説明

ルーター機能を自動的に移行させる方法

好ましくは現在のIPv4‐IPv6規格に適合した不均質な通信ネットワーク(10)が提供される。該ネットワーク(10)は一つまたは複数の候補装置(100、110、130)を含むいくつかの相互接続されたノードを含む。さらに、該ノードのいくつかはデータルーター(60、100,110)として動作できる。本発明は、既存のルーティングノードが動作不能になった場合にルーティング機能を引き受けるために候補装置(100、110)を使うことを含む、ルーターの動作を動的に組織化する方法を提供する。さらに、本方法は、ネットワーク(10)内でノードの存在を知らせるために、ノードのためのリンクローカルルーター広告を利用する。さらに、ネットワーク(10)は、ノードのうちのどれがルーターとして動作することが許されるかの審判者となるべく監視器を用いる。ノードは、ルーターの割り当てにおける不一致および/または衝突が動作中に生じた場合には、この監視器と通信するよう構成される。監視器の使用により、ネットワーク(10)はルーターが動的に再構成可能となるためより堅牢になることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーター機能を移行させる方法に関する。本発明は特に、それに限るものではないが、通信ネットワーク、たとえばインターネットを構築するために用いられるルーターに関する。さらに、本発明は、前記方法に基づいて機能するルーターにも関する。さらに、本発明はそのようなルーターを含んでいる通信ネットワークにも関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワーク、たとえばインターネットは、複数の相互接続された通信ノードを含んでいる。さらに、これらのネットワークは、その中でのデータ内容の通信を容易にするよう動作できる。そのようなデータ内容の通信は、ノード間の信頼できるデータルーティングを、よってネットワーク内でのある程度の相互互換性を要求する。よって、前記ネットワークは、ノード間で制御された仕方でデータ内容のブロックをルーティングするよう動作できるルーターを利用する。
【0003】
前述した通信ネットワークでは、その中のノードの変化が起こりうることが知られている。たとえば、新たなノードの接続から、ならびにプラグ引き抜き、電力障害、予期せぬ機能障害および一時的な利用不能状態のうちの一つまたは複数によって引き起こされるノード障害から生じる変化である。プラグ引き抜きは、あるノードが切断されたときに生じている可能性がある。電力障害は、ノードへの電気供給が途絶えるか、あるいは尽きるときに起こる。予期せぬノード機能障害は、部品が電気的故障を発達させることに起因して生じうる。一時的なノード利用不能状態は、たとえば、論理ゲートが意図しない状態に切り替わるか、あるいはプロセッサがソフトウェアの無限ループに陥るときに生じうる。通信ネットワークがより複雑になればなるほど、ネットワークの少なくとも一部分が任意の所与の瞬間に機能していない、および/または変化を受ける可能性が高まる。そのような変化および/または不機能状態に対処できるためには、通信ネットワークの変化および/または部分的障害に対処するよう再構成可能な、通信ネットワーク用ルーターを提供することが知られている。
【0004】
たとえば、公開されている欧州特許出願第EP1,011,231号において、仮想ルーター冗長性プロトコル(virtual router redundancy protocol)を使う非インターネットプロトコルのルーター冗長性を提供する方法および装置が記載されている。該特許出願は、TCP/IP以外のデータ通信プロトコル・ソフトウェア・スイートを用いて構成されており、VRRPのようなデフォルトのルーター選択プロトコルが利用可能でない一つまたは複数の通信ネットワークノードに関わる。TCP/IPはTransport Control Protocol/Internet Protocol(転送制御プロトコル/インターネットプロトコル)の略である。さらに、VRRPはVirtual Router Redundancy Protocol(仮想ルーター冗長性プロトコル)の略であり、たとえば1998年4月のインターネット協会のRFC文書(Request for Comments)2338で述べられており、マスター仮想ルーターに責任を割り当てる選択プロトコルに対応する。VRRPは、マスター仮想ルーターが利用不能になる場合に、責任を移行させるという動的フェイルオーバーを提供する。前記特許出願で記載されているように、前述の一つまたは複数のノードは、他のネットワーク上のノードに宛てられた非TCP/IPトラフィックをVRRPマスター仮想ルーターに転送するよう動作できる。非TCP/IPベースのノードは、次ホップルーターのための静的に構成されたネットワーク層アドレスを与えられ、次ホップルーターがVRRP対応でTCP/IPトラフィックのためのマスター仮想ルーターである場合には、前記ネットワーク層アドレスを前記次ホップルーターのためのVRRPベースのMAC層アドレスに解決する。非TCP/IPノードはこのVRRPベースのMACアドレスを、非TCP/IPトラフィックを利用可能な次ホップルーターに転送する際に使用するためにキャッシュする。その後、非TCP/IPノードは他のネットワーク上のノードに宛てられたトラフィックをVRRPマスター仮想ルーターに転送する。マスター仮想ルーターがTCP/IPベースのトラフィックを転送するために利用不能になると、それは遷移して新たなバックアップ仮想ルーターとなる。その一方、前記バックアップ仮想ルーターは遷移して、TCP/IPベースのトラフィックを転送することについて責任をもつ新たなマスター仮想ルーターとなる。新たなマスター仮想ルーターは、同じVRRPベースのMACアドレスを共有している。よって、非TCP/IPベースのノードは、前記次ホップルーターのVRRPベースのMACアドレスをキャッシュしているので、他のネットワーク上のノードに宛てられたトラフィックを新たなマスター仮想ルーターに転送する。これは、ある次ホップルーターのために静的に構成されたネットワーク層アドレスによって識別されるルーターが利用不能になった場合に、非TCP/IPベースのノードから送信される非TCP/IPトラフィックのルーティングを継続するための、該非TCP/IPベースのノードへの介入またはその再構成の必要をなくす。
【0005】
