説明

リーダライタ装置及びそのリーダライタ装置を用いた認証システム

【課題】挿入される携帯端末装置の構造に応じて、SIMカードの無線通信機能が受信信号有りと判定する受信強度の閾値、及び信号を送信するときの送信出力が変わる。
【解決手段】認証レベル設定信号(SIG401)の受信強度値を含む応答信号(SIG402)と、認証レベル設定信号(SIG403)の受信強度値を含む応答信号(SIG404)を受信し、認証レベル設定信号(SIG401)の受信強度値と、認証レベル設定信号(SIG403)の受信強度値とを比較し、どちらか大きい方の受信強度値(X)を記憶する。そして、受信強度値(X)を得られた際に使用したアンテナ(アンテナP)を特定して、認証フェーズにおいてリーダライタ装置150から送信される信号を送信するために使われるアンテナを決める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置に搭載され無線通信機能を有するSIMカードを介して無線通信を行うリーダライタ装置と、そのリーダライタ装置と携帯端末装置からなる認証システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される携帯端末装置には、SIM(Subscriber Identity Modulecard)カードを挿抜可能なものがある。携帯端末装置は、SIMカードに備わるSIMチップに物理的に接触しており、その接触箇所を介してSIMチップへのデータの書き込み処理、またはSIMチップからのデータの読み取り処理を実施する。
【0003】
さらに、特許文献1には、RF−ID(Radio Frequency Identification)タグをさらに備えたSIMカードを挿抜可能な携帯端末装置について開示されている。RF−IDタグは、SIMチップへのデータの書き込み処理、またはSIMチップからのデータの読み取り処理を行って、リーダライタ装置との間で無線通信を実施する。
【特許文献1】特表2007−507766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、SIMカードは様々な構造の携帯端末装置に挿抜されることが想定されるが、携帯端末装置に挿入されたときのSIMカード近辺の構造が携帯端末装置毎に異なるため、SIMカードに備わるRF−IDタグの電波環境もまた異なる。例えば、SIMカードが携帯端末装置に備わるバッテリに面して位置に挿入されている場合と、そのバッテリから離れた位置に挿入されている場合と、を比較すると、ある距離だけ離れた位置にあるリーダライタ装置からRF−IDタグが受信する電波の受信強度は、前者の方が小さくなる傾向にある。
【0005】
このように、SIMカードに備わるRF−IDタグは、電波環境、特にRF−IDタグが受信する電波の受信強度が、そのSIMカードが挿入される携帯端末装置の構造に応じて変化するため、無線通信を行うために当該RF−IDタグが最低限必要とする受信強度の閾値を、当該RF−IDタグが受信する電波の受信強度が最も低い構造を有する携帯端末装置に合わせて設定される必要がある。この結果、RF−IDタグは、受信強度の小さな電波をも無線通信用の電波として受信することとなり、ノイズによる無線通信への影響が大きくなってしまう。このため、SIMカードが挿入される携帯端末装置の構造に応じて、無線通信を行うために当該RF−IDタグが最低限必要とする受信強度の閾値を設定することが求められる。
【0006】
また同様に、SIMカードが携帯端末装置に備わるバッテリの裏側に面した位置に挿入されている場合と、そのバッテリのおもて面に面した位置に挿入されている場合、あるいはバッテリから離れた位置に挿入されている場合などを比較すると、ある距離だけ離れた位置にあるリーダライタ装置での受信レベルを一定にするためのRF−IDタグから送信される信号の送信出力は、それぞれ異なる。