説明

リン酸化アミノ酸、合成リン酸化ペプチド及び胃石タンパク質を含む安定な非晶質炭酸カルシウム

非晶質炭酸カルシウム(ACC)と、前記炭酸カルシウムの非晶質形態を安定化する、少なくとも1つのリン酸化アミノ酸又はリン酸化ペプチドとを含む組成物が提供される。特に、ペプチドは、本発明によっても提供される甲殻類タンパク質、すなわち、GAP65、GAP22及びGAP12から選択することができる。本組成物は、医薬製剤及び栄養補助剤中で有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質炭酸カルシウムを含む組成物及びこれを調製する方法に関し、さらに、リン酸化アミノ酸又はペプチドを含む組成物に関する。特に、前記ペプチドは、GAP65、GAP22、GAP21及びGAP12を含む甲殻類タンパク質から選択される。非晶質炭酸カルシウム及びリン酸化アミノ酸又はペプチドを含む、医薬組成物及び栄養補助食品組成物が提供される。
【0002】
発明の背景
カルシウムは、シグナル伝達において中心的な役割の一つを演じており、さらに生体系における重要な構成要素である。原生動物から脊椎動物まで、蓄積したカルシウム塩は、動物の堅い身体構造の維持に役立っており、リン酸カルシウムは脊椎動物の内骨格の主要な成分であり、炭酸カルシウムは無脊椎動物の外骨格である。主要構成物質としての炭酸カルシウム無機質を含む石灰化外骨格は、棘皮動物、軟体動物及び節足動物の間に広範囲に及ぶもので、保護をもたらし、カルシウムの貯蔵庫として働いている。一部の甲殻類は、炭酸カルシウムを非晶質状態で一時的に貯蔵し、特に脱皮後の新たな外骨格構造の石灰化の間にすばやく動員するために、より良好に利用できるようにしている。通常、非晶質の無機塩は熱力学的に不安定なので、生体(例えばザリガニの)における非晶質炭酸カルシウムの形成は、かなり興味深い。非晶質炭酸カルシウム(ACC)は、その結晶多形(主にカルサイト、アラゴナイト)に形態変化する傾向がある。WO2005/115414は、ヒトの摂取に容易に利用できる安定なACCを含む組成物を提供するため、甲殻類の器官を採用している。カルシウムの代謝及び生体力学的な一般的重要性に鑑み、また、ACCが、栄養補助食品として、潜在的により可溶型で吸収型の炭酸カルシウムなので、本発明の目的は、非晶質炭酸カルシウムを調製する新規の方法を提供することにある。
【0003】
本発明の別の目的は、安定なACCを含む医薬組成物及び栄養補助食品組成物を提供することにある。
【0004】
本発明の他の目的及び利点は、説明が進むと共に明らかになろう。
【0005】
発明の概要
本発明は、非晶質炭酸カルシウム(ACC)と、リン酸化アミノ酸及びリン酸化ペプチドから選択される少なくとも1つの成分とを含む組成物に関する。前記リン酸化アミノ酸及びリン酸化ペプチドは、ホスホ−セリンもしくはホスホ−スレオニン、又は両方を含んでもよい。前記リン酸化アミノ酸及びリン酸化ペプチドは、本発明の組成物中の炭酸カルシウムの非晶質形態を安定化する。本発明の一つの側面では、前記リン酸化ペプチドは、甲殻類の胃石に由来する。一つの態様では、本発明の組成物は、ACC、少なくとも1つのリン酸化アミノ酸又はペプチド、及びキチン又はキトサンを含む。
【0006】
別の側面では、本発明は、新規の甲殻類ペプチド、及び炭酸カルシウムの結晶状態に影響を及ぼす際のその使用、並びに製剤の調製におけるその使用に関する。本発明は、また、前記ペプチドの機能性フラグメント(functional fragment)にも関する。以下に関連する単離されたタンパク質としては、GAP65、GAP22、GAP21及びGAP12(GAPは、胃石タンパク質(gastrolith protein)の略である)があり、本明細書では、前記新規のタンパク質の推定アミノ酸配列が提供され、これらは、配列番号1〜4と表される。本発明は、配列番号1、配列番号9、配列番号17、配列番号24からなる群から選択される配列を基本的に有する、単離され精製された甲殻類ペプチド及びその相同体を提供する。本発明による配列相同体(sequence homolog)は、配列の少なくとも90%が保存される、任意の挿入、欠失及び置換があるペプチドである。本発明は、サブ配列をその配列に含む、単離され精製されたペプチドをさらに含み、前記サブ配列は、上述の甲殻類GAPペプチドのフラグメントであり、好ましくは、サブ配列が、少なくとも10アミノ酸長である。前記サブ配列は、例えば、配列番号2〜8、配列番号10〜16及び配列番号18〜23、又は配列番号1、配列番号9、配列番号17、配列番号24の配列の他のフラグメントから選択される配列を有してもよい。本発明は、上記に定義した1つもしくは複数のペプチド、又はその誘導体、変異体もしくは機能フラグメント、あるいはその混合物を、非晶質炭酸カルシウム(ACC)と共に含む組成物を提供する。前記ペプチドは、前記組成物中の前記炭酸カルシウムの非晶質形態を安定化する。本明細書で用いる用語「機能的に同等なフラグメント、誘導体又は変異体」は、ペプチドの炭酸カルシウム結晶化の抑制能力を妨げない修飾を施されたペプチドを含んでいる。
【0007】
本発明は、配列番号1、配列番号9、配列番号17及び配列番号24から選択されるアミノ酸配列を有するペプチド、並びにその配列が相同であり、好ましくは少なくとも90%の相同性を有するペプチドを対象とする。本発明によるペプチドをコードするDNA配列も、同様に本発明の一部である。本発明で提供されるものは、上記に定義したペプチド又はその誘導体を含有する炭酸カルシウム調製物である。
【0008】
本発明の好ましい態様では、ACCを含む炭酸カルシウム調製物が提供され、前記調製物は、少なくとも1カ月は安定である。安定な非晶質炭酸カルシウムの調製方法が開示され、この方法は、カルシウムを含む可溶性塩と、炭酸源と、リン酸化アミノ酸又はリン酸化ペプチドとを水相において任意の順序で混合することを含む。前記炭酸源は、例えば、液相に溶解した炭酸塩を含んでもよく、前記炭酸源は、気体の二酸化炭素を含んでもよい。
【0009】
本発明では、上記の前記組成物を含む医薬製剤が提供され、この医薬製剤は、本明細書で定義した1つもしくは複数のリン酸化アミノ酸もしくはリン酸化ペプチド、又はその誘導体、変異体もしくは機能性フラグメント、あるいはその混合物をACCと共に含有する。本発明の他の側面では、上記の前記組成物は、例えば、食品添加剤などの栄養補助食品製剤として好都合に使用される。前記医薬製剤は、好ましくは経口投与され、充填剤、溶媒又は添加剤を含んでもよい。前記医薬製剤は、好ましくは、疼痛、増殖性疾患、神経障害、免疫不全、循環器疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害及び歯科疾患からなる群から選択される状態の治療に用いられる。前記治療が、原因因子の消失又は症状の軽減につながることがある。前記増殖性疾患は、例えば、乳癌又は気管支癌であってもよい。前記治療には、腫瘍細胞の増殖低下又は増殖阻害を含めてもよい。前記疼痛に関して、疼痛は、術後疼痛、負傷後の疼痛、癌に付随する疼痛及び神経因性疼痛であってもよい。言及した神経障害は、例えば、脱髄疾患、痴呆及び運動障害から選択される。前記状態は、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病から選択される変性疾患であってもよい。前記状態には、骨障害又は骨髄障害を含めてもよく、例えば、骨折又は骨粗鬆症であってもよい。前記状態は、神経変性疾患であってもよい。
【0010】
本発明の一つの側面では、前記新規ペプチドのGAP65、GAP22、GAP21及びGAP12又はその誘導体は、医薬品の製造に使用される。また、骨障害又は外傷の治療方法、並びに疼痛管理方法も提供され、この方法は、炭酸カルシウム、及び1つもしくは複数の前記新規ペプチド又はその誘導体を含む製剤を経口投与することを含む。本明細書で用いる用語「誘導体」には、アルキル化、エステル化、中和、環化又はオリゴマー化によって得られたペプチド生成物もまた含まれる。
