リーフシール装置
【課題】組立てが容易でシール部の傾斜角度や隙間を容易に設定及びコントロールすることが可能なリーフシール装置を提供する。
【解決手段】リーフシール10cの各シール板12cは、連結保持部21cとシール部31cとを有し、その境界部分に折り曲げ部30cが形成されている。連結保持部21cに折り曲げ部22が形成されていない。シール板12cの板厚t、折り曲げ部30cにおけるリーフシール10cの周線bに対する連結保持部21cの傾斜角度θ2、及び、シール部30cの傾斜角度θ1を制御することにより、シール部31cのピッチP及び隙間Gを所望の長さにコントロールすることができる。
【解決手段】リーフシール10cの各シール板12cは、連結保持部21cとシール部31cとを有し、その境界部分に折り曲げ部30cが形成されている。連結保持部21cに折り曲げ部22が形成されていない。シール板12cの板厚t、折り曲げ部30cにおけるリーフシール10cの周線bに対する連結保持部21cの傾斜角度θ2、及び、シール部30cの傾斜角度θ1を制御することにより、シール部31cのピッチP及び隙間Gを所望の長さにコントロールすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、航空機エンジン、ガスタービン等に適用され、回転軸周りで相対移動する2構成部品間をシールするリーフシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄板状の部材を積層してリング状に構成したシール装置としては、例えば日本国特許出願公開2003−294153号公報(特許文献1)に開示されている板ブラシシール装置が知られている。日本国特許出願公開2003−294153号公報に開示されている板ブラシシール装置は、多数のシール板が全体が環状をなすように軸の周方向に沿って積層されたものであり、その外周側の取付部においては、間隔保持部たるスペーサを介在させながら各シール板の外周側端部が重ね合わせて整列されている。また、内周側のシール部は、取付部との境界において折り曲げられて、軸の周面に対して所定の傾斜角度で傾斜して配設されている。このような構成により、日本国特許出願公開2003−294153号公報に開示の板ブラシシール装置は、シール部の接面状態を適切にして効果的なシールを行うとともに、薄板を容易に積層可能にして組立てが容易にできるようにしている。
【特許文献1】日本国特許出願公開2003−294153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの種のシール装置において、各シール板の内周側のシール部は、設置対象の装置、被密封流体の種類、温度あるいはその他の種々の条件に応じて、適宜好適な傾斜角度、ピッチあるいは隙間等に設定されて、回転軸の周面に接触又は近接するように配設されるのが望ましい。
しかしながら、従来のこの種の装置においては、シール部の傾斜角度や間隔は、構成上特定の角度や間隔に特定されている場合が多く、適用対象等に応じて任意に形態を設定あるいは調整できる構成にはなっていなかった。例えば、前述した日本国特許出願公開2003−294153号公報に開示されている装置においても、各シール板の取付部の間隔はスペーサ(間隔保持部)の厚さによって決まっており、従ってシール部の傾斜角度やピッチ等の配設形態、構成についても特定の形態に限定されており、これらを設置対象の条件等に応じて任意に設定したり調整したりすることはできなかった。
【0004】
従って、配設形態を変更したい場合や設置条件が異なる場合には、間隔保持部たるスペーサを交換せざるを得ず、すなわち環状に構成されたシール板を分解した後に再度シール板を積層して組立てる必要が生じ、非常に煩雑で面倒な作業が必要であった。しかも実際には、そのようなスペーサの交換のための分解作業等は非現実的であり、わずかな設置条件の変更に対してもシール装置自体を別個のシール装置に交換することになるという問題があった。また、そのため、わずかな設置条件の相違に対応するために非常に多くの種類の別個のシール装置を用意しなければならず、非効率的であるとともに生産効率等の低下ももたらし、シール装置はもとよりこれを用いた製品のコストの上昇にもつながっていた。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、組立てが容易でシール部の傾斜角度や隙間を容易に設定、調整及びコントロールすることが可能なリーフシール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のリーフシール装置は、外周側の連結保持部と内周側のシール部とを有する薄板状のシール板を、前記連結保持部を重ね合わせることにより複数連結して中心に回転軸を嵌合可能に環状に形成したリーフシールを有し、ケーシングと当該ケーシングに形成された貫通孔を通過する回転軸との間を仕切って被密封流体をシールするリーフシール装置であって、前記連結保持部は前記シール板の外周側端部に形成され、前記リーフシールの低圧側に配設され、前記連結保持部を保持する固着部と、前記リーフシールが被密封流体の圧力で変形しないように当該リーフシールを支持する支持面とを有する背板と、前記リーフシールの高圧側に配設され前記背板とともに前記リーフシールを挟持する保持板とをさらに有し、前記連結保持部は前記背板の前記固着部とともに一体化されて、当該リーフシール装置を前記ケーシングの前記貫通孔の内周面に取り付けるための固定部を構成し、前記各シール板は、前記連結保持部と前記シール部との境界において、前記連結保持部と前記シール部とが所定の角度をなすように折り曲げ状態に形成されており、前記各シール板の前記連結保持部は、前記リーフシールの周方向及び径方向に対して各々所定の角度で傾斜した状態で順次積層されて連結されており、前記各シール板の前記シール部は、前記連結保持部との前記境界から内周側に向かって、前記周方向に対して所定の角度で傾斜するように配設されており、前記各シール板は、前記連結保持部と前記シール部との境界においてのみ前記折り曲げ加工が施されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成のリーフシール装置によれば、シール部の傾斜角度や隙間を容易に設定及びコントロールすることが可能なリーフシール装置を提供することができる。
【0008】
好適には、本発明のリーフシール装置は、前記各シール板の前記連結保持部は、前記薄板状のシール板が外周側の端辺で折り返された二重に重ねあわされた状態に形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成のリーフシール装置によれば、シール部の傾斜が大きい場合やシール部間に十分な隙間が必要な場合にも、これに対応した適切なリーフシール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の参考例としてのリーフシール装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すリーフシール装置のリーフシールを示す図である。
【図3】図3は、図1に示すリーフシール装置を内径側から見た図である。
【図4】図4は、図2に示すシール板の第1の折り曲げ部及び第2の折り曲げ部付近の拡大図である。
【図5】図5は、図2に示したリーフシールにおいて、第1の折り曲げ部の屈曲角度に応じてシール部のピッチ及び隙間が変化する状態を示す図であって、図5(A)は、第1の折り曲げ部の屈曲角度が相対的に大きい場合のピッチ及び隙間の状態を示す図であり、図5(B)は、第1の折り曲げ部の屈曲角度が相対的に小さい場合のピッチ及び隙間の状態を示す図である。
【図6】図6は、本発明の他の参考例としてのシール板の構成を示す図である。
【図7】図7は、図6に示したリーフシールにおいて、第1の折り曲げ部の屈曲角度に応じてシール部のピッチ及び隙間が変化する状態を示す図であって、図7(A)は、第1の折り曲げ部の屈曲角度が相対的に大きい場合のピッチ及び隙間の状態を示す図であり、図7(B)は、第1の折り曲げ部の屈曲角度が相対的に小さい場合のピッチ及び隙間の状態を示す図である。
【図8】図8(A)は、本発明の一実施形態としての、連結保持部に折り曲げ部が形成されない構成のシール板を示す第1の図であって、シール板の連結保持部側の端部付近を示す図であり、図8(B)は、図8(A)と同様に本発明の一実施形態としての、連結保持部に折り曲げ部が形成されない構成のシール板を示す第2の図であって、シール板の連結保持部側の端部付近を示す図である。
【図9】図9(A)は、本発明の他の実施形態としての、連結保持部に折り曲げ部が形成されておらず外周側の端部において折り返されているシール板を示す第1の図であって、シール板の連結保持部側の端部付近を示す図であり、図9(B)は、本発明の他の実施形態としての、連結保持部に折り曲げ部が形成されておらず外周側の端部において折り返されているシール板を示す第2の図であって、シール板の連結保持部側の端部付近を示す図である。
【図10】図10は、本発明の他の参考例としてのリーフシールの構成を示す図である。
【図11】図11は、本発明のさらに他の参考例としてのリーフシールの構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の参考例
まず、本発明の参考例としてのリーフシール装置について、図1〜図5を参照して説明する。
本参考例においては、蒸気タービンやガスタービンに用いられ、ケーシングに形成された貫通孔と当該貫通孔を通過する回転軸との間を仕切ってガス等の被密封流体をシールするリーフシール装置について説明する。
【0012】
まず、そのリーフシール装置の全体構成について図1〜図3を参照して説明する。
図1は、そのリーフシール装置1の全体構成を示す半断面図であり、図2は、図1に示したリーフシール装置1のリーフシール10のシール板12の構成を示す斜視図であり、図3は、リーフシール装置1を内径側から見た図である。
