説明

リンク機構

【課題】バネの塑性変形を低減することができるリンク機構の提供にある。
【解決手段】一対のリンクとしてのリンク部材11、12は一端部側で回転軸33を中心に回動可能に連結され、リンク部材11、12間には該リンクに対して弾性力を付与し回動バネに相当する同一形状をした2個のねじりコイルバネ14、15が、間に可動バネ受け16を介して配設方向を揃えて直列に配置されている。そして、リンク部材11の他端部側は駆動軸17を介してモータ20と連結されると共に、リンク部材12の他端部側は回転軸21を介してロボットアームの被駆動部と接続されたリンク部材22と連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バネを用いたリンク機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示された従来技術においては、可動範囲が制限されている可動体、例えばロボットハンド、特に多指ロボットハンドの指の駆動系に適用しうるリンク式無段変速機が開示されている。リンク式無段変速機は、入力リンク部材と出力リンク部材とを備え、入力リンク部材は第1及び第2リンク要素と、第1及び第2リンク要素を相対回動可能に連結する回転軸と、回転軸に装着され第1及び第2リンク要素間の角度を大きくする方向に付勢するねじりコイルバネとから構成されている。
出力リンク部材に負荷がかからない時には、入力リンク部材の第1及び第2リンク要素間のリンク角度がねじりコイルバネの弾性力によって大きく保たれ、高速に動作させることができる。また、出力リンク部材に負荷がかかると、その負荷に感応して第1及び第2リンク要素がねじりコイルバネのバネ弾性力に抗してリンク角度を小さくする方向に駆動され、出力リンク部材に伝達される出力トルクが増大するとしている。
【0003】
このように、相対回動可能に連結された一対のリンクに用いられるねじりコイルバネの挙動について、図6で示す模式図に基づいて説明を行う。図6(a)に示すように、ねじりコイルバネ54はコイル部と2つの腕部を有し、コイル部は回転軸53に装着され、2つの腕部はリンク51、52に固定されたバネ押え51a、52aとそれぞれ当接した状態にある。バネ押え51a、52aを介してねじりコイルバネ54のねじりモーメントがリンク51、52に伝達される。図6(a)は、一対のリンク51、52を相対回動可能に連結する回転軸53に装着されたねじりコイルバネ54がバネ弾性力に抗する負荷を受けていない初期状態を示しており、このときリンク51、52間のリンク角度は最大となっている。なお、この状態におけるリンク51、52間のリンク角度及びねじりコイルバネ54の2つの腕部間のバネ角度を共に90°とする。次に、図6(b)で示すように、リンク51、52間のリンク角度を小さくする方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ54はバネ弾性力に抗してバネ角度が小さくなる方向に変形する。次に、図6(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク51、52間のリンク角度は最小(=0°)となると共に、ねじりコイルバネ54はさらに変形しバネ角度も最小(=0°)となる。このように、リンクの変位角度が90°に設定されているとき、ねじりコイルバネ54の変位角度は90°となっている。このように、従来技術においては、リンクの変位角度とバネの変位角度とは等しく、共に90°となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−90562号公報(第4〜6頁、図1〜図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構造を有する従来技術においては、ねじりコイルバネ54の変位角度が90°と大きいため、図6(a)〜図6(c)に至る動作が繰り返し行われた場合には、図6(d)に示すように、負荷から解放されてもリンク51、52が元のリンク角度90°の状態に復帰しない問題が発生する恐れがある。これは、ねじりコイルバネ54の変位角度が90°と大きいために塑性変形を起し、負荷を取り去っても元のバネ角度90°の状態に戻らないためである。このため、自然状態におけるねじりコイルバネ54のバネ角度は90°以下となり、リンク機構にγだけ遊びが発生しリンクの変位角度を90°に維持できない問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、バネの塑性変形を低減することができるリンク機構の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、一対のリンクと、前記一対のリンクを相対回動可能に連結する連結部材と、前記一対のリンクのうち少なくとも一方のリンクを前記一対のリンクの回動方向に付勢する回動バネと、を備えたリンク機構において、前記回動バネが複数個、前記回動バネの付勢方向に配設方向を揃えて直列に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、回動バネの付勢力に抗して各リンクをリンク角度が小さくなる方向に回動させたときには、回動バネはバネ角度が小さくなる方向に変位する。なお、回動バネとは、例えばねじりコイルバネのように、一対の腕部を備え、一方の腕部が他方の腕部に対して相対的に回動変位するバネを指している。ところで、リンク間には回動バネが複数個、配設方向を揃えて直列に配置されているので、回動バネ1個当りのバネの変位量を小さくすることができる。なお、直列配置とは、複数の回動バネが一方のリンクから他方のリンクに向かって回動バネの回動変位方向に一列状に並ぶように配置されることを指す。また、配設方向を揃えてとは、複数の回動バネがリンクの回動方向と同じ方向に回動変位するよう配設された状態を指しており、例えば、図5(a)のような配設状態を指し、図5(b)のような配設状態は含まれない。