【0011】
本発明では、炭酸塩とカルシウム塩を含む混合物中で、炭酸カルシウムの結晶化を阻害する方法が提供され、この方法は、リン酸化アミノ酸又はリン酸化ペプチドのある量を、前記混合物に混合することを含む。前記リン酸化アミノ酸又はリン酸化ペプチドは、好ましくは、ホスホ−セリン又はホスホ−スレオニンを含んでいる。一つの態様では、本発明は、炭酸カルシウムの結晶化を阻害する方法を提供し、この方法は、配列番号1、配列番号9、配列番号17及び配列番号24から選択される配列を有するペプチド、又はその相同体、機能性フラグメント、誘導体もしくは変異体、あるいはその混合物のある量を、結晶化又は沈殿析出混合物(precipitation mixture)に混合することを含む。本発明による炭酸カルシウムの結晶化を阻害する方法が提供され、この方法は、水に可溶なカルシウム塩を提供すること、並びに前記塩を、GAP65、GAP22、GAP21及びGAP12から選択されるペプチドもしくはその機能的に同等なフラグメント、又はその誘導体もしくは変異体、あるいはその混合物と接触させることを含む。
【0012】
本発明の一つの側面では、炭酸カルシウムとリン酸化アミノ酸又はペプチドの混合物を含む食品添加剤又は機能性食品が提供される。一つの態様では、前記ペプチドは、配列番号1、配列番号9、配列番号17、配列番号24、及びその相同体又はフラグメントからなる群から選択される配列を有する。
【0013】
本発明の上記並びに他の特徴及び利点は、以下の例及び添付された図を参照して、より容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】胃石の可溶性タンパク質の単離、GAP65の精製及び部分配列を示す図である。分子量基準タンパク質と比較した、胃石の可溶性タンパク質プロフィールのSDS−PAGEクーマシー染色(左)、DEAEカラムクロマトグラフィーによって精製し、クーマシー、「ステインオール(stains all)」及び「pas」で染色したGAP65含有画分17のSDS−PAGE(右)である。
【図1B】胃石の可溶性タンパク質の単離、GAP65の精製及び部分配列を示す図である。トリプシン消化後にナノスプレー法でQtof2によって得られた、GAP65のクロマトグラムである。顕著なピークからのペプチドの配列は、MS/MS分析を通して得られた。
【図2A】GAP65の完全な推定アミノ酸配列及びその生物情報分析を含む図である。GAP65のオープンリーディングフレームの推定アミノ酸配列表である。太字は、予測シグナル配列、灰色の囲みは、推定リン酸化部位、72番及び173番のアミノ酸の濃い囲みは、予測されたO−グリコシル化部位、薄い囲みは、予測されたN−グリコシル化部位である。
【図2B】GAP65の完全な推定アミノ酸配列及びその生物情報分析を含む図である。予測されたドメインを示す、GAP65の配列の模式図である。すなわち、ChtBD2は、キチン結合ドメイン2、LDLaは、低密度リポタンパク質受容体クラスAドメイン、最後のドメインは、多糖体の脱アセチル化酵素のドメインである。
【図2C】GAP65の完全な推定アミノ酸配列及びその生物情報分析を含む図である。リポタンパク質受容体に対する相同性にもとづく、LDLaドメインの3D構造である。左は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質由来の補体様反復配列(complement−like repeat)CR3のNMR構造であり、右は、GAP65のLDLaドメインの予測構造である。
【図3A】GAP65の特異的発現、及び誘発された未脱皮期(premolt)中の胃石の円柱上皮におけるこの局在化を示す画像である。RT−PCRを用いて未脱皮期中のGAP65発現の検出をした画像である。RNAは、胃石板上皮(gastrolith epithelial disc)、肝膵臓、表皮下組織、精管及び胃壁から採取し、伸長因子2(Eft2)を使用してRNA抽出の再確認を行い、対照はゲノム混入用のものを用いた。
【図3B】GAP65の特異的発現、及び誘発された未脱皮期中の胃石の円柱上皮におけるこの局在化を示す画像である。誘発した未脱皮期及び無処置の脱皮間期(intermolt)の雄における、in situハイブリダイゼーションによるGAP65発現の局在化を示す。左画面は、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色したものを示し、中画面は、ネガティブコントロールのセンス−GAP65プローブを示し、2つの右画面は、特定の領域をできるだけ拡大したGAP65のアンチセンスプローブを示し、横棒は、誘発した未脱皮期のセンスプローブでは、100μmを表すが、それ以外は200μmを表す。
【図4】GAP65サイレンシング後の胃石板中のGAP65(GASP65と表す)の相対転写量(エクジソン及びGAP65のdsRNA、エクジソン及びdsRNAキャリア、エクジソン及びC.クワドリカリナタス(C.quadricarinatus)のビテロゲニン(CqVg)のdsRNA、並びにエクジソンキャリア及びdsRNAキャリア(左から右)を注入したザリガニの胃石板中の、リアルタイムRT−PCRを用いたGAP65転写量の相対定量)を示すグラフである。アルファベットは、統計的有意性を表す。
【図5A】GAP65サイレンシング後の胃石の形態学的変形を示す写真である。典型的な胃石は、エクジソン及びGAP65のdsRNAの両方(左)、エクジソン及びdsRNAキャリアの両方(中)、エクジソンキャリア及びdsRNAキャリア(右)の両方を注入したザリガニから切断した。ザリガニから切断した胃石全体の側面写真である。
【図5B】GAP65サイレンシング後の胃石の形態学的変形を示す写真である。典型的な胃石は、エクジソン及びGAP65のdsRNAの両方(左)、エクジソン及びdsRNAキャリアの両方(中)、エクジソンキャリア及びdsRNAキャリア(右)の両方を注入したザリガニから切断した。切断前の上記胃石のX線写真(背面像)である。
【図5C】GAP65サイレンシング後の胃石の形態学的変形を示す写真である。典型的な胃石は、エクジソン及びGAP65のdsRNAの両方(左)、エクジソン及びdsRNAキャリアの両方(中)、エクジソンキャリア及びdsRNAキャリア(右)の両方を注入したザリガニから切断した。切断前の上記胃石のX線写真(背面像)である。
【図6A】GAP65の遺伝子サイレンシング後の、胃石の構造的変形の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真を示す図である。典型的な胃石は、エクジソン+GAP65のdsRNA(左)及びエクジソン+dsRNAキャリア(右)を注入したザリガニから切断した。無機質及びマトリックスの配置を示す胃石中央部の断面像である(×50)。
【図6B】GAP65の遺伝子サイレンシング後の、胃石の構造的変形の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真を示す図である。典型的な胃石は、エクジソン+GAP65のdsRNA(左)及びエクジソン+dsRNAキャリア(右)を注入したザリガニから切断した。無機質及びマトリックスの配置を示す胃石中央部の断面像である(×200)。
【図6C】GAP65の遺伝子サイレンシング後の、胃石の構造的変形の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真を示す図である。典型的な胃石は、エクジソン+GAP65のdsRNA(左)及びエクジソン+dsRNAキャリア(右)を注入したザリガニから切断した。ナノレベルの小球を含む無機質の配置を示す図である(×15000)。GAPを含めないエクジソンは、胃石が正常な外観を示したが、エクジソン+GAP65dsRNAで処理した胃石は、変形している。
