リン含有モノマー、その重合体、及びそれを含む燃料電池用電極、それを含む燃料電池用電解質膜及びそれを採用した燃料電池
【課題】耐熱性と耐リン酸性とに優れるリン含有モノマー、その重合体、及びそれを含む燃料電池用電極、それを含む燃料電池用電解質膜及びそれを採用した燃料電池を提供する。
【解決手段】所定の化学式を有するベンゾオキサジン構造を含むリン含有モノマー、その重合体、及びそれを含む燃料電池用電極、それを含む燃料電池用電解質膜及びそれを採用した燃料電池。該リン含有モノマーを用いることにより、耐熱性及び耐リン酸性の向上を図ることが可能となる。
【解決手段】所定の化学式を有するベンゾオキサジン構造を含むリン含有モノマー、その重合体、及びそれを含む燃料電池用電極、それを含む燃料電池用電解質膜及びそれを採用した燃料電池。該リン含有モノマーを用いることにより、耐熱性及び耐リン酸性の向上を図ることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リン含有モノマー、その重合体、それを含む燃料電池用電極、それを含む燃料電池用電解質膜及びそれを採用した燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質として高分子電解質膜を使用した燃料電池は、動作温度が比較的低温であると共に、小型化が可能であるために、電気自動車や家庭用分散発電システムの電源として期待されている。高分子電解質膜燃料電池に使われる高分子電解質膜としては、Nafion(登録商標)で代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー膜が使われている。
【0003】
しかし、このタイプの高分子電解質膜がプロトン伝導を発現するためには、水分が必要であるために、加湿せねばならない。また、電池システム効率を高めるために100℃以上の温度での高温運転が要求されるが、この温度では、電解質膜内の水分が蒸発して枯渇し、固体電解質としての機能が喪失されてしまうという問題がある。
【0004】
それら従来の技術に起因する問題を解決するために、無加湿でありつつ100℃以上の高温で作動できる無加湿電解質膜が開発されている。例えば、特許文献1には、無加湿電解質膜の構成材料として、リン酸がドープされたポリベンズイミダゾールなどの材料が開示されている。
【0005】
また、パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー膜を利用した低温作動電池では、電極、特にカソードでの発電によって生成された水(生成水)による電極内でのガス拡散不良を防止するために、撥水材であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合して疎水性を付与した電極が多用されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
また、高温(150〜200℃)で作動させるリン酸型燃料電池では、電解質として液体のリン酸を使用するが、この液状のリン酸が電極内に多量に存在してガス拡散を阻害させるという問題点が発生する。従って、電極触媒に撥水材であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合し、電極内の細孔がリン酸によって塞がることを防止できる電極触媒層が使われている。
【0007】
また、高温無加湿電解質であるリン酸を維持するポリベンズイミダゾール(PBI)を電解質膜に使用した燃料電池では、電極と膜界面との接触を良好にするために、液状のリン酸を電極に含浸させることが試みられ、金属触媒のローディング含有量を高める試みがなされたが、十分な特性を引出すとはいえない状況であるので、改善の余地が多い。
【0008】
また、リン酸がドープされた固体高分子電解質を利用する場合には、カソードに空気を供給する場合、最適化された電極組成を使用したとしても、1週間ほどのエイジング時間が要求される。これは、カソードの空気を酸素に代替することによって、性能の向上はもとより、エイジング時間を短縮することは可能であるが、商用化を考慮してみるときに望ましくない。そして、前記PBIを利用したホモポリマー電解質膜は、高温での機械的特性及び化学的安定性、リン酸補液能が満足すべきレベルに達せず、改善の余地が多い。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,525,436号明細書
【特許文献2】特開平05−283082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、耐熱性と耐リン酸性とに優れるリン含有モノマー、その重合体及びそれを利用した燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜及びそれを具備した燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある観点によるリン含有モノマーは、下記化学式1で表示される。
【0012】
【化1】
・・・(化学式1)
【0013】
前記式で、Aは、置換または非置換のC1−C20ヘテロ環基、置換または非置換のC4−C20シクロアルキル基、または置換または非置換のC1−C20アルキル基であり、R2及びR3は互いに独立的に、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、またはヒドロキシ基である。
【0014】
本発明の他の観点によれば、前述のベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または前述のリン含有モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であることを特徴とするリン含有モノマーの重合体が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の観点によれば、前記リン含有モノマーの重合体を含む触媒層を具備する燃料電池用電極が提供される。
【0016】
本発明のさらに他の観点によれば、カソードと、アノードと、それらの間に介在された電解質膜とを具備し、前記カソード及びアノードのうちから選択された一つ以上が、前述のリン含有モノマーの重合体を含む触媒層を具備する電極であることを特徴とする燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性と耐リン酸性とに優れるリン含有モノマー、その重合体及びそれを利用した燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜及びそれを具備した燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
本発明によるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式1で表示される。
【0020】
【化2】
・・・(化学式1)
【0021】
前記式で、Aは、置換または非置換のC1−C20ヘテロ環基、置換または非置換のC4−C20シクロアルキル基、または置換または非置換のC1−C20アルキル基であり、R2及びR3は互いに独立的に、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、またはヒドロキシ基である。
【0022】
前記Aは、具体的に下記化学式で表示されるグループ中の一つでありうる。
【0023】
【化3】
【0024】
前記式で、R1は、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC6−C20アリール基、ハロゲン化されたC6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC1−C20ヘテロ環基である。
【0025】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式2または3で表示される化合物中から選択された一つ以上であることが好ましい。
【0026】
【化4】
・・・(化学式2)
【0027】
【化5】
・・・(化学式3)
【0028】
前記式で、R1は、下記構造式で表示されるグループ中から選択された一つである。
【0029】
【化6】
【0030】
本発明の一実施例によるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、熱的安定性に優れ、かつ、リン酸含浸能が優秀であり、これを電極形成時に利用すれば、電極側に流入するリン酸量を増加させ、電極の湿潤性(wettability)が向上する。
【0031】
また、前記化学式で、R1が特にフッ素が置換されたフェニル基である場合、フッ素含有ベンゾオキサジン系システムにリン官能基(phosphorus functionality)導入で、フッ素含有高分子が有する長所である優秀な酸素透過度、耐熱性及び耐リン酸性を具現できる。そして、該化合物は、リン酸と類似の構造を有することによって、気相(燃料ガスまたは酸化ガス)−液相(リン酸)−固相(触媒)の三相界面の相容性も高めることができる。
【0032】
また、本発明の一実施形態によるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)を導入し、ポリベンゾイミダゾール(PBI)のような架橋性化合物と重合する場合、さらに多くの共有結合導入を誘導できる。そして、分子内の水素結合、分子間の水素結合を極大化させることができる−P=O官能基を含有し、架橋性化合物との共重合時に架橋性部位が増加し、これを利用すれば、燃料電池作動温度で改善された熱的安定性と耐久性とを確保することができ、これによって、長寿命の燃料電池を製作できる。
【0033】
また、前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーを、電極と電解質膜とに同時に利用すれば、電解質膜と電極とでの界面相容性(compatibility)を改善し、セル性能が極大化されうる。
【0034】
前記化学式2または3で表示される化合物の一例として、下記化学式4から化学式10のいずれかで表示される化合物がある。
【0035】
【化7】
・・・(化学式4)
【0036】
【化8】
・・・(化学式5)
【0037】
【化9】
・・・(化学式6)
【0038】
【化10】
・・・(化学式7)
【0039】
【化11】
・・・(化学式8)
【0040】
【化12】
・・・(化学式9)
【0041】
【化13】
・・・(化学式10)
【0042】
以下、本発明の一実施形態による化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの製造方法について述べる。一例として、化学式2または化学式3で表示される化合物を例にとって説明するが、他の化合物もこれと類似の方法によって合成可能である。
【0043】
下記反応式1及び反応式2を参照すると、化学式2で表示される化合物は、DOPO含有ジオール(A)、ホルムアルデヒドまたはp−ホルムアルデヒド(B)及びアミン化合物(C)を溶媒なしに加熱する工程を経るか、または溶媒を付加して還流し、これをワークアップ(work−up)する工程を経て得ることができる。そして、化学式3で表示される化合物は、DOPO含有ジオール(A)の代わりに、DOPO含有トリオール(A’)を使用したことを除いては、反応式1と同一に実施して得ることができる。
【0044】
【化14】
・・・(反応式1)
【0045】
【化15】
・・・(反応式2)
【0046】
前記反応式で、R1は、前述の化学式2または3で定義されたところと同一に、下記構造式で表示されるグループのうちから選択される。
【0047】
【化16】
【0048】
前記反応で溶媒が使われる場合、溶媒として1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFなどを使用することができる。そして、前記加熱温度は、使われた溶媒が還流されうる温度範囲に調節するが、望ましくは80から120℃の範囲、特に、110℃程度になるように調節する。
【0049】
前記ワークアップ過程の非制限的な一実施例について述べれば、反応が完結した結果物を1NのNaOH水溶液と水とを使用して洗浄した後、硫酸マグネシウムのような乾燥剤を利用して乾燥させた後、これを濾過及び減圧蒸発して溶媒を除去し、さらに乾燥する過程を経て目的物を得ることができる。
【0050】
前記反応式1で使われたDOPO含有ジオール(A)は、下記反応式3に示されたように、それぞれの対応になるDOPOとp−ベンゾキノンとを反応させて得ることができる。
【0051】
【化17】
・・・(反応式3)
【0052】
また、DOPO含有トリオール(A’)は、下記反応式4に示されたように、DOPOとロソール酸(rosolic acid)とを反応させて得ることができる。
【0053】
【化18】
・・・(反応式4)
【0054】
前記反応式3及び反応式4の反応は、その反応条件が特別に制限されるものではないが、反応式3の場合、例えば、2−エトキシエタノールを溶媒として、125℃で4時間反応させて合成し、反応式4の場合は、溶媒還流条件下で、例えばエタノールを溶媒として使用した場合には、90℃で最小24時間反応する反応条件で実施される。
【0055】
前記化学式における前記C1−C20アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、iso−アミル基、ヘキシル基などを挙げることができ、前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたC1−C20のアルキル基(例:CCF3、CHCF2、CH2F、CCl3など)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、またはC1−C20アルキル基、C2−C20アルケニル基、C2−C20アルキニル基、C1−C20ヘテロアルキル基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールアルキル基、C6−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロ環基、またはC6−C20ヘテロアリールアルキル基で置換されうる。
【0056】
前記化学式で使われるアリール基は、単独または組み合わせて使われ、一つ以上の環を含むC6−C20芳香族炭素環システムを意味し、前記環は、ペンダント法で共に付着されるか、または融合されうる。アリールという用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルのような芳香族ラジカルを含む。前記アリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0057】
前記化学式で使われたアリールオキシ基の具体的な例としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、テトラヒドロナフチルオキシ基などがあり、アリールオキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0058】
前記化学式で使われるヘテロアリール基は、O、PまたはSのうちから選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCであるC1−C20の一価単環式または二環式芳香族、二価有機化合物を意味する。前記ヘテロアリール基の例としては、ピラジニル基、フラニル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミニジル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基などがある。前記ヘテロアリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0059】
また、本発明で使われるハロゲン化されたヘテロアリール基は、フッ素、塩素のようなヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基をいう。
【0060】
前記化学式で使われたヘテロアリールオキシ基の具体的な例としては、ピラジニルオキシ基、フラニルオキシ基、チエニルオキシ基、ピリジルオキシ基、ピリミニジルオキシ基、イソチアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、1,2,4−チアジアゾリルオキシ基などがあり、ヘテロアリールオキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0061】
前記化学式で使われたハロゲン化されたヘテロアリールオキシ基は、フッ素、塩素のようなヘテロ原子で置換されたヘテロアリールオキシ基をいう。
【0062】