従って、1個のバネを用いる従来技術と比較して、バネの変位量を分担し塑性変形を低減することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のリンク機構において、前記複数個の回動バネは、間に可動バネ受けを介して直列に配置され、前記可動バネ受けは前記リンクの回動方向と同じ方向に回動可能に配置されていることを特徴とする。
請求項2記載の発明によれば、可動バネ受けは、直列に配置された複数個の回動バネの間に回動バネに対して直列に配置されており、リンクの回動方向と同じ方向に回動可能に配置されているので、隣接配置された回動バネに可動バネ受けを介してバネ荷重を正確に伝達可能である。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のリンク機構において、前記直列に配置された回動バネは、並列して複数設けられていることを特徴とする。
請求項3記載の発明によれば、回動バネの線径や板厚等を変更してばね定数を大きくすることなく、バネ強度を向上させることが可能である。なお、並列配置とは、複数の回動バネの回転中心軸が同軸上に並ぶように、複数の回動バネがリンク間に平行に配置された状態を指している。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネが、ねじりコイルバネにより形成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明によれば、回動バネがねじりコイルバネなので、取り扱いが簡単であり、線径やコイル巻数やコイル径などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能である。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記回動バネが、板バネにより形成されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明によれば、回動バネが板バネなので、取り扱いが簡単であり、板厚などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能である。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリンク機構において、前記一対のリンクの一方がロボットアームの回転駆動源に連結されていると共に、前記一対のリンクの他方が前記ロボットアームの被駆動部に連結されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明によれば、一対のリンクの一方に連結されたロボットアームの回転駆動源を回転駆動することにより、リンク間のリンク角度を可動範囲内で変位させて、一対のリンクの他方に連結されたロボットアームの被駆動部に加わる駆動力を調整させることが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リンク間に回動バネを複数個、直列に配置することにより、1個当りのバネの変位量を小さくして、バネの塑性変形を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係るリンク機構の要部構成を示す正面図である。
【図2】第1の実施形態に係るリンク機構の要部構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係るリンク機構の作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない自然状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す、(d)負荷から解放され元の状態に復帰したときを示す。
【図4】第2の実施形態に係るリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない自然状態を示す、(b)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す。
【図5】本発明における回動バネの配設状態を説明するための模式図である。(a)本発明に含まれる配設状態を示す、(b)本発明に含まれない配設状態を示す。