【図7A】胃石の精製タンパク質の存在/不在下において試験管内沈殿した、炭酸カルシウムのSEM画像である。GAP65が豊富な画分を有する炭酸カルシウム沈殿物(左)、対照としてトリプシンの当量で沈殿した炭酸カルシウム(右)である。
【図7B】胃石の精製タンパク質の存在/不在下において試験管内沈殿した、炭酸カルシウムのSEM画像である。50〜500nmのナノ粒子を有する典型的な非晶質構造を示す、沈殿後40日経過したACCのSEM画像である。
【図8A】GAP65が豊富な画分との沈殿によって得られた、ACCのラマンスペクトルである。GAP65が豊富な画分との沈殿によって得られた、炭酸カルシウムのラマンスペクトルである。
【図8B】GAP65が豊富な画分との沈殿によって得られた、ACCのラマンスペクトルである。沈殿27日後のスペクトルである。
【図8C】GAP65が豊富な画分との沈殿によって得られた、ACCのラマンスペクトルである。沈殿6.5カ月後のスペクトルである。
【図9】6.5カ月経過したACC(GAP65で誘発した)とカルサイトの、ラマンスペクトル(1085ピーク付近)の比較図である。
【図10A】トリプシン消化後に、ナノスプレー法でQtof2によって得られた胃石タンパク質の部分配列決定を示す、クロマトグラムである。ペプチドの配列は、顕著なピークからMS/MS分析を経て得られた。GAP22を示すスペクトルである。
【図10B】トリプシン消化後に、ナノスプレー法でQtof2によって得られた胃石タンパク質の部分配列決定を示す、クロマトグラムである。ペプチドの配列は、顕著なピークからMS/MS分析を経て得られた。GAP21を示すスペクトルである。
【図10C】トリプシン消化後に、ナノスプレー法でQtof2によって得られた胃石タンパク質の部分配列決定を示す、クロマトグラムである。ペプチドの配列は、顕著なピークからMS/MS分析を経て得られた。GAP12を示すスペクトルである。
【図11】胃石抽出物の存在下で、塩化カルシウム及び炭酸ナトリウムの溶液から沈殿した、炭酸カルシウムのラマンスペクトルである。
【図12】GAPタンパク質のアミノ酸組成を示す表1である。
【図13】GAP22cDNAのヌクレオチド配列及びオープンリーディングフレームの対応する推定アミノ酸配列を示す図である(星印は終止コドンを示し、灰色で強調した配列は非翻訳領域、N末端の推定シグナルペプチドには下線を引いてある)。
【図14】GAP21cDNAのヌクレオチド配列及びオープンリーディングフレームの対応する推定アミノ酸を示す図である(記号は、図13のものと同様な意味である)。
【図15A】GAP配列に関する図である。GAP21cDNAのヌクレオチド配列及びオープンリーディングフレームの対応する推定アミノ酸を示す図である。記号は、図13のものと同様な意味である。
【図15B】GAP配列に関する図である。GAP12及びGAP21の配列アライメントを示す図である。2つのタンパク質のアミノ酸の位置は右及び左に示し、配列相同性は「*」、保存的置換は「:」、半保存的置換は「.」で示した。
【図16】例9において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図17】例10において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図18】例11において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図19】例12において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図20】例13において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図21】例14において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図22】例15において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図23】例16において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図24】例17において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図25】例18において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図26】例19において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図27】例20において詳細に説明するラマンスペクトルである。
【図28】例9により調製された試料のラマンスペクトルである。記載したように、これらの試料は沈殿後に室温で保存した。
【図29】例10により調製された試料のラマンスペクトルである。記載したように、これらの試料は沈殿後に室温で保存した。
【図30】例18により調製された試料のラマンスペクトルである。記載したように、これらの試料は沈殿後に室温で保存した。
【図31】例19により調製された試料のラマンスペクトルである。記載したように、これらの試料は沈殿後に室温で保存した。
【図32】例20により調製された試料のラマンスペクトルである。記載したように、これらの試料は沈殿後に室温で保存した。
【0015】
本発明の詳細な説明
これまでに、いくつかのリン酸化アミノ酸又はペプチドが、試験管内の炭酸カルシウムの沈殿に影響を及ぼし、炭酸カルシウムの非晶質形態の生成につながることが分かった。特に、前記ペプチドが、チェラックス・クワドリカリナタス(Cherax quadricarinatus)の未脱皮期後半の胃石に存在する数種のタンパク質を含む場合、この作用が観察された。約65kDa、22kDa、21kDa及び12kDaの見掛けの分子量を有するペプチドは、非晶質炭酸カルシウム物質のナノ粒子の沈殿を誘発する。これに比して、不活性なタンパク質はCaCOの結晶を与える。ナノ粒子は、非晶質CaCOに典型的なラマンシフトを示す。
【0016】
SDS−PAGEで推定された見掛け分子量により、それぞれGAP65、GAP22、GAP21、GAP12で表される上記のタンパク質は、ACCの沈殿及び安定化に関係している。前記の4つのタンパク質を含有する胃石抽出物は、炭酸カルシウムの結晶化を阻害し、炭酸カルシウム(ACC)の非晶質形態を安定化する。ACCは、CaCl、NaCO及び胃石抽出物を含有する溶液から調製したCaCOの沈殿物中で、ラマンスペクトル法により検出した(図11)。ACCの存在は、約1080cm−1における顕著なピークの存在によって確認される。GAP遺伝子の発現は、胃石板上皮及び表皮下組織(両方は、角質に関連する組織である)に特異的であることが分かった。RT−PCR法による、数種の標的組織のGAPペプチドの特異的発現もまた検討した。例えば、GAP65の発現はより多くの角質関連組織で見つかり、一方、GAP22の発現はこれとは異なり胃石板上皮で見つかった。
【0017】