そのため、SIMカードが挿入される携帯端末装置の構造に応じて、無線通信を行うための当該RF−IDタグの送信出力レベルを設定することが求められる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、携帯端末装置に挿抜可能であり、さらに無線通信機能を備えるSIMカードであって、挿入される携帯端末装置の構造に応じて、SIMカードの無線通信機能が受信信号有りと判定する受信強度の閾値、及び信号を送信するときの送信出力を好適に設定することができるSIMカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明のリーダライタ装置は、無線通信機能を有するSIMカードを搭載する携帯端末装置との間で無線通信を行うリーダライタ装置であって、前記携帯端末装置との間で無線通信を行うアンテナ手段と、前記アンテナ手段を介した無線通信を制御する無線通信制御手段と、を備え、前記アンテナ手段は、第1アンテナ部及び前記第1アンテナ部とは異なる位置に設置される第2アンテナ部から構成され、前記無線通信制御手段は、前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部のそれぞれを用いて前記携帯端末装置に認証レベル設定信号を送信し、前記認証レベル設定信号のそれぞれの受信強度値を含む応答信号を前記携帯端末装置から受信して前記それぞれの受信強度を検出し、前記検出したそれぞれの受信強度値に基づいて、前記携帯端末装置へ無線通信する際に前記第1アンテナ部を用いるか前記第2アンテナ部を用いるかを判断するものである。
【0009】
これにより、使用者の携帯端末装置の持ち方や握りかた、リーダライタ装置と携帯端末装置との角度、SIMカードの実装位置や携帯端末装置の構造に関わらず、正確に携帯端末装置との距離を検知しリーダライタ装置と携帯端末装置が所定距離内でしか認証通信を行わないため、セキュリティ、操作性の改善を図ることができる。
【0010】
また、前記従来の課題を解決するために、本発明の認証システムは、無線通信機能を有するSIMカードを搭載する携帯端末装置と、上記記載のリーダライタ装置と、を備えるものである。
【0011】
これにより、使用者の携帯端末装置の持ち方や握りかた、リーダライタ装置と携帯端末装置との角度、SIMカードの実装位置や携帯端末装置の構造に関わらず、正確にリーダライタ装置との距離を検知しリーダライタ装置と携帯端末装置が所定距離内でしか認証通信を行わないため、セキュリティ、操作性の改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリーダライタ装置及び認証システムは、携帯端末装置から送信された受信強度値に基づいて、携帯端末装置へ無線通信する際に第1アンテナ部を用いるか第2アンテナ部を用いるかを判断するものであるので、使用者の携帯端末装置の持ち方や握りかた、リーダライタ装置と携帯端末装置との角度、SIMカードの実装位置や携帯端末装置の構造に関わらず、正確に携帯端末装置と認証通信を行い、セキュリティ、操作性の改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
携帯端末装置は、その対応テーブルのなかから自装置(携帯端末装置)の携帯端末識別IDを検出することができれば(ステップ703、Y)、その携帯端末識別IDに対応する受信レベル及び送信レベルを読み取り(ステップ704)、その読み取った受信レベルと、その受信レベルを超える受信強度の電波を受信して無線回路122に無線通信を行うよう要求する制御信号、及び、読み取った送信レベルと、その送信レベルで無線回路122が無線通信を行うよう要求する制御信号、をSIMチップ121に出力する(ステップ705)。
【0014】
一方、携帯端末装置は、SIMチップ121から読み取った対応テーブルのなかから自
装置(携帯端末装置)の携帯端末識別IDを検出することができなければ(ステップ703、N)、自装置(携帯端末装置)の携帯端末識別IDが対応テーブルに無い旨をディスプレイ、スピーカ、またはバイブレーションなどによって装置利用者に通知する(ステップ706)。
【0015】
ステップ706の後、携帯端末装置は、SIMカード120の無線回路122が受信する受信強度の閾値と送信出力を手動で設定する(すなわち、第1の実施の形態で示したように、ある距離だけ離れた位置にあるリーダライタ装置150から無線回路122が受信する電波の受信強度あるいは無線回路122からリーダライタ装置150へ送信する電波の送信出力を測定し、その測定した受信強度及び送信出力の数値を基に受信レベル、送信レベルを算出しておいたように、この工程を装置利用者に行わせる)ことを促すメッセージをディスプレイに出力するようにしてもよい(ステップ707)。
【0016】
携帯端末装置は、手動による受信レベル及び送信レベルの設定が終了すると(ステップ708、Y)、その設定した受信レベルと、その受信レベルを超える受信強度の電波を受信して無線回路122に無線通信を行うよう要求する制御信号、及び、読み取った送信レベルと、その送信レベルで無線回路122が無線通信を行うよう要求する制御信号とを、SIMチップ121に出力する(ステップ709)とともに、自装置(携帯端末装置)の携帯端末識別IDとその設定した受信レベル及び送信レベルとの対応関係を対応テーブルに新たに記憶するよう要求する制御信号をSIMチップ121に出力する(ステップ710)。
