説明

リン難燃剤およびその用途

本発明は、a)P−アルキルホスホン酸の(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルエステル、およびP−アルキルホスホン酸のビス[(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチル]エステルを含む、環状ホスホン酸難燃剤、ならびにb)アルキル化リン酸トリアリールエステルの全重量に基づき、約1重量%未満のリン酸トリフェニル(TTP)含有量を有する、アルキル化リン酸トリアリールエステル難燃剤を含む、構成成分を組み合わせることから形成される、リン難燃剤組成物に関する。本発明はさらに、特に、ポリウレタンフォームおよび織物の用途における、本リン難燃剤組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有難燃剤、ならびに軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、および織物等の用途におけるこれらのリン含有難燃剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキル化リン酸アリールは、難燃剤として有用であることが当該技術分野において既知である。これらの化合物は、当該技術分野において一般的に使用される多くの方法により形成され得る。例えば、フェノールと置換フェノールとの混合物を得るために、プロピレンまたはイソブチレン等のアルケンでフェノールをアルキル化することにより、混合合成リン酸トリアリールを調製することが知られている。米国特許第4,093,680号によると、次いで、このアルキレート混合物は、混合リン酸トリアリールエステルを形成するために、オキシ塩化リン(POCl)と反応させられる。生成混合物は、出発アルキレートの組成物に基づく統計的混合状態にであり、常にリン酸トリフェニル(「TPP」)をある割合、通常は5〜50%含む。
【0003】
リン酸トリフェニル(TPP)は、優れた難燃性構成成分であり、低TPP含有量を有するアルキル化リン酸アリール難燃剤は、概して効果的ではない。しかしながら、TPPは、いくつかの管轄において海洋汚染物として分類されており、それ故に、当該技術分野において、アルキル化リン酸アリールからのTPPの除去に大きな関心が寄せられてきた。例えば、米国特許第5,206,404号およびPCT国際公開第WO2007/127691号は、低TPP濃度を有する混合アルキル化リン酸トリフェニルを生成するのに使用することができる方法を開示する。
【0004】
効果的な環状ホスホン酸難燃剤もまた、当該産業において既知である。一実施例は、Amguard(登録商標)CUであり、これは、P−メチルホスホン酸の(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルエステル(約3.5部)およびP−メチルホスホン酸のビス[(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチル]エステル(約1部)の混合物である。Amguard Cuにおける構成成分の代替命名は、ホスホン酸、メチル−、(5−エチル−2−メチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルエステル、P−オキシド(Cas#41203−81−0)およびホスホン酸、メチル−、ビス[(5−エチル−2−メチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルエステル、P,P’−ジオキシド(Cas#42595−45−9)である。
【0005】
難燃剤は、多くの場合、ポリウレタンフォーム中に含まれる。より具体的には、軟質ポリウレタンフォームおよび硬質ポリウレタンフォームは広く使用されているため、これらのフォームに難燃性を提供することに関して、多くの研究が行われてきた。しかしながら、当該技術分野は常に、軟質ポリウレタンフォームおよび硬質ポリウレタンフォームの両方に現在利用可能である難燃剤よりも優れているか、またはより好ましい特徴を有する、好適な難燃剤を求めている。
【0006】
難燃剤が使用される別の領域は、織物である。市販の織物製品は、多くの場合、難燃性基準を満たすか、またはある特定の難燃性試験に合格する必要がある。織物に難燃特性を与えるために、種々の材料が使用されてきた。例えば、米国特許第7,011,724号は、カーペットに難燃特性を与えるための、カーペットのバックコーティングにおける膨張粒子の使用を記載する。場合によっては、特定の臭素化またはリンベース難燃剤は、綿
およびポリエステル繊維のブレンドでの使用に関して言及される(米国特許第3,997,699号および第4,167,603号を参照のこと)。他の場合では、織物自体は、難燃および防煙特性を有する繊維から成る。例えば、米国特許第4,012,546号を参照のこと。ポリウレタンフォームに関連して上記に言及されるように、当該技術分野は常に、織物での使用に現在利用可能であるものよりも優れているか、またはより好ましい特徴を有する、好適な難燃剤を求めている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、a)P−アルキルホスホン酸の(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルエステル(Cas#41203−81−0)およびP−アルキルホスホン酸のビス[(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチル]エステル(Cas#42595−45−9)を含む、環状ホスホン酸難燃剤、ならびにb)アルキル化リン酸トリアリールエステルの全重量に基づき、約1重量%未満のリン酸トリフェニル(TTP)含有量を有する、アルキル化リン酸トリアリールエステル難燃剤を含む、構成成分を組みあわせることから形成される、リン難燃剤組成物に関する。
【0008】
本発明はさらに、特に、ポリウレタンフォームおよび織物の用途における、本リン難燃剤組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態は、リン難燃剤組成物である。リン難燃剤組成物は、a)P−アルキルホスホン酸の(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルエステルおよびP−アルキルホスホン酸のビス[(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチル]エステルを含む環状ホスホン酸難燃剤、ならびにb)アルキル化リン酸トリアリールエステルの全重量に基づき、約1重量%未満のリン酸トリフェニル(TTP)含有量を有する、アルキル化リン酸トリアリールエステル難燃剤を含む、構成成分を組み合わせることから形成される。
【0010】
本発明の他の実施形態は、環状ホスホン酸難燃剤の量が、環状ホスホン酸難燃剤およびアルキル化リン酸トリアリールエステル難燃剤の全重量に基づき、約8重量%〜約11.5重量%である場合である。
【0011】
別の実施形態は、環状ホスホン酸難燃剤の2つのジエステルが、P−メチルホスホン酸のジエステルである場合である。
【0012】