対応する遺伝子のcDNA配列が得られ、これらの推定されるタンパク質が見つかった(図2、13〜15)。4つの全てのタンパク質は、N末端でシグナルペプチドを含有することが分かった(図13〜15の下線部、図2の太字のアミノ酸)。同様に、保存ドメインのデータベースの検索により、GAP65は、キチン結合ドメイン2、低密度リポタンパク質受容体ドメインクラスA及び多糖体脱アセチル化酵素ドメインの3つの保存ドメインを含有することが明らかになった。他方、GAP12、GAP21及びGAP22は、既知のいずれのドメインとも、顕著な類似性を示していない。GAP12及びGAP21のBlastアライメント(Blast alingment)により、これらのタンパク質の推定アミノ酸配列において、46.3%の同一性が明らかになった(図15)。推定タンパク質の物理化学的分析によって明らかになったことは、GAP12、21及び65の計算分子量は、予想より小さく、それぞれ9.9、19.5及び60.8kDaであり、一方、GAP22の分子量は28.6kDaと予想より大きかったことである(表1)。GAP12、GAP21及びGAP65は、酸性のpIを有し、したがって、胃石の生理的pH(pH8.5近辺)でマイナスに帯電している。GAP12及びGAP21は、非極性の脂肪族アミノ酸(グリシン、アラニン及びバリン)を高率で有し、極性であるが帯電していないアミノ酸のプロリン(表1に灰色で強調されている)を高率で有する。GAP65は、酸性アミノ酸の含有量が多い。GAP22は、塩基性のpIを有し、したがって、胃石の生理的pHでプラスに帯電している。この主な特徴は、極性であるが帯電していないアミノ酸のプロリン及びプラスに帯電しているアルギニンの高い割合にある。
【0018】
これらの新規タンパク質の特別な特徴により、本発明において、炭酸カルシウムの結晶化を阻害する方法もまた提供され、この方法は、GAP65もしくはこの機能性フラグメント、その誘導体又は変異体のある量を、結晶化又は沈殿析出混合物に混合することを備える。本発明の他の側面では、炭酸カルシウムの結晶化を阻害する方法が提供され、この方法は、水に可溶なカルシウム塩を、GAP65もしくは機能性フラグメント、その誘導体又は変異体と接触させることを含む。
【0019】
GAP65は、胃石の溶解性のタンパク質抽出物から、イオン交換クロマトグラフィーによって精製し、約12mol%のAsp+Gluを含有しマイナスに帯電している、配列番号1にもとづくグリコペプチドであることを確認した。MS−MSによるペプチドの配列決定により7つのオリゴペプチドのサブ配列(配列番号2〜8、図1B)が得られ、これらを、胃石上皮板のmRNAにもとづいてGAP65をコードする遺伝子の完全配列を取得するため、縮重プライマーの構築に使用した。合計推定アミノ酸配列は、548アミノ酸長のペプチドであることが分かった(配列番号1;図2A)。GAP65の配列の生物情報分析では、3つの既知ドメイン(図2B)、すなわち、29〜102位アミノ酸のキチン結合ドメイン2(ChtBD2)、122〜159位アミノ酸の低密度リポタンパク質受容体ドメインクラスA(LDLa)、及び195〜332位アミノ酸の多糖体脱アセチル化酵素ドメインの存在が示唆された。LDLaドメインは、予測されたカルシウム結合性を有する。GAP65の発現は、前期脱皮期間のザリガニの数種の標的組織でRT−PCR法により試験を行い、胃石板上皮及び表皮下組織で検出した(両組織は、角質関連組織である)(図3A)。in situハイブリダイゼーションにより、誘導した未脱皮期及び誘導しない脱皮間期のザリガニの、胃石板におけるGAP65発現の局在化を視覚化した(図5B)。GAP65dsRNAを用いたサイレンシング後の、胃石板上皮における相対GAP65転写量は、リアルタイムRT−PCRを用いて測定した(図4)。胃石生成におけるGAP65の役割を、脱皮間期のザリガニに対するGAP65dsRNAの生体内注入を使用したRNAi法により試験した(図5)。胃石生成の開始は、エクジソンの注入により達成させた。胃石の形態学的変形は、GAP65dsRNA及びエクジソンの両方を注入したザリガニで観察することができた(図5Aは切断した胃石、図5B及び5CはX線画像)。
【0020】
GAP65は、本質的に、ザリガニの胃石の微細構造に影響を及ぼすことが分かった。GAP65のdsRNAをエクジソンと共に注入するか、又はエクジソンのみを注入したザリガニから切断した胃石の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から、GAP65の不在で引き起こされた極度な構造異常が明らかになった(図6)。小球内でのACCのまとまり及び小球サイズは、胃石の高密度の凝縮のために重要であり、GAP65の不在は、正常な胃石と比較すると、小球が大きく、凝縮の少ない構造につながってしまう。
【0021】
バイオミネラリゼーション過程におけるGAP65の役割を解明するために、試験管内で炭酸カルシウムを沈殿させ、ACCの安定性を試験した。沈殿物の電子顕微鏡写真は、GAP65が豊富な画分の存在/非存在下の沈殿物では、炭酸カルシウムの様々な多形の組成物を際立って示した(図7)。GAPの不在、すなわち不活性タンパク質の存在下における炭酸カルシウムの沈殿物は、急激な結晶化をもたらし、10μm程の大きさのカルサイト及び/又はバテライトの結晶が生じた。他方、GAP65の存在下の炭酸カルシウムの沈殿物からは、40〜60nmの小球からなる薄層として観察された、非晶質CaCOが得られた。前記小球中の炭酸カルシウムの非晶質性は、ラマンスペクトルによって確認され、1070cm−1において、顕著なACCピークを示し、さらに粉末X線回折(XRD)を用いると、結晶性物質由来の回折ピークがないことが示された。試験管内の沈殿により生成したACCの小球中のGAP65の存在は、小球からタンパク質を精製し、SDS−PAGEによる同定で確認した。
【0022】
GAP65の存在下の沈殿で得られたCaCOの沈積物は、始めに偏光顕微鏡によって特徴付けし、カルサイト、バテライト及びACCを同定した。観察結果は、ラマンスペクトル法及び粉末XRDによって確認した。ACCは、全CaCOの少なくとも約50%を構成していた。ACCは、室内条件で、少なくとも1カ月は安定性を維持した。
【0023】
すなわち、本発明は、炭酸カルシウムの結晶状態に影響を及ぼす、ザリガニにおけるカルシウム代謝に関連する新規のタンパク質を提供する。提供されるのは炭酸カルシウム結晶化の阻害方法であるところ、この方法は、GAPタンパク質、又はその機能的に同等なフラグメント、誘導体もしくは変異体のある量を、結晶化又は沈殿析出混合物に混合することを含む。本発明は、前記の新規タンパク質を沈殿析出混合物に混合して、すなわちCaCOの沈殿が起こる混合物、および前記タンパク質がないと結晶物質の沈殿が起こる混合物に混合して、ACCを調製する方法に関する。このような混合物の限定されない例としては、炭酸ナトリウム溶液を加えた、GAP65を含む塩化カルシウム水溶液が挙げられる。もちろん、イオン源の種類だけでなく、これらの成分の混合順序も変えることができる。混合物中のGAP65濃度は、例えば、CaCOの重量を基準として約0.05〜5wt%とすることができる。沈殿混合物中のGAP65濃度は、例えば、約1〜100μg/mlとすることができる。
【0024】
本発明では、ACC及びリン酸化アミノ酸又はペプチド、例えばGAPタンパク質、を含む組成物が提供される。本発明の重要な側面では、カルシウム代謝又はカルシウムシグナリングに関連する疾患の治療のために、ACC及びリン酸化アミノ酸又はペプチド(例えば、GAPタンパク質又はその誘導体)の安定化量を含む製剤が提供される。製剤は、好ましくは、経口投与で使用される。本発明の製剤は、治療手段として、治療補助として又は栄養補助食品として使用される。
【0025】
本発明の好ましい態様では、本発明により調製されるACCは、カルシウム代謝又はカルシウムシグナリングに関連する状態を治療するための製剤中に含まれる。前記状態は、疼痛、増殖性疾患、神経障害、免疫疾患、循環器疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害及び歯科疾患からなる群から選択することができる。前記治療に、疾患症状を緩和することを含めてもよい。前記増殖性疾患は、肉腫、癌腫、リンパ腫及び黒色腫から選択できる。前記癌腫は、例えば、乳癌又は気管支癌である。前記治療は、腫瘍の縮小、腫瘍成長の阻止、又は腫瘍における細胞増殖の低下もしくは阻害につながりうる。前記疼痛は、術後痛、傷害後疼痛、癌に付随する疼痛及び神経因性疼痛から選択することができる。前記神経障害は、脱髄疾患、痴呆及び運動障害から選択することができる。すなわち、前記障害は、例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病又は他の変性疾患である。治療される前記状態には、骨折又は骨粗鬆症などの骨又は骨髄障害を含めることができる。好ましい態様では、本発明の組成物は、神経変性疾患の治療に使用される。