【0017】
そして、ステップ704の処理にてSIMチップ121から読み取った受信レベル及び送信レベル、またはステップ708の処理にて手動にて設定した受信レベル及び送信レベルと、SIMチップ121から読み取ったSIMカード120の識別IDと、を自装置(携帯端末装置)の記憶部141に記憶する(ステップ711またはステップ712)。
【0018】
以上、本発明の実施の形態の携帯端末装置によれば、SIMカード120に備わる無線回路122が受信する電波の受信レベル及び送信レベルを、予め算出された最適値に設定することにより、携帯端末装置の構造に適した送受信レベルによって無線回路122が無線通信を行うことができる。
【0019】
図7のフローチャートを参照して説明した処理は、携帯端末装置がSIMカード120のSIMチップ121に記憶された対応テーブルを参照して、SIMカード120の無線回路122が受信する電波の受信強度の閾値及び送信出力を制御するものであった。別の形態として、携帯端末装置は、SIMカード120が一度挿入されたときに、そのSIMカード120のSIMチップ121から読み出した対応テーブルを携帯端末装置の記憶部132に記憶しておき、その後、SIMカード120が携帯端末装置110から取り外され再度挿入されたときには、携帯端末装置の記憶部132に記憶しておいた対応テーブルを参照して、SIMカード120の無線回路122が受信する電波の受信強度の閾値及び送信出力を制御することもできる。これによれば、携帯端末装置は、一度挿入されたことのあるSIMカード120に対しては即座にそのSIMカード120の無線回路122が通信する電波の送受信強度を制御することができる。
【0020】
また、図7の別形態として、携帯端末装置に装着されたときにSIMカード120が携帯端末識別IDを読み取ることもできる。この場合のSIMカード120の処理の流れを図8に示す。まず、SIMカード120が携帯端末装置に装着されると、制御部143は携帯端末接続部142を介して携帯端末装置から携帯端末識別IDを読み取る(ステップ801)。そして、制御部143は読み取った携帯端末識別IDが記憶部141に記憶されている対応テーブルに書き込まれているか否かを検索する(ステップ802)。
【0021】
ステップ802において携帯端末識別IDが検索できれば(ステップ803、Y)、制御部143は携帯端末識別IDに対応した受信レベル及び送信レベルを対応テーブルから読み取る(ステップ804)。これによって、無線回路122により受信される受信データは対応テーブルから読み取った受信レベルを閾値として受信可能か否かを判定することになる。同様に、無線回路122から送信する送信データについても、対応テーブルから読み取った送信レベルで行うことになる。
【0022】
一方、ステップ802において携帯端末識別IDが検出できなければ(ステップ803、N)、携帯端末識別IDが対応テーブルに無い旨を携帯端末装置のディスプレイ、スピーカ、またはバイブレーションなどによって装置利用者に通知する(ステップ805)。
【0023】
ステップ805に続いて、無線回路122が受信する受信強度の閾値、及び無線回路122が送信する送信出力が、例えば第1の実施の形態で説明した方法のような手段で設定されると(ステップ806、Y)、制御部143は携帯端末識別IDに対応した受信レベルと送信レベルを記憶部141に記憶する(ステップ807)。なお、ステップ806で受信強度の閾値及び送信出力が設定されると、以降は無線回路122により受信される受信データはその値を基準として受信可能か否かを判定することになり、無線回路122から送信する送信データは対応テーブルから読み取った送信レベルで行うことになる。
【0024】
このように、図8に示すSIMカード120の処理によれば、SIMカード120に備わる無線回路122が受信する電波の受信レベル及び無線回路122が送信する電波の送信レベルを、予め算出された最適値に設定することにより、携帯端末装置の構造に適した受信レベル及び送信レベルによって無線回路122が無線通信を行うことができる。
【0025】