前記化学式で使われるヘテロ環基は、窒素、硫黄、リン、酸素のようなヘテロ原子を含有しているC5−C10環基を指し、このようなヘテロ環基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様に置換可能である。
【0063】
また、前記化学式で使われるハロゲン化されたヘテロ環基は、フッ素、塩素のようなヘテロ原子で置換されたヘテロ環基をいう。
【0064】
前記化学式で使われるシクロアルキル基の例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などがあり、シクロアルキル基中の一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様に置換可能である。
【0065】
また、前記化学式で使われるハロゲン化されたシクロアルキル基は、フッ素、塩素のようなヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基をいう。
【0066】
また、前記化学式で前述の化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供する。
【0067】
前記重合体は、前述のベンゾオキサジン系モノマーを溶媒に溶解させ、これを熱処理して重合反応を実施して得ることができる。このときの熱処理温度は、180から250℃であることが好ましい。もし熱処理温度が180℃未満であるならば、重合反応の反応性が低下する場合があり、250℃を超えれば、副反応物質が生成されて生成物の収率が低下する場合があるので望ましくない。
【0068】
前記反応時に、必要である場合には、重合触媒などを使用できる。
【0069】
前記溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用し、その含有量は、ベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5から30質量部であることが望ましい。
【0070】
また、本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応の結果として得ることができるベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供できる。
【0071】
前記架橋性化合物の非制限的な例として、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズイミダゾールと塩基との複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系のうちから選択された一つ以上を挙げることができる。
【0072】
前記架橋性化合物の含有量は、前記化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5から95質量部であることが望ましい。
【0073】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、燃料電池用電極形成時に利用すれば、カソードに空気を利用しつつも、酸素透過度が改善され、電極内部でのリン酸(H3PO4)の湿潤(wetting)能と熱的安定性とを向上させることができる。
【0074】
また、前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を、燃料電池用電解質膜の形成時に利用すれば、作動温度で熱的安定性と耐久性とが改善される。
【0075】
このような電極と電解質膜とを採用した燃料電池は、高温無加湿条件下で動作可能であり、熱的安定性が補強されるだけではなく、改善された発電能を発現させることができる。
【0076】
本発明の一実施形態による燃料電池用電極は、前述の化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応、または前述の化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応で得られた重合体を含む触媒層を具備する。
【0077】
前記触媒層は、触媒を含む。
【0078】
前記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、電極のバインダとして使われ、特に結合剤の役割を行うことができ、一般的な結合剤なしにも電極構成が可能である。
【0079】
前記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、リン酸湿潤性を向上させる物質であって、その含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1ないし65質量部であることが望ましい。
【0080】
もし化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体の含有量が0.1質量部未満であるならば、電極の湿潤状態の改善が微小であり、65質量部を超えれば、成膜性が低下しうる。
【0081】
前記触媒としては、白金(Pt)単独、または金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属と白金との合金あるいは混合物を使用するか、または前記触媒金属がカーボン系担体に担持された担持触媒でもありうる。特に、白金(Pt)、白金コバルト(PtCo)及び白金ルテニウム(PtRu)からなる群から選択された一つ以上の触媒金属であるか、または前記触媒金属がカーボン系担体に担持された担持触媒を使用する。
【0082】
前記電極は、燃料電池電極の製造時に一般的に使用可能なバインダをさらに含むことができる。
【0083】
前記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロエチレンとの共重合体及びパーフルオロエチレン、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上を使用し、バインダの含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1から50質量部であることが望ましい。もしバインダの含有量が0.1質量部未満であるならば、電極の接着力が落ちて触媒層形態の維持が困難であり、50質量部を超えれば、電極内の電気抵抗が高まりうる。
【0084】
前記架橋性化合物の種類及び含有量は、前述の通りである。
【0085】
前述の燃料電池用電極を製造する方法について述べれば、次の通りである。
【0086】
まず、溶媒に触媒を分散させて分散液を得る。このとき、溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用し、その含有量は、触媒100質量部を基準として、100から1,000質量部であることが好ましい。
【0087】
前記分散液に、前記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと溶媒とを含む混合物を付加及び混合して撹拌する。前記混合物には、バインダがさらに含まれうる。
【0088】
前記混合物をカーボン支持体表面にコーティングし、電極を完成する。ここで、カーボン支持体は、ガラス基板上に固定するのがコーティング作業に容易である。そして、前記コーティング法としては特別に制限されるものではないが、ドクターブレードを利用したコーティング、バーコーティング(Bar coating)、スクリーンプリンティングのような方法を利用できる。
【0089】
前記混合物をコーティングした後で乾燥する過程を経るが、溶媒を除去する過程として、例えば、20から150℃の温度範囲で実施することができる。そして、乾燥時間は乾燥温度によって変わり、例えば、10から60分の範囲内で実施することができる。
【0090】
前述の製造過程から分かるように、最終的に得られた燃料電池用電極は、化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーではない、その重合体を含有しているが、化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応は、前述の乾燥過程及び/または電極を具備した電池の作動中に起こり、その重合体に転換される。
【0091】
もし前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーと溶媒とバインダとを含む混合物に架橋剤をより付加する場合には、最終的に得られた電極は、ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合体を含有する。
【0092】
以下、本発明の一実施形態による電解質膜及びその製造方法について説明する。下記では、架橋性化合物を使用した場合について説明するが、化学式1のベンゾオキサジン系モノマーのみで重合反応を行う場合には、架橋性化合物のみ使用しないことを除いては、同一に実施する。
【0093】
第一の方法によれば、前述の化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物とを混合した後、これを50から250℃、特に、80から220℃の範囲で硬化反応を実施する。次に、これに酸のようなプロトン伝導体を含浸させて電解質膜を形成する。
【0094】
前記架橋性化合物としては、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾールと塩基との複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系のうちから選択された一つ以上を挙げることができる。ポリベンズイミダゾールと塩基との複合体は、本出願人によって特許出願された2007−102579号に開示されたものを使用する。
【0095】
ポリベンズイミダゾール−塩基複合体における塩基は、弱塩基であることが望ましい。この塩基は、望ましくは、例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ルビジウム(Rb2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸水素アンモニウム((NH4)HCO3)からなる群から選択された一つ以上の炭酸塩を使用する。また、ポリベンズイミダゾール−塩基複合体におけるポリベンズイミダゾールとして、例えば、ポリ[2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンズイミダゾール](PBI)またはポリ(2,5−ベンズイミダゾール)(ABPBI)等を使用することが可能である。上述のポリベンズイミダゾールを、有機溶媒に溶解させたポリベンズイミダゾール溶液に、上記塩基を付加し、これを熱処理する過程を経る。このような熱処理過程を経た結果物をろ過すれば、目的とするポリベンズイミダゾール−塩基複合体を得ることができる。
【0096】
前記架橋性化合物の含有量は、化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5から95質量部であることが望ましい。
【0097】
もし架橋性化合物の含有量が5質量部未満であるならば、リン酸が含浸されずにプロトン伝導性が落ち、95質量部を超えれば、リン酸が相対的に多量に存在し、架橋体がポリリン酸に溶解されうる。
【0098】
第二の方法によれば、前記化学式1で表示されるリン含有第1ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との混合物を利用して膜を形成する。
【0099】
前記膜を形成する方法としては、テープキャスティング法を利用することも可能であり、一般的なコーティング法を利用することも可能である。前記コーティング法の例としては、支持体上にドクターブレードを利用し、前記混合物をキャスティングする方法を挙げることができる。ここで、ドクターブレードとしては、例えば、250〜500μmのギャップを有するものを使用する。
【0100】
もし前記膜を形成する過程で、ドクターブレードを利用したキャスティング法を利用する場合には、硬化後、酸を含浸する段階前に、支持体から電解質膜を分離させて支持体を除去する段階がさらに実施される。このように支持体を除去しようとする場合には、60から80℃の蒸留水に浸す過程を経る。
【0101】
前記支持体としては、電解質膜を支持する役割を行えるものであるならば、いずれも使用可能であり、ガラス基板、ポリイミドフィルムなどを使用する。テープキャスティング法を利用する場合には、テープキャスティングされた膜をポリエチレンテレフタレートのような支持体から分離した後、硬化のためのオーブンに入れるので、支持体が不要であるので、支持体を除去する段階が不要である。
【0102】
また、ベンゾオキサジン系モノマーとポリベンズイミダゾールとからなる混合物を利用し、膜をテープキャスティング法によって形成する場合、混合物を濾過する段階をさらに経ることができる。
【0103】
このように形成された膜を熱処理して硬化反応を実施した後、これを酸のようなプロトン伝導体に含浸して電解質膜を形成する。
【0104】
前記プロトン伝導体の非制限的な例としては、リン酸、C1−C20有機ホスホン酸などを使用する。前記C1−C20有機ホスホン酸の例として、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸などがある。
【0105】
前記プロトン伝導体の含有量は、例えば、電解質膜の総重量100質量部に対して、300から1,000質量部で使われる。本発明で使用する酸の濃度は特別に制限されるものではないが、リン酸を使用する場合、例えば、85質量%のリン酸水溶液を使用し、リン酸含浸時間は、80℃で2.5時間から14時間の範囲である。
【0106】
本発明の一実施形態による燃料電池用電極を利用し、燃料電池を製造する方法について述べることにする。
【0107】
本発明の一実施形態による電解質膜は、燃料電池で一般的に使われる電解質膜を使用することもでき、または、前述の化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合結果物であるポリベンゾオキサジン系化合物の重合体(架橋体)を含む電解質膜も使用可能である。
【0108】
特に、電解質膜として前記ポリベンゾオキサジン系化合物の重合体を含む電解質膜を使用する場合、燃料電池のセル性能が極大化されうる。
【0109】
前記燃料電池で一般的に使われる電解質膜としては、例えば、ポリベンズイミダゾール電解質膜、ポリベンゾオキサジンとポリベンズイミダゾールとの共重合体の電解質膜、PTFE多孔質膜などを使用することもできる。
【0110】
本発明の一実施形態による燃料電池用膜電極接合体を製造する過程について述べれば、次の通りである。ここで、用語である「膜電極接合体(MEA:Membrane and Electrode Assembly)」は、電解質膜を中心に、その両面に触媒層及び拡散層として構成された電極が積層されている構造をいう。
【0111】
本発明の一実施例によるMEAは、前述の電極触媒層を具備している電極を、前記過程によって得た電解質膜の両面に位置させた後、高温と高圧とで接合して形成し、そこに燃料拡散層を接合して形成できる。
【0112】
このとき、前記接合のための加熱温度及び圧力は、電解質膜が軟化する温度まで加熱した状態で、0.1から3ton/cm2、特に約1ton/cm2の圧力で加圧して実行することができる。
【0113】
その後、前記MEAに、それぞれバイポーラプレートを装着して燃料電池を完成する。ここでバイポーラプレートは、燃料供給用溝を有しており、集電体の機能を有している。
【0114】
燃料電池は、特別にその用途が限定されるものではないが、望ましい一面によれば、高分子電解質膜燃料電池として使われる。
【実施例】
【0115】
以下、下記実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明が下記実施例のみに限定されるということを意味するものではない。
【0116】
(合成例1:化学式4で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOジオール(3.24g、10mmol)、パラホルムアルデヒド(1.32g44mmol)、そして3,4−ジフルオロアニリン(2.84g、22mmol)を順に入れた後、90℃のオイルバス(oil bath)で混合を実施した。
【0117】
前記反応混合物は、反応初期には透明であって、30分ほど経過した後には、濃褐色の透明なゲル状物質に変化した。このとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチング(quenching)させ、常温に冷やした。常温に冷やした粗生成物(crude product)を1N NaOH水溶液を利用した溶媒抽出を利用して二回塩基洗浄(base washing)した後、脱イオン水で一回さらに洗浄を実施した。
