とを連結する3組のリンク機構11,12,13とを有する。なお、図1および図2では、1組のリンク機構11のみを表示している。
【0023】
図3は、リンク機構部3の斜視図である。3組のリンク機構11,12,13(以下、「11〜13」と表記する)のそれぞれは、幾何学的に同一形状をなす。すなわち、各リンク機構11〜13は、後述の各リンク部材11a〜13a,11b〜13b,11c〜13cを直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材11b〜13bの中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状である。
【0024】
各リンク機構11,12,13は、基端側の端部リンク部材11a,12a,13a(以下、「11a〜13a」と表記する)、中央リンク部材11b,12b,13b(以下、「11b〜13b」と表記する)、および先端側の端部リンク部材11c,12c,13c(以下、「11c〜13c」と表記する)で構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cはL字状をなし、基端がそれぞれの基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15に回転自在に連結されている。中央リンク部材11b〜13bは、両端に基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cの先端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0025】
基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cは球面リンク構造で、3組のリンク機構11〜13における球面リンク中心PA,PC(図1、図2)は一致しており、また、その球面リンク中心PA,PCからの距離も同じである。端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bとの連結部となる回転対偶軸は、ある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。
【0026】
つまり、3組のリンク機構11〜13は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、各リンク部材11a〜13a,11b〜13b,11c〜13cを直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材11b〜13bの中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。図4は、一つのリンク機構11を直線で表現した図である。
【0027】
この実施形態のリンク機構11〜13は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ14および基端側の端部リンク部材11a〜13aと、先端側のリンクハブ15および先端側の端部リンク部材11c〜13cとの位置関係が、中央リンク部材11b〜13bの中心線Aに対して回転対称となる位置構成になっている。図1は、基端側のリンクハブ14の中心軸Bと先端側のリンクハブ15の中心軸Cとが同一線上にある状態を示し、図2は、基端側のリンクハブ14の中心軸Bに対して先端側のリンクハブ15の中心軸Cが所定の作動角をとった状態を示す。各リンク機構11〜13の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PC間の距離Dは変化しない。
【0028】
基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15は六角柱状で、外周面を構成する6つの側面16のうちの1つ置きに離れた3つの側面16に、基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cがそれぞれ回転自在に連結されている。
【0029】
図5は基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a〜13aの連結部を示す断面図、図6はその部分拡大図である。基端側のリンクハブ14の側面16(図3)から軸部18(図6)が突出し、この軸部18に複列の軸受17(図6)の内輪(図示せず)が外嵌し、基端側の端部リンク部材11a〜13aの基端側のリンクハブ側の端部に軸受17の外輪(図示せず)が内嵌している。つまり、内輪は基端側のリンクハブ14に固定され、外輪が基端側の端部リンク部材11a〜13aと共に回転する構造である。軸受17は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット19(図6)による締付けでもって所定の予圧量を付与して固定されている。軸受17としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。先端側のリンクハブ15と先端側の端部リンク部材11c〜13cの連結部も、同様の構造である。