本発明人らは、現在の通信ネットワーク、たとえばインターネットが、複数の異なるデータ構造規格に対応する諸ルーターを用いていることに着目した。たとえば、インターネットの場合、既知のインターネットプロトコル規格IPv4に対応するルーターを用いることが知られている。文書RFC741で定義されたIPv4規格が採択されたのは1981年のことである。それは20年以上もの期間にわたって事実上変化なくインターネットコミュニティの役に立ってきた。さらに、IPv4規格はその後それを置き換えるべく意図されたOSIプロトコルが登場しても生き延びた。しかし、IPv4規格はそのアドレス空間に関して基本的な欠点に悩まされている。実質的にすべてインターネットプロトコルであるデータのためには、アドレス空間が不十分なのである。その結果、文書RFC1883で定義されるより進んだインターネットプロトコル規格IPv6が1995年に採択された。IPv6規格は、次世代IP(IP Next Generation)またはIPngとしても知られる。1998年には、RFC2460という文書がIPv6規格を再定義し、文書RFC1883は廃止となった。
【0006】
IPv4規格が用いるIPv4データグラムは、20バイトの固定長ヘッダ、40バイトまでの範囲のオプションデータ領域および64kBから前記IPv4ヘッダの長さを引いた長さをもつデータペイロード領域を利用する。対照的に、IPv6規格は拡張されて修正されたアドレス方式を備えている。そのアドレス方式は成長に対応し、ヘッダフォーマットの簡略化、オプション対応の改善、自動アドレス構成設定、移動サポート、現在のIPSecと同様の認証および秘匿機能ならびに新たな「エニーキャスト」アドレス型といった点でルーティング効率を向上させるものである。さらに、IPv4規格は32ビット長のアドレスを用い、4.2×109通りの異なるアドレスを与えるが、IPv6規格は128ビット長のアドレスを用い、3.4×1038通りの異なるアドレスを与える。
【0007】
本発明人らは、現在使われている多くの通信ネットワークが不均質であるということを認識するに至った。たとえば、IPv4またはIPv6規格に準拠しているルーターの混合を用いているのである。そのような不均質構成は、既存のネットワークが以前の規格に準拠するインフラを維持しながら、同時進行的により新しい規格へのアップグレードを受けている結果として生じる。そこで、本発明人らは、不均質なIPv6/IPv4規格ネットワークにおいてIPv6規格ルーター機能のIPv6規格装置への自動的な引き継ぎおよび動的な割り当てを可能にする方法を考案した。本方法は、ルーター装置に静的に割り当てられたIPv4規格およびIPv6規格のルーター機能に依拠する現在の対応する諸方法とは対照をなすものである。さらに、本発明人らによって考案された本方法は、データ通信ネットワークで用いられている他の諸規格にも適用可能であることが考えられており、前述したIPv4およびIPv6規格だけに限定されるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第一の目的は、より高い信頼性を付与する方法に従って機能する、一つまたは複数のルーターを含む通信ネットワークを提供することである。
【0009】
本発明の第二の目的は、一つまたは複数のルーターが故障するかその他の事情で利用不能になったときのネットワークの信頼性を向上させるために、ルーターを含む通信ネットワークの動作をモニタリングおよび指揮するために好適な監視機能を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の側面によれば、ルーター機能を自動的に移行させる方法であって:
(a)ネットワーク内を通過するデータトラフィックのルーティングのための該ネットワーク内のルーターとして動的に割り当て可能な一つまたは複数の候補装置を含むデータ通信ネットワークを提供し、
(b)前記一つまたは複数の候補装置の活動をモニタリングし、該装置のうちの一つまたは複数にそこでデータルーティング機能を提供する権限を委譲するための監視手段を提供し、
(c)各候補装置が、ネットワーク中でアクティブであると想定する一つまたは複数のルーターのローカルに保存された第一の記録を含んでいるよう構成し、
(d)各候補装置が、ネットワークをモニタリングして現在ネットワーク上でアクティブな一つまたは複数のルーターを決定し、アクティブなルーターの対応する第二の記録を生成するよう構成し、
(e)各候補装置がその第一の記録と第二の記録を比較するよう構成し、
(f)前記候補装置の一つまたは複数がステップ(e)において前記第一の記録および第二の記録が等しくないと判定したときに、前記一つまたは複数の装置が前記監視手段からのより最近の第一の記録を用いて更新されるよう構成し、
(g)前記候補装置の一つまたは複数がステップ(e)において自分のアドレスが前記第一の記録のアドレスに一致すると判定したときに、該一つまたは複数の候補装置がネットワーク内でのルーターの機能を帯びるよう構成し、
(h)必要に応じてステップ(a)から(g)を繰り返す、
ステップを含む方法が提供される。
【0011】
本発明は、前記一つまたは複数の候補装置が、本方法によって、ネットワーク内でのデータルーティング信頼性を向上させるように再構成されうるという点で効果がある。
【0012】
好ましくは、本方法において、前記一つまたは複数の候補装置はIPv6規格のルーターとして機能するよう構成される。この点に関し、本発明人らはIPv6規格がルーティングの堅牢さについて潜在的な弱点を示し、本発明はそれに対処するのに好適であるということを認識するに至っている。
【0013】
好ましくは、本方法において、前記監視手段および一つまたは複数の候補装置は、ステップ(b)および(d)においてネットワーク内でのルーター活動を、ネットワーク内で広告されたリンクローカル(link local)データによってモニタリングするよう動作できる。広告されたリンクデータの解析は、前記監視手段および前記一つまたは複数の候補装置がネットワーク内でのルーティング経路を決定することを可能にする。
【0014】
好ましくは、本方法では、前記監視手段は、ネットワーク内でアクティブな複数の競合するルーターの間の衝突を解決するために、ネットワーク中の一つまたは複数の候補装置を選択的にアクティブにしたり非アクティブにしたりするよう動作できる。監視手段が、用いられるルーターの選択に関する実行決定をできるようにすることは、同時に動作しているいくつかのルーターどうしの間の衝突を減らしうるという点で効果がある。
【0015】
好ましくは、本方法では、前記監視手段は、ネットワーク内で少なくともローカルにアクティブなルーターはない状況において前記候補装置のうちの一つを割り当てるよう動作できる。そのような手法はネットワークに、最初に電源投入されたときの信頼できる起動特性を付与できる。
【0016】
好ましくは、本方法は、不均質なIPv4/IPv6規格のネットワークとして実装されたときのネットワークに対処するよう適応される。ネットワークがそのような不均質性に対処できることにより、ネットワークは同時混合規格のネットワークにより適切になる。
【0017】
本発明の第二の側面によれば、本発明の第一の側面において請求されるような監視手段を動作させる方法であって:
(i)前記監視手段において一つまたは複数の候補装置から少なくとも一つの通信を受信し、該少なくとも一つの通信は候補装置の第一の記録の詳細を含んでおり、
