説明

リン光性金属錯体化合物、その製造方法、並びに放射構成要素

本発明は、リン光性金属錯体化合物、その製造方法、及び光線放射構成要素、とりわけ、発光有機電気化学セル(organic light emitting electrochemical cell OLEEC)に関する。ここで初めて提示される青色発光素子のうちいくつか、とりわけここで紹介されるイリジウム錯体化合物のクラスは、現在そもそも存在しているうち最も青い発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン光性金属錯体化合物、その製造方法、及び光線放射構成要素、とりわけ、発光有機電気化学セル(organic light emitting electrochemical cell OLEEC)に関する。
【0002】
極めて一般的なことだが、有機エレクトロルミネセンス要素は、2つの電極間に存在する1つの有機層を有する。電極に電圧がかけられると直ちに、電子はカソードから有機発光層の最低非占有分子軌道に注入され、そしてアノードへと移動する。これに相応して、ホールはアノードから有機層の最高占有分子軌道に注入され、そして相応してカソードに移動する。移動するホールと移動する電子とが有機発光層内で発光性物質に出会うと、励起子が生じ、これは発光しながら崩壊する(zerfallen)。光がそもそもエレクトロルミネセンス要素から出て来られるように、少なくとも1つの電極は透明でなければならず、たいていの場合は1つの電極がインジウム−スズ酸化物からできており、これがアノードとして使用される。ITO層は通常、ガラス担体上に堆積される。
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)では、とりわけいわゆる低分子で構成されたOLEDの場合には、いわゆる多層構造が実現される。と言うのも、付加的に発光層に対してさらになお効率を高める層、例えばホール注入層及び/又は電子注入層が、より良好な電荷キャリア移行のために、電極間に配置されているからである。この際にしばしば高反応性材料が使用され、その結果、発光要素の寿命のためにはとりわけ、カプセル化が決定的な役割を果たす。と言うのも、カプセル化が補助層を分解から守るからである。
【0004】
このためには代替的に、いわゆる有機発光電気化学セル(OLEEC)があり、これはOLEDよりも単純に構成されており、たいていの場合は2つの電極間への有機層の容易な導入と、後続のカプセル化が実現されている。OLEECの活性層は通常、イオン導体/電解質又は完全に不活性なマトリックス(絶縁体)と発光性化学種との混合物の材料からできている。このために適しているのは、イオン性遷移金属錯体(ionisized transistion metal complexes、略してiTMC)であり、例えばポリマーマトリックス中のルテニウム−トリス−ビピリジン−ヘキサフルオロホスフェートである。しかしながらなお、適切な材料について充分な選択枝は存在せず、とりわけ青色を出す材料が不足している。
【0005】
従って本発明の課題は、OLEECセルでの使用に適した材料クラスを創り出すこと、並びにその合成法を提供することであり、さらに本発明の課題は、前記材料クラスを用いて構成されているOLEECセルを提供すること、並びに前記材料クラスのOLEECセルでの使用である。
【0006】
本発明の対象及び課題の解決は、請求項、明細書、及び図面によって開示されている。
【0007】
これに相応して本発明の対象は、少なくとも1つの金属中心原子Mと、前記金属中心原子によって配位された少なくとも1つの配位子(トリアゾール単位を有する二座配位子を有するもの)とを有する、リン光性金属錯体化合物である。本発明の対象はさらに、基材、基材上の第一電極層、第一電極層上の有機発光層、及び有機発光層上の第二の電極層を有する光線放射構成要素であり、この際、前記有機発光層は、リン光性金属錯体化合物を含む。最後に本発明の対象は、リン光性金属錯体化合物の製造方法であり、以下の方法工程:
A)中心原子に配位された交換配位子を有する、金属中心原子の中心原子化合物を製造する工程、
B)金属錯体化合物を形成するために、中心原子化合物と、第一の溶剤に溶解させた配位子とを混合し、この際、二座で中心原子に配位され、かつトリアゾール単位を含む配位子によって、前記交換配位子が置き換えられる工程
を含むものである。
【0008】
これはとりわけ、以下の構造式I:
【化1】