【0030】
また、基端側の端部リンク部材11a〜13aと中央リンク部材11b〜13bの連結部も、複列の軸受20を介して互いに回転自在に連結されている。すなわち、基端側の端部リンク部材11a〜13aに軸受20の外輪(図示せず)が内嵌し、中央リンク部材11b〜13bに設けた軸部21に軸受20の内輪(図示せず)が外嵌している。なお、図5および図6では、基端側の端部リンク部材11aと中央リンク部材11bの連結部についてのみ図示されている。軸受20は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット22による締付けでもって所定の予圧量を付与して固定されている。軸受20としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。先端側の端部リンク部材11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bの連結部も、同様の構造である。
【0031】
図3に示す前記リンク機構11〜13において、基端側および先端側のリンクハブ14,15の軸部18の角度、長さ、および端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cの幾何学的形状が基端側と先端側で等しく、また、中央リンク部材11b〜13bについても基端側と先端側で形状が等しいとき、中央リンク部材11b〜13bの対称面に対して中央リンク部材11b〜13bと、基端側および先端側のリンクハブ14,15と連結される端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cとの角度位置関係を基端側と先端側で同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ14および基端側の端部リンク部材11a〜13aと、先端側のリンクハブ15および先端側の端部リンク部材11c〜13cとは同じに動く。例えば、基端側および先端側のリンクハブ14,15にそれぞれ中心軸B,Cと同軸に回転軸を設け、基端側から先端側へ回転伝達を行う場合、基端側と先端側は同じ回転角になって等速で回転する等速自在継手となる。この等速回転するときの中央リンク部材11b〜13bの対称面を等速二等分面という。
【0032】
このため、基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15を共有する同じ幾何学形状のリンク機構11〜13を円周上に複数配置させることにより、複数のリンク機構11〜13が矛盾なく動ける位置として中央リンク部材11b〜13bが等速二等分面上のみの動きに限定され、これにより基端側と先端側は任意の作動角をとっても等速回転が得られる。
【0033】
各リンク機構11〜13における4つの回転対偶の回転部、つまり、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a〜13aとの連結部分、先端側のリンクハブ15と先端側の端部リンク部材11c〜13cとの連結部分、および基端側および先端側の端部リンク部材11a〜13a,11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bとの2つの連結部分を軸受構造とすることにより、その連結部分での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0034】
このリンク機構部3の構成によれば、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブ14の中心軸Bと先端側のリンクハブ15の中心軸Cの折れ角θの最大値(最大折れ角)を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の旋回角φを0°〜360°の範囲で設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ14の中心軸Bに対して先端側のリンクハブ15の中心軸Cが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ14の中心軸Bに対して先端側のリンクハブ15の中心軸Cが傾斜した水平角度のことである。
【0035】
前記3組以上のリンク機構11〜13のうちの少なくとも2組に、基端側の端部リンク部材11a〜13aを回動させて基端側のリンクハブ14に対して先端側のリンクハブ15の姿勢を任意に変更させるアクチュエータ30と、このアクチュエータ30の動作量を基端側の端部リンク部材11a〜13aに減速して伝達する減速機構31とが設けられている。図示例では、3組以上のリンク機構11〜13のすべてに、アクチュエータ30および減速機構31が設けられている。以下、図5および図6と共に、リンク機構11に設けられたアクチュエータ30および減速機構31について説明するが、リンク機構12,13に設けられたものについても同じ構成である。
