説明

リーフディスクフィルタ組立体およびポリマーフィルムの製造方法

【課題】フィルタ組立体内において滞留部を無くし、ゲル状体などの異物発生を抑え、欠点の少ないフィルムを製造することができるリーフディスクフィルタ組立体およびそれを用いたフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】支柱に組み付けられた複数のリーフディスクフィルタ1と、前記リーフディスクフィルタのうち最上流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように配置された保護板5と、前記リーフディスクフィルタのうち最下流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように配置された底板10と、を備えたリーフディスクフィルタ組立体60であって、前記の保護板、底板のリーフディスクフィルタと相対する面の全面、または径方向内周の一部の面に濾過機能を有したリーフディスクフィルタ組立体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリーフディスクフィルタ組立体およびポリマーフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ乳酸、アクリル系ポリマーなどを用いて製造されるフィルムは図22に示すような製造装置により製造されている。
【0003】
フィルム製造装置40において、ポリマーは、押出機21により熱とせん断力が加えられ溶融し、溶融状態でギアポンプ22に送り込まれる。ギアポンプ22によって一定量で吐出された溶融ポリマーは、その後フィルタ23を通過し異物等が濾過され、任意のリップ間隙のスリットを有する口金24からフィルム状に押し出し成形される。押し出されたフィルム状溶融ポリマーは、回転する冷却ドラム25によって冷却・固化される。冷却・固化されたフィルムは、続いて延伸装置26により任意の方向・倍率に延伸され、ワインダによりポリマーフィルム30として巻き取られる。またその際、厚み計27によりフィルムの幅方向の厚み測定が行われ、この厚み測定データに基づき口金24のリップ間隙を厚み制御装置29により調整することで、幅方向の厚みが均一なフィルムが製造される。
【0004】
上記フィルム製造装置に用いられるフィルタはリーフディスクフィルタ、筒型フィルタ、スクリーンフィルタといった様々な種類があり、製造するフィルムの品質、製造条件に応じて適宜用いられる。リーフディスクフィルタは複数枚を支柱に組み付けながら積層し、ツリー状にして用いることが多く、濾材として金属繊維タイプや多孔質タイプのものなどが広く用いられる。高い濾過精度を有するフィルタや、粘度の高いポリマーを用いる場合には濾圧が高くなるため、広い濾過面積で低圧損化を図ることができるリーフディスクフィルタを用いることが一般的である。
【0005】
このリーフディスクフィルタは、通常、図8に示すように複数枚のリーフディスクフィルタ1を支柱4に組み付け積層したツリー状の組立体として使用される。ここで図8において、リーフディスクフィルタ組立体50はケーシング3内に、先述の支柱4に積層し、組み付けた複数枚のリーフディスクフィルタ1と共に納められ、上蓋2によりケーシング内流路11が確保される形状で組立てられる。支柱4に組み付けられたリーフディスクフィルタ1はその最上流部と最下流部とにそれぞれ相対する形で保護板5と底板10とが配置され、止めネジ6にて固定されている。図9および図10は、それぞれのリーフディスクフィルタ1の最上流部付近と最下流部付近を拡大した概略図であり、厚みBを有するリーフディスクフィルタ1がリーフディスクフィルタ間の間隔が等間隔となるように、一定の厚みAを有するガスケット7を介して順にリーフディスクフィルタを支柱に組み付け積層している。また吐出量やケーシングサイズにより各リーフディスクフィルタ間の流量・圧力バランスが崩れる場合には、各リーフディスクフィルタ間の任意の位置に金属円柱体を挿入することもある。
【0006】
