説明

リンパ節検出装置

【課題】 装置構成が単純で、リンパ節の位置の検出が容易なリンパ節検出装置を提供する。
【解決手段】 センチネルリンパ節検出装置1は、蛍光を発する蛍光色素が注入された腫瘍近傍におけるセンチネルリンパ節21を含む生体観察部20に励起光10と照明光11を照射する光源ユニット2と、蛍光像11と通常像13を透過する光学フィルタ3と、励起光源ユニット2と一体に設けられ、光学フィルタ3を透過した蛍光像11と通常像13を撮像する撮像装置5と、撮像された観察画像を表示する画像表示装置7と、を備えている。照明光11の波長は、蛍光色素から発せられる蛍光の波長近傍の値に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光色素から発せられる蛍光像によりセンチネルリンパ節などのリンパ節を検出するリンパ節検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センチネルリンパ節とは、腫瘍から癌細胞がリンパ流によって最初に到達する、最も癌細胞の転移の可能性が高いリンパ節である。よって、センチネルリンパ節が正しく同定され、そこに癌細胞の転移が認められなければ、他臓器への転移がないと考えられる。このことにより、患者の肉体的・精神的負担の大幅な軽減や、切除手術の省略による治療費の抑制等が期待されている。
【0003】
センチネルリンパ節を検出する方法として、主に色素法とRI(ラジオアイソトープ)法とが知られている。色素法では、例えば、インジゴカルミン等の青色色素を腫瘍近傍に注入し、青色に染まったリンパ管を目視にて追い、最初に到達するリンパ節をセンチネルリンパ節として検出する。また、RI法では、例えば、トレーサとなるラジオアイソトープを腫瘍近傍に注入し、ラジオアイソトープが最初に到達して蓄積するリンパ節を含むと想定される生体観察部位をガンマプローブにより皮膚上から探索し、ガンマ線を感知した生体観察部位をセンチネルリンパ節として検出する。
【0004】
また、蛍光色素を用いたセンチネルリンパ節の同定方法が提案されている。特許文献1に開示されたセンチネルリンパ節検出装置では、蛍光色素を予め腫瘍近傍に注入し、その周囲のセンチネルリンパ節が含まれていると想定される生体観察部に所定波長の光を励起光として照射する。そして、この生体観察部から発せられる近赤外波長帯域の蛍光像を可視化像に変換表示することによって、センチネルリンパ節の同定を行っている。
【0005】
また、蛍光測定法については、特許文献2、特許文献3にも記載がある。
【特許文献1】特開2001−299676号公報
【特許文献2】特開平11−332820号公報
【特許文献3】特開2000−292353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の色素法には、青色に染まったリンパ管を目視にて追っていくための豊富な経験を必要とすることや、一度センチネルリンパ節の位置を見失うと染色を繰り返す必要があることなどの問題がある。
【0007】
また、上記従来のRI法には、リンパ管を目視にて追う上記の経験や染色を繰り返す必要はないが、放射線核種を用いるため周囲が放射線に被爆する危険性があることや、ラジオアイソトープが高価であることなどの問題がある。
【0008】
さらに、蛍光色素を用いた特許文献1のセンチネルリンパ節検出装置には、被爆の危険性はないが、通常像を得るために可視光からなる照明光が用いられており、蛍光を透過するフィルタとは別に、可視光を透過するためのフィルタが必要となる。さらに、蛍光による像と可視光による像を重ね合わせるための光学的な手段も必要となり、構成が複雑で、医療現場における取り扱いが困難という問題がある。
【0009】
一方、上記特許文献2及び3において、励起光源以外の光源による画像の取得が記載されているが、この画像は蛍光観察画像の補正用データにすぎない。
【0010】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、装置構成が単純で、リンパ節の位置の検出が容易なリンパ節検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明によるリンパ節検出装置は、所定波長の蛍光を発する蛍光色素が予め注入された腫瘍近傍におけるリンパ節を含む生体観察部に励起光を照射する励起光源と、励起光の照射によって生体観察部から発せられる蛍光の波長を含む透過波長帯域で光を透過する光学フィルタと、透過波長帯域に含まれるように設定された波長の照明光を生体観察部に照射する照明光源と、生体観察部から発せられる蛍光からなり、光学フィルタを透過した蛍光像、及び照明光の生体観察部による反射光からなり、光学フィルタを透過した通常像を撮像し、それぞれに対応する蛍光観察画像及び通常観察画像を出力する撮像手段と、撮像手段から出力された蛍光観察画像及び通常観察画像をリンパ節を検出するための画像として表示する画像表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