【0118】
洗浄が終わった後、有機層をMgSO4を利用して乾燥させた後、連続的に濾過を実施した。濾液を回転蒸発機(rotary evaporator)を利用して除去した後、精製された生成物を真空オーブンで40℃で6時間乾燥させた。
【0119】
本合成例1によって得た化学式4の化合物は、Bruker 300MHz nuclear magnetic resonance spectrometerを利用して測定したNMR(Nuclear Magnetic Resonance)スペクトルを介してその構造を確認した(図4)。
【0120】
(合成例2:化学式5で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOトリオール(5.07g、10mmol)、パラホルムアルデヒド(1.98g66mmol)、そして3,4−ジフルオロアニリン(4.26g、33mmol)を付加して混合したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、化学式5で表示される化合物を得た。
【0121】
前記化学式5の化合物は、Bruker 300MHz nuclear magnetic resonance spectrometerを利用して測定したNMRスペクトルを介してその構造を確認した(図5)。
【0122】
(合成例3:化学式6で表示される化合物の製造)
3,4−ジフルオロアニリン(2.84g、22mmol)の代わりにアニリン(2.05g、22mmol)を使用したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、化学式6の化合物を得た。
【0123】
前記化学式6の化合物は、Bruker 300MHz nuclear magnetic resonance spectrometerを利用して測定したNMRスペクトルを介してその構造を確認した(図6)。
【0124】
(合成例4:化学式7で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコにDOPOジオール(6.48g、20mmol)、パラホルムアルデヒド(2.64g、88mmol)、そして2−アミノピリジン(4.14g、44mmol)を付加したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、目的物を得た。
【0125】
(合成例5:化学式8で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOジオール(6.48g、20mmol)、パラホルムアルデヒド(2.64g88mmol)、3−アミノピリジン(4.14g、44mmol)を付加したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、目的物を得た。
【0126】
(合成例6:化学式9で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOジオール(6.48g、20mmol)、パラホルムアルデヒド(2.64g、88mmol)、3−トリフルオロメチルアニリン(44mmol)を付加したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、目的物を得た。
【0127】
(合成例7:化学式10で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOトリオール(5.07g、10mmol)、パラホルムアルデヒド(1.98g66mmol)及びアニリン(33mmol)を付加して混合したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、化学式10で表示される化合物を得た。
【0128】
(参考例1:t−BuPh−aの製造)
100mlの一口丸底フラスコに、t−ブチルフェノール(15g、0.1mol)、パラホルムアルデヒド(6.31g0.21mol)、そしてアニリン(10.24g、0.11mol)を順に入れた後、90℃のオイルバス(oil bath)で混合を実施した。
【0129】
反応初期に不透明であった反応混合物が経時的に(30分ほど)濃褐色の透明なゲル状物質に変化するとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせ、常温まで冷却した。
【0130】
常温に冷やした粗生成物を1N NaOH水溶液に溶媒抽出を介して二回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水で一回さらに洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的に濾過を実施した。回転蒸発機を利用して濾液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンで40℃で6時間乾燥させ、下記構造式で示されるt−BuPh−aを得た。
【0131】
【化19】
【0132】
前記合成例1及び2によってそれぞれ得た化学式4の化合物並びに化学式5の化合物、及び参考例1によって得たt−BuPh−aを熱中量分析法を利用して熱的安定性を評価し、その結果を図1に共に表した。図1で熱重量損失は、800℃で測定したものである。
【0133】
図1を参照し、化学式4の化合物と化学式5の化合物は、800℃以上の高温で重量損失がt−BuPh−aに比べて少ないということが分かった。このような結果から、化学式4の化合物及び化学式5の化合物の熱的安定性が、t−BuPh−aに比べてはるかに優秀であるということが分かった。
【0134】
図4から図6は、前記合成例1−3によって製造された化学式4のDOPO−ジ−34DFA(ジフルオロアニリン)、化学式5のDOPO−トリ−34DFA、化学式6のDOPO−ジ−a(アニリン)の核磁気共鳴分析(NMR)スペクトルであり、それらの構造を確認することができた。
【0135】
(合成例8:化学式4のDOPO−ジ−34DFAとPBIとの重合体の製造)
化学式4のDOPO−ジ−34DFA 65質量部に、ポリベンズイミダゾールを35質量部にして混合した後、これに対しておよそ180から240℃の範囲で硬化反応を実施し、化学式4のDOPO−ジ−34DFAとPBIとの重合体を得た。
(合成例9:化学式5のDOPO−トリ−34DFAとPBIとの重合体の製造)
【0136】
化学式4のDOPO−トリ−34DFA 65質量部に、ポリベンズイミダゾールを35質量部にして混合した後、これに対しておよそ180から240℃の範囲で硬化反応を実施し、化学式5のDOPO−トリ−34DFAとPBIとの重合体を得た。
【0137】
DOPO−ジ−34DFA、DOPO−トリ−34DFA及び前記合成例6−7によって得たDOPO−ジ−34DFAとPBIとの重合体及びDOPO−トリ−34DFAとPBIとの重合体に対して、熱重量分析法を利用して熱的安定性を評価し、その結果を図7及び図8にそれぞれ共に表した。図7及び図8で熱重量損失は、800℃で測定したものである。
【0138】
これを参照し、DOPO−ジ−34DFA、DOPO−トリ−34DFAは、熱的安定性にすぐれるが、いずれもPBIとの重合反応を経て得た重合体よりもさらに向上した熱的安定性を有するということが分かった。
(合成例10:化学式10で表示される化合物とポリベンズイミダゾールとの重合体の製造)
【0139】
化学式10で表示される化合物20gと、ポリベンズイミダゾール10.8gとを約220℃で硬化反応を実施し、化学式10の化合物とポリベンズイミダゾールとの重合体を収得した。
【0140】
前記化学式10の化合物とポリベンズイミダゾールとの重合体に対して、固体状態で固体核磁気共鳴分析法(NMR)を利用して構造を確認し、その結果を図12に示した。NMR分析時に使われたNMR機器は、Varian社のUnity INOVA600製品であり、600MHZを使用した。
【0141】
(実施例1:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造)
撹拌容器に、カーボンに50質量%のPtCoが担持された触媒1g、及び溶媒NMP 3gを付加し、これをモルタルを利用して撹拌してスラリを作った。前記スラリに、前記合成例1によって得た化学式4で表示される化合物のNMP溶液を付加し、化学式4の化合物0.025gになるように添加し、さらに撹拌した。
【0142】
次に、前記混合物に5質量%のポリフッ化ビニリデンのNMP溶液を付加し、ポリフッ化ビニリデンが0.025gになるように添加し、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリを製造した。
【0143】
カーボンペーパを4cm×7cmに切ってガラス板上に固定し、ドクターブレード(Sheen instrument)でコーティングし、このときギャップ間隔は、600μmに調節した。
【0144】
前記カーボンペーパの上部に、前記カソード触媒層形成用スラリをコーティングし、これを常温で1時間乾燥し、80℃で1時間乾燥し、120℃で30分乾燥し、150℃で15分間乾燥し、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、3.0mg/cm2値を有する。
【0145】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0146】
撹拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。
【0147】
次に、前記混合物にポリフッ化ビニリデン0.05gをNMP1gに溶解させた溶液を付加し、2分間さらに撹拌してアノード触媒層形成用スラリを製作する。これを、微細多孔層(microporous layer)がコーティングされたカーボンペーパ上にバーコータ器(bar coater)でコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.4mg/cm2値を有する。
【0148】
これと別途に、下記化学式11のベンゾオキサジン系モノマー60質量部、下記化学式12のベンゾオキサジン系モノマー3質量部、ポリベンズイミダゾールを37質量部にして混合した後、これに対して、およそ220℃で硬化反応を実施した。
【0149】
【化20】
・・・(化学式11)
【0150】
【化21】
・・・(化学式12)
【0151】
前記化学式で、R2はフェニル基である。
【0152】
次に、これを85質量%のリン酸に80℃で4時間以上含浸させて電解質膜を形成した。ここで、リン酸の含有量は、電解質膜の総重量100質量部に対し、約480質量部であった。
【0153】
前記過程によって完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、約2.33mg/cm2値を有し、完成したアノードでの白金のローディング量は、1.4mg/cm2値を有する。
【0154】
前記カソードとアノードとの間に前記電解質膜を介在させ、MEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードは、リン酸含浸なしに使用した。
【0155】
前記カソードとアノードとの間のガス透過を防止するために、メインガスケット用としての200μm厚のテフロン(登録商標)膜と、サブガスケット用としての20μm厚のテフロン膜とを、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加えられる圧力は、トークレンチを使用して調節し、1N,2N,3N−mトルクまで段階的に増大しつつ組み立てた。
【0156】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドープした電解質を使用するので、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に達するまでエージングさせた後で最終評価する。そして、前記カソードとアノードとの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソードとアノードとの厚さは、カーボンペーパの散布のために変化があるが、カソード電極の厚さは約430μm、アノードの厚さは約390μmであった。
【0157】
(実施例2:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造)
カソード製造時に、化学式4で表示される化合物の代わりに、化学式5で表示される化合物を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
(実施例3から実施例5:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造)
【0158】
カソード製造時に、化学式4で表示される化合物の代わりに、化学式6で表示される化合物、化学式7で表示される化合物及び化学式8で表示される化合物をそれぞれ使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
(比較例1:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造)
【0159】
カソード製造時に、化学式4で表示される化合物を付加しないことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0160】
前記実施例1及び比較例1によって燃料電池において、経時的な電圧変化を調べて図2に表した。
【0161】
図2を参照すれば、実施例1の場合は、低い初期性能にもかかわらず、早い活性化(activation)を介して、比較例1の場合と比較し、電圧性能が改善されるということが分かった。
【0162】
また、前記実施例1、2及び比較例1によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧の変化を調べ、その評価結果を図3に表した。
【0163】
図3によれば、実施例1、2の燃料電池は、比較例1の場合と比較して、セル電圧の特性が優秀であるということが分かった。
【0164】
前記実施例1から5及び比較例1による燃料電池において、セル性能を調べて下記表1に表した。
【0165】
【表1】
【0166】
前記表1を参照すれば、実施例1から5の場合は、比較例1の場合と比較し、物質伝達オーバーポテンシャル(Mass transfer overpotentail)と動力学オーバーポテンシャルとが低くなり(参考:標準電極対比)、交換電流密度(Exchange current density)が高まった。このような結果から、実施例1ないし5の場合が触媒層内での酸素透過度がさらに高いということが分かった。一般的に、酸素透過度が高ければ、物質移動オーバーポテンシャルと動力学オーバーポテンシャルとが低くなって交換電流密度が高まる。
【0167】
(実施例6:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造)
撹拌容器に、カーボンに50質量%のPtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加し、これをモルタルを利用して撹拌し、スラリを作った。
【0168】
次に、前記混合物に5質量%のポリフッ化ビニリデンのNMP溶液を付加し、ポリフッ化ビニリデンが0.025gになるように添加し、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリを製造した。
【0169】
カーボンペーパを4cm×7cmに切ってガラス板上に固定し、ドクターブレード(Sheen instrument)でコーティングし、このときギャップ間隔は、600μmに調節した。
【0170】
前記カーボンペーパ上部に、前記カソード触媒層形成用スラリをコーティングし、これを常温で1時間乾燥し、80℃で1時間乾燥し、120℃で30分乾燥し、150℃で15分間乾燥し、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、2.32mg/cm2値を有する。
【0171】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0172】
撹拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。
【0173】
次に、前記混合物にポリフッ化ビニリデン0.05gをNMP1gに溶解させた溶液を付加し、2分間さらに撹拌してアノード触媒層形成用スラリを製作する。これを微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパ上にバーコータ器でコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.44mg/cm2値を有する。