一般的なリーフディスクフィルタ組立体においては、図8〜10に示すように、リーフディスクフィルタ間の間隔Aはほぼ均等に維持されており、保護板と最上流部に位置するリーフディスクフィルタとの間隔および底板と最下流部に位置するリーフディスクフィルタとの間隔についても、同様に間隔Aが維持されている。これは、通常は、同一の厚みを有するガスケット7を使用しているためである。
【0007】
図11にフィルタケーシング内での溶融したポリマーの流れを示す。また、図12、図13にはリーフディスクフィルタ1の最上流部付近と最下流部付近での溶融ポリマーの流れを示す。矢印で示されるように上流(図11における上部)からケーシング内流路11を通って各リーフディスクフィルタ1にほぼ均等に分配される。分配されたポリマーは、リーフディスクフィルタ表面の濾材により濾過され、リテーナ部材が挿入された空間を通ってリーフディスクフィルタの中心方向へ流れ、接続部材14に穿たれた孔を通って、以後、順に支柱溝9、支柱孔8および支柱内流路20を通ってリーフディスクフィルタ組立体の外へ流れていく。
【0008】
図14、図16は各々、最上流部付近と最下流部付近でのポリマーの流れを示した概略断面図であり、リーフディスクフィルタ1は濾過機能を有する濾材12a、12bと、この濾材を支持し、かつ多数設けられたポリマー流入口からポリマーをディスク内部へ導くパンチング部材16a、16bと、このパンチング部材を支持するリテーナ部材13と、リテーナ部材の下に底板と、これら各部材をまとめ、ディスク積層時の荷重を受ける部分となるハブ部材14とを備えている。リーフディスクフィルタ1の外周は溶接で固定されており(溶接部17)、内周は濾材12a、12b、パンチング部材16a、16b、およびリテーナ部材13が径方向に多数の孔が穿たれたハブ部材14に溶接され、その他各所も必要に応じて溶接で接合する構造をとっている。また、ハブ部材には濾材支持部が設けられ、溶接でハブ部材に接続されている。このようなポリマーの流れを適用したフィルタの例としては、例えば特許文献1記載の濾過装置である。
【0009】
ここで、図15、図17に示すように、各リーフディスクフィルタ間を流れるポリマーの流量をQ1とし、各リーフディスクフィルタ内を流れるポリマーの流量をQ2とする。各リーフディスクフィルタ内に流れるポリマーの流量Q2は、リーフディスクフィルタの上下の隙間から[Q1]/2ずつ流れ込むため、結果的にQ1=Q2となる。
【0010】
ところが、保護板5と最上流部に位置するリーフディスクフィルタ1とで形成される隙間を流れるポリマーの流量Q11、および底板10と最下流部に位置するリーフディスクフィルタ1とで形成される隙間を流れるポリマーの流量Q12は濾過されるフィルタ濾材が1面しかないので、この隙間での圧損が2倍に上がり、流量が1/2倍に下がり、結果的にQ11=Q12=[Q1]/2=[Q2]/2となる。
【0011】
ここで、リーフディスクフィルタ間の体積をVと置くと、ここを流れるポリマーの滞留時間Tは、V/[Q1]となる。一方、保護板5と最上流部に位置するリーフディスクフィルタとで形成される隙間を流れるポリマーの滞留時間はT=V/[Q11]=2V/[Q1]となり、同様に、底板10と最下流部に位置するリーフディスクフィルタとで形成される隙間を流れるポリマーの滞留時間はT=V/[Q12]=2V/[Q1]となり、いずれも、リーフディスクフィルタ間を流れるポリマーに対し2倍の滞留時間となる。
【0012】
従って、従来の構成では保護板や底板の部分で滞留時間が長くなり酸化劣化や熱劣化する傾向が強くなり問題であるが、さらに図18に示すガスケットと濾過機能を有しない金属面とが構成するコーナーでは流れが留まり、滞留部18(図23に示す保護板5と最下流部に位置するリーフディスクフィルタ1aとで形成される隙間15a、底板10と最下流部に位置するリーフディスクフィルタ1bとで形成される隙間15b)となり劣化が顕著となりやすく異物の発生箇所となる問題があった。また底板においては、ケーシングとによって構成されるコーナーでも流れが留まり滞留部18となり同様に異物の発生箇所となる問題があった。そして、発生した異物が固形体ではなくゲル状体であると、たとえ高精度のフィルタを用いてもフィルタをすり抜けてしまい、フィルムに異物欠点を発生させることがあった。
【0013】