の金属錯体の材料クラスである。
【0009】
この際に錯体は、2つの公知の配位子L(式中、左に記載)を有し、これらは相互に独立して選択することができ、同一であるか又は異なっていてよく、そして好適には二座錯体化、とりわけ1つの炭素原子と1つの窒素原子によって二座錯体化することができ、この際、これらの公知の配位子Lは例えば、本発明の実施態様によれば、フェニルピリジン配位子を有する古典的な、また市販の発光体(青くするために例えばフッ素置換されているもの)である。中心原子としてイリジウムを有する公知の錯体は、2,4−ジフルオロフェニル−2−ピリジル−イリジウム(III)−ピコリネート(FIrPic)、又はFIr6である。
【0010】
材料クラスのさらなる実施態様によれば、金属原子の左側に示された文献から既に公知の2つの配位子Lは例えば、以下の文献:
WO 2005/097942 A1, WO 2006/013738 A1, WO 2006/098120A1, WO 2006/008976 A1, WO 2005/097943 A1, WO 2006/008976 A1(コニカミノルタ)、又はUS 6,902,830, US 7,001,536, US 6,830,828, WO 2007/095118 A2, US 2007 0 190 359 A1(UDC), EP 1 486 552 B1
から選択されており、ここで挙げられるのは例えば、2−フェニル−ピリジン、又は2−フェニル−イミダゾール、並びに類似構造体、例えばフェナントリジンである。
【0011】
さらなる有利な実施態様によれば、2つの公知の配位子Lは例えば、濃い青を放射する供給源として役立つカルベン官能性を有している。この配位子Lの例は、公開公報WO 2005/19373、又はEP 1 692 244 B1に見られる。
【0012】
あり得る配位子Lのさらなる例は、公開公報EP 1 904 508 A2、WO 2007/004113 A2、WO 2007/004113 R4A3から公知であり、この際に配位子Lはまた、相応する供与体基、例えばジメチルアミノを有する少なくとも1つのフェニルピリジン配位子を有する、荷電された金属錯体の範囲で示されている。これらの化合物は錯体のLUMOレベルが比較的高く、この際、受容体基、例えば2,4−ジフルオロがフェニル環に導入され、ホモ軌道のレベルを低下させる。配位子とその置換基の変化によって、完全な可視スペクトルによる放射色を完全に変えられることが判明している。
【0013】
配位子Lに加えて付加的に、構造式Iに記載の金属錯体は少なくとも1つのトリアゾール配位子、つまり1,2,3−トリアゾール又は1,2,4−トリアゾールを有する。トリアゾール単位は、トリアゾール環の隣接する2つの窒素原子に対してオルト位に複素環式芳香族置換基、又は芳香族置換基を有する。こうして一般式Iの構造が生じる。
【0014】
1,2,3−トリアゾール化合物は、Z2=N、かつZ1=Cによって、例えば図2aに示されているように得られ、これに対して1,2,4−トリアゾール化合物は、Z2=C、かつZ1=Nの場合に生じる。環の番号付けシステムは、1,2,3−トリアゾールをもとに展開し、そして本明細書の意味合いにおいては、提示したように使用される。この際、明らかに1,2,4−トリアゾールは、1,2,3−トリアゾールから、置換基ZについてC及びNの交換によって得られる。両方の場合で、置換基(配位子全体の二座性をもたらし、かつ好ましくはアリール置換基であるもの)を構成する炭素原子は4番である。
【0015】
好ましくは、M=イリジウムである。しかしながらまた金属、例えばRe、Ru、Rh、Os、Pd、Pt、Au、Hg及びCuも可能である。この場合、相応する錯体の化学量論は、その都度の中心原子の配位球によって変化するが、これはとりわけ、すべての金属がイリジウムのように八面体錯体を形成するわけではないからである。
【0016】
Yは好ましくは、窒素である。これによってヘテロトリアゾール配位子は、内部配位球については中性である。電荷を安定化可能な、つまり「チャージできる」1つの又は複数の荷電性置換基は、比較的外側の位置に配置することができる。複素環式芳香族環は、架橋炭素原子に対してオルト位に、トリアゾール単位中の窒素原子2の他に1つの窒素原子を有するが、これは配位子の第二のキレート形成原子である。Y=Cの場合、古典的なシクロメタル化された化合物が生じ、この際トリアゾール配位子は形式上、負に帯電している。
【0017】
このためM=Irの場合には、中性の化学種が得られる。選択的には、2つの芳香族単位はさらに、第二架橋によって結合されていてよい。
【0018】
材料クラスの他の実施態様によれば、R1及び/又はR2がさらなる金属錯体の他の基R1’及び/又はR2’と結合されている。ここで結合性の基は、下記の例から読み取ることができる。より官能性が高い化合物類が選択される場合、より高度に架橋された錯体からポリマー錯体まで利用できる。別の面で架橋はまた、公知の配位子Lのうちの1つによって、配位子と中心原子を有する1つ又は複数のさらなる錯体を形成することができる。この面によっても、オリゴマー性及びポリマー性の化合物の到達が可能になる。
【0019】
Mはまた、Re、Os、Pt、Au、Hg、並びにRu、Rh、Pd及びAg、Cuであってよい。
【0020】
YとZが両方ともNである場合には、下記構造式Ia
【化2】