【0174】
これと別途に、合成例2によって得た化学式5のDOPO−トリ−34DFA 65質量部、ポリベンズイミダゾール(PBI)35質量部を混合した後、これに対しておよそ220℃で硬化反応を実施した。
【0175】
次に、これを85質量%リン酸に80℃で4時間以上含浸させて電解質膜を形成した。ここで、リン酸の含有量は、電解質膜総重量100質量部に対して約530質量部であった。
【0176】
前記カソードとアノードとの間に前記電解質膜を介在させてMEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードは、リン酸含浸なしに使用した。
【0177】
前記カソードとアノードとの間のガス透過を防止するために、メインガスケット用としての200μm厚のテフロン膜と、サブガスケット用としての20μm厚のテフロン膜とを電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加えられる圧力は、トークレンチを使用して調節し、1,2,3N−mトルクまで段階的に増大しつつ組み立てた。
【0178】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドープした電解質を使用するので、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に達するまでエージングさせた後で最終評価する。そして、前記カソードとアノードとの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソードとアノードとの厚さは、カーボンペーパの散布のために変化があるが、カソードの電極の厚さは約430μm、アノードの厚さは約390μmであった。
【0179】
(実施例7:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造)
合成例2によって得た化学式5のDOPO−トリ−34DFA代わりに、合成例1によって得た化学式4のDOPO−ジ−34DFAを使用したことを除いては、実施例6と同じ方法によって実施し、電解質膜及びそれを採用した燃料電池を製作した。
【0180】
前記実施例6によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧特性を調べ、その結果を図9に表した。
【0181】
これを参照すれば、実施例6の燃料電池は、セル電圧が優秀であるということが分かった。
【0182】
また、前記実施例6による燃料電池において、経時的なセル電圧変化を調べ、その結果を図10に表した。図10で「OCV」は、開放回路電圧(open circuit voltage)を示し、「0.2A/cm2」は、電流密度0.2A/cm2でのセル電圧を示す。
【0183】
図10から、実施例6の燃料電池は、2,500時間までは電圧降下がほとんどないということが分かった。
【0184】
前記実施例6、7によって形成された電解質膜において、温度による伝導度特性を調べ、その結果を図11に示した。図11には、PBI膜を使用した場合を参考試料として共に示した。
【0185】
これを参照し、実施例6、7の電解質膜は、PBIを使用した場合と比較し、伝導度が向上した。
【0186】
(実施例8:燃料電池の製造)
撹拌容器に、カーボンに50質量%PtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加し、これをモルタルを利用して撹拌し、スラリを作った。前記スラリに、前記合成例1によって得た化学式4のDOPO−ジ−34DFAのNMP溶液を付加し、化学式4のDOPO−ジ−34DFA 0.025gになるように添加し、さらに撹拌した。
【0187】
次に、前記混合物に5質量%のポリフッ化ビニリデンのNMP溶液を付加し、ポリフッ化ビニリデンが0.025gになるように添加し、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリを製造した。
【0188】
カーボンペーパを4cm×7cmに切ってガラス板上に固定し、ドクターブレード(Sheen instrument)でコーティングし、このときギャップ間隔は、600μmに調節した。
【0189】
前記カーボンペーパ上部に、前記カソード触媒層形成用スラリをコーティングし、これを常温で1時間乾燥し、80℃で1時間乾燥し、120℃で30分乾燥し、150℃で15分間乾燥し、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、2.32mg/cm2値を有する。
【0190】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0191】
撹拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。
【0192】
次に、前記混合物にポリフッ化ビニリデン0.05gをNMP1gに溶解した溶液を付加して2分間さらに撹拌し、アノード触媒層形成用スラリを製作する。これを微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパ上にバーコータ器でコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.44mg/cm2値を有する。
【0193】
これと別途に、合成例2によって得た化学式5のDOPO−トリ−34DFA 65質量部、ポリベンズイミダゾール(PBI)35質量部を混合した後、これに対しておよそ220℃で硬化反応を実施した。
【0194】
次に、これを85質量%リン酸に80℃で4時間以上含浸させて電解質膜を形成した。ここで、リン酸の含有量は、電解質膜総重量100質量部に対し、約530質量部であった。
【0195】
前記カソードとアノードとの間に、前記電解質膜を介在してMEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードは、リン酸含浸なしに使用した。
【0196】
前記カソードとアノードとの間のガス透過を防止するために、メインガスケット用としての200μm厚のテフロン膜と、サブガスケット用としての20μm厚のテフロン膜とを電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加えられる圧力は、トークレンチを使用して調節し、1,2,3N−mトルクまで段階的に増大しつつ組み立てた。
【0197】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドープした電解質を使用するので、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に達するまでエージングさせた後で最終評価する。そして、前記カソードとアノードとの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソードとアノードとの厚さは、カーボンペーパの散布のために変化があるが、カソードの電極の厚さは約430μm、アノードの厚さは約390μmであった。
【0198】
(比較例2:燃料電池の製作)
カソード製造時に、化学式4のDOPO−ジ−34DFAを使用せずに、電解質膜としてポリベンズイミダゾール(PBI)膜を使用したことを除いては、実施例8と同じ方法によって、燃料電池を製作した。
【0199】
前記実施例8及び比較例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を調べ、その結果は、図13に示されている通りである。
【0200】
図13を参照し、実施例8によって製造されたMEAの性能が、参考例2の場合と比較して改善されるということが分かった。
【0201】
本発明は図面に図示された一実施例を参考に説明されているが、それらは、例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他実施例が可能であるという点を理解することができるであろう。
【0202】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体、及びそれを含む燃料電池用電極、それを含む燃料電池用電解質膜及びそれを採用した燃料電池は、例えば、電源関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】合成例1、2によってそれぞれ得た化学式4で表示される化合物、及び化学式5で表示される化合物と、参考例1によって得たt−BuPh−aとの熱重量分析結果を示したグラフである。
【図2】実施例1及び比較例1によって製造された燃料電池において、経時的な電圧変化を示したグラフである。
【図3】実施例1、2及び比較例1によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧変化を示したグラフである。
【図4】合成例1によって製造された化学式4のDOPO−ジ−34DFAの核磁気共鳴分析スペクトルである。
【図5】合成例2によって製造された化学式5のDOPO−トリ−34DFAの核磁気共鳴分析スペクトルである。
【図6】合成例3によって製造された化学式6のDOPO−ジ−aの核磁気共鳴分析スペクトルである。
【図7】DOPO−ジ−34DFA、DOPO−トリ−34DFAを熱重量分析法を利用して評価した熱的安定性の結果を示したグラフである。
【図8】合成例8によって得たDOPO−ジ−34DFAとPBIとの重合体、及び合成例9によって得たDOPO−トリ−34DFAとPBIとの重合体を熱重量分析法を利用して評価した熱的安定性の結果を示したグラフである。
【図9】実施例6によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧特性を示したグラフである。
【図10】実施例6による燃料電池において、経時的なセル電圧変化を示したグラフである。
【図11】実施例6、7によって形成された電解質膜において、温度による伝導度特性結果を示したグラフである。
【図12】合成例10による化学式10の化合物の重合体の固体核磁気共鳴分析スペクトルである。
【図13】実施例8及び比較例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を示したグラフである。
【技術分野】
【0001】
リン含有モノマー、その重合体、それを含む燃料電池用電極、それを含む燃料電池用電解質膜及びそれを採用した燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質として高分子電解質膜を使用した燃料電池は、動作温度が比較的低温であると共に、小型化が可能であるために、電気自動車や家庭用分散発電システムの電源として期待されている。高分子電解質膜燃料電池に使われる高分子電解質膜としては、Nafion(登録商標)で代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー膜が使われている。
【0003】
しかし、このタイプの高分子電解質膜がプロトン伝導を発現するためには、水分が必要であるために、加湿せねばならない。また、電池システム効率を高めるために100℃以上の温度での高温運転が要求されるが、この温度では、電解質膜内の水分が蒸発して枯渇し、固体電解質としての機能が喪失されてしまうという問題がある。
【0004】
それら従来の技術に起因する問題を解決するために、無加湿でありつつ100℃以上の高温で作動できる無加湿電解質膜が開発されている。例えば、特許文献1には、無加湿電解質膜の構成材料として、リン酸がドープされたポリベンズイミダゾールなどの材料が開示されている。
【0005】
また、パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー膜を利用した低温作動電池では、電極、特にカソードでの発電によって生成された水(生成水)による電極内でのガス拡散不良を防止するために、撥水材であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合して疎水性を付与した電極が多用されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
また、高温(150〜200℃)で作動させるリン酸型燃料電池では、電解質として液体のリン酸を使用するが、この液状のリン酸が電極内に多量に存在してガス拡散を阻害させるという問題点が発生する。従って、電極触媒に撥水材であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合し、電極内の細孔がリン酸によって塞がることを防止できる電極触媒層が使われている。
【0007】
また、高温無加湿電解質であるリン酸を維持するポリベンズイミダゾール(PBI)を電解質膜に使用した燃料電池では、電極と膜界面との接触を良好にするために、液状のリン酸を電極に含浸させることが試みられ、金属触媒のローディング含有量を高める試みがなされたが、十分な特性を引出すとはいえない状況であるので、改善の余地が多い。
【0008】
また、リン酸がドープされた固体高分子電解質を利用する場合には、カソードに空気を供給する場合、最適化された電極組成を使用したとしても、1週間ほどのエイジング時間が要求される。これは、カソードの空気を酸素に代替することによって、性能の向上はもとより、エイジング時間を短縮することは可能であるが、商用化を考慮してみるときに望ましくない。そして、前記PBIを利用したホモポリマー電解質膜は、高温での機械的特性及び化学的安定性、リン酸補液能が満足すべきレベルに達せず、改善の余地が多い。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,525,436号明細書
【特許文献2】特開平05−283082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、耐熱性と耐リン酸性とに優れるリン含有モノマー、その重合体及びそれを利用した燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜及びそれを具備した燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある観点によるリン含有モノマーは、下記化学式1で表示される。
【0012】
【化1】
・・・(化学式1)
【0013】
前記式で、Aは、置換または非置換のC1−C20ヘテロ環基、置換または非置換のC4−C20シクロアルキル基、または置換または非置換のC1−C20アルキル基であり、R2及びR3は互いに独立的に、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、またはヒドロキシ基である。
【0014】
本発明の他の観点によれば、前述のベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または前述のリン含有モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であることを特徴とするリン含有モノマーの重合体が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の観点によれば、前記リン含有モノマーの重合体を含む触媒層を具備する燃料電池用電極が提供される。
【0016】
本発明のさらに他の観点によれば、カソードと、アノードと、それらの間に介在された電解質膜とを具備し、前記カソード及びアノードのうちから選択された一つ以上が、前述のリン含有モノマーの重合体を含む触媒層を具備する電極であることを特徴とする燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性と耐リン酸性とに優れるリン含有モノマー、その重合体及びそれを利用した燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜及びそれを具備した燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
本発明によるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式1で表示される。
【0020】
【化2】
・・・(化学式1)
【0021】
前記式で、Aは、置換または非置換のC1−C20ヘテロ環基、置換または非置換のC4−C20シクロアルキル基、または置換または非置換のC1−C20アルキル基であり、R2及びR3は互いに独立的に、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、またはヒドロキシ基である。
【0022】
前記Aは、具体的に下記化学式で表示されるグループ中の一つでありうる。
【0023】
【化3】
【0024】