上記したリンパ節検出装置は、蛍光観察画像及び通常観察画像の双方が表示可能な構成である。そのため、蛍光観察画像と通常観察画像とを比較することができ、生体観察部内でリンパ節の位置を容易に検出することが可能である。また、光学フィルタは、生体観察部から発せられる蛍光の波長を含む透過波長帯域で光を透過する。さらに、照明光は、その波長が上述の透過波長帯域に含まれるように設定される。そのため、1つの光学フィルタで、生体観察部から発せられる蛍光による蛍光像及び照明光の生体観察部での反射光による通常像の双方を透過させることができる。また、このように、蛍光像と通常像を透過させるのに、2つの異なる光学フィルタを用いなくてもよいので、蛍光像と通常像を重ね合わせるための光学的な手段を必要としない。そのため、構成が単純となり、小型化された、簡便で安価な装置が可能となる。また、照明光の波長は、上述したように光学フィルタの透過波長帯域内で設定される。そのため、白色光を使用した場合に比べ、撮像時に発生する収差によるボケが抑制される。このような検出装置は、特に上記したセンチネルリンパ節の検出に有用である。
【0013】
ここで、照明光源は、生体観察部に蛍光の波長近傍に設定された波長の照明光を照射するのが好ましい。これにより、透過波長帯域の狭い光学フィルタを用いることができ、光学フィルタの入手が容易になる。
【0014】
また、励起光源及び照明光源を一体に支持する支持部材をさらに備え、支持部材は、撮像手段と一体に設けられているのが好ましい。励起光源、照明光源、及び撮像手段とを一体に設けた構成とすることにより、単純な装置構成で取り扱いが容易な装置を実現することができる。
【0015】
この場合、励起光源及び照明光源は、支持部材の同一面上に、所定の配置関係で設置されているのが好ましい。これにより、生体観察部の所定範囲に対する励起光及び照明光の照射の制御が容易になる。
【0016】
また、画像表示手段は、観察者の頭部に装着可能であるのが好ましい。これにより、観察時にリンパ節検出装置を手で保持する必要がなくなり、観察以外の作業の自由度を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置構成が単純で、リンパ節の位置の検出が容易なリンパ節検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面とともに本発明によるリンパ節検出装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0019】
図1は、本発明によるリンパ節検出装置であるセンチネルリンパ節検出装置の第1実施形態の構成図である。図2は、図1に示した検出装置に用いられる光源ユニットの構成を示す正面図である。以下、図1及び図2を参照して、本実施形態のセンチネルリンパ節検出装置の構成を説明する。また、図1及び図2においては、見易さのため、照明光源に斜線を付して示している。光線については、励起光及び蛍光色素から発せられる蛍光を実線で示し、照明光及び生体観察部での照明光の反射光を破線で示している。
【0020】
本センチネルリンパ節検出装置1は、人体などの生体におけるセンチネルリンパ節21を含む生体観察部20について、生体観察部20中の蛍光色素から発せられる蛍光による像(蛍光像11)と、照明光12の生体観察部20による反射光による像(通常像13)とを観察することによってセンチネルリンパ節21を検出するものである。本検出装置1を用いたセンチネルリンパ節の検出においては、生体観察部20内の腫瘍近傍に蛍光色素を予め注入する。そして、センチネルリンパ節21に蓄積された蛍光色素からの蛍光を観察してリンパ節を検出する。蛍光色素としては、検出装置1の具体的な構成などを考慮して適宜に選択したものを用いれば良いが、そのような蛍光色素の例としてはインドシアニングリーンが挙げられる。
【0021】