が生じる。
【0021】
本発明による金属錯体化合物は好ましくは、構造式II
【化3】

【0022】
[式中、
M=Ir、Re、Os、Pt、Au、Hg、Ru、Rh、Pd、Ag、Cu
Y、Z=N又はC
R=相互に独立して、H、分枝状のアルキル基、非分枝状のアルキル基、縮合アルキル基、環状アルキル基、完全に又は部分的に置換された非分枝状アルキル基、完全に又は部分的に置換された分枝状アルキル基、完全に又は部分的に置換された縮合アルキル基、完全に又は部分的に置換された環状アルキル基、アルコキシ基、アミン、アミド、エステル、炭酸エステル、芳香族化合物、完全に又は部分的に置換された芳香族化合物、複素環式芳香族化合物、縮合芳香族化合物、完全に又は部分的に置換された縮合芳香族化合物、複素環式化合物、完全に又は部分的に置換された複素環式化合物、縮合複素環式化合物、ハロゲン、擬ハロゲン、
アリール=任意の、部分的に又は完全に置換された芳香族基又は複素環式芳香族基、この基は縮合されていてもよく、さらなる化合物に対して架橋で連結することができ、かつ/又は縮合されて、又はさらなる芳香族化合物又は複素環式芳香族化合物と融合していてもよく、並びにさらなる環状化合物と結合されて存在していてよい]
の群を含む。
【0023】
以下、トリアゾール環、例えば6員環の2つの隣接する窒素原子に対してオルト位にある複素環式芳香族化合物の環構造について幾つか例を挙げる。これは最も簡単な場合、ピリジン環であるか、又はその誘導体である:
【化4】

