説明

リンパ内器具類を導入するための方法および装置

本明細書では、生理学的モニタリングおよび/または治療の送達に使用することが可能である、リンパ系に器具類を導入するための方法および装置を説明する。そのような器具類は、例えば、生理的変数を測定するための1つ以上のセンサ、および/またはリンパ管内に配置されるように構成されている治療を送達するための1つ以上の器具を含んでもよい。本発明は、一実施形態では、患者のリンパ系にリンパ管器具を導入するステップと;器具が患者のリンパ管を通して誘導されるときに、患者のリンパ管を蛍光透視撮像するステップと;患者のリンパ系内の選択された場所にリンパ管器具を位置付けて、治療を送達する、および/または1つ以上の生理的変数を感知するステップとを包含する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
ここに、2006年6月6日に出願された米国特許出願第11/422,423号に対する優先権の利益を主張し、この出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(関連出願)
本願は、2006年6月6日に出願された、共有に係る米国特許出願第11/422,414号;同第11/422,417号;同第11/422,418号および同第11/422,421号に関連し、これらの出願は、本明細書により参考として援用される。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、埋め込み型装置で疾患を診断および治療するための方法ならびにシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
リンパ系および心臓血管系は、毛管系によって間接的に接合されている、密接に関係した構造である。リンパ系は、疾患を引き起こす生物を除去することによる、かつ異生物を攻撃して抗体を生成するリンパ球を産生することにより、身体の防御機構にとって重要である。それはまた、間質組織から余分な流体およびタンパク質を排出するため、体内の流体および栄養素の分布にも重要である。血管から出て体内組織およびその他の間質構成要素の間質腔の中に染み込む流体は、リンパ毛細管によって吸収されて、リンパ管を通って血流に再び流れ込むリンパ液を形成する。リンパ管の末端構造は、横隔膜上および正中線下の身体の右上4分の1からリンパ液を排出する右リンパ本幹、および身体の他の部分の排出を行う胸腔の縦隔に位置する胸管を含む。動脈を出入りし、静脈に入り、かつリンパ管およびリンパ節を通る血液の流れを通して、身体は、細胞破壊の生成物および異物の侵入を排除することが可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
本願では、生理学的モニタリングおよび/または治療の送達に使用することが可能である、リンパ系に器具類を導入するための方法および装置を説明する。そのような器具類は、例えば、生理的変数を測定するための1つ以上のセンサ、および/またはリンパ管内に配置されるように構成されている治療を送達するための1つ以上の器具を含んでもよい。器具類は、リード線を用いて、または無線で、器具類からの信号を受信し、および/または治療の送達を制御する、埋め込み型装置に接続されてもよい。埋め込み型装置はまた、遠隔測定リンクを介して外部システムと通信してもよい。別の実施形態では、リンパ管器具類(lymphatic instrumentation)は、無線で外部制御装置に接続されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、リンパ系を介した生理学的モニタリングおよび/または治療送達のための模範的システムを示す。
【図2】図2は、図1に描かれる電子回路132の模範的構成要素を図示する。
【図3】図3は、リンパ管器具を埋め込み型制御装置に接続するリード線が無線リンクに置換されている、システムの実施形態を図示する。
【図4】図4は、リンパ管器具を組み込むステントを図示する。
【図5】図5は、埋め込み型制御装置およびリンパ管内器具類(endolympathic instrumentaion)の模範的な物理的配置を示す。
【図6】図6は、リンパ管内器具類を導入するための模範的システムを示す。
【図7】図7は、患者の身体にリンパ管内器具類を導入するための模範的ステップを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(詳細な説明)