別の実施形態は、環状ホスホン酸難燃剤が、単量体および二量体の全重量に基づき、約60重量%〜約90重量%または約70重量%〜約85重量%の範囲で、P−アルキルホスホン酸の(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルエステル(単量体)を、および約10重量%〜約40重量%または約15重量%〜約30重量%の範囲で、P−アルキルホスホン酸のビス[(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチル]エステル(二量体)を含有する場合である。
【0013】
別の実施形態は、アルキル化リン酸トリアリールエステルが以下のアルキル化フェニルホスフェート、a)モノアルキルフェニルジフェニルホスフェート、b)ジ−(アルキルフェニル)フェニルホスフェート、c)ジアルキルフェニルジフェニルホスフェート、d)トリアルキルフェニルホスフェート、e)アルキルフェニルジアルキルフェニルフェニルホスフェートのうちの1つ以上を含有する場合であり、アルキル化フェニルホスフェー
トおよびTPPのアルキル部分は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、第三ブチル基、イソアミル基、および第三アミル基から選択される。
【0014】
別の実施形態は、アルキル化リン酸トリアリールエステルが、a)約90〜約92重量%の範囲で、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェートを、約0.5〜約0.75重量%の範囲で、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェートを、約1〜約3重量%の範囲で、ジ−(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェートを、約0.05〜約0.15重量%の範囲で、リン酸トリフェニルを、および約0.5〜約0.75重量%の範囲で、ジ−イソプロピルフェニルジフェニルホスフェートを、またはb)約94〜約96重量%の範囲で、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェートを、約3.5〜約5.5重量%の範囲で、ジ−(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェートを、および約0.1〜約0.3重量%の範囲で、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェートを、またはc)約71〜約73重量%の範囲で、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェートを、約0.05〜約0.15重量%の範囲で、リン酸トリフェニルを、約26〜約28重量%の範囲で、ジ−(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェートを、および約0.5〜約0.7重量%の範囲で、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェートを含む場合である。
【0015】
本発明はまた、ポリウレタンフォーム組成物における上記のリン難燃剤組成物の使用に関し、ポリウレタンフォーム組成物は、a)リン難燃剤組成物、b)イソシアネートまたはポリイソシアネート、c)少なくとも1つの界面活性剤と共にポリオール、d)少なくとも1つの発泡剤、およびe)少なくとも1つの触媒を含む。
【0016】
ポリウレタンフォーム組成物の一実施形態は、フォームが軟質ポリウレタンフォームであり、ポリオールがポリエーテルポリオールである場合である。ポリウレタンフォーム組成物の別の実施形態は、フォームが硬質ポリウレタンフォームであり、ポリオールが約150〜約850mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する場合である。
【0017】
本発明はまた、リン難燃剤組成物が塗布された織物の用途における上記のリン難燃剤組成物の使用に関する。一実施形態は、織物がバックコーティングを有する場合であり、上記のリン難燃剤組成物は、上記のバックコーティング中に含まれる。
【0018】
本発明はまた、コーティング、接着剤、シーラー、またはエラストマー中のリン難燃剤の使用に関し、該物品は、本発明のリン難燃剤組成物を含む。
【0019】
本文書全体にわたって使用されるように、「php」という略語は、100ポリオール当たりの部(重量で)を意味する。
【0020】
環状ホスホン酸難燃剤において、2つのP−アルキルホスホン酸ジエステルが存在する。一方のジエステルは、1つの(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルエステル基を有し、他方のジエステルは、2つの(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルエステル基を有する。P−アルキルホスホン酸ジエステルのP−アルキルホスホン酸部分において、アルキル基は、1〜約6個の炭素原子を有する。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。P−アルキルホスホン酸部分のための好ましいアルキル基としては、メチルおよびエチル(P−アルキルホスホン酸部分がP−メチルホスホン酸またはP−エチルホスホン酸であるため)が挙げられ、メチルがより好ましい。1つの(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルエステル基を有するジエステルに対して、アルキルエステル基は、1〜約6個の炭素原子を有する。好適なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロ
ピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。アルキルエステルのための好ましいアルキル基としては、メチルおよびエチルが挙げられ、メチルがより好ましい。本発明の実施において特に好ましいP−アルキルホスホン酸ジエステルは、P−メチルホスホン酸の(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルエステル(CAS No.41203−81−0)およびP−メチルホスホン酸のビス[(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチル]エステル(CAS
No.42595−45−9)である。
【0021】
2つの(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルエステル基を有するP−アルキルホスホン酸ジエステルに対する1つの(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルエステル基を有するP−アルキルホスホン酸ジエステルの比率は、約25:1〜約1:5、または約10:1〜約1:1、または約5:1〜約2:1の範囲であってもよい。本発明の実施において、2つの(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルエステル基を有するP−アルキルホスホン酸ジエステルに対する1つの(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルエステル基を有するP−アルキルホスホン酸ジエステルの特に好ましい比は、約3.35〜3.55:1である。