前記式で、R1は、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC6−C20アリール基、ハロゲン化されたC6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC1−C20ヘテロ環基である。
【0025】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式2または3で表示される化合物中から選択された一つ以上であることが好ましい。
【0026】
【化4】
・・・(化学式2)
【0027】
【化5】
・・・(化学式3)
【0028】
前記式で、R1は、下記構造式で表示されるグループ中から選択された一つである。
【0029】
【化6】
【0030】
本発明の一実施例によるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、熱的安定性に優れ、かつ、リン酸含浸能が優秀であり、これを電極形成時に利用すれば、電極側に流入するリン酸量を増加させ、電極の湿潤性(wettability)が向上する。
【0031】
また、前記化学式で、R1が特にフッ素が置換されたフェニル基である場合、フッ素含有ベンゾオキサジン系システムにリン官能基(phosphorus functionality)導入で、フッ素含有高分子が有する長所である優秀な酸素透過度、耐熱性及び耐リン酸性を具現できる。そして、該化合物は、リン酸と類似の構造を有することによって、気相(燃料ガスまたは酸化ガス)−液相(リン酸)−固相(触媒)の三相界面の相容性も高めることができる。
【0032】
また、本発明の一実施形態によるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)を導入し、ポリベンゾイミダゾール(PBI)のような架橋性化合物と重合する場合、さらに多くの共有結合導入を誘導できる。そして、分子内の水素結合、分子間の水素結合を極大化させることができる−P=O官能基を含有し、架橋性化合物との共重合時に架橋性部位が増加し、これを利用すれば、燃料電池作動温度で改善された熱的安定性と耐久性とを確保することができ、これによって、長寿命の燃料電池を製作できる。
【0033】
また、前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーを、電極と電解質膜とに同時に利用すれば、電解質膜と電極とでの界面相容性(compatibility)を改善し、セル性能が極大化されうる。
【0034】
前記化学式2または3で表示される化合物の一例として、下記化学式4から化学式10のいずれかで表示される化合物がある。
【0035】
【化7】
・・・(化学式4)
【0036】
【化8】
・・・(化学式5)
【0037】
【化9】
・・・(化学式6)
【0038】
【化10】
・・・(化学式7)
【0039】
【化11】
・・・(化学式8)
【0040】
【化12】
・・・(化学式9)
【0041】
【化13】
・・・(化学式10)
【0042】
以下、本発明の一実施形態による化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの製造方法について述べる。一例として、化学式2または化学式3で表示される化合物を例にとって説明するが、他の化合物もこれと類似の方法によって合成可能である。
【0043】
下記反応式1及び反応式2を参照すると、化学式2で表示される化合物は、DOPO含有ジオール(A)、ホルムアルデヒドまたはp−ホルムアルデヒド(B)及びアミン化合物(C)を溶媒なしに加熱する工程を経るか、または溶媒を付加して還流し、これをワークアップ(work−up)する工程を経て得ることができる。そして、化学式3で表示される化合物は、DOPO含有ジオール(A)の代わりに、DOPO含有トリオール(A’)を使用したことを除いては、反応式1と同一に実施して得ることができる。
【0044】
【化14】
・・・(反応式1)
【0045】
【化15】
・・・(反応式2)
【0046】
前記反応式で、R1は、前述の化学式2または3で定義されたところと同一に、下記構造式で表示されるグループのうちから選択される。
【0047】
【化16】
【0048】
前記反応で溶媒が使われる場合、溶媒として1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFなどを使用することができる。そして、前記加熱温度は、使われた溶媒が還流されうる温度範囲に調節するが、望ましくは80から120℃の範囲、特に、110℃程度になるように調節する。
【0049】
前記ワークアップ過程の非制限的な一実施例について述べれば、反応が完結した結果物を1NのNaOH水溶液と水とを使用して洗浄した後、硫酸マグネシウムのような乾燥剤を利用して乾燥させた後、これを濾過及び減圧蒸発して溶媒を除去し、さらに乾燥する過程を経て目的物を得ることができる。
【0050】
前記反応式1で使われたDOPO含有ジオール(A)は、下記反応式3に示されたように、それぞれの対応になるDOPOとp−ベンゾキノンとを反応させて得ることができる。
【0051】
【化17】
・・・(反応式3)
【0052】
また、DOPO含有トリオール(A’)は、下記反応式4に示されたように、DOPOとロソール酸(rosolic acid)とを反応させて得ることができる。
【0053】
【化18】
・・・(反応式4)
【0054】
前記反応式3及び反応式4の反応は、その反応条件が特別に制限されるものではないが、反応式3の場合、例えば、2−エトキシエタノールを溶媒として、125℃で4時間反応させて合成し、反応式4の場合は、溶媒還流条件下で、例えばエタノールを溶媒として使用した場合には、90℃で最小24時間反応する反応条件で実施される。
【0055】
前記化学式における前記C1−C20アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、iso−アミル基、ヘキシル基などを挙げることができ、前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたC1−C20のアルキル基(例:CCF3、CHCF2、CH2F、CCl3など)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸基やその塩、またはC1−C20アルキル基、C2−C20アルケニル基、C2−C20アルキニル基、C1−C20ヘテロアルキル基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールアルキル基、C6−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロ環基、またはC6−C20ヘテロアリールアルキル基で置換されうる。
【0056】
前記化学式で使われるアリール基は、単独または組み合わせて使われ、一つ以上の環を含むC6−C20芳香族炭素環システムを意味し、前記環は、ペンダント法で共に付着されるか、または融合されうる。アリールという用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルのような芳香族ラジカルを含む。前記アリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0057】
前記化学式で使われたアリールオキシ基の具体的な例としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、テトラヒドロナフチルオキシ基などがあり、アリールオキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0058】
前記化学式で使われるヘテロアリール基は、O、PまたはSのうちから選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCであるC1−C20の一価単環式または二環式芳香族、二価有機化合物を意味する。前記ヘテロアリール基の例としては、ピラジニル基、フラニル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミニジル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基などがある。前記ヘテロアリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0059】
また、本発明で使われるハロゲン化されたヘテロアリール基は、フッ素、塩素のようなヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基をいう。
【0060】
前記化学式で使われたヘテロアリールオキシ基の具体的な例としては、ピラジニルオキシ基、フラニルオキシ基、チエニルオキシ基、ピリジルオキシ基、ピリミニジルオキシ基、イソチアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、1,2,4−チアジアゾリルオキシ基などがあり、ヘテロアリールオキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0061】
前記化学式で使われたハロゲン化されたヘテロアリールオキシ基は、フッ素、塩素のようなヘテロ原子で置換されたヘテロアリールオキシ基をいう。
【0062】
前記化学式で使われるヘテロ環基は、窒素、硫黄、リン、酸素のようなヘテロ原子を含有しているC5−C10環基を指し、このようなヘテロ環基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様に置換可能である。
【0063】
また、前記化学式で使われるハロゲン化されたヘテロ環基は、フッ素、塩素のようなヘテロ原子で置換されたヘテロ環基をいう。
【0064】
前記化学式で使われるシクロアルキル基の例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などがあり、シクロアルキル基中の一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様に置換可能である。
【0065】
また、前記化学式で使われるハロゲン化されたシクロアルキル基は、フッ素、塩素のようなヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基をいう。
【0066】
また、前記化学式で前述の化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供する。
【0067】
前記重合体は、前述のベンゾオキサジン系モノマーを溶媒に溶解させ、これを熱処理して重合反応を実施して得ることができる。このときの熱処理温度は、180から250℃であることが好ましい。もし熱処理温度が180℃未満であるならば、重合反応の反応性が低下する場合があり、250℃を超えれば、副反応物質が生成されて生成物の収率が低下する場合があるので望ましくない。
【0068】
前記反応時に、必要である場合には、重合触媒などを使用できる。
【0069】
前記溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用し、その含有量は、ベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5から30質量部であることが望ましい。
【0070】
また、本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応の結果として得ることができるベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供できる。
【0071】
前記架橋性化合物の非制限的な例として、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズイミダゾールと塩基との複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系のうちから選択された一つ以上を挙げることができる。
【0072】
前記架橋性化合物の含有量は、前記化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5から95質量部であることが望ましい。
【0073】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、燃料電池用電極形成時に利用すれば、カソードに空気を利用しつつも、酸素透過度が改善され、電極内部でのリン酸(H3PO4)の湿潤(wetting)能と熱的安定性とを向上させることができる。
【0074】
また、前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を、燃料電池用電解質膜の形成時に利用すれば、作動温度で熱的安定性と耐久性とが改善される。
【0075】
このような電極と電解質膜とを採用した燃料電池は、高温無加湿条件下で動作可能であり、熱的安定性が補強されるだけではなく、改善された発電能を発現させることができる。
【0076】
本発明の一実施形態による燃料電池用電極は、前述の化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応、または前述の化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応で得られた重合体を含む触媒層を具備する。
【0077】
前記触媒層は、触媒を含む。
【0078】
前記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、電極のバインダとして使われ、特に結合剤の役割を行うことができ、一般的な結合剤なしにも電極構成が可能である。
【0079】
前記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、リン酸湿潤性を向上させる物質であって、その含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1ないし65質量部であることが望ましい。
【0080】
もし化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体の含有量が0.1質量部未満であるならば、電極の湿潤状態の改善が微小であり、65質量部を超えれば、成膜性が低下しうる。
【0081】
前記触媒としては、白金(Pt)単独、または金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属と白金との合金あるいは混合物を使用するか、または前記触媒金属がカーボン系担体に担持された担持触媒でもありうる。特に、白金(Pt)、白金コバルト(PtCo)及び白金ルテニウム(PtRu)からなる群から選択された一つ以上の触媒金属であるか、または前記触媒金属がカーボン系担体に担持された担持触媒を使用する。
【0082】
前記電極は、燃料電池電極の製造時に一般的に使用可能なバインダをさらに含むことができる。
【0083】
前記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロエチレンとの共重合体及びパーフルオロエチレン、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上を使用し、バインダの含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1から50質量部であることが望ましい。もしバインダの含有量が0.1質量部未満であるならば、電極の接着力が落ちて触媒層形態の維持が困難であり、50質量部を超えれば、電極内の電気抵抗が高まりうる。
【0084】
前記架橋性化合物の種類及び含有量は、前述の通りである。
【0085】
前述の燃料電池用電極を製造する方法について述べれば、次の通りである。
【0086】
まず、溶媒に触媒を分散させて分散液を得る。このとき、溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用し、その含有量は、触媒100質量部を基準として、100から1,000質量部であることが好ましい。
【0087】
前記分散液に、前記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと溶媒とを含む混合物を付加及び混合して撹拌する。前記混合物には、バインダがさらに含まれうる。
【0088】
前記混合物をカーボン支持体表面にコーティングし、電極を完成する。ここで、カーボン支持体は、ガラス基板上に固定するのがコーティング作業に容易である。そして、前記コーティング法としては特別に制限されるものではないが、ドクターブレードを利用したコーティング、バーコーティング(Bar coating)、スクリーンプリンティングのような方法を利用できる。