(j)ステップ(i)での第一の記録が、候補ルーターのアクティブ化および/または非アクティブ化を決定するための、前記監視手段において維持されている候補ルーターのある記録に対応していることを確認し、
(k)少なくともネットワーク内のローカルなルーター活動をモニタリングし、
(l)前記候補装置のうちのどれがアクティブでどれが非アクティブであるべきかに関して一つまたは複数の候補装置を更新し、
(m)前記監視手段において維持されている候補ルーターの記録を更新する、
ステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0018】
本発明の第三の側面によれば、本発明の第一の側面の方法に従うルーターとして機能するよう動作できる一つまたは複数の候補装置を含む通信ネットワークが提供される。
【0019】
本発明の第四の側面によれば、本発明の第一の側面の方法に従うルーターとして動作できる候補装置が提供される。
【0020】
本発明の第五の側面によれば、本発明の第二の側面の方法に従って動作できる監視手段を含むルーターモニタリング装置が提供される。
【0021】
本発明の諸特徴が本発明の範囲から外れることなくいかなる組み合わせで組み合わせることもできることは理解されるであろう。
【0022】
本発明の諸実施形態についてこれからあくまでも例として図面を参照しつつ述べる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、不均質なIPv6/IPv4規格ネットワークにおいてIPv6規格ルーター機能のIPv6規格機器への自動的な引き継ぎおよび動的な割り当てを可能にする方法に関する。そのような方法は、ルーター装置に静的に割り当てられたIPv4規格およびIPv6規格の機能に依拠する現在の諸解決策とは対照をなすものである。
【0024】
発売元によってIPv6規格のルーター機能を組み込まれた現在のIPv6機器は、それに接続された他のIPv6規格のルーターが利用可能かどうかを検出するよう動作できる。そのような他のIPv6規格のルーターは、さまざまな潜在的理由により利用不能であることがある。たとえば:
(a)プラグ引き抜き、つまり切断;
(b)電力不足または電力の中断;
(c)予期せぬ障害、たとえば内部的な電子装置の故障;または
(d)ソフトウェアの無限ループなどから生じる一時的な無応答状態。
【0025】
現在の問題は、IPv6規格装置のクラスターの一部として接続されているIPv6ルーターの利用不能状態は潜在的にIPv6規格クラスター全体の完全な無応答状態につながりうるということである。家庭内IPネットワークは装置クラスターの例であり、たとえば家庭インターネットラジオ、家庭用パソコン(PC)、家庭インターネットテレビおよび家庭侵入防犯システムを含み、インターネットを経由して離れた地点との間でデータの送信および/または受信ができる。そのような特性は、IPv6規格装置の構成を、技術的に必要である以上に、使用上、潜在的により信頼できないものにしてしまうことがある。
【0026】
この現在の問題に取り組むため、本発明人らは家庭ネットワーク内のIPv6規格のルーターをモニタリングする方法を考案した。その方法は、利用不能状態の場合の自動的な交替と並んで不正なIPv6規格ルーターの検出を提供する。利用不能なルーターおよび不正なルーターは、実際上、先に挙げた理由(a)から(d)のためにIPv6ルーターが一時的に不応答状態になった場合に生じうる。本方法に従って機能するIPv6規格のルーターは、利用不能になったIPv6ルーターの機能を、該ルーターが再び機能状態に回復するまで引き継ぐよう動作できる。よって、IPv6規格装置のクラスター全体が無効になるのを防ぐために、本方法は、暫時、複数のルーターが検出され、そのルーターのうちの一つまたは複数を止めるために適切なステップがとられることを許容する。
【0027】
本発明の状況をよりよく解説するため、図1で全体として10で示されているデータ通信ネットワークについてこれから説明する。ネットワーク10は、家庭領域30を含んでおり、該領域は従来式のIPv4規格のルーター(RT)60によってインターネット(INT)50にその従来式のIPv4規格に従って機能している部分において結合されている。ルーター60は図示したように領域30内でIPv4規格のローカルな通信環境(IPv4)70を生成するよう動作できる。IPv4規格の環境70は好ましくは無線および/または有線の構内ネットワークまたは一つもしくは複数の多重化接続パネルのような光ファイバー信号配送設備として実装される。
【0028】
IPv4規格環境70には、インターネットラジオ(IR)80および家庭パソコン(HPC)90のようなさまざまな装置が結合されている。ラジオ80およびパソコン90は前記のIPv4規格に従って環境70からデータ内容を受信したり、環境70にデータ内容を送信したりするようにも動作できる。さらに、第一の機器(APP1)110および第二の機器(APP2)100も環境70に結合されている。機器100、110はいずれも、当該環境に属するIPv4規格からIPv6規格環境120に属するIPv4規格への変換を提供できる。二つの環境70および120は、たとえば無線構内ネットワークとして実装されるときなどには空間的に重なり合っていてもよい。領域30内では、通信時にIPv6規格に従うよう動作できる第三の機器(APP3)130も含まれる。第三の機器130が感知する限り、第三の機器130は透明な形でIPv6規格に合わせてホストされる。
【0029】
ネットワーク10の動作についてはのちにさらに解説する。
【0030】
ネットワーク10が、IPv4規格に合わせて機能する下位部分およびIPv6規格に合わせて機能する下位部分をもっていて不均質であることがわかるであろう。さらに、たとえば図2に示されるように代替的なネットワーク構成も可能である。
【0031】
図2では、全体として200によって指示されるデータ通信ネットワークが示されている。ネットワーク200は家庭領域30を含んでおり、該領域は多用途ルーター(RT)220を経由して結合されており、該ルーターはインターネットのIPv4規格に従って機能する部分(INT)50からの、およびインターネットのIPv6規格に従って機能する部分(INT)210からのデータ内容を扱うことができる。該多用途ルーター220は当該領域内にそれぞれIPv4規格の環境およびIPv6規格の環境を生成するよう動作できる。IPv4規格の環境70にはインターネットラジオ(IR)80および家庭パソコン(HPC)90と並んで第二の機器(APP2)100が結合されている。第二の機器100は図示したようにIPv6規格の環境120にも結合可能である。やはりIPv6規格に準拠する第三の機器(APP3)および第四の機器(APP4)230がIPv6規格の環境120に結合されており、そのことは点線矢印で表されている。