【0022】
約1重量%未満のTPP濃度を有する本発明のアルキル化リン酸トリアリールエステル難燃剤は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,206,404号およびPCT国際公開第WO2007/127691号における方法により生成されてもよい。PCT国際公開第WO2007/127691号において使用される方法が好ましい。該公開において、低TPPアルキル化リン酸トリアリールエステルを作製するためのプロセスが開示され、該方法は、約80℃〜約210℃に及ぶ温度を含む第1の反応条件下で、第1の触媒の触媒下で、POClと、両方ともアルキル化フェノール中の反応性アルキル化フェノール成分の総モル数に基づく、約1モル%未満のフェノールおよび最大で約25モル%のジアルキルフェノールを含む、アルキル化フェノールとを反応させ、それにより、第1の反応生成物の総モル数に基づく、約75モル%を上回るモノアルキル化フェニル−ジクロロホスフェートを含む、第1の反応生成物を生成すること、ならびに約90℃〜約260℃に及ぶ温度を含む第2の反応条件下で、第2の触媒の存在下で、アリールアルコール、アルキルアルコール、アルキル化アリールアルコール、およびそれらの混合物から選択されるアルコールと、第1の反応生成物とを反応させ、それにより、アルキル化リン酸トリアリールエステルを生成することを含む。
【0023】
リン難燃剤組成物は、任意の順序でその成分を組み合わせることにより調製され得る。好ましくは、成分は、比較的均一な混合物を確実にするために、従来の手段により混合またはブレンドされる。
【0024】
上記のように、本発明の一実施形態は、ポリウレタンフォーム組成物を生成する方法である。該方法は、
i) 少なくとも1つの界面活性剤と共にイソシアネートおよびポリオール、少なくとも1つの発泡剤、少なくとも1つの触媒、ならびに軟質ポリウレタンフォームを形成するように混合物を反応させること、または
ii) 少なくとも1つの界面活性剤と共にポリイソシアネートおよびポリオール、少なくとも1つの発泡剤、少なくとも1つの触媒、ならびに硬質ポリウレタンフォームを形成するように混合物を反応させること、
から成る重合調合物中に、難燃量の本発明のリン難燃剤組成物を含むことを含む。
【0025】
ポリウレタンフォームに難燃性を提供するために、リン難燃剤組成物は、典型的には、ポリウレタンフォーム形成プロセスにおいて採用される添加剤のうちの1つとして含まれる。ポリウレタンフォームは通常、標準的なポリウレタンフォーム形成条件下、および標準的なポリウレタンフォーム形成方法/プロセスにおいて形成される。ポリウレタンフォームの形成に関するさらなる情報に関しては、例えば、米国特許第3,954,684号、同第4,209,609号、同第5,356,943号、同第5,563,180号、および同第6,121,338号を参照のこと。
【0026】
軟質ポリウレタンフォームは、典型的には、2つの液体、イソシアネートおよびポリオールを組み合わせることにより形成される。ポリオールは、ポリエーテルまたはポリエステルポリオールである。反応は、水、揮発性炭化水素、ハロカーボン、もしくはハロ、または2つ以上のそのような材料の混合物等の発泡剤の存在下で、室温で容易に生じる。反応をもたらすのに使用される触媒としては、アミン触媒、スズベース触媒、ビスマスベース触媒、または他の有機金属触媒が挙げられる。重合系においてセルの均質性を維持するために、置換シリコーン化合物等の界面活性剤が多くの場合使用される。好ましい触媒としては、ジプロピレングリコール中のトリエチレンジアミン(33%)、およびオクタン酸第一スズが挙げられる。
【0027】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−パラ−クレゾールおよびメチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)は、酸化分解に対する安定化をさらに補助するために使用され得る。これらの成分および使用され得る他の成分、ならびにそれらが使用される比率および方法は、文献において報告される。例えば、Herrington and Hock,Flexible Polyurethane Foams,The Dow Chemical Company,1991,9.25−9.27、またはRoegler,M.“Slabstock Foams”;in Polyurethane Handbook;Oertel,G.,Ed.;Hanser Munich,1985,176−177、またはWoods,G.Flexible Polyurethane Foams,Chemistry and Technology;Applied Science Publishers,London,1982,257−260を参照のこと。
【0028】
例えば、軟質ポリウレタンフォームは、ワンショットプロセス、疑似もしくはセミプレポリマープロセス、またはプレポリマープロセスにより調製され得る。さらに、軟質ポリウレタンフォームは、成形フォーム、スラブストックフォーム等の物品を形成するために使用されてもよく、家具および自動車の座席、マットレスにおけるクッション材料として、カーペット裏地として、おむつにおける親水性フォームとして、および包装フォームとして使用されてもよい。
【0029】
硬質ポリウレタンフォームは通常、イソシアネート基対構成成分のイソシアネート反応性水素原子の合計の当量比が、約0.85〜約30:1、および好ましくは、約0.95:1〜約4:1に及ぶような量で、ポリイソシアネートを、イソシアネート反応性水素原子および随意に鎖延長剤または架橋剤を有する化合物と組み合わせることにより形成される。
【0030】
硬質ポリウレタンフォームを形成するために、ポリマーが形成される前に、フォーム生成量の少なくとも1つの発泡剤が反応混合物中に含まれる。硬質フォームは、約20kg/m〜約100kg/m、好ましくは、約25kg/m〜約80kg/m、およびより好ましくは、約30kg/m〜約45kg/mの範囲の密度を有する。発泡剤の量は通常、硬質フォームの密度を決定する。量は、典型的には、発泡される反応混合物の全重量に基づき、1〜10重量%の範囲内に入る。
【0031】
硬質ポリウレタンフォームの機械特性は、本発明の硬質ポリウレタンフォームの調製において、鎖延長剤または架橋剤を使用することにより修正され得る。好適な鎖延長剤および/または架橋剤は、250よりも低い、特に50〜200の間の分子量を有するジオールおよび/またはトリオールである。好適なジオールとしては、脂肪族、シクロ脂肪族、または芳香族型、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、および1,4ブタンジオールが挙げられる。好適なトリオールとしては、トリメチロールプロパンおよびグリセリンが挙げられるがこれに限定されない。硬質ポリウレタンフォームを形成するために、鎖延長剤および/または架橋剤が使用されるとき、鎖延長剤および/または架橋剤は通常、ポリオールの重量に対して0〜約20重量%、および好ましくは、約2〜約10重量%の荷重で塗布される。
【0032】