【0089】
前記混合物をコーティングした後で乾燥する過程を経るが、溶媒を除去する過程として、例えば、20から150℃の温度範囲で実施することができる。そして、乾燥時間は乾燥温度によって変わり、例えば、10から60分の範囲内で実施することができる。
【0090】
前述の製造過程から分かるように、最終的に得られた燃料電池用電極は、化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーではない、その重合体を含有しているが、化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応は、前述の乾燥過程及び/または電極を具備した電池の作動中に起こり、その重合体に転換される。
【0091】
もし前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーと溶媒とバインダとを含む混合物に架橋剤をより付加する場合には、最終的に得られた電極は、ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合体を含有する。
【0092】
以下、本発明の一実施形態による電解質膜及びその製造方法について説明する。下記では、架橋性化合物を使用した場合について説明するが、化学式1のベンゾオキサジン系モノマーのみで重合反応を行う場合には、架橋性化合物のみ使用しないことを除いては、同一に実施する。
【0093】
第一の方法によれば、前述の化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物とを混合した後、これを50から250℃、特に、80から220℃の範囲で硬化反応を実施する。次に、これに酸のようなプロトン伝導体を含浸させて電解質膜を形成する。
【0094】
前記架橋性化合物としては、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾールと塩基との複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系のうちから選択された一つ以上を挙げることができる。ポリベンズイミダゾールと塩基との複合体は、本出願人によって特許出願された2007−102579号に開示されたものを使用する。
【0095】
ポリベンズイミダゾール−塩基複合体における塩基は、弱塩基であることが望ましい。この塩基は、望ましくは、例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ルビジウム(Rb2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸水素アンモニウム((NH4)HCO3)からなる群から選択された一つ以上の炭酸塩を使用する。また、ポリベンズイミダゾール−塩基複合体におけるポリベンズイミダゾールとして、例えば、ポリ[2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンズイミダゾール](PBI)またはポリ(2,5−ベンズイミダゾール)(ABPBI)等を使用することが可能である。上述のポリベンズイミダゾールを、有機溶媒に溶解させたポリベンズイミダゾール溶液に、上記塩基を付加し、これを熱処理する過程を経る。このような熱処理過程を経た結果物をろ過すれば、目的とするポリベンズイミダゾール−塩基複合体を得ることができる。
【0096】
前記架橋性化合物の含有量は、化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5から95質量部であることが望ましい。
【0097】
もし架橋性化合物の含有量が5質量部未満であるならば、リン酸が含浸されずにプロトン伝導性が落ち、95質量部を超えれば、リン酸が相対的に多量に存在し、架橋体がポリリン酸に溶解されうる。
【0098】
第二の方法によれば、前記化学式1で表示されるリン含有第1ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との混合物を利用して膜を形成する。
【0099】
前記膜を形成する方法としては、テープキャスティング法を利用することも可能であり、一般的なコーティング法を利用することも可能である。前記コーティング法の例としては、支持体上にドクターブレードを利用し、前記混合物をキャスティングする方法を挙げることができる。ここで、ドクターブレードとしては、例えば、250〜500μmのギャップを有するものを使用する。
【0100】
もし前記膜を形成する過程で、ドクターブレードを利用したキャスティング法を利用する場合には、硬化後、酸を含浸する段階前に、支持体から電解質膜を分離させて支持体を除去する段階がさらに実施される。このように支持体を除去しようとする場合には、60から80℃の蒸留水に浸す過程を経る。
【0101】
前記支持体としては、電解質膜を支持する役割を行えるものであるならば、いずれも使用可能であり、ガラス基板、ポリイミドフィルムなどを使用する。テープキャスティング法を利用する場合には、テープキャスティングされた膜をポリエチレンテレフタレートのような支持体から分離した後、硬化のためのオーブンに入れるので、支持体が不要であるので、支持体を除去する段階が不要である。
【0102】
また、ベンゾオキサジン系モノマーとポリベンズイミダゾールとからなる混合物を利用し、膜をテープキャスティング法によって形成する場合、混合物を濾過する段階をさらに経ることができる。
【0103】
このように形成された膜を熱処理して硬化反応を実施した後、これを酸のようなプロトン伝導体に含浸して電解質膜を形成する。
【0104】
前記プロトン伝導体の非制限的な例としては、リン酸、C1−C20有機ホスホン酸などを使用する。前記C1−C20有機ホスホン酸の例として、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸などがある。
【0105】
前記プロトン伝導体の含有量は、例えば、電解質膜の総重量100質量部に対して、300から1,000質量部で使われる。本発明で使用する酸の濃度は特別に制限されるものではないが、リン酸を使用する場合、例えば、85質量%のリン酸水溶液を使用し、リン酸含浸時間は、80℃で2.5時間から14時間の範囲である。
【0106】
本発明の一実施形態による燃料電池用電極を利用し、燃料電池を製造する方法について述べることにする。
【0107】
本発明の一実施形態による電解質膜は、燃料電池で一般的に使われる電解質膜を使用することもでき、または、前述の化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合結果物であるポリベンゾオキサジン系化合物の重合体(架橋体)を含む電解質膜も使用可能である。
【0108】
特に、電解質膜として前記ポリベンゾオキサジン系化合物の重合体を含む電解質膜を使用する場合、燃料電池のセル性能が極大化されうる。
【0109】
前記燃料電池で一般的に使われる電解質膜としては、例えば、ポリベンズイミダゾール電解質膜、ポリベンゾオキサジンとポリベンズイミダゾールとの共重合体の電解質膜、PTFE多孔質膜などを使用することもできる。
【0110】
本発明の一実施形態による燃料電池用膜電極接合体を製造する過程について述べれば、次の通りである。ここで、用語である「膜電極接合体(MEA:Membrane and Electrode Assembly)」は、電解質膜を中心に、その両面に触媒層及び拡散層として構成された電極が積層されている構造をいう。
【0111】
本発明の一実施例によるMEAは、前述の電極触媒層を具備している電極を、前記過程によって得た電解質膜の両面に位置させた後、高温と高圧とで接合して形成し、そこに燃料拡散層を接合して形成できる。
【0112】
このとき、前記接合のための加熱温度及び圧力は、電解質膜が軟化する温度まで加熱した状態で、0.1から3ton/cm2、特に約1ton/cm2の圧力で加圧して実行することができる。
【0113】
その後、前記MEAに、それぞれバイポーラプレートを装着して燃料電池を完成する。ここでバイポーラプレートは、燃料供給用溝を有しており、集電体の機能を有している。
【0114】
燃料電池は、特別にその用途が限定されるものではないが、望ましい一面によれば、高分子電解質膜燃料電池として使われる。
【実施例】
【0115】
以下、下記実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明が下記実施例のみに限定されるということを意味するものではない。
【0116】
(合成例1:化学式4で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOジオール(3.24g、10mmol)、パラホルムアルデヒド(1.32g44mmol)、そして3,4−ジフルオロアニリン(2.84g、22mmol)を順に入れた後、90℃のオイルバス(oil bath)で混合を実施した。
【0117】
前記反応混合物は、反応初期には透明であって、30分ほど経過した後には、濃褐色の透明なゲル状物質に変化した。このとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチング(quenching)させ、常温に冷やした。常温に冷やした粗生成物(crude product)を1N NaOH水溶液を利用した溶媒抽出を利用して二回塩基洗浄(base washing)した後、脱イオン水で一回さらに洗浄を実施した。
【0118】
洗浄が終わった後、有機層をMgSO4を利用して乾燥させた後、連続的に濾過を実施した。濾液を回転蒸発機(rotary evaporator)を利用して除去した後、精製された生成物を真空オーブンで40℃で6時間乾燥させた。
【0119】
本合成例1によって得た化学式4の化合物は、Bruker 300MHz nuclear magnetic resonance spectrometerを利用して測定したNMR(Nuclear Magnetic Resonance)スペクトルを介してその構造を確認した(図4)。
【0120】
(合成例2:化学式5で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOトリオール(5.07g、10mmol)、パラホルムアルデヒド(1.98g66mmol)、そして3,4−ジフルオロアニリン(4.26g、33mmol)を付加して混合したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、化学式5で表示される化合物を得た。
【0121】
前記化学式5の化合物は、Bruker 300MHz nuclear magnetic resonance spectrometerを利用して測定したNMRスペクトルを介してその構造を確認した(図5)。
【0122】
(合成例3:化学式6で表示される化合物の製造)
3,4−ジフルオロアニリン(2.84g、22mmol)の代わりにアニリン(2.05g、22mmol)を使用したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、化学式6の化合物を得た。
【0123】
前記化学式6の化合物は、Bruker 300MHz nuclear magnetic resonance spectrometerを利用して測定したNMRスペクトルを介してその構造を確認した(図6)。
【0124】
(合成例4:化学式7で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコにDOPOジオール(6.48g、20mmol)、パラホルムアルデヒド(2.64g、88mmol)、そして2−アミノピリジン(4.14g、44mmol)を付加したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、目的物を得た。
【0125】
(合成例5:化学式8で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOジオール(6.48g、20mmol)、パラホルムアルデヒド(2.64g88mmol)、3−アミノピリジン(4.14g、44mmol)を付加したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、目的物を得た。
【0126】
(合成例6:化学式9で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOジオール(6.48g、20mmol)、パラホルムアルデヒド(2.64g、88mmol)、3−トリフルオロメチルアニリン(44mmol)を付加したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、目的物を得た。
【0127】
(合成例7:化学式10で表示される化合物の製造)
100mlの一口丸底フラスコに、DOPOトリオール(5.07g、10mmol)、パラホルムアルデヒド(1.98g66mmol)及びアニリン(33mmol)を付加して混合したことを除いては、合成例1と同じ方法によって実施し、化学式10で表示される化合物を得た。
【0128】
(参考例1:t−BuPh−aの製造)
100mlの一口丸底フラスコに、t−ブチルフェノール(15g、0.1mol)、パラホルムアルデヒド(6.31g0.21mol)、そしてアニリン(10.24g、0.11mol)を順に入れた後、90℃のオイルバス(oil bath)で混合を実施した。
【0129】
反応初期に不透明であった反応混合物が経時的に(30分ほど)濃褐色の透明なゲル状物質に変化するとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせ、常温まで冷却した。
【0130】
常温に冷やした粗生成物を1N NaOH水溶液に溶媒抽出を介して二回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水で一回さらに洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的に濾過を実施した。回転蒸発機を利用して濾液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンで40℃で6時間乾燥させ、下記構造式で示されるt−BuPh−aを得た。
【0131】
【化19】
【0132】
前記合成例1及び2によってそれぞれ得た化学式4の化合物並びに化学式5の化合物、及び参考例1によって得たt−BuPh−aを熱中量分析法を利用して熱的安定性を評価し、その結果を図1に共に表した。図1で熱重量損失は、800℃で測定したものである。
【0133】
図1を参照し、化学式4の化合物と化学式5の化合物は、800℃以上の高温で重量損失がt−BuPh−aに比べて少ないということが分かった。このような結果から、化学式4の化合物及び化学式5の化合物の熱的安定性が、t−BuPh−aに比べてはるかに優秀であるということが分かった。
【0134】
図4から図6は、前記合成例1−3によって製造された化学式4のDOPO−ジ−34DFA(ジフルオロアニリン)、化学式5のDOPO−トリ−34DFA、化学式6のDOPO−ジ−a(アニリン)の核磁気共鳴分析(NMR)スペクトルであり、それらの構造を確認することができた。
【0135】
(合成例8:化学式4のDOPO−ジ−34DFAとPBIとの重合体の製造)
化学式4のDOPO−ジ−34DFA 65質量部に、ポリベンズイミダゾールを35質量部にして混合した後、これに対しておよそ180から240℃の範囲で硬化反応を実施し、化学式4のDOPO−ジ−34DFAとPBIとの重合体を得た。
(合成例9:化学式5のDOPO−トリ−34DFAとPBIとの重合体の製造)
【0136】
化学式4のDOPO−トリ−34DFA 65質量部に、ポリベンズイミダゾールを35質量部にして混合した後、これに対しておよそ180から240℃の範囲で硬化反応を実施し、化学式5のDOPO−トリ−34DFAとPBIとの重合体を得た。
【0137】
DOPO−ジ−34DFA、DOPO−トリ−34DFA及び前記合成例6−7によって得たDOPO−ジ−34DFAとPBIとの重合体及びDOPO−トリ−34DFAとPBIとの重合体に対して、熱重量分析法を利用して熱的安定性を評価し、その結果を図7及び図8にそれぞれ共に表した。図7及び図8で熱重量損失は、800℃で測定したものである。
【0138】
これを参照し、DOPO−ジ−34DFA、DOPO−トリ−34DFAは、熱的安定性にすぐれるが、いずれもPBIとの重合反応を経て得た重合体よりもさらに向上した熱的安定性を有するということが分かった。
(合成例10:化学式10で表示される化合物とポリベンズイミダゾールとの重合体の製造)
【0139】
化学式10で表示される化合物20gと、ポリベンズイミダゾール10.8gとを約220℃で硬化反応を実施し、化学式10の化合物とポリベンズイミダゾールとの重合体を収得した。