この課題に対しては、例えば先行特許文献2や先行特許文献3に示すようにリーフディスクフィルタと金属部材間の間隙を狭めることやケーシング下層のリーフディスクフィルタを他リーフディスクフィルタより外径の小さくし、かつ下流側に向って大きくならないように配列することにより、ポリマー流速を速め滞留時間を短く、またポリマー流れをスムーズにすることでゲル状体の異物発生を起こりにくくすることが解決手段として開示されている。しかしながら、本発明者らの知見によれば、ガスケットと金属部材によって構成されるデッドスペースが根本的に解決されておらず滞留部は依然として除去できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−307529号公報
【特許文献2】特開2009−202518号公報
【特許文献3】特開平09−150018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、最上流部および最下流部において、リーフディスクフィルタと保護板または底板で構成される隙間の上下両面がともに濾過機能を有することにより滞留部を無くし、ゲル状体などの異物発生を抑え、欠点の少ないポリマーフィルムを製造することができるリーフディスクフィルタ組立体およびそれを用いたポリマーフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明は以下の特徴を有する。
【0017】
すなわち、本発明によれば、ポリマーの入口と出口を有するケーシングと、該ケーシング内に設けられた管状体からなる支柱と、該支柱の外側において前記支柱の長手方向に積層されて前記ケーシング内に収納された複数枚の環状のリーフディスクフィルタと、該リーフディスクフィルタのうち最上流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように前記最上流部に位置するリーフディスクフィルタの上流側に配置された保護板と、前記リーフディスクフィルタのうち最下流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように前記最下流部に位置するリーフディスクフィルタの下流側に配置された底板とからなり、前記入口から流入した溶融樹脂が、前記リーフディスクフィルタの外表面から該フィルタの濾材を通りその内方に濾過済みの溶融樹脂として流入し、濾過済みの溶融樹脂が、次いで、前記支柱の管状体の外表面から管状体内に流入し、前記出口から流出する樹脂流路を有するリーフディスクフィルタ組立体において、前記保護板および前記底板のうち少なくとも一方のリーフディスクフィルタと相対する面の全面、または径方向内周の一部の面が濾過機能を有することを特徴とするリーフディスクフィルタ組立体が提供される。
【0018】
また、本発明の好ましい形態によれば、ポリマーの入口と出口を有するケーシングと、該ケーシング内に設けられた管状体からなる支柱と、該支柱の外側において前記支柱の長手方向に積層されて前記ケーシング内に収納された複数枚の環状のリーフディスクフィルタと、該リーフディスクフィルタのうち最上流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように前記最上流部に位置するリーフディスクフィルタの上流側に配置された保護板と、前記リーフディスクフィルタのうち最下流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように前記最下流部に位置するリーフディスクフィルタの下流側に配置された底板とからなり、前記入口から流入した溶融樹脂が、前記リーフディスクフィルタの外表面から該フィルタの濾材を通りその内方に濾過済みの溶融樹脂として流入し、濾過済みの溶融樹脂が、次いで、前記支柱の管状体の外表面から管状体内に流入し、前記出口から流出する樹脂流路を有するリーフディスクフィルタ組立体において、積層されたリーフディスクフィルタ間の任意の位置に挿入する金属円柱体の上流側および下流側のうち少なくとも一方のリーフディスクフィルタと相対する全面または内周の一部が濾過機能を有する部材を備えることを特徴とするリーフディスクフィルタ組立体が提供される。
【0019】
