説明

ルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理方法及び装置及びプログラム

【課題】LAGリンク上でルーティングプロトコル・パケット(以下、パケットと記す)が転送される場合に、当該LAGリンクのどのメンバリンクに故障が発生するかにより意図せぬルーティング切替動作が発生することを防ぐ。
【解決手段】本発明は、送信側装置でのLAG処理においてパケットを当該LAGの全メンバリンクにコピー転送し、受信側装置のLAG処理において当該LAGリンクからのパケットの到着状況を確認して同パケットの一つを上位レイヤ処理へ渡すか全て破棄するかを制御する。また、受信側装置で、パケットの到着数≧ミニマムリンク数の場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理に渡し、そうでない場合に同パケットを全て破棄する。または、到着したパケットが全く損失していなかった場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理に渡し、1個でも損失していた場合に同パケットを全て破棄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション(以下、LAGと記す)処理方法及び装置及びプログラムに係り、特に、IEEE 802.3ad標準にて規定されたEther LAGや、各ベンダが独自に実装しているPOS(Packet Over Sonet)LAG等のIPネットワーク上のLAGにおいて、LAGリンク上でルーティングプロトコル・パケット(OSPF(Open Shortest Path First) Hello、 BGP(Border Gateway Protocol) KEEPALIVE等)が転送される場合に、当該LAGリンクのメンバリンク故障による意図せぬルーティング切替動作が発生することを防ぐためのLAG処理におけるルーティング制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のLAG技術について説明する。
【0003】
LAGとは、複数本の物理リンクを仮想的に1本の物理リンクのように扱うことを可能とする技術である。
【0004】
一般に、LAGにおいては、送信側装置のLAG処理において、送信元IPアドレス、宛先IPアドレス等の組み合わせによるフロー識別が実行され、同一フローに属するパケットは特定の1つのメンバリンクにのみ転送される。これは、同一フローに属するパケットを別々のメンバリンクに転送した場合、フロー内でのパケットの順序逆転が発生するためである(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
そして、標準化されているEther LAGや一部ベンダのPOS LAGの実装においては、LACP(Link Aggregation Control Protocol)またはそれ相当の相互接続プロトコルが実装されており、LAGメンバリンクに故障が発生した場合の故障検知とLAG再構成が自動的に実行される仕組みになっている。
【0006】
また、LAGにおいては多くのベンダ実装において、ミニマムリンク数設定、すなわち、正常なLAGメンバリンクの数が一定数未満になった場合に当該LAGリンクを全断とする設定が可能となっている。
【0007】
以上を踏まえ、以下、LAGの動作について説明する。なお、ここでは、LAGリンク上でルーティングプロトコル・パケットとしてOFPF Helloパケットが転送されているものとする。
【0008】
図11は、従来のLAG処理を示す図である。
【0009】
同図において、ルータ10,20は、それぞれルーティング処理部11、21、LAG処理部12,22、物理ポート13〜13、23〜23を有する。また、ルータ10の物理ポート13〜13とルータ20の物理ポート23〜23間には、LAGリンクを構成する各メンバリンク31〜31が存在し、同LAGリンクを介して、ルータ10とルータ20との間でルーティングプロトコル・パケットがやり取りされる。同図中の点線は、ルーティングプロトコル・パケットの転送の様子を示している。
【0010】
まず、リンク故障が発生していない場合のLAGリンク上でのルーティングプロトコル・パケット転送動作について図11を用いて説明する。
【0011】
前述の、同一フローに属するパケットは特定の1つのメンバリンクにのみ転送される、というLAGの特性により、LAGリンク両端のルータ10、ルータ20は、自装置から対向装置に向けたOSPF Helloパケットをそれぞれ、例えば、(ポート13から)リンク31のみへ、(ポート13から)リンク31のみへ転送する。
【0012】
次に、リンク故障が発生した場合のLAGリンク上でのルーティングプロトコル・パケット転送動作について図11を用いて説明する。