図1に示す検出装置1は、光源ユニット2と、光学フィルタ3と、照射制御装置4と、撮像装置5と、制御ユニット6と、画像表示装置7と、画像記録装置8とを備えている。光源ユニット2は、複数の励起光源2a、複数の照明光源2b、及び支持板2dとを有する。複数の励起光源2aは、それぞれ同一波長の光を励起光10として出射する光源からなり、センチネルリンパ節21を含む生体観察部20に対して励起光10を照射するために用いられる。一方、複数の照明光源2bは、それぞれ同一波長の光を照明光12として出射する光源からなり、センチネルリンパ節21を含む生体観察部20に対して照明光12を照射するために用いられる。
【0022】
励起光源2a及び照明光源2bとしては、好ましくは、半導体レーザ(LD)または発光ダイオード(LED)が用いられる。また、励起光源2aから供給される励起光10の波長は、観察に用いられている蛍光色素の光吸収特性等に基づき、蛍光色素を励起可能な波長によって選択される。照明光源2bから供給される照明光12の波長については、後述の光学フィルタ3の透過波長帯域に含まれるように設定された波長、好適には、観察に用いられている蛍光色素から発せられる蛍光波長近傍の波長が選択される。
【0023】
支持板2dは、図2に示すように、励起光源2a及び照明光源2bを一体に支持する支持部材である。光源ユニット2の光軸Axは、光学板2dの中心軸と一致する。支持板2dには、中央位置に、光軸であり、その中心軸であるAxを含む開口部2cが設けられている。また、励起光源2a及び照明光源2bは、支持板2dの前面2e上に、開口部2cを囲むように2次元に配列される。具体的には、励起光源2a及び照明光源2bは、図2に示すように、前面2e上で、矩形である支持板2dの一辺と平行な方向に、一定の配列間隔dで交互に配列され、複数の1次元配列が形成されている。これらの1次元配列は、d/2だけその1次元配列方向へずれながら、この1次元配列と垂直な方向に、一定の配列間隔dで配列されており、2次元配列が構成される。ただし、開口部2cには、これらの光源は設置されない。また、前面2eは、光源ユニット2の中心軸Axに対して垂直な面であって、励起光10及び照明光12の照射対象である生体観察部20に対して前面となる面である。
【0024】
開口部2cは、光源ユニット2の前方から入射される蛍光像11及び通常像13を後方へと通過させるためのものである。蛍光像11とは、生体観察部20に所定波長の励起光10を照射し、励起された生体観察部20から発せられる蛍光による像をいう。また、通常像13とは、照明光12の生体観察部20による反射光からなる像をいう。なお、このような構成においては、開口部2cの影響で生体観察部20へと照射される励起光10及び照明光12の強度分布が中央で弱くなることを防止するため、開口部2c近傍の励起光源2a及び照明光源2bの光軸を中心軸Axに向けて傾けて設置することが好適である。
【0025】
また、支持板2dの開口部2c内には、光学フィルタ3が設置されている。光学フィルタ3は、励起光10の反射光をカットし、さらに生体観察部20から発せられる蛍光の波長を含む透過波長帯域で光を透過する。図3は、蛍光色素としてインドシアニングリーンを用いた場合の光の波長に対する光学フィルタ3の透過率を示すグラフである。グラフの横軸は、光の波長(nm)を表し、縦軸は波長に対する光学フィルタ3の透過率又は光の強度を表す。また、図3の実線による曲線a、b、cは、光の波長帯域とその強度分布を表しており、aは励起光10、bは照明光12、cは蛍光11を表す。一方、図3の点線による曲線dは、光学フィルタ3の光の波長に対する透過率を表している。図3に示すように、光学フィルタ3は、励起光10(a)をカットし、照明光12(b)及び蛍光11(c)を透過する。
【0026】
ここで、励起光10の波長は、上述したように、蛍光色素を励起可能な波長によって選択される。そのため、蛍光色素としてインドシアニングリーンを用いた場合には、その光吸収帯域は近赤外波長帯域にあるので、図3のaに示すように、励起光10として、近赤外波長帯域内の波長(例えば波長750nm)が適宜に選択されて用いられる。この場合、生体観察部20から発せられる蛍光の蛍光極大波長は、図3のcに示すように845nmである。また、光学フィルタ3の透過波長帯域は、励起光10をカットし、かつ、生体観察部20から発せられる蛍光11の波長を含むように選択される。図3に示す例では、dに示すように、光学フィルタ3の透過波長帯域は、励起光10の波長750nmより長波長であり、かつ蛍光の波長帯域より短波長である波長λを下限値として、λより長波長(波長λを含む)側の光を透過する波長帯域となっている。透過波長帯域の光は、100%の透過率で透過される。さらに、照明光12の波長は、光学フィルタ3の透過波長帯域に含まれるように設定された波長、好適には、観察に用いられている蛍光色素から発せられる蛍光波長近傍の波長が選択される。そのため、この場合には、図3のbに示すような波長840nmの光が照明光12として選択される。