【0026】
本発明は、ACC、及びリン酸化アミノ酸(PAA)又はリン酸化ペプチド(PP)の安定化させる量を含む組成物に関し、例えば、これらは、1つ又は複数のPAAを含む組成物、あるいはGAPペプチド又はその機能性フラグメント、誘導体もしくは変異体などの1つ又は複数のPPを含む組成物である。本発明は、また、医薬品としてもしくは医薬品の製造に又は食品添加物として使用するための、PAA又はGAPなどのPPで安定化されるACCにも関する。
【0027】
ACCの調製方法には、
i)カルシウムイオン(CaCl溶液を用いて)で水性溶液を生成するステップと、
ii)溶解性又は不溶性の「添加剤」(ホスホアミノ酸、キトサン、キチン、合成ペプチド、リン酸化ペプチド/タンパク質又はそのフラグメントなど)を加えるステップと、
iii)炭酸イオン(NaCO溶液、又は、例えば、COもしくは(NHCOの様な別の炭酸源を用いて)を加えるステップと、
iv)振盪するステップと、
v)CaCOスラリーを沈殿させる(遠心分離、濾過などによる)ステップと、
vi)スラリーを脱水する(凍結乾燥器、空気流、噴霧乾燥などによる)ステップと
を含めることができる。
生成物の分析には、非晶質性を検証するために、様々な方法(XRD、電子線回折、SEMのような)により得られたCaCOを試験することを含めてもよい。ラマン分光法(RS)は、ACCの特性を示す最も効率的で信頼できる方法であることが分かった。本明細書で報告した無機物のラマンシフト特性では、炭酸塩のピークが1080cm−1にあり、この幅広の形状はACCを示しこの含有量に比例している。リン酸塩のピークは、950cm−1にあり、試料中のリン酸塩の含有量と比例している。しかし、1080〜950cm−1の間の割合は比例するが、CO2−/PO3−比を直接示すものではない。
【0028】
炭酸カルシウムが沈殿する溶液中のカルシウム及び炭酸イオンは、通常、約10mM〜約500mMの範囲にあった。リン酸化アミノ酸(PAA)のカルシウムに対するモル比は、通常、0.01〜0.5の範囲にあった。より高濃度なPAAは、自発的な沈殿を阻害した。キトサンを存在させる場合、その範囲は、0.03〜0.3wt%とした。
【0029】
種々のタンパク質分解酵素(トリプシン、パパイン及び放線菌(Streptomyces)プロテアーゼ)によって、脱塩したチェラックス(Cherax)の胃石から抽出したペプチドは、ACCの生成を誘発した。ホスホアミノ酸及びホスホペプチドは、ACCの生成を誘発でき、これを安定化できることを示唆している。インタクトなタンパク質は、別の機能を有する可能性がある。ラマンスペクトル及びEDS分析は、不溶性のマトリックス(ISM)全体によって誘発されたACCに類似するリン酸カルシウムが、かなりの量あることを示しており、ISM中のリン酸塩がタンパク質に結合していることを示唆している。
【0030】
沈殿した炭酸カルシウムは、非晶質/結晶状態を長期間にわたり調べた。本発明の方法で得られたACCの試料は、室温で7カ月以上にわたり安定であり、非晶質状態を維持することが分かった。
【0031】

(例1)
チェラックス・クワドリカリナタスの胃石は、[WO2005/115414]に記載されているように調製した。未脱皮期後半の胃石由来の可溶性タンパク質をSDS−PAGEで分離すると、少なくとも顕著な6つの異なるタンパク質の存在が明らかになり(図1A、左)、最も豊富な存在は約65kDaの大きさであった(胃石タンパク質65、GAP65)。胃石の可溶性タンパク質の全含有量からGAP65の更なる精製を、DEAEのクロマトグラフィー(HPLC)を用いて、NaCl濃度を1Mまで勾配をかけて行った。GAP65の溶出は、NaClが300mMの時に始まったが、主に600mMにおいて継続した(画分17)。GAP65を豊富に含む画分17は、SDS−PAGEで分析し、図1Aの右に示すように、クーマシー(非特異的なタンパク質染色)、「ステインオール」(マイナスに帯電しているタンパク質の染色)及び「pas」(糖タンパク質の染色)で染色した。これらの染色から、GAP65について、この豊富な画分中の主要なタンパク質であり、マイナスに帯電している糖タンパク質であることが示唆される。GAP65のトリプシン消化後にナノスプレー法でQtof2を用いて分離し、MS−MSを用いてペプチドの配列決定を行い、7つの予測ペプチド配列を作り(図1B)、これらを、胃石板上皮のmRNAにもとづいてGAP65をコードする遺伝子の完全配列を取得するため、縮重プライマーの構築に使用した。図2Aは、タンパク質のN末端の予測シグナル配列(太字)を示す、GAP65のオープンリーディングフレームの推定アミノ酸配列を説明している。GAP65の全アミノ酸の約4.6%を可能性のあるリン酸化部位(灰色の囲み)として予測したが、他方、わずか3つの予測N−糖鎖付加部位(3つの文字を含む薄い囲み)及びわずか2つの予測O−糖鎖付加部位(アミノ酸番号72及び173における濃い囲み)だけが見つかった。負電荷は、タンパク質の約12mol%を構成する酸性残基のアスパラギン酸及びグルタミン酸から一部生じる。GAP65配列の生物情報分析により、29〜102位アミノ酸のキチン結合ドメイン2(ChtBD2)、122〜159位アミノ酸の低密度リポタンパク質受容体クラスAドメイン(LDLa)、195〜332位アミノ酸の多糖体の脱アセチル化酵素ドメインの3つの既知ドメイン(図2B)の存在が示唆された。図2Cは、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質由来の補体様反復配列CR3のNMR構造に対する相同性にもとづいた、LDLaドメインの予測3D構造を明らかにしている。このLDLaドメインは、予測カルシウム結合性を有するGAP65中唯一の既知のドメインである。
【0032】
(例2)
GAP65の特異発現は、未脱皮期のザリガニの数種のターゲット組織において、RT−PCRにより試験した(図3A)。GAP65の発現は、胃石板上皮及び表皮下組織(両方とも、角質の関連組織である)において検出された。GAP65の発現は、肝膵臓、胃壁及び精管では、検出されなかった。誘発した未脱皮期及び誘発しない脱皮間期のザリガニの胃石板におけるGAP65発現の、in situハイブリダイゼーションによる位置特定は、図3Bに提示してある。左画面は、胃石板のヘマトキシリン−エオシン染色を示し、中画面は、発現が検出されない対照のセンスプローブである。2つの右画面は、特定の領域をできるだけ拡大したアンチセンスプローブを示す。アンチセンスプローブにより、GAP65の発現は、誘発したザリガニ胃石板の円柱上皮細胞においてのみ検出できることが明らかであるが、誘発しない脱皮間期のザリガニでは、この発現は検出されなかった。
【0033】
(例3)