【0036】
アクチュエータ30はロータリアクチュエータ、より詳しくは減速機30a付きのサーボモータであって、モータ固定部材32により基台2に固定されている。減速機構31は、アクチュエータ30の減速機30aと、歯車式の減速部33とでなる。
【0037】
歯車式の減速部33は、アクチュエータ30の出力軸30bにカップリング35を介して回転伝達可能に連結された小歯車36と、基端側の端部リンク部材11aに固定され前記小歯車36と噛み合う大歯車37とで構成されている。図示例では、小歯車36および大歯車37は平歯車であり、大歯車37は、扇形の周面にのみ歯が形成された扇形歯車である。大歯車37は小歯車36よりもピッチ円半径が大きく、アクチュエータ30の出力軸30bの回転が基端側の端部リンク部材11aへ、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11aの回転対偶軸O1回りの回転に減速して伝達される。その減速比は10以上とされている。
【0038】
大歯車37のピッチ円半径は、基端側の端部リンク部材11aのアーム長Lの1/2以上としてある。前記アーム長Lは、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11aの回転対偶軸O1の軸方向中心点P1から、基端側の端部リンク部材11aと中央リンク部材11bの回転対偶軸O2の軸方向中心点P2を基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11aの回転対偶軸O1に直交してその軸方向中心点P1を通る平面に投影した点P3までの距離である。この実施形態の場合、大歯車37のピッチ円半径が前記アーム長L以上である。そのため、高い減速比を得るのに有利である。
【0039】
小歯車36は、大歯車37と噛み合う歯部36aの両側に突出する軸部36bを有し、これら両軸部36bが、基台2に設置された回転支持部材39に設けられた複列の軸受40によりそれぞれ回転自在に支持されている。軸受40は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。複列の軸受40の各外輪(図示せず)間にはシム(図示せず)を設け、軸部36bに螺合したナット41を締め付けることにより、軸受40に予圧を付与する構成としてある。軸受40の外輪は、回転支持部材39に圧入されている。
【0040】
大歯車37は、基端側の端部リンク部材11aと別部材であり、基端側の端部リンク部材11aに対してボルト等の結合具42により着脱可能に取付けられている。
【0041】
アクチュエータ30の回転軸心O3および小歯車36の回転軸心O4は同軸上に位置する。これら回転軸心O3,O4は、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11aの回転対偶軸O1と平行で、かつ基台2からの高さが同じとされている。
【0042】
図5に示すように、各アクチュエータ30は制御装置50で制御される。制御手段50は、コンピュータによる数値制御式のものであり、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の姿勢を設定する姿勢設定手段51と、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の姿勢を検出する姿勢検出手段52とからの信号に基づき、各アクチュエータ30に出力指令を与える。姿勢設定手段51は、例えば折れ角θ(図3)および旋回角φ(図3)を規定することで、先端側のリンクハブ15の姿勢を設定する。姿勢検出手段52は、例えばエンコーダ(図示せず)等により基端側の端部リンク部材11a〜13aの回転角βn(図3におけるβ1,β2)を検出する。あるいはアクチュエータ30のエンコーダ(図示せず)を先端側のリンクハブ15の姿勢検出に用いても良い。折れ角θおよび旋回角φと、各回転角βnとは相互関係があり、一方の値から他方の値を導くことができる。
【0043】
基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブ15を姿勢変更する場合、姿勢設定手段51により設定された先端側のリンクハブ15の姿勢に応じて、基端側の端部リンク部材11a〜13aの回転角βnの制御目標値を計算する。上記回転角βnは、アクチュエータ30の動作位置を意味する。回転角βnの計算は、下記の式1を逆変換することで行われる。逆変換とは、折れ角θおよび旋回角φから基端側の端部リンク部材11a〜13aの回転角βnを算出する変換のことである。
cos(θ/2)sinβn−sin(θ/2)sin(φ+δn)cosβn+sin(γ/2)=0
…(式1)