【図6】従来技術におけるリンク機構の要部構成及び作用説明用の模式図である。(a)負荷が作用しない自然状態を示す、(b)負荷が作用し変位した時の状態を示す、(c)負荷が作用し最大に変位した時の状態を示す、(d)負荷から解放され元の状態に復帰したときを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るリンク機構を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、ロボットアームのリンク機構10は、一対のリンクとして2つのリンク部材11、12を備え、リンク部材11、12は一端部側で回転軸13によって互いに回動可能に連結されている。なお、回転軸13は、一対のリンクを相対回動可能に連結する連結部材に相当する。
【0017】
リンク部材11、12は側面が略コの字型の金属製のブロック体に形成され、該ブロック体の上部位置及び下部位置には、バネを収容するためのV字型にくりぬかれたバネ収容部11a、12aがそれぞれ形成されている。(図2参照)
バネ収容部11a、12aには、同一形状をしたねじりコイルバネ14、15がそれぞれ収容されている。ねじりコイルバネ14、15は、一対のリンクを一対のリンクの回動方向に付勢する回動バネに相当し、一方の腕部が他方の腕部に対して回動変位するバネである。
【0018】
ねじりコイルバネ14、15はコイル部14a、15aと2つの腕部14b、14c及び15b、15cを有し、一方の腕部14b、15bはバネ収容部11a、12aの側壁にそれぞれ当接するように配置されており、回転軸13側の他方の腕部14c、15cの先端部間には、回転軸13に連結され、回転軸13を中心に回動可能に配設された可動バネ受け16が設けられている。
ねじりコイルバネ14、15の2つの腕部14b、14c間及び15b、15c間の角度をバネ角度αとすれば、バネ角度αは負荷のかからない初期状態で約45°に設定されている。このバネ角度αを小さくする方向の負荷がかかった時には、その負荷に抗してバネ角度αが大きくなる方向の弾性力が作用する。
【0019】
図1に示すように、リンク部材11、12間にねじりコイルバネ14、15がバネの配設方向を揃えて直列に配置されている。図1はリンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間の角度をリンク角度βとすれば、リンク角度βは約90°に設定されている。なお、リンク角度βは回転軸13の中心を通りリンク部材11、12の長手方向へ延びる直線を引いた時にこの2つの直線のなす角度を指している。
図2に示すように、ねじりコイルバネ14、15は、それぞれのリンク部材11、12に、回転軸13の軸方向(図2における上下方向)にそれぞれ2個づつ設けられたバネ収容部11a、12aに1個づつ配設されている。すなわち、ねじりコイルバネ14、15は回転軸13の軸方向に並列に2列に設けられている。また、それぞれのねじりコイルバネ14、15の回転軸13側の腕部14c、15cの先端部が可動バネ受け16にそれぞれ当接している。
【0020】
リンク部材11の回転軸13とは反対の端部側は駆動軸17と連結されており、リンク部材11は駆動軸17に固着された状態にある。駆動軸17はベース部材18に回転可能に支持されている。駆動軸17は複数個のギア列19を介して回転駆動源としてのモータ20と連結されている。なお、ギア列19及びモータ20を保持するケーシング23はベース部材18に固定されている。
一方、リンク部材12の回転軸13とは反対の端部側は回転軸21を介して別のリンク部材22に回動可能に連結されている。図示しないが、リンク部材22はロボットアームの被駆動部に連結されている。
【0021】
モータ20の回転駆動に伴い駆動軸17が時計回り方向(右回り)に回転されると、駆動軸17と連結されたリンク部材11、12、22の全体が時計回り方向に回動すると共に、ロボットアームの被駆動部も時計回り方向に回動される。また、ロボットアームの被駆動部が対象物の荷重を受けて、被駆動部に回動方向に抗する負荷がかかると、この負荷に感応してリンク部材11、12はねじりコイルバネ14、15のバネ弾性力に抗して回転軸13とは反対側の端部が互いに接近し、リンク部材11、12間のリンク角度βが小さくなる方向に駆動される。
これに伴い、ねじりコイルバネ14、15のバネ角度αはそれぞれ小さくなる方向に変位するが、このバネ変位量をバネ変位角度Δαとし、リンク部材11、12間のリンク角度βの変位量をリンク変位角度Δβとすれば、リンク変位角度Δβと比較してバネ変位角度Δαを小さくすることができる。
【0022】
次に、上記構成を有するロボットアームのリンク機構10について図3を用いて作用説明を行う。
なお、図3は図1及び図2で示されるリンク機構10の要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものであり、図1及び図2に示す同一の構成要素については同一の符号を用いている。
図3(a)は、リンク部材11、12間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材11、12間のリンク角度βは約90°に設定されている。また、ねじりコイルバネ14、15は負荷のかからない自然状態でバネ角度αが約45°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。
ここで、駆動軸17が回転駆動されることによりロボットアームの被駆動部も時計回り方向に回動される。また、被駆動部に回動方向に抗する負荷がかかると、この負荷に感応してリンク部材11、12間のリンク角度β及びねじりコイルバネ14、15のバネ角度αが小さくなる方向に駆動されるが、このような状態を負荷のかかった状態とする。