GAP65dsRNAを用いたサイレンシング後の胃石板上皮における相対GAP65転写量は、リアルタイムRT−PCRを用いて測定し、図4に示した。GAP65濃度は、エクジソン及びGAP65のdsRNA、エクジソン及びdsRNAキャリア、エクジソン及びC.クワドリカリナタスのビテロゲニン(CqVg)のdsRNAを注入したザリガニ、並びに両キャリアを注入した対照において評価した。配列特異的サイレンシングの対照として働く肝膵臓特異的な遺伝子であるCqVgは、主として妊娠した雌で見つかる。エクジソン及びGAP65のdsRNAを注入したザリガニの転写量は、エクジソン及びdsRNAキャリアを注入したザリガニで見出された量に比べ、かなり低かった。エクジソン及びCqVgのdsRNAを注入したザリガニにおいて、GAP65の転写量は、エクジソン及びdsRNAキャリアの注入群で検出された量とほぼ同じであった。対照であるキャリアを注入したザリガニでは、GAP65の転写量は、エクジソン及びGAP65のdsRNAを注入したザリガニで見られた量よりも高かったが、エクジソン及びdsRNA並びにエクジソン及びCqVgのdsRNAを注入した両ザリガニで検出した量より低かった。しかし、キャリアの対照群は、他の3つの群と統計学的に有意な差はなかった。
【0034】
(例4)
胃石生成におけるGAP65の役割を試験するために、脱皮間期のザリガニに対するGAP65のdsRNAの生体内注入を用いたRNAi技術を適用した。胃石生成の開始は、エクジソンの注入により達成した。図5では、エクジソン+GAP65のdsRNAの両方、エクジソン+dsRNAキャリアの両方、又はエクジソン及びdsRNAの両キャリアを注入した、ザリガニの胃石を見ることができる。図5Aは、各処置群から切断した代表的な胃石の側面写真である。この写真からは、GAP65のdsRNA及びエクジソンの両方を注入したザリガニにおける、胃石の形態学的変形が観察できるが、エクジソン及びdsRNAキャリアだけを注入したザリガニでは、胃石は、変形がなく正常に見えた。キャリアを注入した対照では、胃石は、未発達又は成長初期段階に見えた。図5Bは、ザリガニ及び切断前の胃石の背面のX線画像を示し、他方、図5Cは、パネルBの画像のコントラストのより強い画像を提示している。GAP65のdsRNA及びエクジソンの両方を注入したザリガニでは、無機質がより低密度な検出領域がいくつか記録されたが、他方、胃石板形状の構造は、保持されていた。エクジソン+dsRNAキャリアを注入したザリガニでは、胃石は、無機質の密度に影響がみられず正常に見えた。キャリアの対照の胃石は、小さすぎてX線画像化による検出はできなかった。
【0035】
(例5)
GAP65のdsRNA及びエクジソンを注入したザリガニ、並びにエクジソン及びdsRNAキャリアだけを注入したザリガニから切断した胃石の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を、図6に提示する。図6A、Bは、胃石の中心部を通る断面の画像を示している。GAP65のdsRNA及びエクジソンを注入したザリガニの胃石では、エクジソン及びdsRNAキャリアのみを注入したザリガニの胃石に比べて、重度の構造的異常が観察できる。エクジソン及びキャリアを注入した胃石で観察された、高密度の無機質の層状構造は、エクジソン及びGAP65のdsRNAを注入したザリガニの胃石においては、中空のストローに似ているゆるくまとまった無機質の柱状構造に置き換わっている。小球におけるACCのまとまり及び小球サイズは、胃石の高密度の凝縮にとって重要である。2つの処置間の小球サイズを比較した15000倍の拡大画像を、図6Cに提示する。エクジソン及びGAP65のdsRNAを注入したザリガニの低密度配列の胃石では、小球サイズは、約100〜300nmの範囲にあり、一方、エクジソン及びdsRNAキャリアを注入したザリガニの胃石に沈積した正常なACCでは、小球は、よりせまいサイズ分布にあり、40〜60nmの範囲にあった。
【0036】
(例6)
バイオミネラリゼーションの過程におけるGAP65の役割を解明するために、ACCの安定性を試験する、試験管内の炭酸カルシウム沈殿分析を設定した。図7では、GAP65の存在下及び他のタンパク質(トリプシン)の存在下での、炭酸カルシウムの沈殿結果が提示される。図7AのSEM画像は、各処置における、炭酸カルシウムの際立った多形を示している。GAP65の存在下での炭酸カルシウムの沈殿は非晶質形状の沈積をもたらし、これは100〜500nmの小球からなる薄層として観察された。同様な条件の下であるが、トリプシン存在下で行った沈殿実験では、急速な結晶化が付随する結果となり、カルサイト及びバテライト球晶の大きな10μmの単結晶として観察された。図7Bは、GAP65の存在下で沈殿した炭酸カルシウム中のACCの特質を裏付けている。ラマン分析は、1070cm−1において明瞭な幅広のピークを有する、ACCの際立ったスペクトルを示している。試験管内の沈殿によって生成したACCの小球中のGAP65の存在は、沈殿物の無機質画分由来のタンパク質を精製し、これを、元のGAP65が豊富な画分と比較したSDS−PAGEで評価することにより確認した。
【0037】
(例7)
GAP65と共に沈殿したACCの安定性を、室温で保持した試料におけるラマンスペクトル分析により試験した。100μlの1MのCaC1を10mlの再蒸留水に加えた(最終濃度:10mM)。タンパク質抽出溶液(1.2μg/μl)から80μlを分取し加えた(最終濃度、約10μg/ml)。100μlの1MのNaCO(最終濃度:10mM)を加え、激しく振盪した。バイアルを、4000rpmで5分間遠心分離し、沈殿物をスライドガラス上に塗りつけて、すぐに空気流で乾燥した。CaCOの沈積物は、初めに偏光顕微鏡によってカルサイト、バテライト及びACCの混合物として特徴付けた。観察結果は、ラマンスペクトル分析によって確認した。ACCは、薄い「殻」の形状であり、全CaCOの少なくとも約50%を含んでいると推定された。ACCは、沈殿後1日、27日、6.5カ月目のACCのラマンスペクトル(図8A、8B、8C)が示すように、室内条件で、少なくとも1カ月は安定性を維持した。6.5カ月経過後のACCのラマンスペクトル(1085ピーク近辺)とカルサイトを比較すると(図9)、外見的には、混合物はACC及びバテライトを含むことを示していた(1085のピークにある肩を、おそらくバテライトを特徴付けるピーク分離の始まりであると考えた場合)。
【0038】
(例8)
胃石抽出物は、炭酸カルシウムの結晶化を阻害し、炭酸カルシウムの非晶質形状(ACC)を安定させる。ACCは、CaCl、NaCO及び胃石抽出物を含有する溶液から調製したCaCO沈殿物のラマンスペクトル分析によって検出した(図11)。ACCの存在は、約1080cm−1における際立つ幅広のピークの出現によって確認される。560におけるピークは、ガラス基質によって生じる。GAP遺伝子の発現は、胃石板上皮及び表皮下組織(両方とも角質関連組織である)に特異的であることが分かった。数種のターゲット組織におけるGAP21、GAP22及びGAP65の特異的発現は、例2の記述と同様に、RT−PCR法によって調べた。GAP21及びGAP65の発現は、両角質関連組織において見つかった。GAP22の発現は、胃石板上皮でのみ見つかった。対応する遺伝子のcDNA配列を取得し、これらの推定タンパク質が見つかった(図13〜15)。4つの全てのタンパク質は、そのN末端にシグナルペプチドを含有することが分かった(図13〜15における下線部及び図2の太字のアミノ酸)。保存ドメインのデータベースに対する類似性検索によって、GAP65は、キチン結合ドメイン2、低密度リポタンパク質受容体クラスAドメイン及び多糖体の脱アセチル化酵素のドメインの3つの保存ドメインを含有することが明らかになった。一方、GAP12、GAP21及びGAP22は、既知のいずれのドメインとも、顕著な類似性を示さない。
【0039】