【0013】
リンク故障がリンク31やリンク31、すなわち、OSPF Helloパケットが転送されていないLAGメンバリンクで発生し、かつ正常なLAGメンバリンクの数がミニマムリンク数以上である場合は、ルータ10もルータ20もOSPF Helloパケットを正常に受信するため、本LAGリンクを介したルーティングに変更が発生する(経路切替が動作する)可能性はないが、リンク故障がリンク31やリンク31、すなわち、OSPF Helloパケットが転送されているLAGメンバリンクで発生した場合は、LACP等によりLAG再構成が動作して新たなLAGメンバリンクにOSPF Helloパケットが転送されるようになるまではルータ10やルータ20はOSPF Helloパケットを受信できなくなり、LAGの再構成に要する時間によっては、OSPF Helloのタイムアウトが発生し、本LAGリンクを介したルーティングに変更が発生する。すなわち、経路切替が動作する可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Rich Seifert, "LANスイッチング徹底解説"、349頁、日経BP社(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のLAG技術は、LAGリンク上でルーティングプロトコル・パケットが転送される場合に、LAGメンバリンクのうちの特定リンクのみに転送されることにより、
1)リンク故障が、ルーティングプロトコル・パケットが転送されているLAGメンバリンクで発生した場合、LAGメンバリンクのうちのミニマムリンク数以上のリンクが正常ならば当該LAGリンクを迂回する経路切替を動作させたくない場合でも経路切替が動作してしまう可能性がある(第1の課題):
2)リンク故障が、ルーティングプロトコル・パットが転送されていないLAGメンバリンクで発生した場合、LAGメンバリンクのうちの1本のリンクにでも故障が発生したならば当該LAGリンクを迂回する経路切替を高速に動作させたい場合でも経路切替が高速に動作しない可能性がある(第2の課題):
という課題を有している。すなわち、どのLAGメンバリンクに故障が発生するかにより意図せぬ経路切替が動作してしまう可能性があるという課題を有している。
【0016】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、LAGリンク上でルーティングプロトコル・パケット(OSPF Hello、BGP KEEPALIVE等)が転送される場合に、当該LAGリンクのどのメンバリンクに故障が発生するかにより意図せぬルーティング切替動作が発生する(切替を動作させたくなくとも切替が動作してしまう、または、切替を動作させたいが切替が動作しない)ことを防ぐルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理方法及び装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
図1は、本発明の原理を説明するための図である。
【0018】
本発明(請求項1)は、前述の第1の課題、第2の課題を解決するために、送信側装置のLAG処理においてルーティングプロトコル・パケットを識別して(ステップ1)当該LAGリンクの全メンバリンクにコピー転送し(ステップ2)、
受信側装置のLAG処理において当該LAGリンクから転送されて来たルーティングプロトコル・パケットを識別して(ステップ3)その到着状況を確認して同パケットの一つ(送信側装置でコピーしたパケットのうちの一つのみ)を上位レイヤ処理へ渡すか全て破棄するかを制御する(ステップ4)LAG処理方法である。
【0019】
本発明(請求項2)は、前述の第1の課題を解決するために、受信側装置のLAG処理において当該LAGリンクからのルーティングプロトコル・パケットの到着数と当該LAGリンクのミニマムリンク数とを比較し、ミニマムリンク数以上のルーティングプロトコル・パケットが到着していた場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理に渡し、ミニマムリンク数未満のルーティングプロトコル・パケットが到着していた場合に同パケットを全て破棄して上位レイヤ処理に渡さないLAG処理方法である。
【0020】
本発明(請求項3)は、前述の第2の課題を解決するために、受信側装置のLAG処理において当該LAGリンクからのルーティングプロトコル・パケットの到着数を確認し、同パケットが全く損失していなかった場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理に渡し、同パケットが一つでも損失していた場合に同パケットを全て破棄して上位レイヤ処理に渡さないLAG処理方法である。
【0021】
