説明

ルーバ構造及びそれを備えた自動車

【課題】 ブレーキフルード補給中、ブレーキフルード缶を起立して支持し得るルーバ構造を提供する。
【解決手段】 ブレーキフルードの注入口54の上側にカウルルーバ51が配置され、カウルルーバが、注入口に対応した開口52Aを有するカウルルーバ本体部52と、開口を覆うようにカウルルーバ本体に脱着可能に取り付けた別体ルーバ53と、から構成され、ブレーキフルードを注入する際に別体ルーバ53を取り外し、開口52A内にブレーキフルード缶を挿入するルーバ構造50であって、開口52Aの内周面から突出するリブ52Bを備えていて、注入口54に挿入したブレーキフルード缶が倒れるのをリブ52Bで支持してブレーキフルード缶を起立させて保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキフルードの注入口の上に重なるようにカウルルーバが配置され、該注入口周辺のカウルルーバの一部を分離可能に別体構成したカウルルーバ構造に関し、別体ルーバを外してブレーキフルード缶を注入口に差し込んだ際にこのブレーキフルード缶を仮置きできるようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントピラーを通常の車両の設置位置に比べて車両前方寄りにずらして配設したフロントピラー前出し構造においては、車両前部がショートノーズになり、エンジンルーム内が通常の車両に比べて狭小になるため、図7及び図8に示すように、カウルルーバ101とブレーキフルードの注入口102とが重なるようにした車両が、従来より知られている。なお、図中のFrは車両前方を、Wは車幅方向を、Upは車両上方を示す。
【0003】
この種の車両においては、注入口102周辺のカウルルーバ101の一部が脱着可能に別体ルーバ103(図中の斜線で表した部材)として構成されており、ブレーキフルードを補給する際には別体ルーバ103を外し、図9に示すように、開口にブレーキフルード缶104を差し込んで、ブレーキフルードを補給するようにしている。
【0004】
このように、ブレーキフルードの注入口102に重なるようにカウルルーバ101を配置した構造が、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平11−20738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図7及び図8に示すカウル構造100においては、ブレーキフルードの補給に際して、作業者が円滑に作業を行えるように、図9に示すように、注入口102にブレーキフルード缶104を差し込んだ起立姿勢で、その垂直軸Yからフロントガラス105方向に所定の距離L分の作業用の空間を設定する必要がある。そして、そのような空間を設定すると、フロントガラス105の位置が後退することになり、フロントピラー前出し構造によるスタイリッシュなデザインを実現できなくなる。
【0006】
また、作業用の空間を設定したとしても、ブレーキフルードを補給するときには、注入口102にブレーキフルード缶104を差し込んだ状態でブレーキフルード缶104を支持するものがないので、ブレーキフルード缶104が転倒する虞がある。よって、作業者は、ブレーキフルードを補給する間、ブレーキフルード缶104を掴んでその姿勢を保持する必要があり不便である。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みて創作されたものであり、簡単な操作で、ブレーキフルード補給中、ブレーキフルード缶が起立できるルーバ構造及びそれを備えた自動車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ブレーキフルードの注入口の上側にカウルルーバが配置され、このカウルルーバが、注入口に対応した開口を有するカウルルーバ本体部と、開口を覆うようにカウルルーバ本体に脱着可能に取り付けた別体ルーバと、を備え、ブレーキフルードを注入する際に別体ルーバを取り外し、開口内にブレーキフルード缶を挿入するようにしたルーバ構造であって、上記開口の内周面から突出するリブを備えており、この開口に挿入したブレーキフルード缶をリブで支持して、ブレーキフルード缶を起立させて保持することを特徴としている。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明は、フロントピラー前出し構造の自動車において、ブレーキフルードの注入口の上側にカウルルーバが配置され、カウルルーバが、注入口に対応した開口を有するカウルルーバ本体部と、該開口を覆うようにカウルルーバ本体に脱着可能に取り付けた別体ルーバと、を備え、上記開口の内周面から突出するリブを備えており、ブレーキフルードを注入する際に別体ルーバを取り外し、開口内にブレーキフルード缶を挿入し、開口に挿入したブレーキフルード缶を上記リブで支持して、ブレーキフルード缶を起立させて保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明のカウル構造によれば、ブレーキフルードを注入する際に別体ルーバを取り外し、開口内にブレーキフルード缶を挿入して、注入口に先端部を挿入したブレーキフルード缶が倒れるのをリブで支持して、ブレーキフルード缶を起立させる。また、ブレーキフルード缶を挿入するスペースが狭く、ブレーキフルード缶が車両前側に傾斜しても、リブによって倒伏が規制される。
【0011】
このように、フロントガラスの前端部とブレーキフロード注入口とが近接していても、ブレーキフロード缶を起立させた状態で仮置きできることから、本発明を適用すれば、フロントピラー前出し構造を実現できて、スタイリッシュな意匠を車両に適用できる意匠選択の自由度を高めることことに貢献できる。
【0012】
また、ブレーキフルードの補給作業中に、作業者がブレーキフルード缶を掴む手間を省略することが出来て、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係るルーバ構造1を示す概略平面図である。図に示すように、カウルルーバ10は、ブレーキフルードの注入口20に重なるように配設されており、該注入口20の周辺のカウルルーバ10の一部が別体ルーバ(図1中の斜線部分)11として構成され、この別体ルーバ11はカウルルーバ本体部12に脱着可能に取り付けられるように構成されている。そして、カウルルーバ10から別体ルーバ11を取り外すと、ブレーキフルードの注入口20が露呈することになる。
【0014】