リーフシール装置1は、全体がリング状に形成されて、図1に示すように回転軸60が貫通するケーシング50の貫通孔の内周面52に形成された溝51に設置され、ケーシング50と回転軸60との間隙において高圧P1側と低圧P2側とをシールする。
【0013】
リーフシール装置1は、リーフシール10、背板41及び保持板45を有する。
リーフシール10は、図2に示すように複数(多数)のシール板12が重ね合わせられて全体が環状に形成され、これが回転軸60の周方向に沿って配置されたものである。
【0014】
シール板12の各々は、連結保持部21とシール部31から構成される。
連結保持部21は、複数のシール板12を相互に連結されるための箇所であるとともに、背板41及び固着部42(図1参照)とともに一体化されてリーフシール装置1の固定部40を構成する。また、本参考例のリーフシール装置1において、連結保持部21は、後述するようにシール部31のピッチ及び間隙を所望の値とする機能及び作用を有する。
シール部31は、連結保持部21から回転軸60方向に延伸して、その先端の自由端部32が、図3に示すように、回転軸60の外周面に接触又は近接するように配置される。これにより、シール部31は、ケーシング50と回転軸60との間を軸方向にシールする。
【0015】
各シール板12は、図1及び図2に示すように、薄板状部材を、連結保持部21の中間部分の第1の折り曲げ部22、及び、連結保持部21とシール部31との境界部分の第2の折り曲げ部30で、例えばプレス加工により各々所定の角度に折り曲げることにより形成される。
シール板12のこのような形状、すなわち、第1の折り曲げ部22を有する連結保持部21、折り曲げ部30及びシール部31の構成については後に詳細に説明する。
【0016】
背板41は、図1に示すように、リーフシール10の低圧P2側、すなわちリーフシール10の被密封流体が作用する面の反対側に、リーフシール10を支持するように配設されるリング状の部材である。背板41は、リーフシール10の連結保持部21を保持する固着部42と、被密封流体の圧力が作用した際にリーフシール10が極端に曲げられないように支持する支持面43とを有する。背板41は、リーフシール10が被密封流体の圧力を受けても変形しないように、リーフシール10を支持面43により支持している。
【0017】
保持板45は、リーフシール10の高圧P1側に、すなわちリーフシール10の被密封流体が作用する面側に、背板41とともにリーフシール10を挟持するように配設されるリング状の部材である。本参考例において保持板45は、その円環部分の幅が、背板41の円環部分の幅よりも小さい幅で、シール板12の連結保持部21が配設される範囲に相当する幅に形成されている。保持板45は、背板41と協働してリーフシール10を保持する。
なお、保持板45の円環部分の幅は、背板41の円環部分の幅に近い幅にしてもよい。
【0018】
これら背板41の固着部42、リーフシール10の連結保持部21、及び、保持板45は、溶接等により一体に結合されており、全体としてリーフシール装置1の固定部40を形成している。
リーフシール装置1は、前述したように、この固定部40がケーシング50の貫通孔の内周面52に設けられた溝51等の固着部に取り付けられることにより、ケーシング50に設置される。リーフシール10のシール部31の内周端部の自由端部31は、回転軸60の外周面に接触又は近接した状態に嵌合して配置される。
【0019】
リーフシール10のシール板12、背板41及び保持板45の材料は、被密封流体の種類、温度、あるいはその他の条件によって任意の材質を選定してよいが、一般的かつ好適には、鋼板、ステンレス板、ニッケル合金板、コバルト合金板、アルミニウム板、あるいはその他の非鉄金属等により形成される。これらの材料は、ケーシング50の線膨張係数に合わせて選定することが好ましい。
【0020】
次に、リーフシール10を構成する各シール板12の構成、及び、シール板12を積層してリーフシール10を形成する方法について、さらに図4、図5(A)及び図5(B)を参照して詳述する。
図4は、図2に示したリーフシール10のシール板12の、第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30付近の拡大図である。
【0021】
前述したように、リーフシール10のシール板12の各々は、外周側に配置される連結保持部21と、内周側に回転軸60と接触又は近接して配置されるシール部31とを有する。連結保持部21及びシール部31は、1枚の薄板状の部材(シール板)が、第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30においてプレス加工等により折り曲げられて(屈曲されて)形成される。第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30は、いずれも、折り曲げた稜線がリーフシール装置1の軸方向(回転軸60の軸方向)に平行となり、折り曲げ方向がリーフシール装置1の周方向(回転軸60の周方向)となるように折り曲げ加工される。
【0022】
本参考例においては、第1の折り曲げ部22と第2の折り曲げ部30との折り曲げる方向は、図示のごとく周方向において反対向きである。すなわち、図4に示すように、シール板12を縁側面方向からの断面で見た時には、その断面形状がジグザグとなるように、第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30は加工される。
【0023】
リーフシール装置1のリーフシール10は、このような構成の同一形状のシール板12を多数連結して構成する。シール板12の連結は、シール板12の外周側の連結保持部21を積層することにより、すなわち順次重ね合わせることにより行う。
図4に示すように、シール板12の連結保持部21は、その中間部分の第1の折り曲げ部22により周方向に折り曲げられており、径方向には図示のごとく凹部(凸部)が形成されている。従って、連結保持部21のこの凹部を隣接するシール板12の連結保持部21の凸部(凹部の裏面)に順次重ね合わせて行けば、順次隣接するシール板12は各々相互に径方向に嵌合した状態となり、径方向の位置が規定される。すなわち、複数のシール板12の連結保持部21を順次嵌め合わせて重ねて行くことにより、複数のシール板12の径方向の位置は特定の位置に決定され、また、これを順次リング状に重ね合わせて行くことにより、シール板12の集合体としてのリーフシール10も容易に形成される。
【0024】
このように構成したリーフシール10においては、図4に示すように、各シール板12の第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30を結ぶ線a及びbは、各々回転軸60及びリーフシール装置1と同心の円となる(以下、このような線a及びbを周線と称する)。なお、円環状のリーフシール10のごく一部のシール板12のみを参照して説明をする時には、円(周線)a及びbは、図4に示すように、ほぼ直線とみなして差し支えない。また、その場合、径の異なるこれら2つの円a及びbは、平行線とみなすことができる。
【0025】
そしてこのような円(周線)a及び(周線)bを想定した場合には、シール板12の形状、すなわち第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30の折れ曲がりの形状は、図示のごとく、周線a及びbに対する角度θ1及びθ2により規定することができる。
すなわち、連結保持部21の形状は、図4に示すように、第1の折り曲げ部22を形成する連結保持部21の外周側の面23及び内周側の面24が各々周線aに対してなす角度θ2により規定することができる。
また、シール部31の形状は、シール部31の面の周線bに対してなす角度θ1により規定することができる。
なお、角度θ2を屈曲角度、角度θ1を傾斜角度と称する場合もある。
【0026】
そして、本参考例のリーフシール装置1においては、シール板12の板厚tと、シール板12の第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30における屈曲角度θ2及び傾斜角度θ1を制御することにより、シール部31の隙間を所望の長さにコントロールすることができる。
【0027】
すなわち、図4に示すように、連結保持部21の内周側の面24が周線aとなす角度をθ2、シール部31の面が周線bとなす角度をθ1、シール板12の板厚をtとすると、シール部31の周線b上におけるピッチPは、次式(1)により規定される。
【0028】
P=t/sinθ2 …(1)
【0029】
また、各シール板12の隙間Gは、次式(2)により規定される。
【0030】
G=P×sinθ1−t …(2)
【0031】
従って、シール板12の板厚tが一定の時には、連結保持部21の第1の折り曲げ部22における屈曲角度θ2、及び、第2の折り曲げ部30におけるシール部31の傾斜角度θ1によって、シール部31のピッチ及びシール部31間の隙間を調整することができる。
【0032】
具体的には、例えばシール板12の板厚t及びシール部31の傾斜θ1を同一にするという条件において、図5(A)に示すように、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度がθ2aである時に、ピッチPa及び隙間Gaが得られていたとすると、図5(B)に示すように、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2をθ2aより小さいθ2b(θ2b<θ2a)に変化させると、シール部31のピッチPbは図5(A)に示した場合のピッチPaよりも大きくなり(Pb>Pa)、また、シール部31の隙間Gbも図5(A)に示した隙間Gaよりも大きくなる(Gb>Ga)。すなわち、このように連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2を変更することにより、シール部31のピッチP及びシール部31の隙間Gを調整することができる。