図2は、本発明の原理構成図である。
【0022】
本発明(請求項4)は、前述の第1の課題、第2の課題を解決するために、送信側装置100のLAG処理手段120は、
ルーティングプロトコル・パケットを識別する第1のパケット識別手段121と、
ルーティングプロトコル・パケットを当該LAGリンクの全メンバリンクにコピー転送するパケットコピー転送手段122とを有し、
受信側装置200のLAG処理手段220は、
当該LAGリンクから転送されて来たルーティングプロトコル・パケットを識別する第2のパケット識別手段221と、
ルーティングプロトコル・パケットの到着状況を確認して同パケットの一つ(送信側装置でコピーしたパケットのうちの一つのみ)を上位レイヤ処理手段へ渡すか全て破棄するかを制御するパケット転送制御手段222とを有する
LAG処理装置である。
【0023】
本発明(請求項5)は、前述の第1の課題を解決するために、受信側装置200のLAG処理手段220のパケット転送制御手段222において当該LAGリンクからのルーティングプロトコル・パケットの到着数と当該LAGリンクのミニマムリンク数とを比較し、ミニマムリンク数以上のルーティングプロトコル・パケットが到着していた場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理手段に渡し、ミニマムリンク数未満のルーティングプロトコル・パケットが到着していた場合に同パケットを全て破棄して上位レイヤ処理手段に渡さない手段を含むLAG処理装置である。
【0024】
本発明(請求項6)は、前述の第2の課題を解決するために、受信側装置200のパケット転送制御手段222において当該LAGリンクからのルーティングプロトコル・パケットの到着数を確認し、同パケットが全く損失していなかった場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理手段に渡し、同パケットが一つでも損失していた場合に同パケットを全て破棄して上位レイヤ処理手段に渡さない手段を含むLAG処理装置である。
【0025】
本発明(請求項7)は、請求項4または5または6のいずれか1項に記載のLAG処理装置を構成する手段としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明を用いることにより、LAGリンク上でのルーティングプロトコル・パケット(OFPF Hello、BGP KEEPALIVE等)転送について、当該ネットワークの運用者のポリシーにより、ある一定数以上のLAGメンバリンクが正常ならばどのLAGメンバリンクが故障しようとも転送する(すなわち、LAGメンバリンク故障がルーティングプロトコル・パケット転送に及ぼす影響を抑制する)ことも、1本のLAGメンバリンクでも故障したならば転送しない(すなわち、LAGメンバリンク故障を敏感にルーティングプロトコル・パケット転送に反映する)ことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の原理を説明するための図である。
【図2】本発明の原理構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるLAG処理を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるルータの構成図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における送信側ルータのLAG処理のフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態におけるリンク故障発生時の動作を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態におけるルータの構成図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における受信側ルータのLAG処理のフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態におけるリンク故障発生時の動作を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態における受信側ルータのLAG処理のフローチャートである。
【図11】従来のLAG処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面と共に本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
[第1の実施の形態]