【0027】
この光学フィルタ3としては、好ましくは、下限値のみでなく上限値もある透過波長帯域を有するものが用いられる。また、光学フィルタ3は、撮像装置5のレンズの前部又は内部に設置されることが好ましい。
【0028】
また、照射制御装置4は、光源ユニット2と接続され、励起光源2a及び照明光源2bによる励起光10及び照明光12の照射を制御する。励起光10及び照明光12の照射の制御としては、例えば、光の照射タイミング、照射時間、あるいは、出射される光の強度の制御が行われる。
【0029】
光源ユニット2の後方側には、撮像装置5が設置されている。本実施形態においては、この撮像装置5は、光軸Axが一致した状態で光源ユニット2の支持板2dと一体に設けられている。これにより、蛍光像11及び通常像13は、支持板2dの開口部2cを通過し、光学フィルタ3を透過して、撮像装置5に到達する。撮像装置5は、入射した蛍光像11及び通常像13を撮像し、それぞれに対応する蛍光観察画像及び通常観察画像を画像データとして出力する。
【0030】
撮像装置5としては、例えば、2次元画像を取得可能なCCDカメラが用いられる。特に、この撮像装置5においては、蛍光像11の波長帯域(通常は800nm前後の蛍光観察画像を対象とするため、近赤外の波長帯域)の光に対して高い感度で撮像可能なものを用いることが好ましい。また、複数の励起光源2a、複数の照明光源2b、及び撮像装置5については、それぞれ光源用電源及び撮像装置用電源が必要に応じて接続される。ただし、図1においては、電源等については図示を省略している。また、これらの装置はバッテリーで駆動するものを用いても良い。
【0031】
撮像装置5から出力される蛍光観察画像及び通常観察画像に対して、制御ユニット6が設けられている。制御ユニット6は、必要に応じて、蛍光観察画像または通常観察画像の調整、切り替え、あるいはこれらの観察画像の重畳を行う。また、撮像装置5から制御ユニット6への画像データの伝送については、有線又は無線による伝送方法を用いて良い。
【0032】
制御ユニット6は、画像調整部6aと画像制御部6bとを有している。画像調整部6aは、撮像装置5から出力された蛍光観察画像あるいは通常観察画像に対して、自動または手動で、輝度、コントラストの調整を行う。
【0033】
画像制御部6bは、検出装置1において、蛍光観察画像及び通常観察画像を切り替えて表示すること、及びこれらを重ね合わせて同時に表示することを可能とするような構成である。そのため、画像制御部6bは、重畳画像形成部6cと画像切替部6dとを有する。切り替え表示のため、画像切替部6dは、自動又は手動により、表示される観察画像を切り替える。また、重ね合わせ表示のため、重畳画像形成部6cは、撮像装置5から出力された蛍光観察画像と通常観察画像を重畳し、重畳観察画像を形成する。
【0034】
また、制御ユニット6は、照射制御装置4と接続されている。
【0035】
制御ユニット6には、画像表示装置7及び画像記録装置8が接続されている。画像表示装置7の表示部7aにおいて、制御ユニット6から出力された観察画像の画像データが、センチネルリンパ節21を検出するための観察画像として表示される。この画像表示装置7としては、例えば、CRTモニタや、撮像装置5であるCCDカメラに取り付けられた液晶ディスプレイなどを用いることができる。また、画像記録装置8は、制御ユニット6から出力された画像データを記録するための記録手段である。この画像記録装置8としては、例えば、画像データを記録媒体であるビデオテープに記録するビデオテープレコーダなどを用いることができる。
【0036】
図1に示したセンチネルリンパ節検出装置1を用いたセンチネルリンパ節の検出方法について説明する。まず、蛍光色素であるインドシアニングリーンを腫瘍近傍に注入する。所定の時間経過後、インドシアニングリーンは、リンパ流によってセンチネルリンパ節21に到達する。
【0037】
次に、蛍光観察画像を取得する場合には、このセンチネルリンパ節21を含む生体観察部20に対して、励起光源2aにより波長750nmの励起光10を照射する。これにより、この生体観察部20から近赤外波長帯域の蛍光像11が発せられる。この蛍光像11は、その後、光学フィルタ3を透過し、撮像装置5であるCCDカメラにより撮像される。撮像された蛍光観察画像は、制御ユニット6へ出力され、そこで必要に応じ調整等が行われた後、画像表示装置7の表示部7aにおいて表示される。
【0038】