本発明のポリウレタンフォームの形成において、難燃量のリン難燃剤組成物が使用される。難燃量とは、所望の難燃性レベルを得るために必要とされるリン難燃剤組成物の量を意味する。少なくとも軟質ポリウレタンフォームに対して、難燃量は、典型的には、約3php〜約15phpの範囲、好ましくは、約3php〜約10phpの範囲、およびより好ましくは、約3php〜約6phpの範囲である。
【0033】
本発明の実施において、少なくとも軟質ポリウレタンフォームでの研究に関して、リン難燃剤組成物の荷重は、いくつかの従来の難燃剤(例えば、Firemaster(登録商標)550)の荷重と比較して、約50%低下させることができること、およびこのより低い荷重のリン難燃剤組成物で形成されるポリウレタンフォームは、California Technical Bulletin 117の難燃性試験に合格したことが認められた。より低い荷重のリン難燃剤組成物を使用して作製されるポリウレタンフォームは、より良好な物理的特性(例えば、引張強度、引裂強度、および伸び)を有する。
【0034】
リン難燃剤組成物、および軟質あるいは硬質ポリウレタンフォームを形成するときの含有に対するその選好は、本発明のリン難燃剤組成物に関する上記の通りである。
【0035】
ポリウレタンフォームの生成において発泡剤として広く使用されている化学物質は、完全ハロゲン化クロロフルオロカーボン、特にトリクロロフルオロメタン(CFC−11)である。これらの発泡剤、特にCFC−11の非常に低い熱伝導性は、非常に効果的な断熱特性を有する硬質フォームの調製を可能にしてきた。必要に応じて、そのような発泡剤は、法律により使用が禁止されていない限り、本発明の実施で使用され得る。上記のように、クロロフルオロカーボンが大気中のオゾン層破壊を引き起こす可能性に関する近年の懸念は、クロロフルオロカーボン発泡剤が、環境的に受容可能であり、かつフォームが使用される多くの用途に対して必要な特性を有するフォームを生成する代替材料に取って代わられる、反応系を開発する差し迫った必要性をもたらしてきた。当初、最も見込みのある代替手段は、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)等の水素含有クロロフルオロカーボン(HCFC)であると思われた。しかしながら、HCFCもまた、ある程度のオゾン層破壊の可能性を有する。したがって、HCFCならびにCFCの代替手段を見つけるというプレッシャーが高まっている。それにもかかわらず、そのような発泡剤は、それらの使用が法律により禁止されない範囲で、本発明の実施で使用され得る。
【0036】
軟質ポリウレタンフォームを形成するときの本発明の実施における好適な発泡剤としては、水、揮発性炭化水素、ハロ炭化水素、もしくはハロカーボン、またはこれらのうちの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。軟質ポリウレタンフォームのための好ましい発泡剤としては、水と塩化メチレン、Freon11、またはアセトンの組み合わせが挙げられ、組み合わせの他の構成成分に対する水の重量比は、約1:2〜約2:1の範囲であり
、水および塩化メチレンが好ましい組み合わせである。
【0037】
硬質ポリウレタンフォームを形成するために、本発明の実施で使用され得る発泡剤としては、部分フッ素化炭化水素(HFC)および炭化水素(HC)が挙げられる。水もまた、単一の発泡剤として、またはHCFC、HFC、またはHC発泡剤と組み合わせて共発泡剤として使用され得る。水は、イソシアネート基と反応し、尿素構造を形成し、二酸化炭素を放出する。
【0038】
本発明の実施におけるポリウレタンフォームの形成で使用されるポリオールは、軟質ポリウレタンフォームまたは硬質ポリウレタンフォームを生成するために使用され得る任意のポリオールであってもよい。軟質ポリウレタンフォームが形成されているとき、ポリオールは通常、最大で約150mg KOH/g、好ましくは、0〜約100mg KOH/gの範囲、およびより好ましくは、約10〜約100mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する、ポリオールまたはポリオールの混合物である。軟質ポリウレタンフォームに好適なポリオールとしては、ポリエーテルポリオールが挙げられる。本発明の実施において、軟質ポリウレタンフォームを形成するために好ましいポリオールとしては、Voranol(登録商標)3010ポリオール(約3000の分子量および約56mg KOH/gのヒドロキシル価を有する、ポリエーテルポリオール、The Dow Chemical Company,Midland,MI)、Pluracol(登録商標)1718ポリオール(約3000の分子量および約58mg KOH/gのヒドロキシル価を有する、ポリエーテルポリオール、BASF Corporation,Florham Park,NJ)、ならびにPluracol(登録商標)1388ポリオール(約3100の分子量を有する、ポリエーテルトリオール、BASF Corporation,Florham Park,NJ)が挙げられる。
【0039】
本発明の硬質ポリウレタンフォームを形成するために、約150〜約850mg KOH/gの範囲、好ましくは、約200〜約600mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価、および約2〜約8の範囲、好ましくは、約3〜約8の範囲のヒドロキシル官能基を有する、個々のポリオールまたはポリオールの混合物が使用される。これらの基準を満たす好適なポリオールは、文献において十分に説明されており、(a)プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシド等のアルキレンオキシドと、(b)1分子当たり約2〜約8個の範囲の活性水素原子を有する開始剤との反応生成物を含む。好適な開始剤としては、例えば、ジオール(例えば、ジエチレングリコール、ビスフェノール−A)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、トリオール(例えば、グリセリン)、ノボラック樹脂、エチレンジアミン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、およびスクロースが挙げられる。他の好適なポリオールとしては、適切な比率のグリコールおよび高官能性ポリオールと、ジカルボン酸またはポリカルボン酸との縮合反応により調製される、ポリエステルが挙げられる。さらに他の好適なポリオールとしては、ヒドロキシル末端ポリチオエーテル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、およびポリシロキサンが挙げられる。硬質ポリウレタンフォームを形成するための好ましいポリオールは、ポリエステルポリオールである。
【0040】
本発明の実施において、軟質ポリウレタンフォームを形成するとき、イソシアネートは、軟質ポリウレタンフォームを生成するために通常使用される任意のイソシアネートであってもよい。概して、イソシアネートは、少なくとも1つのイソシアネート基、より好ましくは、2つのイソシアネート基を有し、3つ以上のイソシアネート基を有する分子が利用され得る。好ましくは、ジイソシアネートが使用される。本明細書で使用されるイソシアネートは、脂肪族または芳香族イソシアネートであってもよい。本発明の実施において軟質ポリウレタンフォームを形成するために使用され得るイソシアネートの例としては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、