この式中、Xは基−C−Rである(ここでRは下記置換基のうちの1つである)か、又は自由電子対を有する窒素原子である。
【0024】
トリアゾールの置換基「a」の例は以下のものである:
ピリジン誘導体、ここでX1、X2、X3、X4は全体で基−C−Rであり、この際にすべてのRは相互に独立しており、かつ下記置換基のうちの1つである。
ピリミジン誘導体、ここでX2=N、又はX=N4であり、その他すべての基は−C−Rである。
ピラジン誘導体、ここでX3=N、その他すべての基は−C−Rである。
ピリダジン誘導体、ここでX1=N、その他すべての基は−C−Rである。
1,3,5−トリアジン誘導体、ここでX2=N、X4=N、その他すべての基は−C−Rである。
【0025】
トリアゾールの置換基「b」の例は以下のものである:
イソキノリン誘導体、ここですべてのXは、トリアゾール配位子に対して1位で結合を有する−C−R基である。
キナゾリン誘導体、ここでX2=N、その他すべての基は−C−R型である。
フタラジン誘導体、ここでX1=N、その他すべての基は−C−R型である。
【0026】
トリアゾールの置換基「c」の例は以下のものである:
イソキノリン誘導体、トリアゾールの置換基「b」について挙げた誘導体のイソキノリン誘導体に対する構造異性体である。
【0027】
トリアゾールの置換基「d」の例は以下のものである:
キノリン誘導体、ここですべてのXは−C−R型である。
キノキサリン誘導体、ここでX5=Nであり、他のすべての基は−C−R型である。
キナゾリン誘導体、ここでX6=Nであり、他のすべての基は−C−R型である。
【0028】
より高度に縮合されたシステムを同様に製造することができ、その例は例えばプテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントリジン、及び/又はプリン、及びこれらの誘導体、並びに配位窒素原子を有する縮合環中に付加的なヘテロ原子、例えば窒素又は硫黄を有する化合物である。
【0029】
以下、トリアゾール環、例えば5員環の2つの隣接する窒素原子に対してオルト位にある複素環式芳香族化合物の環構造について、例を幾つか挙げる。
【0030】
最も簡単な例では、ここでも6員環がピリジン環である。ここで、複素環式5員環置換されたトリアゾールの例を挙げる:
【化5】

【0031】
トリアゾールの置換基「a」の例は以下のものである
:オキサゾール誘導体、ここでX3=O、又はX2=Oであり、その他すべての基は−C−R型である。
チアゾール誘導体、ここでX3=S、又はX2=Sであり、その他すべての基は−C−R型である。
イソキサゾール誘導体、ここでX1=O、その他すべての基は−C−R型である。
イソチアゾール誘導体、ここでX1=S、その他すべての基は−C−R型である。
イミダゾール誘導体、ここでX1、X2は−C−R型の基であり、X3は−N−R型の基である。ピラゾール誘導体、ここでX2、X3は−C−R型の基であり、X1は−N−R型の基である。テトラゾール誘導体、ここでX1、X2、X3はすべてNである。
【0032】
トリアゾールの置換基「b」の例は以下のものである:
ベンゾイミダゾール誘導体、ここでX5はN−R型、基X1、X2、X3、X4はC−R型である。さらなる窒素原子は、併合されたベンゾール環に含まれていてよく、こうしてベンゾイミダゾール類似体のピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、又はピリダジン環が、窒素によるC−Rの置換によって生じる。例えばプリン誘導体:X5はN−R型の基であり、X1、X3はN型、X4は−C−R型である。
【0033】
すべての置換基Rは、相互に独立してH、メチル基、エチル基、或いは一般的には線状若しくは分枝状の、縮合された(デカヒドロナフチル、アダマンチル)、環状の(シクロヘキシル)、又は完全に若しくは部分的に置換されたアルキル基(C1〜C20)であってよい。アルキル基は官能基、例えばエーテル(エトキシ基、メトキシ基など)、エステル基、アミド基、炭酸エステルなど、又はハロゲン、好ましくはFであってよい。Rはアルキル型の基に限られることはなく、Rは置換された、又は非置換の芳香族システム、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリルなど、及びベンジルなどを有することができる。
【0034】
基本的な芳香族システムの構成は、以下の表に示されている。
【化6】

【0035】
ここでは簡略化のため、基本的な構造のみを示した。ここで置換基は、潜在的な結合価を有するあらゆる位置に現れ得る。
【0036】
また良好には、基Rは有機金属性、例えばフェロセニルカチオン、フタロシアニニルカチオン、又は金属カチオンであってよく、例えば官能化されたクラウンエーテル、例えば下記のものによって取り囲まれていてよい。
【化7】

【0037】
最後に基Rはまた荷電されていてよく、これによって電荷が荷電されてない錯体にもたらされる(このことはOLEEC適用に有利である)か、又は荷電された錯体を中和することができ、これによって基RはOLED適用に利用可能になる。
【0038】
荷電された基Rの例は以下のものである:
【化8】

【0039】
1,2,3−トリアゾールの合成のためには様々な出発物質があるが、ここで引用によってその幾つかを本願明細書の対象にする。
【0040】
合成例1:
【化9】