リンパ管は、身体の循環系の一部であり、それにより流体が間質腔から血液の中に流れ込むことが可能である経路としての機能を果たす。リンパ管はまた、リンパ節と連通し、間質腔からリンパ節へ外来抗原を輸送することによって身体の免疫機能を促進する。下記のように、埋め込み型装置は、リンパ機能を監視することによって、浮腫、炎症、およびその他の病状等の特定の状態を検出するように構成されてもよい。装置はまた、リンパモニタリングに従って適切な治療を送達するようにさらに構成されてもよい。また、リンパ管は概して、身体を巡るにつれて神経と平行して走り、リンパ節およびリンパ系のその他の部分はしばしば、神経末端および痛覚受容器の付近に位置する。これにより、リンパ系は、体内の場所に神経性電気刺激を送達する、またはそこから神経活動を感知するために、埋め込み型パルス発生器から電極へリード線を通す(または無線で電極をパルス発生器に接続する)ための便利な導管となる。この方法で神経性電気刺激を送達するステップは、例えば、疼痛を治療するために使用してもよい。神経遮断刺激は、脊柱、またはその他の内蔵から発する神経等の、リンパ管の付近に位置する神経に送達されてもよい。
【0008】
図1は、埋め込み型制御装置、およびリンパ管中の配置に対して適合されるリンパ管器具を含む、リンパ系を介した生理学的モニタリングおよび/または治療送達のための模範的システムを示す。埋め込み型制御装置1105は、心臓ペースメーカと同様に、患者の胸部、または他の都合の良い場所に皮下または筋肉下で配置されてもよい、密封された筐体1130を含む。筐体1130は、チタン等の導電性金属から形成されてもよく、加えて、電気刺激を送達するための電極としての機能を果たしてもよい。筐体1130内に含有されるのは、電力供給、監視回路、治療回路、およびシステムの動作を制御するためのプログラム可能電子制御器を含んでもよい、本願で説明されるようなシステムに機能性を提供するための電子回路1132である。絶縁材料で形成されてもよいヘッダ1140は、筐体内で回路に電気的に接続されている1つ以上のリード線1110を受領するために、筐体1130に取り付けられる。リード線1110の遠位端にあるのは、感知または治療送達いずれかの器具であってもよい、リンパ管器具1111である。リンパ管器具は、リンパ管中の配置に対して適合され、よって、リンパ管内器具類と呼んでもよい。別の実施形態では、リード線によって埋め込み型制御装置の回路に接続されるよりもむしろ、リンパ管器具は、コマンドを受信するため、および/またはデータを伝送するために無線で制御装置と通信するサテライトユニットに組み込まれる。
【0009】
図2は、図1に描かれる電子回路1132の模範的構成要素を図示する。制御器1135は、不連続回路要素で構成されてもよいが、好ましくは、治療を送達するためのアルゴリズムを行うようにプログラムされてもよい、プログラムおよびデータ保存用の関連メモリを共に伴うマイクロプロセッサ等の処理要素である。(「回路」および「制御器」という用語は、本願で使用されると、プログラムされたプロセッサ、または特定のタスクを行うように構成される専用ハードウェア構成要素のいずれかを指してもよい。)制御器は、1つ以上のリンパ管器具1137によって生成されるデータをそこから受信する、監視回路1136にインターフェース接続される。監視回路は、例えば、リンパセンサによって生成される電圧の増幅、フィルタリング、および/またはアナログ・デジタル変換のための回路を含んでもよい。図示した実施形態では、制御器1135はまた、監視回路によって感知される状態に応じて装置による治療の送達を制御するために、治療回路1140に接続される。治療回路1140は、電気刺激および薬物療法等の1つ以上の治療法を送達するための回路を含んでもよい。前者の場合のリンパ管器具1137は電極である一方で、後者の場合では、特定の状態の検出に応じて薬剤を送達するために使用してもよい、埋め込み型制御装置の治療回路によって作動される、薬物送達装置を含む。そのような薬剤は、抗炎症薬、癌化学療法薬、利尿薬、心臓病の薬、鎮痛薬、グルカゴン、インスリン、またはその他の薬理療法を含み得る。
【0010】
同様に図2で制御器にインターフェース接続されるのは、図1に示されるような外部プログラマまたは遠隔監視装置1190と通信することが可能な、遠隔測定トランシーバ1150である。外部プログラマは、無線で装置1105と通信し、臨床医がデータを受信し、制御器のプログラミングを修正することを可能にする。遠隔監視装置は同様に、装置1105と通信し、遠隔場所の臨床人員が遠隔監視装置からデータを受信し、ならびにコマンドを発行することを可能にする、患者管理サーバ1196と通信するためのネットワーク1195(例えば、インターネット接続)にさらにインターフェース接続される。特定の症状が監視回路によって検出されると(測定したパラメータが指定限界値を超える、または下回る時等)、装置が遠隔監視装置および患者管理サーバに警告メッセージを伝送して臨床人員に警告するように、制御器をプログラムしてもよい。
【0011】