【0032】
ネットワーク10もネットワーク200もどちらも不均質な家庭ネットワークであるが、図1のルーター60はIPv4規格だけに適合するのに対し、図2内のルーター220はIPv4規格とIPv6規格の両方に適合する。これらのネットワーク10および200は、IPv4規格もしくはIPv6規格のみの、またはデュアルスタックのIPv6/ IPv4規格のホストを提供するよう動作できる。たとえば、ネットワーク10内では、第一の機器110は、第二の機器100および第三の機器130を含む機器のIPv6規格クラスターのためにIPv6規格ルーターの役割を果たす。さらに、ネットワーク200では、ルーター220はIPv4規格とIPv6規格の両方に適合する統合型ルーターである。ネットワーク10および200の動作特性は、その動的特徴が、新しいネットワークノードの出現および既存のネットワークノードの消滅を生じさせることができるということである。
【0033】
本発明人らは、ネットワーク10および200ではIPv6規格ルーターの利用不能状態を判別することに関して問題が存在することを認識するに至った。そのような利用不能状態は、先にも説明したように、次の理由のうちの一つまたは複数のために生じうる:
(a)プラグ引き抜き、つまり切断;
(b)電力障害;
(c)予期せぬハードウェア障害;および
(d)ソフトウェアの「ハングアップ」などの一時的な無応答状態。
【0034】
ネットワーク10および200におけるIPv6規格ルーティング機能の利用不能状態は、先に述べたように、関連するIPv6規格の機器または装置クラスターの切断につながる。本発明人らは、関連するルーターの障害のために諸装置のクラスターが切断される問題の解決策が、ネットワーク10および200の堅牢性を保証し、よってユーザーの満足感を達成するために本質的であることを識別するに至った。本発明人らによって構想される諸解決策では、例として領域30に関して図1および図2で図示したローカルネットワーク内のIPv4規格ルーター機能が信頼できる形で動作状態であり続けることが必要事項となっている。
【0035】
本発明を解説するために、ルーターとして機能しうるIPv6規格機器のことを「IPv6ルーター候補」または単に「候補」と称する用語法体系を用いることが便利である。たとえば、図1のネットワーク10の第一および第二の機器110および100ならびに図2のネットワーク200の第二の機器100は「候補」と見なされることになる。よって、本発明人らは、IPv6規格クラスター全体が切断されるという前述の問題への解決策は、ルーター利用不能状態を自動的に検出して、一つまたは複数の「候補」をIPv6規格ルーター機能を引き継ぐために使用することによって前記クラスターへの通信を維持することであることを認識するに至った。そのような「候補」の使用は、ネットワーク10、200の信頼できる動作を保証するために本発明に基づく方法が採用されることを必要とする。本発明人らはIPv6規格のルーター機能が従来方式では静的に割り当てられていることを認識しているものの、IPv6規格のルーター機能は本発明の方法を利用することによって動的に割り当てられることもできる。
【0036】
本方法では、IPv6規格ルーターは、その付随するリンクローカルインターフェース上で伝達されるルーター広告をモニタリングすることによって検出可能である。IPv6規格のルーターが利用可能な場合、該ルーターに接続されている各IPv6規格装置は該ルーターそのものを含めてIPv6規格のプレフィックスを含んでいるルーター広告を受信することになる。これは、前記装置のそれぞれがステートレスな自動構成設定のために使うことが許されているもので、文書RFC2462(1998年12月)に記載されており、該文書はここに参照によって組み込まれる。ここで、「RFC」とは「Request for Comments」の略である。これらのルーター広告を受け取る装置のそれぞれは、該ルーターのIPv6規格のリンクローカルアドレスを取得することができる。このことは文書RFC2373(1998年7月)に記載されており、該文書はここに参照によって組み込まれる。こうして、本発明人らは、前述のルーター広告がIPv6規格ルーターの利用不能状態の指標となることを認識するに至っている。
【0037】
したがって、本発明の方法では、不均質なIPv4/IPv6通信ネットワークにおいてIPv6規格のルーター活動をモニタリングする機能を含めることが望ましい。よって、ネットワーク10、200は、現在アクティブなIPv6規格のルーターのIPv6リンクローカルアドレスを追跡するものとしてIPv6規格ルーターの監視器を含む。そのような機能は以下では監視器と称される。監視器の一つの好適な候補は、接続されたIPv6規格の装置のクラスターの状態とは独立して動作状態に留まるIPv4規格のノード、たとえばIPv4規格のルーターである。しかしながら、本発明人らはIPv4データ内容についてのみ動作できるIPv4規格の監視器は従来はIPv6規格のルーター広告を受信しないことを認識した。従来は、IPv4規格の監視器が障害のあったIPv6規格ルーターから引き継ぎをする装置に関する決定を実行する。引き継ぎは、「アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programming Interface)」の略の「API」として知られる、前述の「候補」が監視器と一緒に実行する対話に基づいて行われる。そのようなAPI型の対話について以下で使用される略記号は「WhoIsIPv6Router」である。
【0038】
本発明人らは、表面上は、IPv6規格のルーターの機能を引き継ぐ簡単な方法は次のような単純なルールに基づいてできることを認識した:「IPv6規格のルーター候補で確立されたIPv6ルーターからのルーター広告を受け取らないものは、その確立されたIPv6ルーターの機能を引き継ぐよう動作できる」。しかし、この単純な方法では、複数のIPv6規格のルーター候補が同時に障害のあった確立されたIPv6ルーターの機能を引き継ごうとするという問題を受ける可能性がある。衝突状況が生じうるのである。そのような衝突を回避するため、本発明人らは改良された方法を考案した。その方法では、監視器が、障害のあった確立されたIPv6ルーターの代わりとなるIPv6ルーターとして機能しはじめることを許されるIPv6規格候補がどれであるかについての決定をするよう構成される。この改良された方法では、IPv6ルーターとしての機能を引き継ぐIPv6候補は、前述した「WhoIsIPv6Router」APIを監視器と一緒に実行する最初のものである。ただし、このAPIは監視器と各IPv6規格候補との間で関連付けられた決まった時間枠内でのみ実行できるという条件が付く。
【0039】
本発明の方法についてこれから図1から図4に関連してより詳細に説明する。本発明の方法を解説するため、以下では表1に与えた記号を用いることにする。