また前述の濾過機能としてリテーナ部材、パンチングメタルまたは金網による多孔質部材、濾材を溶接により一体型とした部材を、前記の保護板、底板、または金属円柱体に埋め込んだことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の別の形態によれば、溶融ポリマーを供給する溶融ポリマー供給工程と、該溶融ポリマー供給工程から供給された溶融ポリマーを前記リーフィディスクフィルタ組立体にて濾過する溶融ポリマー濾過工程と、該溶融濾過工程から供給される溶融ポリマーを所望の成形体形状に口金から押し出す溶融ポリマー押出工程と、該溶融ポリマー押出工程から供給される溶融ポリマー成形体を冷却固化させる冷却工程と、該冷却工程から供給される冷却固化したポリマー成形体を引き取るポリマー成形体引き取り工程とからなるポリマーフィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下に示すとおり、フィルタ内にポリマーが滞留する部分を無くすことができるため、ポリマーの酸化劣化や熱劣化を防止し、それにともなう異物の発生を抑止することで、異物欠点の少ないポリマーフィルムの製造に好適に適用できるリーフディスクフィルタ組立体を提供することができる。また、そのようなリーフディスクフィルタ組立体を用いて異物欠点の少ないポリマーフィルムの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態様にかかるリーフディスクフィルタ組立体を示す概略断面図である。
【図2】図1のリーフディスクフィルタ組立体の最上流部付近を示す概略断面図である。
【図3】図1のリーフディスクフィルタ組立体の最下流部付近を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態様にかかるリーフディスクフィルタ組立体を示す概略断面図である。
【図5】図4のリーフディスクフィルタ組立体の最下流部付近を示す概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態様にかかるリーフディスクフィルタ組立体を示す概略断面図である。
【図7】図6のリーフディスクフィルタ組立体の最上流部付近を示す概略断面図である。
【図8】従来のリーフディスクフィルタ組立体を示す概略断面図である。
【図9】図6のリーフディスクフィルタ組立体の最上流部付近を示す概略断面図である。
【図10】図6のリーフディスクフィルタ組立体の最下流部付近を示す概略断面図である。
【図11】従来のリーフディスクフィルタ組立体におけるポリマーの流れを示す概略断面図である。
【図12】図11のリーフディスクフィルタ組立体の最上流部付近のポリマー流れを示す概略断面図である。
【図13】図11のリーフディスクフィルタ組立体の最下流部付近のポリマー流れを示す概略断面図である。
【図14】図8のリーフディスクフィルタ組立体の最上流部付近のポリマー流れを示す概略断面図である。
【図15】図8のリーフディスクフィルタ組立体の最上流部付近のポリマー流れを示す概略断面図である。
【図16】図8のリーフディスクフィルタ組立体の最下流部付近のポリマー流れを示す概略断面図である。
【図17】図8のリーフディスクフィルタ組立体の最下流部付近のポリマー流れを示す概略断面図である。
【図18】図6のリーフディスクフィルタ組立体の滞留部を示す概略断面図である。
【図19】本発明による図13の滞留部解消によるポリマー流れを示す概略断面図の一例である。
【図20】本発明による図13の滞留部解消によるポリマー流れを示す概略断面図の一例である。
【図21】図1の支柱付近を示す概略横断面図である。
【図22】ポリマーフィルムの製造装置を示す概略図である。
【図23】従来の金属円柱体を用いたリーフディスクフィルタ組立体を示す概略断面図である。