一方、通常観察画像を取得する場合には、このセンチネルリンパ節21を含む生体観察部20に対して、照明光源2bにより波長840nmの照明光12を照射する。これにより、生体観察部20による照明光12の反射光からなる通常像13が得られる。なお、照明光12の波長は、光学フィルタ3の透過波長帯域内にあるように、好適には、インドシアニングリーンから発せられる蛍光の波長近傍であるように設定される。この通常像13は、その後、光学フィルタ3を透過し、撮像装置5であるCCDカメラにより撮像される。撮像された通常観察画像は、制御ユニット6へ出力され、そこで必要に応じ調整等が行われた後、画像表示装置7の表示部7aにおいて表示される。
【0039】
また、重畳観察画像を取得する場合には、まず上述した方法により、蛍光観察画像と通常観察画像とを、制御ユニット6において取得する。その後、重畳画像形成部6cにおいてこれらを重畳し、重畳観察画像を形成する。形成された重畳観察画像は、画像表示装置7に出力され、画像表示装置7の表示部7aにおいて表示される。
【0040】
これらの観察画像の表示は、各観察画像を切り替えて表示、あるいは重畳観察画像により重ね合わせて同時に表示することができるよう、制御ユニット6の画像制御部6bによって制御される。また、重畳観察画像以外に、蛍光観察画像と通常観察画像を重ね合わせて同時に表示する方法として、例えば、通常観察画像を画像表示装置7の表示部7a上に白黒画像としてあらかじめ表示しておき、その上に色を着けた蛍光観察画像を重ねて表示する方法がある。これによっても、蛍光観察画像と通常観察画像が同時に表示される。
【0041】
また、制御ユニット6は、照射制御装置4と接続されている。照射制御装置4は、表示させる観察画像に応じて、励起光源2a及び照明光源2bの照射を、例えばメカニカルスイッチあるいは電気的スイッチなどで制御する。これにより、照射を様々に制御することが可能となり、例えば、蛍光観察画像と通常観察画像を交互に表示させるべく、励起光源2aと照明光源2bとを交互に照射させることも可能となる。また、制御ユニット6から出力される観察画像の画像データは、必要に応じて、画像記録装置8において記録媒体に記録される。
【0042】
このようにして表示された観察画像に基づいて、蛍光観察画像に表されたリンパ節の位置を皮膚上にペン等でマークする。その後、測定を中止し、皮膚上にマークした部位を切開して、リンパ節の生検を行う。
【0043】
上記実施形態によるセンチネルリンパ節検出装置1の効果について説明する。
【0044】
上記実施形態では、蛍光観察画像及び通常観察画像の双方を取得できる。また、制御ユニット6の画像切替部6dで表示させる観察画像を切り替えることによって、切り替え表示が可能である。さらに、制御ユニット6の重畳画像形成部6cで、重畳観察画像の形成、あるいは画像切替部6dによって観察画像を重ね合わせることにより、重ね合わせての同時表示が可能となる。ここで、図4に、画像表示装置7において表示される(a)蛍光観察画像、(b)通常観察画像、及び、(c)これらが重畳された重畳観察画像を模式的に表す。このように、切り替え表示ができることによって、蛍光観察画像と通常観察画像とを比較することが可能となる。また、重ね合わせての表示ができることによって、生体観察部20のどの部分からの蛍光なのかを明確に確認することが可能となる。このように、目的に合わせて所望の観察画像を表示させることができるため、生体観察部20内でのリンパ節の位置を容易に検出することが可能となる。
【0045】
また、光学フィルタ3は、励起光10の生体観察部20による反射光をカットすると同時に、生体観察部20から発せられる蛍光11の波長を含む透過波長帯域で光を透過する。さらに、照明光12は、その波長が上述の透過波長帯域に含まれるように設定される。そのため、1つの光学フィルタ3で、蛍光像11及び通常像13の双方を透過させることができ、蛍光像11あるいは通常像13を得るために別々の光学フィルタを用意する必要がない。これにより、検出装置1は、その構成を単純にすることが可能となる。
【0046】
さらに、上述したように、蛍光像11と通常像13とを透過させるのに、2つの異なる光学フィルタを用いなくてもよい。そのため、蛍光像11と通常像13を重ね合わせるための光学的な手段であるハーフミラーや画像装置等を必要としない。このことにより、さらに構成を単純にすることが可能となる。また、このように構成が単純となることによって、簡便で安価な小型化された装置が可能となる。
【0047】