【0033】
このように、本参考例のリーフシール装置1においては、シール板12のシール部31は、第2の折り曲げ部30により連結保持部21に対して折り曲げられており、これによりシール部31は、回転軸60の外周面に対して回転軸60の回転方向において傾斜して装着される。そして、第2の折り曲げ部30によるシール部31の傾斜角度θ1、及び、各シール部31のピッチPあるいは間隔(隙間)Gは、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2を調整することにより、容易に所望の値に設定することができる。すなわち、軸の回転速度、軸の偏心の大きさ、あるいは、軸の揺動状態等に基づいた所望の値にすることができる。
【0034】
なお、シール板12の寸法は、適用対象の装置(本参考例では、具体的にはケーシング50及び軸60)の大きさ等に応じて任意の寸法としてよいが、汎用的なリーフシール装置1として好適な一例としては、厚さ:0.05〜0.5mm、長さ:20.0〜100.0mm、幅:3.0〜10.0mmというような寸法である。なお、本参考例においては、シール板12の長さは30.0mmで、幅は5.0mmである。また、シール板12の厚さは0.1mmである。
また、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の折り曲げ角度θ2及び、シール部31の傾斜角度θ1は任意に設定してよいが、好適な一例としては、シール部31の傾斜角度θ1は30°〜80°であり、好ましくは、40°〜78°である。
【0035】
第2の参考例
上述の第1の参考例のリーフシール10においては、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2が、シール部31の傾斜角度θ1よりも小さければ、シール部31の間には隙間が生じる。例えば、シール部31の傾斜角度θ1が45°以上の場合には、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2が45°以下で隙間は生じる。
しかしながら、シール部31の傾斜角度θ1を例えば45°以下というようにより小さくしたい場合、あるいは、シール部31の間にさらに大きな隙間が必要な場合がある。
そのような場合に用いて好適なリーフシールについて、本発明の第2の参考例として図6、図7(A)及び図7(B)を参照して説明する。
【0036】
図6は、本発明の第2の参考例としてのリーフシール10bシール板12bの構成を示す図である。
図6に示すリーフシール10bにおいては、シール板12bがその外周側の端部において折り返されており、連結保持部21bは、シール板12bが二重に構成されている。
【0037】
図6に示す構成のリーフシール10bにおいては、連結保持部21bの板厚が2倍になったと考えることができる。従って、図4に示した場合と同様に、連結保持部21bの内周側の面24bが周線aとなす角度をθ2、シール部31が周線bとなす角度をθ1、シール板12の板厚をtとすると、シール部31bの周線b上におけるピッチP’は、次式(3)により規定される。
【0038】
P’=2×t/sinθ2 …(3)
=2×P
【0039】
すなわち、シール部31bのピッチP’は、第1の参考例に示した連結保持部21においてシール板12を折り返さないリーフシール10のピッチPと比較すると2倍になる。
そして、リーフシール10bにおけるシール部31の隙間G’は、次式(4)により規定されることとなり、シール部31bの隙間G’は、第1の参考例に示した連結保持部21においてシール板12を折り返さないリーフシール10の隙間Gと比較して2倍以上となる。
【0040】
G’=P’×sinθ1−t …(4)
=2×P×sinθ1−t
=2G+t
【0041】
従って、シール部31bの傾斜角度θ1を例えば45°以下というようにより小さくしたい場合、あるいは、シール部31bの間にさらに大きな隙間が必要な場合には、図6に示すように、シール板12bを折り返してシール板12bを二重にして連結保持部21bを構成すればよい。
【0042】
そして、このような構成のリーフシール10bにおいても、連結保持部21bの第1の折り曲げ部22bにおける折り曲げ角度θ2、及び、第2の折り曲げ部30bにおけるシール部31bの傾斜角度θ1によって、シール部31bのピッチP’及びシール部31b間の隙間G’を調整することができる。
【0043】
具体的には、図7(A)に示すように、例えば連結保持部21bの第1の折り曲げ部22bが屈曲角度θ2aの時にシール部31bがピッチP’a及び隙間G’aに構成されていたとすると、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の折り曲げ角度θ2をθ2aより小さいθ2b(θ2b<θ2a)とすると、図7(B)に示すように、シール部31bのピッチP’bは図7(A)に示した場合のピッチP’aよりも大きくなり(P’b>P’a)、また、シール部31bの隙間G’bも図7(A)に示した隙間G’aよりも大きくなる(G’b>G’a)となる。すなわち、このように連結保持部21bの第1の折り曲げ部22bの屈曲角度θ2を変更することにより、シール部31bのピッチP’及びシール部31bの隙間G’を調整することができる。
【0044】
このような構成のリーフシール10bにおいても、連結保持部21bには第1の折り曲げ部22bが形成されており、複数のシール板12bの連結保持部21bを順次嵌め合わせて重ね合わせて行くことにより、シール板12bの集合体としてのリーフシール10bを容易に形成することができる。
【0045】
本発明の実施形態
前述したリーフシール10、10bは、いずれも、連結保持部21、21bに第1の折り曲げ部22、22bが形成されており、この折り曲げ部22、22bを順次嵌め合わせて重ね合わせて行くことにより、シール板12、12bの集合体としてのリーフシール10、10bを容易に形成することができるものであった。しかしながら、本願発明の趣旨は、シール部31、31bにつながる連結保持部21、21b(内周側の面24、24b)をシール板の整列方向(周線bの方向)に対して傾斜した面に形成することにより、この角度を調整することでシール部10、10bの各シール板12、12bのピッチPや隙間Gを容易に調整することができることにある。従って、連結保持部21、21bに折り曲げ部22、22bが形成されない構成とすることも可能である。そのような構成のリーフシールについて、本願発明の実施形態として、図8(A)、図8(B)、図9(A)及び図9(B)を参照して説明する。
【0046】
図8(A)は、本発明の一実施形態としてのリーフシール10cの構成を示す図であって、連結保持部21c側の端部付近を示す図である。
図8(A)に示すように、リーフシール10cの各シール板12cは、連結保持部21cとシール部31cとを有し、その境界部分に折り曲げ部30cが形成されている。シール板12cは、薄板状部材を例えばプレス加工により折り曲げ部30cで所望の角度に折り曲げることにより形成される。図4を参照して明らかなように、前述した第1の参考例のシール板12と異なる点は、連結保持部21cに折り曲げ部22が形成されていない点にある。すなわち、本実施形態の連結保持部21cは、第1の参考例のシール板12の連結保持部21の内周側傾斜面24のみが具備された構成と言うことができる。
【0047】
本実施形態のリーフシール10cにおいて、シール板12cは、複数のシール板12cの連結保持部21cが図示のごとくリーフシール10cの周線bに対して傾斜して積層されており、第1の参考例のシール部10と同様に、連結保持部21cが背板41と保持板45(図1参照)との間に挟持されて、リング状のリールシール10に形成される。
【0048】
このような構成のリーフシール10cにおいても、シール板12cの板厚t、折り曲げ部30cにおけるリーフシール10cの周線bに対する連結保持部21cの傾斜角度θ2、及び、シール部30cの傾斜角度θ1を制御することにより、シール部31cのピッチP及び隙間Gを所望の長さにコントロールすることができる。すなわち、シール部31cの周線b上におけるピッチPは、前述した式(1)により規定され、シール板12c間の隙間Gは、前述した式(2)により規定される。
【0049】
その結果、シール板12cの板厚tが一定の時には、折り曲げ部30cにおける連結保持部21cの傾斜角度θ2、及び、シール部31cの傾斜角度θ1によって、シール部31cのピッチ及びシール部31c間の隙間を調整することができる。
【0050】
このような構成の本発明の一実施形態のリーフシール10cは、シール部31cのピッチ及びシール部31c間の隙間を、シール板12cの板厚t、あるいは、連結保持部21c及びシール部31cの傾斜角度を変更することにより容易に調整することができる。
連結保持部21cに折り曲げ部が形成されていないために、多数のシール板12cを積層配置する際の容易さは第1の参考例のリーフシール10の方が優れていると考えられるものの、その分、本実施形態のリーフシール10cにおいては、構造を簡単にすることができる。第1の参考例のリーフシール10においては、シール板12を2箇所でプレス加工等により折り曲げる必要があったが、本実施形態のリーフシール10cにおいては、1箇所のみ折り曲げ加工すればよい。従って、本実施形態のリーフシールは、その点において構成及び製造工程を簡略化することができる。
【0051】