【0040】
〈表1〉
記号と意味
A
本方法を実行する候補のIPv6リンクローカルアドレス。簡単のため、以下では「アドレスAをもつ候補」の意味で「候補A」または単に「A」という用語法を用いる。

RA
候補AによってモニタリングされるIPv6ルーターのIPv6リンクローカルアドレス。ここで、候補Aはこのリンクローカルアドレスをメモリ中にローカルに記録するよう動作できる。

RADV
候補がルーター広告(advertisement)から取得するIPv6ルーターのIPv6リンクローカルアドレス。ここで、候補Aはこのリンクローカルアドレスをメモリ中にローカルに記録するよう動作できる。

RW
監視器によってモニタリングされるIPv6ルーターのIPv6リンクローカルアドレス。ここで、監視器はこのリンクローカルアドレスをメモリ中にローカルに記録するよう動作できる。

RouterAdv
ルーター広告があれば「真(true)」(T)となるブール変数。それ以外の場合にはこの変数は「偽(false)」(F)状態をもつ。

T
時間期間

【0041】
本発明の方法のネットワーク10および200内での動作は遵守されるいくつかのルールを適用される。これらのルールは表2で説明される。表2では、各候補、たとえば関連付けられたIPv6リンクローカルアドレスAを有する候補(つまり候補A)は、ルールに従ってルーター広告を確認するよう動作できる。

【0042】
〈表2〉
ルールと詳細
1:ルーター広告が検出されない場合、候補Aは広告からIPv6ルーターのIPv6リンクローカルアドレス(RADV)を取得できない。すなわち、RouterAdv=「偽」である。このとき候補Aは監視器にWhoIsIPv6Router(A, RA, RouterAdv)を要求するよう動作できる。その後、ルール3が実施される。

2:ルーター広告が検出された場合、候補Aは広告からIPv6ルーターのIPv6規格リンクローカルアドレス(RADV)を取得できなる。すなわち、RouterAdv=「真」である。このとき候補Aはローカルに利用可能な変数RAをルーター広告から取得された変数RADVと以下のように比較するよう動作できる:
2.1:RAとRADVが同一のとき、これは候補AがIPv6ルーターについての情報を更新しており、ある時間期間T後にネットワーク10、200内でのIPv6ルーターの利用可能性をモニタリングし続けるということを示している。
【0043】
2.2:RAとRADVが同一でないとき、これは候補AがIPv6ルーターについて古くなった情報を有していることを意味している。そのような状況では、RA=RADVとなるよう単に更新するだけでは、二つのIPv6ルーターがあってその一方が不正である場合にデッドロックにつながる可能性がある。そのようなデッドロックを避けるため、候補AはWhoIsIPv6Router(A, RA, RouterAdv)APIを監視器と実行し、それからルール3の実行に進む。

3:候補Aは監視器にWhoIsIPv6Router(A, RA, RouterAdv)を依頼し、その結果監視器はローカルに利用可能な変数RWとパラメータとして渡された変数RAとを比較し、次いで候補Aは以下の確認を実行する:
3.1:RWがRAと等しくないとき、RAと等しくないIPv6リンクローカルアドレスRWを有するIPv6ノードがIPv6ルーターとして同定される。監視器は変数RWを候補Aに返し、その後ルール4が実行される。
【0044】
3.2:RWがRAに等しくてRouterAdvが「偽」のとき、これは、ネットワーク10、200上では現在のところまだ利用可能なIPv6ルーターがないことを示していると解釈される。そのような状況では、監視器は、候補AがIPv6ルーターとして動作開始できるという決定を実行し、その後RWはアドレスAに更新され、変数RWが候補Aに返され、その後ルール4が実行される。
【0045】
3.3:RWがRAに等しくてRouterAdvが「真」のとき、これは、RADVがRAに等しくないためにネットワーク上に少なくとも二つのルーターがあることを示している。そのような状況では、監視器は、RWがIPv6ルーターであると決定し、RWを候補Aに返し、候補Aはその後ルール4の実行に進む。

4:候補Aは監視器からRWを受信し、変数RWを自分のアドレスAと比較して以下の確認を実行する:
4.1:RWがAに等しければ、候補AはIPv6ルーターの機能を引き継ぎ、その後ルール5が実行される。
【0046】
4.2:RWがAに等しくなければ、候補Aは変数RAを自分のアドレスAと次のようにして比較する:
4.2.1:RAがAに等しければ、候補Aは、自分がIPv6ルーターとして機能していたが候補Aが一時的に利用不能であった間アドレスRWをもつ別の候補が引き継いでいたことを検出する。その結果、候補AはIPv6ルーターとしては停止し、それからルール5の実行に進む。
【0047】
4.2.2:RAがAに等しくなければ、候補AはアドレスRWをもつノードがIPv6ルーターであることを検出し、それからルール5の実行に進む。

5:候補Aは、監視器によって返された新しいIPv6ルーターのアドレス(RW)を用いてRAを更新する。候補Aは次いである時間期間T後にネットワーク10、200上でのIPv6ルーターの利用可能性のモニタリングに進む。

【0048】
表2において与えられているルール1から5は図3でも図式的に表されており、本方法を実装するときに生じる判断点がより見分けやすくなっている。図3では、表3で定義されるそれぞれの意味をもつ略記号が使われている。

【0049】
〈表3〉
機能番号 略記号
意味

300 BG
ステップ開始(Begin)
310 CK F IPv6 RT EN
IPv6ルーターが有効になっているか確認
(Check if IPv6 router enabled)
320 ED
ステップ終了(End)
330 CK F RT ADV
ルーター広告があるか、つまりRouterAdvを確認
(Check if there are router advertisements)
340 RA EQ RADV
RAがRADVに等しいか
350 WhoIs-IPv6-RT
プロトコルWhoIsIPv6Router(A, RA, RouterAdv)をIPv6ルーター
監視器とともに実行してIPv6ルーターRWの更新されたアドレスを取得
360 A EQ RW
AがRWに等しいか
370 A CON IPv6 RT
アドレスAのノードがIPv6ルーターであると確証される(confirmed)
380 A EQ RA
AはRAに等しいか
390 RW CON IPv6 RT
アドレスRWのノードがIPv6ルーターであるとして確証される
400 STP A RT
Aをルーターとして停止(Stop)
410 UPD RA BY RA EQ RW
RAを更新(Update)、つまりRA=RW
FEPT
各期間Tについて(For each period T)
Y、N
YES、NO
T、F
真(True)、偽(False)