【0023】
次に、図3(b)で示すように、リンク部材11、12間にリンク角度βを小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ14、15はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変形する。
このとき、ねじりコイルバネ14、15は間に可動バネ受け16を介して直列に配置され、可動バネ受け16は回転軸13を中心として回動可能に設けられているので、ねじりコイルバネ15に作用するバネ荷重を可動バネ受け16を介してねじりコイルバネ14に正確に伝達可能である。
【0024】
次に、図3(c)で示すように、さらに負荷がかかると、リンク部材11、12間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ14、15はさらに変形しそれぞれのバネ角度αも最小となる(α=0°)。ここで、図3(a)の状態〜図3(c)の状態に至るリンク変位角度Δβとバネ変位角度Δαを計算してみると、リンク変位角度Δβ=90°となりバネ変位角度Δα=45°となる。
このように、バネ1個当りのバネ変位角度Δαをリンク変位角度Δβより小さくすることができる。
【0025】
次に、図3(d)で示すように、リンク部材11、12間の負荷が解放されたときには、ねじりコイルバネ14、15のバネ弾性力によりバネ角度αは元のα=45°の状態にそれぞれ復帰し、それに伴いリンク部材11、12間のリンク角度βは元のβ=90°の状態に復帰する。
図3(a)〜図3(c)に至る動作が繰り返し行われた場合でも、図3(d)の状態への復帰を確実に行うことができる。
【0026】
このように、リンク部材11、12間に2個のねじりコイルバネ14、15を配設方向を揃えて直列に配置することにより、バネ1個当りのバネ変位角度ΔαをΔα=45°と小さくできるので、繰り返し使用に伴うバネの塑性変形を低減することができる。これに伴いリンク部材11、12間のリンク変位角度ΔβはもとのΔβ=90°の状態を維持することが可能となる。
従って、1個のバネを用いる従来技術と比較して、バネの塑性変形を低減することができると共に、リンクの広い可動範囲に対応可能である。
【0027】
この第1の実施形態に係るリンク機構10によれば以下の効果を奏する。
(1)リンク部材11、12間に2個のねじりコイルバネ14、15を配設方向を揃えて直列に配置することにより、バネ1個当りのバネ変位角度Δαを45°と小さくできるので、繰り返し使用に伴うバネの塑性変形を低減することができると共に、リンク部材11、12間にバネをコンパクトに配設可能である。これに伴いリンク部材11、12間のリンク変位角度Δβはもとの90°の状態を維持することが可能となる。従って、1個のバネを用いる従来技術と比較して、リンクの可動範囲が広い場合であっても、バネの塑性変形を低減することができる。なお、低減とはゼロになることも含める。
(2)ねじりコイルバネ14、15は間に可動バネ受け16を介して直列に配置されているので、ねじりコイルバネ15に作用するバネ荷重を可動バネ受け16を介してねじりコイルバネ14に正確に伝達可能である。
(3)ねじりコイルバネ14、15はそれぞれ上下2列に並列して設けられているので、ねじりコイルバネ14、15の線径やコイル径等を変更してばね定数を大きくすることなく、バネに加わる荷重を分担し耐久性を向上させることが可能である。
(4)回動バネがねじりコイルバネ14、15なので、取り扱いが簡単であり、線径やコイル巻数やコイル径などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能である。
(5)リンク部材11は一端部側で回転軸13を中心にリンク部材12に対して回動可能に連結され、他端部側は駆動軸17を介してモータ20と連結されると共に、リンク部材12は一端部側で回転軸13を中心にリンク部材11に対して回動可能に連結され、他端部側は回転軸21を介してロボットアームの被駆動部と接続されたリンク部材22と連結されている。このため、モータ20を回転駆動することにより、リンク部材11、12間のリンク角度βを可動範囲内で変位させて、ロボットアームの被駆動部に加わる駆動力を調整させることが可能である。
【0028】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るリンク機構30を図4に基づいて説明する。図4は図3と同様に要部構成をモデル化し、作用説明に必要な構成要素のみを図示したものである。
この実施形態は、第1の実施形態におけるリンク部材11、12間のリンク角度βを90°以上の鈍角として、リンク部材11、12間に配設されるねじりコイルバネを3個に増やしたものである。
従って、ここでは説明の便宜上、先の説明で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、変更した個所のみ説明を行う。
【0029】
図4(a)に示すように、リンク部材31、32は一端部側で回転軸33を中心に回動可能に連結され、リンク部材31、32間には同一形状をした3個のねじりコイルバネ34、35、36が間に可動バネ受け37、38を介して直列に配置されている。