ここで、γ(図3)は、基端側の端部リンク部材11a〜13aと中央リンク部材11b〜13bの回転対偶軸O2と、先端側の端部リンク部材11c〜13cと中央リンク部材11b〜13bの回転対偶軸O5とが成す角度である。δn(図3におけるδ1,δ2,δ3)は、基準となる基端側の端部リンク部材11aに対する各基端側の端部リンク部材11a〜13aの円周方向の離間角である。
【0044】
回転角βnの制御目標値を計算したなら、姿勢検出手段52の信号を利用したフィードバック制御により、実際の回転角βnが制御目標値となるように各アクチュエータ30の出力を制御する。それにより、すべてのリンク機構11〜13の基端側の端部リンク部材11a〜13aが定められた回転角βnだけ回転し、先端側のリンクハブ15が姿勢設定手段51により設定された姿勢に変更される。
【0045】
このリンク作動装置1は、3組のリンク機構11〜13を有する。リンク作動装置を構成する最低限のリンク機構の数は3組であるため、リンク機構を3組とすることで、リンク作動装置全体がコンパクトな構成となっている。リンク作動装置1は、基端側のリンクハブ14に対し先端側のリンクハブ15が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構として構成されており、コンパクトでありながら、先端側のリンクハブ15の可動範囲を広くとれる。そのため、先端取付部材4に取付けられる医療用器具等の操作性が良い。
【0046】
3組のリンク機構11〜13のすべてにアクチュエータ30および減速機構31を設けたことにより、基端側のリンクハブ14に対して先端側のリンクハブ15がどのような姿勢をとっていてもバランス良く駆動できる。つまり、駆動力のバランスが良い。これにより、各アクチュエータ30を小型化できる。また、3組のリンク機構11〜13のすべてにアクチュエータ30および減速機構31を設けることで、リンク機構部3や減速機構31のガタを詰めるように制御することが可能となり、先端側のリンクハブ15の位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置1自体の高剛性化を実現できる。
【0047】
減速機構31の歯車式の減速部33は、小歯車36と大歯車37の組合せからなり、10以上の高い減速比が得られる。減速比が高いと、エンコーダ等による位置決め分解能が高くなるため、先端側のリンクハブ15の位置決め分解能が向上する。また、低出力のアクチュエータ30を使用することができる。この実施形態では減速機30a付きのアクチュエータ30を使用しているが、歯車式の減速部33の減速比が高ければ、減速機無しのアクチュエータ30を使用することも可能となり、アクチュエータ30を小型化できる。
【0048】
大歯車37のピッチ円半径を、基端側の端部リンク部材11a〜13aのアーム長Lの1/2以上としたことで、先端負荷による基端側の端部リンク部材11a〜13aの曲げモーメントが小さくなる。そのため、リンク作動装置1全体の剛性を必要以上に高くしなくて済むと共に、基端側の端部リンク部材11a〜13aの軽量化を図れる。例えば、基端側の端部リンク部材11a〜13aをステンレス鋼(SUS)からアルミに変更できる。また、大歯車37のピッチ円半径が比較的大きいため、大歯車37の歯部の面圧が減少し、リンク作動装置1全体の剛性が高くなる。
また、大歯車37のピッチ円半径が前記アーム長の1/2以上であると、大歯車37が、基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a〜13aの回転対偶部に設置する軸受17の外径よりも十分大きな径となるため、大歯車37の歯部と軸受17との間にスペースができ、大歯車17の設置が容易である。
【0049】
特にこの実施形態の場合、大歯車37のピッチ円半径が前記アーム長L以上であるため、大歯車37のピッチ円半径がさらに大きくなり、前記作用・効果がより一層顕著に現れる。加えて、小歯車36をリンク機構11〜13よりも外径側に設置することが可能となる。その結果、小歯車36の設置スペースを容易に確保することができ、設計の自由度が増す。また、小歯車36と他の部材との干渉が起こり難くなり、リンク作動装置1の可動範囲が広くなる。
【0050】
小歯車36および大歯車37は、それぞれ平歯車であるため、製作が容易であり、しかも回転の伝達効率が高い。小歯車36は軸方向両側で軸受40により支持されているため、小歯車36の支持剛性が高い。それにより、先端負荷による基端側の端部リンク部材11a〜13aの角度保持剛性が高くなり、リンク作動装置1の剛性や位置決め精度の向上に繋がる。また、アクチュエータ30の回転軸心O3、小歯車36の回転軸心O4、および基端側のリンクハブ14と基端側の端部リンク部材11a〜13aの回転対偶軸O1とが同一平面上にあるため、全体的なバランスが良く、組立性が良い。
【0051】
大歯車37は、基端側の端部リンク部材11a〜13aに対して着脱自在であるため、歯車式の減速部33の減速比や、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の作動範囲等の仕様の変更が容易となり、リンク作動装置1の量産性が向上する。つまり、同じリンク作動装置1を、大歯車37を変えるだけで、様々な用途に適用することが可能である。また、メンテナンス性が良い。例えば、歯車式の減速部33に障害が生じた場合に、同減速部33のみを交換するだけで対処可能である。