2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,7−ヘプタメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート、他のアルキル化ベンゼンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、時にメチレンジイソシアネートと呼ばれる)、およびこれらのうちの任意の2つ以上の混合物が挙げられるがこれらに限定されない。軟質ポリウレタンフォームのための好ましいイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0041】
硬質ポリウレタンフォームを形成するときに本発明の実施で使用するための好適なポリイソシアネートとしては、硬質ポリウレタンフォームの調製に関して当該技術分野で既知のもののいずれかが挙げられる。硬質ポリウレタンフォームを形成するとき、ポリイソシアネートは、芳香族または脂肪族であってもよく、ポリイソシアネートは、ジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネート、および/またはポリマーポリイソシアネートであってもよい。ジイソシアネートは、好ましい種類のポリイソシアネートである。好適なポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネートの混合物、他のアルキル化ベンゼンジイソシアネート、ビトルエンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン2,4,6−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等のポリマーポリイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7−ヘプタメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネートおよびその異性体、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ならびに上記のうちの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。硬質ポリウレタンフォームを形成するための好ましいポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネートが挙げられる。
【0042】
軟質ポリウレタンフォームを形成するための触媒系としては、ジメチルエチルアミン、トリエチレンジアミン、およびビス(ジメチルアミノエチル)エーテル等のアミン触媒が挙げられる。好ましい触媒系は、ジメチルエチルアミン、トリエチレンジアミン、およびビス(ジメチルアミノエチル)エーテルのブレンド等の、アミン触媒の組み合わせまたはブレンドである。触媒は通常、100重量部のポリオール当たり約0.001〜約2重量部の量で使用される。
【0043】
硬質ポリウレタンフォーム形成のための触媒は、ゲル触媒、発泡触媒、平衡ゲル/発泡触媒、および三量化触媒として分類され得る。ゲル触媒は、特にヒドロキシル基の反応性水素原子と、修飾ポリイソシアネートとの間の反応を促進する。発泡触媒は、水の反応性
水素と修飾ポリイソシアネートとの反応を促進する。好適な触媒は、単一触媒として使用され得る。第3級アミンである。発泡触媒としての好適な第3級アミンの例としては、例えば、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルおよびペンタメチルジエチレントリアミンが挙げられる。ゲル触媒の例としては、1,4−ジアザ(2,2,2)ビシクロオクタン、テトラメチルジプロピレントリアミン、およびトリス(ジメチルアミノプロピル)ヒドロトリアジンが挙げられる。平衡触媒の例としては、ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、およびトリス(ジメチルアミノプロピル)ヒドロトリアジンが挙げられる。触媒は通常、100重量部のポリオール当たり約0.001〜約2重量部の量で使用される。
【0044】
軟質あるいは硬質ポリウレタンフォームを形成するときに、1つ以上の任意の添加剤が含まれ得る。そのような任意の添加剤としては、界面活性剤、酸化防止剤、希釈剤、鎖延長剤または架橋剤、共力剤(好ましくは、メラミン)、安定剤、着色剤、充填剤、帯電防止剤、セルオープナー、および可塑剤が挙げられる。
【0045】
特定の種類の界面活性剤であるセルオープナーは、典型的には、ポリアルキレンオキシドである。本発明の実施における好適なポリアルキレンオキシドセルオープナーとしては、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールアリルメチルジエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールグリセロールエーテル、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールモノアリルモノメチルジエーテル、およびポリエチレン−ポリプロピレングリコールアリルエーテルアセテートが挙げられる。好ましいセルオープナーとしては、Tegostab(登録商標)B8239,Evonik Industries AG,Essen,GermanyおよびTegostab(登録商標)B8229,Evonik Industries,Essen,Germany)が挙げられる。
【0046】
必要に応じて、界面活性剤も硬質ポリウレタンフォームの形成に使用され得る。それらは、調合物の種々の構成成分の適合性を改善するために、かつセル構造を制御するために、表面活性物質としての役割を果たす。好適な界面活性剤の例は、硫酸化ヒマシ油または脂肪酸のナトリウム塩等の乳化剤;アミン、例えば、オレイン酸ジエチルアミンおよびステアリン酸ジエタノールアミンを有する脂肪酸塩;スルホン酸の塩、例えば、ドデシルベンゼンジスルホン酸およびリシノール酸のアルカリ金属またはアンモニウム塩;シロキサンオキシアルキレンコポリマーおよび他のオルガノポリシロキサン、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化脂肪族アルコール、およびヒマシ油等のフォーム安定剤である。
【0047】
これらの表面活性物質は通常、100重量部のポリオールブレンド当たり約0.01〜約5重量部の量で使用される。
【0048】
軟質および硬質ポリウレタンフォーム中の物質および比率は、そのような物質およびその比率に対する選好を含み、軟質および硬質ポリウレタンフォームのそれぞれの形成方法に関して上記に記載される。
【0049】
本発明の別の実施形態は、本発明のリン難燃剤組成物が塗布される織物である。本明細書で使用される「織物」という用語は、任意のファブリック、フィラメント、ステープル、もしくは毛糸、または織布または不織布にかかわらず、それらから作製される製品、ならびに合成および/または天然繊維、特にポリアミド、アクリル、ポリエステル、およびそれらのブレンド、綿、コーデュロイ、ベルベットブロケード、ポリエステル−綿ブレンド、ビスコースレーヨン、ジュート、および木材パルプを含むセルロース系織物材料から