図8(B)に示すリーフシール10c’は、図8(A)に示したリーフシール10cと同様に、連結保持部21c’に折り曲げ部(22(図1等参照))が形成されない構成のリーフシールである。図8(B)に示すリーフシール10c’は、周線bに対する連結保持部21c’の傾斜角度が、換言すれば折り曲げ部30c’における折り曲げ角度(連結保持部21c’とシール部31c’との成す角度)とシール板12c’の積層形態(積層位置)が、図8(A)に示したリーフシール10cとは異なる。図8(A)に示すリーフシール10cは、連結保持部21cと周線bとの成す角度(θ2)が鋭角となる方向と、シール部31cと周線bとの成す角度(θ1)が鋭角となる方向とが周線b上の同一方向であるが、図8(B)に示すリーフシール10c’は、連結保持部21c’と周線bとの成す角度(θ2)が鋭角となる方向と、シール部31c’と周線bとの成す角度(θ1)が鋭角となる方向とが周線b上の反対方向となっている。
【0052】
このような構成のリーフシール10c’においても、リーフシール10c’の周線bに対する連結保持部21c’の傾斜角度θ2を図示のごとく規定することにより、シール部31c’の周線b上におけるピッチPは、前述した式(1)により決定され、シール板12c’間の隙間Gは前述した式(2)により決定される。
従って、前述した実施形態のリーフシールと同様に、シール部31c’のピッチ及びシール部31c’間の隙間を、シール板12c’の板厚t、あるいは、連結保持部21c’及びシール部31c’の傾斜角度を変更することにより容易に調整することができる。また、図8(A)に示したリーフシール10cと同様に、構成及び製造工程を簡略化することができる。
【0053】
本発明の他の実施形態
また、図9(A)は、本発明の他の実施形態としてのリーフシール10dの構成を示す図であって、連結保持部21d側の端部付近を示す図である。
図9(A)に示すリーフシール10dは、図8(A)及び図8(B)を参照して前述したリーフシール10c、10c’と同様に、連結保持部21dには折り曲げ部は形成されておらず、連結保持部21dとシール部31dとの境界部分の1箇所にのみ折り曲げ部30dが形成されている構成である。そして、本実施形態のリーフシール10dにおいては、シール板12dがその外周側の端部において折り返されており、連結保持部21dは、シール板12dが二重に構成されている。
【0054】
連結保持部21dに折り曲げ部を形成しない構成においても、このように連結保持部21dにおいてシール板12dを折り曲げることで、板厚を2倍にした構成とすることができる。この場合、シール部31dの周線b上におけるピッチP’は、前述した式(3)により規定され、シール板12d間の隙間G’は、前述した式(4)により規定され、前述した第2の参考例のリーフシール10b(図6、図7(A)及び図7(B)参照)と同様に、シール部31dのピッチP’は、連結保持部21dにおいてシール板12dを折り返さない場合のピッチPと比較すると2倍になり、シール部31dの隙間G’は、連結保持部21dにおいてシール板12dを折り返さない場合の隙間Gと比較して2倍以上となる。
【0055】
このように、図9(A)に示すリーフシール10dにおいても、シール部31dのピッチ及びシール部31d間の隙間を、シール板12dの板厚t、あるいは、連結保持部21d及びシール部31dの傾斜角度を変更することにより容易に調整することができる。
そして、特に本実施形態のリーフシール10dにおいては、シール部31dの傾斜角度θ1を例えば45°以下というようにより小さくしたい場合、あるいは、シール部31dの間にさらに大きな隙間が必要な場合には、シール板12dを折り返してシール板12dを二重にして連結保持部21dに用いればよく、好適である。
【0056】
そして、前述した実施形態のリーフシール10c、10c’と同様に、連結保持部21dに折り曲げ部が形成されていないために、構造を簡単にすることができる。また、第2の参考例のリーフシール10bにおいては、シール板12bを2箇所でプレス加工等により折り曲げる必要があったが、本実施形態のリーフシール10dにおいては、1箇所のみ折り曲げ加工すればよい。従って、本実施形態のリーフシールは、その点において構成及び製造工程を簡略化することができる。
【0057】
また、図9(B)に示すリーフシール10d’は、図9(A)に示したリーフシール10dと同様に、連結保持部21d’には折り曲げ部(22(図1等参照))が形成されていないものの、シール板12d’の外周側の端部において薄板が折り返されており、連結保持部21d’はシール板12d’が二重に構成されているリーフシールである。そして、図9(B)に示すリーフシール10d’は、周線bに対する連結保持部21d’の傾斜角度が、換言すれば折り曲げ部30d’における折り曲げ角度(連結保持部21d’とシール部31d’との成す角度)とシール板12d’の積層形態(積層位置)が、図9(A)に示したリーフシール10dとは異なる。図9(A)に示すリーフシール10dは、連結保持部21dと周線bとの成す角度(θ2)が鋭角となる方向と、シール部31dと周線bとの成す角度(θ1)が鋭角となる方向とが周線b上の同一方向であるが、図9(B)に示すリーフシール10d’は、連結保持部21d’と周線bとの成す角度(θ2)が鋭角となる方向と、シール部31d’と周線bとの成す角度(θ1)が鋭角となる方向とが周線b上の反対方向となっている。
【0058】
このような構成のリーフシール10d’においても、リーフシール10d’の周線bに対する連結保持部21d’の傾斜角度θ2を図示のごとく規定することにより、シール部31d’の周線b上におけるピッチPは、前述した式(3)により決定され、シール板12d’間の隙間Gは前述した式(4)により決定される。
従って、前述した各実施形態のリーフシールと同様に、シール部31d’のピッチ及びシール部31d’間の隙間を、シール板12d’の板厚t、あるいは、連結保持部21d’及びシール部31d’の傾斜角度を変更することにより容易に調整することができる。また、図9(A)に示したリーフシール10dと同様に、構成及び製造工程を簡略化することができる。
【0059】
変形例
なお、前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって本発明を何ら限定するものではない。本実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含み、また任意好適な種々の改変が可能である。
【0060】
また、前述した第1の参考例及び第2の参考例においては、リーフシール(10、10b)の各シール板(12、12b)の第1の折り曲げ部(22、22b)と第2の折り曲げ部(30、30b)とにおけるシール板を折り曲げる方向は、図2、4、6等に示すように、いずれも周方向において反対向きであった。しかしながら、第1の折り曲げ部(22、22b)と第2の折り曲げ部(30、30b)の折り曲げる方向は、周方向の同じ向きであってもよい。
【0061】
連結保持部の第1の折り曲げ部における折り曲げ加工と、シール部の第2の折り曲げ部における折り曲げ加工とが、周方向の同じ方向であるようなリーフシール10e及び10fを図10及び図11に示す。図10は、連結保持部21eがシール板の単板で構成されいてるリーフシール10eを示す図であり、図11は、連結保持部21fがシール板12fが折り返されて二重に構成されているリーフシール10fを示す図である。
図10及び図11に示す形態においても、連結保持部21e,21f及び21e、21fには第1の折り曲げ部22e、22fが形成されており、複数のシール板12e、fの連結保持部21e、21fを順次嵌め合わせて重ね合わせて行くことにより、シール板12e、12fの集合体としてのリーフシール10e、10fを容易に形成することができる。また、連結保持部21e、21fの第1の折り曲げ部22e、22fの屈曲角度θ2及びシール部31e、31fの傾斜角度θ1を制御することにより、シール部31e、31fの隙間を所望の長さにコントロールすることができる。
【0062】
また、前述したリーフシール装置は、保持板と背板との間にリーフシールが挟持される構成であったが、保持板及び背板を設けることなくリーフシールのみをケーシングの取付部に設置する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、航空機エンジン、ガスタービン等の回転軸周りの相対移動する2構成部品間をシールする任意の装置に適用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、航空機エンジン、ガスタービン等に適用され、回転軸周りで相対移動する2構成部品間をシールするリーフシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄板状の部材を積層してリング状に構成したシール装置としては、例えば日本国特許出願公開2003−294153号公報(特許文献1)に開示されている板ブラシシール装置が知られている。日本国特許出願公開2003−294153号公報に開示されている板ブラシシール装置は、多数のシール板が全体が環状をなすように軸の周方向に沿って積層されたものであり、その外周側の取付部においては、間隔保持部たるスペーサを介在させながら各シール板の外周側端部が重ね合わせて整列されている。また、内周側のシール部は、取付部との境界において折り曲げられて、軸の周面に対して所定の傾斜角度で傾斜して配設されている。このような構成により、日本国特許出願公開2003−294153号公報に開示の板ブラシシール装置は、シール部の接面状態を適切にして効果的なシールを行うとともに、薄板を容易に積層可能にして組立てが容易にできるようにしている。
【特許文献1】日本国特許出願公開2003−294153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの種のシール装置において、各シール板の内周側のシール部は、設置対象の装置、被密封流体の種類、温度あるいはその他の種々の条件に応じて、適宜好適な傾斜角度、ピッチあるいは隙間等に設定されて、回転軸の周面に接触又は近接するように配設されるのが望ましい。