【0052】
図7に示す異なる実施形態のように、大歯車37は、基端側の端部リンク部材11a〜13aと一体の部材であっても良い。この場合、部品点数を減らすことができ、組立性が向上する。また、基端側の端部リンク部材11a〜13aと大歯車37との滑りが無くなるため、リンク作動装置1の剛性および位置決め精度が向上する。
【0053】
また、図8に示すさらに異なる実施形態のように、アクチュエータ30を小歯車36に対して反転した位置に設置しても良い。アクチュエータ30の位置以外は、図1〜図6の実施形態と同じである。この実施形態の場合、中央リンク部材11b〜13b等がアクチュエータ30やモータ固定部材32等と干渉して作動範囲が狭くなる場合もあるが、全体的にコンパクトな構成となる。
【0054】
図9ないし図11は、この発明の異なる実施形態を示す。図9に示すように、このリンク作動装置1は、図1ないし図6に示す前記実施形態の構成に加えて、基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15における各リンク機構11〜13の球面リンク中心PA,PC間に力を発生させる予圧機構60を設けたものである。予圧機構60が設けられていること以外は、前記実施形態と同じ構成である。
【0055】
予圧機構60は、図11のように両端部61aが球面形状に形成された棒状部材61を有する。基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15には、図10に示すように、上記棒状部材61の球面形状の両端部61aがそれぞれ摺動自在に嵌る凹部62が設けられている。図10は基端側のリンクハブ14の凹部62を示すが、先端側のリンクハブ15の凹部62も同様である。凹部62は、基端側のリンクハブ14(先端側のリンクハブ15)における先端側のリンクハブ15(基端側のリンクハブ14)と対向する側の端面に開口しており、円すい状に先狭まりとなる導入部62aと、この導入部62aの最奥部に形成された球面状部62bとでなる。球面状部62bの中心は、前記基端側(先端側)の球面リンク中心PA(PC)と一致する。棒状部材61の両端部61aは、上記球面状部62bに摺動自在に嵌る球体状である。
【0056】
前記導入部62aの内周面の母線Eと基端側のリンクハブ14(先端側のリンクハブ15)の中心線B(C)とがなす角度αは、基端側のリンクハブ14の中心線Bと先端側のリンクハブ15の中心線Cとがなす角度である折れ角θ(図3)の最大折れ角をθmaxとした場合、α=θmax/2としてある。
【0057】
図11に示すように、棒状部材61は、基端側のリンクハブ14の凹部62に嵌る先端部61aを有する基端側部分63と、先端側のリンクハブ15の凹部62に嵌る先端部61aを有する先端側部分64とでなり、基端側構造体部分63の雌ねじ部63aと先端側構造体部分64の雄ねじ部64aとが螺合している。これら雄ねじ部64aと雌ねじ部63aのねじ込み量を変えることで、基端側構造体部分63および先端側構造体部分64の各先端部61aの中心間距離Mが変更される。基端側構造体部分63に隣接して先端側構造体部分64の雄ねじ部64aと螺合するナット65が設けられており、このナット65により、雄ねじ部64aと雌ねじ部63aの螺合の緩みを防止している。なお、基端側構造体部分63に雄ねじ部(図示せず)を設け、先端側構造体部分64に雌ねじ部(図示せず)を設けた構成としてもよい。
【0058】
予圧機構60により、基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15の球面リンク中心PA,PC間に予圧を与えると、リンク作動装置1全体に予圧がかかった状態となり、リンク機構部3のガタが詰まる。そのため、先端側のリンクハブ15の位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置1自体の高剛性化を実現できる。棒状部材61の両端部61aは球面形状であり、かつ基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15の各凹部62における前記両端部61aが嵌る部位が球面状部62bであるため、基端側のリンクハブ14に対する先端側のリンクハブ15の姿勢が変わっても、棒状部材61の両端部61aが常に球面リンク中心PA(PC)に位置する状態に維持され、リンク作動装置1の動作に影響を与えない。予圧機構60の棒状部材61は、両端部61aの中心間距離Mを変更可能であるため、上記予圧量を容易に調整できる。
【0059】
予圧機構60は、図12に示すように、基端側のリンクハブ14および先端側のリンクハブ15を、それぞれの各リンク機構11〜13の球面リンク中心PA,PCを結ぶ直線状に配置した弾性部材65により連結したものとしても良い。この場合も、前記同様に、先端側のリンクハブ15の位置決め精度の向上、およびリンク作動装置1自体の高剛性化を実現できる。