【図24】図23のリーフディスクフィルタ組立体の金属円柱体付近を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を参考にしながら説明する。もちろん、以下の説明は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態にかかるリーフディスクフィルタ組立体の概略断面図である。図1において、リーフディスクフィルタ組立体60は、ケーシング3内に、支柱4に組み付けた複数のリーフディスクフィルタ1とともに納められ、上蓋2によりケーシング内流路11が確保される状態で、ボルト(図示せず)で固定・組み立てがなされている。支柱4に組み付けられたリーフディスクフィルタ1はその最上流部と最下流部とにそれぞれ相対する形で保護板5と底板10とが配置され、油圧等で上下方向にプレスされた後、止めネジ6にて固定されている。図2および図3は、それぞれリーフディスクフィルタ1の最上流部付近と最下流部付近を拡大した概略断面図であり、厚みBを有するリーフディスクフィルタ1がリーフディスクフィルタ間の間隔Aが等間隔となるように、一定の厚みを有するガスケット7を介して順に組み付けられている。また、最上流部と最下流部の保護板と底板には、組み付けられたリーフディスクフィルタと相対する面にそれぞれ濾過部材1a、1bが埋め込められている。
【0025】
図21は、支柱4付近の概略横断面図である。支柱4は、外形の横断面形状が6角形であり、中心部に支柱内流路20を備えた筒状の形態を有している。また、側面に支柱孔8が穿たれ、接続部材14との間に支柱溝9を形成するようにそれぞれの部材が配置されている。
【0026】
また、上記において、支柱4は外形の断面形状が6角形のものを例示したが、もちろん、他の多角形でもよいし、楕円または螺旋形でも構わない。
以下に、フィルタ内の溶融ポリマーの流れについて、詳細に説明する。なお、リーフディスクフィルタの径方向で流速が異なるため、ここでは各隙間を通過するポリマーの総和として流量を定義する。また、リーフディスクフィルタ間の間隔Aは、相対するリーフディスクフィルタの濾材間の距離を言うが、実際には溶接構成であるため円周方向で間隔のばらつきが大きい。従って、本発明においては、各間隔の平均値をもって間隔Aとする。
【0027】
本発明においては、図1〜5のような形状とすることにより、フィルタの上流方向から流入してきたポリマーが僅かな隙間に滞留するのをより効果的に防ぐことが可能となり、リーフディスクフィルタと保護板、または底板で形成される間隙のいずれの領域においても、常にポリマーが流動している状態を維持することがより効果的に行なえるようになることで従来の問題を解決する。詳細には、図18の片面のみの濾過機能により発生する滞留部18に対し、図19、20に示すように全面または、滞留部18の部分にのみ濾過機能を付与することで滞留部を解消する。また前述後者の部分的に濾過機能を持たせる場合には吐出量によって変わる滞留部の面積に応じて、濾過部材の径方向の長さを変更することが好ましい。さらにこの部分での濾過機能としては、リーフディスクフィルタと同じ構成であるリテーナ部材、パンチングメタルまたは金網による多孔質部材、濾材を溶接した一体型のリーフディスクフィルタ同等の濾過部材であることが好ましく、ポリマー特性や異物目標に応じてパンチングメタルまたは金網による多孔質部材のみの濾過部材でも良い。
【0028】
図23に示すようにリーフディスクフィルタ組立体のリーフディスクフィルタ間に挿入される金属円柱体19の機能としてはケーシング内部の圧損、滞留時間の最適化を目的としたものであり、形態は外径および内径はリーフディスクフィルタと同じであることが好ましく、厚みは適宜条件により設定して良く制限されるものではない。また金属円柱体を挿入する場所、枚数に関しても条件により任意に設定して構わない。
【0029】
本発明の保護板5、底板10、金属円柱体19に濾過装置を埋め込む手法としては、リテーナ部材、パンチングメタルまたは金網による多孔質部材、濾材を溶接により一体型とした濾過部材を埋め込みことが可能なように、各保護板5、底板10、金属円柱体に段差加工を施すことで凹型の窪みを形成し、この時、濾過部材を挿入した時に外れないようにしまりばめとなるように窪みを加工することが好ましい。また、この各保護板5、底板10、金属円柱体窪みに対して濾過部材を埋め込む手法としては、圧入、焼ばめ、または冷やしばめが好ましい。また、図4に示すように底板全面に濾過装置を入れる方法としては前記のような埋め込む方法ではなく、支柱最下部に底板外径と同径のリーフディスクを入れた後、その他の底板外径より狭いリーフディスクを積層する構成がより好ましい。
【0030】