【0140】
前記化学式10の化合物とポリベンズイミダゾールとの重合体に対して、固体状態で固体核磁気共鳴分析法(NMR)を利用して構造を確認し、その結果を図12に示した。NMR分析時に使われたNMR機器は、Varian社のUnity INOVA600製品であり、600MHZを使用した。
【0141】
(実施例1:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造)
撹拌容器に、カーボンに50質量%のPtCoが担持された触媒1g、及び溶媒NMP 3gを付加し、これをモルタルを利用して撹拌してスラリを作った。前記スラリに、前記合成例1によって得た化学式4で表示される化合物のNMP溶液を付加し、化学式4の化合物0.025gになるように添加し、さらに撹拌した。
【0142】
次に、前記混合物に5質量%のポリフッ化ビニリデンのNMP溶液を付加し、ポリフッ化ビニリデンが0.025gになるように添加し、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリを製造した。
【0143】
カーボンペーパを4cm×7cmに切ってガラス板上に固定し、ドクターブレード(Sheen instrument)でコーティングし、このときギャップ間隔は、600μmに調節した。
【0144】
前記カーボンペーパの上部に、前記カソード触媒層形成用スラリをコーティングし、これを常温で1時間乾燥し、80℃で1時間乾燥し、120℃で30分乾燥し、150℃で15分間乾燥し、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、3.0mg/cm2値を有する。
【0145】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0146】
撹拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。
【0147】
次に、前記混合物にポリフッ化ビニリデン0.05gをNMP1gに溶解させた溶液を付加し、2分間さらに撹拌してアノード触媒層形成用スラリを製作する。これを、微細多孔層(microporous layer)がコーティングされたカーボンペーパ上にバーコータ器(bar coater)でコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.4mg/cm2値を有する。
【0148】
これと別途に、下記化学式11のベンゾオキサジン系モノマー60質量部、下記化学式12のベンゾオキサジン系モノマー3質量部、ポリベンズイミダゾールを37質量部にして混合した後、これに対して、およそ220℃で硬化反応を実施した。
【0149】
【化20】
・・・(化学式11)
【0150】
【化21】
・・・(化学式12)
【0151】
前記化学式で、R2はフェニル基である。
【0152】
次に、これを85質量%のリン酸に80℃で4時間以上含浸させて電解質膜を形成した。ここで、リン酸の含有量は、電解質膜の総重量100質量部に対し、約480質量部であった。
【0153】
前記過程によって完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、約2.33mg/cm2値を有し、完成したアノードでの白金のローディング量は、1.4mg/cm2値を有する。
【0154】
前記カソードとアノードとの間に前記電解質膜を介在させ、MEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードは、リン酸含浸なしに使用した。
【0155】
前記カソードとアノードとの間のガス透過を防止するために、メインガスケット用としての200μm厚のテフロン(登録商標)膜と、サブガスケット用としての20μm厚のテフロン膜とを、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加えられる圧力は、トークレンチを使用して調節し、1N,2N,3N−mトルクまで段階的に増大しつつ組み立てた。
【0156】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドープした電解質を使用するので、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に達するまでエージングさせた後で最終評価する。そして、前記カソードとアノードとの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソードとアノードとの厚さは、カーボンペーパの散布のために変化があるが、カソード電極の厚さは約430μm、アノードの厚さは約390μmであった。
【0157】
(実施例2:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造)
カソード製造時に、化学式4で表示される化合物の代わりに、化学式5で表示される化合物を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
(実施例3から実施例5:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造)
【0158】
カソード製造時に、化学式4で表示される化合物の代わりに、化学式6で表示される化合物、化学式7で表示される化合物及び化学式8で表示される化合物をそれぞれ使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
(比較例1:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造)
【0159】
カソード製造時に、化学式4で表示される化合物を付加しないことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施し、カソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0160】
前記実施例1及び比較例1によって燃料電池において、経時的な電圧変化を調べて図2に表した。
【0161】
図2を参照すれば、実施例1の場合は、低い初期性能にもかかわらず、早い活性化(activation)を介して、比較例1の場合と比較し、電圧性能が改善されるということが分かった。
【0162】
また、前記実施例1、2及び比較例1によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧の変化を調べ、その評価結果を図3に表した。
【0163】
図3によれば、実施例1、2の燃料電池は、比較例1の場合と比較して、セル電圧の特性が優秀であるということが分かった。
【0164】
前記実施例1から5及び比較例1による燃料電池において、セル性能を調べて下記表1に表した。
【0165】
【表1】
【0166】
前記表1を参照すれば、実施例1から5の場合は、比較例1の場合と比較し、物質伝達オーバーポテンシャル(Mass transfer overpotentail)と動力学オーバーポテンシャルとが低くなり(参考:標準電極対比)、交換電流密度(Exchange current density)が高まった。このような結果から、実施例1ないし5の場合が触媒層内での酸素透過度がさらに高いということが分かった。一般的に、酸素透過度が高ければ、物質移動オーバーポテンシャルと動力学オーバーポテンシャルとが低くなって交換電流密度が高まる。
【0167】
(実施例6:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造)
撹拌容器に、カーボンに50質量%のPtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加し、これをモルタルを利用して撹拌し、スラリを作った。
【0168】
次に、前記混合物に5質量%のポリフッ化ビニリデンのNMP溶液を付加し、ポリフッ化ビニリデンが0.025gになるように添加し、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリを製造した。
【0169】
カーボンペーパを4cm×7cmに切ってガラス板上に固定し、ドクターブレード(Sheen instrument)でコーティングし、このときギャップ間隔は、600μmに調節した。
【0170】
前記カーボンペーパ上部に、前記カソード触媒層形成用スラリをコーティングし、これを常温で1時間乾燥し、80℃で1時間乾燥し、120℃で30分乾燥し、150℃で15分間乾燥し、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、2.32mg/cm2値を有する。
【0171】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0172】
撹拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。
【0173】
次に、前記混合物にポリフッ化ビニリデン0.05gをNMP1gに溶解させた溶液を付加し、2分間さらに撹拌してアノード触媒層形成用スラリを製作する。これを微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパ上にバーコータ器でコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.44mg/cm2値を有する。
【0174】
これと別途に、合成例2によって得た化学式5のDOPO−トリ−34DFA 65質量部、ポリベンズイミダゾール(PBI)35質量部を混合した後、これに対しておよそ220℃で硬化反応を実施した。
【0175】
次に、これを85質量%リン酸に80℃で4時間以上含浸させて電解質膜を形成した。ここで、リン酸の含有量は、電解質膜総重量100質量部に対して約530質量部であった。
【0176】
前記カソードとアノードとの間に前記電解質膜を介在させてMEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードは、リン酸含浸なしに使用した。
【0177】
前記カソードとアノードとの間のガス透過を防止するために、メインガスケット用としての200μm厚のテフロン膜と、サブガスケット用としての20μm厚のテフロン膜とを電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加えられる圧力は、トークレンチを使用して調節し、1,2,3N−mトルクまで段階的に増大しつつ組み立てた。
【0178】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドープした電解質を使用するので、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に達するまでエージングさせた後で最終評価する。そして、前記カソードとアノードとの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソードとアノードとの厚さは、カーボンペーパの散布のために変化があるが、カソードの電極の厚さは約430μm、アノードの厚さは約390μmであった。
【0179】
(実施例7:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造)
合成例2によって得た化学式5のDOPO−トリ−34DFA代わりに、合成例1によって得た化学式4のDOPO−ジ−34DFAを使用したことを除いては、実施例6と同じ方法によって実施し、電解質膜及びそれを採用した燃料電池を製作した。
【0180】
前記実施例6によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧特性を調べ、その結果を図9に表した。
【0181】
これを参照すれば、実施例6の燃料電池は、セル電圧が優秀であるということが分かった。
【0182】
また、前記実施例6による燃料電池において、経時的なセル電圧変化を調べ、その結果を図10に表した。図10で「OCV」は、開放回路電圧(open circuit voltage)を示し、「0.2A/cm2」は、電流密度0.2A/cm2でのセル電圧を示す。
【0183】
図10から、実施例6の燃料電池は、2,500時間までは電圧降下がほとんどないということが分かった。
【0184】
前記実施例6、7によって形成された電解質膜において、温度による伝導度特性を調べ、その結果を図11に示した。図11には、PBI膜を使用した場合を参考試料として共に示した。
【0185】
これを参照し、実施例6、7の電解質膜は、PBIを使用した場合と比較し、伝導度が向上した。
【0186】
(実施例8:燃料電池の製造)
撹拌容器に、カーボンに50質量%PtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加し、これをモルタルを利用して撹拌し、スラリを作った。前記スラリに、前記合成例1によって得た化学式4のDOPO−ジ−34DFAのNMP溶液を付加し、化学式4のDOPO−ジ−34DFA 0.025gになるように添加し、さらに撹拌した。
【0187】
次に、前記混合物に5質量%のポリフッ化ビニリデンのNMP溶液を付加し、ポリフッ化ビニリデンが0.025gになるように添加し、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリを製造した。
【0188】
カーボンペーパを4cm×7cmに切ってガラス板上に固定し、ドクターブレード(Sheen instrument)でコーティングし、このときギャップ間隔は、600μmに調節した。
【0189】
前記カーボンペーパ上部に、前記カソード触媒層形成用スラリをコーティングし、これを常温で1時間乾燥し、80℃で1時間乾燥し、120℃で30分乾燥し、150℃で15分間乾燥し、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、2.32mg/cm2値を有する。
【0190】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0191】
撹拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。
【0192】
次に、前記混合物にポリフッ化ビニリデン0.05gをNMP1gに溶解した溶液を付加して2分間さらに撹拌し、アノード触媒層形成用スラリを製作する。これを微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパ上にバーコータ器でコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.44mg/cm2値を有する。
【0193】
これと別途に、合成例2によって得た化学式5のDOPO−トリ−34DFA 65質量部、ポリベンズイミダゾール(PBI)35質量部を混合した後、これに対しておよそ220℃で硬化反応を実施した。
【0194】
次に、これを85質量%リン酸に80℃で4時間以上含浸させて電解質膜を形成した。ここで、リン酸の含有量は、電解質膜総重量100質量部に対し、約530質量部であった。
【0195】
前記カソードとアノードとの間に、前記電解質膜を介在してMEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードは、リン酸含浸なしに使用した。
【0196】
前記カソードとアノードとの間のガス透過を防止するために、メインガスケット用としての200μm厚のテフロン膜と、サブガスケット用としての20μm厚のテフロン膜とを電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加えられる圧力は、トークレンチを使用して調節し、1,2,3N−mトルクまで段階的に増大しつつ組み立てた。
【0197】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドープした電解質を使用するので、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に達するまでエージングさせた後で最終評価する。そして、前記カソードとアノードとの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソードとアノードとの厚さは、カーボンペーパの散布のために変化があるが、カソードの電極の厚さは約430μm、アノードの厚さは約390μmであった。
【0198】
(比較例2:燃料電池の製作)
カソード製造時に、化学式4のDOPO−ジ−34DFAを使用せずに、電解質膜としてポリベンズイミダゾール(PBI)膜を使用したことを除いては、実施例8と同じ方法によって、燃料電池を製作した。
【0199】