図4(a)は、リンク部材31、32間に負荷がかからない初期状態を示しており、このとき、リンク部材31、32間のリンク角度βは約135°に設定されている。また、ねじりコイルバネ34、35、36は負荷のかからない自然状態でバネ角度αが約45°に設定されている。このとき、リンク角度βは最大となっている。
【0030】
次に、図4(b)で示すように、リンク部材31、32間にリンク角度βが小さくなる方向の負荷がかかったときには、ねじりコイルバネ34、35、36はバネ弾性力に抗してバネ角度αが小さくなる方向に変形する。図4(b)は、さらに大きな負荷がかかった時の状態を示しており、このときリンク部材31、32間のリンク角度βは最小となり(β=0°)、ねじりコイルバネ34、35、36のバネ角度αも最小となる(α=0°)。
【0031】
ここで、図4(a)の状態〜図4(b)の状態に至るリンク変位角度Δβとバネ変位角度Δαを計算してみると、リンク変位角度Δβ=135°となりバネ変位角度Δα=45°となる。
このように、バネ1個当りのバネ変位角度ΔαをΔα=45°と小さくしてバネの塑性変形を低減すると共に、リンク変位角度ΔβをΔβ=135°としてリンクの更に広い可動範囲に対応させることが可能となる。
その他の作用効果は第1の実施形態と同等であり、説明を省略する。
【0032】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 第1〜第2の実施形態では、リンク部材間に2個又は3個のねじりコイルバネを直列に配設すると共に、上下に並列に2段設けるとして説明したが、4個以上直列に配設しても良いし、また、上部の1段だけでも良いし、3段以上並列に設けても良い。
○ 第1〜第2の実施形態では、リンク部材間に配設される複数個のねじりコイルバネを同一形状として説明したが、線径、コイル巻数、コイル径及びバネ角度αなどの仕様を異ならせても良い。
○ 第1〜第2の実施形態では、回動バネとしてねじりコイルバネを使用するとして説明したが、板バネを使用しても良い。板バネの場合には、板厚などを適宜選択することにより所望の強度を有するバネを容易に得ることが可能であり、取り扱いが簡単である。
○ 第1〜第2の実施形態では、複数個のねじりコイルバネ間に可動バネ受けを設けるとして説明したが、可動バネ受けを廃止して複数個のねじりコイルバネの腕部間が繋がった一体物としてねじりコイルバネを形成しても良い。
○ 第1の実施形態では、可動バネ受け16を回転軸13を中心に回動可能に配設するとして説明したが、回転軸13に連結しなくても、例えば、ねじりコイルバネ14、15の腕部14c、15cに固定して脱落しないようにしてあっても良い。
○ 第1の実施形態では、ねじりコイルバネ14、15の固定方法としてリンク部材11、12にバネ収容部11a、12aを設けここに収容固定するとして説明したが、ねじりコイルバネ14、15のコイル部14a、15aに軸を通して軸固定させても良い。
【符号の説明】
【0033】
10 リンク機構
11 リンク部材
12 リンク部材
13 回転軸
14 ねじりコイルバネ
15 ねじりコイルバネ
16 可動バネ受け
17 駆動軸
20 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のリンクと、前記一対のリンクを相対回動可能に連結する連結部材と、前記一対のリンクのうち少なくとも一方のリンクを前記一対のリンクの回動方向に付勢する回動バネと、を備えたリンク機構において、
前記回動バネが複数個、前記回動バネの付勢方向に配設方向を揃えて直列に配置されていることを特徴とするリンク機構。
【請求項2】
前記複数個の回動バネは、間に可動バネ受けを介して直列に配置され、前記可動バネ受けは前記リンクの回動方向と同じ方向に回動可能に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のリンク機構。
【請求項3】
前記直列に配置された回動バネは、並列して複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリンク機構。
【請求項4】
前記回動バネが、ねじりコイルバネにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項5】
前記回動バネが、板バネにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のリンク機構。
【請求項6】
前記一対のリンクの一方がロボットアームの回転駆動源に連結されていると共に、前記一対のリンクの他方が前記ロボットアームの被駆動部に連結されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリンク機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−236594(P2010−236594A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84292(P2009−84292)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】