図3は、リンパ管器具を埋め込み型制御装置に接続するリード線が無線リンクに置換されている、システムの実施形態を図示する。無線リンクは、例えば、無線周波(RF)リンクまたは音響リンクであってもよい。この実施形態でのリンパ管器具320は、サテライトユニット310に組み込まれる。サテライトユニット310は、下記のように、外科的またはカテーテルを用いてのいずれかによる、リンパ管内への埋め込みに対して適合される統合アセンブリであり、バッテリと、感知するため、および/または治療を送達するための回路とを含有する筐体を含む。この実施形態での制御装置1105は、埋め込み型の装置または外部装置のいずれかであってもよく、この実施形態では、コマンドを伝送するため、および/またはデータを受信するための、制御器302にインターフェース接続されるトランシーバ301(例えば、RFトランシーバまたは音響変換器のいずれか)として図示される、サテライトユニットと通信するための無線遠隔測定トランシーバを含む。サテライトユニット310は同様に、コマンドを受信するため、および/またはデータを伝送するための、制御回路312にインターフェース接続される無線トランシーバ311を含む。制御回路312は、受信したコマンドを解釈し、治療回路313に、電気刺激または薬物送達等の治療法を作動させる。
【0012】
上記のように、リンパ管器具は、無線で、またはリード線を介してのいずれかで、埋め込み型制御装置に接続されてもよい。後者の場合、リンパ管器具は、リード線に組み込まれる。リンパ管器具はまた、管の開通性を維持するためにリンパ管中で拡張される、ステントに組み込まれてもよい。そのようなステントは、リード線に取着されるリンパ管器具、または上記のように無線で埋め込み型制御装置と通信する、リード線のないリンパ管器具のいずれかを組み込んでもよい。図4は、リンパ管器具401を組み込むステント400を図示し、その場合、リンパ管器具は、リンパ液の流れを妨げない方法でステントの壁に取着される。
【0013】
リンパ管器具1137(図2)がセンサである実施形態では、浮腫が存在するかもしれないことを示すのは、リンパ管内の状態を感知するための流量または圧力センサであってもよい。浮腫は、例えば、心不全およびその腎性代償、腎疾患、または肝疾患によって引き起こされる静脈圧の上昇により、リンパ管が流体で圧倒されると発生する。そのような条件下では、リンパ管内のリンパ液の圧力および/または流れが増加される場合がある。システムは、浮腫が検出されると適切な薬剤を送達するように構成されてもよい(例えば、ACE阻害薬またはアンジオテンシン受容体遮断薬)。リンパ液の組成はまた、特定の臨床状態が存在するかどうかを判定するように監視されてもよい。例えば、サイトカインおよび免疫グロブリンの濃度は、ある自己免疫疾患および癌を評価するために使用してもよい。そのような物質の濃度が特定のレベルに到達すると、装置は、適切な薬剤を送達するように構成されてもよい。この実施形態では、リンパセンサは、特定の化学種の濃度に比例する電圧を生成するように設計されている化学センサである。化学センサは、マーカと呼ばれる、関心の、リンパ液中の特定の分子の濃度の指示または測定を制御器に提供するために使用してもよい。濃度が診断値であってもよい、マーカの例は、免疫グロブリン、サイトカイン、または特定の病状を特徴付けるために使用され得る特定イオンまたはタンパク質を含む。そのような化学センサは、異なるマーカ抗原(Ag)に特異的な結合親和性がある固定化抗体(Ab)を使用してもよい。抗体とマーカとの間のAb−Ag複合体の形成時に、化学センサは、例えば、Ab−Ag複合体によって誘発される機械的応力に反応する圧電変換器、またはAb−Ag複合体に起因する電位の変化に反応する変換器を組み込むことによって、電気信号を生成してもよい。
【0014】
リンパ管器具1137(図2)が治療を送達するためのものである実施形態では、器具は、神経、心筋、平滑筋、または骨格筋を刺激するための電気刺激装置であってもよい。リンパ管器具はまた、神経/筋肉刺激のための機械的刺激装置、超音波刺激装置、または圧電変調刺激装置にもなり得る。別の実施形態では、器具は、免疫修飾剤、癌治療薬、抗炎症薬、ステロイド、細胞、遺伝子、ホルモン、またはその他の薬剤等の媒体の送達のためのカテーテルである。穴を密封するが開通性を保つ材料ベースのステント等の、媒体送達器具はまた、損傷したリンパ管の修復のために薬剤を送達してもよい。他の実施形態では、器具は、光電刺激または流体変調治療に対して適合される。
【0015】