しかしながら、従来のこの種の装置においては、シール部の傾斜角度や間隔は、構成上特定の角度や間隔に特定されている場合が多く、適用対象等に応じて任意に形態を設定あるいは調整できる構成にはなっていなかった。例えば、前述した日本国特許出願公開2003−294153号公報に開示されている装置においても、各シール板の取付部の間隔はスペーサ(間隔保持部)の厚さによって決まっており、従ってシール部の傾斜角度やピッチ等の配設形態、構成についても特定の形態に限定されており、これらを設置対象の条件等に応じて任意に設定したり調整したりすることはできなかった。
【0004】
従って、配設形態を変更したい場合や設置条件が異なる場合には、間隔保持部たるスペーサを交換せざるを得ず、すなわち環状に構成されたシール板を分解した後に再度シール板を積層して組立てる必要が生じ、非常に煩雑で面倒な作業が必要であった。しかも実際には、そのようなスペーサの交換のための分解作業等は非現実的であり、わずかな設置条件の変更に対してもシール装置自体を別個のシール装置に交換することになるという問題があった。また、そのため、わずかな設置条件の相違に対応するために非常に多くの種類の別個のシール装置を用意しなければならず、非効率的であるとともに生産効率等の低下ももたらし、シール装置はもとよりこれを用いた製品のコストの上昇にもつながっていた。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、組立てが容易でシール部の傾斜角度や隙間を容易に設定、調整及びコントロールすることが可能なリーフシール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のリーフシール装置は、外周側の連結保持部と内周側のシール部とを有する薄板状のシール板を、前記連結保持部を重ね合わせることにより複数連結して中心に回転軸を嵌合可能に環状に形成したリーフシールを有し、ケーシングと当該ケーシングに形成された貫通孔を通過する回転軸との間を仕切って被密封流体をシールするリーフシール装置であって、前記連結保持部は前記シール板の外周側端部に形成され、前記リーフシールの低圧側に配設され、前記連結保持部を保持する固着部と、前記リーフシールが被密封流体の圧力で変形しないように当該リーフシールを支持する支持面とを有する背板と、前記リーフシールの高圧側に配設され前記背板とともに前記リーフシールを挟持する保持板とをさらに有し、前記連結保持部は前記背板の前記固着部とともに一体化されて、当該リーフシール装置を前記ケーシングの前記貫通孔の内周面に取り付けるための固定部を構成し、前記各シール板は、前記連結保持部と前記シール部との境界において、前記連結保持部と前記シール部とが所定の角度をなすように折り曲げ状態に形成されており、前記各シール板の前記連結保持部は、前記リーフシールの周方向及び径方向に対して各々所定の角度で傾斜した状態で順次積層されて連結されており、前記各シール板の前記シール部は、前記連結保持部との前記境界から内周側に向かって、前記周方向に対して所定の角度で傾斜するように配設されており、前記各シール板は、前記連結保持部と前記シール部との境界においてのみ前記折り曲げ加工が施されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成のリーフシール装置によれば、シール部の傾斜角度や隙間を容易に設定及びコントロールすることが可能なリーフシール装置を提供することができる。
【0008】
好適には、本発明のリーフシール装置は、前記各シール板の前記連結保持部は、前記薄板状のシール板が外周側の端辺で折り返された二重に重ねあわされた状態に形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成のリーフシール装置によれば、シール部の傾斜が大きい場合やシール部間に十分な隙間が必要な場合にも、これに対応した適切なリーフシール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の参考例としてのリーフシール装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すリーフシール装置のリーフシールを示す図である。
【図3】図3は、図1に示すリーフシール装置を内径側から見た図である。
【図4】図4は、図2に示すシール板の第1の折り曲げ部及び第2の折り曲げ部付近の拡大図である。
【図5】図5は、図2に示したリーフシールにおいて、第1の折り曲げ部の屈曲角度に応じてシール部のピッチ及び隙間が変化する状態を示す図であって、図5(A)は、第1の折り曲げ部の屈曲角度が相対的に大きい場合のピッチ及び隙間の状態を示す図であり、図5(B)は、第1の折り曲げ部の屈曲角度が相対的に小さい場合のピッチ及び隙間の状態を示す図である。
【図6】図6は、本発明の他の参考例としてのシール板の構成を示す図である。
【図7】図7は、図6に示したリーフシールにおいて、第1の折り曲げ部の屈曲角度に応じてシール部のピッチ及び隙間が変化する状態を示す図であって、図7(A)は、第1の折り曲げ部の屈曲角度が相対的に大きい場合のピッチ及び隙間の状態を示す図であり、図7(B)は、第1の折り曲げ部の屈曲角度が相対的に小さい場合のピッチ及び隙間の状態を示す図である。
【図8】図8(A)は、本発明の一実施形態としての、連結保持部に折り曲げ部が形成されない構成のシール板を示す第1の図であって、シール板の連結保持部側の端部付近を示す図であり、図8(B)は、図8(A)と同様に本発明の一実施形態としての、連結保持部に折り曲げ部が形成されない構成のシール板を示す第2の図であって、シール板の連結保持部側の端部付近を示す図である。
【図9】図9(A)は、本発明の他の実施形態としての、連結保持部に折り曲げ部が形成されておらず外周側の端部において折り返されているシール板を示す第1の図であって、シール板の連結保持部側の端部付近を示す図であり、図9(B)は、本発明の他の実施形態としての、連結保持部に折り曲げ部が形成されておらず外周側の端部において折り返されているシール板を示す第2の図であって、シール板の連結保持部側の端部付近を示す図である。
【図10】図10は、本発明の他の参考例としてのリーフシールの構成を示す図である。
【図11】図11は、本発明のさらに他の参考例としてのリーフシールの構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の参考例
まず、本発明の参考例としてのリーフシール装置について、図1〜図5を参照して説明する。
本参考例においては、蒸気タービンやガスタービンに用いられ、ケーシングに形成された貫通孔と当該貫通孔を通過する回転軸との間を仕切ってガス等の被密封流体をシールするリーフシール装置について説明する。
【0012】
まず、そのリーフシール装置の全体構成について図1〜図3を参照して説明する。
図1は、そのリーフシール装置1の全体構成を示す半断面図であり、図2は、図1に示したリーフシール装置1のリーフシール10のシール板12の構成を示す斜視図であり、図3は、リーフシール装置1を内径側から見た図である。
リーフシール装置1は、全体がリング状に形成されて、図1に示すように回転軸60が貫通するケーシング50の貫通孔の内周面52に形成された溝51に設置され、ケーシング50と回転軸60との間隙において高圧P1側と低圧P2側とをシールする。
【0013】
リーフシール装置1は、リーフシール10、背板41及び保持板45を有する。
リーフシール10は、図2に示すように複数(多数)のシール板12が重ね合わせられて全体が環状に形成され、これが回転軸60の周方向に沿って配置されたものである。
【0014】
シール板12の各々は、連結保持部21とシール部31から構成される。
連結保持部21は、複数のシール板12を相互に連結されるための箇所であるとともに、背板41及び固着部42(図1参照)とともに一体化されてリーフシール装置1の固定部40を構成する。また、本参考例のリーフシール装置1において、連結保持部21は、後述するようにシール部31のピッチ及び間隙を所望の値とする機能及び作用を有する。
シール部31は、連結保持部21から回転軸60方向に延伸して、その先端の自由端部32が、図3に示すように、回転軸60の外周面に接触又は近接するように配置される。これにより、シール部31は、ケーシング50と回転軸60との間を軸方向にシールする。
【0015】
各シール板12は、図1及び図2に示すように、薄板状部材を、連結保持部21の中間部分の第1の折り曲げ部22、及び、連結保持部21とシール部31との境界部分の第2の折り曲げ部30で、例えばプレス加工により各々所定の角度に折り曲げることにより形成される。
シール板12のこのような形状、すなわち、第1の折り曲げ部22を有する連結保持部21、折り曲げ部30及びシール部31の構成については後に詳細に説明する。
【0016】
背板41は、図1に示すように、リーフシール10の低圧P2側、すなわちリーフシール10の被密封流体が作用する面の反対側に、リーフシール10を支持するように配設されるリング状の部材である。背板41は、リーフシール10の連結保持部21を保持する固着部42と、被密封流体の圧力が作用した際にリーフシール10が極端に曲げられないように支持する支持面43とを有する。背板41は、リーフシール10が被密封流体の圧力を受けても変形しないように、リーフシール10を支持面43により支持している。
【0017】
保持板45は、リーフシール10の高圧P1側に、すなわちリーフシール10の被密封流体が作用する面側に、背板41とともにリーフシール10を挟持するように配設されるリング状の部材である。本参考例において保持板45は、その円環部分の幅が、背板41の円環部分の幅よりも小さい幅で、シール板12の連結保持部21が配設される範囲に相当する幅に形成されている。保持板45は、背板41と協働してリーフシール10を保持する。
なお、保持板45の円環部分の幅は、背板41の円環部分の幅に近い幅にしてもよい。
【0018】
これら背板41の固着部42、リーフシール10の連結保持部21、及び、保持板45は、溶接等により一体に結合されており、全体としてリーフシール装置1の固定部40を形成している。