【0041】
アルケニルハロゲンとアジ化ナトリウムからの、1Hトリアゾールのパラジウム触媒合成は、パラジウム化学との関連では完全に新しい反応である。これについては、J. Barluenga, C. Valdes, G. Beltran, M. Escribano, F. Aznar, Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 6893-6896を参照。
【0042】
合成例2:
【化10】

【0043】
J. Barluenga, C. Valdes, G. Beltran, M. Escribano, F. Aznar, Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 6893-6896を参照。
【0044】
合成例3:
【化11】

【0045】
これは、銅ナノ粒子によって特別な炭上で不均一触媒可能な、アジ化物と末端位アルキンとの高効率化学である。この反応は、Et3Nの化学量論的な添加により、温度上昇により、又はマイクロ波の使用により加速させることができる。B. H. Lipshutz, B. R. Taft, Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 8235-8238参照。
【0046】
合成例4:
【化12】

【0047】
銅で触媒されたアジ化物の末端アルキンへの段階的なシクロ付加は、広い範囲(Spektrum)に開かれており、1,4−ジ置換1,2,3−トリアゾールの製造を、高収率かつ高レジオ選択性で可能にする。V. V. Rostovtsev, L. G. Green, V. V. Fokin, K. B. Sharpless, Angew. Chem. , 2002, 114, 2708-2711参照。
【0048】
合成例5:
【化13】

【0049】
銅(I)で触媒された、アミン、ハロゲン化プロパルギル及びアジ化物の3成分反応は、水中で、1−置換−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イルメチル)−ジアルキルアミンにつながる。合成的な利点は高選択性の他に、僅かな環境負荷、原料の分野(substrate scope)が幅広いこと、並びに穏やかな反応条件と良好な収率である。Z. -Y. Yan, Y. -B. Zhao, M. -J. Fan, W. -M. Liu, Y. -M. Liang, Tetrahedron, 2005, 61, 9331-9337を参照。
【0050】
合成例6:
【化14】

【0051】
これは、ヨウ化銅(I)により触媒される、1,4,5−トリ置換1,2,3−トリアゾールのレジオ特定合成のための方法である。これは、5−ヨウ素−1,4−ジ置換1,2,3−トリアゾールのレジオ特定合成の初めての例であり、この合成はさらに発展させて、1,4,5−トリ置換1,2,3−トリアゾール誘導体を生成させることができる。 Y. -M. Wu, J. Deng, Y. L. Li, Q. -Y. Chen, Synthesis, 2005,1314-1318参照。
【0052】
合成例7:
【化15】

【0053】
平均〜良好な収率でエノールエーテルにアルキルアジ化物をシクロ付加することによって、溶剤不含条件で1,2,3−トリアゾールを製造した。この反応により、環融合されたトリアゾールの利用(これは、アルキン−アジ化物のシクロ付加によっては到達できない)が開かれる。その上この反応は、実験室規模から容易にスケールアップできる。こうして製造される1,2,3−トリアゾールは、容易に誘導化できる。
【0054】
D. R. Rogue, J. L. Neill, J. W. Antoon, E. P. Stevens, Synthesis, 2005, 2497-2502.参照。
【0055】
合成例8:
【化16】

【0056】
対応するアミンからの芳香族アジ化物の合成は、穏やかな条件下で、亜硝酸tert−ブチルとアジドトリメチルシランを用いて行う。様々な芳香族アミンの1,4−ジ置換1,2,3−トリアゾールは、アジ化物中間段階を単離する必要もなく、優れた収率で得ることができる。
【0057】
K. Barral, A. D. Moorhouse, J. E. Moses, Org. Lett . , 2007, 9, 1809-1811参照。
【0058】
合成例9:
【化17】

【0059】
不活性末端アルキン、アリルカーボネート、及びアジ化トリメチルシリルを用いた三成分カップリング反応により、パラジウム(0)及び銅(I)のバイメタル触媒下、トリアゾールを製造した。得られるトリアゾールの脱アリル化も記載される。S. Kamijo, T. Jin, Z. Huo, Y. Yamamoto, J. Am. Chem. Soc, 2003, 125, 7786-7787参照。
【0060】
合成例10:
【化18】