図5は、埋め込み型制御装置110、および本願で説明されるようなリンパ管器具を含む、リンパ系を介した生理学的モニタリングおよび/または治療送達のためのシステム200の、身体101内の模範的な物理的配置を示す。この実施形態では、埋め込み型制御装置110は、標準的心臓ペースメーカと同様に、患者の胸部または腹部で皮下に配置される。埋め込み型制御装置110は、遠隔測定リンク125を介して、外部プログラマまたは遠隔監視ユニット等の外部システム130と通信する。外部システム130は、埋め込み型装置110と通信し、医師または他の介護人による埋め込み型装置110へのアクセスを提供する。一実施形態では、外部システム130は、外部プログラマである。別の実施形態では、外部システム130は、遠隔測定リンク125を介して埋め込み型装置110と通信する外部装置、比較的遠い場所における遠隔装置、および外部装置と遠隔装置とを結び付ける電気通信ネットワークを含む、患者管理システムである。患者管理システムは、患者の状態の監視および治療の調整等の目的で、遠隔場所から埋め込み型装置110へのアクセスを可能にする。一実施形態では、遠隔測定リンク125は、誘導性遠隔測定リンクである。別の実施形態では、遠隔測定リンク125は、遠方界無線周波(RF)遠隔測定リンクである。遠隔測定リンク125は、埋め込み型医療機器110から外部システム130へのデータ伝送を提供する。このことは、例えば、埋め込み型装置110によって取得されるリアルタイム生理学的データを伝送するステップ、埋め込み型装置110によって取得され、それに保存される生理学的データを抽出するステップ、埋め込み型装置110に記録される、所定の種類の病理学的事象の発生および治療送達等の患者病歴データを抽出するステップ、および/または埋め込み型装置110の動作状態(例えば、バッテリ状態およびリード線インピーダンス)を示すデータを抽出するステップを含む。遠隔測定リンク125はまた、外部システム130から埋め込み型医療機器110へのデータ伝送も提供する。このことは、例えば、生理学的データを取得するように、少なくとも1つの自己診断試験(装置の動作状態について等)を行うように、および/または1つ以上の治療を送達するように、および/または1つ以上の治療の送達を調整するように、埋め込み型装置110をプログラムするステップを含む。
【0016】
ある実施形態では、埋め込み型制御装置はまた、心臓ペーシングおよび/または電気的除細動/除細動機能性と、リード線およびその目的のための関連回路を組み合わせてもよい。埋め込み型装置はまた、心臓再同期療法(CRT)、心臓リモデリング制御療法治療(RCT)、薬物療法、細胞療法、および遺伝子療法等の追加治療を送達するように構成されてもよい。この実施形態での埋め込み型制御装置110は、リンパ管器具を組み込む遠位部材をそれぞれ有する、1つ以上のリード線112に接続される。リード線112は、制御装置110から、鎖骨下静脈等の胸郭上部または頸部における静脈アクセス点まで、皮下で通過する。下記のように、リード線は、静脈血系内への初期進入を伴う静脈到達法を使用して、リンパ系内に位置付けてもよい。カテーテルを採用する同様の技法を、無線リンパ管器具を組み込むステントを埋め込むために使用してもよい。
【0017】
図5はまた、胸管105の各部、鎖骨下静脈102、左外頸静脈103、および左内頸静脈104を含む、リンパおよび静脈系の各部を図示する。胸管105は、鎖骨下静脈102および左内頸静脈104の接合点において鎖骨下静脈102に接続する。下半身からのリンパ液は、胸管105へと流れ、胸管105から鎖骨下静脈102に流れ込む。胸管105は、心臓に隣接し、迷走神経、交感神経、および横隔神経を含む神経系の様々な部分を含む、身体101の後縦隔領域に位置する。一実施形態では、そのような神経の電気刺激は、リード線112に組み込まれ、かつ胸管105内に配置される1つ以上の刺激電極によって、送達されてもよい。胸管105はまた、そこから身体101の神経系の標的領域に電気刺激を送達することが可能である場所へと1つ以上の刺激電極を前進させるための、導管として使用することも可能である。リード線112に組み込まれる電極はまた、神経活動ならびにその他の生理学的信号を感知するために使用してもよい。
【0018】
リード線112は、近位端114、遠位端116、および近位端114と遠位端116との間の細長いリード線本体118を含む。近位端114は、埋め込み型装置110に連結される。遠位端116は、上記のような少なくとも1つのリンパ管器具を含む。図5に図示される実施形態では、遠位端116は、感知および/または刺激のための電極120および122を含む。埋め込み型装置110は、基準電極の役割を果たす、密封された導電性筐体を含んでもよい。細長いリード線本体118の遠位部(遠位端116に連結される細長いリード線本体118の大部分)は、遠位端116が胸管105に配置されるように、鎖骨下静脈102および胸管105中の配置に対して構成される。リード線112の埋め込みの間、遠位端116は、切開を通して鎖骨下静脈102に挿入され、胸管105に向かって鎖骨下静脈102中で前進させられ、鎖骨下静脈102から胸管105に挿入され、胸管105中の所定の場所に到達するまで胸管105中で前進させられる。一実施形態では、遠位端116の位置は、試験刺激パルスを送達し、かつ誘発神経信号および/またはその他の生理学的反応を検出することによって、調整される。