作製される製品から作製される全てのファブリック、布、カーペット等を指す。本発明の実施における好適な織物としては、天然および/または合成カーペット;ポリエステル、ポリアミド、ナイロン、アクリル等の合成繊維から作製される、ファブリックおよび/または布;綿等の天然 繊維から作製される、ファブリックおよび/または布;ならびに綿/ポリエステルブレンド等の合成繊維および天然繊維のブレンドから作製される、ファブリックおよび/または布が挙げられる。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の織物を構成する天然および/または合成繊維もまた、上記のように、難燃性であってもよい。
【0050】
いくつかの用途において、市販の織物製品は、少なくとも2つの異なる構成成分、織物材料およびバックコーティング材料から成る。時に裏張り層または遮断シートと称されるバックコーティング材料は、所与の織物製品に難燃特性を与えるために使用される。例えば、乗り物の内装材料は、別個の耐火シート層と共に使用される。別の実施例として、多くのカーペットは、難燃特性を有する二次または三次裏張り層を含む。
【0051】
本発明はまた、織物に難燃性を与えるための方法を提供し、該方法は、上記の織物に本発明のリン難燃剤組成物を塗布することを含む。織物へのリン難燃剤組成物の塗布方法は、特定の織物および用途(例えば、カーペットまたは内装)により異なり、他の難燃剤の塗布に対して当該技術分野で使用される同一の方法であってもよい。ポリウレタンフォームに関する上記のように、織物に対するリン難燃剤組成物の荷重は、同様の難燃性レベルを提供するために、種々の従来の難燃剤の荷重と比較して有意に低いことが見込まれる。
【0052】
織物、および織物にリン含有混合物を塗布するための方法において、リン難燃剤組成物は、その選好を含み、上記に記載される通りである。
【0053】
いくつかの実施形態では、リン難燃剤組成物は、織物の表面に塗布される、本明細書において集合的にバックコーティングと称される、裏張り、バック層、またはバックコーティング等の層中に含有される。バックコーティングは、典型的には、ポリマー化合物、およびリン難燃剤組成物が分散される好適な液体担体材料から得られる。液体担体材料は、そのような液体担体がリン難燃剤組成物に悪影響を及ぼさない限り、有機液体および水等、バックコーティングの生成に一般に使用される、任意の好適な液体担体材料であってもよい。いくつかの実施形態では、液体担体材料は、水である。
【0054】
バックコーティングは、典型的には、任意の所望の方法および順序で、ポリマー、液体担体材料、もしある場合は任意の構成成分、およびリン難燃剤組成物を組み合わせることにより形成される。該方法および順序は、本発明にとって重要ではない。さらに、バックコーティングは、当該技術分野で既知の任意の手段により、織物の表面に塗布され得る。例えば、圧力ロールおよび冷却ロールを利用するもの等のコーティング機の使用は、「ナイフ」コーティング法、コーティング法、押出、転写法、コーティング、噴霧、発泡等が使用可能であるように、使用され得る。織物に塗布されるバックコーティングの量は、概して、上記のように、難燃量のリン難燃剤組成物を有する織物を提供するのに十分な量である。バックコーティングの塗布後、バックコーティングは、加熱もしくは乾燥により、またはバックコーティング中で所望の反応を引き起こすための別の方法により、織物上で硬化され得る。
【0055】
概して、織物のためのバックコーティングを形成するポリマーは、結合、コーティング、含浸、または関連使用に関して既知であり、それらのために使用される、多くの安定ポリマー分散のいずれかから選択され得、自己架橋型または外部架橋型であってもよい。ポリマーは、付加ポリマー、縮合ポリマー、またはセルロース誘導体であってもよい。好適なポリマーの限定されない例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−ポリ酢酸ビニル、およびポリエチレン−ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ビニルを含む種類の1つ以上の
ポリマー構成成分を含有する、発泡または非発泡オルガノゾル、プラスチゾル、格子等;ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン−ポリビニル、およびポリアクリル−ポリ酢酸ビニル等のビニルエステルのポリマーおよびコポリマー;エチルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびジメチルアミノエチルアクリレート等のアクリレート単量体のポリマーおよびコポリマー;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、およびブチルメタクリレート等のメタクリレート単量体のポリマーおよびコポリマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−イソ−プロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、およびメタクリルアミドのポリマーおよびコポリマー;ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン−ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−ポリエチルアクリレート、およびポリ塩化ビニリデン−ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル等のビニリデンポリマーおよびコポリマー;エチレンおよびプロピレンを含むオレフィン単量体のポリマーおよびコポリマー、ならびに1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン等のポリマーおよびコポリマー;天然ラテックス;ポリウレタン、ポリアミド;ポリエステル;スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、および4−ブチルスチレンを含むスチレンのポリマーおよびコポリマー;フェノール乳剤;アミノプラスト樹脂等が挙げられる。バックコーティング織物におけるそのようなポリマーの使用は、当該技術分野の範囲内である。例えば、米国特許第4,737,386号および同第4,304,812号を参照のこと。
【0056】
好ましい実施形態では、バックコーティングのポリマーは、ポリマーラテックスまたはポリマープラスチゾル化合物のいずれかであり、より好ましくは、ポリマーラテックスである。いくつかの実施形態では、バックコーティングに使用されるラテックスポリマーとしては、少なくとも1つのアクリル単量体を有するポリ塩化ビニリデンコポリマーが挙げられる。標準的なアクリル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、これらの酸のエステル、またはアクリロニトリル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、エチレンジメタクリレート、酢酸ビニル、酢酸ブチル等が挙げられる。あるいは、バックコーティングは、当該技術分野で既知のホットメルト技術により織物に塗布され得る、従来の熱可塑性ポリマーを含んでもよい。
【0057】