【0061】
これは、溶剤不含条件下、TBAFで触媒された2−アリール−1−シアノ−又は2−アリール−1−カルボエトキシ−1−ニトロエテンの、TMSN3による[3+2]シクロ付加であり、これは4−アリール−5−シアノ−1H−1,2,3−トリアゾール、又は4−アリール−5−カルボエトキシ−1H−1,2,3−トリアゾールの製造を、穏やかな反応条件下で良好〜秀逸な収率で可能にするものである。
【0062】
D. Amantini, F. Fringuelli, O. Piermatti, F. Pizzo, E. Zunino, L. Vaccaro, J. Org. Chem., 2005, 70, 6526-6529参照。
【0063】
又は:
【化19】

【0064】
D. Amantini, F. Fringuelli, O. Piermatti, F. Pizzo, E. Zunino, L. Vaccaro, J. Org. Chem., 2005, 70, 6526-6529参照。
【0065】
合成例11:
【化20】

【0066】
非常に効率的なシクロ付加によって、トリアゾールベースのモノホスフィン配位子が製造された。
【0067】
こうして得られるパラジウム錯体は、鈴木−宮浦カップリング反応にとって、また塩化アリールのアミン化反応にとって非常に効率的な触媒である。
【0068】
D. Liu, W. Gao, Q. Dai, X. Zhang, Org. Lett . , 2005, 7, 4907〜4910参照。
【0069】
合成例12:
【化21】

【0070】
多置換1,2,3−トリアゾール合成のための高効率の手法が、パラジウムで触媒されたダイレクトなC−5アリール化反応によって提示される。
【0071】
S. Chuprakov, N. Chernyak, A. S. Dudnik, V. Gevorgyan, Org. Lett., 2007, 9, 2333-2336参照。
【0072】
さらになお例示的に、個々の合成例を詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】a)で得られる化合物の1Hプロトンスペクトルを示す。
【図2】b)で得られる化合物のNMRスペクトルを示す。
【図3】b)で得られる化合物のNMRスペクトルを示す。
【図4】b)で得られる化合物のNMRスペクトルを示す。
【図5】b)で得られる化合物のNMRスペクトルを示す。
【図6】テトラフルオロボレートのNMRスペクトルを示す。
【図7】テトラフルオロボレートのNMRスペクトルを示す。
【図8】テトラフルオロボレートのNMRスペクトルを示す。
【図9】[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]PF6の光ルミネセンススペクトルを示す。
【図10】[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]PF6のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図11】化合物[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]PF6の光−電流−電圧−特性値を示す。
【図12】テトラフルオロボレート化合物[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]BF4エレクトロルミネセンスを示す。
【図13】化合物[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]BF4の光−電流−電圧−特性値を示す。
【図14】化合物ビス−(2,4−ジフルオロフェニル−ピリジル)(4−ピリジル−1−フェニル−トリアゾール)イリジウム(III)−テトラフルオロボレートの1−H−NMRを示す。
【図15】架橋されたイリジウム(III)−トリアゾール化合物の吸収スペクトルを示す。
【図16】77ケルビンの温度での上記の架橋されたイリジウム(III)化合物の光ルミネセンススペクトルを示す。
【図17】室温での、架橋されたイリジウム(III)化合物のさらなる光ルミネセンススペクトルを示す。
【0074】
実施例1:[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]BF4の合成:a)配位子の製造:
【化22】

【0075】
説明1:アジ化物成分1当量と2−エチルピリジン1当量を、臭化銅及びペンタメチルジエチレントリアミンの触媒量(ともに約0.04当量で)とともに、新たに蒸留された酸素不含のテトラヒドロフラン(6ml)中で撹拌する。この混合物を12時間室温で窒素雰囲気下、反応させる。溶剤の除去後に減圧下で、移動相としての20/80のヘキサン/エーテル中でカラムクロマトグラフィーによって固体を精製する。白色の結晶性化合物が得られる。
【0076】
図1には、この化合物の1Hプロトンスペクトルが示されている。