なお、携帯端末装置に備わるセルラー送受信部131を介して、当該携帯端末装置の携帯端末識別IDに対応するSIM識別IDと受信レベル及び送信レベルの三つの情報から構成される対応テーブルについての情報を受信し、その対応テーブルを携帯端末接続部14を介して記憶部141に記憶する構成であっても構わない。この構成により、SIMカードに設定すべき受信レベル及び送信レベルを常に最新のものに更新することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明にかかる携帯端末装置及びリーダライタ装置は、使用者の携帯端末装置の持ち方や握りかた、リーダライタ装置と携帯端末装置との角度、SIMカードの実装位置や携帯端末装置の構造に関わらず正確に通信が行われるので、携帯端末装置に限らず送受信部を機器内部に備える機器に対して適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1の携帯端末装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1の携帯端末装置及びSIMカードの機能ブロック図
【図3】本発明の実施の形態1のリーダライタ装置の機能ブロック図
【図4】本発明の実施の形態1の携帯端末装置とリーダライタ装置での初期設定フェーズのシーケンス図
【図5】本発明の実施の形態1の携帯端末装置とリーダライタ装置での認証フェーズのシーケンス図
【図6】本発明の実施の形態2のSIMカードが記憶する対応テーブルの一例を示す図
【図7】本発明の実施の形態2の携帯端末装置による処理の流れを表すフローチャート
【図8】本発明の実施の形態2の携帯端末装置による処理の流れを表すフローチャート
【符号の説明】
【0028】
110 携帯端末装置
111 バッテリ
112 カバー
120 SIMカード
121 SIMチップ
122 無線回路
131 セルラー送受信部
132 記憶部
133 SIMカード接続部
134 制御部
141 記憶部
142 携帯端末接続部
143 制御部
144 近距離無線送受信部
145 セキュリティ記憶部
150 リーダライタ装置
151 近距離無線送受信部
152 制御部
153 記憶部
154 外部通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を有するSIMカードを搭載する携帯端末装置との間で無線通信を行うリーダライタ装置であって、
前記携帯端末装置との間で無線通信を行うアンテナ手段と、
前記アンテナ手段を介した無線通信を制御する無線通信制御手段とを備え、
前記アンテナ手段は、第1アンテナ部及び前記第1アンテナ部とは異なる位置に設置される第2アンテナ部から構成され、
前記無線通信制御手段は、前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部のそれぞれを用いて前記携帯端末装置に認証レベル設定信号を送信し、前記認証レベル設定信号のそれぞれの受信強度値を含む応答信号を前記携帯端末装置から受信して前記それぞれの受信強度値を検出し、前記検出したそれぞれの受信強度値に基づいて、前記携帯端末装置へ無線通信する際に前記第1アンテナ部を用いるか前記第2アンテナ部を用いるかを判断するリーダライタ装置。
【請求項2】
前記無線通信制御手段は、
前記第1アンテナ部を用いて得られる受信強度値が前記第2アンテナ部を用いて得られる受信強度値よりも大きければ、前記携帯端末装置へ無線通信する際に前記第1アンテナ部を用いると判断し、
前記第1アンテナ部を用いて得られる受信強度値が前記第2アンテナ部を用いて得られる受信強度値以下であれば、前記携帯端末装置へ無線通信する際に前記第2アンテナ部を用いると判断する請求項1記載のリーダライタ装置。
【請求項3】
前記無線通信制御手段は、前記第1アンテナ部を用いて得られる受信強度値と前記第2アンテナ部を用いて得られる受信強度値とのうち大きい方の受信強度値を記憶手段に記憶するように制御し、前記携帯端末装置から送信される無線電文を受信したときに当該無線電文の受信強度値を求め、当該受信強度値と前記記憶手段に記憶された受信強度値とを比較する請求項2記載のリーダライタ装置。
【請求項4】
無線通信機能を有するSIMカードを搭載する携帯端末装置と、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリーダライタ装置と、
を備える認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−113560(P2010−113560A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286080(P2008−286080)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】