随意に、バックコーティングは、共力剤、染料、防シワ剤、発泡剤、緩衝剤、pH安定剤、固定剤、フッ化炭素等の汚れ忌避剤、防汚剤、土壌忌避剤、湿潤剤、柔軟剤、撥水剤、汚れ剥離剤、光学的光沢剤、乳化剤、増粘剤、界面活性剤、および他の難燃剤等の追加の構成成分を含むことができる。好ましくは、Sb等の共力剤は使用されない。
【0058】
本発明の難燃性組成物は、ポリウレタンフォームおよび織物に加えて他の用途のために、上記のポリマーで使用されてもよいことに留意されたい。例えば、それは、プラスチック物品を作製するために使用されてもよい。本発明の難燃性樹脂組成物からプラスチック物品を生成するために使用される方法は、特に制限されず、一般に使用される任意の方法が採用されてもよい。例示的なそのような方法としては、射出成形、ブロー成形、押出、シート成形、熱成形、回転成形、およびラミネート加工等の成形が挙げられる。
【0059】
本発明の難燃性組成物はまた、コイルボビン、フライバック変圧器、コネクタ、および偏向ヨーク等の電気および電子装置のパーツ;プリント配線板、プリント基板、シーラー、電気絶縁材料、電気被覆剤、積層板、高速演算用ワニス、先端複合材料、電線、アンテナ材料、ケーブルおよび高性能成形材料等の電気および電子材料;塗料、接着剤、コーティング材料、食器、ボタン、繊維および紙処理剤、化粧板、UV硬化型インキ、シーラント、合成皮革、断熱緩衝材料、塗膜防水材、防食ライニング、鋳型用バインダー、ラッカ
ー、ペイント、インキ改質剤、樹脂改質剤、航空機内装部品、複合材料用マトリクス、台所用品、OA機器、AV機器、バッテリ用途、照明ユニット、自動車部品、ハウジング、ETC、ITC、携帯電話等に好適に使用され得る。
【0060】
難燃剤としてポリマーに添加される難燃性組成物の量は、広い範囲にわたって異なってもよい。通常、100重量部のポリマー当たり、約0.1〜約100重量部の難燃性組成物が使用される。好ましくは、100重量部のポリマー当たり、約0.5〜約30部、または100重量部のポリマー当たり約2〜約20重量部の難燃性組成物が使用される。
【0061】
California Technical Bulletin 117の難燃性試験は、布張り家具の構成成分材料に対する。各種類の布張り充填構成成分は、小型直火試験およびタバコくすぶり試験の両方を受けなければならない。構成成分が試験に合格するためには、炭化長、残炎、残光、および/または重量損失を含む特定の基準が満たされなければならない。
【0062】
以下の実施例は、例示目的で示され、本発明の範囲に制限を与えることを目的としていない。以下の実施例における全ての百分率は、特に指定のない限り重量による。
【0063】
実施例1A〜1Dおよび比較例1
本発明による難燃性組成物の有効性を提供するために、本発明による難燃性組成物を用いて、および用いずにフォームを調製した。これらの実施例で使用される難燃剤は、Amgard(登録商標)CUの商品名で販売されている、約10重量%の市販の環状ホスホン酸難燃剤、および約90重量%のイソプロピルジフェニルホスフェートエステルの混合物であった。比較例1は、約27〜30%のTPPを有する市販のイソプロピルジフェニルホスフェートエステルで作製した。実施例1A〜1Dは、0.2重量%未満のTPP含有量を有する、国際公開第WO2007/127691号の手順により調製される、イソプロピルジフェニルホスフェートエステルで作製した。
【0064】
フォーム調製:ポリオール、界面活性剤、難燃性組成物、水、およびトリエチルアミン触媒を表1で示す量で、半ガロン容器に計量し、「php」は、100ポリオール当たりの部である。次いで、この混合物を、60秒間、または混合物が、相分離が見えず、均質になるまで、2000rpmで、ボウタイ型撹拌器で予めブレンドした。いったん混合すると、rpmを500まで低下させ、タイマーを開始し、ブレンドを40秒間混合し、40秒後に、TDI(イソシアネート)を添加した。50秒で、オクタン酸第一スズを添加し、クリーム時間(反応時間)が示されるまで、混合を継続した。次いで、混合物を14x14x14段ボール箱に注入し、上昇時間を記録した。密度およびインデックスに応じた、本研究において観察された典型的なクリーム時間および上昇時間は、クリーム時間に対して56〜59秒の間、および上昇時間に対して155〜170秒の間であった。時間は、混合開始から観察時点までである。
【0065】
難燃性試験:本発明による難燃剤の有効性を提供するために、上記のプロセスで作製されたフォームの難燃剤含有量を変化させた。燃焼性試験を三重に行い、結果をCalifornia’s Technical Bulletin 117、パートA(垂直燃焼)および/またはD(くすぶり)に基づき、百分率で表した。Cal 117、パートAは、時効(24時間、104℃)前が5個、後が5個の10個の燃焼サンプルを必要とする。どちらか一方のセットからの1つが不合格になると、別の5個は、不合格のセットから燃焼される。合否基準は、以下に基づく。
平均炭化長は、6インチを超えてはならない。
任意の個々の試料の最大炭化長は、8インチを超えてはならない。
溶融材料の残炎を含む平均残炎は、5秒を超えてはならない。
任意の個々の試料の最大残炎は、10インチを超えてはならない。
【0066】
百分率に基づいて、試験は、20個のサンプル当たり2個の不合格、または上記の基準により概説されるように、90%の総合評価を許可する。
【0067】
くすぶり試験において、低ニコチンタバコ、および綿または綿/ポリエステルブレンドのカバーシート材料と共に、フォームを試験台に配置する。試験後、炭化した材料を除去し、パネルは、材料の80重量%が残っている場合、合格する。
【0068】
構成成分、量、フォーム特徴、および難燃性試験の結果を表1に記載する。結果は、各ロット当たり5個のサンプルを有する、3個のロット(または各試験に対して15個のサンプル)の平均である。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例2A〜2Cおよび比較例2
実施例1A〜1Dの試験を以下の調合物で繰り返した。1ロット当たり1つのサンプルのみを、Californiaくすぶり試験に対して試験した。
【0071】
【表2】

【0072】
結果は、低TPP含有量を有する調合物が、高TPP荷重を有するサンプルと同程度機能することを実証する。これは、TPPが優れた難燃性構成成分であり、低TPP含有量を有するアルキル化難燃剤が概して効果的ではないことから、驚くべきことである。
【0073】
本明細書および本明細書の請求項の任意の場所において化学名または化学式で言及される成分は、単数または複数で言及されているか否かにかかわらず、化学名または化学式で言及される別の物質(例えば別の成分、溶媒等)と接触する前に存在するものとして識別される。得られた混合物または溶液の中で、どんな化学変化、変形、および/または反応が発生することは、もしそれらが発生しなくても、このような変化、変形、および/または反応が、本開示に従って要求された条件下において特定の成分を一つにまとめた当然の結果であるので、問題ではない。したがって、これらの成分は、所望の動作の実行または所望の組成物の形成に関連して一つにまとめられる要素として識別される。また、以下の請求項は、現在時制(「備える」、「である」等)で物質、成分、および/または要素に言及し得るが、物質、成分、または要素は、本開示に従って1つ以上の他の物質、成分、および/または要素と最初に接触、混合、または混合される直前の時点に存在したものとして言及されている。したがって、本開示および化学者に従い実施される場合、接触、ブレンド、または混合作業中の化学反応または転換により、物質、成分、または要素がその元の固有性を損失した可能性があるという事実は、実質的な問題ではない。