HRMSは(C17204)H 281.1761[MH]について計算、281.1648で発見。
【0077】
b)配位子と、クロロ架橋されたイリジウム出発化合物との反応
【化23】

【0078】
ジクロロ架橋されたイリジウム錯体1当量とアダマンチル配位子2.2当量を、ジクロロメタン30ml及びメタノール10mlに溶解させる。それからこの混合物を2口の丸底フラスコに入れ、そしてここで4時間、45℃で窒素雰囲気下、反応させる。混合物を室温に冷却後、溶剤を減圧下で留去し、そして残りの配位子を、ケイ酸塩粉末によるクロマトグラフィーで移動相として酢酸エチルとメタノールを用いて分離する。塩化物の形態で精製された生成物は、メタノール中に再度溶解させる。その後、NH4PF6の飽和溶液を、メタノール中に添加する。この混合物を数時間撹拌し、それから減圧下で濃縮して黄色い固体を沈殿させ、それからこの固体を水で3回(20ml×3度)、そして常温のメタノールで2回(20ml×2度)洗浄する。
【0079】
図2〜5はそれぞれ、この化合物のNMRスペクトルを示す。

HRMSはC39324IrN6 853.2254[M-PF6]について計算、853.2171で発見。
【0080】
c)塩化物からテトラフルオロボレートへの反応:
【化24】

【0081】
テトラフルオロボレートを得るために、上記のように得られる塩化物錯体の当量をアセトンに溶解させる。この溶液に、水に最小限溶解して存在するアンモニウムテトラフルオロボレート3当量を添加する。この混合物を一晩撹拌し、それから白色の粉末(アンモニウムテトラフルオロボレートの過剰量と考えられる)を濾別し、そしてこの溶剤を減圧下で留去する。得られる固体は部分的に水に溶解させ、溶けなかった部分を濾過し、そして複数回水で洗浄する。最後に、ジクロロメタンに溶解させ、そして硫酸マグネシウムで乾燥させる。
【0082】
図6〜8は、このテトラフルオロボレートのNMRスペクトルである。

HRMSはC39324IrN6 853.2254[M-BF4]について計算、853.2148で発見。
【0083】
図9〜10は、[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]PF6のスペクトルを示し、光ルミネセンススペクトル(図9)、及びエレクトロルミネセンススペクトル(図10)である。
【0084】
図11は、化合物[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]PF6の光−電流−電圧−特性値を示す。
【0085】
図12は、テトラフルオロボレート化合物[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]BF4エレクトロルミネセンスを示す。
【0086】
図13も光−電流−電圧−特性値を示すものだが、ここでは化合物[F2(ppy)Ir(アダマンチルトリアゾリルピリジン)]BF4のものである。
【0087】
図14は、化合物ビス−(2,4−ジフルオロフェニル−ピリジル)(4−ピリジル−1−フェニル−トリアゾール)イリジウム(III)−テトラフルオロボレートの1−H−NMRを示す。
【0088】
表1には、架橋されたイリジウム(III)化合物のレドックスポテンシャルが示されている。
【表1】

【0089】
測定は、(錯体については)水不含のアセトニトリル中で、配位子(Flu)についてはTHF中で行った。これらの値は、フェロセン/フェロセニウムを不活性標準として測定した。
【化25】

【0090】
図15は、架橋されたイリジウム(III)−トリアゾール化合物の吸収スペクトルを示す。
【0091】
図16は、77ケルビンの温度での上記の架橋されたイリジウム(III)化合物の光ルミネセンススペクトルを示す。
【0092】
図17は、室温での、架橋されたイリジウム(III)化合物のさらなる光ルミネセンススペクトルを示す。
【0093】
以下に示すのは、本発明による2つのトリアゾール配位子の構造であり、これらは例えば本発明に従って使用可能である。これによって、強力な青色発光体が製造される。
【化26】