本実施の形態は、IEEE 802.3ad標準に代表されるIPネットワーク上のLAGにおいて、LAGリンク上でルーティングプロトコル・パケット(OSPF Hello、BGP KEEPALIVE等)が転送される場合に対応した実施の形態である。本実施の形態では、LAGリンク上の特定の1リンクのみにルーティングプロトコル・パケットが転送されることによる意図せぬ経路切替動作が発生することを防ぐためのものである。
【0030】
図3は、本発明の第1の実施の形態におけるLAG処理を示す図である。
【0031】
同図において、ルータ100,200は、それぞれルーティング処理部110、210、LAG処理部120,220、物理ポート130〜130、230〜230を有する。また、送信側ルータ100の物理ポート130〜130と受信側ルータ200の物理ポート230〜230間には、LAGリンクを構成する各メンバリンク301〜301が存在し、同リンクを介してルータ100とルータ200との間でルーティングプロトコル・パケットがやりとりされる。同図中の点線は、ルーティングプロトコル・パケットの転送の様子を示しており、送信側ルータ100においてLAG処理部120により各LAGメンバリンクにコピー転送されたルーティングプロトコル・パケットが受信側ルータ200においてLAG処理部220により元々の一つのルーティングプロトコル・パケットの形で転送される様子を示している。
【0032】
なお、同図では、ルータ100からルータ200へのルーティングプロトコル・パケットの転送のみを示しているが、ルータ200からルータ100へのルーティングプロトコル・パケットの転送についても全く同様である。
【0033】
図4は、本発明の第1の実施の形態におけるルータの構成を示す図である。送信側ルータ100は、ルーティング処理部110、LAG処理部120、物理ポート130を有し、LAG処理部120は、パケット識別部121とパケットコピー転送部122を包含する分配処理部123を有する。受信側ルータ200は、ルーティング処理部210、LAG処理部220、物理ポート230を有し、LAG処理部220は、パケット識別部221とパケット転送制御部222を包含する集約処理部223を有する。
【0034】
なお、同図では、説明のため送信側ルータと受信側ルータ別に構成を示しているが、各ルータは同様の構成を有している。
【0035】
まず、送信側ルータ100のLAG処理動作を説明する。
【0036】
図5は、本発明の第1の実施の形態における送信側ルータのLAG処理のフローチャートである。
【0037】
まず、LAG処理部120において、パケットがルーティング処理部110から受信されると(ステップ101)、分配処理部123において、ハッシュ計算によりパケットの出力ポートが決定される(ステップ102)。次に、分配処理部123のパケット識別部121において、パケットが事前指定の送信元IPアドレスと宛先IPアドレスを持つ処理対象ルーティングプロトコル・パケット(OSPF Hello、BGP KEEPALIVE等)であるかが判定され、処理対象ルーティングプロトコル・パケットであれば(ステップ103、Y)、パケットコピー転送部122により、コピーされて、LAGメンバリンク301に対応した全ポート130に転送される(ステップ104)。一方、パケットが処理対象ルーティングプロトコル・パケットでないならば、そのまま、前記のハッシュ計算により決定された出力ポート130に転送される(ステップ105)。
【0038】
次に、受信側ルータ200のLAG処理動作を説明する。
【0039】
LAG処理部220の集約処理部223のパケット識別部221において、送信側ルータ100からLAGリンクを介して転送されて来たパケットが事前指定の送信元IPアドレスと宛先IPアドレスを持つ処理対象ルーティングプロトコル・パケットであるかが判定され、処理対象ルーティングプロトコル・パケットであれば、パケット転送制御部222において、パケットの到着状況が確認され、送信側ルータ100でコピーされたパケットのうちの一つのみがルーティング処理部210に渡される、または、全てが破棄される。一方、パケットが処理対象ルーティングプロトコル・パケットでないならば、そのまま、ルーティング処理部210に渡される。なお、受信側ルータ200のLAG処理動作の詳細については、第2、第3の実施の形態で詳述する。
【0040】
なお、本実施の形態において、ルーティングプロトコル・パケットを全LAGメンバリンクにコピーして転送するのは、送信側ルータ100で送信したルーティングプロトコル・パケットがLAGメンバリンクのどれで損失しても(全LAGメンバリンクが故障しない限りは)、同パケット(のコピー)を受信側ルータ200でLAG処理部220からルーティング処理部210へ渡せるようにするためである。
【0041】