別の実施形態では、リード線112は、胸管105中の決定された位置において遠位端116を安定化するように構成される、固定機構を含む。同様に、図示した実施形態に示されるのは、近位端234、遠位端236、近位端234と遠位端236との間のおよび細長いリード線本体238を含む、追加リード線232である。リード線232は、胸管105外部の皮下配置に対して構成されてもよい。近位端234は、埋め込み型装置110に連結され、この実施形態では、遠位端236は、感知および/または刺激のために使用してもよい、または埋め込み型装置110のその他の電極のうちのいずれかとともに基準電極として使用するための電極240を含む。リード線232は、埋め込み型装置110から刺激パルスを送達することが可能である標的の領域の範囲を拡張する。
【0019】
リンパ管内の選択された場所に、リンパ管器具を組み込むリード線または無線サテライトユニットを埋め込むために、リンパ管造影法を使用してリンパ系を可視化してもよい。この技法では、足等の体肢の皮下組織、またはその他の末梢リンパ管に染料が注入され、リンパ系が染料を排出して、リンパ管が目に見えるようになる。リンパ管にカニューレを挿入し、X線造影剤を注入して、胸管および鎖骨下静脈内へのその入口部を含む、主要リンパ管を照射する。次いで、蛍光透視法を使用して、静脈系を介して胸管口の中にカテーテルを誘導し、リンパ系内の選択された場所に位置付けてもよい。ガイドワイヤまたはカテーテルによるリンパ管口の初期挿管は、左または右鎖骨下静脈、左頸静脈、腹壁/乳腺静脈、または大腿静脈を通して達成してもよい。リンパ管を通したナビゲーションを促進し、選択された解剖学的場所でリンパ管器具を位置付けるために、重複技法を採用してもよく、それにより、注入した染料によって生成される蛍光透視像は、従来のX線、CATスキャン、MRIスキャン、または超音波スキャン等のその他のモダリティによって生成される患者の解剖学的画像と併せて使用される。蛍光透視像は、解剖学的画像と重ね合わせてもよく、次いで、カテーテルは、選択された場所に誘導されてもよい。
【0020】
リード線またはサテライトユニットを埋め込むために、カテーテルを静脈系に導入し、ガイドワイヤを採用する従来のワイヤ上技法を使用して、そこから胸管に導入してもよい。あるいは、ガイドワイヤのための管腔を有するリード線を同様に導入してもよい。ガイドワイヤは、手動で、または機械的に押されて操作され、カテーテルおよび/またはリード線を前進させてもよい、その進行を誘導する。外部磁石またはその他の手段がカテーテルを誘導するために使用される定位固定技法を、操縦性および精度を向上させるため、ならびに増加した安全性を提供するために、使用してもよい。この技法の例は、参照することにより本願に組み込まれる、米国特許第6,475,223号で説明されている。カテーテルはまた、リンパ系の中に入ると、その機能が、胸管への一方向のみにリンパ液の流れを可能にすることである、リンパ管の弁を横断しなければならない。カテーテルが管を通ってこれらの弁のうちの1つへと誘導されると、カテーテルは、真空システムを組み込んで弁を開いてもよい。真空システムは、作動されると、陰圧を引き込んで、弁を開く圧力勾配を作り出す。リンパ管弁を開くための代替的な技法は、その遠位先端上の柔軟バルーンを組み込むカテーテルを使用するステップを伴う。カテーテルがリンパ管弁に到達すると、バルーンは膨張され、弁を開いてワイヤまたはカテーテルが通過することを可能にする管を機械的に開大する。なおも別の技法では、カテーテルは、リンパ管の平滑筋収縮を引き起こすために使用される、その先端における電極(リンパ管中に残されることを目的とするリンパ管器具であってもなくてもよい)を組み込む。そのような平滑筋収縮は、弁を開いてカテーテルが弁を過ぎて前進することを可能にする、圧力勾配を作り出すことが可能である。
【0021】
図6は、上記の技法を使用してリンパ管内器具を導入するための模範的システムを示す。本発明に従ったシステムには、図に描かれる構成要素のうちのいずれか、または全てがあってもよい。ワークステーション601は、他のシステム構成要素と通信しているコンピュータであり、システムの動作を制御するためのユーザインターフェースを提供する。ワークステーションは、カテーテル(またはガイドワイヤ)651を患者650のリンパ系の中に機械的に押し込む、カテーテル制御器605を作動するための出力を提供する。カテーテル651は、カテーテルが定位置にある、または常用のために埋め込まれている間のいずれかに使用することが可能である、リンパ管器具を組み込む。後者の場合、リンパ管器具は、埋め込み型装置に取着されるリード線ベースの器具、または無線サテライトユニットのいずれかであってもよい。電気刺激装置606および真空アクチュエータ607もまた、リンパ管における弁を通したカテーテル651の通過を容易にするために、ワークステーションにインターフェース接続される。