リーフディスクフィルタの好ましい使用枚数の範囲としては、20〜200枚であり、より好ましくは20〜100枚である。また濾過精度の好ましい範囲としては、工材用途では50〜100μmであり、より好ましくは20μm以下、また光学用途では10μm以下である。濾過精度を0.5μm未満とする場合には、ポリマーが通過する圧力が高くなりリーフディスクフィルタの耐圧を超えてしまうことがある。これを防止するためにはリーフディスクフィルタ枚数を増やすか、リーフディスクフィルタ外径を大きくする必要があるが、リーフディスクフィルタ枚数が例えば200枚を超えるようになると、上流と中間と下流の位置にあるリーフディスクフィルタにおいて、それぞれ通過するポリマー流量が異なるため異常滞留が発生する傾向が強くなる。一方、リーフディスクフィルタ外径を大きくするとリーフディスクフィルタ最外周部を通過するポリマーの流れが遅くなるため、異常滞留が発生することが多いので、12インチ以下が好ましい。
【0031】
本発明に適用可能なポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ乳酸、アクリル系ポリマー、などである。
【0032】
ポリマーフィルムの構成は、単層構成でもよいし、複層構成を有していてもよい。また、延伸工程を採用する場合は、縦延伸と横延伸を順次組み合わせた逐次二軸延伸機を用いて行なってもよいし、縦延伸と横延伸を同時に行なう同時二軸延伸機を用いて行なってもよい。もちろん、延伸工程を経ない未延伸フィルムとしても構わない。
【0033】
上記した製法により得られるポリマーフィルムは、例えば、フラットディスプレイパネル用の工学フィルム等、異物欠点に敏感な用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
図1〜3に記載のリーフディスクフィルタ組立体を使用した。保護板と底板の一部を改造することで、リーフディスクフィルタに相対するように配置された保護板、底板と金属円柱体のリーフディスクフィルタと相対する面に濾過部材を埋め込み、各リーフディスクフィルタの間隔は同じ条件として図22に記載のリーフディスクフィルタ組立体、ポリマーの製造装置を利用して製膜した。ポリマーはポリエチレンを使用した(粘度は、せん断速度10sec−1で約1〜2万poise)。押出機はスクリュー系φ90のものを使用した。吐出量はギアポンプで計量して100kg/hrとした。フィルタはべカルト製の濾過精度30μ(99%以上カット)、直径12インチ、厚み(B)12mmのリーフディスクフィルタを50枚使用した。ガスケットは0.5mm厚のものを6枚一組として各リーフディスクフィルタ間、保護板と最上流部のリーフディスクフィルタとの間、および底板と最下流部のリーフディスクフィルタとの間において使用した。口金の幅は2,000mmである。なお、延伸工程は採用せず未延伸フィルムとしてワインダで巻き取った。
【0035】
その結果、1週間後であっても異物の発生を抑えることができ、製膜終了直後にフィルタを解体した結果、保護板と最上流部のリーフディスクフィルタとの隙間や、底板と最下流部のリーフディスクフィルタとの隙間には変色したポリマーは認められなかった。他の部分についても同様に変色したポリマーは認められなかった。
[実施例2]
図4〜5に記載のリーフディスクフィルタ組立体を使用し、他の条件は実施例1と同じとした。
【0036】
その結果、2週間後であっても異物の発生を抑えることができ、製膜終了直後にフィルタを解体した結果、保護板と最上流部のリーフディスクフィルタとの隙間や、底板と最下流部のリーフディスクフィルタとの隙間には変色したポリマーは認められなかった。他の部分についても同様に変色したポリマーは認められなかった。
[比較例1]
図8〜10、図22に記載のリーフディスクフィルタ組立体、ポリマーの製造装置を利用して製膜を行なった。ポリマー、製膜装置は実施例1に記載の製膜条件と同じである。
【0037】
製膜を始めて約2日後から異物が増加し、1週間後には多量の異物が発生した。なお、この異物は、ポリマーが変質したもので、茶褐色をしており、大きさが100μm以上のものも存在した。濾過精度が30μmのフィルタを使用しているが、異物形状が変形して濾材を構成している金属ファイバの隙間をすり抜けるため、肉眼で観察できる程度の大きな欠点が発生したものと思われる。製膜終了直後にフィルタを解体した結果、保護板と最上流部のリーフディスクフィルタとの隙間や、底板と最下流部のリーフディスクフィルタとの隙間に変色したポリマーが存在した。なお、リーフディスクフィルタ同士の隙間など、他の箇所には特に変色したポリマーは認められなかった。