【0060】
図13は、減速機構の構成が異なる実施形態を示す。このリンク作動装置1の減速機構31も、アクチュエータ30の減速機30aと歯車式の減速部33とでなるが、この歯車式の減速部33は、小歯車36がウォーム、大歯車37がウォームホイールで構成されている。この場合も、大歯車37のピッチ円半径は、基端側の端部リンク部材11a〜13aのアーム長Lの1/2以上としている。これにより、小歯車36および大歯車37が平歯車である場合と同様の作用・効果が得られる。ただし、アーム長Lが1以上であると、減速比が大きくなり過ぎて、駆動速度が低下することがある。
【0061】
ウォームからなる小歯車36は、アクチュエータ30の出力軸30bにカップリング35を介して回転伝達可能に連結されている。小歯車36は、ウォームホイールからなる大歯車37と噛み合う歯部36aの両側に突出する軸部36bを有し、これら両軸部36bが、複列の軸受40によりそれぞれ回転自在に支持されている。複列の軸受40の各外輪(図示せず)間にはシム(図示せず)を設け、軸部36bに螺合したナット41を締め付けることにより、軸受40に予圧を付与する構成としてある。軸受40の外輪は、回転支持部材39に圧入されている。
【0062】
大歯車37は、基端側の端部リンク部材11a〜13aと別部材であり、基端側の端部リンク部材11a〜13aに対してボルト等の結合具42により着脱可能に取付けられている。
【0063】
アクチュエータ30の回転軸心O3および小歯車36の回転軸心O4は同軸上に位置する。これら回転軸心O3,O4は、基台2の天板2aに対し垂直である。アクチュエータ30は天板2aの下方に配置され、基台2に固定した支持部材43に対して、モータ固定部材32により固定されている。小歯車36は天板2aの上方に配置されており、前記支持部材43に固定された上下一対の回転支持部材39に、小歯車36を回転自在に支持する前記軸受40が設けられている。ウォームからなる小歯車36とウォームホイールからなる大歯車37とが噛み合えば、アクチュエータ30の回転軸心O3および小歯車36の回転軸心O4を別の方向に向けて設置しても良い。
【0064】
このリンク作動装置1も、前記実施形態と同様の作用・効果が得られる。さらに、小歯車36をウォーム、大歯車37をウォームホイールとしたことで、小歯車36および大歯車37を容易に構成でき、大きな減速比を得られる。
【0065】
上記各実施形態では、3組のリンク機構11〜13のすべてのアクチュータ30および減速機構31を設けたが、2組のリンク機構にだけアクチュータ30および減速機構31を設けた構成としても、基端側のリンクハブ14に対して先端側のリンクハブ15を姿勢変更することができる。ただし、3組すべてに設けた場合に比べて、減速機構30等にガタが生じるおそれがある。リンク機構の数は3組に限らず、4組以上設けても良い。
【0066】
また、上記各実施形態では、アクチュエータ30の回転軸心O3と小歯車36の回転軸心O4とを同軸上に位置させているが、アクチュエータ30の回転を小歯車36に伝達することが可能であれば、アクチュエータ30および小歯車36の配置については特に規定しない。
【符号の説明】
【0067】
1…リンク作動装置
11,12,13…リンク機構
11a,12a,13a…基端側の端部リンク部材
11b,12b,13b…中央リンク部材
11c,12c,13c…先端側の端部リンク部材
14…基端側のリンクハブ
15…先端側のリンクハブ
30…アクチュエータ
31…減速機構
33…歯車式の減速部
36…小歯車
36a…歯部
36b…軸部
37…大歯車
40…軸受
60…予圧機構
61…棒状部材
62…凹部
65…弾性部材
O1…基端側のリンクハブと基端側の端部リンク部材の回転対偶軸
O3…アクチュエータの回転軸心
O4…小歯車の回転軸心
PA…基端側のリンクハブの球面リンク中心
PC…先端側のリンクハブの球面リンク中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であるリンク作動装置において、
前記3組以上のリンク機構のうちの少なくとも2組に、前記基端側の端部リンク部材を回動させて前記基端側のリンクハブに対して前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータと、このアクチュエータの動作量を前記基端側の端部リンク部材に減速して伝達する減速機構とを設け、