また、ルーティングプロトコル・パケットの識別については、例えば、OSPF Helloパケットであれば、送信側ルータ100のパケット識別部121では、IPヘッダ部分のプロトコル番号フィールドの値が"89"であり、かつ、OSPFヘッダ部分のタイプフィールドの値が"1"であるパケットを検出して識別し、受信側ルータ200のパケット識別部221では、ある一定時間内に届いたIPヘッダ部分のプロトコル番号フィールドの値が"89"であり、かつ、OSPFヘッダ部分のタイプフィールドの値が"1"であり、かつ、送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの対が同一なパケットを元々1つのOFPF Helloパケットとして識別する等の方法がある。BGP KEEPALIVEパケットやその他のルーティングプロトコル・パケットについても同様にパケットフォーマットの特徴に着目して識別することが可能である。
【0042】
[第2の実施の形態]
本実施の形態では、LAGメンバリンクに故障が発生した場合に、正常リンクの数がミニマムリンク数以上であるにも関わらず、当該LAGリンクを迂回する経路切替が動作してしまう可能性があるという課題(第1の課題)を解決するものである。
【0043】
図6は、本発明の第2の実施の形態におけるリンク故障発生時の動作を示す。同図において、図3と同一箇所には同一符号を付し、その説明を省略する。同図では、4本のLAGメンバリンク301〜301のうち、メンバリンク301、301の2本にリンク故障が発生している。但し、当該システムにおけるミニマムリンク数は2であるとする。
【0044】
図7は、本発明の第2の実施の形態におけるルータの構成を示す。同図に示す送信側ルータ100及び受信側ルータ200は、故障箇所を付記した以外は、第1の実施の形態の図4に示す構成と同様である。
【0045】
本実施の形態では、送信側ルータ100のLAG処理動作は、第1の実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0046】
図8に基づいて、受信側ルータ200のLAG処理動作を説明する。
【0047】
なお、以降で、ルーティングプロトコル・パケットとしてOSPF Helloパケットを例にとるが、BGP KEEPALIVEパケットやその他のルーティングプロトコル・パケットについても同様な処理が可能である。
【0048】
LAG処理部220の集約処理部223のパケット識別部221において、送信側ルータ100からLAGリンクを介して転送されて来たパケットが事前指定の送信元IPアドレスと宛先IPアドレスを持つ処理対象OSPF Helloパケットであるかが判定され(ステップ201)、処理対象OSPF Helloパケットであれば(ステップ201、Y)、メモリ(図示せず)に一時的に蓄積され、何個到着したかカウントされる(ステップ202)。このとき、前回のタイマクリア以降の最初のOSPF Helloパケットの到着時から一定時間Tが経過してタイムアウトするまでパケット到着数がカウントされ、その後、タイマクリアされ、次処理に移行される。また、到着数のカウントは、送信元IPアドレスと宛先IPアドレスの対が異なるOSPF Helloパケット毎に行われる。一方、パケットが処理対象OSPF Helloパケットでないならば(ステップ201、N)、そのままルーティング処理部210に渡される。
【0049】
パケット転送制御部222においては、OSPF Helloパケット到着数と所定のミニマムリンク数とが比較され(ステップ203)、
OSPF Helloパケット到着数≧ミニマムリンク数
である場合は(ステップ203、Y)、パケットがルーティング処理部210に渡され(ステップ204)、そうでない場合は(ステップ203、N)、パケットが全て破棄されてルーティング処理部210に渡されない(ステップ205)。
【0050】
図5の例では、リンク故障a,bがLAGメンバリンク301〜301のうち、301,301の2本で発生しているが、同リンク故障がLAGメンバリンク4本のうちどの2本で発生しようとも、上記の方法により、当該リンク故障により、当該LAGリンク上でのルーティングプロトコル・パケット(ここでは、OFPF Helloパケット)の転送が影響を受けることはなく、当該LAGリンクを迂回する経路切替が動作することはない。
【0051】
[第3の実施の形態]
本実施の形態では、LAGメンバリンクのどれか1本にでも故障が発生した場合に、高速に経路切替を動作させたいにもかかわらず、経路切替が高速に動作しない可能性がある(数秒〜数十秒要する)という課題(第2の課題)を解決するものである。
【0052】
図9は、本発明の第3の実施の形態におけるリンク故障発生時の動作を示す。同図において、図3と同一箇所には同一符号を付し、その説明を省略する。同図では、4本のLAGメンバリンク301〜301のうち、メンバリンク301にリンク故障が発生している。なお、ルータの構成は第1の実施の形態における図4と同様である。
【0053】