[実施例2]
図6,図7に記載のリーフディスクフィルタ組立体を使用した。保護板と底板の一部を改造することで、リーフディスクフィルタに相対するように配置された保護板と底板の面に濾過部材を埋め込み、各リーフディスクフィルタの間隔は同じ条件として図22に記載のリーフディスクフィルタ組立体、ポリマーの製造装置を利用して製膜した。ポリマーはポリプロピレンを使用した(粘度は、せん断速度10sec−1で約5〜6万poise)。押出機はスクリュー系φ90のものを使用した。吐出量は500kg/hrとした。フィルタは日本精線製の濾過精度25μ(99%以上カット)、直径12インチ、厚み(B)11mmのリーフディスクフィルタを30枚と、直径12インチ、厚み40mmの金属円柱体を5枚使用した。また、金属円柱体はリーフディスクフィルタ5枚を一組としてその間に1枚ずつ挿入した。ガスケットは3.2mm厚のものを各リーフディスクフィルタ間、保護板と最上流部のリーフディスクフィルタとの間、および底板と最下流部のリーフディスクフィルタとの間において使用した。口金の幅は800mmである。なお、延伸工程は逐次2軸延伸としてワインダで巻き取った。
【0038】
その結果、1週間後であっても異物の発生を抑えることができ、製膜終了直後にフィルタを解体した結果、保護板と最上流部のリーフディスクフィルタとの隙間や、底板と最下流部のリーフディスクフィルタとの隙間には変色したポリマーは認められなかった。他の部分についても同様に変色したポリマーは認められなかった。
[比較例2]
図23、図24、図22に記載のリーフディスクフィルタ組立体、ポリマーの製造装置を利用して製膜を行なった。ポリマー、製膜装置は実施例2に記載の製膜条件と同じである。
【0039】
製膜を始めて約3日後から異物が増加し、1週間後には製品とならない程度に異物が発生した。なお、この異物は、ポリマーが変質したもので、茶褐色をしており、大きさが150μm以上のものも存在した。濾過精度が25μmのフィルタを使用しているが、異物形状が変形して濾材を構成している金属ファイバの隙間をすり抜けるため、肉眼で観察できる程度の大きな欠点が発生したものと思われる。製膜終了直後にフィルタを解体した結果、保護板と最上流部のリーフディスクフィルタとの隙間や、底板と最下流部のリーフディスクフィルタとの隙間に変色したポリマーが存在し、リーフディスクフィルタ同士の隙間など他の箇所には特に変色したポリマーは認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は特にポリマーフィルムを製造する際に用いるリーフディスクフィルタ組立体およびポリマーフィルムの製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 リーフディスクフィルタ
1a 最上流部に位置する濾過部材
1b 最下流部に位置する濾過部材
1c 金属円柱体に位置するリーフディスクフィルタ
2 上蓋
3 ケーシング
4 支柱
5 保護板
6 止めネジ
7 ガスケット
8 支柱穴
9 支柱溝
10 底板
11 ケーシング内流路
12a 濾材
12b 濾材
13 リテーナ部材
14 接続部材
15a 保護板と最上下流部に位置するリーフディスクフィルタとで形成される隙間
15b 保護板と最下流部に位置するリーフディスクフィルタとで形成される隙間
15c ケーシングとリーフディスクフィルタとで形成される隙間
16a パンチング部材
16b パンチング部材
17 溶接部
18 滞留部
19 金属円柱体
20 支柱内流路
21 押出機
22 ギアポンプ
23 フィルタ
24 口金
25 冷却ドラム
26 延伸装置
27 厚み計
28 ワインダ
29 厚み制御装置
30 ポリマーフィルム
40 ポリマーフィルムの製造装置
50 リーフディスクフィルタ組立体
60 リーフディスクフィルタ組立体
70 リーフディスクフィルタ組立体
80 リーフディスクフィルタ組立体
90 リーフディスクフィルタ組立体
100 リーフディスクフィルタ組立体