【0074】
本明細書に記載および請求される本発明は、本明細書に開示される特定の実施例および実施形態が本発明のいくつかの態様の例示として意図されるため、これらの実施例および実施形態により、範囲を制限されるものではない。任意の同等の実施形態は、本発明の範囲内に入るよう意図される。実際に、本明細書に示され記載されるものに加えて、本発明の種々の修正物が、上記の説明から当業者に明らかとなるであろう。そのような修正物もまた、添付の請求項の範囲内に入るよう意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン難燃剤組成物であって、
a)P−アルキルホスホン酸の(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルエステル(Cas#41203−81−0)およびP−アルキルホスホン酸のビス[(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチル]エステル(Cas#42595−45−9)を含む、環状ホスホン酸難燃剤と、
b)アルキル化リン酸トリアリールエステルの全重量に基づき、約1重量%未満のリン酸トリフェニル(TTP)含有量を有する、アルキル化リン酸トリアリールエステル難燃剤と、
を有する構成成分を組み合わせることから形成される、リン難燃剤組成物。
【請求項2】
前記環状ホスホン酸難燃剤の量は、前記環状ホスホン酸難燃剤およびアルキル化リン酸トリアリールエステル難燃剤の全重量に基づき、約8重量%〜約11.5重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
P−アルキルホスホン酸の前記2つのジエステルは、P−メチルホスホン酸のジエステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記環状ホスホン酸難燃剤は、単量体および二量体の全重量に基づき、約60重量%〜約90重量%の範囲で、P−アルキルホスホン酸の(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチルメチルエステル(単量体)を、および約10重量%〜約40重量%の範囲で、P−アルキルホスホン酸のビス[(5−エチル−2−メチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−5−イル)メチル]エステル(二量体)を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルキル化リン酸トリアリールエステルは、以下のアルキル化フェニルホスフェート、a)モノアルキルフェニルジフェニルホスフェート、b)ジ−(アルキルフェニル)フェニルホスフェート、c)ジアルキルフェニルジフェニルホスフェート、d)トリアルキルフェニルホスフェート、e)アルキルフェニルジアルキルフェニルフェニルホスフェートのうちの1つ以上を含有し、前記アルキル化フェニルホスフェートおよびTPPの前記アルキル部分は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、第三ブチル基、イソアミル基、および第三アミル基から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルキル化リン酸トリアリールエステルは、a)約90〜約92重量%の範囲で、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェートを、約0.5〜約0.75重量%の範囲で、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェートを、約1〜約3重量%の範囲で、ジ−(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェートを、約0.05〜約0.15重量%の範囲で、リン酸トリフェニルを、および約0.5〜約0.75重量%の範囲で、ジ−イソプロピルフェニルジフェニルホスフェートを、またはb)約94〜約96重量%の範囲で、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェートを、約3.5〜約5.5重量%の範囲で、ジ−(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェートを、および約0.1〜約0.3重量%の範囲で、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェートを、またはc)約71〜約73重量%の範囲で、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェートを、約0.05〜約0.15重量%の範囲で、リン酸トリフェニルを、約26〜約28重量%の範囲で、ジ−(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェートを、および約0.5〜約0.7重量%の範囲で、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェートを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
ポリウレタンフォーム組成物であって、(i):
a)請求項1〜6のうちのいずれか一項のリン難燃剤組成物と、
b)イソシアネートまたはポリイソシアネートと、
c)少なくとも1つの界面活性剤と共に、ポリオールと、
d)少なくとも1つの発泡剤と、
e)少なくとも1つの触媒と、
を含む、ポリウレタンフォーム組成物。
【請求項8】
前記フォームは、軟質または硬質であり、前記フォームが軟質ポリウレタンフォームであるとき、前記ポリオールは、ポリエーテルポリオールであり、前記フォームが硬質ポリウレタンフォームであるとき、前記ポリオールは、約150〜約850mg KOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する、請求項7に記載のポリウレタンフォーム組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のうちのいずれか一項のリン難燃剤組成物が適用された、織物。
【請求項10】
前記織物は、バックコーティングを有し、前記リン難燃剤組成物は、前記バックコーティング中に含まれる、請求項9に記載の織物。
【請求項11】
物品であり、前記物品は、コーティング、接着剤、またはエラストマーであり、前記物品は、請求項1〜6のうちのいずれか一項のリン難燃剤組成物を含む、物品。

【公表番号】特表2012−511089(P2012−511089A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539795(P2011−539795)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/067183
【国際公開番号】WO2010/077673
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】