上記のように、電気刺激装置は、リンパ管壁における平滑筋の収縮を引き起こし、圧力勾配を作り出してリンパ管弁を開くために、カテーテル651の電極に電気エネルギーを提供する。真空アクチュエータ607は、リンパ管弁を開くためにカテーテル651の管腔を通して真空を引き込む。システムにはまた、可動誘導磁石611を用いて、カテーテル651(またはガイドワイヤ)の強磁性先端を磁気的に誘導する能力があり、磁石アクチュエータ610は、この目的でワークステーションにインターフェース接続される。操作者にリンパ系内のカテーテルの位置についての情報を提供するために、蛍光透視鏡620は、ワークステーションにインターフェース接続される。カテーテルのポートを通して患者のリンパ系に放射線不透過染料が注入されると、カテーテルがそれを通って進むにつれて、蛍光透視鏡は、リンパ管の画像を提供する。ワークステーションはまた、従来のX線、CAT、MRI、および超音波等の1つ以上のその他の画像診断法により取得される患者の生体構造の画像を保存する、画像リポジトリ630にインターフェース接続される。操作者は、患者の体内の選択された場所へガテーテルを誘導するための解剖学的目印を提供するために、画像リポジトリからの画像と蛍光透視像を重ね合わせてもよい。
【0022】
図7は、患者の身体にリンパ管内器具類を導入するステップに関与するステップを図示するブロック図である。該技法は、1つ以上のリンパ管器具が常時埋め込まれている状況、またはリンパ管器具が診断および/または治療目的で使用され、次いで引き抜かれる状況で、使用してもよい。ステップS1では、挿管等によって、静脈系(右または左鎖骨下静脈等)内へアクセスが獲得される。ステップS2では、リンパ管アクセスおよび送達装置(例えば、ガイドワイヤまたはカテーテル)が静脈系に導入される。ステップS3では、放射線不透過性物質を使用して、リンパ系が蛍光透視撮像される。ステップS4では、カテーテルおよびワイヤ、またはその他の手段を使用して、胸管のリンパ管口が識別され、カニューレを挿入される。必要な時には、ステップS5で、より容易なアクセスのためにリンパ管口を把持および操作する目的で、カテーテル挿管以外の方向からリンパ管口に接近するために、大腿または乳腺静脈を使用する技法を採用してもよい。ステップS6では、ガイドワイヤまたはカテーテルがリンパ系の中に前進させられる。ステップS7では、神経の電気刺激を使用して、神経活動を感知して、および/または神経遮断刺激を印加し、その他の生理学的パラメータを測定して、リンパ管器具がリンパ系中の所望の標的へとナビゲートされる(この能力は、ガイドワイヤ、カテーテル、一時的リード線、または常用リード線に組み込むことが可能である)。ステップS8で、器具は、所望の標的部位において留置される。ステップS9では、常用的、または一時的に複数のリンパ管器具が埋め込まれる場合に、ステップS7およびS8が反復される。ステップSl0では、送達装置が引き抜かれる。
【0023】
前述の具体的実施形態と併せて本発明を説明したが、多くの代替案、変化型、および修正が当業者にとって明白となるであろう。そのような代替案、変化型、および修正は、次の添付の特許請求の範囲内にあることを目的としている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のリンパ系にリンパ管器具を導入するステップと、
前記器具が前記患者のリンパ管を通して誘導されるときに、前記患者のリンパ管を蛍光透視撮像するステップと、
前記患者のリンパ系内の選択された場所に前記リンパ管器具を位置付けて、治療を送達する、および/または1つ以上の生理的変数を感知するステップと、
を包含する、方法。
【請求項2】
ガイドワイヤを用いて前記リンパ管器具を導入するステップをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カテーテルを用いて前記リンパ管器具を導入するステップをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リンパ管器具と通信する埋め込み型制御装置を埋め込むステップをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リンパ管器具は、前記埋め込み型制御装置に接続するために適合されるリード線に組み込まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リンパ管器具は、埋め込み型または外部制御装置と無線で通信するサテライトユニットに組み込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サテライトユニットと前記カテーテルとを組み込んだステントを埋め込むステップをさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