前記減速機構は、前記アクチュエータの駆動で回転させられる小歯車と、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸を回転中心として回転自在に前記基端側の端部リンク部材に設けられた大歯車との噛み合いからなる歯車式の減速部を有し、前記大歯車は、前記小歯車よりもピッチ円半径が大きく、かつそのピッチ円半径が、前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸の軸方向中心点から、前記基端側の端部リンク部材と前記中央リンク部材の回転対偶軸の軸方向中心点を前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸に直交してその軸方向中心点を通る平面に投影した点までの距離である基端側の端部リンク部材のアーム長の1/2以上であることを特徴とするリンク作動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記大歯車のピッチ円半径が、前記基端側の端部リンク部材のアーム長以上であるリンク作動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記大歯車は、前記基端側の端部リンク部材と別部材であり、前記基端側の端部リンク部材に対して着脱自在としたリンク作動装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記大歯車は、前記基端側の端部リンク部材と一体の部材としたリンク作動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれ1項において、前記歯車式の減速部の減速比を10以上としたリンク作動装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記小歯車は、前記大歯車と噛み合う歯部と、この歯部から軸方向の両側に延びる一対の軸部とを有し、これら一対の軸部を軸受で回転自在に支持したリンク作動装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記小歯車および前記大歯車は、それぞれ平歯車としたリンク作動装置。
【請求項8】
請求項7において、前記アクチュエータはロータリアクチュエータであり、このロータリアクチュエータの回転軸心および前記小歯車の回転軸心は同軸上にあり、これらの回転軸心を、前記基端側のリンクハブの中心軸に垂直で、かつ前記基端側のリンクハブと前記基端側の端部リンク部材の回転対偶軸を通る平面上に配置したリンク作動装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記小歯車はウォームであり、前記大歯車はウォームホイールであるリンク作動装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記リンク機構を3組有し、これら3組のリンク機構のすべてに、前記アクチュエータおよび前記減速機構を設けたリンク作動装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブにおける前記各リンク機構の球面リンク中心間に力を発生させる予圧機構を設けたリンク作動装置。
【請求項12】
請求項11において、前記予圧機構は、両端部が球面形状に形成された棒状部材を有し、この棒状部材の球面形状の両端部を、前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに形成されて前記各リンク機構の球面リンク中心を中心とする球面形状の凹部に摺動自在に嵌らせたものであるリンク作動装置。
【請求項13】
請求項11において、前記予圧機構は、前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブを、それぞれの前記各リンク機構の球面リンク中心を結ぶ直線状に配置した弾性部材により連結したものであるリンク作動装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項において、前記基端側のリンクハブに対する前記基端側の端部リンク部材の回転角をβn、前記基端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸と、前記先端側の端部リンク部材に回転自在に連結された中央リンク部材の連結端軸とが成す角度をγ、基準となる基端側の端部リンク部材に対する各基端側の端部リンク部材の円周方向の離間角をδn、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した垂直角度をθ、前記基端側のリンクハブの中心軸に対して前記先端側のリンクハブの中心軸が傾斜した水平角度をφとした場合に、
cos(θ/2)sinβn−sin(θ/2)sin(φ+δn)cosβn+sin(γ/2)=0
で表される式を逆変換することで、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を制御するリンク作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−68280(P2013−68280A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207724(P2011−207724)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】