A リーフディスクフィルタ間の間隔
B リーフディスクフィルタの厚み
Q1 リーフディスクフィルタ間を流れるポリマーの流量
Q2 リーフディスクフィルタ内を流れるポリマーの流量
Q11 保護板と最上流部に位置するリーフディスクフィルタとの間隙を流れるポリマーの流量
Q12 底板と最下流部に位置するリーフディスクフィルタとの間隙を流れるポリマーの流量
Q21 最上流部に位置するリーフディスクフィルタ内を流れるポリマーの流量
Q22 最下流部に位置するリーフディスクフィルタ内を流れるポリマーの流量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの入口と出口を有するケーシングと、該ケーシング内に設けられた管状体からなる支柱と、該支柱の外側において前記支柱の長手方向に積層されて前記ケーシング内に収納された複数枚の環状のリーフディスクフィルタと、該リーフディスクフィルタのうち最上流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように前記最上流部に位置するリーフディスクフィルタの上流側に配置された保護板と、前記リーフディスクフィルタのうち最下流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように前記最下流部に位置するリーフディスクフィルタの下流側に配置された底板とからなり、前記入口から流入した溶融樹脂が、前記リーフディスクフィルタの外表面から該フィルタの濾材を通りその内方に濾過済みの溶融樹脂として流入し、濾過済みの溶融樹脂が、次いで、前記支柱の管状体の外表面から管状体内に流入し、前記出口から流出する樹脂流路を有するリーフディスクフィルタ組立体において、前記保護板および前記底板のうち少なくとも一方のリーフディスクフィルタと相対する面の全面、または径方向内周の一部の面が濾過機能を有する部材を備えることを特徴とするリーフディスクフィルタ組立体。
【請求項2】
ポリマーの入口と出口を有するケーシングと、該ケーシング内に設けられた管状体からなる支柱と、該支柱の外側において前記支柱の長手方向に積層されて前記ケーシング内に収納された複数枚の環状のリーフディスクフィルタと、該リーフディスクフィルタのうち最上流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように前記最上流部に位置するリーフディスクフィルタの上流側に配置された保護板と、前記リーフディスクフィルタのうち最下流部に位置するリーフディスクフィルタに相対するように前記最下流部に位置するリーフディスクフィルタの下流側に配置された底板とからなり、前記入口から流入した溶融樹脂が、前記リーフディスクフィルタの外表面から該フィルタの濾材を通りその内方に濾過済みの溶融樹脂として流入し、濾過済みの溶融樹脂が、次いで、前記支柱の管状体の外表面から管状体内に流入し、前記出口から流出する樹脂流路を有するリーフディスクフィルタ組立体において、積層されたリーフディスクフィルタ間の任意の位置に挿入する金属円柱体の上流側および下流側のうち少なくとも一方のリーフディスクフィルタと相対する全面または内周の一部が濾過機能を有する部材を備えることを特徴とするリーフディスクフィルタ組立体。
【請求項3】
溶融ポリマーを供給する溶融ポリマー供給工程と、該溶融ポリマー供給工程から供給された溶融ポリマーを請求項1または2に記載の前記リーフィディスクフィルタ組立体にて濾過する溶融ポリマー濾過工程と、該溶融濾過工程から供給される溶融ポリマーを所望の成形体形状に口金から押し出す溶融ポリマー押出工程と、該溶融ポリマー押出工程から供給される溶融ポリマー成形体を冷却固化させる冷却工程と、該冷却工程から供給される冷却固化したポリマー成形体を引き取るポリマー成形体引き取り工程とからなるポリマーフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−140000(P2012−140000A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273064(P2011−273064)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】