GAP12及びGAP21のBlastアライメントにより、これらのタンパク質の推定アミノ酸配列における46.3%の同一性が明らかになった(図15B)。推定タンパク質の物理化学的分析によって明らかになったことは、GAP12、21及び65の計算分子量は予想より小さく、それぞれ9.9、19.5及び60.8kDaであり、一方、GAP22の分子量は予想より大きく、28.6kDaであったことである(表1、図12)。GAP12、GAP21及びGAP65は、酸性のpIを有し、したがって、胃石の生理的pH(pH8.5近辺)でマイナスに帯電している。GAP12及びGAP21は、非極性の脂肪族アミノ酸(グリシン、アラニン及びバリン)を高率で有し、極性であるが帯電していないアミノ酸のプロリン(表1に灰色で強調されている)を高率で有する。及びプラスに帯電しているアルギニンを高率で有している。GAP65は、酸性アミノ酸の含有量が多いが、他の識別できる特徴はない。GAP22は、塩基性のpIを有し、したがって、胃石の生理的pHでプラスに帯電している。この主な特徴は、極性であるが帯電していないアミノ酸のプロリン及びプラスに帯電しているアルギニンの高い割合である。生物情報分析によると、GAP12及びGAP21は、甲殻類におけるカルシウム沈殿に関係することが知られている他のタンパク質と、アミノ酸組成にいくつかの類似点があることを示す。
【0040】
(例9)
100μlの1MのCaC1を10mlの再蒸留水(DDW)に加え、10mMの最終濃度を得た。200μlのP−セリン(P−ser)溶液(100mM)を、この溶液に加え、2mMのP−serを得た。100μlの1MのNaCOを加え(最終濃度:10mM)、続いて激しく振盪した。バイアルを、室温で4000rpmにおいて5分間遠心分離した。溶液の上部を除去し、沈殿物をスライドガラス上に塗りつけて、すぐに空気流で乾燥した。RSは、ACCを示した(図16)。試料を室温で保存し、沈殿の5カ月後にACCの安定性を試験した(図28)。
【0041】
(例10)
100μlの1MのCaClを10mlのDDWに加えた(最終濃度:10mM)。100μlのP−スレオニン(P−Thr)溶液(100mM)を、この溶液に加え、1mMのP−Thrを得た。100μlの1MのNaCOを加え(最終濃度:10mM)、続いて激しく振盪した。バイアルを、室温で4000rpmにおいて5分間遠心分離した。溶液の上部を除去し、沈殿物をスライドガラス上に塗りつけて、すぐに空気流で乾燥した。RSは、ACCを示した(図17)。試料を室温で保存し、沈殿の4.5カ月後にACCの安定性を試験した(図29)。
【0042】
(例11)
100μlの1MのCaClを10mlのDDWに加えた(最終濃度:10mM)。200μlのP−セリン溶液(100mM)を、この溶液に加えた。100μlの1MのNaCOを加え(最終濃度:10mM)、続いて激しく振盪した。バイアルを、室温で4000rpmにおいて5分間遠心分離した。溶液の上部を除去し、沈殿物を液体窒素中で凍結し、凍結乾燥器で凍結乾燥した。RSは、ACCを示した(図18)。
【0043】
(例12)
例11に記載した条件は、CaCl及びNaCOの最終濃度を、10mMから100mMに変えることにより変更した。RSは、ACCを示した(図19)。
【0044】
(例13)
例10に記載した条件は、脱水方法を、流動空気から凍結乾燥に変えることにより変更した。RSは、ACCを示した(図20)。
【0045】
(例14)
20mMのCaCl、20mMのNaCO、2mMのP−Serを含み、キトサン(3wt%、0.2Mの酢酸に溶解)を、カルシウム添加後の最終濃度0.3wt%に、沈殿析出用溶液に加えた系である。RSは、ACCを示した(図21)。
【0046】
(例15)
例14に記載した条件は、最終濃度が0.5MのCaCl、0.5MのNaCO及び3mMのP−serを使用することにより変更した。この組成物は、濃度の上限を表す。RSは、ACCを示した(図22)。
【0047】
(例16)
胃石を、内分泌学的に誘発した未脱皮期にあるザリガニから切断し、重量を量り、蒸留水で洗い、−20℃で保持した。外側のあらゆる残留物質を除去するために、胃石の外層を掻取った後に、胃石を液体窒素を用いて凍結し、乳鉢と乳棒を用いてすりつぶし粉末にした。脱ミネラル化を、20mlの0.02M酢酸アンモニウム、0.5MのEGTA中で、氷上でpH7.0にして、胃石粉末の各グラムをかき混ぜることにより行った。CaCOの溶解が完了してから、懸濁液を遠心分離し(2000rpm、15〜20分間、4℃)、上清を採取した。残りの不溶性マトリックス(ISM)は、石灰化溶液への添加剤として使用した(ステップii)。200μlのISM(推定:約30μgタンパク質)を、10mMのCaCl及び10mMのNaCOを含む10mlの結晶化用混合物に加え、続いて、空気流で脱水した。RSは、ACCを示した(図23)。
【0048】
(例17)
例16に記載した条件の変更を、CaCl及びNaCOの最終濃度を10mMから20mMに変え、ISMの量を100μl(約15μgタンパク質)に変え、さらに、凍結乾燥して脱水することにより行った。RSは、ACCを示した(図24)。
【0049】
(例18)
キチン質不溶相からキチンに結合しているタンパク質(水素結合により結合しているものまたは共有結合により結合しているもののいずれも)を遊離させ、得られたペプチドのACCの誘発及び安定化における活性を示すために、ISMを数種のタンパク質分解酵素で処理した(図25)。
【0050】
28mlの酢酸アンモニウム(2mM)を7mlのISMに加えた。この溶液の10mlを、酢酸アンモニウム(2mM)中で10mlのトリプシンと混合した(3.8mg/m1)。ISMの懸濁液をタンパク質分解酵素と共に、渦流条件下4℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、バイアルを4000rpmで5分間遠心分離した。ISMの消化されたタンパク質を含有する上清を除去し、上清lml(100μlの不溶性マトリックス及び約150μgのタンパク質と等価)を10m1のCaCl(10mM)に加えた。100μlの1MのNaCO(最終濃度:10mM)を加え、続いて激しく振盪した。バイアルを4000RPMで5分間遠心分離し、沈殿物をスライドガラス上に塗りつけて、すぐに空気流で乾燥した。RSは、ACCを示した(図25)。試料を室温で保存し、沈殿の7カ月後にACCの安定性を試験した(図30)。
【0051】
(例19)
28mlの酢酸アンモニウム(2mM)を7mlのISMに加えた。この溶液の10mlを、10mlのストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)(Sigma、P6911、0.6mg/ml)由来のプロテアーゼと、酢酸アンモニウム(2mM)中で混合した。ISMの懸濁液をタンパク質分解酵素と共に、渦流条件下で4℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、バイアルを4000rpmで5分間遠心分離した。ISMの消化されたタンパク質を含有する上清を除去し、上清lmlを10m1のCaCl(10mM)に加えた。100μlの1MのNaCO(最終濃度:10mM)を加え、続いて激しく振盪した。バイアルを4000rpmで5分間遠心分離し、沈殿物をスライドガラス上に塗りつけて、すぐに空気流で乾燥した。RSは、ACCのピーク(1080における)と、おそらくリン酸カルシウムである別の第2のピーク(950におけるピーク)を示した(図26)。試料を室温で保存し、沈殿の7カ月後にACCの安定性を試験した(図31)。
【0052】
(例20)
28mlの酢酸アンモニウム(2mM)を7mlのISMに加えた。この溶液の10mlを、10mlのパパイン(0.26mg/ml)と、酢酸アンモニウム(2mM)中で混合した。ISMの懸濁液をタンパク質分解酵素と共に、渦流条件下で、4℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、バイアルを4000rpmで5分間遠心分離した。ISMの消化されたタンパク質をこの時点で含有する上清を除去し、上清lmlを10mlのCaCl(10mM)に加えた。100μlの1MのNaCO(最終濃度:10mM)を加え、続いて激しく振盪した。バイアルを4000RPMで5分間遠心分離し、沈殿物をスライドガラス上に塗りつけて、すぐに空気流で乾燥した。RSは、ACCと、おそらくリン酸カルシウムを示した(図27)。試料を室温で保存し、沈殿の7カ月後にACCの安定性を試験した(図32)。