リーフシール装置1は、前述したように、この固定部40がケーシング50の貫通孔の内周面52に設けられた溝51等の固着部に取り付けられることにより、ケーシング50に設置される。リーフシール10のシール部31の内周端部の自由端部31は、回転軸60の外周面に接触又は近接した状態に嵌合して配置される。
【0019】
リーフシール10のシール板12、背板41及び保持板45の材料は、被密封流体の種類、温度、あるいはその他の条件によって任意の材質を選定してよいが、一般的かつ好適には、鋼板、ステンレス板、ニッケル合金板、コバルト合金板、アルミニウム板、あるいはその他の非鉄金属等により形成される。これらの材料は、ケーシング50の線膨張係数に合わせて選定することが好ましい。
【0020】
次に、リーフシール10を構成する各シール板12の構成、及び、シール板12を積層してリーフシール10を形成する方法について、さらに図4、図5(A)及び図5(B)を参照して詳述する。
図4は、図2に示したリーフシール10のシール板12の、第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30付近の拡大図である。
【0021】
前述したように、リーフシール10のシール板12の各々は、外周側に配置される連結保持部21と、内周側に回転軸60と接触又は近接して配置されるシール部31とを有する。連結保持部21及びシール部31は、1枚の薄板状の部材(シール板)が、第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30においてプレス加工等により折り曲げられて(屈曲されて)形成される。第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30は、いずれも、折り曲げた稜線がリーフシール装置1の軸方向(回転軸60の軸方向)に平行となり、折り曲げ方向がリーフシール装置1の周方向(回転軸60の周方向)となるように折り曲げ加工される。
【0022】
本参考例においては、第1の折り曲げ部22と第2の折り曲げ部30との折り曲げる方向は、図示のごとく周方向において反対向きである。すなわち、図4に示すように、シール板12を縁側面方向からの断面で見た時には、その断面形状がジグザグとなるように、第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30は加工される。
【0023】
リーフシール装置1のリーフシール10は、このような構成の同一形状のシール板12を多数連結して構成する。シール板12の連結は、シール板12の外周側の連結保持部21を積層することにより、すなわち順次重ね合わせることにより行う。
図4に示すように、シール板12の連結保持部21は、その中間部分の第1の折り曲げ部22により周方向に折り曲げられており、径方向には図示のごとく凹部(凸部)が形成されている。従って、連結保持部21のこの凹部を隣接するシール板12の連結保持部21の凸部(凹部の裏面)に順次重ね合わせて行けば、順次隣接するシール板12は各々相互に径方向に嵌合した状態となり、径方向の位置が規定される。すなわち、複数のシール板12の連結保持部21を順次嵌め合わせて重ねて行くことにより、複数のシール板12の径方向の位置は特定の位置に決定され、また、これを順次リング状に重ね合わせて行くことにより、シール板12の集合体としてのリーフシール10も容易に形成される。
【0024】
このように構成したリーフシール10においては、図4に示すように、各シール板12の第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30を結ぶ線a及びbは、各々回転軸60及びリーフシール装置1と同心の円となる(以下、このような線a及びbを周線と称する)。なお、円環状のリーフシール10のごく一部のシール板12のみを参照して説明をする時には、円(周線)a及びbは、図4に示すように、ほぼ直線とみなして差し支えない。また、その場合、径の異なるこれら2つの円a及びbは、平行線とみなすことができる。
【0025】
そしてこのような円(周線)a及び(周線)bを想定した場合には、シール板12の形状、すなわち第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30の折れ曲がりの形状は、図示のごとく、周線a及びbに対する角度θ1及びθ2により規定することができる。
すなわち、連結保持部21の形状は、図4に示すように、第1の折り曲げ部22を形成する連結保持部21の外周側の面23及び内周側の面24が各々周線aに対してなす角度θ2により規定することができる。
また、シール部31の形状は、シール部31の面の周線bに対してなす角度θ1により規定することができる。
なお、角度θ2を屈曲角度、角度θ1を傾斜角度と称する場合もある。
【0026】
そして、本参考例のリーフシール装置1においては、シール板12の板厚tと、シール板12の第1の折り曲げ部22及び第2の折り曲げ部30における屈曲角度θ2及び傾斜角度θ1を制御することにより、シール部31の隙間を所望の長さにコントロールすることができる。
【0027】
すなわち、図4に示すように、連結保持部21の内周側の面24が周線aとなす角度をθ2、シール部31の面が周線bとなす角度をθ1、シール板12の板厚をtとすると、シール部31の周線b上におけるピッチPは、次式(1)により規定される。
【0028】
P=t/sinθ2 …(1)
【0029】
また、各シール板12の隙間Gは、次式(2)により規定される。
【0030】
G=P×sinθ1−t …(2)
【0031】
従って、シール板12の板厚tが一定の時には、連結保持部21の第1の折り曲げ部22における屈曲角度θ2、及び、第2の折り曲げ部30におけるシール部31の傾斜角度θ1によって、シール部31のピッチ及びシール部31間の隙間を調整することができる。
【0032】
具体的には、例えばシール板12の板厚t及びシール部31の傾斜θ1を同一にするという条件において、図5(A)に示すように、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度がθ2aである時に、ピッチPa及び隙間Gaが得られていたとすると、図5(B)に示すように、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2をθ2aより小さいθ2b(θ2b<θ2a)に変化させると、シール部31のピッチPbは図5(A)に示した場合のピッチPaよりも大きくなり(Pb>Pa)、また、シール部31の隙間Gbも図5(A)に示した隙間Gaよりも大きくなる(Gb>Ga)。すなわち、このように連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2を変更することにより、シール部31のピッチP及びシール部31の隙間Gを調整することができる。
【0033】
このように、本参考例のリーフシール装置1においては、シール板12のシール部31は、第2の折り曲げ部30により連結保持部21に対して折り曲げられており、これによりシール部31は、回転軸60の外周面に対して回転軸60の回転方向において傾斜して装着される。そして、第2の折り曲げ部30によるシール部31の傾斜角度θ1、及び、各シール部31のピッチPあるいは間隔(隙間)Gは、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2を調整することにより、容易に所望の値に設定することができる。すなわち、軸の回転速度、軸の偏心の大きさ、あるいは、軸の揺動状態等に基づいた所望の値にすることができる。
【0034】
なお、シール板12の寸法は、適用対象の装置(本参考例では、具体的にはケーシング50及び軸60)の大きさ等に応じて任意の寸法としてよいが、汎用的なリーフシール装置1として好適な一例としては、厚さ:0.05〜0.5mm、長さ:20.0〜100.0mm、幅:3.0〜10.0mmというような寸法である。なお、本参考例においては、シール板12の長さは30.0mmで、幅は5.0mmである。また、シール板12の厚さは0.1mmである。
また、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の折り曲げ角度θ2及び、シール部31の傾斜角度θ1は任意に設定してよいが、好適な一例としては、シール部31の傾斜角度θ1は30°〜80°であり、好ましくは、40°〜78°である。
【0035】
第2の参考例
上述の第1の参考例のリーフシール10においては、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2が、シール部31の傾斜角度θ1よりも小さければ、シール部31の間には隙間が生じる。例えば、シール部31の傾斜角度θ1が45°以上の場合には、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の屈曲角度θ2が45°以下で隙間は生じる。
しかしながら、シール部31の傾斜角度θ1を例えば45°以下というようにより小さくしたい場合、あるいは、シール部31の間にさらに大きな隙間が必要な場合がある。
そのような場合に用いて好適なリーフシールについて、本発明の第2の参考例として図6、図7(A)及び図7(B)を参照して説明する。
【0036】
図6は、本発明の第2の参考例としてのリーフシール10bシール板12bの構成を示す図である。
図6に示すリーフシール10bにおいては、シール板12bがその外周側の端部において折り返されており、連結保持部21bは、シール板12bが二重に構成されている。
【0037】
図6に示す構成のリーフシール10bにおいては、連結保持部21bの板厚が2倍になったと考えることができる。従って、図4に示した場合と同様に、連結保持部21bの内周側の面24bが周線aとなす角度をθ2、シール部31が周線bとなす角度をθ1、シール板12の板厚をtとすると、シール部31bの周線b上におけるピッチP’は、次式(3)により規定される。