本実施の形態では、送信側ルータ100のLAG処理動作は、第1の実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0054】
以下に、この場合の受信側ルータ200の動作を図10を用いて説明する。
【0055】
受信側ルータ200の集約処理部223のパケット識別部221において、送信側ルータ100からLAGリンクを介して転送されて来たパケットが事前指定の送信元IPアドレスと宛先IPアドレスを持つ処理対象OSPF Helloパケットであるかが判定され(ステップ301)、処理対象OFPF Helloパケットであれば(ステップ301、Y),第2の実施の形態に記述の方法と同様の方法により、何個到着したかがカウントされる(ステップ302)。一方、パケットが処理対象OFPF Helloパケットでないならば(ステップ301、N)、そのままルーティング処理部210に渡される(ステップ304)。
【0056】
パケット転送制御部222においては、OSPF Helloパケット到着数がLAGメンバリンク数と等しい場合は(ステップ303、Y)、パケットがルーティング処理部210に渡され(ステップ304)、そうでない場合は(ステップ303、N)、パケットが全て破棄されてルーティング処理部210に渡されない(ステップ305)。
【0057】
図9の例では、リンク故障aがLAGメンバリンク301〜301のうちの1本301で発生しているが、同リンク故障がLAGメンバリンク4本うちのどの1本で発生しようとも、上記の方法により、当該LAGリンク301上で転送されたルーティングプロトコル・パケット(ここでは、OFPF Helloパケット)が破棄され、当該LAGリンク301を迂回する経路切替が高速に動作する。
【0058】
なお、前述の図4、図7では、ルーティング処理部やLAG処理部をハードウェアとして説明したが、これらの処理部の動作をプログラムとして構築し、ルータやレイヤ2スイッチとして機能するコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0059】
また、構築されたプログラムをハードディスクや、フレキシブルディスク・CD−ROM等の可搬記憶媒体に格納し、コンピュータにインストールする、または、配布することが可能である。
【0060】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0061】
100 送信側装置、送信側ルータ
110 ルーティング処理部
120 LAG処理手段、LAG処理部
121 第1のパケット識別手段、パケット識別部
122 パケットコピー転送手段、パケットコピー転送部
123 分配処理部
130 物理ポート
200 受信側装置、受信側ルータ
210 ルーティング処理部
220 LAG処理手段、LAG処理部
221 第2のパケット識別手段、パケット識別部
222 パケット転送制御手段、パケット転送制御部
223 集約処理部
230 物理ポート
301 LAGリンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IEEE 802.3ad標準に代表されるIPネットワーク上のリンクアグリゲーション(LAG)において、LAGリンク上でルーティングプロトコル・パケット(OSPF (Open Shortest Path First) Hellow、BGP(Border Gateway Protocol)KEEPALIVEを含む)が転送される場合に対応したルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理方法であって、
LAGリンク上の特定の1リンクのみにルーティングプロトコル・パケットが転送されることによる意図せぬ経路切替動作が発生することを防ぐために、
送信側装置でのLAG処理において、ルーティングプロトコル・パケットを識別して、当該LAGリンクの全メンバリンクにコピー転送し、
受信側装置のLAG処理において、当該LAGリンクから転送されて来たルーティングプロトコル・パケットを識別して、到着状況を確認して、前記送信側装置でコピーしたパケットの一つのパケットのみを上位レイヤ処理ヘ渡すか全て破棄するかを制御する
ことを特徴とするルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理方法。
【請求項2】
LAGメンバリンクに故障が発生した場合に、正常リンクの数がミニマムリンク数以上であるにも関わらず、当該LAGリンクを迂回する経路切替が動作することを防ぐために、
受信側装置のLAG処理において当該LAGリンクからのルーティングプロトコル・パケットの到着数と当該LAGリンクのミニマムリンク数とを比較し、ミニマムリンク数以上のルーティングプロトコル・パケットが到着していた場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理に渡し、ミニマムリンク数未満のルーティングプロトコル・パケットが到着していた場合に同パケットを全て破棄して上位レイヤ処理に渡さない