また、照明光12の波長は、光学フィルタ3の透過波長帯域内にあるように設定される。そのため、照明光として白色光を使用した場合に比べ、撮像時に発生するレンズの収差によるボケが抑制される。特に、励起光として、近赤外波長帯域内の波長の光を用いた場合、白色光に含まれる光のほとんどが、励起光をカットする光学フィルタを透過できない。そのため、光学フィルタを交換することなく、白色光を照明光とした通常像を得ることは困難である。
【0048】
また、照明光12として蛍光波長近傍の波長の光が用いられることにより、透過波長帯域の狭い光学フィルタを用いたとしても、照明光12の波長は、光学フィルタの透過波長帯域内に収まる。そのため、光学フィルタに広い透過波長帯域を要求しないですむため、光学フィルタの入手が容易になる。また、照明光の波長を含む蛍光波長帯域のみを透過波長帯域とする光学フィルタを用いることによって、不要な光をより多くカットすることが可能となる。
【0049】
また、図1に示した検出装置1においては、励起光源2a及び照明光源2bが設置された支持板2dと、蛍光像11及び通常像13を撮像する撮像装置5とを一体に設けた構成としている。これにより、光源ユニット2と撮像装置5との光軸合わせなどの設置調整作業が不要となるため、撮像装置5において蛍光像11と通常像13を効率良く撮像することが可能となる。また、検出装置1を移動する際にも、光源ユニット2と撮像装置5とを別々に移動させる必要がなく、装置も小型化可能である。そのため、単純な装置構成で取り扱いが容易な検出装置1が実現される。
【0050】
さらに、励起光源2a及び照明光源2bは、支持板2dの同一面2e上に、所定の配置関係で設置されている。このため、生体観察部20に対して、励起光10と照明光12とを交互に照射することが、容易にできる。また、必要に応じて、励起光10と照明光12とを同時に照射することも可能である。
【0051】
制御ユニット6、画像表示装置7、及び画像記録装置8については、光源ユニット2及び撮像装置5とは別に設置しても良く、あるいはそれらと一体に設置しても良い。また、画像表示装置7については、図5に示す画像表示装置70のように、観察者の頭部に装着可能なもの(例えばゴーグル型やめがね型)を用いることが好ましい。これにより、観察時に画像表示装置7等を移動したり手で保持したりする必要がなくなり、観察以外の作業の自由度を大きくすることができる。この場合、画像表示装置7以外の励起光源、照明光源、撮像装置、制御ユニット、照射制御装置等についても、画像表示装置とともに一体に装着可能に構成しても良い。
【0052】
また、本実施形態においては、制御ユニット6からの観察画像に対して画像記録装置8を設けている。これにより、観察時の観察画像を記録することができる。ただし、このような画像記録装置8については、不要であれば設けない構造としても良い。
【0053】
ところで、特許文献2では、蛍光波長近傍の波長を発する光源を、特許文献3では、蛍光物質を励起しない波長の光を発する光源を用いて画像を取得し、蛍光像から得られる画像データに画像処理を施している。しかし、これらの画像は蛍光観察画像の補正用データとして使用されるにすぎない。そのため、蛍光観察画像と通常観察画像とを同時に観察することはできない。これに対して、本発明では、蛍光観察画像と通常観察画像とを同時に観察することができるため、センチネルリンパ節の位置を検出するのに有用である。
【0054】
本発明によるセンチネルリンパ節検出装置は、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、励起光源及び照明光源については、上記した実施形態では複数の励起光源2a及び照明光源2bを有する光源ユニット2を用いたが、単一の励起光源及び照明光源を用いても良い。また、励起光源、照明光源として別々の光源を用いる代わりに、2波長の光を出射する2波長LEDを用いても良い。この場合、2波長LEDから出射される2つの異なる波長の光が、それぞれ励起光、照明光として用いられる。また、撮像装置から出力される画像データについては、LIVE映像(30Hz)における場合など、画像データでのノイズが問題となる場合には、リカーシブルフィルタ等のフィルタリング手法を採用することによってノイズを低減でき、より鮮明な蛍光観察画像を得ることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、励起光源2a及び照明光源2bが支持板2dに設置されていたが、こうした支持部材を備えず、これらの光源が、1つの支持部材に設置されていない構成としても良い。また、支持部材として、上記実施形態では、支持板2dを用いたが、支持部材は板状の構造に限られない。また、上記実施形態では、励起光源2a及び照明光源2bは、支持板2dの同一平面上に設置されていたが、これらの設置は支持板の同一平面上に限られない。また、支持板上における光源の配置も、上記実施形態での配列関係に限定されない。また、制御ユニット6は、不要であれば、画像調整部6a、重畳画像形成部6c、あるいは画像切替部6dを有していなくても良い。さらに、照射制御装置4、制御ユニット6については、不要であれば設けない構造としても良い。