【0050】
表2で規則の形で与えられた方法について、これから図3を参照しつつ述べる。
【0051】
図3では、本発明の方法に対応するフローチャートが示されている。このフローチャートは図1の不均質なネットワーク10を参照しつつ解釈していくが、図2のネットワーク200にも等しく適用可能である。各候補は、起動されたときに、たとえば各候補内に含まれるコンピューティングハードウェアにおいて本発明の方法を実行するよう動作できる。そのような起動の結果、各候補は現在アクティブなIPv6規格のルーターに関する情報を更新するか、あるいはネットワーク10内に利用可能なIPv6規格のルーターが存在しなければ自動的に自らをIPv6規格のルーターとして構成設定する。
【0052】
フローチャートのステップ300で、所与の候補が電源投入、すなわち起動される。後続のステップ310で、候補Aは、自分がIPv6規格のルーターとして機能する能力があるかどうかを判定する確認をする。候補Aのメーカーは、たとえばそこに適切なハードウェアを含めること、および/またはソフトウェアパラメータをしかるべく設定することによって、潜在的にルーターとして機能する能力があるかどうかを決定することになる。候補Aが、限られたプロセッサ(CPU)および付随するメモリ容量などのためリソースの制約があるか、あるいはオーディオビデオストリーミングのような特定の機能の実行に専用の機器である場合、メーカーは当該候補はIPv6ルーター機能を提供するためには好適でないと考えうる。よって、ルーターとして機能できるようにはなっていないがそれでも当該方法を実装する候補Aは、最後の終了状態に対応するステップ320に進み、当該方法実行の停止となる。逆に、候補Aがメーカーによってルーターとして機能できるようにされている場合、当該方法はステップ310からステップ330へと進む。
【0053】
ステップ330で、候補Aはネットワーク10上で自らを広告しているルーターがあるかどうかを確認する。それは、すでにアクティブなIPv6規格ルーターがネットワーク10内に動作して存在しているということを示すことである。候補AがRouterAdv=「真」であると見出し、アクティブなルーターがあることを確証した場合には、本方法はステップ340に進む。逆に、候補AがRouterAdv=「偽」であると見出し、アクティブなルーターが存在していないことを確証した場合には、本方法はステップ350に進む。
【0054】
ステップ340では、候補Aはローカルに利用可能な変数RA(候補Aがモニタリングするアドレス)が変数RADV(広告された、候補Aによって取得されたアドレス)に等しいかどうかを確認する。存在しているどの候補Aも用いられるべきIPv6ルーターに関して古くなった情報を有していなければ(すなわち、RAがRADVと等しくない)、本方法はステップ350に進む。逆に、存在している諸候補AがIPv6ルーターについての最新の情報を有していれば、該諸候補Aはある時間期間T後にもとのステップ330に進んでIPv6ルーターの利用可能性のモニタリングをする。
【0055】
ステップ350では、候補Aは、どの装置または機器がIPv6ルーターの機能を引き継ぐことができる、あるいはすでに引き継いだのかの情報を受け取るため、WhoIsIPv6Router(A, RA, RouterAdv)を監視器とともに実行する。そのような機器またはデバイスに関する情報は変数RWとして返される。ステップ350が完了すると、本方法はステップ360に進む。
【0056】
ステップ360では、候補Aは、ステップ350において監視器によって返された変数RWが自分のIPv6リンクローカルアドレスに等しいかどうかを判定する確認をする。等しいと判定されれば、すなわちオプション「Y」の場合には、候補AはIPv6ルーターであり、本方法はその後ステップ360からステップ370に進む。そうでなければ、本方法はステップ360からステップ380に、すなわちオプション「N」に進む。
【0057】
ステップ370では、候補Aは(自分のローカルIPv6アドレスを確認することによって)IPv6ルーターであると確証される、すなわちIPv6ルーターになる。本方法はその後ステップ410に進む。
【0058】
ステップ380では、候補Aはローカルに利用可能な変数RAが自分のIPv6リンクローカルアドレスAに等しいかどうかを確認する。等しいと判定されれば、すなわちオプション「Y」の場合には、候補Aは、自分はIPv6ルーターだったが、候補Aが一時的に利用不能だった間に変数RWに対応するアドレスをもつ別の機器または装置が引き継いでいたことを検出し、次いで本方法はステップ400に進む。逆に、等しくないと判定されれば、すなわちオプション「N」の場合には、本方法は直接ステップ390へと進む。
【0059】
ステップ400では、候補AはIPv6ルーターとして機能することを終える。本方法がステップ400に進んだということは候補Aが不正なIPv6ルーターとして機能してきたことを示すからである。次いで本方法はその後ステップ390に進む。
【0060】
ステップ390では、候補AはパラメータRWに等しいアドレスをもつノードがIPv6ルーターであると結論する。本方法はその後ステップ410に進む。
【0061】
ステップ410では、候補Aは、監視器によって返された、ネットワーク10上での新たなIPv6規格ルーターのアドレスをもつ変数RWを更新する。すなわち、RA=RWとする。期間T後、候補Aは、図3に示すようにもとのステップ330に進むことによってネットワーク10上のIPv6ルーターの利用可能性をモニタリングすることを続ける。
【0062】
図3に図示した方法では、監視器によって提供されるWhoIsIPv6RouterというAPI(Application Programming Interface)が用いられている。候補Aは「リモート手続き呼び出し(Remote Procedural Call)」、すなわちRPCを経由してこのAPIを呼び出すよう動作できる。
【0063】
図3を参照しつつ行ってきた本発明の方法の以上の記述から、これが、IPv6規格データ内容ルーティングのための役割を引き受けることが潜在的に可能な装置または機器、つまり候補の上で実行可能であることが理解されるであろう。図3に図示された方法は監視器を利用する。この監視器も、前述のWhoIsIPv6Router機能を実装するために相補的な方法に従って動作できる。図4で用いられる略記号は表4で与えられる意味が対応している。

【0064】
〈表4〉
機能番号 略記号
意味

500 BG
ステップ開始(Begin)
510 RA EQ Rw
RAがRwに等しいか確認
520 RT ADV
変数RouterAdvの値を確認
530 UPD RW BY RW EQ A
RWを更新(Update)、つまりRW=A
540 RET RW
IPv6ルーターのアドレスを候補Aに返す(Return)
550 ED
終了ステップ
Y、N
YES、NO
T、F
真(True)、偽(False)