【0038】
P’=2×t/sinθ2 …(3)
=2×P
【0039】
すなわち、シール部31bのピッチP’は、第1の参考例に示した連結保持部21においてシール板12を折り返さないリーフシール10のピッチPと比較すると2倍になる。
そして、リーフシール10bにおけるシール部31の隙間G’は、次式(4)により規定されることとなり、シール部31bの隙間G’は、第1の参考例に示した連結保持部21においてシール板12を折り返さないリーフシール10の隙間Gと比較して2倍以上となる。
【0040】
G’=P’×sinθ1−t …(4)
=2×P×sinθ1−t
=2G+t
【0041】
従って、シール部31bの傾斜角度θ1を例えば45°以下というようにより小さくしたい場合、あるいは、シール部31bの間にさらに大きな隙間が必要な場合には、図6に示すように、シール板12bを折り返してシール板12bを二重にして連結保持部21bを構成すればよい。
【0042】
そして、このような構成のリーフシール10bにおいても、連結保持部21bの第1の折り曲げ部22bにおける折り曲げ角度θ2、及び、第2の折り曲げ部30bにおけるシール部31bの傾斜角度θ1によって、シール部31bのピッチP’及びシール部31b間の隙間G’を調整することができる。
【0043】
具体的には、図7(A)に示すように、例えば連結保持部21bの第1の折り曲げ部22bが屈曲角度θ2aの時にシール部31bがピッチP’a及び隙間G’aに構成されていたとすると、連結保持部21の第1の折り曲げ部22の折り曲げ角度θ2をθ2aより小さいθ2b(θ2b<θ2a)とすると、図7(B)に示すように、シール部31bのピッチP’bは図7(A)に示した場合のピッチP’aよりも大きくなり(P’b>P’a)、また、シール部31bの隙間G’bも図7(A)に示した隙間G’aよりも大きくなる(G’b>G’a)となる。すなわち、このように連結保持部21bの第1の折り曲げ部22bの屈曲角度θ2を変更することにより、シール部31bのピッチP’及びシール部31bの隙間G’を調整することができる。
【0044】
このような構成のリーフシール10bにおいても、連結保持部21bには第1の折り曲げ部22bが形成されており、複数のシール板12bの連結保持部21bを順次嵌め合わせて重ね合わせて行くことにより、シール板12bの集合体としてのリーフシール10bを容易に形成することができる。
【0045】
本発明の実施形態
前述したリーフシール10、10bは、いずれも、連結保持部21、21bに第1の折り曲げ部22、22bが形成されており、この折り曲げ部22、22bを順次嵌め合わせて重ね合わせて行くことにより、シール板12、12bの集合体としてのリーフシール10、10bを容易に形成することができるものであった。しかしながら、本願発明の趣旨は、シール部31、31bにつながる連結保持部21、21b(内周側の面24、24b)をシール板の整列方向(周線bの方向)に対して傾斜した面に形成することにより、この角度を調整することでシール部10、10bの各シール板12、12bのピッチPや隙間Gを容易に調整することができることにある。従って、連結保持部21、21bに折り曲げ部22、22bが形成されない構成とすることも可能である。そのような構成のリーフシールについて、本願発明の実施形態として、図8(A)、図8(B)、図9(A)及び図9(B)を参照して説明する。
【0046】
図8(A)は、本発明の一実施形態としてのリーフシール10cの構成を示す図であって、連結保持部21c側の端部付近を示す図である。
図8(A)に示すように、リーフシール10cの各シール板12cは、連結保持部21cとシール部31cとを有し、その境界部分に折り曲げ部30cが形成されている。シール板12cは、薄板状部材を例えばプレス加工により折り曲げ部30cで所望の角度に折り曲げることにより形成される。図4を参照して明らかなように、前述した第1の参考例のシール板12と異なる点は、連結保持部21cに折り曲げ部22が形成されていない点にある。すなわち、本実施形態の連結保持部21cは、第1の参考例のシール板12の連結保持部21の内周側傾斜面24のみが具備された構成と言うことができる。
【0047】
本実施形態のリーフシール10cにおいて、シール板12cは、複数のシール板12cの連結保持部21cが図示のごとくリーフシール10cの周線bに対して傾斜して積層されており、第1の参考例のシール部10と同様に、連結保持部21cが背板41と保持板45(図1参照)との間に挟持されて、リング状のリールシール10に形成される。
【0048】
このような構成のリーフシール10cにおいても、シール板12cの板厚t、折り曲げ部30cにおけるリーフシール10cの周線bに対する連結保持部21cの傾斜角度θ2、及び、シール部30cの傾斜角度θ1を制御することにより、シール部31cのピッチP及び隙間Gを所望の長さにコントロールすることができる。すなわち、シール部31cの周線b上におけるピッチPは、前述した式(1)により規定され、シール板12c間の隙間Gは、前述した式(2)により規定される。
【0049】
その結果、シール板12cの板厚tが一定の時には、折り曲げ部30cにおける連結保持部21cの傾斜角度θ2、及び、シール部31cの傾斜角度θ1によって、シール部31cのピッチ及びシール部31c間の隙間を調整することができる。
【0050】
このような構成の本発明の一実施形態のリーフシール10cは、シール部31cのピッチ及びシール部31c間の隙間を、シール板12cの板厚t、あるいは、連結保持部21c及びシール部31cの傾斜角度を変更することにより容易に調整することができる。
連結保持部21cに折り曲げ部が形成されていないために、多数のシール板12cを積層配置する際の容易さは第1の参考例のリーフシール10の方が優れていると考えられるものの、その分、本実施形態のリーフシール10cにおいては、構造を簡単にすることができる。第1の参考例のリーフシール10においては、シール板12を2箇所でプレス加工等により折り曲げる必要があったが、本実施形態のリーフシール10cにおいては、1箇所のみ折り曲げ加工すればよい。従って、本実施形態のリーフシールは、その点において構成及び製造工程を簡略化することができる。
【0051】
図8(B)に示すリーフシール10c’は、図8(A)に示したリーフシール10cと同様に、連結保持部21c’に折り曲げ部(22(図1等参照))が形成されない構成のリーフシールである。図8(B)に示すリーフシール10c’は、周線bに対する連結保持部21c’の傾斜角度が、換言すれば折り曲げ部30c’における折り曲げ角度(連結保持部21c’とシール部31c’との成す角度)とシール板12c’の積層形態(積層位置)が、図8(A)に示したリーフシール10cとは異なる。図8(A)に示すリーフシール10cは、連結保持部21cと周線bとの成す角度(θ2)が鋭角となる方向と、シール部31cと周線bとの成す角度(θ1)が鋭角となる方向とが周線b上の同一方向であるが、図8(B)に示すリーフシール10c’は、連結保持部21c’と周線bとの成す角度(θ2)が鋭角となる方向と、シール部31c’と周線bとの成す角度(θ1)が鋭角となる方向とが周線b上の反対方向となっている。
【0052】
このような構成のリーフシール10c’においても、リーフシール10c’の周線bに対する連結保持部21c’の傾斜角度θ2を図示のごとく規定することにより、シール部31c’の周線b上におけるピッチPは、前述した式(1)により決定され、シール板12c’間の隙間Gは前述した式(2)により決定される。
従って、前述した実施形態のリーフシールと同様に、シール部31c’のピッチ及びシール部31c’間の隙間を、シール板12c’の板厚t、あるいは、連結保持部21c’及びシール部31c’の傾斜角度を変更することにより容易に調整することができる。また、図8(A)に示したリーフシール10cと同様に、構成及び製造工程を簡略化することができる。
【0053】
本発明の他の実施形態
また、図9(A)は、本発明の他の実施形態としてのリーフシール10dの構成を示す図であって、連結保持部21d側の端部付近を示す図である。
図9(A)に示すリーフシール10dは、図8(A)及び図8(B)を参照して前述したリーフシール10c、10c’と同様に、連結保持部21dには折り曲げ部は形成されておらず、連結保持部21dとシール部31dとの境界部分の1箇所にのみ折り曲げ部30dが形成されている構成である。そして、本実施形態のリーフシール10dにおいては、シール板12dがその外周側の端部において折り返されており、連結保持部21dは、シール板12dが二重に構成されている。
【0054】
連結保持部21dに折り曲げ部を形成しない構成においても、このように連結保持部21dにおいてシール板12dを折り曲げることで、板厚を2倍にした構成とすることができる。この場合、シール部31dの周線b上におけるピッチP’は、前述した式(3)により規定され、シール板12d間の隙間G’は、前述した式(4)により規定され、前述した第2の参考例のリーフシール10b(図6、図7(A)及び図7(B)参照)と同様に、シール部31dのピッチP’は、連結保持部21dにおいてシール板12dを折り返さない場合のピッチPと比較すると2倍になり、シール部31dの隙間G’は、連結保持部21dにおいてシール板12dを折り返さない場合の隙間Gと比較して2倍以上となる。
【0055】
このように、図9(A)に示すリーフシール10dにおいても、シール部31dのピッチ及びシール部31d間の隙間を、シール板12dの板厚t、あるいは、連結保持部21d及びシール部31dの傾斜角度を変更することにより容易に調整することができる。