【0056】
上記構成の検出装置は、センチネルリンパ節検出装置に限らず、一般にリンパ節検出装置として適用可能である。
【0057】
また、センチネルリンパ節の観察に用いる蛍光色素については、一般には水溶性の蛍光色素が用いられるが、蛍光色素を生理食塩水等で溶いた蛍光色素は分子量が小さいため、最初に到達したリンパ節に留まらずに2番目、3番目のリンパ節に到達してしまう場合がある。このような場合には、近赤外の蛍光を発する数10nm径の量子ドット、または、金属コロイドやラテックスビーズに蛍光試薬を結合させた蛍光トレーサを用いることにより、センチネルリンパ節の位置同定の精度向上が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、装置構成が単純で、リンパ節の位置の検出が容易なリンパ節検出装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】センチネルリンパ節検出装置の第1実施形態の構成図である。
【図2】図1に示した検出装置に用いられる光源ユニットの構成を示す正面図である。
【図3】光の波長に対する光学フィルタの透過率を表すグラフである。
【図4】生体観察部についての(a)蛍光観察画像、(b)通常観察画像、(c)重畳観察画像を模式的に示す図である。
【図5】図1に示した検出装置を観察者の頭部に装着した様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1…センチネルリンパ節検出装置、2…光源ユニット、2a…励起光源、2b…照明光源、2c…開口部、2d…支持板、2e…支持板の前面、3…光学フィルタ、4…照射制御装置、5…撮像装置、6…制御ユニット、6a…画像調整部、6b…画像制御部、6c…重畳画像形成部、6d…画像切替部、7…画像表示装置、7a…画像表示装置の表示部、8…画像記録装置、10…励起光、11…蛍光像、12…照明光、13…通常像、20…生体観察部、21…センチネルリンパ節、Ax…光源ユニットの光軸(支持板の中心軸)、70…画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長の蛍光を発する蛍光色素が予め注入された腫瘍近傍におけるリンパ節を含む生体観察部に励起光を照射する励起光源と、
前記励起光の照射によって前記生体観察部から発せられる蛍光の波長を含む透過波長帯域で光を透過する光学フィルタと、
前記透過波長帯域に含まれるように設定された波長の照明光を前記生体観察部に照射する照明光源と、
前記生体観察部から発せられる前記蛍光からなり、前記光学フィルタを透過した蛍光像、及び前記照明光の前記生体観察部による反射光からなり、前記光学フィルタを透過した通常像を撮像し、それぞれに対応する蛍光観察画像及び通常観察画像を出力する撮像手段と、
前記撮像手段から出力された前記蛍光観察画像及び前記通常観察画像をリンパ節を検出するための画像として表示する画像表示手段と、
を備えたことを特徴とするリンパ節検出装置。
【請求項2】
前記照明光源は、前記生体観察部に前記蛍光の波長近傍に設定された波長の前記照明光を照射することを特徴とする請求項1記載のリンパ節検出装置。
【請求項3】
前記励起光源及び前記照明光源を一体に支持する支持部材をさらに備え、
前記支持部材は、前記撮像手段と一体に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のリンパ節検出装置。
【請求項4】
前記励起光源及び前記照明光源は、前記支持部材の同一面上に、所定の配置関係で設置されていることを特徴とする請求項3記載のリンパ節検出装置。
【請求項5】
前記画像表示手段は、観察者の頭部に装着可能なことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のリンパ節検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−14868(P2006−14868A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194691(P2004−194691)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】