【0065】
図4では、この相補的な方法はステップ500で始まる。図3でステップ350で呼び出されたものである。相補的方法は次いでステップ510に進み、そこで監視器はパラメータとして渡された変数RAがローカルに利用可能な変数RWの値と等しいかどうかを確認する。等しくなければ、すなわち「N」オプションの場合には、候補Aは用いられているIPv6ルーターについての古くなった情報を有しており、よって新たなルーターは変数RWに対応する。相補的方法は次いでステップ540に進む。逆に、等しければ、すなわち「Y」オプションの場合には、相補的方法はステップ510からステップ520に進む。
【0066】
ステップ520では、相補的方法は、パラメータとして渡された変数RouterAdvが「真」であるかどうかを確認する。相当が同定されれば、すなわち「真」同定の場合には、相補的方法はステップ540に進む。逆に、非相当が同定されれば、すなわち「偽」同定の場合には、相補的方法はステップ530に進む。
【0067】
ステップ530では、相補的方法は、アドレスRWを有するIPv6ノードがネットワーク10内でIPv6ルーターであったがもはや利用可能でないのかどうかを、対応する広告がないことによって検出するよう動作できる。もし肯定であれば、相補的方法はアドレスAをもつIPv6ノードがIPv6ルーターとして引き継ぐことが許されると決定する。相補的方法は次いでステップ530からステップ540に進む。
【0068】
ステップ540では、相補的方法はIPv6ルーターのアドレスを候補Aに返す。その後、相補的方法は終了ステップ550に進む。
【0069】
図3に示されたIPv6ルーターとして機能できる装置または機器内に実装される方法も、図4に示された対応する相補的方法も、いずれも実行可能ソフトウェアなどのアルゴリズムとして実装されうる。代替的または追加的に、これらの方法は一つまたは複数の特定用途向け集積回路などのカスタムハードウェアとしても実装されうる。
【0070】
図3および図4の方法のさらなる動作を解説するため、ネットワーク10内で生じる若干の例のシナリオをこれから述べる。

【0071】
〈シナリオ1〉最初の起動において
設定:ネットワーク10および200の最初の起動において、各候補における変数RAの初期値は0,すなわちRA=0である。同様に、監視器における変数RWの初期値は0、すなわちRW=0である。IPv6規格ルーター対応の機器である候補だけが、図3に図示された方法の実行を開始する。
【0072】
シナリオ1.1:候補A1すなわち第一の機器(APP1)110は起動する最初のものである。その後、候補A1はシーケンスステップ330、350、360、370そして最後に410を実行する。ステップ350では、監視器がシーケンスステップ510、520、530そして最後に540を実行する。これらの2つのシーケンスのステップを実行した結果として、A1すなわち機器110はIPv6規格のルーターとして機能しはじめ、それにより機器(APP3)130をIPv4規格の環境70を提供しているルーター60に結合させる。
【0073】
シナリオ1.2:候補Ak(k>1)はステップ330、任意的に340、350、360、380、390そして最後に410のシーケンスを実行する。候補Akがステップ350を実行するとき、監視器はステップ510、そして最後に540を実行する。
【0074】
これらのステップのシーケンスの結果として、候補A1すなわち機器110はIPv6規格のルーターとして機能しはじめ、それにより機器(APP3)130をIPv6規格の環境120を提供しているルーターに結合させる。

【0075】
〈シナリオ2〉既存のIPv6ルーターが利用不能になり、たとえばA1が無応答になる
設定:候補A1はネットワーク10におけるアクティブなIPv6ルーターとして機能していたが、突然ネットワーク10内で応答しなくなった。同様の考察はネットワーク120にも関わる。各候補における、すなわち機器100、110、130のそれぞれにおける変数RAの値はRA=A1である。監視器における変数RWの値はRW=A1である。候補A1に障害が起こるような状況では、領域30内に存在しているすべてのIPv6規格の装置はもはやルーター広告を受信しなくなる。候補、すなわち機器100、110がそのような広告の欠如を検出すると、該候補は前述の「WhoIsIPv6Router」ステップ350を図3に図示したように実装する。
【0076】
シナリオ2.1:候補A2すなわち機器100が、IPv6ルーターすなわち機器110が利用不能であることを検出した最初の候補である。その後、候補A2はステップ330、350、360、370そして最終的に410のシーケンスを実行する。ステップ350を実行する際、監視器がステップ510、520、530そして最後に540のシーケンスを実行する。
【0077】
これらのステップのシーケンスの結果として、候補A2すなわち機器100は候補A1すなわち機器110からIPv6規格の環境120内でIPv6ルーターである機能を引き継ぐ。
【0078】
シナリオ2.2:添え字k>2として、それぞれの次候補Ak(図1には示さず)は、A1とA2を含まない候補の集合である。その後、添え字k>2の候補Aはそれぞれステップ330、任意的に340、350、360、380、390、410のシーケンスを実行する。候補Aでステップ350が実行されている際には、監視器は図4に図示した相補的方法のステップ510および540を実行する。
【0079】
これらのステップのシーケンスの結果として、候補A2すなわち機器100は、候補A1すなわち機器110からIPv6規格の環境120内でIPv6ルーターである機能を引き継ぐ。