前記実施例8及び比較例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を調べ、その結果は、図13に示されている通りである。
【0200】
図13を参照し、実施例8によって製造されたMEAの性能が、参考例2の場合と比較して改善されるということが分かった。
【0201】
本発明は図面に図示された一実施例を参考に説明されているが、それらは、例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他実施例が可能であるという点を理解することができるであろう。
【0202】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー、その重合体、及びそれを含む燃料電池用電極、それを含む燃料電池用電解質膜及びそれを採用した燃料電池は、例えば、電源関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】合成例1、2によってそれぞれ得た化学式4で表示される化合物、及び化学式5で表示される化合物と、参考例1によって得たt−BuPh−aとの熱重量分析結果を示したグラフである。
【図2】実施例1及び比較例1によって製造された燃料電池において、経時的な電圧変化を示したグラフである。
【図3】実施例1、2及び比較例1によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧変化を示したグラフである。
【図4】合成例1によって製造された化学式4のDOPO−ジ−34DFAの核磁気共鳴分析スペクトルである。
【図5】合成例2によって製造された化学式5のDOPO−トリ−34DFAの核磁気共鳴分析スペクトルである。
【図6】合成例3によって製造された化学式6のDOPO−ジ−aの核磁気共鳴分析スペクトルである。
【図7】DOPO−ジ−34DFA、DOPO−トリ−34DFAを熱重量分析法を利用して評価した熱的安定性の結果を示したグラフである。
【図8】合成例8によって得たDOPO−ジ−34DFAとPBIとの重合体、及び合成例9によって得たDOPO−トリ−34DFAとPBIとの重合体を熱重量分析法を利用して評価した熱的安定性の結果を示したグラフである。
【図9】実施例6によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧特性を示したグラフである。
【図10】実施例6による燃料電池において、経時的なセル電圧変化を示したグラフである。
【図11】実施例6、7によって形成された電解質膜において、温度による伝導度特性結果を示したグラフである。
【図12】合成例10による化学式10の化合物の重合体の固体核磁気共鳴分析スペクトルである。
【図13】実施例8及び比較例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を示したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示される、リン含有モノマー。
【化1】
・・・(化学式1)
前記式で、Aは、置換または非置換のC1−C20ヘテロ環基、置換または非置換のC4−C20シクロアルキル基、あるいは、置換または非置換のC1−C20アルキル基であり、
R2及びR3は互いに独立的に、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、またはヒドロキシ基である。
【請求項2】
前記Aが、下記化学式で表示されるグループ中のいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有モノマー。
【化2】
前記式で、R1は、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC6−C20アリール基、ハロゲン化されたC6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC1−C20ヘテロ環基である。
【請求項3】
前記リン含有モノマーが、下記化学式2または化学式3で表示される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有モノマー。
【化3】
・・・(化学式2)
【化4】
・・・(化学式3)
前記式で、R1は、下記構造式で表示されるグループ中から選択された一つである。
【化5】
【請求項4】
前記化学式2または化学式3で表示される化合物が、下記化学式4から10のいずれかで表示される化合物中から選択された一つであることを特徴とする、請求項3に記載のリン含有モノマー。
【化6】
・・・(化学式4)
【化7】
・・・(化学式5)
【化8】
・・・(化学式6)
【化9】
・・・(化学式7)
【化10】
・・・(化学式8)
【化11】
・・・(化学式9)
【化12】
・・・(化学式10)
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のリン含有モノマーの重合反応生成物、または請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のリン含有モノマーと架橋性化合物との反応生成物であることを特徴とする、リン含有モノマーの重合体。
【請求項6】
前記架橋性化合物が、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズイミダゾールと塩基との複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系化合物のうちから選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項5に記載のベンゾオキサジン系モノマーの重合体。
【請求項7】
請求項5に記載のリン含有モノマーの重合体を含む触媒層を具備する、燃料電池用電極。
【請求項8】
前記触媒層が触媒を含むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項9】
前記触媒層が触媒を含み、
前記リン含有モノマーの重合体の含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1から65質量部であることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項10】
前記触媒が、
白金(Pt)単独、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属とを含む白金合金、または、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属との混合物であることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池用電極。
【請求項11】
前記触媒が、触媒金属であるか、または前記触媒金属がカーボン系担体に担持された担持触媒であり、
前記触媒金属が、
白金(Pt)単独、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属とを含む白金合金、または、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属との混合物であることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池用電極。
【請求項12】
前記触媒層が、リン酸及びC1−C20有機ホスホン酸のうちから選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項13】
ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、パーフルオロエチレン、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上のバインダがさらに含まれることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項14】
前記触媒層が触媒及びバインダをさらに含み、
前記バインダが、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロエチレンとの共重合体、パーフルオロエチレン、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上であり、
前記バインダの含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1から50質量部であることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項15】
請求項5に記載のリン含有モノマーの重合体を含む、燃料電池用電解質膜。
【請求項16】
前記電解質膜に、リン酸及びC1−C20有機ホスホン酸のうちから選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項17】
カソードと、アノードと、それらの間に介在された電解質膜とを具備し、
前記カソード及びアノードのうちから選択された一つ以上が、請求項5に記載のリン含有モノマーの重合体を含む触媒層を具備する電極であることを特徴とする、燃料電池。
【請求項18】
前記電解質膜が、請求項5に記載のリン含有モノマーの重合体を含むことを特徴とする、請求項17に記載の燃料電池。
【請求項1】
下記化学式1で表示される、リン含有モノマー。
【化1】
・・・(化学式1)
前記式で、Aは、置換または非置換のC1−C20ヘテロ環基、置換または非置換のC4−C20シクロアルキル基、あるいは、置換または非置換のC1−C20アルキル基であり、
R2及びR3は互いに独立的に、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、またはヒドロキシ基である。
【請求項2】
前記Aが、下記化学式で表示されるグループ中のいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有モノマー。
【化2】
前記式で、R1は、水素、C1−C20アルキル基、C1−C20アルコキシ基、C6−C20アリール基、C6−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC6−C20アリール基、ハロゲン化されたC6−C20アリールオキシ基、C1−C20ヘテロアリール基、C1−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC1−C20ヘテロアリールオキシ基、C4−C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC4−C20シクロアルキル基、C1−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC1−C20ヘテロ環基である。
【請求項3】
前記リン含有モノマーが、下記化学式2または化学式3で表示される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有モノマー。
【化3】
・・・(化学式2)
【化4】
・・・(化学式3)
前記式で、R1は、下記構造式で表示されるグループ中から選択された一つである。
【化5】
【請求項4】
前記化学式2または化学式3で表示される化合物が、下記化学式4から10のいずれかで表示される化合物中から選択された一つであることを特徴とする、請求項3に記載のリン含有モノマー。
【化6】
・・・(化学式4)
【化7】
・・・(化学式5)
【化8】
・・・(化学式6)
【化9】
・・・(化学式7)
【化10】
・・・(化学式8)
【化11】
・・・(化学式9)
【化12】
・・・(化学式10)
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のリン含有モノマーの重合反応生成物、または請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のリン含有モノマーと架橋性化合物との反応生成物であることを特徴とする、リン含有モノマーの重合体。
【請求項6】
前記架橋性化合物が、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズイミダゾールと塩基との複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系化合物のうちから選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項5に記載のベンゾオキサジン系モノマーの重合体。
【請求項7】
請求項5に記載のリン含有モノマーの重合体を含む触媒層を具備する、燃料電池用電極。
【請求項8】
前記触媒層が触媒を含むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項9】
前記触媒層が触媒を含み、
前記リン含有モノマーの重合体の含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1から65質量部であることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項10】
前記触媒が、
白金(Pt)単独、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属とを含む白金合金、または、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属との混合物であることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池用電極。
【請求項11】
前記触媒が、触媒金属であるか、または前記触媒金属がカーボン系担体に担持された担持触媒であり、
前記触媒金属が、
白金(Pt)単独、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属とを含む白金合金、または、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属との混合物であることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池用電極。
【請求項12】
前記触媒層が、リン酸及びC1−C20有機ホスホン酸のうちから選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項13】
ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、パーフルオロエチレン、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上のバインダがさらに含まれることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項14】
前記触媒層が触媒及びバインダをさらに含み、
前記バインダが、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロエチレンとの共重合体、パーフルオロエチレン、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上であり、
前記バインダの含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1から50質量部であることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池用電極。
【請求項15】
請求項5に記載のリン含有モノマーの重合体を含む、燃料電池用電解質膜。
【請求項16】
前記電解質膜に、リン酸及びC1−C20有機ホスホン酸のうちから選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項17】
カソードと、アノードと、それらの間に介在された電解質膜とを具備し、
前記カソード及びアノードのうちから選択された一つ以上が、請求項5に記載のリン含有モノマーの重合体を含む触媒層を具備する電極であることを特徴とする、燃料電池。
【請求項18】
前記電解質膜が、請求項5に記載のリン含有モノマーの重合体を含むことを特徴とする、請求項17に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−114442(P2009−114442A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283455(P2008−283455)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】
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