このような構造は、従来のルーバ構造100と同様であるが、本発明のルーバ構造1においては、以下の構成に特徴がある。即ち、カウルルーバ本体部12には、別体ルーバ11を取り付ける開口12Aの内周面から突出するリブ15が設けられている。
【0015】
ここで、図2は、図1のA−A′線端面図であり、ブレーキフルードの注入口20とリブ15との位置は重ならず、リブ15が注入口20の位置からずれて配置されている。そして、このリブ15と注入口20との間にブレーキフルード缶30が余裕を持って挿入できるような空間が画成されている。
【0016】
よって、図2に示すように、注入口20にブレーキフルード缶30の先端部を差し込み、ブレーキフルード缶30が傾倒してその先端部が注入口20から外れようとしても、ブレーキフルード缶30はリブ15に衝接することになる。これにより、ブレーキフルード缶30は、傾倒姿勢をリブ15により支えられて、起立する。
【0017】
即ち、リブ15が設定されていることで、ブレーキフルード缶30の上端部が注入口20に接触する個所が支点Fとなり、且つ、ブレーキフルード缶30の側面がリブ15に接触する個所が支点Gとなり、作業者がブレーキフルード缶30を離しても、ブレーキフルード缶30がそれらの二つの支点F,Gにより支えられて起立し保持される。
【0018】
なお、この場合、図3に点線で示すように、注入口20の鉛直線からフロントガラス40の前端までの距離Eが短く設定され、カウルルーバ10の側壁10Aが注入口20に近接していることで、注入口20にブレーキフルード缶30を直立させることができなくても、リブ15側に倒してリブ15に支持させれば、ブレーキフルード缶30を仮置きできる。このように、距離Eの寸法を短くすることができるので、フロントピラー前出し構造を実現できる。
【実施例】
【0019】
次に、実施例について説明する。
図4は、本発明のルーバ構造50の実施例を示す斜視図であり、カウルルーバ51がカウルルーバ本体部52と、別体ルーバ53とから構成されており、図4に示す状態では、別体ルーバ53がカウルルーバ本体部52の開口52Aを覆うように被着している。尚、ブレーキフルードの注入口54は、別体ルーバ53の下側に配置されている。
【0020】
このようなルーバ構造50において、ブレーキフルードを注入する際には、図5に示すように、別体ルーバ53をカウルルーバ本体部52から外し、開口52Aを開いて注入口54を露呈させる。
【0021】
そして、この開口52A内にブレーキフルード缶55の先端部を差し込んで、注入口54内に嵌入させる。この時、ブレーキフルード缶55が倒れようとするが、カウルルーバ本体部52の開口52Aの周辺部から注入口54側に向けてリブ52Bが突出しているので、このリブ52Bにブレーキフルード缶55が衝接して、傾斜姿勢が保持されることになり、図6に示すようにブレーキフルード缶55の起立姿勢を維持することができる。
【0022】
このように、ルーバ構造50においては、ブレーキフルード缶55を仮置きすることができるので、作業者の負担を軽減できる。また、カウルルーバ51の側壁10Aとフロントガラス40の先端部との距離を短くすることが出来るので、フロントピラー前出し構造を実現し得て、スタイリッシュな意匠を車両に適用できる意匠選択の自由度が高まる。
【0023】
以上説明したが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施できる。上記説明では、本発明のルーバ構造がフロントピラー前出し構造の車両に適用する場合を例示したが、本発明のルーバ構造は、その他の一般の車両にも適用してもよい。また、リブ15,52Bの形状は、図面に表示した形状に限定されるものではなく、ブレーキフルード缶を指示し得るものであればよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るルーバ構造を示す概略平面図である。
【図2】図1のA−A′線端面図である。
【図3】図1のB−B′線端面図である。
【図4】本発明の実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例を示す斜視図である。
【図7】従来のルーバ構造を示す概略平面図である。
【図8】図7のC−C′線端面図である。
【図9】従来のルーバ構造を示す概略端面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ルーバ構造
10 カウルルーバ
10A 側壁
11 別体ルーバ
12 カウルルーバ本体部
15 リブ
20 注入口
30 ブレーキフルード缶
50 ルーバ構造
51 カウルルーバ
52 カウルルーバ本体部
52A 開口
52B リブ
53 別体ルーバ
54 注入口
55 ブレーキフルード缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキフルードの注入口の上側にカウルルーバが配置され、
上記カウルルーバが、上記注入口に対応した開口を有するカウルルーバ本体部と、該開口を覆うように上記カウルルーバ本体に脱着可能に取り付けた別体ルーバと、を備え、
上記ブレーキフルードを注入する際に上記別体ルーバが取り外され、上記開口内にブレーキフルード缶が挿入される、ルーバ構造であって、
上記開口の内周面から突出するリブを備えており、
上記開口に挿入した上記ブレーキフルード缶を上記リブが支持して、該ブレーキフルード缶が起立することを特徴とする、ルーバ構造。
【請求項2】
フロントピラー前出し構造の自動車において、
ブレーキフルードの注入口の上側にカウルルーバが配置され、
上記カウルルーバが、上記注入口に対応した開口を有するカウルルーバ本体部と、該開口を覆うように上記カウルルーバ本体に脱着可能に取り付けた別体ルーバと、を備え、
さらに、上記開口の内周面から突出するリブを備えており、
上記ブレーキフルードを注入する際に上記別体ルーバが取り外され、上記開口内にブレーキフルード缶が挿入され、上記開口に挿入した上記ブレーキフルード缶が上記リブにより支持されて、該ブレーキフルード缶が起立することを特徴とする、自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−38763(P2007−38763A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223499(P2005−223499)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】