【0080】
〈シナリオ3〉二つ以上の機器または装置がルーター広告を送る;ネットワーク10内における「不正」ルーターの存在;同様の考察はネットワーク120にも関わる。
【0081】
設定:
(a)候補A1すなわち機器110はアクティブなIPv6ルーターとして機能していたが、その後利用不能になった。
(b)候補A2すなわち機器100はIPv6ルーターである機能を引き受け、結果として、候補A1以外の各候補における変数RAの値はRA=A2となり、監視器における変数RWの値はRW=A2となる。
(c)候補A1がその利用不能期間ののちに復帰し、再初期化されることなく再びアクティブになる。候補A1における変数RAの値はまだRA=A1である。
【0082】
ある時間にわたって、ネットワーク10は二つのルーター、すなわち、候補A1、A2の両方が機能している。その結果、候補A1、A2を含めて各候補は候補A1、A2からルーター広告を受信することになる。ここで、これら二つの候補A1、A2の一方は不正である。そのような状況では、いくつかのシナリオが起こりうる。図3および図4の方法はそれらに対応するよう構成される。
【0083】
シナリオ3.1:候補A1は自分のIPv6ルーター広告を受信する。ステップ330、340の実行に進み、その後時間期間T後に再びネットワーク10をモニタリングする。結果として、ネットワーク10は領域30内では再構成されない。
【0084】
シナリオ3.2:候補A1は候補A2からIPv6ルーター広告を受信する。その後、候補A1はステップ330、340、350、360、380そして最後に410のシーケンスを実行する。ステップ350の間、監視器はステップ510および540のシーケンスを実行する。結果として、候補A1はIPv6ルーターとして機能するのをやめ、今では候補A2が正規のルーターであるという情報を用いて更新される。
【0085】
シナリオ3.3:候補A2が自分のIPv6ルーター広告を受信する。ステップ330、340の実行に進み、その後時間期間T後に再びネットワーク10をモニタリングする。結果として、ネットワーク10は領域30内では再構成されない。
【0086】
シナリオ3.4:候補A2が候補A1からのIPv6ルーター広告を受信する。その後、候補A2はステップ330、340、350、360、370そして最後に410のシーケンスを実行する。ステップ350の間、監視器はステップ510、520そして最終的に540のシーケンスを実行する。結果として、候補A2は領域30内でのIPv6ルーターに留まる。
【0087】
シナリオ3.5:添え字k>2として、それぞれの次候補Akは、候補A1からのIPv6ルーター広告を受信する。その後、候補Aはステップ330、340、350、360、380、390、そして最後に410のシーケンスを実行する。ステップ350の際には、監視器はステップ510、520そして最後に540のシーケンスを実行する。結果として、候補A2は領域30内でのIPv6ルーターに留まる。
【0088】
シナリオ3.6:添え字k>2として、それぞれの次候補Akは、候補A2からのIPv6ルーター広告を受信する。その後、候補Aはステップ330、そして最後に340のシーケンスを実行し、それから時間期間T後に再びネットワーク10をモニタリングするようになる。結果として、候補A2は領域30内でのIPv6ルーターに留まる。
【0089】
図3および図4の方法はこのように、ネットワーク10にIPv6規格のルーティング機能を提供するための堅牢な方法を提供する。同様に、前記方法はネットワーク200およびその他の関係する種類のネットワークで使われることもできる。さらに、図3および図4の方法は、IPv6規格のルーター機能を自動的に引き継ぐことのできるよう動作できるIPv6ルーター対応ノードを提供することもできる。
【0090】
さらに、図3および図4の方法は、複合的な不均質規格のネットワークにおいて時間とともに潜在的なルーターが利用可能になる、および/または利用不能になる場合に構成を動的に変えることを許容する。そのような動的な融通性は、静的なトポロジーを用いるIPv6ルーターを含む現在のネットワークと対照をなす。
【0091】
したがって、図3および図4の方法は、ネットワーク10、200の堅牢さを増すことができる。しかし、本発明はIPv4規格およびIPv6規格のコンテキストで記載されているが、本発明が他の規格にも適用可能であることは理解されるであろう。
【0092】
以上に述べた本発明の実施形態が付属の請求項によって定義される本発明の範囲から外れることなく修正されうることは理解されるであろう。
【0093】
「有する」「含む」「組み込む」「包含する」「である」「もつ」といった表現は、明細書および対応する請求項を解釈する際には非排他的な仕方で解釈されるべきものである。すなわち、明示的に存在すると定義されていない他の項目または要素を許容できるものと解釈されるべきものである。単数形での言及も複数での言及として解釈され、その逆もありうる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】IPv4規格とIPv6規格の機器の不均質な混合を有する第一のネットワークを示す図である。
【図2】IPv4規格とIPv6規格の機器の不均質な混合を有する第二のネットワークを示す図である。
【図3】図1および図2のネットワーク内に含まれる機器または装置をアクティブにしてIPv6ルーティング機能のための候補として引き継ぐようにさせる方法のフローチャートである。
【図4】図3に図示した方法が適用される機器または装置を監督すなわち監視するための、図3に図示した方法と一緒に必要とされる相補的な方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーター機能を自動的に移行させる方法であって:
(a)ネットワーク内を通過するデータトラフィックのルーティングのための該ネットワーク内のルーターとして動的に割り当て可能な一つまたは複数の候補装置を含むデータ通信ネットワークを提供し、
(b)前記一つまたは複数の候補装置の活動をモニタリングし、該装置のうちの一つまたは複数にそこでデータルーティング機能を提供する権限を委ねるための監視手段を提供し、
(c)各候補装置が、ネットワーク中でアクティブであると想定する一つまたは複数のルーターのローカルに保存された第一の記録を含んでいるよう構成し、
(d)各候補装置が、ネットワークをモニタリングして現在ネットワーク上でアクティブな一つまたは複数のルーターを決定し、アクティブなルーターの対応する第二の記録を生成するよう構成し、
(e)各候補装置がその第一の記録と第二の記録を比較するよう構成し、
(f)前記候補装置の一つまたは複数がステップ(e)において前記第一の記録および第二の記録が等しくないと判定したときに、前記一つまたは複数の装置が前記監視手段からのより最近の第一の記録を用いて更新されるよう構成し、
(g)前記候補装置の一つまたは複数がステップ(e)において自分のアドレスが前記第一の記録のアドレスに一致すると判定したときに、該一つまたは複数の候補装置がネットワーク内でのルーターの機能を帯びるよう構成し、
(h)必要に応じてステップ(a)から(g)を繰り返す、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記一つまたは複数の候補装置がIPv6規格のルーターとして機能するよう構成されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、前記監視手段および一つまたは複数の候補装置が、ステップ(b)およびステップ(d)におけるネットワーク内のルーター活動のモニタリングをネットワーク内で広告されるリンクローカルデータによって行うよう動作できることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記監視手段が、ネットワーク内でアクティブな複数の競合するルーターの間の衝突を解決するために、ネットワーク中の一つまたは複数の候補装置を選択的にアクティブにしたり非アクティブにしたりするよう動作できることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記監視手段が、ネットワーク内で少なくともローカルにアクティブなルーターはない状況において前記候補装置のうちの一つを割り当てるよう動作できることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ネットワークが不均質なIPv4/IPv6規格のネットワークであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項1記載の監視手段を動作させる方法であって:
(i)前記監視手段において一つまたは複数の候補装置から少なくとも一つの通信を受信し、該少なくとも一つの通信は候補装置の第一の記録の詳細を含んでおり、
(j)ステップ(i)での第一の記録が、候補ルーターのアクティブ化および/または非アクティブ化を決定するための、前記監視手段において維持されている候補ルーターのある記録に対応していることを確認し、
(k)少なくともネットワーク内のローカルなルーター活動をモニタリングし、
(l)前記候補装置のうちのどれがアクティブでどれが非アクティブであるべきかに関して一つまたは複数の候補装置を更新し、
(m)前記監視手段において維持されている候補ルーターの記録を更新する、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法に従うルーターとして機能するよう動作できる一つまたは複数の候補装置を含むことを特徴とする通信ネットワーク。
【請求項9】
請求項1記載の方法に従うルーターとして動作できることを特徴とする候補装置。
【請求項10】
請求項7記載の方法に従って動作できる監視手段を含むことを特徴とするルーターモニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−515909(P2007−515909A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546417(P2006−546417)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052681
【国際公開番号】WO2005/064866
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】