【0094】
本発明は、有機発光電気化学セル(OLEEC)で使用できる青及び緑の放出体の製造に使用可能なトリアゾール配位子システムを記載する。ここで初めて示される青色発光体のうち幾つか、とりわけここで提示したイリジウム錯体化合物のクラスは、現在そもそも存在する中で最も青い放出体である。
【0095】
本発明は、リン光性金属錯体化合物、その製造方法、及び光線放射構成要素、とりわけ、発光有機電気化学セル(organic light emitting electrochemical cell OLEEC)に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属中心原子Mと、前記金属中心原子によって配位された少なくとも1つの配位子とを含む、リン光性金属錯体化合物であって、
前記配位子が、トリアゾール単位を有する二座配位子を有する、前記金属錯体化合物。
【請求項2】
前記トリアゾール単位が、1,2,3−トリアゾール及び1,2,4−トリアゾールの群から選択されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
架橋されている、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記金属中心原子が、以下の金属
Ir、Re、Os、Pt、Au、Hg、Ru、Rh、Pd、Ag、Cu
の群から選択されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記トリアゾール単位が4位で置換されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
前記トリアゾール単位が4位でアリール置換されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
構造式
【化1】

[式中、
M=Ir、Re、Os、Pt、Au、Hg、Ru、Rh、Pd、Ag、Cu
Y、Z=N又はC
R=相互に独立して、H、分枝状のアルキル基、非分枝状のアルキル基、縮合アルキル基、環状アルキル基、完全に又は部分的に置換された非分枝状アルキル基、完全に又は部分的に置換された分枝状アルキル基、完全に又は部分的に置換された縮合アルキル基、完全に又は部分的に置換された環状アルキル基、アルコキシ基、アミン、アミド、エステル、炭酸エステル、芳香族化合物、完全に又は部分的に置換された芳香族化合物、複素環式芳香族化合物、縮合芳香族化合物、完全に又は部分的に置換された縮合芳香族化合物、複素環式化合物、完全に又は部分的に置換された複素環式化合物、縮合複素環式化合物、ハロゲン、擬ハロゲン、
アリール=任意の、部分的に又は完全に置換された芳香族基又は複素環式芳香族基、これは縮合されていてもよく、さらなる化合物に対して架橋で連結することができ、かつ/又は縮合されて、又はさらなる芳香族化合物又は複素環式芳香族化合物と融合していてもよく、並びにさらなる環状化合物と結合されて存在していてよい]
を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
1及び/又はR2が付加的にMに配位している、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
多核であり、かつ少なくとも2つの金属中心原子Mを有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
少なくとも2つの金属中心原子Mが、金属−金属の相互作用によって隣接して配位されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
少なくとも2つの金属中心原子Mが、少なくとも1つの付加的な架橋配位子によって結合されている、請求項9又は10に記載の化合物。
【請求項12】
基材、
基材上の第一電極層、
第一電極層上の少なくとも1つの有機放射層、及び
有機放射層上の第二電極層
を含む光線放射構成要素であって、
前記有機放射層が請求項1から11までのいずれか1項に記載のリン光性金属錯体化合物を含む、前記構成要素。
【請求項13】
リン光性金属化合物がマトリックス材料中に存在する、請求項12に記載の構成要素。
【請求項14】
電圧印加時に、緑、青緑、薄い青、濃い青、青の色を含む群から選択される色の光が放射される、請求項12又は13に記載の構成要素。
【請求項15】
基材及び第一電極層が透明である、請求項12から14までのいずれか1項に記載の構成要素。
【請求項16】
請求項1から11までのいずれか1項に記載のリン光性金属錯体化合物の製造方法であって、以下の方法工程
A)中心原子に配位された交換配位子を有する、金属中心原子の中心原子化合物を製造する工程、
B)金属錯体化合物を形成するために、中心原子化合物と、第一の溶剤に溶解させた配位子とを混合し、この際、二座で中心原子に配位され、かつトリアゾール単位を含む配位子によって、前記交換配位子が置き換えられる工程
を含む、前記製造方法。
【請求項17】
金属錯体化合物がカラムクロマトグラフィーで精製される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−528328(P2011−528328A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517921(P2011−517921)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059092
【国際公開番号】WO2010/007107
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】