【0053】
本発明は、いくつかの具体的な例に関して記載してきたが、多くの改変及び変形が可能である。したがって、本発明は、添付のクレームの範囲において、具体的に記載されたもの以外の方法で実現してよいことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質炭酸カルシウム(ACC)と、リン酸化アミノ酸及びリン酸化ペプチドから選択される少なくとも1つの成分とを含む組成物。
【請求項2】
リン酸化アミノ酸及びリン酸化ペプチドが、ホスホ−セリンもしくはホスホ−スレオニン、又は両方を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
リン酸化アミノ酸及びリン酸化ペプチドが、炭酸カルシウムの非晶質形態を安定化する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
リン酸化ペプチドが、甲殻類の胃石に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
リン酸化ペプチドが、配列番号1、配列番号9、配列番号17、配列番号24、及びその相同体からなる群から選択される配列を有する甲殻類ペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
配列番号1、配列番号9、配列番号17、配列番号24、及びその相同体からなる群から選択される配列を有する、単離され精製された甲殻類ペプチド。
【請求項7】
少なくとも10個のアミノ酸からなる、請求項6に記載の甲殻類ペプチドのフラグメントをその配列に含む、単離され精製されたペプチド。
【請求項8】
配列番号1、又はこの配列に少なくとも90%相同なアミノ酸配列を有する、ペプチド。
【請求項9】
配列番号9、又はこの配列に少なくとも90%相同なアミノ酸配列を有する、ペプチド。
【請求項10】
配列番号17、又はこの配列に少なくとも90%相同なアミノ酸配列を有する、ペプチド。
【請求項11】
配列番号24、又はこの配列に少なくとも90%相同なアミノ酸配列を有する、ペプチド。
【請求項12】
請求項7に記載のペプチドをコードするDNA配列。
【請求項13】
請求項7に記載のペプチド、又はその機能性フラグメント、誘導体もしくは変異体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
キチン又はキトサンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
リン酸化アミノ酸又はリン酸化ペプチドを含有する炭酸カルシウム調製物。
【請求項16】
ACCを含む、請求項15に記載の炭酸カルシウム調製物。
【請求項17】
少なくとも1カ月は安定である、請求項16に記載の炭酸カルシウム調製物。
【請求項18】
カルシウムを含む可溶性の塩と、炭酸源と、リン酸化アミノ酸又はリン酸化ペプチドとを水相において任意の順序で混合することを含む、安定な非晶質炭酸カルシウムの調製方法。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物を含む医薬製剤。
【請求項20】
任意選択で充填剤を含む、経口投与のための、請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物を含む栄養補助製剤。
【請求項22】
疼痛、増殖性疾患、神経障害、免疫疾患、循環器疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害及び歯科疾患からなる群から選択される状態を治療するための、請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項23】
治療が、症状を緩和することを含む、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項24】
増殖性疾患が、乳癌又は気管支癌である、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項25】
治療が、腫瘍における細胞増殖の低下又は阻害を含む、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項26】
疼痛が、術後痛、傷害後疼痛、癌に付随する疼痛及び神経因性疼痛から選択される、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項27】
神経障害が、脱髄疾患、痴呆及び運動障害から選択される、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項28】
状態が、多発性硬化症、アルツハイマー病及びパーキンソン病から選択される変性疾患である、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項29】
状態が、骨障害又は骨髄障害を含む、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項30】
障害が、骨折又は骨粗鬆症を含む、請求項29に記載の医薬製剤。
【請求項31】
状態が、神経変性疾患である、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項32】
医薬品の製造における、請求項6又は7に記載のペプチドの使用。
【請求項33】
炭酸カルシウム及び請求項7に記載のペプチドを含む製剤を経口投与することを含む、疼痛管理方法。
【請求項34】
炭酸カルシウム及び請求項7に記載のペプチドを含む製剤を経口投与することを含む、骨疾患又は骨損傷の治療方法。
【請求項35】
リン酸化アミノ酸又はリン酸化ペプチドのある量を混合して混合物にすることを含む、炭酸塩及びカルシウム塩を含む前記混合物中の炭酸カルシウムの結晶化を阻害する方法。
【請求項36】
リン酸化アミノ酸又はリン酸化ペプチドが、ホスホ−セリン又はホスホ−スレオニンを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
水に可溶なカルシウム塩を提供すること、並びに前記塩を、GAP65、GAP22、GAP21及びGAP12、又はその機能的に同等なフラグメント、誘導体もしくは変異体、あるいはその混合物から選択されるペプチドと接触させることを含む、炭酸カルシウムの結晶化を阻害する方法。
【請求項38】
炭酸カルシウムと、配列番号1、配列番号9、配列番号17、配列番号24、及びその相同体又はフラグメントからなる群から選択される配列を有するペプチドとの混合物を含む、食品添加剤又は機能性食品。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2011−501676(P2011−501676A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530627(P2010−530627)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001362
【国際公開番号】WO2009/053967
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510112143)アモルフィカル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】