そして、特に本実施形態のリーフシール10dにおいては、シール部31dの傾斜角度θ1を例えば45°以下というようにより小さくしたい場合、あるいは、シール部31dの間にさらに大きな隙間が必要な場合には、シール板12dを折り返してシール板12dを二重にして連結保持部21dに用いればよく、好適である。
【0056】
そして、前述した実施形態のリーフシール10c、10c’と同様に、連結保持部21dに折り曲げ部が形成されていないために、構造を簡単にすることができる。また、第2の参考例のリーフシール10bにおいては、シール板12bを2箇所でプレス加工等により折り曲げる必要があったが、本実施形態のリーフシール10dにおいては、1箇所のみ折り曲げ加工すればよい。従って、本実施形態のリーフシールは、その点において構成及び製造工程を簡略化することができる。
【0057】
また、図9(B)に示すリーフシール10d’は、図9(A)に示したリーフシール10dと同様に、連結保持部21d’には折り曲げ部(22(図1等参照))が形成されていないものの、シール板12d’の外周側の端部において薄板が折り返されており、連結保持部21d’はシール板12d’が二重に構成されているリーフシールである。そして、図9(B)に示すリーフシール10d’は、周線bに対する連結保持部21d’の傾斜角度が、換言すれば折り曲げ部30d’における折り曲げ角度(連結保持部21d’とシール部31d’との成す角度)とシール板12d’の積層形態(積層位置)が、図9(A)に示したリーフシール10dとは異なる。図9(A)に示すリーフシール10dは、連結保持部21dと周線bとの成す角度(θ2)が鋭角となる方向と、シール部31dと周線bとの成す角度(θ1)が鋭角となる方向とが周線b上の同一方向であるが、図9(B)に示すリーフシール10d’は、連結保持部21d’と周線bとの成す角度(θ2)が鋭角となる方向と、シール部31d’と周線bとの成す角度(θ1)が鋭角となる方向とが周線b上の反対方向となっている。
【0058】
このような構成のリーフシール10d’においても、リーフシール10d’の周線bに対する連結保持部21d’の傾斜角度θ2を図示のごとく規定することにより、シール部31d’の周線b上におけるピッチPは、前述した式(3)により決定され、シール板12d’間の隙間Gは前述した式(4)により決定される。
従って、前述した各実施形態のリーフシールと同様に、シール部31d’のピッチ及びシール部31d’間の隙間を、シール板12d’の板厚t、あるいは、連結保持部21d’及びシール部31d’の傾斜角度を変更することにより容易に調整することができる。また、図9(A)に示したリーフシール10dと同様に、構成及び製造工程を簡略化することができる。
【0059】
変形例
なお、前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって本発明を何ら限定するものではない。本実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含み、また任意好適な種々の改変が可能である。
【0060】
また、前述した第1の参考例及び第2の参考例においては、リーフシール(10、10b)の各シール板(12、12b)の第1の折り曲げ部(22、22b)と第2の折り曲げ部(30、30b)とにおけるシール板を折り曲げる方向は、図2、4、6等に示すように、いずれも周方向において反対向きであった。しかしながら、第1の折り曲げ部(22、22b)と第2の折り曲げ部(30、30b)の折り曲げる方向は、周方向の同じ向きであってもよい。
【0061】
連結保持部の第1の折り曲げ部における折り曲げ加工と、シール部の第2の折り曲げ部における折り曲げ加工とが、周方向の同じ方向であるようなリーフシール10e及び10fを図10及び図11に示す。図10は、連結保持部21eがシール板の単板で構成されいてるリーフシール10eを示す図であり、図11は、連結保持部21fがシール板12fが折り返されて二重に構成されているリーフシール10fを示す図である。
図10及び図11に示す形態においても、連結保持部21e,21f及び21e、21fには第1の折り曲げ部22e、22fが形成されており、複数のシール板12e、fの連結保持部21e、21fを順次嵌め合わせて重ね合わせて行くことにより、シール板12e、12fの集合体としてのリーフシール10e、10fを容易に形成することができる。また、連結保持部21e、21fの第1の折り曲げ部22e、22fの屈曲角度θ2及びシール部31e、31fの傾斜角度θ1を制御することにより、シール部31e、31fの隙間を所望の長さにコントロールすることができる。
【0062】
また、前述したリーフシール装置は、保持板と背板との間にリーフシールが挟持される構成であったが、保持板及び背板を設けることなくリーフシールのみをケーシングの取付部に設置する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、航空機エンジン、ガスタービン等の回転軸周りの相対移動する2構成部品間をシールする任意の装置に適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側の連結保持部と内周側のシール部とを有する薄板状のシール板を、前記連結保持部を重ね合わせることにより複数連結して中心に回転軸を嵌合可能に環状に形成したリーフシールを有し、ケーシングと当該ケーシングに形成された貫通孔を通過する回転軸との間を仕切って被密封流体をシールするリーフシール装置であって、
前記連結保持部は前記シール板の外周側端部に形成され、
前記リーフシールの低圧側に配設され、前記連結保持部を保持する固着部と、前記リーフシールが被密封流体の圧力で変形しないように当該リーフシールを支持する支持面とを有する背板と、
前記リーフシールの高圧側に配設され前記背板とともに前記リーフシールを挟持する保持板とをさらに有し、
前記連結保持部は前記背板の前記固着部とともに一体化されて、当該リーフシール装置を前記ケーシングの前記貫通孔の内周面に取り付けるための固定部を構成し、
前記各シール板は、前記連結保持部と前記シール部との境界において、前記連結保持部と前記シール部とが所定の角度をなすように折り曲げ状態に形成されており、
前記各シール板の前記連結保持部は、前記リーフシールの周方向及び径方向に対して各々所定の角度で傾斜した状態で順次積層されて連結されており、
前記各シール板の前記シール部は、前記連結保持部との前記境界から内周側に向かって、前記周方向に対して所定の角度で傾斜するように配設されており、
前記各シール板は、前記連結保持部と前記シール部との境界においてのみ前記折り曲げ加工が施されていることを特徴とするリーフシール装置。
【請求項2】
前記各シール板の前記連結保持部は、前記薄板状のシール板が外周側の端辺で折り返された二重に重ねあわされた状態に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリーフシール装置。
【請求項1】
外周側の連結保持部と内周側のシール部とを有する薄板状のシール板を、前記連結保持部を重ね合わせることにより複数連結して中心に回転軸を嵌合可能に環状に形成したリーフシールを有し、ケーシングと当該ケーシングに形成された貫通孔を通過する回転軸との間を仕切って被密封流体をシールするリーフシール装置であって、
前記連結保持部は前記シール板の外周側端部に形成され、
前記リーフシールの低圧側に配設され、前記連結保持部を保持する固着部と、前記リーフシールが被密封流体の圧力で変形しないように当該リーフシールを支持する支持面とを有する背板と、
前記リーフシールの高圧側に配設され前記背板とともに前記リーフシールを挟持する保持板とをさらに有し、
前記連結保持部は前記背板の前記固着部とともに一体化されて、当該リーフシール装置を前記ケーシングの前記貫通孔の内周面に取り付けるための固定部を構成し、
前記各シール板は、前記連結保持部と前記シール部との境界において、前記連結保持部と前記シール部とが所定の角度をなすように折り曲げ状態に形成されており、
前記各シール板の前記連結保持部は、前記リーフシールの周方向及び径方向に対して各々所定の角度で傾斜した状態で順次積層されて連結されており、
前記各シール板の前記シール部は、前記連結保持部との前記境界から内周側に向かって、前記周方向に対して所定の角度で傾斜するように配設されており、
前記各シール板は、前記連結保持部と前記シール部との境界においてのみ前記折り曲げ加工が施されていることを特徴とするリーフシール装置。
【請求項2】
前記各シール板の前記連結保持部は、前記薄板状のシール板が外周側の端辺で折り返された二重に重ねあわされた状態に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリーフシール装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−64506(P2013−64506A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−253376(P2012−253376)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2009−538937(P2009−538937)の分割
【原出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000101879)イーグル工業株式会社 (119)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2009−538937(P2009−538937)の分割
【原出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000101879)イーグル工業株式会社 (119)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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