リンパ管弁を通る前記カテーテルの通過を容易にするために、前記カテーテルの管腔を通して真空を引き込んで前記リンパ管弁を開く、真空システムを採用するステップをさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
リンパ管弁を通る前記カテーテルの通過を容易にするために、前記リンパ管弁を開くために前記カテーテルに組み込まれる電気刺激装置を採用するステップをさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
リンパ管弁を通る前記カテーテルの通過を容易にするために、前記リンパ管弁を開くために前記カテーテルに組み込まれる膨張性バルーンを採用するステップをさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記リンパ系を通して前記リンパ管器具を誘導するために、1つ以上のガイド磁石と強磁性先端を備えるカテーテルまたはガイドワイヤとを採用するステップをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
選択された場所における前記リンパ管器具の配置を容易にするために、蛍光透視像と前記患者の身体の解剖学的画像を重ね合わせるステップをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記患者の静脈系に前記リンパ管器具を導入するステップと、胸管のリンパ管口にカニューレを挿入するステップと、前記胸管を通して選択された標的場所へ前記リンパ管器具を誘導するステップとをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記リンパ管口を操作するための血管内把持器具の使用によって、前記リンパ管口の初期挿管を補助するステップをさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
大腿または乳腺静脈を通して前記血管内把持器具を導入するステップをさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者の身体にリンパ管内器具類を導入するためのシステムであって、
カテーテルが定位置にある間、または常用のために埋め込まれている間のいずれかに使用することが可能な、リンパ管器具を組み込んだカテーテルと、
前記患者の前記リンパ系に前記カテーテルを機械的に押し込むためのカテーテル制御器と、
リンパ管壁における平滑筋の収縮を引き起こし、圧力勾配を作り出してリンパ管弁を開くために、前記カテーテルの電極に電気エネルギーを提供するための電気刺激装置と、
前記システムの動作を制御するためのユーザインターフェースを提供し、かつ前記カテーテル制御器および電気刺激装置を作動させるための出力を提供する、ワークステーションと、
を備える、システム。
【請求項17】
リンパ管弁を開くために前記カテーテルの管腔を通して真空を引き込むための真空アクチュエータをさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
請求項16に記載のシステムであって、
前記カテーテルの強磁性先端と、
前記カテーテルの前記先端を磁気的に誘導するための可動誘導磁石と、
前記誘導磁石を作動させる、前記ワークステーションにインターフェース接続される磁石アクチュエータと、
をさらに備える、システム。
【請求項19】
前記ワークステーションにインターフェース接続される蛍光透視鏡をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記システムは、前記ワークステーションにインターフェース接続される画像リポジトリをさらに備え、前記画像レポジトリは、従来のX線、CAT、MRI、および超音波等の1つ以上のその他の画像診断法により取得される前記患者の生体構造の画像を保存し、かつ、前記患者の体内の選択された場所へ前記カテーテルを誘導するための解剖学的目印を提供するために、操作者が前記画像リポジトリからの画像と前記蛍光透視像とを重ね合わせることを可能にする、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−544339(P2009−544339A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514441(P2009−514441)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/067178
【国際公開番号】WO2007/146493
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】