ことを特徴とする請求項1記載のルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理方法。
【請求項3】
LAGメンバリンクのどれか1本にでも故障が発生した場合に高速に経路切替を動作させたいにも関わらず、経路切替が高速に動作しない(数秒〜数十秒要する)ことを防ぐために、
受信側装置のLAG処理において当該LAGリンクからのルーティングプロトコル・パケットの到着数を確認し、同パケットが全く損失していなかった場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理に渡し、同パケットが一つでも損失していた場合に同パケットを全て破棄して上位レイヤ処理に渡さない
ことを特徴とする請求項1記載のルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理方法。
【請求項4】
IEEE 802.3ad標準に代表されるIPネットワーク上のリンクアグリゲーション(LAG)において、LAGリンク上でルーティングプロトコル・パケット(OSPF (Open Shortest Path First) Hellow、BGP(Border Gateway Protocol)KEEPALIVEを含む)が転送される場合に対応したルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理装置であって、
LAGリンク上の特定の1リンクのみにルーティングプロトコル・パケットが転送されることによる意図せぬ経路切替動作が動作することを防ぐために、
送信側では、LAG処理手段において、
ルーティングプロトコル・パケットを識別する第1のパケット識別手段と、
前記ルーティングプロトコル・パケットを当該LAGの全メンバリンクにコピー転送するパケットコピー転送手段とを有し、
受信側では、LAG処理手段において、
当該LAGリンクから転送されて来たルーティングプロトコル・パケットを識別する第2のパケット識別手段と、
ルーティングプロトコル・パケットの到着状況を確認して同パケットの一つを上位レイヤ処理手段ヘ渡すか全て破棄するかを制御するパケット転送制御手段とを有する
ことを特徴とするルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理装置。
【請求項5】
LAGメンバリンクに故障が発生した場合に、正常リンクの数がミニマムリンク数以上であるにも関わらず、当該LAGリンクを迂回する経路切替が動作することを防ぐために、
受信側装置のLAG処理手段のパケット転送制御手段は、
当該LAGリンクからのルーティングプロトコル・パケットの到着数と当該LAGリンクのミニマムリンク数とを比較し、ミニマムリンク数以上のルーティングプロトコル・パケットが到着していた場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理手段に渡し、ミニマムリンク数未満のルーティングプロトコル・パケットが到着していた場合に同パケットを全て破棄して上位レイヤ処理手段に渡さない手段を含む
ことを特徴とする請求項4記載のルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理装置。
【請求項6】
LAGメンバリンクのどれか1本にでも故障が発生した場合に高速に経路切替を動作させたいにも関わらず、経路切替が高速に動作しない(数秒〜数十秒要する)ことを防ぐために、
受信側装置のLAG処理手段のパケット転送制御手段は、
当該LAGリンクからのルーティングプロトコル・パケットの到着数を確認し、同パケットが全く損失していなかった場合に同パケットの一つを上位レイヤ処理手段に渡し、同パケットが一つでも損失していた場合に同パケットを全て破棄して上位レイヤ処理手段に渡さない手段を含む
ことを特徴とする請求項4記載のルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理装置。
【請求項7】
請求項4または5または6のいずれか1項に記載のルーティングプロトコル・パケット転送向けリンクアグリゲーション処理装置を構成する手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−199890(P2010−199890A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41412(P2009−41412)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】